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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】音源方位標定装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230203BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20230203BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R1/40 320A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021557264
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021033022
(87)【国際公開番号】W WO2022091591
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/040905
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390000011
【氏名又は名称】JFEアドバンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岡 知路
(72)【発明者】
【氏名】小田 将広
(72)【発明者】
【氏名】野村 和裕
(72)【発明者】
【氏名】永野 聡
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530580(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056214(WO,A1)
【文献】特開2014-137323(JP,A)
【文献】特開平02-086397(JP,A)
【文献】特表2005-521283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を測定する複数のマイクロホンを有するアレイセンサと、
前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて各方向の音圧を算出し、前記音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する演算手段と、を有し、
前記複数のマイクロホンは、同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となる(但し、前記2以上の共円多角形の頂点の数の全てが奇数となる構成を除く)ように配置される、音源方位標定装置。
【請求項2】
音波を測定する複数のマイクロホンを有するアレイセンサと、
前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて各方向の音圧を算出し、前記音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する演算手段と、を有し、
前記複数のマイクロホンは、同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となるように配置され、
前記複数のマイクロホンの数は9個以上24個以下である、音源方位標定装置。
【請求項3】
音波を測定する複数のマイクロホンを有するアレイセンサと、
前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて各方向の音圧を算出し、前記音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する演算手段と、を有し、
前記複数のマイクロホンは、同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となるように配置され、
前記音波の波長をλとすると、
前記2以上の共円多角形のうち、最も内側にある共円多角形の外接円の直径は3.0×λ以下である、音源方位標定装置。
【請求項4】
音波を測定する複数のマイクロホンを有するアレイセンサと、
前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて各方向の音圧を算出し、前記音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する演算手段と、を有し、
前記複数のマイクロホンは、同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となるように配置され、
前記音波の波長をλとし、
前記複数のマイクロホンの数をnとすると、
前記2以上の共円多角形のうち、最も外側にある共円多角形の外接円の直径は0.5×λ×n以下である、音源方位標定装置。
【請求項5】
測定対象を撮影するカメラをさらに有し、
前記演算手段は、前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて音圧マップを作成するとともに、前記カメラによって取得される撮影画像と前記音圧マップとを重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の音源方位標定装置。
【請求項6】
前記カメラは、共円多角形の中心に設けられる、請求項5に記載の音源方位標定装置。
【請求項7】
前記複数のマイクロホンのそれぞれは、2つの共円多角形の頂点に設けられる、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の音源方位標定装置。
【請求項8】
