(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】タワー制振装置
(51)【国際特許分類】
F03D 13/20 20160101AFI20230203BHJP
F03D 13/40 20160101ALI20230203BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230203BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20230203BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
F03D13/20
F03D13/40
F16F15/02 C
F16F15/023 A
F16F7/00 F
(21)【出願番号】P 2020533343
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(86)【国際出願番号】 DK2018050219
(87)【国際公開番号】W WO2019042516
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】モーテンセン,ピーター シグファ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァストロヴァ,ミロスレヴァ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07928593(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/20
F03D 13/40
F16F 15/02
F16F 15/023
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワー制振装置(100)を備える風力タービンタワーであって、前記タワー制振装置(100)は、
同調質量ダンパーであって、
該風力タービンタワー内に懸架される振り子構造体(101、208)と、
摩擦媒体を前記振り子構造体(101、208)に接続する、外側境界部(102)を含むチャンバーと、
前記振り子構造体(101、208)が中立位置から前記チャンバーの前記外側境界部(102)に向かって変位することが可能であるように、該風力タービンタワー内に前記振り子構造体(101、208)を懸架する、懸架機構(103~111、206、207、306、307、308、309、406、407、408、409)と、
を備える、同調質量ダンパーと、
衝撃ダンパーであって、
前記チャンバーの前記外側境界部(102)及び前記振り子構造体(101、208)が該衝撃ダンパーを介して衝突し得るように、前記振り子構造体(101、208)と前記チャンバーの前記外側境界部(102)との間に位置する1つ以上の緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)、
を備える、衝撃ダンパーと、
を備える、風力タービンタワー。
【請求項2】
前記摩擦媒体は、制振液(112)であり、前記チャンバーの前記外側境界部(102)は、該外側境界部(102)の壁部分間に延在する底部を有し、前記チャンバーは、前記振り子構造体(101、208)が少なくとも部分的に浸漬される前記制振液(112)を保持する、請求項1に記載の風力タービンタワー。
【請求項3】
前記衝撃ダンパーは、該衝撃ダンパーを介して前記外側境界部と前記振り子構造体(101、208)との衝突を防ぐために無効化されるように適合される、請求項1又は2に記載の風力タービンタワー。
【請求項4】
前記衝撃ダンパーは、前記緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)のうちの少なくとも1つを取り外すか若しくは配置変更すること、前記緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)のうちの少なくとも1つの緩衝ユニットの形状及び/又は寸法を変化させること、又は前記チャンバーの前記外側境界部(102)に対して前記振り子構造体(101、208)を回転させることにより、無効化するように適合される、請求項3に記載の風力タービンタワー。
【請求項5】
前記1つ以上の緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)は、前記振り子構造体(101、208)に取外し可能に固定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の風力タービンタワー。
【請求項6】
前記1つ以上の緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)は、前記振り子構造体(101、208)の上側リムから懸架される、請求項1~5のいずれか1項に記載の風力タービンタワー。
【請求項7】
緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)の数は、2よりも多
い、請求項1~6のいずれか1項に記載の風力タービンタワー。
【請求項8】
前記緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)は、前記振り子構造体(101、208)の中心軸の周りに及び/又は前記風力タービンタワーの中心軸の周りに均等に分布する、請求項7に記載の風力タービンタワー。
【請求項9】
各緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)は、1つ以上の弾性フェンダー(202、203、302、303、402、403、501、502、509、510、511、512)を備え、該1つ以上の弾性フェンダー(202、203、302、303、402、403、501、502、509、510、511、512)は、少なくともショアA5
0のデュロメータ硬さをそれぞれ有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の風力タービンタワー。
【請求項10】
各緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)は、対向して配置される第1の弾性フェンダー及び第2の弾性フェンダーを備え、前記第1の弾性フェンダーは、前記振り子構造体(101、208)に面し、前記第2の弾性フェンダーは、前記チャンバーの前記外側境界部(102)に面する、請求項9に記載の風力タービンタワー。
【請求項11】
前記チャンバーの前記外側境界部(102)は、風力タービンタワー壁(102)の一部によって形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の風力タービンタワー。
【請求項12】
前記懸架機構は、
前記振り子構造体(101、208)を懸架する複数のワイヤ(103、104、105、206、307、306、406)と、
前記懸架された振り子構造体(101、208)の固有振動数を調整するように構成された調節手段であって、該調節手段は、上記複数のワイヤ(103、104、105、206、307、306、406)のそれぞれに対して、一端部が前記風力タービンタワーに固定され、他端部が前記ワイヤ(103、104、105、206、307、306、406)に固定されたクランプを含み、該クランプの固定は、該クランプが、前記ワイヤ(103、104、105、206、307、306、406)の長手方向に沿って可動であるように構成される、調節手段と、
を備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の風力タービンタワー。
【請求項13】
風力タービンタワーにおけるタワー振動を減衰させる方法であって、該方法は、
同調質量ダンパーを設けるステップであって、前記同調質量ダンパーは、
前記風力タービンタワー内に懸架される振り子構造体(101、208)と、
摩擦媒体を前記振り子構造体(101、208)に接続する、外側境界部(102)を備えるチャンバーであって、好ましくは、前記摩擦媒体は、制振液(112)であり、前記チャンバーの前記外側境界部(102)は、該外側境界部(102)の壁部分の間に延在する底部を有し、該チャンバーは、前記振り子構造体(101、208)が少なくとも部分的に浸漬される前記制振液(112)を保持する、チャンバーと、
前記振り子構造体(101、208)が中立位置から前記チャンバーの前記外側境界部(102)に向かって変位することが可能であるように、前記風力タービンタワー内に前記振り子構造体(101、208)を懸架する、懸架機構(103~111、206、207、306、307、308、309、406、407、408、409)と、
を備える、ステップと、
前記風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、及び/又は設置中に、衝撃ダンパーを設けるステップであって、前記衝撃ダンパーは、
前記チャンバーの前記外側境界部(102)及び前記振り子構造体(101、208)が前記衝撃ダンパーを介して衝突し得るように、前記振り子構造体(101、208)と前記チャンバーの前記外側境界部(102)との間に位置する1つ以上の緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)、
を備える、ステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記風力タービンタワーが、組立て、保管、輸送、及び/又は設置中ではなくなったときに、前記衝撃ダンパーを取り外すステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
振り子構造体(101、208)と、該振り子構造体(101、208)が配置されるチャンバーの外側境界部(102)との間に緩衝ユニット(113、114、115、200、300、400)を設け
、前記振り子構造体が少なくとも部分的に浸漬される摩擦媒体を配することによる、風力タービンタワーにおける衝撃ダンパーとしての同調質量ダンパーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワー制振装置を備える風力タービンタワーに関する。制振装置は、そのような風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、設置、及び/又は稼働中の渦励振を低減するために、風力タービンタワーに取り付けられる。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、風力タービン産業における渦励振の減衰は、現行の風力タービン発電機が次第に高さを増すにつれ、より重要になってきている。
【0003】
一般に、渦励振は、風にさらされる構造体の形状を変化させるか、又は風にさらされる構造体の振動特性を変化させることによって減衰させることができる。構造体の形状を変化させることは、例えば、スポイラーを構造体の外面に固定することを含むことができ、一方、構造体の振動特性を変化させることは、構造体の固有振動数を変化させるか、又は構造体に制振装置を追加することを含むことができる。制振装置は、構造体の自由端部、すなわち頂部付近に配置されることが通常である。
