(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】空気調和機器の制御方法、制御装置及び空気調和機器
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20230203BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20230203BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/72
(21)【出願番号】P 2021529069
(86)(22)【出願日】2019-10-12
(86)【国際出願番号】 CN2019110871
(87)【国際公開番号】W WO2020134360
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】201811593841.2
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517344192
【氏名又は名称】広東美的制冷設備有限公司
【氏名又は名称原語表記】GD MIDEA AIR-CONDITIONING EQUIPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Lingang Road,Beijiao,Shunde,Foshan,Guangdong,China
(73)【特許権者】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鄭偉鋭
(72)【発明者】
【氏名】梁文潮
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-082075(JP,A)
【文献】特開2011-069601(JP,A)
【文献】特開2013-122325(JP,A)
【文献】特開2015-111019(JP,A)
【文献】特開2017-058062(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106196484(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108006906(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機器の制御方法であって、
現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するステップと、
前記空気調和機器の機器運転情報に基づいて、前記空気調和機器の運転モードでの対応する補償情報を決定するステップと、
前記補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するステップと、
補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるステップと、を含み、
前記熱源は人体であり、
前記機器運転情報は、前記空気調和機器の前記運転モードにおける経過運転時間を含み、
前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられ
、補償係数を含み、
冷房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは負の関係にあり、かつ前記補償係数は1未満の値であり、
暖房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは正の関係にあり、かつ前記補償係数は1よりも大きい値であり、
前記補償係数を検出された温冷感値に乗算して前記補正された温冷感値を得る
ことを特徴とする空気調和機器の制御方法。
【請求項2】
空気調和機器の制御方法であって、
現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するステップと、
前記空気調和機器の機器運転情報及び環境温度情報に基づいて、前記空気調和機器の運転モードでの対応する補償情報を決定するステップと、
前記補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するステップと、
補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるステップと、を含み、
前記熱源は人体であり、
前記機器運転情報は、前記空気調和機器の前記運転モードにおける経過運転時間を含み、
前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられ、補償係数及び補償値を含み、
冷房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは負の関係にあり、かつ前記補償係数は1未満の値であり、
暖房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは正の関係にあり、かつ前記補償係数は1よりも大きい値であり、
前記環境温度情報は、地表温度及び/又は前記空気調和機器が位置する空間における熱源領域以外の背景領域温度を含み、
前記背景領域温度に対応する補償値と前記背景領域温度とは正の関係にあり、
前記地表温度に対応する補償値と前記地表温度とは正の関係にあり、
前記補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正する前記ステップは、
前記環境温度情報に対応する補償値を検出された温冷感値に加算するステップと、
前記機器運転情報に対応する補償係数を、加算後の温冷感値に乗算し、前記補正された温冷感値を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする空気調和機器の制御方法。
【請求項3】
補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正する前記ステップの前に、さらに、
環境温度分布を取得するステップと、
前記環境温度分布に基づいて、前記背景領域温度が設定された第1温度範囲内にあると決定するステップ、
及び/又は、前記地表温度が前記設定された第2温度範囲内にあると決定するステップと、を含み、
前記環境温度分布はアレイ式赤外線サーモパイルセンサの検出により得られる
ことを特徴とする請求項
2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記空気調和機器の電源を投入する毎に電源オフ時間を検出し、
前記電源オフ時間が第1所定時間より短い場合は、前記空気調和機器の前回の運転時間に補正係数を乗算して今回の運転時間に加算し、前記経過運転時間とし、
前記電源オフ時間が前記第1所定時間以上である場合は、前記空気調和機器の今回の運転時間を前記経過運転時間とし、
前記補正係数は1未満の値である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第1所定時間は30分である
