(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】放射性同位体の量産化のための植え込みおよび回収方法および装置
(51)【国際特許分類】
G21G 1/08 20060101AFI20230203BHJP
G21C 17/10 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
G21G1/08
G21C17/10 500
(21)【出願番号】P 2020520141
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 US2018050877
(87)【国際公開番号】W WO2019083634
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-01
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
(72)【発明者】
【氏名】チェーニアク、ルーク、ディー
(72)【発明者】
【氏名】ヒージー、メリッサ、エム
(72)【発明者】
【氏名】カルバハル、ジョージ、ブイ
(72)【発明者】
【氏名】マッカードル、マシュー、ディー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー、ジェフリー、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンケル、ジェームズ、エル
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519986(JP,A)
【文献】特開昭59-114497(JP,A)
【文献】特表2016-503878(JP,A)
【文献】特開平05-340708(JP,A)
【文献】特開昭60-114793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/08
G21C 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同位体製造ケーブルアセンブリを具備する照射標的ハンドリング装置であって、
炉内検出器(12)を検出器駆動装置(24)から原子炉炉心(14)内の計装シンブル内へ且つ当該計装シンブルを介して搬送する既存の可動型炉内検出器システムの導管に適合するように構成された標的ホルダー駆動ケーブル(36)であって、先端部に遠隔操作式雄継ぎ手または雌継ぎ手のうちの一方(58)を有する標的ホルダー駆動ケーブル(36)と、
当該標的ホルダー駆動ケーブル(36)を駆動して当該炉心(14)に出入りさせる構成の、当該既存の可動型炉内検出器システムの当該検出器駆動装置(24)とは別の独立した標的ホルダー駆動ケーブル駆動モータユニット(34)であって、当該標的ホルダー駆動ケーブルを駆動して、当該既存の可動型炉内検出器システムの当該導管へ送り込み、当該炉内検出器システムの第1の複数通路選択装置(28)および第2の複数通路選択装置(30)を通過させる標的ホルダー駆動ケーブル駆動モータユニット(34)と、
後端部に、当該標的ホルダー駆動ケーブル(36)の前端部にある当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちの当該一方(58)と結合するように構成された当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちのもう一方を有する試料標的ホルダー(48)と、
当該第2の複数通路選択装置(30)の出口通路(52)から入力を受け取り、新しい試料取り付け位置(42)へ第1の出力を、照射試料取り出し位置(44)へ第2の出力を、当該炉心(14)へ第3の出力(54)を提供するように構成された第3の複数通路選択装置(40)と
を具備する照射標的ハンドリング装置。
【請求項2】
前記標的ホルダー駆動ケーブル(36)によって前記炉心内へ駆動される前記試料標的ホルダー(48)は、外壁を貫通して外方へ突出し、前記炉心(14)内の計装シンブルの内壁に接触する半径方向突起部(76)を有し、当該半径方向突起部は、前記試料標的ホルダーが前記駆動ケーブルから切り離されると、当該計装シンブル内の前記試料標的ホルダーの軸方向位置を維持することを特徴とする、請求項1の照射標的ハンドリング装置。