【0004】
概して、風力タービン発電機の稼働中の振動に対処することは、明らかに重要である。一方、特に、風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、設置、及び/又は稼働中の渦励振に対処することも重要である。なぜなら、対処が行われないと、タワーが制御不能な振動によって損傷するおそれがあり、タワーを支持体に固定するのにより頑強な構造体が必要となる場合があり、及び/又は、タワー内若しくはタワー付近で作業している人員の安全性が脅かされるおそれがあるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、風力タービン発電機の組立て、保管、輸送、及び/又は設置中、並びに風力タービンの組立て後、すなわち稼働中に、風力タービンタワーの制振をもたらすことができる、単純かつ頑丈なタワー制振装置を提供することであることが理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、第1の態様において、タワー制振装置を備える風力タービンタワーであって、タワー制振装置は、
同調質量ダンパーであって、
この風力タービンタワー内に懸架される振り子構造体と、
摩擦媒体を振り子構造体に接続する、外側境界部を含むチャンバーと、
振り子構造体が中立位置からチャンバーの外側境界部に向かって変位することが可能であるように、この風力タービンタワー内に振り子構造体を懸架する、懸架機構と、
を備える、同調質量ダンパーと、
衝撃ダンパーであって、
チャンバーの外側境界部及び振り子構造体がこの衝撃ダンパーを介して衝突し得るように、振り子構造体とチャンバーの外側境界部との間に位置する1つ以上の緩衝ユニット、
を備える、衝撃ダンパーと、
を備える、風力タービンタワーを提供することによって達成される。
【0007】
したがって、本発明の制振装置は、風力タービン発電機の稼働中に有効化されるように構成された同調質量ダンパーと、特に渦励振を低減するために、風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、及び/又は設置中に有効化されるように構成された衝撃ダンパーとを備える。同調アブソーバー又は免震ダンパーとしても知られる同調質量ダンパーは、機械的振動の振幅を低減するように構造体に取り付けられる装置である。同調質量ダンパーは、調和振動によって引き起こされる激しい動きを安定化させる。同調ダンパーは、比較的軽量なコンポーネントを備えるシステムの振動を低減し、最悪の場合の振動がそれほど強くならないようにする。同調質量ダンパーとして機能する場合、振り子の制振効果は、同調質量ダンパーに基づき、振動エネルギーを吸収するために振り子とチャンバーの外側境界部との間の機械的衝撃を伴わずにダンパーの振動のみに起因する。同調質量ダンパーが最適に機能するために、ダンパーは、構造体の固有振動数に慎重に調節すべきである。設置された風力タービン発電機の固有振動数は一定であり、当該技術において既知の標準的な方法によって求めることができる。その後、同調質量ダンパーを、この振動数に調節することができる。しかしながら、組立て、保管、輸送、及び設置中、タワーの固有振動数は、組立ての段階(すなわち、サイズ、重量、重量分布、及び空気力学的構造)、支持構造体の締結のタイプ、及び支持体の特性(例えば、横揺れする船なのか、モノパイル式又は地上の保管設備なのか)に応じて変化する。したがって、同調質量ダンパーの効率は、タワー内での安全な作業のために必要となるよりも低くなる場合があり、又は、締結の変更が必要となる場合があり、又は、同調質量ダンパーは、各移動後に調節が必要となる場合があるが、これは実際的ではない。
【0008】
一方、衝撃ダンパーは、振動エネルギーの吸収のために機械的衝撃に依拠し、それにより、渦励振が低減されるか又は更には排除される。衝撃の作用は、有効質量と、したがって、振り子構造体とチャンバーとの間の衝撃ダンパーを介した衝撃の間に変化するタワー構造体の固有振動数とに部分的又は完全に起因することができ、それにより、渦励振が打ち消される。衝撃ダンパーは、振り子構造体とチャンバーの外側境界部との間に配置されることによって、振り子構造体が(衝撃ダンパーを介して)チャンバー壁に当たる場合に、振り子構造体の運動エネルギーを吸収する。衝撃ダンパーは、風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、及び/又は設置中、設置後の風力タービン発電機の平常稼働中とは異なる固有振動数、異なる振動モード、及び/又は大きな振動振幅が存在し得る場合のみ「有効化」されることが好ましい。
【0009】
衝撃ダンパーに関して、「有効化」という用語は、衝撃ダンパーが減衰機能を発揮することが可能な制振装置の構成を指すことに留意されたい。減衰機能自体は、受動的及び完全に機械的な方法で実現することができ、ほとんどの実施形態ではそのように実現される。有効化される場合、衝撃ダンパーは、風力タービンタワーの特定の振動振幅により、振り子構造体が衝撃ダンパーを介してチャンバー壁に衝突することを引き起こすように、振り子構造体とチャンバー壁との間に配置される。無効化される場合、同量の風力タービン振動で、直接又は衝撃手段を介してそのような衝突を引き起こすことがない。
【0010】
