(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】LDMOS及び半導体装置、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230203BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230203BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230203BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230203BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
H01L29/78 301D
H01L29/78 301Q
H01L27/088 B
H01L27/088 331C
H01L21/306 B
(21)【出願番号】P 2021056671
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】202011136147.5
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519009105
【氏名又は名称】合肥晶合集成電路股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】大田 裕之
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-129654(JP,A)
【文献】特表2006-514425(JP,A)
【文献】特開2007-059710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0048144(US,A1)
【文献】米国特許第05466616(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108962991(CN,A)
【文献】特開2005-026664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板に対して形成されたソース部と、
前記シリコン基板に対して形成されたドレイン部と、
前記シリコン基板に対して形成されたゲート部と、
前記ソース部と前記ドレイン部の間において、前記ドレイン部に隣接して設けられており、前記ソース部に近い側壁の
全域の面方位が(111)面であるSTI部と、
を備えるLDMOS。
【請求項2】
前記STI部における前記ドレイン部に近い側壁の面方位が(111)面である請求項1に記載のLDMOS。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のLDMOSと、
前記LDMOSが形成されたシリコン基板に混載された回路部と、
を備え、
前記回路部に形成されるSTIは、(111)面を有さない半導体装置。
【請求項4】
前記LDMOSに形成される前記STI部は、1層のシリコン酸化膜により形成され、
前記回路部に形成される前記STIは、複数層のシリコン酸化膜により形成される請求項
3に記載の半導体装置。
【請求項5】
シリコン基板の表面であってLDMOSを形成するLDMOS領域の所定領域に対してウェットエッチングを行うことにより、所定の深さで、側壁の
全域の面方位が(111)面となるトレンチを形成するウェットエッチング工程と、
前記ウェットエッチング工程で形成した前記トレンチ
に対してドライエッチングを行なわずに、前記トレンチをシリコン酸化膜で埋めるシリコン酸化膜形成工程と、
前記シリコン基板の表面の余分なシリコン酸化膜を除去して平坦化し、前記トレンチにおいてSTIを形成する平坦化工程と、
前記STIに隣接してドレイン部を形成するとともに、前記ドレイン部に対して前記STIの反対側にソース部を形成するドレイン-ソース形成工程と、
前記シリコン基板の表面にゲート部を形成するゲート形成工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記
トレンチの前記側壁は、強アルカリ性溶液を用いたウェットエッチングにより形成される請求項
5に記載の
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記シリコン基板の表面であって、前記LDMOS領域以外の回路形成領域における所定領域に対してドライエッチングを行うことにより、所定の深さのトレンチを形成するドライエッチング工程を有する請求項