ことを特徴とする請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定する前記ステップは、
アレイ式赤外線サーモパイルセンサにより検出して環境温度分布を得るステップと、
前記環境温度分布及び前記空気調和機器の運転モードに基づいて、熱源の温冷感値を決定するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させる前記ステップは、
補正後の温冷感値に基づいて、前記空気調和機器の風向板の揺動速度を小さくするステップ、または、
補正後の温冷感値に基づいて、前記空気調和機器の送風風速を小さくするステップ、または、
補正後の温冷感値に基づいて、暖房の運転モードにおいて前記空気調和機器の設定温度を下げ、冷房の運転モードにおいて前記空気調和機器の設定温度を上げるステップ、を含む、
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
空気調和機器の制御装置であって、
現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するための検出モジュールと、
前記空気調和機器の機器運転情報に基づいて、前記空気調和機器の運転モードでの対応する補償情報を決定する第1決定モジュールと、
前記補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するための補正モジュールと、
補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるための制御モジュールと、を含み、
前記熱源は人体であり、
前記機器運転情報は、前記空気調和機器の前記運転モードにおける経過運転時間を含み、
前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられ
、補償係数を含み、
冷房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは負の関係にあり、かつ前記補償係数は1未満の値であり、
暖房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは正の関係にあり、かつ前記補償係数は1よりも大きい値であり、
前記補償係数を検出された温冷感値に乗算して前記補正された温冷感値を得る
ことを特徴とする空気調和機器の制御装置。
【請求項9】
空気調和機器の制御装置であって、
現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するための検出モジュールと、
前記空気調和機器の機器運転情報及び環境温度情報に基づいて、前記空気調和機器の運転モードでの対応する補償情報を決定する第1決定モジュールと、
前記補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するための補正モジュールと、
補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるための制御モジュールと、を含み、
前記熱源は人体であり、
前記機器運転情報は、前記空気調和機器の前記運転モードにおける経過運転時間を含み、
前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられ
、補償係数及び補償値を含み、
冷房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは負の関係にあり、かつ前記補償係数は1未満の値であり、
暖房モードにおいて、前記経過運転時間に対応する前記補償係数と前記経過運転時間とは正の関係にあり、かつ前記補償係数は1よりも大きい値であり、
前記環境温度情報は、地表温度及び/又は前記空気調和機器が位置する空間における熱源領域以外の背景領域温度を含み、
前記背景領域温度に対応する補償値と前記背景領域温度とは正の関係にあり、
前記地表温度に対応する補償値と前記地表温度とは正の関係にあり、
前記補正モジュールは、
前記環境温度情報に対応する補償値を検出された温冷感値に加算し、
前記機器運転情報に対応する補償係数を、加算後の温冷感値に乗算し、前記補正された温冷感値を得るために用いられる、
ことを特徴とする空気調和機器の制御装置。
【請求項10】
メモリと、
プロセッサと、
メモリに記憶され、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムとを含み、
前記プロセッサが前記プログラムを実行するときに、請求項1~
7のいずれか一項に記載の制御方法を実現する、
ことを特徴とする空気調和機器。
【請求項11】
コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
当該プログラムがプロセッサによって実行されるときに請求項1~
7のいずれか一項に記載の制御方法を実現する、
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、広東美的制冷設備有限公司及び美的集団股▲フン▼有限公司が2018年12月25日に提出した、出願名称「空気調和機器の制御方法、装置及び空気調和機器」、中国特許出願番号「201811593841.2」の優先権を主張している。
【0002】
本願は、家庭用電気機器制御技術分野に関し、特に、空気調和機器の制御方法、制御装置及び空気調和機器に関する。
【背景技術】
【0003】
電子技術の発展と人々の生活水準の向上に伴い、空気調和機器(例えば、エアコン)の普及率はますます高くなり、空気をスマートに調節できる製品はますます好まれるようになった。
【0004】
関連技術では、温冷感値の大きさは熱源の温度を反映しており、温冷感値に基づいて空気調和機器を制御することが一般的であったが、実際の検出では住居環境は一般的に複雑であり、温冷感値に基づいて空調の調節を行う場合、環境を人体が快適と感じる状態に調節できず、調節の正確性が低く、これによりユーザの体験に大きく影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、関連技術における技術的問題の1つを少なくともある程度解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本願は、検出された温冷感値を補償情報で補正することにより、温冷感値の正確度を向上させ、環境中に他の熱源が存在する場合に、空気調和機器が環境パラメータを人体に適さない数値範囲に調整し続けることを回避し、空気調和機器の自動調節の正確性を向上させる、空気調和機器の制御方法を提供する。
【0007】
本願は、空気調和機器の制御装置を提供する。
【0008】
本願は、空気調和機器を提供する。
【0009】
本願は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0010】