衝撃ダンパーの無効化又は取外しは、例えば、衝撃ダンパーを取り外す若しくは配置変更すること、衝撃ダンパーの形状及び/又は寸法を変更すること、又は振り子構造体をチャンバー壁に対して回転させることによって実現することができる。
【0011】
本発明のタワー制振装置は、単純かつ頑丈な設計であるため有利である。さらに、衝撃ダンパーは、風力タービン発電機が完全に組み立てられると、取り外して別の風力タービンタワーに再使用することができることが有利である。したがって、好ましい実施形態において、衝撃ダンパーは、外側境界部と振り子構造体とが衝撃ダンパーを介して衝突するのを防ぐために、無効化されるように適合される。無効化は、例えば、少なくとも1つの緩衝ユニットを取り外す又は配置変更すること、緩衝ユニットのうちの少なくとも1つの形状及び/又は寸法を(例えば、収縮させることで)変更すること、又は振り子構造体をチャンバーの外側境界部に対して回転させることによって実現することができる。衝撃ダンパーの無効化/取外しを行わないことは、同調質量ダンパーの減衰特性に悪影響を与え得ることが観察されている。衝撃ダンパーをタワーの設置後に(完全に)取り外すことを意図しない場合、振り子構造体は、衝撃ユニットが依然として(部分的に)設置されている場合に、所望の減衰特性を有するように構成することができる。タワーの設置後のこの所望の減衰特性は、タワーの設置中の減衰特性とは異なることが好ましい。
【0012】
本明細書に使用される場合、「タワー」という用語は、タワーセクション及び部分的に組み立てられたタワー、並びにタワーを含む完全に組み立てられた風力タービン発電機も包含する。
【0013】
摩擦媒体は、同調質量ダンパーとして機能する要素の一部である。摩擦媒体の例として、チャンバーの底部と振り子との間の摩擦要素、すなわち、振り子とチャンバーの壁との間に配置される、磁気、機械、又は流体(液体等)に基づくダンパー又はアブソーバーがある。摩擦媒体は、チャンバーが、振り子構造体が少なくとも部分的に浸漬される外側境界部の壁部分間に延在する底部を有する場所において、チャンバー内に保持される制振液であることが最も好ましい。チャンバーは、摩擦媒体を振り子構造体に接続している。制振液の場合、これは、制振液を保持するチャンバーによって行われるため、振り子は、制振液内で前後に動くことができる。磁気、機械、若しくは流体に基づくダンパー又はアブソーバーの場合、チャンバーは、例えば、摩擦媒体の一端部がチャンバーの壁に接続され、摩擦媒体の別の端部が振り子に接続されることによって、摩擦媒体を振り子に接続することができる。
【0014】
1つの実施形態において、振り子構造体は、円筒形状の振り子本体を備えることができ、1つ以上の緩衝ユニットは、円筒形状の振り子本体の外面と、チャンバーの外側境界部の内面との間に配置することができる。チャンバーの外側境界部は、風力タービンタワー壁によって、又は主となる風力タービンタワー構造体に固定されるパネル若しくは壁によって形成することができる。代替的には、振り子構造体は、多角形とすることができる。
【0015】
更なる一実施形態において、1つ以上の緩衝ユニットは、振り子構造体に取外し可能に固定することができる。したがって、1つ以上の緩衝ユニットは、風力タービン発電機が完全に組み立てられると取り外すことができる。特に、1つ以上の緩衝ユニットは、振り子構造体の上側リムから取外し可能に懸架することができる。
【0016】
緩衝ユニットの数は、或る特定の要求を満たすように選ぶことができる。したがって、緩衝ユニットの数は、2よりも多く、例えば3よりも多く、例えば4よりも多く、例えば6よりも多く、例えば8よりも多くすることができる。さらに、緩衝ユニットは、振り子構造体の中心軸の周りに又は風力タービンタワーの中心軸の周りに均等に配置することができる。緩衝ユニット113、114、115、200、300、400の数は、最大で16、例えば最大で9とすることができる。
【0017】
各緩衝ユニットは、1つ以上の弾性フェンダーを備えることができ、この1つ以上の弾性フェンダーは、少なくともショアA50、例えばショアA60、例えばショアA70、例えばショアA80のデュロメータ硬さをそれぞれ有する。各フェンダーは、最大でショアA85、例えば最大でショアA80のデュロメータ硬さを有することができる。1つ以上の弾性フェンダーは、中実な構造体又は中空の構造体、例えば膨張可能な構造体として実現することができる。一実施形態において、各緩衝ユニットは、対向して配置される第1の弾性フェンダー及び第2の弾性フェンダーを備えることができ、第1の弾性フェンダーは振り子構造体に面し、第2の弾性フェンダーはチャンバーの外側境界部に面する。第1の弾性フェンダー及び第2の弾性フェンダーは、緩衝ユニットの共通の基部構造体に固定することができる。
【0018】
更なる一実施形態において、緩衝ユニットは、チャンバーの外側境界部に固定される又は外側境界部から懸架される膨張可能な構造体として実現することができる。そのような膨張可能な構造体の例は、限定はしないが、エアベローズ、ボール、及びタイヤを含むことができる。この実施形態において、緩衝ユニットは、常置であり、膨張させることで有効化し、収縮させることで無効化することができる。
【0019】
更に別の実施形態において、緩衝ユニットは、複数の内向きの突出部を形成する風力タワー壁に取り付けることができる。この実施形態では、同調質量ダンパーは、同調質量ダンパーが風力タワーの長手方向軸の周りに回転する際に、緩衝ユニットまでの距離を調整することが可能な形状を有して構成することができる。例えば、振り子は、正多角形又は不規則な多角形とすることができる。多角形の振り子の角が風力タワー壁に取り付けられた緩衝ユニットに整合する場合、距離は最小となり、したがって、緩衝ユニットは有効となる。振り子がタワーの長手方向軸の周りに回転する場合、及び多角形の振り子の角が緩衝ユニットと整合しなくなる場合、距離は増大し、緩衝ユニットは無効となる。