5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ドライエッチング工程で形成したトレンチにシリコン酸化膜を堆積させるシリコン酸化膜堆積工程と、
前記シリコン酸化膜堆積工程の後において、前記回路形成領域にレジストパターンを形成するレジスト形成工程と、
を有し、
前記ウェットエッチング工程は前記レジスト形成工程の後に行われ、
前記シリコン酸化膜形成工程では、前記ウェットエッチング工程で形成したトレンチ及び前記ドライエッチング工程で形成されシリコン酸化膜が堆積されたトレンチの両方を、シリコン酸化膜で埋める請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LDMOS及び半導体装置、並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高耐圧用途のために、LDMOS(横方向拡散MOS)が用いられる場合がある(例えば特許文献1)。LDMOSでは、ソースとドレインの間にSTIが設けられるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、STIにおけるソース側のコーナーにおいて電流密度が高くなり、衝突電離によりホットキャリアが発生する場合がある。ホットキャリアが発生するとMOSの性能劣化を生じさせる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ホットキャリアの発生を抑制することができるLDMOS及び半導体装置、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、シリコン基板に対して形成されたソース部と、前記シリコン基板に対して形成されたドレイン部と、前記シリコン基板に対して形成されたゲート部と、前記ソース部と前記ドレイン部の間において、前記ドレイン部に隣接して設けられており、前記ソース部に近い側壁の全域の面方位が(111)面であるSTI部と、を備えるLDMOSである。
【0007】
上記のような構成によれば、STI部が、ソース部とドレイン部の間であって、ドレイン部に隣接して設けられる。そして、STI部は、ソース部に近い側壁の面方位が(111)面となっている。側壁の面方位が(111)面となることによって、例えば、トレンチの底面(例えば、シリコン基板表面と平行)と側壁との角度は約55°程度となり、ソース部とドレイン部の間のキャリアパスに対して側壁の面が傾斜される。このため、衝突電離を抑制して、ホットキャリアの発生を抑えることができる。これによって、LDMOSの性能劣化が抑制される。
【0008】
上記LDMOSにおいて、前記STI部における前記ドレイン部に近い側壁の面方位が(111)面であることとしてもよい。
【0009】
上記のような構成によれば、STI部におけるドレイン部に近い側壁の面方位も(111)面とするため、ソース部に近い側壁と共に同工程で形成できる。
【0010】
本発明の第2態様は、上記のLDMOSと、前記LDMOSが形成されたシリコン基板に混載された回路部と、を備え、前記回路部に形成されるSTIは、(111)面を有さない半導体装置である。
【0011】
上記のような構成によれば、LDMOSの部分だけSTI部の側壁が(111)面とされ、混載された回路部の部分では、STIは(111)面を有さないため、例えば、回路部のSTIはドライエッチングを用いて形成することができ、回路素子の集積度を向上させることができる。
【0012】
上記半導体装置において、前記LDMOSに形成される前記STI部は、1層のシリコン酸化膜により形成され、前記回路部に形成される前記STIは、複数層のシリコン酸化膜により形成されることとしてもよい。
【0013】
上記のような構成によれば、回路部に形成されるSTIは複数層のシリコン酸化膜で形成されることで、側壁がシリコン基板表面に対してより垂直に近い場合であっても、効果的にトレンチをシリコン酸化膜で埋め込むことが可能となる。
【0014】
本発明の第3態様は、シリコン基板の表面であってLDMOSを形成するLDMOS領域の所定領域に対してウェットエッチングを行うことにより、所定の深さで、側壁の全域の面方位が(111)面となるトレンチを形成するウェットエッチング工程と、前記ウェットエッチング工程で形成した前記トレンチに対してドライエッチングを行なわずに、前記トレンチをシリコン酸化膜で埋めるシリコン酸化膜形成工程と、前記シリコン基板の表面の余分なシリコン酸化膜を除去して平坦化し、前記トレンチにおいてSTIを形成する平坦化工程と、前記STIに隣接してドレイン部を形成するとともに、前記ドレイン部に対して前記STIの反対側にソース部を形成するドレイン-ソース形成工程と、前記シリコン基板の表面にゲート部を形成するゲート形成工程と、を有する半導体装置の製造方法である。
