(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】金属ナノワイヤアレイの高伝導性接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/00 20060101AFI20230203BHJP
【FI】
B23K20/00 310F
(21)【出願番号】P 2021017397
(22)【出願日】2021-02-05
(62)【分割の表示】P 2017545222の分割
【原出願日】2016-02-04
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】517293845
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティス オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】スタコビチ,ジョン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,エドワード,エム.
(72)【発明者】
【氏名】タイス,エッサイ,ビー
(72)【発明者】
【氏名】ペン,シャオ-フ
(72)【発明者】
【氏名】バラコ,マイケル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】グッドサン,ケネス,イー.
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518946(JP,A)
【文献】特表2009-539261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0081989(US,A1)
【文献】特開2014-209512(JP,A)
【文献】T M Whitney,Fabrication and Magnetic Properties of Arrays of Metallic Nanowires,Science,1993年09月03日,vol.261,no.5126,1316-1319
【文献】XE JU ET,Silver nanowire array-polymer composite as thermal interface material,JORNAL OF APPILIED PHYSICS,AMERICAN INSTITUTE OF PHYSICS,US,2009年12月22日,vol.106,no.12,124310-1~124310-7
【文献】HYEONG-GI LEE,Vertically Aligned Nickel Nanowire/Epoxy Composite for Electrical and Thermal Conducting Material,IEEE,2012年05月29日,62ND,2087-2090
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノワイヤ(MNW)アレイを隣接する表面に取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法であって、
前記MNWからテンプレート膜を除去する工程、
接合材を用いて前記MNWを浸透させる工程、
前記MNWアレイの一方の端面が隣接する前記隣接する表面に前記接合材を配置する工程、
前記接合材が接合可能となっている間に前記隣接する表面を前記MNWの上面に接触させる工程、
前記MNWと前記隣接する表面との間に前記接合材が固相接合を形成するのを可能にする工程、及び
前記配置工程の後でかつ前記接触工程の前に実行される追加の工程であって、前記隣接する表面への前記接合材を湿らせる工程
を備え、
前記浸透工程は、前記MNWアレイの間隙容積へ前記接合材を吸い込むことをさらに備える、方法。
【請求項2】
前記浸透工程は、前記接合材が軟化及び溶融のうちの一方又は両方となるよう前記接合材を加熱する工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属ナノワイヤ(MNW)アレイを隣接する表面に取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法であって、
前記MNWからテンプレート膜を除去する工程、
接合材を用いて前記MNWを浸透させる工程、
前記MNWアレイの一方の端面が隣接する前記隣接する表面に前記接合材を配置する工程、
前記接合材が接合可能となっている間に前記隣接する表面を前記MNWの上面に接触させる工程、及び
前記MNWと前記隣接する表面との間に前記接合材が固相接合を形成するのを可能にする工程を備え、
前記浸透工程は、前記MNWアレイの間隙容積へ前記接合材を吸い込むことをさらに備え、
前記浸透工程は、接合材を生成するのに複合材料を化学処理する工程を備える、方法。
【請求項4】
前記接触工程は、前記接合材が軟化及び溶融のうちの一方又は両方となっている間に前記隣接する表面を前記上面に接触させる工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接合材は、可融金属及び合金のうちの一方又は両方から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接合材は、スズ及び金のうちの一方又は両方から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触工程は、前記接合材及び前記MNWアレイのうちの一方又は両方を前記隣接する表面に対して圧縮する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記吸い込み工程は、毛管力によりなされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2015年2月26日出願の発明の名称「Vertically Aligned Metal Nanowire Arrays and Composites for Thermal Management Applications」の米国仮特許出願第62/121010号の優先権を主張し、その開示は参照によりここに取り込まれる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、当出願と同一の譲渡人に譲渡された以下の出願の主題に関連する主題を含む。これにより、以下に記載する米国特許出願は、その全体で参照によりここに取り込まれる。