【請求項3】
前記雄継ぎ手または前記雌継ぎ手のうちの前記一方(58)は、前記試料標的ホルダー(48)にある前記雄継ぎ手または前記雌継ぎ手のうちの前記もう一方(60)と結合すると、前記半径方向突起部(76)を前記計装シンブルの内壁から離脱させるように構成されている、請求項2の照射標的ハンドリング装置。
【請求項4】
前記試料標的ホルダー(48)が前記駆動ケーブル(36)によって駆動され、前記炉心(14)内の前記計装シンブル内の所定の軸方向位置に到達したことを突き止めるための軸方向位置決め装置(78)が前記試料標的ホルダーに取り付けられている、請求項1の照射標的ハンドリング装置。
【請求項5】
前記計装シンブルは閉じた上端部を有し、前記計装シンブル内で駆動される前記試料標的ホルダー(48)の先端部には前記計装シンブルの当該閉じた上端部の内側に接触する大きさの軸方向突起部(78)がある、請求項4の照射標的ハンドリング装置。
【請求項6】
前記軸方向突起部(78)は長さを調節可能なワイヤである、請求項5の照射標的ハンドリング装置。
【請求項7】
前記標的ホルダー駆動ケーブル(36)は、第1の分岐が前記標的ホルダー駆動ケーブル駆動モータユニット(34)に接続し、第2の分岐が前記検出器駆動装置(24)に接続するY字形接続部を介して当該導管に搬入される、請求項1の照射標的ハンドリング装置。
【請求項8】
可動型炉内放射線検出器中性子束マッピングシステムを有する原子炉(16)の炉心(14)内で複数の試料を照射する方法であって、当該炉心の複数の燃料集合体はそれぞれ、放射線検出器(12)を挿入して移動させることが可能な計装シンブルを有し、前記方法は、
第1の駆動ケーブル(36)の先端部に位置し、第1の試料(72)を含む第1の試料ホルダー(48)を、第1の駆動装置(34)によって駆動して、当該炉心(14)の第1の計装シンブルに挿入するステップと、
当該第1の駆動ケーブル(36)を遠隔操作して当該第1の試料ホルダー(48)から切り離し、当該第1の計装シンブル内における当該第1の試料ホルダーの軸方向位置を固定するステップと、
当該第1の駆動ケーブル(36)を当該原子炉(16)から引き抜くステップと、
第2の試料(72)を含む第2の試料ホルダー(48)を、当該第1の駆動装置(34)によって駆動される当該第1の駆動ケーブル(36)の先端部に取り付けるステップと、
当該第2の試料(72)を含む当該第2の試料ホルダー(48)を、当該炉心(14)内の第2の計装シンブルに挿入するステップと、
当該第1の駆動ケーブル(36)を遠隔操作して当該第2の試料ホルダー(48)から切り離し、当該第2の計装シンブル内における当該第2の試料ホルダーの軸方向位置を固定するステップと、
当該第1の駆動ケーブル(36)を当該原子炉(16)から引き抜くステップと、
当該
第1の引き抜きステップと当該第2の挿入ステップとの間で、第2の駆動ケーブル(50)に取り付けられた可動型炉内検出器放射線中性子束マッピングシステムの可動型炉内放射線検出器(12)を、第2の駆動装置(24)によって駆動して、第3の計装シンブルに挿入し内部を移動させるステップと、
中性子束マッピングを実施したあと当該可動型炉内放射線検出器(12)を当該原子炉(16)から引き抜くステップと
を含む方法。
【請求項9】
中性子束マッピングを実施しようとするとき、前記挿入ステップにより、中性子束マッピングシステムによってアクセス可能な計装シンブルのうちの最大半分のシンブルに試料ホルダー(48)を挿入してマッピングと同時に照射を行うことを特徴とする、請求項8の方法。
【請求項10】
前記試料ホルダー(48)のそれぞれの前記計装シンブル内における軸方向位置を固定するステップは、前記試料ホルダーがそれぞれ対応する前記計装シンブル内の所定の軸方向位置にあることを突き止めるステップを含む、請求項8の方法。
【請求項11】