共円多角形は正多角形である、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の音源方位標定装置。
【請求項9】
前記2以上の共円多角形のうち、最も外側にある共円多角形の頂点の数は奇数である、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の音源方位標定装置。
【請求項10】
前記演算手段は、前記複数のマイクロホンでそれぞれ取得された前記複数の音圧情報の時間を想定音源方位とマイクロホンの配置とに基づいて設定された分だけずらし、時間をずらした前記複数の音圧情報を加算した加算値を算出し、前記想定音源方位を変化させながら複数の加算値を求めたときに、複数の加算値のうち最大の加算値になる前記想定音源方位を音波の到来方向として標定する、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の音源方位標定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンの数の増大を抑制しながらも指向性を向上させ、且つ、グレーチングローブの発生を抑制できるアレイセンサを有する音源方位標定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音源位置を探索する装置として、平面上に複数のマイクロホンを配置したアレイセンサを有する音源方位標定装置が知られている。当該装置において、高指向性を達成するには、開口を大きくする必要がある。また、マイクロホン毎に観測される音圧の位相差の規則性により、マイクロホン配置によってはグレーチングローブ(偽信号)が発生し、誤標定の原因となる。このグレーチングローブが実領域(音源から180°以内の位置)に発生することを防止するには、マイクロホンの間隔をλ(波長)/2以下にする必要がある。
【0003】
一方、特許文献1には、音源の探索範囲を狭めることでマイクロホンの配置間隔をλ/2以下にしなくてもグレーチングローブの発生を抑制できることが開示されている。このように、探索範囲を狭めることで、マイクロホンの間隔をλ/2以下にしなくてもグレーチングローブの発生を抑制できるものの指向性を向上させるには、さらに開口を大きくする必要があり、開口を大きくしつつグレーチングローブを抑制するには、多くのマイクロホンが必要になる。
【0004】
空間規則性を回避するようにマイクロホンを配置し、マイクロホン毎に観測される音圧の位相差の規則性を抑制することによって、グレーチングローブの発生を抑制する技術も考案されている。例えば、特許文献2には、対数うずまき曲線の形に沿ってアレイの素子を配置することで空間規則性を回避したアレイセンサが開示されている。特許文献3、4には、空間規則性として回転対称性を有するものの、サブアレイを有することでマイクロホン毎に観測される音圧の位相差の規則性を抑制し、これによりグレーチングローブの発生を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/056214号
【文献】特開平10-70412号公報
【文献】特開2011-15050号公報
【文献】特表2005-521283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グレーチングローブの発生を抑制するために、特許文献2~4に開示されたようにマイクロホンを配置した場合、指向性を確保するために開口を大きく取りながらマイクロホン数を少なくするとマイクロホンの配置間隔が広がり、探索範囲内においてグレーチングローブの発生を効果的に抑制することが難しくなる。一方、特許文献1に開示されたアレイセンサのようにマイクロホンの間隔を狭めてグレーチングローブが探索範囲内に入らないようにすると、開口が小さくなり指向性が確保できなくなる、という課題があった。本発明はこのような従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロホンの数の増大を抑制しながらも指向性を向上させ、且つ、グレーチングローブの発生を抑制できるアレイセンサを有する音源方位標定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)音波を測定する複数のマイクロホンを有するアレイセンサと、前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて各方向の音圧を算出し、前記音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する演算手段と、を有し、前記複数のマイクロホンは、同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となるように配置される、音源方位標定装置。
(2)測定対象を撮影するカメラをさらに有し、前記演算手段は、前記アレイセンサによって取得される音波の音圧情報に基づいて音圧マップを作成するとともに、前記カメラによって取得される撮影画像と前記音圧マップとを重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する、(1)に記載の音源方位標定装置。
(3)前記カメラは、共円多角形の中心に設けられる、(2)に記載の音源方位標定装置。
(4)前記複数のマイクロホンのそれぞれは、2つの共円多角形の頂点に設けられる、(1)から(3)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
(5)共円多角形は正多角形である、(1)から(4)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