【0015】
上記のような構成によれば、LDMOSのSTIは、側壁の面方位が(111)面となっている。側壁の面方位が(111)面となることによって、例えば、トレンチの底面(例えば、シリコン基板表面と平行)と側壁との角度は約55°程度となり、ソース部とドレイン部の間のキャリアパスに対して側壁の面が傾斜される。このため、衝突電離を抑制して、ホットキャリアの発生を抑えることができる。これによって、LDMOSの性能劣化が抑制される。
【0016】
上記半導体装置の製造方において、前記トレンチの前記側壁は、強アルカリ性溶液を用いたウェットエッチングにより形成されることとしてもよい。
【0017】
上記のような構成によれば、強アルカリ性溶液を用いたウェットエッチングを行うことによって、STI部の側壁を(111)面とすることができる。例えば、ドライエッチングだと側壁を(111)面とすることはできない。
【0018】
上記半導体装置の製造方法において、前記シリコン基板の表面であって、前記LDMOS領域以外の回路形成領域における所定領域に対してドライエッチングを行うことにより、所定の深さのトレンチを形成するドライエッチング工程を有することとしてもよい。
【0019】
上記のような構成によれば、回路形成領域ではドライエッチングを用いることにより、回路形成領域における集積度を向上させることができる。
【0020】
上記半導体装置の製造方法において、前記ドライエッチング工程で形成したトレンチにシリコン酸化膜を堆積させるシリコン酸化膜堆積工程と、前記シリコン酸化膜堆積工程の後において、前記回路形成領域にレジストパターンを形成するレジスト形成工程と、を有し、前記ウェットエッチング工程は前記レジスト形成工程の後に行われ、前記シリコン酸化膜形成工程では、前記ウェットエッチング工程で形成したトレンチ及び前記ドライエッチング工程で形成されシリコン酸化膜が堆積されたトレンチの両方を、シリコン酸化膜で埋めることとしてもよい。
【0021】
上記のような構成によれば、回路形成領域に形成されるSTIは複数層のシリコン酸化膜で形成されることとなるため、ドライエッチングにより、側壁がシリコン基板表面に対してより垂直に近い場合であっても、効果的にトレンチをシリコン酸化膜で埋め込むことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ホットキャリアの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るLDMOSの断面図の一例である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るLDMOSの断面図において角度の例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1工程を示す図の一例である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2工程を示す図の一例である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第3工程を示す図の一例である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第4工程を示す図の一例である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第5工程を示す図の一例である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第6工程を示す図の一例である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第7工程を示す図の一例である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の第8工程を示す図の一例である。
【
図11】参考例に係るLDMOSの断面図の一例である。
【
図12】参考例に係るLDMOSの衝突電離の分布状態の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るLDMOS及び半導体装置、並びにその製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、LDMOS1の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るLDMOS(STI-LDMOS)1は、P型基板(P-sub)と、N型の埋め込み層(NBL:N-Buried Layer)と、N型のエピタキシャル層(n-epi)と、ドレイン部Dと、ソース部Sと、ゲート部Gと、STI部5とを備えている。エピタキシャル層についてはウェル層(N-well)としてもよい。