前記第1の駆動ケーブルを前記原子炉から引き抜くステップは、中性子束マッピングの実施に先立って前記第1の駆動ケーブル(36)を前記可動型炉内放射線検出器中性子束マッピングシステムから引き抜くステップを含む、請求項8の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して放射性同位体を炉心に出し入れする方法および装置に関し、具体的には、原子炉施設の発電能力を下げずに放射性同位体を量産するためのかかる同位体の商用原子炉への出し入れに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体発電器(RTG)に使用するような医療および他の営利事業向けの放射性同位体を商業的に製造するプロセスは、商業量の有用な同位体の製造に必要な中性子源設備を起ち上げるコストが非常に高いというコストの制約がある。このため、放射性同位体のこのような有用な用途への使用は多大なコストを要し、また、利用可能なごく限られた数の同位体製造施設は実際に運転が一時的に停止したりその可能性があるから、放射性同位体の供給能力とコス
トは極端な変動を受けやすい。この状況に伴う人的コストは、放射性同位体を用いる多数の利用可能な診断治療装置による医療が高額になるため、多くの人がその恩恵を享受できないということである。
【0003】
また、現在、放射性医薬品に加工される放射性同位体の製造に使用されている原子炉は非常に古いため、運転の継続には、多大なコストが見込まれるため投資収益率が低くなりそうな改修が必要である。そのため、既存の製造能力の維持に必要な原子炉資源が失われつつある。対処すべき基本的な問題は、重い病気の診断および治療に必要な放射性同位体の不足を来す、既存の医療用放射性同位体製造設備の老朽化による医療用放射性同位体の製造能力の減少である。したがって、放射性同位体を製造するための、好ましくはより安価な代替方法が必要である。
【0004】
商用発電施設で稼働中の多数の原子炉は、炉心内の軸方向および半径方向の出力分布を定期的に測定するために、米国特許第3,932,211号に記載されるような可動型炉内検出器システムを用いている。可動型検出器システムは概して、プラントの大きさ(2、3または4ループ)に応じて4つ、5つまたは6つの検出器/駆動アセンブリから成り、それらのアセンブリは、さまざまな組み合わせの炉内中性子束シンブルの評価を可能にする態様で相互接続されている。各検出器は、シンブルの相互接続が可能なように、5または6通路、および10または15通路の回転式機械移送装置と協働する。炉心マップは、検出器が内部で駆動される特定のシンブルを、移送装置によって選択することにより作成される。マッピング時間が最小になるように、各検出器は、後退位置から炉心直下の位置まで高速(毎分72フィート)で移動可能である。検出器は、後者の位置で速度を毎分12フィートに減少させた後、炉心最上部へ移動し、そこで方向反転して炉心最下部へ移動し、再び速度を毎分72フィートに上昇させて後退位置へ戻る。その後、移送装置を回転させて新たな中性子束シンブルを選択し、上記の手順を繰り返すことによりマッピングを行う。
【0005】
図1は、小型の可動型検出器を挿入するための基本的なシステムを示す。小型検出器12が内部で駆動される引き抜き自在のシンブル10は、概ね図示のような経路を辿る。シンブルは、原子炉容器16の底部からコンクリート遮蔽領域18を通って上方へシンブルシール台20まで延びる導管を介して、原子炉の炉心14に挿入される。可動型検出器のシンブルは先端(原子炉側)が閉じているので、内部は乾燥状態にある。したがって、シンブルは、原子炉の水圧(設計値2,500psig)と大気圧との間の圧力障壁として機能する。引き抜き自在のシンブルと導管との間のメカニカルシールがシール台20に設けられている。導管22は本質的に原子炉容器16の延長部であり、シンブルにより小型の可動型炉内計装検出器の挿入が可能になる。シンブル10は、運転中は不動状態にあり、引き抜きは燃料交換時または保守作業時の減圧条件下でのみ行われる。容器内部構造物について作業が必要な場合は、シンブルを原子炉容器の底部まで引き抜くことも可能である。
【0006】
小型検出器を挿入するための駆動装置は、図示のように基本的に、駆動装置24、リミットスイッチアセンブリ26、回転式5通路移送装置28、回転式10通路移送装置30および隔離弁32から成る。各駆動装置は、先端に小型検出器を取り付けた中空の螺旋ラップ駆動ケーブルを炉心内へ押し込む。当該検出器の出力を伝達する小径の同軸ケーブルが、当該螺旋ラップ駆動ケーブルの中空内部の中心を後端まで延びている。
【0007】