(6)前記2以上の共円多角形のうち、最も外側にある共円多角形の頂点の数は奇数である、(1)から(5)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
(7)前記複数のマイクロホンの数は9個以上24個以下である、(1)から(6)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
(8)前記音波の波長をλとすると、前記2以上の共円多角形のうち、最も内側にある共円多角形の外接円の直径は3.0×λ以下である、(1)から(7)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
(9)前記音波の波長をλとし、前記複数のマイクロホンの数をnとすると、前記2以上の共円多角形のうち、最も外側にある共円多角形の外接円の直径は0.5×λ×n以下である、(1)から(8)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
(10)前記演算手段は、前記複数のマイクロホンでそれぞれ取得された前記複数の音圧情報の時間を想定音源方位とマイクロホンの配置とに基づいて設定された分だけずらし、時間をずらした前記複数の音圧情報を加算した加算値を算出し、前記想定音源方位を変化させながら複数の加算値を求めたときに、複数の加算値のうち最大の加算値になる前記想定音源方位を音波の到来方向として標定する、(1)から(9)の何れか1つに記載の音源方位標定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る音源方位標定装置は、複数のマイクロホンが同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となるように配置されるアレイセンサを有する。当該アレイセンサは、マイクロホンの数の増大を抑制しながらも指向性を向上させ、且つ、グレーチングローブの発生を抑制できるので、当該アレイセンサを有する音源方位標定装置は、高い精度で音源発生位置を標定できる装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る音源方位標定装置10の全体構成を示す図である。
図2図2は、アレイセンサ14におけるマイクロホン15の配置を示す図である。
図3図3は、音源方位標定装置10の機能ブロック図である。
図4図4は、音波の到来方向の一例を示す模式図である。
図5図5は、音波情報が複数のマイクロホンによって検出される様子を示す模式図である。
図6図6は、各マイクロホンによって検出された音圧情報の一例を示すグラフである。
図7図7は、アレイセンサ40の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。
図8図8は、アレイセンサ42の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、アレイセンサ44の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。
図10図10は、アレイセンサ14の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。
図11図11は、アレイセンサ46の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。
図12図12は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第1グラフである。
図13図13は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第2グラフである。
図14図14は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第3グラフである。
図15図15は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第4グラフである。
図16図16は、7-9角形のアレイセンサの音源強度比を示す図である。
図17図17は、9-11角形のアレイセンサの音源強度比を示す図である。
図18図18は、6-7角形のアレイセンサの音源強度比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明する。図1は、本実施形態に係る音源方位標定装置10の全体構成を示す図である。図1(a)は、音源方位標定装置10の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図であり、図1(c)は音源方位標定装置10の背面図である。
【0011】
本実施形態に係る音源方位標定装置10は、カメラ12と、アレイセンサ14と、演算手段16と、表示手段18と、入力手段20と、筐体22とを有する。図1に示した例では、筐体22の正面側にカメラ12およびアレイセンサ14が設けられ、筐体22の内部に演算手段16が設けられ、筐体22の背面側に表示手段18および入力手段20が設けられる。
【0012】
カメラ12は、測定対象を撮影し、得られた撮影画像を演算手段16に出力する。撮影画像は、ビームフォーミング法で得られた音波の2次元音圧マップと重ね合わせる目的で用いられる。ここで、ビームフォーミング法とは、複数のマイクロホンで測定される音波の位相差を用いて、当該マイクロホンの正面方向に対する音波の到来角度を求める計算手法をいう。カメラ12の倍率、視野の広さ等は、所望の探索範囲に応じて、適宜調節されてよい。カメラ12は、例えば、CCDセンサまたはCMOSセンサ等のイメージセンサと、レンズを備えるデジタルカメラである。
【0013】