Barako、Starkovich、Silverman、Tice、Goodson、Coyan、Pengらによる発明の名称「THERMAL INTERFACE MATERIALS USING METAL NANOWIRE ARRAYS AND SACRIFICIAL TEMPLATES」、 日出願の米国特許出願第 号
【発明の概要】
【0003】
隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法は、MNWからテンプレート膜を除去する工程、接合材でMNWを浸透させる工程、隣接面に接合材を配置する工程、接合材が接合可能となっている間に隣接面をMNWの上面に接触させる工程、及び接合材がMNWと隣接面との間に固相接合を形成するのを可能にする工程を含む。
【0004】
隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)を取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法は、所望の接合プロセスに基づいて接合材を選択する工程、及びMNWが接続されるテンプレート膜からMNWを除去することなくMNWの先端に接合材を堆積させる工程を含む。
【0005】
金属ナノワイヤ(MNW)アレイは、テンプレート膜に堆積したシード層から上方へ成長する複数のナノワイヤを備える垂直配向金属ナノワイヤ(MNW)アレイを含み、テンプレート膜はMNWの成長後に除去される。
【0006】
金属ナノワイヤ(MNW)アレイは、MNWの先端で、熱伝導的でかつ機械的に強固な接合材のキノコ状のキャップによって、隣接面に取り付けられる金属ナノワイヤ(MNW)アレイを含む。
【0007】
金属ナノワイヤ(MNW)アレイは、MNWの先端で、テンプレート膜を覆う接合材の連続的なオーバーめっき層に取り付けられる金属ナノワイヤ(MNW)アレイを含む。
【0008】
添付の図面は、種々の代表的な実施形態をより充分に説明するのに使用され、ここに開示される代表的な実施形態及びそれら内在的効果を当業者がより理解するよう使用可能な視覚的表示を提供する。これらの図面において、同じ符号は対応する要素を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A~1Cは、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法を示す1組の3つの図である。
【
図2】
図2は、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法を示す図である。
【
図3】
図3は、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は多くの異なる実施形態で実施可能であるが、本願の開示が本発明の原理の例示として考慮されるべきであり、図示及び説明される特定の実施形態に本発明を限定するものではないという理解の下で、1以上の特定の実施形態を図面に示し、これについて以下に詳細に説明する。
【0011】
熱伝導的でかつ機械的に強固な接合手順が、隣接する2つの表面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるのに提供される。
【0012】
薄い金属接合層が、MNWの機械的特性を損なうことなく、個々のMNWを隣接面に固定するのに使用され得る。例えば、金属接合層の厚さは、MNWアレイの長さ及びMNWアレイの高さのうちの1つ以上の約20%未満である。
【0013】
発明の実施形態によると、金属接合されたMNWは、接合材でMNWアレイの間隙容積を浸透させ、取付け方法として隣接面への接合材の接着力を利用することにより実施され得る。
【0014】
あるいは、各MNWの先端は、アレイにおいてMNWの全てを並列に接合するプロセスを使用して隣接面に金属接合されてもよい。例えば、MNWが膜中に存在する間に、後段のMNW成長の電着工程は、MNWの先端に、接合金属又は接合合金材のキノコ状のキャップを堆積させるよう使用され得る。接合キャップは、可融金属及びはんだ、ろう材、又は拡散接合金属に類似した合金のうちの1つ以上を含み得る。MNWの上部には、追加の接合層が加えられる。
【0015】
MNWが実質的に膜の充分な厚さまで延在するほど成長していない場合、その後、接合材がMNWの先端に堆積し、複合セグメント化したMNWを形成し得る。セグメント化したMNWは大部分が導電性の材料から構成されるが、MNWの全長の20%未満でMNWの先端に位置する短い部分のみ、接合材から構成される。接合層を少し厚くしたい場合、接合材の連続的なオーバーめっき層が膜及びMNWアレイのうちの一方又は両方の表面を実質的に覆うまで、接合材の電着を継続すればよい。例えば、導電性の材料は、銅及び銀のうちの一方又は両方から構成される。
【0016】
接合材は、使用される所望の接合プロセスに基づいて選択される。例えば、溶融し、その溶融した接合層を隣接面に接着するよう加熱が適用される相変化接合には、共晶金属及びはんだのうちの一方又は両方を使用すればよい。あるいは、接合材は、スズ及び金のうちの一方又は両方からなり、熱圧着接合を用いて接合されてもよい。あるいは、接合材は、ポリマー材から構成される。金属接合の他のタイプは、接合材をMNWの先端で隣接材に取り付けるのにも使用され得るろう付け及び溶接を含む。
【0017】
図1A~1Cは、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法を示す1組の3つの図である。凡例は、種々の構成要素を示す。
【0018】
図1Aにおいて、MNWの堆積及び成長後、MNWの生成に使用したテンプレート膜は除去される。
【0019】
その後、
図1Bに示すように、接合可能材を形成する、可融金属、合金及びポリマー樹脂のうちの1つまたはそれ以上が、MNWアレイに浸透する。例えば、接合可能材は、溶融材料から構成される。例えば、接合可能材は、毛管力によってMNWアレイの間隙容積へ吸い込まれる。その結果、接合材は、MNWの隣接面上に配置される。