医療処置用同位体のような中性子の照射が望ましい放射化および核変換生成物の製造を、可動型炉内検出器システムの中性子束シンブル10を用いて行うには、炉心14内に配置した中性子束シンブルに照射対象物質を挿入したり引き抜いたりする手段が必要である。ここで使用する手段は、製造過程で作業員が放射線に被曝する可能性とともに、製造過程で発生する放射性廃棄物の量を最小限に抑えることが好ましい。適切な量の放射化または核変換生成物が製造されるように標的物質が受ける中性子照射量を正確に監視するには、標的物質周辺の中性子束を継続的に測定できる装置が必要である。ここで使用する手段は、商用原子炉の炉心内にセンサを挿入したり引き抜いたりするための現用のシステムに適合するのが理想的である。同時係属中の2016年7月14日出願の「Irradiation Target Handling Device」と題する米国特許出願第15/210,231号は、炉心での1燃料サイクルに満たない期間にわたる照射を必要とする医療用同位体の製造に関する、上述したすべての重要な考慮事項を満たす同位体製造ケーブルアセンブリを開示している。
【0008】
中性子核変換によって製造される商業的価値のある他の放射性同位体のなかには、複数の中性子誘導核変換反応が起きて初めて所望の放射性同位体が生成されるものや、Co-60、W-188、Ni-63、Bi-213、Ac-225のような中性子相互作用断面積が非常に小さい物質から抽出される放射性同位体がある。これらの同位体を製造するには、1燃料サイクル以上の炉心内滞留期間が必要である。商用発電炉は、発電に使用する原子炉の熱出力に有意に寄与しない大量の中性子を有する。本願に記述する発明は、商用原子炉内の中性子環境を利用して商業的価値のある量の放射性同位体を製造するにあたり、中性子の長期照射(1燃料サイクル以上)または短期照射(1燃料サイクル未満)を必要とするが原子炉の運転および運転コストへの影響を最小限に抑えるプロセスおよび関連のハードウェアに関する。2016年11月2日出願の米国特許出願第15/341,478号に記述されたハードウェアおよび方法論は、比較的長い炉心内滞留時間を要し、現在は旧式の同位体製造炉で製造されている放射性同位体の製造を、前述の可動型炉内検出器システムの設備を用い、当該可動型炉内検出器システムの出力分布測定プロセス機能を妨げることなく行うのを可能にする。
【0009】
商用原子炉内における放射性同位体の量産化を可能にし、しかもそのような商用発電施設の発電量に負の影響を与えないより効率的な製造プロセスに対するさらなる需要が依然として存在する。本発明は、そのような需要を満たすことを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
上述の目的および他の目的は、本発明に基づく、標的ホルダー駆動ケーブルを備えた同位体製造ケーブルアセンブリを有する照射標的ハンドリング装置により達成することができる。当該標的ホルダー駆動ケーブルは、検出器駆動システムの炉内検出器を炉心内の計装シンブル内へ且つ当該シンブルを介して搬送する既存の可動型原子炉炉内検出器システムの導管に適合するように構成されている。当該標的ホルダー駆動ケーブルは、先端部に遠隔操作式雄継ぎ手または雌継ぎ手のうちの一方を有する。当該既存の可動型原子炉炉内検出器システムの検出器駆動装置とは別の独立した標的ホルダー駆動ケーブル駆動モータユニットが提供される。当該標的ホルダー駆動ケーブル駆動モータユニットは、標的ホルダー駆動ケーブルを駆動して当該炉心に出入りさせるにあたり、当該標的ホルダー駆動ケーブルを、当該既存の可動型原子炉炉内検出器システムの当該導管へ送り込み、当該炉内検出器システムの第1の複数通路選択装置および第2の複数通路選択装置を通過させるように構成されている。試料標的ホルダーは、後端部に当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちのもう一方を有し、当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちの当該もう一方は当該標的ホルダー駆動ケーブルの前端部にある当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちの当該一方と結合するように構成されている。当該第2の複数通路選択装置の出口通路から入力を受け取るように接続および構成された第3の複数通路選択装置は、新しい試料取り付け場所へ第1の出力を、照射試料取り出し場所へ第2の出力を、当該炉心へ第3の出力を提供する。
【0011】