本願の一態様の実施例は、現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するステップと、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するステップと、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるステップと、を含み、前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられる、空気調和機器の制御方法を提供する。
【0011】
本願のさらなる態様の実施例は、現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するための検出モジュールと、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するための補正モジュールと、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるための制御モジュールと、を含み、前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられる、空気調和機器の制御装置を提供する。
【0012】
本願のさらなる態様の実施例は、メモリと、プロセッサと、メモリに記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムとを含み、前記プロセッサが前記プログラムを実行するときに、前述した一態様に記載の制御方法を実現する、空気調和機器を提供する。
【0013】
本願のさらなる態様の実施例は、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、当該プログラムがプロセッサによって実行されるときに、前述した一態様に記載の制御方法を実現する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本願の実施例によって提供される技術的解決手段は以下の有益な効果を含むことができる。
【0015】
現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定し、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正し、ここで、補償情報は空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられ、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を制御する。検出された温冷感値を補償情報で補正することにより、温冷感値の正確度を向上させ、環境中に他の熱源が存在する場合に、空気調和機器が環境パラメータを人体に適さない数値範囲に調整し続けることを回避し、空気調和機器の自動調節の正確性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の上記及び/又は追加の態様及び利点は、添付図面に関連した下記の説明から明らかになり、容易に理解されるであろう。
【0017】
【
図1】本願の実施例に係る空気調和機器の制御方法の概略フローチャートである。
【
図2】本願の実施例に係る別の空気調和機器の制御方法の概略フローチャートである。
【
図3】本願の実施例に係る補正前の環境温度分布の概略図である。
【
図4】本願の実施例に係る補正後の環境温度分布の概略図である。
【
図5】本願の実施例に係る空気調和機器の制御装置の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願の実施例を以下で詳細に説明し、前記実施例の例を図面に示し、ここで本明細書全体を通じて同一又は類似の参照符号は同一又は類似の素子又は同一又は類似の機能を有する素子を示す。図面を参照して以下で説明する実施例は例示的なものであり、本願を解釈することを意図しているが、本願を限定するものと理解されるべきではない。
【0019】
以下、本願の実施例の空気調和機器の制御方法、制御装置及び空気調和機器について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本願の実施例に係る空気調和機器の制御方法の概略フローチャートである。
【0021】
図1に示すように、当該方法は、以下のステップを含む。
【0022】
ステップ101、現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定する。
【0023】
ここで、熱源は、現在の環境にある物体、例えば人体、急須などであり、環境パラメータの検出を行って得られるものであり、1つの可能な実現形態として、空気調和機器自身の検出により得られたパラメータであり、例えば、空気調和機器のアレイ式赤外線サーモパイルセンサの検出により得られた環境温度分布である。環境温度分布及び空気調和機器の運転モードに基づいて、熱源の温冷感値を決定する。別の可能な実現形態として、空気調和機器自身が検出したパラメータに基づいて、他の空気装置、例えば、加湿器や除湿機が検出した湿度などのパラメータと組み合わせて、熱源の温冷感値を決定してもよい。ここで、温冷感値の大きさは、熱源の温度を反映するものであり、つまり、温冷感値が大きいほど熱源の温度が高く、即ち暑いことを表し、温冷感値が小さいほど熱源の温度が低く、即ち寒いことを表す。
【0024】
選択可能に、検出された熱源が複数であれば、複数の熱源の温冷感値のうち最大の温冷感値を検出された温冷感値とするか、複数の熱源の温冷感値の平均値を求め、平均した温冷感値を検出された温冷感値とする。
【0025】
あるシナリオでは、熱源がユーザである場合、ユーザの温冷感値はユーザの個人体質や運動の激しさと関係があり、実際の操作時には、ユーザの個人状況に応じてリアルタイムで収集及びマーキングなどを行うことができ、ビッグデータに基づいてユーザの体表基準温度及びユーザの温冷感値のモデルを構築することもでき(この例では、ユーザの温冷感値、ユーザの体表温度及び空気調和機器の導風板の面積、モータの性能などのハードウェアパラメータを大量に収集し、収集した大量の実験データに基づいてユーザの体表基準温度及びユーザの温冷感値のモデルを構築し、1つの可能な実現形態として、温冷感モデルは多種のユーザの生理的パラメータ設定などと組み合わせることもでき、ここで、当該温冷感モデルの表現式は、M=F(H)であってもよく、ここで、Mは温冷感モデルであり、H=R+C+K+Esk+Eres+Cresであり、ここで、Rは人体から放射されて発生する熱量であり、単位がW/m2であり、Cは人体と環境中の気流との対流により発生する熱量であり、単位がW/m2であり、Kは伝導により発生する放熱量であり、単位がW/m2であり、Eskは皮膚の水分が蒸発することにより発生する放熱量であり、単位がW/m2であり、Eresは呼気水分が蒸発することにより発生する放熱量であり、単位がW/m2であり、Cresは呼気対流により発生する放熱流量であり、単位がW/m2である)、当該モデルに基づいてユーザの体表基準温度に対応するユーザの温冷感値を計算するために用いられる。