図1では、SIの領域がシリコン基板となっており、SFがシリコン基板の表面となる。なお、シリコン基板の表面は、面方位が(100)面とする。すなわち、シリコンウェハとして(100)基板が用いられる。例えばウェハ基板にはノッチと呼ばれる目印がついており、通常、基板ではノッチ方向が[011]方向(結晶方位。面に対する法線)となる。なお、45度回転基板の場合には(100)基板でノッチ方向が[001]方向となる。シリコン基板の表面に対して、ゲート部Gやメタル層等が積層されるため、
図1に示すように積層される方向を積層方向とする。
図1のLDMOS1の構成は、一例であり、ソース部Sとドレイン部Dの間にSTI部5が設けられるLDMOSであれば、他の構成としてもよい。
【0025】
図1に示すように、P型基板に対して積層方向上側にNBLが形成される。そして、NBLに対して積層方向上側にN型のエピタキシャル層が形成される。N型のエピタキシャル層は、シリコン基板の表面に対して不純物がドープされることで形成される。
【0026】
ドレイン部Dは、
図1に示すように、シリコン基板の表面に対して形成される。ドレイン部Dは、LDMOS1のドレインとして予め設定された領域に対して不純物がドープされることによって形成される。例えば、N型の不純物がドープされることで、N型(n+)のドレイン部Dが形成される。
【0027】
ドレイン部Dに対して、集積方向下側には、HV-nwell(ウェル領域)が形成される。HV-nwellと後述するSTI部5とは、ドレイン部Dを囲うように形成される。HV-nwellに対して集積方向下側には、n-drift(ドリフト領域)が形成される。n-driftは、HV-nwellとSTI部5とを囲うように形成される。換言すると、N型のエピタキシャル層に対して、n-driftと、HV-nwellと、ドレイン部Dとが積層されるように形成される。
【0028】
そして、
図1に示すようにドレイン部Dより端子が引き出され、ドレイン端子となる。
【0029】
ソース部Sは、
図1に示すように、シリコン基板の表面に対して形成される。ソース部Sは、LDMOS1のソースとして予め設定された領域に対して不純物がドープされることによって形成される。例えば、N型の不純物がドープされることで、N型(n+)のソース部Sが形成される。また、基板表面においてソース部Sに隣接するようにピックアップ(p+)PUが形成される。
【0030】
ソース部Sに対して、集積方向下側には、p-body(ボディ領域)が形成される。p-bodyは、ソース部SとピックアップPUとを囲うように形成される。換言すると、N型のエピタキシャル層に対して、p-bodyと、ソース部Sとが積層されるように形成される。
【0031】
STI部5は、シリコン基板の表面に対して、ソース部Sとドレイン部Dの間に形成される。そして、STI部5は、ドレイン部Dに隣接して設けられており、ソース部Sとは所定距離離れて形成される。すなわち、STI部5とソース部Sとの間には、N型のエピタキシャル層が形成されている。
【0032】
STI部5は、例えばCVD法によって、トレンチ(溝)TR1にシリコン酸化膜の埋め込みがされて形成される。すなわち、STI部5は、底面B(基板表面と略平行)と側壁とが形成されており、側壁(側面)は、
図1に示すように、ドレイン部Dに近い側壁WDと、ソース部Sに近い側壁WSとを含んでいる。換言すると、側壁WDと、側壁WSとは、ドレイン部Dとソース部Sとの間のキャリアパスに直交するような面となっている。
【0033】
本実施形態において、STI部5におけるソース部Sに近い側壁WSの面方位(面指数、ミラー指数)は(111)面となっている。側壁WSが(111)面(結晶方位)の傾斜面となることによって、STI部5における底面Bと平行な面と側壁WSとのなす角は、
図2に示すように、55°(例えば55°±1°)となる。すなわち、キャリアパスに対して、側壁WSがより傾斜するようにSTI部5が形成される。このため、底面Bと側壁WSとがなすコーナーC1の角がより無くなる。これによって、コーナーC1における衝突電離が抑制されホットキャリアの発生が少なくなる。なお、45度回転基板の場合はSTI部5における底面Bと平行な面と側壁WSとのなす角は、45°(例えば45°±1°)となる。
【0034】