【0020】
振り子構造体が少なくとも部分的に浸漬される制振液を保持するチャンバーは、外側境界部を有することができ、外側境界部の壁部分間には底部が延在する。チャンバーの外側境界部は、風力タービンタワー壁の一部によって形成することができる。
【0021】
風力タービンタワー内に振り子構造体を懸架する懸架機構は、
振り子構造体を懸架する複数のワイヤと、
懸架された振り子構造体の固有振動数を調整するように構成された調節手段であって、調節手段は、上記複数のワイヤのそれぞれに対して、一端部が風力タービンタワーに固定され、他端部がワイヤに固定されたクランプを含み、クランプの固定は、クランプがワイヤの長手方向に沿って可動であるように構成される、調節手段と、
を備えることができる。
【0022】
懸架機構の単純な形態は、1つのみのワイヤと、ワイヤを風力タービンタワーに固定するクランプ等の手段とを備えることができる。
【0023】
本発明のタワー制振装置は、垂直風力タービンタワー内の可能な限り高い位置に設置することができる。通常、垂直風力タービンタワーの上部1/3以内にタワー制振装置を設置することで、タワー振動の効果的な減衰をもたらすことができる。
【0024】
第2の態様において、本発明は、風力タービンタワーのタワー振動を減衰させる方法であって、この方法は、
同調質量ダンパーを設けるステップであって、同調質量ダンパーは、
風力タービンタワー内に懸架される振り子構造体と、
外側境界部を備えるチャンバーであって、この外側境界部の下に延在する底部を有し、このチャンバーは、振り子構造体が少なくとも部分的に浸漬される制振液を保持する、チャンバーと、
振り子構造体が中立位置からチャンバーの外側境界部に向かって変位することが可能であるように、風力タービンタワー内に振り子構造体を懸架する、懸架機構と、
を備える、ステップと、
風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、及び/又は設置中に、衝撃ダンパーを設けるステップであって、衝撃ダンパーは、
チャンバーの外側境界部及び振り子構造体が衝撃ダンパーを介して衝突し得るように、振り子構造体とチャンバーの外側境界部との間に位置する1つ以上の緩衝ユニット、
を備える、ステップと、
を含む、方法に関する。
【0025】
取外し可能な衝撃ダンパーの場合、本発明の方法は、風力タービンタワーが組立て、保管、輸送、及び/又は設置中ではなくなったときに、衝撃ダンパーを取り外すステップを更に含むことができる。
【0026】
更なる一態様において、本発明は、振り子構造体101、208と、この振り子構造体101、208が配置されるチャンバーの外側境界部102との間に緩衝ユニット113、114、115、200、300、400を設けることによる、衝撃ダンパーとしての同調質量ダンパーの使用に関する。
【0027】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】タワー壁の変位を振り子構造体に伝達するために振り子構造体と風力タービンタワー壁との間に位置する緩衝ユニットの断面図である。
【
図6】緩衝ユニットの結果としての風力タワーの振動の低減を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、様々な変更形態及び代替形態が可能であるが、特定の実施形態を例として図面に示すとともに本明細書において詳細に記載する。しかしながら、本発明は、開示される特定の形態に限定されることは意図されていないことが理解されるものとする。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更形態、均等物及び代替形態を包含する。
【0030】
最も広い態様において、本発明は、同調質量ダンパーと、タワー構造体の変位を緩衝ユニットとタワー壁及び/又は同調質量ダンパーとの間の衝撃によって伝達するように構成された1つ以上の緩衝ユニットとを備えるタワー制振装置に関する。本発明の緩衝ユニットを備えるタワー制振装置は、特に、風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、設置、及び/又は稼働中の渦励振を減衰するのに好適である。低い風速でのタワー制振装置の全体応答は、同調質量ダンパーの挙動に従い、一方、より高い風速での全体応答は、共振振動数のシフトの結果としての同調質量ダンパーと衝撃ダンパーとの組合せの挙動に従う。高い風速において、タワー制振装置の全体応答は、組み合わされた質量体の規則的な1自由度(DOF)応答に従う。
【0031】
渦励振はナセルの設置前に最も顕著であることから、少なくとも、本発明のタワー制振装置の1つ以上の緩衝ユニットを、風力タービンタワーの組立て、保管、輸送、及び/又は設置中に、風力タービンタワーに一時的に設置して動作させることができる。その後、1つ以上の緩衝ユニットは、風力タービン発電機全体が組み立て終わったら取り外し、別のタワーに再使用することができる。同調質量ダンパーは、風力タービン発電機が組み立てられた後も動作を維持するが、緩衝ユニットは伴わない。なぜなら、ナセル及びローターが設置されると、風力タワーの振動数特性は変化するためである。
【0032】
本発明の一実施形態において、緩衝ユニットは、膨張可能な構造体(図示せず)から構成される。そのような膨張可能な構造体の例として、限定はしないが、エアベローズ、ボール、及びタイヤが挙げられる。この実施形態において、緩衝ユニットは、常置であり、膨張させることで有効化し、収縮させることで無効化することができる。緩衝構造体は、風力タワー壁又は同調質量ダンパーから懸架することができる。