一実施態様において、当該標的ホルダー駆動ケーブルによって当該炉心内へ駆動される当該試料標的ホルダーは、外壁を貫通して外方へ延伸し、当該炉心内の計装シンブルの内壁に接触する半径方向突起部を有し、当該突起部は、当該試料標的ホルダーが当該駆動ケーブルから切り離されると、当該計装シンブル内の当該試料標的ホルダーの軸方向位置を維持する。好ましくは、当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちの当該一方は、当該試料標的ホルダーにある当該雄継ぎ手または当該雌継ぎ手のうちの当該もう一方と結合すると、当該半径方向突起部を当該計装シンブルの内壁から離脱させるように構成されている。
【0012】
さらに別の実施態様では、当該試料標的ホルダーが当該駆動ケーブルによって駆動され、当該炉心内の当該計装シンブルの中で所定の軸方向位置に到達したことを突き止めるための軸方向位置決め装置が当該試料標的ホルダーに取り付けられている。好ましくは、当該計装シンブルは閉じた上端部を有し、当該計装シンブルの内部で駆動される当該試料標的ホルダーの先端部に当該計装シンブルの当該閉じた上端部の内側に接触する大きさの軸方向突起部がある。そのような一実施態様において、当該軸方向突起部は、長さを調節可能なワイヤである。当該標的ホルダー駆動ケーブルは、第1の分岐が当該標的ホルダー駆動ケーブル駆動モータユニットに接続し、第2の分岐が当該検出器駆動装置に接続するY字形接続部を介して導管に搬入されるのが望ましい。
【0013】
本発明はまた、炉心内の複数の燃料集合体がそれぞれ計装シンブルを有し、可動型炉内検出器中性子束マッピングシステムの放射線検出器が当該計装シンブル内に挿入されて内部を移動できる原子炉
の炉心内で複数の試料を照射する方法を企図する。本発明の方法は、第1の駆動ケーブルの先端部に位置し、第1の試料を含む第1の試料ホルダーを、第1の駆動装置によって駆動して、当該炉心の第1の計装シンブルに挿入するステップを含む。次に、当該第1の駆動ケーブルを遠隔操作して当該第1の試料ホルダーから切り離し、当該第1の計装シンブル内における当該第1の試料ホルダーの軸方向位置を固定する。次に、当該第1の駆動ケーブルを当該原子炉から引き抜く。次に、第2の試料を含む第2の試料ホルダーを、当該第1の駆動装置によって駆動される当該第1の駆動ケーブルの先端部に取り付ける。次に、当該第2の試料を含む当該第2の試料ホルダーを、当該炉心内の第2の計装シンブルに挿入する。次に、当該第1の駆動ケーブルを遠隔操作して当該第2の試料ホルダーから切り離し、当該第2の試料ホルダーを当該第2の計装シンブル内の到着済み軸方向位置に固定する。次に、当該第1の駆動ケーブルを当該原子炉から引き抜く。本発明の方法は、当該引き抜きステップと当該第2の挿入ステップとの間で、第2の駆動ケーブルに取り付けられた可動型炉内検出器放射線中性子束マッピングシステムの可動型炉内放射線検出器を、第2の駆動装置によって駆動して、第3の計装シンブルに挿入し、内部を移動させて中性子束マッピングを行ったあと、当該可動型炉内放射線検出器を当該原子炉から引き抜く。
【0014】
本発明の方法の一実施態様では、中性子束マッピングを実施しようとするとき、当該挿入ステップにより、中性子束マッピングシステムによってアクセス可能な計装シンブルのうちの最大半分のシンブルに試料ホルダーを挿入して、マッピングと同時に照射を行う。好ましくは、当該試料ホルダーのそれぞれの当該計装シンブル内における軸方向位置を固定するステップは、当該試料ホルダーがそれぞれ対応する当該計装シンブル内の所定の軸方向位置にあることを突き止めるステップを含む。そのような一実施態様において、当該第1の駆動ケーブルを当該原子炉から引き抜くステップは、中性子束マッピングの実施に先立って当該第1の駆動ケーブルを当該可動型炉内放射線検出器中性子束マッピングシステムから引き抜くステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0016】
【
図1】本発明による複数の標的同位体の製造に使用できる基本的な中性子束マッピングシステムの部分断面概略立面図である。
【0017】
【
図2】本発明の方法を実施する装置を構成するために
図1の中性子束マッピングシステムに施された改良を示す概略図である。
【0018】
【
図3】本発明の標的ホルダー駆動ケーブルアセンブリの一実施態様を示す切欠き概略図である。