【0026】
なお、本実施例で紹介した温冷感モデルの表現式はあくまで一例であり、当業者は実際の状況に応じて、適切な温冷感モデルを選択することができ、例えば、上述した温冷感モデルの表現式におけるパラメータを増減させることにより、実際の状況のニーズを満たし、ここでは説明を省略する。
【0027】
ステップ102、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正する。
【0028】
ここで、補償情報は、補償係数及び/又は補償値を含み、ここで、補償情報は、空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられる。
【0029】
具体的には、環境温度情報に対応する補償値を検出された温冷感値に加算し、運転情報に対応する補償係数を、加算後の温冷感値に乗算し、補正された温冷感値を得て、温冷感値を補償情報で補償することにより、温冷感値の正確度を向上させる。
【0030】
ここで、環境温度情報に対応する補償値、及び運転情報に対応する補償係数は予め設定されており、1つの可能な実現形態として、空調の運転モードに基づいて、大量の実験データによって予め決定されてもよいが、本実施例ではこれについて限定しない。
【0031】
なお、環境中に人体以外の他の熱源がない場合であっても、温冷感値に基づいて決定した補償情報で空気調和機器の運転パラメータを補償することにより、空気調和機器が高い調節効率で運転し続けることを回避することもでき、ユーザの体験に影響を与えることなく、環境への調節効果を保証しながら、消費電力を低減させる。同時に、空気調和機器が運転してから一定時間が経過した後、例えば、調節された環境パラメータが温冷感値に対応する環境パラメータを満たすと、ユーザは、より快適な環境体験を得ることができるので、このとき調節の効率を下げても、ユーザの体験に影響はない。
【0032】
ステップ103、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させる。
【0033】
具体的には、補正後の温冷感値に基づいて、空気調和機器の風向板の揺動速度を小さくし、または、補正後の温冷感値に基づいて、空気調和機器の送風風速を小さくし、または、補正後の温冷感値に基づいて、暖房の運転モードにおいて空気調和機器の設定温度を下げ、冷房の運転モードにおいて空気調和機器の設定温度を上げ、空気調和機器の自動制御の正確度を向上させ、ユーザに快適な体験をもたらす。
【0034】
本願の実施例では、冷房量又は暖房量は、具体的には、送風量によって調整することができる。
【0035】
一例として、空気調和機器がエアコンである場合、空気調和機器の冷房量又は暖房量は、以下の式により決定することができる。
Q0=(iC-iD)・G(kJ/h)・・・(1)
ここで、Q0は冷房量又は暖房量を示し、iC及びiDはそれぞれ蒸発器前後の空気エンタルピ値を示し、Gは送風量を示す。iC及びiDは圧縮機の出力を増減することによって調整することができる。
【0036】
したがって、環境温度分布に基づいて、空気調和機器の対応する送風角度の冷房量又は暖房量を増加させる必要があると決定した場合、(iC-iD)値を維持したまま、送風量Gを増加させることにより、空気調和機器の冷房量又は暖房量を増加させることができる。一方、環境温度分布に基づいて、空気調和機器の対応する送風角度の冷房量又は暖房量を減少させる必要があると決定した場合、(iC-iD)値を維持したまま、送風量Gを減少させることにより、空気調和機器の冷房量又は暖房量を減少させることができる。
【0037】
送風量の調整を実現するためには、具体的には風速の調整、風向板の揺動速度及び揺動の一時停止時間の調整など多くの制御手段を採用することができ、またいくつかの制御手段を組み合わせることもでき、冷房量又は暖房量の調整効率を向上させる。以下では、いくつかの可能な実現形態についてそれぞれ説明する。
【0038】
第1の可能な実現形態として、空気調和機器の風向板が各送風角度に揺動する際に、対応する制御パラメータに基づいて、送風の風速を調整することができる。ここで、送風位置の温度差値のうち最大値が大きいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、対応する送風の風速が大きくなり、これにより送風角度に対応する冷房量又は暖房量が大きくなる。一方で、送風位置の温度差値のうち最大値が小さいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、対応する送風の風速が小さくなり、これにより送風角度に対応する冷房量又は暖房量が小さくなる。
【0039】
第2の可能な実現形態として、空気調和機器の風向板が各送風角度に揺動する際に、対応する制御パラメータに基づいて、風向板の揺動速度を調整する。ここで、送風位置の温度差値のうち最大値が大きいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、風向板の揺動速度が小さくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が大きくなる。一方で、送風位置の温度差値のうち最大値が小さいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、風向板の揺動速度が大きくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が小さくなる。
【0040】
第3の可能な実現形態として、空気調和機器の風向板が各送風角度に揺動する際に、対応する制御パラメータに基づいて、風向板の揺動の一時停止時間を調整する。ここで、送風位置の温度差値のうち最大値が大きいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、風向板の揺動の一時停止時間が大きくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が大きくなる。一方で、送風位置の温度差値のうち最大値が小さいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、風向板の揺動の一時停止時間が小さくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が小さくなる。
【0041】