カメラ12は、アレイセンサ14の中心に設けられる。カメラ12をアレイセンサ14の中心に設けることで、撮影画像をビームフォーミング法で得られた音圧マップと重ね合わせる際に、測定対象までの距離によらずズレなく、音圧マップとの重ね合わせ画像を作成できる。
【0014】
アレイセンサ14は、複数のマイクロホン15を有する。マイクロホン15は、音源から発せられた音波を測定し、音圧情報を出力する。本実施形態において、複数のマイクロホン15は、同一平面であって中心が同じ2つの共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、複数のマイクロホン15の全体が非回転対称となるように配置される。マイクロホン15は、可聴音から周波数100kHzの範囲内の音波に感度を持ち、取得された音圧情報は、演算手段によりバンドパスフィルター処理された任意の測定周波数に対してビームフォーミング計算を実施される。なお、マイクロホン15が、所定の広帯域の音波に対し感度を有する場合について例示しているが、単一波長もしくは狭帯域の音波に対し感度を有するものであってもよい。
【0015】
図2は、アレイセンサ14におけるマイクロホン15の配置を示す図である。本実施形態に係る音源方位標定装置10において、アレイセンサ14は、例えば、13個のマイクロホン15を有する。13個のマイクロホン15は、例えば、大気中を伝搬する40kHzの音波(波長約8.7mm)が測定対象であるとき、外接円の直径がφ41mmである外側の共円正7角形の各頂点の位置と、外接円の直径がφ15.3mmである内側の共円正6角形の各頂点の位置とにそれぞれ設けられる。外側の共円正7角形の外接円の中心は、内側の共円正6角形の外接円の中心と同じであり、当該位置にカメラ12が設けられる。なお、測定する音波の周波数及び共円正n角形の外接円の大きさは、これに限定されるものではなく、例えば可聴音(例えば20Hz)から周波数100kHzの範囲内から測定周波数を選択し、その周波数(波長)に応じて共円正n角形の外接円の大きさを適宜設定することができる。
【0016】
本実施形態に係る音源方位標定装置10では、13個のマイクロホン15が同じ中心の共円多角形である外側の共円正7角形と、内側の共円正6角形の各頂点とにそれぞれ設けられており、このように配置されたマイクロホン15は、全体として非回転対称となる。ここで、非回転対称とは、共円多角形の外接円の中心に対してアレイセンサ14を360°回転させる間に、全てのマイクロホン15が同時に回転前と同じ配置にならない配置を意味する。このように、複数のマイクロホン15を全体として非回転対称となるように配置することで、マイクロホンの数の増大を抑制しながらも指向性を向上でき、グレーチングローブの発生を抑制できるアレイセンサ14となる。
【0017】
演算手段16は、アレイセンサ14で測定された音圧情報に対してビームフォーミング計算を行うことで、分割された方位ごとに音波の音圧強度を示した音圧マップを作成する。演算手段16は、カメラ12によって撮影された撮影画像と音圧マップとを重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する。重ね合わせ画像は、音圧マップを撮影画像に重ね合わせることで作成される。重ね合わせ画像では、被写体と音圧強度とが重ね合わされて表示されるので、使用者が当該重ね合わせ画像を確認することで、撮影画像中の被写体の位置と音波の音圧分布との対応関係が一目で判別できる。演算手段16は、作成した重ね合わせ画像を表示手段18へ出力し、表示手段18に重ね合わせ画像を表示させる。
【0018】
表示手段18は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)であってよく、演算手段16で作成された重ね合わせ画像を表示する。入力手段20は、例えば、プッシュスイッチであってよく、表示手段18の近傍に複数設けられる。使用者が入力手段20を押圧することで、所定の入力信号が演算手段16に入力される。プッシュスイッチに替えて、またはプッシュスイッチとともにタッチパネル方式の入力手段20を用いてもよい。
【0019】
図3は、音源方位標定装置10の機能ブロック図である。図3を用いて、音源方位標定装置10における重ね合わせ画像の表示処理について説明する。演算手段16は、処理部30と、格納部32を有する。処理部30は、例えば、CPU等であって、格納部32に格納されたプログラムやデータを用いて、音源方位標定装置10の動作を制御し、所定の演算を実行する。格納部32は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体およびその読み書き装置である。格納部32には、音源方位標定装置10が有する種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラム実行中に使用する情報等が予め格納されている。
【0020】
カメラ12は、測定対象を撮影する。カメラ12は、撮影画像を処理部30に出力する。アレイセンサ14は、測定対象の方向から発せられる音波の音圧を測定する。アレイセンサ14は、測定した音圧を音圧情報として処理部30に出力する。
【0021】
処理部30は、カメラの視野に応じた範囲を予め定められた方位分割数に分け、アレイセンサ14から取得した音圧情報に対してビームフォーミング計算を行うことで、撮影領域に対応した音圧マップを作成する。処理部30は、撮影領域に対応した音圧マップを撮影画像に重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する。処理部30は、例えば、音圧マップを透過画像にして撮影画像に重ね合わせることで重ね合わせ画像を作成する。
【0022】