【0033】
本発明の更なる一実施形態において、緩衝ユニットは、複数の突出部(図示せず)として風力タワー壁に取り付けられる。同調質量ダンパーは、同調質量ダンパーが風力タワーの長手方向軸の周りに回転する際に、緩衝ユニットまでの距離を調整することが可能な形状を有して構成される。例えば、振り子は、多角形とすることができる。多角形振り子の角が風力タワー壁に取り付けられた緩衝ユニットに整合する場合、距離は最小となり、したがって、緩衝ユニットは有効となる。振り子がタワーの長手方向軸の周りに回転する場合、距離は増大し、緩衝ユニットは無効となる。
【0034】
ここで、
図1を参照すると、本発明の一実施形態100の側面図が示されている。
図1は、3本のワイヤ103、104、105で懸架されている円筒形状の振り子構造体101を示している。振り子構造体の重量は、タワーの一般化質量に基づいて決定される。ワイヤ103、104、105の長さにより、制振装置の固有振動数を設定する。したがって、ワイヤ103、104、105の長さを変化させることで、円筒形状の振り子構造体の固有振動数を変更し、それにより、特定の要求に適合することができる。
【0035】
本願において、「ワイヤの長さ」という用語は、自由に揺動するワイヤの長さに関連し、すなわち、ワイヤがタワー構造体に取り付けられている懸架点又は中間固定点と、振り子構造体との間の距離に関連する。懸架点及び固定点に共通するのは、ワイヤが、少なくとも横方向変位に関して固定されることである。ワイヤは、振り子構造体の揺動を可能にする懸架点又は固定点の下で、角運動することができる。
【0036】
図1に示されている実施形態では、ワイヤ103、104、105の長さは、各ワイヤ固定機構106、107、108を上下に、すなわちワイヤ103、104、105の長手方向に沿って移動させることによって、変更することができる。振り子構造体の固有振動数は、ワイヤ103、104、105の長さを調整することによって調節され、風力タービンタワーの固有振動数よりも低くなるように調節される。3本のワイヤ103、104、105は、それぞれ、ブラケット109、110、111を介して振り子構造体に取り付けられる。
【0037】
図1に示されているように、振り子構造体101は、制振液112を収容するチャンバー又は槽内に少なくとも部分的に配置される。振り子構造体101は、振り子構造体の側壁の動きを減衰するために、この制振液112に少なくとも部分的に浸漬される。
【0038】
懸架された振り子構造体101と、ワイヤ固定機構106、107、108を備えるワイヤ103、104、105と、制振液112を収容するチャンバー又は槽とは、風力タービンタワーに常置され、したがって、風力タービンの平常稼働中の制振のためにも使用されるものとする。
【0039】
図1に示されているように、緩衝ユニット113、114、115(そのうちの3つが
図1に示されている)は、振り子構造体101に取外し可能に固定される。緩衝ユニット113、114、115は、
図1に見られるように、振り子構造体101と風力タービンタワー壁102との間に位置する。タワー制振装置は、このように、振り子構造体101の形態の同調質量ダンパーと、複数の緩衝ユニット113、114、115とを備える。緩衝ユニットの数は、或る特定の要件を満たすように選択することができる。また、緩衝ユニットの角度分布は、そのような要件を満たすように選ぶことができる。緩衝ユニットの可能な一実施態様が、
図2~
図5に関連して開示される。
【0040】
本発明のタワー制振装置は、以下の3つの動作モードで動作することができる。
1)非衝突動作モード(タワーにかかる力が小さい)
2)衝突制限動作モード(タワーにかかる力が中程度)
3)超過(Overwhelmed)動作モード(タワーにかかる力が強い)
【0041】
非衝突動作モードでは、風力タービンタワー壁102の変位は、緩衝ユニット113、114、115に係合して風力タービンタワーの規則的な2DOF応答をもたらすには小さすぎる。衝突制限動作モードでは、緩衝ユニット113、114、115は、風力タービンタワー壁102に瞬間的に係合し、風力タービンタワー応答を効果的に制限する。超過動作モードでは、振り子構造体101は、風力タービンタワーの変位に本質的に従い、風力タービンタワーの規則的な1DOF応答をもたらす。動作原理は、
図7に関連して更に詳細に開示する。
【0042】
本発明のタワー制振装置は、垂直風力タービンタワー内の可能な限り高い位置に設置するように適合される。通常、垂直風力タービンタワーの上部1/3以内にタワー制振装置を設置することで、タワー振動の効果的な減衰がもたらされる。
【0043】
ここで、
図2を参照すると、振り子構造体208に取外し可能に固定された緩衝ユニット200の一例が示されている。
図2に見られるように、緩衝ユニット200は、振り子構造体208と、チャンバーの外側境界部の一部を形成する風力タービンタワー壁209との間に配置される。緩衝ユニット200は、基部部材201を備え、基部部材201には、対向して配置される2つの弾性フェンダー202、203が固定される。基部部材201は、金属から作製することができ、一方、弾性フェンダー202、203は、デュロメータ硬さが30~100、又は少なくともショアA50、例えばショアA60、例えばショアA70、例えばショアA80のより軟らかい材料から作製される。各フェンダーは、最大でショアA85、例えば最大でショアA80のデュロメータ硬さを有することができる。ねじ付きロッド204が、適切な数のナットを用いて基部部材201に固定される。アイ構造体205がねじ付きロッド204に固定され、それにより、緩衝ユニット200を、振り子構造体208の高さに適合するために調整された長さを有するワイヤ206に懸架することができる。ブラケット207が、振り子構造体208に取外し可能に固定され、ワイヤ206は、シャックルを介してブラケット207に固定される。