【0019】
【
図3A】
図3の試料ホルダー駆動ケーブルの先端部にあるラッチプラグを示す拡大図である。
【0020】
【
図3B】
図3に示す試料ホルダーの後端部の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述の目的を達成するために、本発明は上述した
図1の従来型中性子束マッピングシステムを
図2に示すように改良する。
図2は、検出器駆動装置24、5通路移送装置28、10通路移送装置30およびシール台20を含む可動型炉内検出器中性子束マッピングシステムの概略図であり、リミットスイッチ、安全スイッチおよび隔離弁のような附属品は省略してある。
図2はまた、本発明により改良される可動型炉内検出器中性子束マッピングシステムの中核的構成要素を示している。この改良は、可動型炉内検出器中性子束マッピングシステムを、中性子束マッピング機能を損なうことなく、放射性同位体の量産施設に転換自在にすることを意図している。本発明は、検出器駆動装置24とは別の独立した試料ホルダーケーブル駆動装置34を提供する。試料ホルダーケーブル駆動装置34は試料ホルダー駆動ケーブル36を駆動し、駆動ケーブル36の先端部には着脱可能な試料ホルダー48が取り付けられている。試料ホルダー48を
図3を参照してより詳細に説明する。試料ホルダーケーブル駆動装置34と試料ホルダーケーブル36の構成は、検出器モータ駆動装置24と検出器駆動ケーブル50の構成と同じであるが、それ以外にも本発明に適合する構成があることも理解されたい。試料ホルダー駆動ケーブル36は、5通路移送装置28の入口に通じるY字形接続部38を介して、可動型検出器炉内中性子束マッピングシステムの導管に送り込まれる。5通路移送装置の出口のうちの1つは同様に10通路移送装置30への入口に通じ、10通路移送装置からの出口のうちの1つ52は新たな3通路移送装置40に通じ、ケーブルが送り込まれる。3通路移送装置の第1の出口は新しい試料取り付け点42につながり、そこで新しい試料ホルダーおよび試料を試料ホルダー駆動ケーブルに取り付けることができる。3通路移送装置の第2の出口は、試料ホルダーを取り出すことができる試料ホルダー受けにつながる。3通路移送装置の第3の出口は、炉心へつながる通路である。なお、5通路、10通路および3通路移送装置について説明したが、これらの装置には、炉心内の所望の場所へのアクセスに必要な数の通路を設けることができる。現在、炉心の大きさに応じて5通路および6通路装置28と、10通路および15通路装置30が使用中であるか、または使用が検討されている。
【0022】
図3は、試料ホルダー駆動ケーブル36の先端部および試料ホルダー48を示す。中性子束マッピングシステムの導管の中で試料ホルダー駆動ケーブル36を前進または後退させるために、試料ホルダー駆動ケーブル36には試料ホルダー駆動モータユニット34の駆動ギアと係合する螺旋状巻線56がある。試料ホルダー駆動ケーブル36の先端部には、試料ホルダー48の雌継ぎ手部60に嵌入する遠隔操作式雄継ぎ手部58がある。雄継ぎ手部58には遠隔操作可能で液圧式のラッチプラグ62があり、最大突出位置へ作動されると、雌継ぎ手部60にある環状の溝64に嵌合する。
図3Aは、作動位置にあるラッチプラグ62の細部を示す。ラッチプラグ62には、液圧流体供給チャンネル70を介して印加される液圧が解放されるとラッチプラグ62を引っ込める働きをするラッチ解除ばね66がある。液圧流体は、
図2に示す液圧流体供給貯蔵器46から、試料ホルダー駆動ケーブル36の中心を通る液圧流体供給チャンネル70を介して供給される。保持クリップ68は、チャンネル内を移動するラッチプラグ62が当該チャンネルから離脱しないようにする。試料ホルダー48は、照射対象試料を収容する搭載物チェンバ72と2つ以上の位置決めタブ76とを有する。位置決めタブ76は、当該試料ホルダーが遠隔操作により試料ホルダー駆動ケーブル36から切り離されると、試料ホルダーハウジングの内部から当該ハウジングを貫通して、当該試料ホルダー48が挿入される燃料集合体計装シンブルの内側表面に当接するため、摩擦により当該試料ホルダーが当該位置決めタブ76により定位置に保持される。位置決めタブ76は最大突出位置に付勢されており、雄継ぎ手部が雌継ぎ手部60に完全に挿入されると雄継ぎ手部58に押されて回転し、計装シンブルの側壁と接触しなくなる。