処理部30は、アレイセンサ14によって取得される音波の音圧情報に基づいて各方向の音圧を算出し、音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する。この際、処理部30は、例えば各マイクロホン15で検出される音圧情報の時間差(位相差)から音源の方位を標定するいわゆる遅延和法を用いたビームフォーミング計算によって音波の到来方向を標定する。
【0023】
図4は、音波の到来方向の一例を示す模式図である。図4に示すように、音波の到来方向は、音源が存在する方位であり、マイクロホン15の配置面(XY面)に対し直交する方向(Z方向)に対する方位角θと、配置面(XY面)上の基準となる任意の方向(例えばY方向)に対する方位角φとによって到来角(θ、ψ)として表現される。処理部30は、複数のマイクロホン15において検出された音圧情報を用いて、遅延和法によって到来角(θ、ψ)を決定する。
【0024】
図5は音波情報が複数のマイクロホンによって検出される様子を示す模式図であり、図6は各マイクロホンによって検出された音圧情報の一例を示すグラフである。なお、説明の容易のために、図5及び図6では、3つのマイクロホン15a~15cを並べた場合について例示する。音波が到来角(θ、ψ)から到来すると、マイクロホン15aを基準マイクとしたとき、マイクロホン15bにはマイクロホン15aに対して時間差τだけずれて音波が到達する。マイクロホン15aとマイクロホン15bに波が到達する時間差τ(s)は、音速をv(mm/s)、方位角θ、マイクロホン15a、15bの距離L=d(mm)とすると、下記式(1)により求められる。
【0025】
τ=(L×sinθ)/v ・・・(1)
【0026】
なお、図5及び図6では、方位角θに起因して時間差τ(位相差)が生じることを示しているが、方位角ψに起因した時間差τも生じる。方位角ψに対する考え方も式(1)と同一であり、時間差τは到来角(θ、ψ)に応じて変化する。
【0027】
式(1)において、マイクロホン間隔に対して十分遠方にある音源から音波が到来することを前提とすると、基準のマイクロホン15aに対して距離Lが間隔2dだけ離れたマイクロホン15cでの音波の到来時間は時間差2τになる。したがって、図6に示すように、各マイクロホン15a~15cで検出した音圧情報は基準のマイクロホン15aからの距離Lに応じた時間差τ分だけずれている。これらを利用して、処理部30は音波の到来角(θ、ψ)を標定する。
【0028】
具体的には、処理部30は、複数のマイクロホン15においてそれぞれ取得された音圧情報の時間を時間差τ分ずらし、時間をずらした複数の音圧情報を加算した加算値を算出する。なお、処理部30には、到来角(θ、ψ)に対応した複数の異なる時間差τが予め設定されており、この複数の異なる時間差τは、距離Lに応じて複数のマイクロホン15毎にそれぞれ設定されている。処理部30は、設定された複数の異なる時間差τを用いて、ずらす時間を変化させて複数の加算値を求める。
【0029】
到来角(θ、ψ)に対応する時間差τで加算された加算値は各音圧情報の波形の位相が揃うため最大になる。一方、複数の加算値のうち、到来角(θ、ψ)に対応していない時間差τで加算された加算値は、位相が揃わずに互いに打ち消し合って大きくならない。そこで、処理部30は、音源探索範囲内で想定する想定到来角(θ‘、ψ’)を逐次変化させて求まる複数の加算値のうち、最大の加算値になる想定到来角を音源の方位として標定する。
【0030】
このように、上述した遅延和法によって方位を標定する場合、ビーム幅を狭くして指向性を高めつつ、グレーチングローブの発生を抑制した特性のアレイセンサ14を用いることが望ましい。この点、複数のマイクロホン15が図2のように配置されたアレイセンサ14の場合、ビーム幅が狭くグレーチングローブの発生を抑制した特性を得ることができる(後述する図10参照)。よって、遅延和法による方位の標定を高精度に行うことができる。
【0031】
なお、図5図7において、処理部30が時間差τに基づいて到来角(θ、ψ)を標定する遅延和法について例示したが、これに限定されず公知の種々の方法を適用することができる。例えば、各マイクロホン15a~15cが同時刻に観測した音圧情報を2次元の空間的な音圧場と捉えて、空間的に2次元フーリエ変換を実施することにより求められる空間波数と到来角(θ、ψ)に相関があることを利用しても遅延和法によるビームフォーミング計算とほぼ等価な音源方位標定結果が得られる。
【0032】
処理部30は、作成した重ね合わせ画像を表示手段18に表示する。表示手段18に表示する重ね合わせ画像に用いる音圧マップとしては、音圧強度に応じて連続的に異なる色に色分けさえたカラー画像を用いてよい。処理部30は、入力手段20から表示手段18に表示された画像を保存する指示が入力されると、処理部30は、格納部32にカメラ画像および重ね合わせ画像を格納する。
【0033】
本実施形態に係る音源方位標定装置10は、上記のようにして重ね合わせ画像を作成して表示手段18に表示する。このような音源方位標定装置10においては、音源方位標定精度を高める観点で、音源方位標定性能の高いアレイセンサを用いることが好ましい。アレイセンサの音源方位標定性能は、複数のマイクロホン15の配置に大きく影響される。
【0034】
音源方位標定性能の指標としては、指向性と音源強度比の2つがある。指向性とは、音圧マップに観測される音源音圧(以後、「メインローブ」と記載する)をシャープに表示できるか否かを示す指標であり、指向性が高い程、メインローブの半値全幅(FWHM)が狭くなるので音源方位の標定に有利になる。指向性を高めるには、アレイセンサの開口を大きくすることが有効である。開口とは外側に配置された複数のマイクロホン15を通る円の直径であり、本実施形態では、外側の共円多角形の直径である。
【0035】