第4の可能な実現形態として、空気調和機器の風向板が各送風角度に揺動する際に、対応する制御パラメータに基づいて、送風の風速及び風向板の揺動速度を調整する。ここで、送風位置の温度差値のうち最大値が大きいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、対応する送風の風速が大きくなり、かつ風向板の揺動速度が小さくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が大きくなる。一方で、送風位置の温度差値のうち最大値が小さいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、対応する送風の風速が小さくなり、かつ風向板の揺動速度が大きくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が小さくなる。
【0042】
第5の可能な実現形態として、空気調和機器の風向板が各送風角度に揺動する際に、対応する制御パラメータに基づいて、送風の風速及び風向板の揺動の一時停止時間を調整する。ここで、送風位置の温度差値のうち最大値が大きいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、対応する送風の風速が大きくなり、かつ風向板の揺動の一時停止時間が大きくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が大きくなる。一方で、送風位置の温度差値のうち最大値が小さいほど、空気調和機器の風向板が対応する送風角度に揺動した際に、対応する送風の風速が小さくなり、かつ風向板の揺動の一時停止時間が小さくなり、これにより当該送風角度に対応する冷房量又は暖房量が小さくなる。
【0043】
本実施例の空気調和機器の制御方法では、現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定し、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正し、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させ、検出された温冷感値を補償情報で補正することにより、温冷感値の正確度を向上させ、一方では環境中に他の熱源が存在する場合に、空気調和機器が環境パラメータを人体に適さない数値範囲に調整し続けることを回避し、空気調和機器の自動調節の正確性を向上させ、他方では、環境中に人体以外の他の熱源がない場合であっても、温冷感値に基づいて決定した空気調節パラメータを補償することにより、空気調和機器が高い調節効率で運転し続けることを回避することもでき、ユーザの体験に影響を与えることなく、環境への調節効果を保証しながら、消費電力を低減させる。
【0044】
先の実施例に基づいて、本実施例は、別の空気調和機器の制御方法を提供し、
図2は、本願の実施例に係る別の空気調和機器の制御方法の概略フローチャートである。
【0045】
図2に示すように、当該方法は、以下のステップを含むことができる。
【0046】
ステップ201、現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定する。
【0047】
本実施例では、空気調和機器がエアコンであり、空調運転モードが冷房モードであることを例として説明し、
図3は、本願の実施例に係る補正前の環境温度分布の概略図であり、物体が赤外線エネルギーを外部に放射し続けているので、空調が冷房モードにあるときに、アレイ式赤外線サーモパイルセンサによって環境を検出し、検出して環境温度分布図における対応する異なる温度分布を得て、
図3に示す。温度分布図において温度が最も高い領域を熱源領域、即ち
図3では、矢印で示す破線の矩形枠に対応するA領域として認識し、熱源領域に基づいて熱源の温度を決定し、本実施例では熱源領域における最も高い温度値を熱源の温度値とすることができ、または、熱源領域における温度値の平均値を求めて熱源の温度値とし、予め設定された熱源の温度値と温冷感値との対応関係に基づいて、熱源の温冷感値を決定する。
【0048】
ステップ202、環境温度分布を取得し、環境温度分布に基づいて、環境温度情報を確定する。
【0049】
ここで、環境温度情報は、背景領域温度、及び/又は、地表温度を含む。
【0050】
具体的には、背景領域の温度は、環境温度分布における熱源領域以外の領域の温度によって決定され、1つの可能な実現形態として、背景領域の温度の平均値を求めて背景領域温度とする。つまり、
図3に示す環境温度分布図において、矢印で示す熱源に対応するA領域以外の領域の温度値の平均値を求め、背景領域温度とし、かつ背景領域温度が設定された第1温度範囲内にあると決定する。ここで、第1温度範囲は予め設定されている。第1温度範囲と補償値との対応関係を表1に示す。
【0051】
表1は、冷房モードでの、第1温度範囲の区間と対応する補償値との関係である。
【0052】
【0053】
表1から分かるように、第1温度範囲は異なる区間を含み、異なる区間が異なる補償値に対応し、決定された背景領域温度に基づいて、属する第1温度範囲の区間を決定し、即ち対応する補償値を決定する。
【0054】
地表温度は、地表温度検出センサの検出により得られ、ここで、地表温度センサは、地面に設けられたセンサであってもよいし、空調に取り付けられた温度センサであってもよく、例えば、単点サーモパイルセンサであり、センサの検出値に基づいて地表温度を決定し、かつ地表温度が設定された第2温度範囲内にあると決定し、ここで、第2温度範囲も予め設定されており、第2温度範囲と補償値との対応関係を示しており、第1温度範囲と第2温度範囲とには範囲の大きさの差はない。
【0055】
表2は、冷房モードで、第2温度範囲の区間と対応する補償値との関係である。
【0056】
【0057】
表2から分かるように、異なる地表温度は、異なる第2温度範囲の区間に対応しており、即ち異なる補償値に対応しており、ここで、第1温度範囲の区間に対応する補償値は、第2温度範囲の区間に対応する補償値と同一であっても異なっていてもよく、本実施例では例示であって、限定するものではない。
【0058】
なお、冷房及び暖房の運転モードにおいて、背景領域の環境温度と補償値とは正の関係にあり、つまり背景領域の環境温度が増加すると、対応する補償値も増加し、1つの可能な実現形態として、補償値の増加は、一定割合又は一定値の増加方式で背景領域の環境温度の増加に伴って増加してもよく、例えば、背景領域の環境温度が摂氏23度である場合、補償値が-1であり、背景領域の環境温度が摂氏25度である場合、補償値が-0.5であり、背景領域の環境温度が摂氏26度である場合、補償値が0であり、即ち補償値は、+0.5の一定の増加値で背景領域の環境温度の増加に伴って増加する。別の可能な実現形態として、補償値の増加は、非一定割合又は非一定値の増加方式で背景領域の環境温度の増加に伴って増加してもよく、例えば、背景領域の環境温度が摂氏23度である場合、補償値が-1であり、背景領域の環境温度が摂氏25度である場合、補償値が-0.5であり、背景領域の環境温度が摂氏26度である場合、補償値が-0.1であり、即ち補償値の増加は、非一定割合又は非一定値の増加方式で背景領域の環境温度の増加に伴って増加する。同時に、冷房及び暖房の運転モードにおいて、地表温度と地表温度に対応する補償値も正の関係にあり、その原理が背景領域の環境温度と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0059】