STI部5は、後述するように強アルカリ性溶液を用いたウェットエッチングにより形成される。強アルカリ性溶液とは、例えば、pHが12以上(12以上14以下)の溶液である。一例としては、TMAH 1wt%でpHは12.9である。ウェットエッチングを行うことにより、シリコンの物性的にトレンチTR1の側壁WSが(111)面となる。すなわち、ウェットエッチングによりSTI部5のトレンチTR1を形成することにより、側壁WSを(111)面とすることができる。一方で、ドライエッチングによりトレンチを形成した場合には、側壁の傾斜が安定せず(111)面とはならない。
【0035】
なお、STI部5における側壁WDについても側壁WSと同工程で形成されるため、(111)面となっている。
【0036】
そして、
図1に示すようにソース部Sより端子が引き出され、ソース端子となる。ソース端子は、ピックアップPUとも接続され接地される。
【0037】
ゲート部Gは、
図1に示すように、シリコン基板の表面に対して形成される。ゲート部Gは、シリコン基板に対して、ゲート酸化膜にポリシリコンが積層されて形成される。
図1に示すように、ゲート部Gは、積層方向から見たときに、STI部5の一部と重なっており、STI部5と距離を空けて形成されているソース部Sの一部とも重なっている。
【0038】
このようにして、ゲート部G、ドレイン部D、及びソース部Sの各端子と、STI部5を含むLDMOS1が形成される。
図1ではシリコン基板におけるLDMOS1を示しているが、他の領域(回路形成領域)に別の回路部が形成されることとしてもよい。回路部とは例えばロジック回路である。このように回路部が混載される場合には、回路部において構成されるSTI6は(111)面を有さないこととしてもよい。例えば、ドライエッチングによりトレンチTR2を形成することで、側壁WDの角度を基板表面に対してより垂直に近づけることができるため表面におけるSTI6の占有面積を抑制することができ集積度を向上させることができる。また、表面におけるSTI6の占有面積を小さくする場合には、後述する製造方法のように、複数回のシリコン酸化膜形成工程によって複数層のシリコン酸化膜でトレンチTR2を埋め込むことがより好ましい。
【0039】
次に、本実施形態における半導体装置の製造方法(プロセスフロー)の一例について図面を参照して説明する。
図3から
図10は、半導体装置の各製造工程(第1工程から第8工程)を示した図である。なお、各図においては左側にLDMOS1(LDMOS領域)を形成し、右側にロジック回路(回路形成領域)を形成する場合を示している。各製造工程を示す各図では、断面図を示している。また、
図3から
図10の各図では、構成の一例を示しており、トレンチTR1やトレンチTR2と、LDMOS領域と回路形成領域との境界線(縦直線で示した点線)との位置関係(例えば距離)については各図の記載に限定されない。
【0040】
図3の第1工程(ドライエッチング工程)では、シリコン基板表面に対してシリコン窒化膜(SIN)を形成し、その後に回路形成領域においてSTI6を形成する領域にトレンチTR2を形成する。具体的には、シリコン基板の表面であって、LDMOS領域以外の回路形成領域における所定領域(回路部においてSTI6を形成する予定の領域)に対してドライエッチングを行うことにより、所定の深さのトレンチTR2を形成する。深さは、例えば300nm程度である。ドライエッチングによってトレンチTR2が形成されるため、側壁は基板表面に対して垂直に近くなる。回路形成領域におけるトレンチTR2をドライエッチングによって形成することによって、基板表面におけるトレンチTR2の占有面積を抑え、回路の集積度を向上させることができる。ロジック回路では特に回路素子数が増加する傾向にありSTI6を多く設けるため、STI6に要する面積を抑えることで効果的に集積度を向上させることができる。
【0041】
次に、
図4の第2工程(シリコン酸化膜堆積工程)では、シリコン酸化膜(SIO)を堆積させる。すなわち、第1工程で形成したトレンチTR2にシリコン酸化膜を堆積させる。なお、堆積させるシリコン酸化膜の厚さは、例えば第1工程で形成したトレンチTR2の深さよりも低い。シリコン酸化膜の厚さは、例えば100nmとなる。このため、
図4に示すように、第1工程で形成したトレンチTR2は、一部がシリコン酸化膜で埋まり、深さ方向に対して全ては埋まらない。後述するように、シリコン酸化膜は別途堆積されるため、第2工程は、第1シリコン酸化膜形成工程となる。
【0042】
次に、
図5の第3工程(レジスト形成工程)では、STI部5を形成する予定の領域を除いて、レジストパターン(PHOTORESIST)を形成する。
図5に示すように回路形成領域は、レジストパターンで覆われる。
【0043】
次に、
図6の第4工程(洗浄工程)では、ドライエッチングを行うことにより、LDMOS領域(特にSTI部5を形成する予定の領域)に形成された絶縁皮膜(SINやSIO)を除去する。そして、シリコン基板を薬液に浸して(例えばBOEやHFに30秒間)、LDMOS領域の酸化膜等を除去し、(100)面であるシリコン基板の表面を露出させる。