音源強度比とは、グレーチングローブ(偽信号)の強度に対するメインローブの強度比であり、(メインローブの強度)/(グレーチングローブの強度)で算出される。音源強度比が高いことは、メインローブの強度に比べてグレーチングローブの強度が十分小さいことを意味する。メインローブの強度に対してグレーチングローブの強度を小さくできれば、グレーチングローブによる音源方位の誤判定を抑制できるので、音源強度比が高いことは音源方位の標定に有利になる。音源強度比を高くするには、マイクロホン15の数を多くしてマイクロホン15の配置間隔を狭くすることが有効であるが、製品コストおよび演算負荷軽減の観点からマイクロホン15の数はなるべく少ない方が好ましい。
【0036】
そこで、マイクロホン15の数の増大を抑制しながらグレーチングローブの発生を抑制できる音源方位標定性能の高いアレイセンサを検討するべく、マイクロホン15の配置を変えた種々のアレイセンサの音圧マップをシミュレーションにより確認した。なお、本シミュレーションでは,測定波長に対して開口を一定としてスケールを一般化したものであり、測定波長が変化すれば、開口(実寸法)はその波長変化に応じて変化する。指向性は測定する音波の波長に対する開口の大きさによって定まることから、本シミュレーションでは測定する音波の波長に対して開口の大きさを一定(4λ:λは音波の波長)とし、音圧マップにおける音源強度比と、高い強度のグレーチングローブが発生した位置とでアレイセンサを評価した。シミュレーションは、気温25℃、1気圧の空気中の音速(約348m/s)を用い、音源方位標定装置10の正面5mの位置に音源があるとし、当該音源から発せられる音波(周波数40kHz)に対し上下方向±85°、左右方向±85°を探索範囲として実施した。
【0037】
図7は、アレイセンサ40の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。図7(a)は、アレイセンサ40におけるマイクロホン15の配置を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示したアレイセンサ40によって取得される音圧情報に基づいて作成される音圧マップを示す図である。
【0038】
図7(a)に示すように、9個のマイクロホン15を間隔λで等間隔に十字状に配置したアレイセンサ40の音圧マップ(図7(b))では、マイクロホン間隔がλ/2以上の規則性の高い配置であるので、中心のメインローブと同じ強度のグレーチングローブが上下左右の端部に確認される。メインローブの強度とグレーチングローブの強度とが同じであり、音源強度比は1.0と小さい。この結果から、マイクロホン15を十字状に配置したアレイセンサ40では、グレーチングローブの発生を抑制できない。本実施形態において、音源強度比を算出するのに用いるメインローブの強度およびグレーチングローブの強度はともに探索範囲内の最大値である。
【0039】
図8は、アレイセンサ42の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。図8(a)は、アレイセンサ42のマイクロホン15の配置を示す図である。図8(b)は、図8(a)に示したアレイセンサ42によって取得される音圧情報に基づいて作成される音圧マップを示す図である。図8(b)を作成するのに用いたシミュレーションの条件は、マイクロホン15の配置以外は全て図7と同じである。
【0040】
図8(a)に示すように、7個のマイクロホン15を共円正7角形の頂点にそれぞれ配置したアレイセンサ42の音圧マップ(図8(b))では音源強度比が1.4になり、図7に示したアレイセンサ42よりも音源強度比が高くなった。このように、単一の共円正多角形の頂点配置は音源強度比の向上に有効であることが確認された。しかしながら、マイクロホン15の配置間隔が広いために、グレーチングローブの強度は依然高く、且つ、中心のメインローブの周囲にグレーチングローブが発生した。このように、メインローブとグレーチングローブとが近接していると、メインローブとグレーチングローブとが共に視野内に現れ、音源位置の誤判定の原因になるので好ましくない。この結果から、アレイセンサ42は、グレーチングローブの発生を十分に抑制できず、且つ、メインローブに近い位置でグレーチングローブが発生するため、音源方位の標定に好ましくないことが確認された。
【0041】
図9は、アレイセンサ44の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。図9(a)は、アレイセンサ44のマイクロホン15の配置を示す図である。図9(b)は、図9(a)に示したアレイセンサ44によって取得される音圧情報に基づいて作成される音圧マップを示す図である。図9(b)を作成するのに用いたシミュレーションの条件もマイクロホン15の配置以外は全て図7と同じである。図8(a)に示した単一の共円正多角形の頂点に配置した場合は、マイクロホン15の配置間隔が広いので、グレーチングローブを十分に抑制できなかった。マイクロホン15の配置間隔を狭くするために、図9(a)に示すように、16個のマイクロホン15を同じ中心であって2つの共円正8角形の頂点にそれぞれ配置したアレイセンサ44の音圧マップを確認した。
【0042】
図9(a)に示したアレイセンサ44の音圧マップ(図9(b))では、音源強度比が1.7となった。しかしながら、中心のメインローブの周囲に広範囲にわたり、メインローブと同等サイズの比較的強度の高いグレーチングローブが発生した。このグレーチングローブは、アレイセンサ44を構成する複数のマイクロホン15に回転対称性が存在するために、それぞれのマイクロホン15によって取得される音圧の位相差に規則性が生じ、この規則性により発生したものと考えられる。上述したように、メインローブ周辺の広範囲にわたり、メインローブと同等サイズの比較的強度の高いグレーチングローブが発生すると、音源方位の誤判定の原因になるので好ましくない。この結果から、アレイセンサ44は、音源方位の標定に好ましくないことが確認された。