ステップ203、空気調和機器の機器運転情報及び/又は環境温度情報に基づいて、空気調和機器の運転モードで対応する補償情報を決定する。
【0060】
ここで、補償情報は、補償係数及び/又は補償値を含み、補償値は、環境温度情報によって決定され、補償係数は、機器運転情報によって決定される。
【0061】
具体的には、機器運転情報は、空気調和機器の運転モードにおける経過運転時間を含み、経過運転時間は、空気調和機器内の運転パラメータに基づいて取得することができる。
【0062】
表3は、冷房モードで、経過運転時間Xが属する時間範囲の区間と対応する補償係数との関係であり、ここで、補償係数は1未満の値である。
【0063】
【0064】
表3に示すとおり、空気調和機器の運転モードにおける経過運転時間に基づいて、対応する補償係数を決定することができ、例えば、運転時間が15分間の場合、対応する補償係数は0.8である。
【0065】
なお、冷房モードにおいて、補償係数と経過運転時間とは負の関係にあり、つまり運転時間が長くなるに伴って、対応する補償係数は低くなり、1つの可能な実現形態として、補償係数の低下は、一定割合の負の関係で経過運転時間の増加に伴って低下してもよく、例えば、運転時間が10分間の場合、補償係数は0.8であり、運転時間が40分間の場合、補償係数は0.7であり、運転時間が60分間である場合、補償係数は0.62であり、即ち補償係数は、7/8の一定割合で運転時間の増加に伴って低下する。別の可能な実現形態として、補償係数の低下は、非一定割合の逆の関係で経過運転時間の増加に伴って低下してもよく、例えば、運転時間が10分間の場合、補償係数は0.8であり、運転時間が40分間の場合、補償係数は0.7であり、運転時間が60分間の場合、運転時間は0.6であり、即ち補償係数は、非一定割合で運転時間の増加に伴って低下する。一方、暖房モードにおいて、運転時間と補償係数とは正の関係にあり、補償係数は1よりも大きい値であってもよく、その原理が同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
また、運転時間に基づいて補償値を決定し、補償値を用いて温冷感値を補償すると、冷房モードにおいて、補償値と運転時間とが負の関係になり、暖房モードにおいて、補償値と運転時間とが正の関係にあることにも留意する必要がある。
【0067】
環境温度情報は、地表温度及び/又は空気調和機器が位置する空間における熱源領域以外の背景領域温度を含み、ここで、背景領域温度に対応する補償値と背景領域温度とが正の関係にあり、地表温度に対する補償値と地表温度も正の関係にある。表1及び表2に示す温度と補償値との対応関係から、地表温度に対応する補償値、背景領域温度に対応する補償値を決定することができる。
【0068】
表1に示すように、現在の背景領域温度が25.9であれば、背景領域温度に対応する第1温度範囲は≧24℃であり、対応する補償値は-0.5である。
【0069】
表2に示すように、現在の地表温度が24.1であれば、地表温度に対応する第2温度範囲は≧24℃であり、対応する補償値は-0.5である。
【0070】
ステップ204、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正する。
【0071】
本願の実施例では、現在検出されている温冷感値をMとし、例えば、M値を3とする。
【0072】
1つのシナリオでは、補償情報が環境温度情報であれば、環境温度情報に対応する補償値を検出された温冷感値に加算して補正された温冷感値を得て、例えば、環境温度情報における背景領域温度に対応する補償値が-0.5であり、地表温度に対応する補償値が-0.5であれば、背景領域温度に対応する補償値及び地表温度に対応する補償値を共に温冷感値Mに加算し、即ち3-0.5-0.5=2となり、補正された温冷感値は2となる。
【0073】
なお、温冷感値を、地表温度に基づいて決定した補償値で補正するのは、地表温度が高いと、ユーザの足部や脚部に不快感を引き起こすためであり、例えば、床暖房のシナリオでは、地面温度が高い場合、ユーザの脚部に不快感を引き起こし、地表温度を測定して補償値を決定することで、温冷感値の補正を実現できるため、空気調和機器の自動調節により、地表温度を下げ、環境温度の自動調節を実現することで、快適な体感を実現し、ユーザの満足度を高める。
【0074】
別の可能なシナリオでは、補償情報が機器運転情報であれば、機器運転情報に対応する補償係数を検出された温冷感値に乗算して補正された温冷感値を得て、例えば、現在の機器の運転時間が20分間であり、対応する補償係数が0.8であれば、補償係数を検出された温冷感値に乗算し、即ち3*0.8=2.4であり、即ち補正された温冷感値は2.4となる。
【0075】
さらに別の可能なシナリオでは、補償情報が環境温度情報と機器の運転情報であれば、環境温度情報に対応する補償値を検出された温冷感値に加算し、さらに運転情報に対応する補償係数を、加算後の温冷感値に乗算し、補正された温冷感値を得て、即ち(3-0.5-0.5)*0.9=1.8である。なお、当該シナリオでは、空気調和機器の運転時間が短い場合、例えば、5分間、10分間である場合、環境温度情報における背景温度と地表温度は基本的に不変であり、簡略化のため、運転時間の変更による温冷感値の補償のみを考慮してもよいが、本実施例ではこれについて限定しない。
【0076】
なお、実際の適用では、ユーザの操作(誤操作である可能性がある)や、電圧の不安定化によるトリップや一時的な停電など、空気調和機器の電源オフが短時間で発生する場合がある。このような場合には、電源投入毎に電源オフ時間を検出し、電源オフ時間が短い場合には、前回の運転時間に1つの補正係数を乗算して今回の運転時間を補正し、例えば、電源オフ時間が5分間であれば、前回の運転時間に補正係数0.9を乗算して今回の運転時間に合算することができ、電源オフ時間が15分間であれば、前回の運転時間に補正係数0.8を乗算して今回の運転時間に合算することができ、電源オフ時間が長く、例えば、30分間を超えると、電源オフ時間が長いため、今回の運転時間の補正を行わず、前回の運転時間に補正係数を乗算することで、空気調和機器の一時的な運転停止があった場合に、運転再開後の今回の運転時間を補正することができ、今回の運転時間統計の正確性を高めることで、温冷感値補償の正確性を高める。ステップ205、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させる。
【0077】
具体的には、補正後の温冷感値に基づいて、空気調和機器の風向板の揺動速度を小さくし、または、補正後の温冷感値に基づいて、空気調和機器の送風風速を小さくし、または、補正後の温冷感値に基づいて、暖房の運転モードで空気調和機器の設定温度を下げ、冷房の運転モードで空気調和機器の設定温度を上げ、空気調和機器の自動制御の正確度を向上させ、ユーザに快適な体験をもたらす。
【0078】