図3Bは、位置決めタブ76の端面図である。試料ホルダー48には、試料ホルダー48の先端部から延びる調節可能な位置決めケーブル78もある。試料を可動型炉内検出器中性子束マッピングシステム内に挿入する前に計装シンブル内の試料の所望の軸方向位置を定め、試料が所望の位置に来たときに位置決めケーブル78の先端部が計装シンブルの閉じた上端部に当接するように当該ケーブルの長さを調節する。
【0023】
したがって、中性子束マッピングを実施しようとする時に計装シンブルの50%以上が空いている状況であれば、典型的には1回に4分の1ずつ行われる中性子束マッピング行程の合間に、可動型炉内検出器中性子束マッピングシステムを用いて、当該マッピングシステムにアクセス可能な炉心内のすべての計装シンブルに同位体を挿入したり当該シンブルから同位体を回収したりすることができる。中性子束マッピングの行程を開始する前に、試料ホルダー駆動ケーブル36をY字形接続部38より上まで引き抜くことにより、小型検出器が5通路移送装置28へアクセスできるようにする必要がある。同様に、1つの中性子束マッピング行程が完了したら、小型検出器をY字形接続部より上まで引き抜くことにより、試料ホルダー駆動ケーブル36が5通路移送装置28へアクセスできるようにする必要がある。可動型炉内中性子束マッピングシステムを用いる典型的な原子炉施設は相互に接続された4、5または6系列の検出器を具備するが、それら検出器の検出器駆動ケーブルは、炉心につながる別々の導管内に布線されているのであれば、同時に動かすことができる。本発明によると、炉心内のそれぞれ異なる所望の場所に同位体を植え込むように個別にプログラムされた独自の試料ホルダーケーブル駆動装置を、検出器系列の各々に設けることができる。
【0024】
したがって、本発明は、既存の可動型炉内検出器システムおよび方法を以下の機能を果たすように改良するものである。(1)既存の複数通路経路選択手段により試料を炉心内の到達可能な所望の半径方向位置へ挿入できる1つ以上の検出器駆動系列により、特別に構成された試料を、既存の複数通路移送装置への特別に構成されたアクセス口を介して挿入することができる。(2)試料を、照射に利用可能な炉心内の所望の場所の、所望の燃料集合体内の反応性燃料の最上部を基準とする可動型炉内検出器システム計装シンブル内の所定の軸方向位置に挿入することができる。(3)試料ホルダー駆動ケーブルを試料ホルダーから切り離して、原子炉内から複数通路移送装置の上方まで抜き取るとともに、原子炉内における試料の軸方向位置を試料ホルダー駆動ケーブルコネクタの試料ホルダー側の機械的な特徴物によって固定することができる。(4)既存の複数通路移送装置の特定の位置を選択して、試料ホルダー駆動ケーブルを、既存の複数通路移送装置の下流に位置する特別に構成された別の移送装置(以下、「下流通路選択装置」と称する)に挿入し、当該下流通路選択装置の位置を、試料ホルダー駆動ケーブルの端部が当該端部に別の試料ホルダー搭載物を取り付けることができる場所に到達できるようにすることができる。(5)新しい試料を既存の複数通路移送装置より上方まで引き抜いたあと、所望されるすべての試料が計画通り炉心内に「植え込まれる」まで、上述のステップ1~4を繰り返すことができる。(6)試料ホルダー駆動ケーブルを試料植え込み場所まで挿入して、試料ホルダー駆動ケーブルコネクタの嵌合部同士を密着させ、窒素などの液圧流体により液圧流体供給チャンネルを加圧して、コネクタの駆動ケーブル側のラッチプラグをコネクタの試料側のラッチチャンネルに挿入することにより、所望の照射レベルに達した試料ホルダーを引き抜く(すなわち回収する)ことができる。(7)回収した試料を10通路選択装置まで引き抜き、液圧流体の印加圧力を下げることによって試料ホルダーのラッチを解除して駆動ケーブルを解放したあと、試料を処理施設への輸送に使用される放射性物質移送キャスクの搭載室に収めるために、試料が搭載された試料ホルダーを、挿入可能位置にある下流通路選択装置に、その試料ホルダーを巻き取るための装置が試料ホルダーを捕捉するまで挿入することができる。(8)試料ホルダーケーブルを上記ステップ4で述べた位置に配置し、所望であればステップ1~5を繰り返すことができる。(9)所望であればステップ1~8を繰り返すことができる。
【0025】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。