【0043】
図10は、アレイセンサ14の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。図10(a)は、アレイセンサ14におけるマイクロホン15の配置を示す図である。図10(b)は、図10(a)に示したアレイセンサ14によって取得される音圧情報に基づいて作成される音圧マップを示す図である。図10(b)を作成するのに用いたシミュレーションの条件もマイクロホン15の配置以外は全て図7と同じである。
【0044】
図10(a)に示すように、13個のマイクロホン15を同じ中心であって外側の共円正7角形の頂点と内側の共円正6角形の頂点とにそれぞれ配置したアレイセンサ14の音圧マップ(図10(b))では音源強度比が2.2となり、且つ、メインローブの周囲の広範囲にわたり、メインローブと同等サイズの比較的強度の高いグレーチングローブが発生しなかった。図10(a)に示したアレイセンサ14は、マイクロホン15が全体として非回転対称となるように配置されているので、マイクロホン15によって取得される音圧の位相差の規則性が回避され、これにより、メインローブと同等サイズの比較的強度の高いグレーチングローブの発生が抑制されたものと考えられる。
【0045】
これらの結果から、アレイセンサ14は、マイクロホン15の数の増大を抑制しつつグレーチングローブの発生を抑制できるアレイセンサであることが確認された。したがって、同一平面であって中心が同じ2つの共円多角形の頂点にマイクロホン15が全体として非回転対称となるように配置されたアレイセンサ14は、マイクロホン15の数の増大を抑制しながら指向性を向上でき、且つ、グレーチングローブの発生を抑制できるアレイセンサとなる。本実施形態に係る音源方位標定装置10は、このようなアレイセンサ14を有することから、高い精度で音源方位を標定できる装置となる。
【0046】
図10に示したアレイセンサ14の例においては、外側、内側ともに共円正多角形のそれぞれの頂点にマイクロホン15を配置した例を示したが、内側、外側ともに共円正多角形に限らない。図11は、アレイセンサ46の音圧マップのシミュレーション結果を示す図である。図11(a)は、アレイセンサ46におけるマイクロホン15の配置を示す図である。図11(b)は、図11(a)に示したアレイセンサ46によって取得される音圧情報に基づいて作成される音圧マップを示す図である。図11(b)を算出するのに用いたシミュレーションの条件もマイクロホン15の配置以外は全て図7と同じである。
【0047】
図11(a)に示したアレイセンサ46は、図10に示したアレイセンサ14のマイクロホン15の位置を、外側の共円正7角形の外接円または内側の共円正6角形の外接円に沿って15°または-15°移動させて、2つのマイクロホン15を近接配置させたものである。このようにマイクロホン15の配置位置を移動させたアレイセンサ46であっても音源強度比は1.7となり、且つ、メインローブの周囲の広範囲にわたり、メインローブと同等サイズの比較的強度の高いグレーチングローブが発生しなかった。
【0048】
この結果から、内側の共円多角形および外側の共円多角形は正多角形に限らず、それぞれの共円正多角形の頂点から外接円の円周方向に±15°の範囲内であればマイクロホン15の配置位置を移動させてもよいことが確認された。但し、内側および外側の共円多角形が正多角形であることでグレーチングローブの発生を抑制し、音源強度比が高められるので、内側および外側の共円多角形は共円正多角形であることが好ましい。図10に示したアレイセンサ14の例においては2つの共円正多角形のそれぞれの頂点にマイクロホン15を配置した例を示したが、共円多角形の数は2つに限らず、2以上であればよい
【0049】
図1に示した例ではカメラ12および表示手段18を有する音源方位標定装置10を示したが、これに限らない。例えば、重ね合わせ画像を無線通信により他の表示手段に伝送する場合には、音源方位標定装置10は表示手段18を有さなくてもよい。さらに、例えば、音源方位標定装置10が、音波の到来方向を標定するだけの装置であれば、カメラ12および表示手段18を有さなくてもよい。この場合に演算手段16は、アレイセンサ14によって測定された音圧情報に対してビームフォーミング計算を行って、必要に応じて任意に設定された探索範囲の各方向の音圧を算出し、当該音圧が最大となる方向を音波の到来方向として標定する。
【0050】
次に、マイクロホン15を、同一平面であって中心が同じ2以上の共円多角形の頂点に全体として非回転対称となるように配置することを前提として、さらに、好ましいマイクロホンの配置について確認した結果を説明する。この確認では、観測視野を左右方向50°、上下方向30°とし、観測視野の4つの隅に音源を設置した場合の音圧マップをシミュレーションにより作成し、当該音圧マップから算出される音源強度比によりマイクロホン15の配置を評価した。以下の説明において、内側の共円正多角形の外接円を「内側円」と記載し、外側の共円正多角形の外接円を「外側円」と記載する。
【0051】