本実施例では、補正後の温冷感値に基づいて、空調の送風風速を調整することを例として説明し、ここで、補正後の温冷感値範囲が[-3,3]であり、温冷感値の範囲を異なる区間に分割し、異なる区間は異なる送風風速調節係数に対応し、表4は、冷房モードで補正後の温冷感値Mの区間と送風風速の調節係数との対応表である。
【0079】
【0080】
例えば、冷房モードで、
図3に矢印で示すA領域に対応する熱源の温冷感値をMとし、運転開始時に、M値が1であり、環境温度が31度であれば、背景領域温度に対応する温度範囲が≧30℃であり、対応する補償値が1であり、M値を補償した後に得られるM値が2であり、表4に示すように、対応する風速が1.4vであり、一定時間運転した後、M値が1であり、現在の背景領域温度が25.9であれば、背景領域温度に対応する温度範囲が≧24℃であり、対応する補償値が-0.5であれば、温冷感値を補償した後に、1-0.5=0.5であり、M値が0.5であるときに対応する風速が0.6vに低下し、風速を低下させた後、時間を予め設定し、補正後の温冷感値で空気調和機器の調節を行った後、再び測定して現在の環境温度分布を取得し、
図4は、本願の実施例に係る補正後の環境温度分布の概略図であり、矢印で示す破線の矩形枠に対応するB領域が即ち調整後の熱源領域であり、熱源領域以外の部分が背景領域であり、
図3と
図4を比較して分かるように、補正後の温冷感値に基づいて空気調和機器の制御を行った後、取得された温度分布が穏やかになる傾向にあり、即ち空気の自動調節の目的を達成し、環境温度をより快適にする。
【0081】
また、本願の実施例の上記全ての表中の数値部分はあくまで例示であり、当業者であれば実際の状況に応じて数値を増減させるなどの調整が可能であり、範囲区間分布も必ずしも本実施例で紹介した分割状況を採用する必要はないことにも留意する必要がある。
【0082】
なお、補正後の温冷感値に基づいて、空気調和機器の風向板の揺動速度を制御することは、空気調和機器の設定温度を制御することと、実現原理が同様であるので、本実施例では説明を省略する。
【0083】
なお、本実施例では、空気調和機器が冷房モードで運転することを例として説明したが、暖房モードで、補償情報を決定し、かつ補償情報で温冷感値を補正する原理が同様であるので、本実施例では説明を省略する。
【0084】
本願の実施例の空気調和機器の制御方法では、空気調和機器の運転情報及び/又は環境温度情報を取得し、運転情報に基づいて運転時間に対応する補償係数を決定し、環境温度情報に基づいて背景領域温度に対応する補償値、及び地表温度に対応する補償値を決定し、これにより空気調和機器の運転モードで対応する補償情報を決定し、補償情報の正確度を向上させ、検出された温冷感値を補償情報で補正することにより、補正後の温冷感値の正確度を向上させ、さらに空気調和機器の自動調節の正確度を向上させ、快適な体験をもたらす。
【0085】
上記実施例を実現するために、本願は、空気調和機器の制御装置をさらに提供する。
【0086】
図5は、本願の実施例に係る空気調和機器の制御装置の概略構造図である。
【0087】
図5に示すように、当該装置は、検出モジュール51と、補正モジュール52と、制御モジュール53とを含む。
【0088】
検出モジュール51は、現在の環境の環境パラメータ検出結果に基づいて、熱源の温冷感値を決定するために用いられる。
【0089】
補正モジュール52は、補償情報に基づいて、検出された温冷感値を補正するために用いられ、ここで、前記補償情報は前記空気調和機器の調節効率を低下させるために用いられる。
【0090】
制御モジュール53は、補正された温冷感値に基づいて、空気調和機器の冷房量又は暖房量を低下させるために用いられる。
【0091】
さらに、本願の実施例の1つの可能な実現形態では、当該装置は、第1決定モジュールと、第2決定モジュールとをさらに含む。
【0092】
第1決定モジュールは、空気調和機器の機器運転情報及び/又は環境温度情報に基づいて、前記空気調和機器の運転モードでの対応する補償情報を決定するために用いられ、前記補償情報は補償係数及び/又は補償値を含む。
【0093】
第2決定モジュールは、環境温度分布を取得し、前記環境温度分布に基づいて、前記背景領域温度が設定された第1温度範囲内にあると決定し、ここで、前記環境温度分布はアレイ式赤外線サーモパイルセンサの検出により得られ、及び/又は、前記地表温度が前記設定された第2温度範囲内にあると決定するために用いられる。
【0094】
1つの可能な実現形態として、機器運転情報は、前記空気調和機器の前記運転モードにおける経過運転時間を含み、ここで、前記冷房モードにおいて、経過運転時間に対応する補償係数と前記経過運転時間とは負の関係にあり、暖房モードにおいて、経過運転時間に対応する補償係数と前記経過運転時間とは正の関係にあり、前記補償係数を検出された温冷感値に乗算して前記補正された温冷感値を得る。
【0095】
1つの可能な実現形態として、環境温度情報は、地表温度及び/又は前記空気調和機器が位置する空間における熱源領域以外の背景領域温度を含み、ここで、前記背景領域温度に対応する補償値と前記背景領域温度とは正の関係にあり、前記地表温度に対応する補償値と前記地表温度とは正の関係にあり、前記補償値を検出された温冷感値に加算して前記補正された温冷感値を得る。
【0096】
1つの可能な実現形態として、上記補正モジュール52は、具体的には、前記環境温度情報に対応する補償値を検出された温冷感値に加算し、前記運転情報に対応する補償係数を、加算後の温冷感値に乗算し、前記補正された温冷感値を得るために用いられる。
【0097】
1つの可能な実現形態として、上記検出モジュール51は、具体的には、アレイ式赤外線サーモパイルセンサにより検出して環境温度分布を得て、前記環境温度分布及び前記空気調和機器の運転モードに基づいて、熱源の温冷感値を決定するために用いられる。
【0098】
1つの可能な実現形態として、上記制御モジュール53は、具体的には、補正後の温冷感値に基づいて、前記空気調和機器の風向板の揺動速度を小さくし、または、補正後の温冷感値に基づいて、前記空気調和機器の送風風速を小さくし、または、補正後の温冷感値に基づいて、暖房の運転モードにおいて前記空気調和機器の設定温度を下げ、冷房の運転モードにおいて前記空気調和機器の設定温度を上げるために用いられる。
【0099】
なお、空気調和機器の制御方法の実施例に関する前述の説明は、当該実施例の空気調和機器の制御装置にも適用可能であり、ここでは説明を省略する。
【0100】
本願の実施例の空気調和機器の制御装置では、空気調和機器の運転情報及び/又は環境温度情報を取得し、運転情報に基づいて運転時間に対応する補償係数を決定し、環境温度情報に基づいて背景領域温度に対応する補償値、及び地表温度に対応する補償値を決定し、これにより空気調和機器の運転モードで対応する補償情報を決定し、補償情報の正確度を向上させ、検出された温冷感値を補償情報で補正することにより、補正後の温冷感値の正確度を向上させ、環境中に他の熱源が存在する場合に、空気調和機器が環境パラメータを人体に適さない数値範囲に調整し続けることを回避し、空気調和機器の自動調節の正確性を向上させる。