【0044】
次に、
図7の第5工程(ウェットエッチング工程)では、LDMOS領域の所定領域(STI部5を形成する予定の領域)に対してウェットエッチングを行うことにより、所定の深さのトレンチTR1を形成する。
図7に示すように、本実施形態では、LDMOS領域のトレンチTR1の深さは、回路形成領域におけるトレンチTR2の深さと同等としているが、異なることとしても良い。例えば、トレンチTR1の深さ(STI部5)は、LDMOS1の耐圧が確保できるように設定される。
【0045】
ウェットエッチングは、強アルカリ性溶液を用いて行われる。強アルカリ性溶液は、例えば、NaOH、TMAH等が使用される。その他にも、強アルカリ性溶液としては、KOH、EDP、NH4OH、N2H4、CsOH等を使用することとしてもよい。上記のうち少なくともいずれか1つに基づく強アルカリ性溶液によって、ウェットエッチングが行われる。なお、後述の第8工程(ウェットエッチング)で使用されるフッ化水素酸やリン酸は、弱酸性溶液なので、シリコンをほとんどエッチングしない。
具体例としては、95℃の25% TMAHを用いてウェットエッチングが行われる。強アルカリ性溶液でウェットエッチングを行うことによって、例えばエッチングレートは、0.6μm/min程度となる。
【0046】
シリコン基板をウェットエッチングすることにより、物性的に、トレンチTR1の側壁WSは面方位が(111)面となる。すなわち、
図7に示すように、側壁WSはゆるい傾斜(55°程度)となる。このようにしてSTI部5の側壁WS(トレンチTR1の側壁)はゆるい傾斜となるように形成される。トレンチTR1の側壁WSは(111)面として形成されるため、集積方向から視認可能である。このため、(111)面の形成状態を確認して、ウェットエッチングの終了タイミングを制御することで、制御性を向上させることができる。また、ドライエッチングと比較して、エッチングによるタメージも抑制される。
【0047】
次に、
図8の第6工程(シリコン酸化膜形成工程)では、例えばCVD法(HDPなど)シリコン酸化膜を堆積させる。すなわち、第5工程で形成したトレンチTR1をシリコン酸化膜で埋める。第6工程において形成されるシリコン酸化膜の厚さは、第5工程で形成したトレンチTR1の深さ以上とされている。例えば、シリコン酸化膜の厚さは、500nm程度とされる。これによって、LDMOS領域におけるトレンチTR1はシリコン酸化膜で埋め込まれる。すなわち、第6工程は、第2工程に対して第2シリコン酸化膜形成工程となる。
【0048】
第6工程では、回路形成領域において形成されているトレンチTR2(第2工程で一部が埋まっている)についてもシリコン酸化膜で埋め込まれる。すなわち、第6工程では、第5工程で形成したトレンチTR1、及び第1工程で形成され、第2工程でシリコン酸化膜が堆積されたトレンチTR2の両方を、シリコン酸化膜で埋め込む。このように、LDMOS領域のトレンチTR1は、シリコン酸化膜を堆積させる工程が1回(本実施形態では第6工程)、回路形成領域のトレンチTR2は、シリコン酸化膜を堆積させる工程が2回(本実施形態では第2工程と第6工程)で、埋め込みが行われる。すなわち、LDMOS領域のSTI部5は、1層のシリコン酸化膜により形成され、回路形成領域のSTI6は、2層のシリコン酸化膜(
図8の2nd SIOと1st SIO)により形成される。なお、回路形成領域のSTI6を埋めるシリコン酸化膜の層数は、複数層であれば2層に限定されない。
【0049】
回路形成領域のトレンチTR2については、ドライエッチングにより形成されるためトレンチTR2の側壁が基板表面に対して垂直に近くなるが、2回に分けてシリコン酸化膜が堆積されるため、より効果的に埋め込みを行うことができる。さらに、本実施形態では、第2工程と第6工程の間に、第4工程として表面の洗浄を行なっている。この工程によって第2工程で堆積したトレンチTR2の入口付近のシリコン酸化膜(トレンチTR2に対して堆積した積層方向上側のシリコン酸化膜)の一部が除去される。このため、第6工程で堆積されるシリコン酸化膜が、トレンチTR2の内部へ入りやすくなることが期待できる。このため、表面の占有面積が小さいトレンチTR2であっても、効果的にシリコン酸化膜を堆積させることが可能となる。
【0050】
次に、
図9の第7工程(平坦化工程)では、シリコン基板の表面の余分なシリコン酸化膜を除去して平坦化する。例えばCMPによって平坦化が行われる。この平坦化によって余分なシリコン酸化膜が除去され、トレンチTR1においてSTI部5が形成される。