【0020】
図1Cにおいて、接合材が接合可能となっている間、隣接面はMNWの上面に接触する。例えば、接合可能材は溶融材料から構成される。接合材は、MNWと隣接面との間に固相接合を形成するのを可能にする。このプロセスは、隣接面に対して接合材及びMNWアレイのうちの一方又は両方を圧縮する。
【0021】
隣接面への接合材を湿らせる追加の工程(不図示)が実行されてもよい。
【0022】
図2は、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法を示す図である。MNWアレイの先端は、隣接面に接合される。
【0023】
工程210において、MNWアレイが合成される。MNWアレイは、工程215で示すようなMNWの長さが膜の厚さより短い部分充填された状態、又は工程220で示すようなMNWの先端が膜の上面と面一となるよう膜の上部まで充填された状態のいずれかとなるように成長させられる。いずれの場合でも、膜は、MNWの周囲の適所に残されている。
【0024】
工程225において、接合層が、MNWの先端に堆積する。この接合層は、3つの異なる形態のうちの1つを取る。工程230で示すように、MNWアレイが部分充填される場合、少量の接合材が個々のMNWの先端に直接堆積し、接合材の短いMNWセグメントを形成し得る。
【0025】
工程235で示すように、MNWアレイが膜の厚さまで充填されている場合、少量の接合材が個々のMNWの先端に堆積し、個々のMNW上に接合材の小さなキノコ状のキャップを形成し得る。
【0026】
工程240で示すように、MNWアレイが膜の厚さまで充填されている場合、大量の接合材がアレイ及び膜の表面に堆積し、接合材の連続膜を形成し得る。
【0027】
工程250において、MNWは接合され、テンプレート膜は除去される。
【0028】
工程255において、テンプレート膜は以前に部分充填されたMNWアレイから除去され、そして工程260において、MNWアレイは隣接基板に接合される。
【0029】
工程265において、接合層キャップ又は接合層オーバーめっきを有する実施形態の場合、MNWアレイは、まず隣接基板に接合される。金属接合の最も一般的なタイプは、接合材がはんだ及び共晶のうちの一方又は両方を含み、接合が加熱及び選択的な圧縮の下で実行される、はんだ/共晶接合、並びに接合材がスズ及び金のうちの一方又は両方を含み、接合が加熱及び圧縮下で実行される熱圧着接合である。
【0030】
工程270において、テンプレート膜は、MNWアレイから除去される。
図3は、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法のフローチャートである。
【0031】
工程310において、テンプレート膜は、金属ナノワイヤ(MNW)アレイから除去される。その後ブロック310は、制御をブロック320に移行する。
【0032】
工程320において、接合材は、MNWの隣接面上に配置される。その後ブロック320は、制御をブロック330に移行する。
【0033】
工程330において、接合材でMNWを浸透させる。例えば、浸透工程は、接合材が軟化及び溶融のうちの一方又は両方になるよう接合材を加熱する工程を備える。例えば、浸透工程は、接合材を生成するのに複合材料を化学処理する工程を備える。その後ブロック330は、制御をブロック340に移行する。
【0034】
工程340において、接合材が接合可能となっている間、MNWの隣接面はMNWの上面に接触している。その後ブロック340は、制御をブロック350に移行する。
【0035】
工程350において、接合材は、MNWと隣接面との間に固相接合を形成するのを可能にする。その後ブロック350は、このプロセスを終了させる。
【0036】
図4は、隣接面に金属ナノワイヤ(MNW)アレイを取り付けるための熱伝導的でかつ機械的に強固な接合方法のフローチャートである。
【0037】
工程410において、接合材は、所望の接合プロセスに基づいて選択される。その後ブロック410は、制御をブロック420に移行する。
【0038】
工程420において、テンプレート膜から金属ナノワイヤ(MNW)アレイを除去することなく、接合材がMNWの先端に堆積する。その後ブロック420は、このプロセスを終了させる。
【0039】
本発明の効果は、界面の外側での高い熱伝導性と、2つの構成要素間の凝集接合の形成を含む。本発明の実施形態は、MNW面と隣接面との間の熱抵抗を最小化し、温度勾配及び熱循環の下で保全性を維持する長寿命の接着を提供する。可融金属のMNWは、機械的負荷が比較的低い用途において、又は装置の温度上昇の最小化が温度設計の優先事項である用途のため(若しくは同等に高熱流束装置のため)に使用される。例えば、機械的負荷は、約20メガパスカル(20MPa)未満である。
【0040】
可融金属は、接合の間に相変化を受け、隣接面への直接的な接着を提供することができる。しかしながら、接合金属が硬く、熱膨張の係数の不整合によって界面が故障し得るため、結果として得られるMNWは比較的厚くなければならない。垂直配向されたMNWでは、MNWは高い熱伝導率(20ワット/メートル-ケルビン[W/m-K]を超える)及び機械的適合性を共に提供する。例えば、機械的適合性は、約10メガパスカル(MPa)と約100MPaとの間である。例えば、機械的適合性は、約10MPaと1,000MPaとの間である。MNW自体は、機械的な柔軟性を提供する。接合は、主に表面とMNWアレイとの間で熱を伝達し、界面の機械的保全性を維持するよう作用する。
【0041】
例示の構成における所定の構成要素を用いて上記代表的実施形態を説明してきたが、当業者であれば、他の代表的実施形態が異なる構成及び/又は異なる構成要素を用いて実施され得ることを理解するはずである。例えば、当業者であれば、計画対象期間は発明の範囲内のものとなりつつも多数の態様で適合され得ることを理解するはずである。
【0042】
ここに詳細に記載された代表的実施形態及び開示事項は、例示及び説明のために提示されたものであり、限定のためではない。当業者であれば、発明の範囲内のものとなる均等の実施形態となる種々の変形が、記載した実施形態の形式及び詳細においてなされ得ることを理解するはずである。したがって、上述の事項は説明として解釈されるものであり、限定的意味で解釈されるべきではない。