【0101】
上記実施例を実現するために、本願は、メモリと、プロセッサと、メモリに記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムとを含み、前記プロセッサが前記プログラムを実行するときに、前述した方法の実施例に記載の空気調和機器の制御方法を実現する、空気調和機器をさらに提供する。
【0102】
上記実施例を実現するために、本願は、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、当該プログラムがプロセッサによって実行されるときに、前述した方法の実施例に記載の空気調和機器の制御方法を実現する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。
【0103】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの用語の説明を参照することは、その実施例又は例に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語の例示的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例を対象とするものではない。さらに、説明された特定の特徴、構造、材料又は特性は、任意の1つ以上の実施例又は例において適切な方法で結合され得る。また、当業者は、矛盾することなく、本明細書で説明された異なる実施例又は例、ならびに異なる実施例又は例の特徴を結合し、組み合わせることができる。
【0104】
さらに、「第1」、「第2」の用語は、説明のためだけに使用され、相対的な重要性を示し又は示唆するか、又は示される技術的特徴の数を示唆すると理解されるべきではない。したがって、「第1」、「第2」を定義する特徴は、明示的又は暗示的に、少なくとも1つのその特徴を含み得る。本願の説明において、「複数」は特に断りのない限り少なくとも2つ、例えば2つ、3つなどを意味する。
【0105】
フローチャート又は本明細書において他の方法で説明される任意のプロセス又は方法の説明は、指定された論理機能又はプロセスのステップを実装するための1つ又は複数の実行可能命令を含むコードのモジュール、セグメント、又は一部を表すと理解されてもよく、本願の好ましい実施形態の範囲には、本願の実施例が属する技術分野の当業者によって理解されるべきであるように、関係する機能に応じて実質的に同時の方法で又は逆の順序を含む、示された順序又は検討された順序ではなく、機能が実行され得る追加の実装が含まれる。
【0106】
フローチャートで示されるか又は本明細書において他の方法で説明される論理及び/又はステップは、例えば、論理機能を実装するための実行可能命令のシーケンシャルリストであると考えられてもよく、命令実行システム、装置又は機器(例えばコンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、又は命令実行システム、装置又は機器から命令を取得して命令を実行できる他のシステム)の使用に供するか、又はこれらの命令実行システム、装置又は機器と組み合わせて使用するように、任意のコンピュータ読み取り可能な媒体に具体的に実装することができる。本明細書では、「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、命令実行システム、装置又は機器、又はこれらの命令実行システム、装置又は機器と組み合わせて使用するためのプログラムを含み、記憶し、通信し、伝播し、又は伝送することができる任意の装置であり得る。コンピュータ読み取り可能な媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)としては、1つ又は複数の配線を有する電気的接続部(電子装置)、携帯型コンピュータカートリッジ(磁気装置)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能でプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ装置、及びコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CDROM)が挙げられる。さらに、コンピュータ読み取り可能な媒体は、その上に前記プログラムを印刷することができる紙又は他の適切な媒体であってもよく、例えば、紙又は他の媒体を光学的に走査することによって、次いで、編集、解釈、又は必要に応じて他の適切な方法で処理して前記プログラムを電子的に取得し、そしてそれをコンピュータメモリに記憶するからである。
【0107】
本願の各部分は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせで実装されてもよいことを理解されたい。上述した実施形態において、複数のステップ又は方法は、メモリに記憶され、適切な命令実行システムによって実行されるソフトウェア又はファームウェアによって実装されてもよい。例えば、他の実施形態と同様にハードウェアで実装すれば、データ信号に対して論理機能を実装するための論理ゲート回路を有する離散論理回路、適切な組合せ論理ゲート回路を有する特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの当技術分野で知られている以上の技術のいずれか1つ又はそれらの組み合わせによって実装することができる。
【0108】
当業者であれば理解できるように、上述した実施例の方法を実現するために搬送されるステップの全部又は一部が、プログラムによって関連するハードウェアに指示して完了され得、前記プログラムはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよく、当該プログラムが実行される時に、方法の実施例のステップの1つ又はそれらの組み合わせを含む。
【0109】
また、本願の各実施例における各機能ユニットは、1つの処理モジュールに集積されていてもよいし、各ユニットが個別に物理的に存在していてもよいし、2つ以上のユニットが1つのモジュールに集積されていてもよい。上記集積されたモジュールは、ハードウェアの形態で実装されてもよいし、ソフトウェア機能モジュールの形態で実装されてもよい。前記集積されたモジュールは、ソフトウェア機能モジュールの形態で実装され、独立した製品として販売又は使用される場合、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されてもよい。
【0110】
上述した記憶媒体は、読み取り専用メモリ、磁気ディスク又は光ディスクなどであってもよい。以上、本願の実施例を示し、説明してきたが、上記の実施例は例示的なものであり、本願を限定するものとして理解されるものではなく、本願の範囲内で、当業者が上記実施例の変更、修正、置換及び変形を行うことができることを理解されたい。