【0044】
振り子が中立位置にある場合、弾性フェンダー202と風力タービンタワー壁209との間には、通常、数センチメートルの隙間210が与えられる。したがって、緩衝ユニット200を
図2に示されているように設置することにより、振り子構造体208の変位の可能性が著しく低減する。隙間210の大きさは、特定の要求に適合することができ、すなわち、風力タービンタワー壁209が弾性フェンダー202に衝突する振動レベルを調整することができる。
【0045】
風力タービンタワー壁209の変位が小さいとき、すなわち非衝突動作モードでは、タワー壁209は、緩衝ユニット200の弾性フェンダー202に係合しない。タワー壁209の変位が大きくなると、すなわち衝突制限動作モードでは、タワー壁209は、緩衝ユニット200の弾性フェンダー202に瞬間的に係合する。タワー壁209の変位が更に大きくなると、すなわち超過動作モードでは、振り子構造体208は、風力タービンタワー壁209の変位に本質的に従う。隙間210は、理想的には、組立て、保管、輸送、及び/又は設置中に超過動作モードになることを回避するような寸法にすべきである。上述したように、1つ以上の緩衝ユニット200は、風力タービン発電機全体が組み立て終わったら取り外し、別の風力タービンタワーに再使用することができる。
【0046】
概して、
図2に示されている緩衝ユニット200は、
図2に示されているものとは異なる方法で取外し可能に固定することができることに留意すべきである。例えば、緩衝ユニット200は、振り子構造体208に固定する代わりに、風力タービンタワー壁209に固定してもよい。
【0047】
図3において、緩衝ユニット300が3D斜視図で示されている。
図3に見られるように、緩衝ユニット300は、基部部材301と、基部部材301に固定された、対向して配置される2つの弾性フェンダー302、303(の組)とを備える。弾性フェンダー302は、風力タービンタワーに係合するように適合され、一方、弾性フェンダー303は、振り子構造体に係合するように適合される。ねじ付きロッド304は、一端部が基部部材301に固定され、他端部がアイ構造体305に固定される。緩衝ユニット300を各ブラケット308、309に懸架するために、長さが調整可能な2本のワイヤ306、307が設けられ、ブラケット308、309は、振り子構造体の上側リム(図示せず)に取外し可能に固定されるように適合される。上述したように、弾性フェンダー302、303は、少なくともショアA50、例えばショアA60、例えばショアA70、例えばショアA80のデュロメータ硬さを有する材料から作製することができる。各フェンダーは、最大でショアA85、例えば最大でショアA80のデュロメータ硬さを有することができる。
【0048】
図4は、緩衝ユニット400の側面斜視図を示している。上述したように、緩衝ユニット400は、基部部材401と、基部部材401に固定された、対向して配置される2つの弾性フェンダー402、403とを備える。弾性フェンダー403は、風力タービンタワーに係合するように適合され、一方、弾性フェンダー402は、振り子構造体に係合するように適合される。ねじ付きロッド404は、一端部が基部部材401に固定され、他端部がアイ構造体405に固定される。ここでも、緩衝ユニット400を各ブラケット408(一方は見えない)に懸架するために、2本の調整可能なワイヤ406(一方は見えない)が設けられ、ブラケット408は、ねじ409によって振り子構造体の上側リム(図示せず)に取外し可能に固定されるように適合される。ワイヤ406は、各シャックル407を介してブラケット408に固定される。
【0049】
図5のa及び
図5のbは、緩衝ユニットのより詳細な斜視図を示している。ここで、
図5のaに示されている正面斜視図を参照すると、2つの弾性フェンダー部分501、502が、ボルト/ナット507によって基部部材(図示せず)に固定されている。ここでも、ねじ付きロッド503が、ナット505、506によって基部部材(図示せず)に固定される。アイ構造体504が、ねじ付きロッド503に固定され、緩衝ユニットは、上記アイ構造体504を介して、調整可能なワイヤ(図示せず)に懸架することができるようになっている。
図5のbに示されている上面斜視図において、緩衝ユニットは、弾性フェンダーの対向する対509、510及び511、512を備え、弾性フェンダーの対向する対509、510及び511、512の全ては、貫通ボルトによって基部部材508に固定されている。緩衝ユニットを懸架するアイ構造体513も示されている。
【0050】
本発明のタワー制振装置の効果は、
図6において実証される。2つの加速度信号601、602の時間的展開が上のグラフに示されている。2つの加速度信号601、602は、渦振動を引き起こすことが可能な一定の風速にさらされる、風力タービンタワーに取り付けられた2つの加速度計に由来するものである。2つの加速度計の軸は僅かに傾斜しているため、2つの加速度信号601、602も僅かに異なる。渦励振を減衰させるために、懸架された振り子構造体及び4つの均等に分布した緩衝ユニットが、風力タービンタワーに配置される。