【0051】
次に、
図10の第8工程(除去工程)では、絶縁皮膜(例えばSINやSIO)を、ウェットエッチングによって除去する。第8工程におけるウェットエッチングは、フッ化水素酸やリン酸を用いて行われる。なお、
図10では、シリコン基板の表面と、STIを埋め込むためのシリコン酸化膜とに段差が生じている場合を例として示しているが、後の工程において、例えば前処理(例えば、レジストマスク除去後、ゲート酸化膜前処理など)で酸化膜を除去する処理があるため、シリコン酸化膜の段差部分は次第にエッチングされて段差はなくなっていく。
【0052】
このようにして、STIが形成される。シリコン基板におけるLDMOS領域や回路形成領域においてSTIが形成された後には、一般的なLDMOSのプロセスや、回路形成領域に形成するMOS等のプロセスに従って各半導体素子が形成される。
【0053】
例えば、LDMOS領域においては、
図1に示すようなLDMOS1を構成するドレイン部D、ソース部S、ゲート部Gが形成される。なお、ドレイン部Dの周囲のHV-nwellや、n-driftについても形成される。また、ソース部Sの周囲のp-bodyや、ピックアップPUについても形成される。
【0054】
ソース部Sとドレイン部Dの形成については、
図1の配置位置となるように形成される。すなわち、ドレイン-ソース形成工程では、STI部5に隣接してドレイン部Dを形成するとともに、ドレイン部Dに対してSTI部5を挟んで反対側にソース部Sを形成する。また、ゲート形成工程では、シリコン基板の表面にゲート部Gを形成する。
【0055】
以上のようなプロセスを経て、
図1に示すような、LDMOS1が形成される。
【0056】
次に、本実施形態に係るLDMOS1の効果について説明する。
図11は、参考例に係るLDMOSの断面図を示している。参考例とは、LDMOSにおけるSTI7(トレンチTR3)をドライエッチングによって形成した場合の例である。STI7を形成するためのトレンチTR3をドライエッチングにより形成する場合には、トレンチTR3の側壁は、基板表面に対して垂直に近くなる。すなわち、トレンチTR3の側壁は(111)面ではない。このため、
図11に示すように、STI7のコーナー(側壁と底面とが交わる角の部分)C2が直角に近くなる。
図12は、
図11の参考例におけるコーナーC2周りの衝突電離分布(衝突電離率分布)を示している。
図12に示すように、コーナーC2の周囲で衝突電離が発生し易くなる。このように、参考例では、コーナーC2の周囲でインパクトイオン化が発生し易くなる。
【0057】
これに対して、本実施形態におけるLDMOS1は、STI部5を形成するためのトレンチTR1をウェットエッチングによって形成するため、STI部5の側壁を(111)面とすることができる。このため、STI部5のコーナー(側壁WSと底面Bとが交わる角の部分)C1を直角よりも大きな角度としてなだらかにするため、コーナーC1の周囲で衝突電離を抑えることができる。すなわち、ホットキャリアの発生を抑制して、LDMOS1の性能劣化を抑えることが可能となる。
【0058】
また、ドライエッチングは、イオンフラックスの違いによるパターン密度依存性があり安定した傾斜を形成することが困難であるが、ウェットエッチングであれば、安定的に(111)面を形成することが可能となる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係るLDMOS及び半導体装置、並びにその製造方法によれば、STI部5が、ソース部Sとドレイン部Dの間であって、ドレイン部Dに隣接して設けられる。そして、STI部5は、ソース部Sに近い側壁の面方位が(111)面となっている。側壁の面方位が(111)面となることによって、例えば、トレンチTR1の底面B(例えば、シリコン基板表面と平行)と側壁との角度は約55°程度となり、ソース部Sとドレイン部Dの間のキャリアパスに対して側壁の面が傾斜される。このため、衝突電離を抑制して、ホットキャリアの発生を抑えることができる。すなわち、ホットキャリア耐性を向上させることができる。これによって、LDMOS1の性能劣化が抑制される。
【0060】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【0061】
例えば、上記の各実施形態ではLDMOSをN型として説明したがP型としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :LDMOS
5 :STI部
B :底面
C1、C2:コーナー
D :ドレイン部
G :ゲート部
PU :ピックアップ
S :ソース部
TR1~TR3:トレンチ
WD :側壁
WS :側壁