図6の上のグラフの2つの曲線601、602から見て取れるように、風力タービンタワーの加速度は、時間がおよそ446秒に達するまで増加している。矢印603で示すこの点において、緩衝ユニットは、風力タービンタワー壁に瞬間的に係合し、それにより、システムの全体応答が、規則的な同調質量ダンパーから、同調質量ダンパー及び衝撃ダンパーの双方を含む組合せ応答へと変化する。この応答の変化は、システムの固有振動数の変化又はシフトに由来する。
図6の上のグラフから、加速度、したがって風力タービンタワー頂部の変位は、緩衝ユニットが風力タービンタワーに係合した結果、消滅することがわかる。
【0051】
図6の下のグラフにおいて、測定された2つの振動数スペクトル604、605が示されている。振動数スペクトル604、605は、それぞれ、加速度信号601、602から導出される。2つの丸みを帯びた又は滑らかな応答ピーク606、607が、スペクトル604、605のそれぞれに表れている。ピーク606は、振り子構造体の調節された固有振動数に由来し、一方、ピーク607は、風力タービンタワーの固有振動数に由来する。ピークの丸みを帯びた又は滑らかな形状は、システムが、緩衝ユニットが風力タービンタワー壁に瞬間的に係合する衝突制限動作モードになることによってもたらされ、これにより、風力タービンタワー応答を効果的に低減する。
【0052】
図7は、本発明のタワー制振装置の根底にある原理を示している。上述したように、タワー制振装置は、同調質量ダンパー及び衝撃ダンパーを備えることが考慮され得る。非衝突動作モードにおいて、風力タービンタワー壁の変位は、衝撃ダンパーを有効化し、したがって衝撃ダンパーに係合して、風力タービンタワーの規則的な2DOF応答をもたらすには小さすぎる。振り子構造体及び風力タービンタワーの固有振動数においてタワー応答が顕著である、
図7のタワー応答曲線702を参照されたい。衝突制限動作モードにおいて、衝撃ダンパーは、風力タービンタワー壁に瞬間的に係合し、風力タービンタワー応答を効果的に減衰させる。振り子構造体及び風力タービンタワーの固有振動数におけるタワー応答が、減衰に起因してあまり顕著でない、
図7のタワー応答曲線703を参照されたい。超過動作モードにおいて、振り子構造体は、風力タービンタワーの変位に本質的に従い、風力タービンタワーの規則的な1DOF応答をもたらす。振り子構造体及び風力タービンタワーの結果として生じる/組み合わされた固有振動数においてタワー応答が非常に顕著である、
図7のタワー応答曲線704を参照されたい。したがって、超過モードは、衝撃ダンパーの良好な効果が低減されてしまうことから回避すべきであり、
図7の上図の最右の状況では、衝撃ダンパーは、タワーの振動に対して一切の影響をもたらさない。
【0053】
図7の上のグラフにおいて、タワー応答対力振幅が、非衝突モード、衝突制限モード、及び超過動作モードにおいて示されている。上の点線706は、超過動作モードの場合、すなわち、振り子構造体が風力タービンタワーの変位に本質的に従うシナリオにおける理論上の1DOFタワー応答を示している。下の点線707は、衝撃ダンパーが有効でない場合の理論上の2DOFタワー応答を示している。タワー応答曲線707の傾きは、振り子構造体の質量及び振り子構造体を懸架するワイヤの長さによって得られる。
【0054】
実線701は、本発明のタワー制振装置の応答を示している。見て取れるように、実線701は、非衝突状態での2DOFタワー応答707に従う。衝突制限状態では、タワー応答は、2DOFタワー応答707に比べて著しく減衰されているが、超過状態では、タワー応答は跳ね上がり、予想される1DOFタワー応答706に近づく。したがって、衝突制限状態では、本発明に係る衝撃ダンパーは、力振幅が振り子構造体とチャンバーの外側境界部との衝突をもたらす状態まで増大する場合、はるかに高い力振幅にもかかわらず、衝撃ダンパーによって、タワー応答を非衝突状態のレベル程度に保つことが可能であることが観察される。実際、このことは、例えば、本来であれば作業が延期されるような第2の状態の力振幅をもたらす風速でのタワーの組立て、保管、輸送、及び設置中、タワーにおけるおよびタワーに対する作業が可能であることを意味する。
【0055】
結論として、本発明のタワー制振装置は、常置の同調質量ダンパーと、有効化されると、渦によって生じるタワー振動を著しく低減する1つ以上の取外し可能な緩衝ユニットとを組み合わせることによって、タワーの渦励振を効果的に減衰する。常置の同調質量ダンパーは、組み立てられた風力タービン発電機の制振のために意図されるが、1つ以上の緩衝ユニットは、取り外され、別の風力タービンタワーに再使用される。
【0056】
加えて、試験により、衝突制限動作モードにおけるタワーによる振動数応答の変化により、本来であれば力振幅及びタワー応答を更に増大させる渦負荷の影響が減少することが示された。
【0057】
本発明は、風力タービンタワーにおける衝撃ダンパーとしての同調質量ダンパーの使用にも関する。同調質量ダンパーは、振り子を備え、タワーの振動の影響下での振り子の運動を摩擦媒体によって減衰させることによって動作する。通常動作時、この運動は、同調質量ダンパーを調節可能であるタワーの固有振動数を変化させることから、使用中に防止機構が設けられるチャンバーの外側境界部に対して振り子が衝撃を与えることを伴わない。驚くべきことに、同調質量ダンパーの通常動作は、振り子構造体とチャンバーの外側境界部との間に緩衝ユニットを提供し、振動により、緩衝ユニットを介して振り子とチャンバーの外側境界部との間に時折衝撃をもたらすようにし、それにより、タワーの渦励振を低減させることで、衝撃ダンパーへと変化した。