図12は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第1グラフである。図12において、横軸は開口/(波長×マイクロホン数)(1/個)であり、縦軸は音源強度比である。グレーチングローブは、開口が大きくなると発生しやすくなる一方で、音波の波長が長くなる、あるいは、マイクロホン15の数が多くなると発生しにくくなる。このため、横軸に開口(外側円の直径)を波長およびマイクロホン数で除した値を用いて、各アレイセンサの音源強度比を比較した。図12におけるn-m角形は、左側の数字nが内側の共円正多角形の頂点の数を示し、右側の数字mが外側の共円正多角形の頂点の数を示す。すなわち、10-11角形は、内側が共円正10角形であり、外側が共円正11角形のそれぞれの頂点にマイクロホン15を設けたアレイセンサを意味する。内側円の直径は7mm以上であって、音源強度比が最も大きくなる値とした。この内側円の直径の定め方は、図12図15において同じであり、アレイセンサの表示方法は図12図17において同じである。
【0052】
図12に示すように、外側の共円正多角形の頂点の数が奇数であるアレイセンサの音源強度比は、外側の共円正多角形の頂点の数が偶数であるアレイセンサの音源強度比よりも高くなった。シミュレーション条件は各アレイセンサで同じなので、音源強度比が高いことはグレーチングローブの発生が抑制されていることを示す。図12に示した結果から、音源方位標定装置10に用いられるアレイセンサとしては、外側の共円正多角形の頂点の数が奇数であるアレイセンサを用いることが好ましく、これにより、グレーチングローブの発生を抑制できることが確認された。3以上の共円多角形の各頂点にマイクロホン15が設けられるアレイセンサの場合には、最も外側の共円多角形の頂点の数が奇数であればよい。
【0053】
図13は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第2グラフである。図13の横軸は開口/(波長×マイクロホン数)(1/個)であり、縦軸は音源強度比/マイクロホン数(1/個)である。図13に示すように、音源強度比/マイクロホン数の値は、アレイセンサのマイクロホン15の数が増えるに従って小さくなった。特に、マイクロホン15の数が24個(11-13角形)から、28個(13-15角形)になると音源強度比/マイクロホン数の値が大きく低下している。これは、24個を超えてマイクロホン数を増やしても、マイクロホン増加による音源強度比の増加の効果が小さいことを示しており、このことから、アレイセンサにおけるマイクロホンの数は24個以下が好ましいことがわかる。
【0054】
図13に示すように、外側の共円正多角形の開口が大きくなると、音源強度比/マイクロホン数の値が低下する。また、外側の共円正多角形の開口を広くすると、グレーチングローブの出現範囲が徐々に広範囲に広がっていくので、外側の共円正多角形の開口は0.5×λ×n以下(λ:音波の波長、n:全マイクロホンの数)であることが好ましい。一方、上述したように、指向性を高めるには開口を大きくすることが有効である。このため、共円正多角形の開口は、0.5×λ×nであることがより好ましいといえる。
【0055】
一方、アレイセンサのマイクロホン15の数が少なくなると、マイクロホンの配置間隔が広がりグレーチングローブが発生し易くなるので、音源強度比が低下することが懸念される。そこで、(開口/波長):3.8(指向性FWHM:15°)において音源強度比が1.7以上であることを、所定の大きさの開口を確保しつつ所定の音源強度比を確保するための判断基準とし、当該判断基準を満たす最小のマイクロホン15の数の確認を行った。
【0056】
図14は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第3グラフである。図14の横軸は開口/波長であり、縦軸は音源強度比である。図14に示すように、4-5角形のアレイセンサは上記判断基準を満たしたが、3-5角形のアレイセンサは上記判断基準を満たさなかった。この結果から、アレイセンサが有するマイクロホン15の数は9個以上であることが好ましいことが確認された。
【0057】
図15は、種々のアレイセンサの音源強度比を示す第4グラフである。図15の横軸は、開口/(波長×マイクロホン数)(1/個)であり、縦軸は音源強度比である。図15に示すように、8-7角形のアレイセンサの音源強度比と8-9角形のアレイセンサの音源強度比とがほぼ同等になった。9-10角形の音源強度比は、10-9角形の音源強度比よりも低くなっているが、その下がり幅は図12で確認された外側が正奇数角形であることによる下がり幅とほぼ同等であった。同様に、7-8角形の音源強度比も8-7角形の音源強度比よりも低くなっているが、その下がり幅は図12で確認された外側が正奇数角形であることによる下がり幅とほぼ同等であった。これらの結果から、外側の共円正多角形の頂点の数は、内側円の頂点の数より多くなくてもよく、内側の共円多角形の頂点の数が、外側の共円多角形の頂点の数より多くてもよいことが確認された。
【0058】
図16は、7-9角形のアレイセンサの外側の共円正9角形の外接円(以後、「外側円」と記載する場合がある。)の直径と、内側の共円正7角形の外接円(以後、「内側円」と記載する場合がある。)の直径を変えたアレイセンサの音源強度比を示す図である。図16の横軸は外側円の直径/波長であり、縦軸は内側円の直径/波長である。図16図18を求めるために実施したシミュレーション条件は、図12と同じである。
【0059】
図17は、9-11角形のアレイセンサの外側円の直径と、内側円の直径を変えたアレイセンサの音源強度比を示す図である。さらに、図18は、6-7角形のアレイセンサの外側円の直径と、内側円の直径を変えたアレイセンサの音源強度比を示す図である。図17図18において横軸は外側円の直径/波長であり、縦軸は内側円の直径/波長である。
【0060】
図16図18に示すように、内側円の直径/波長を3.0以下、すなわち内側円の直径を3×λ以下(λ:音波の波長)にすることで音源強度比が高くなることがわかる。内側円の直径/波長を2.5以下にすることで、音源強度がより高くなり、内側円の直径/波長を2.0にすることで、音源強度比がさらに高くなることがわかる。これらの結果から、内側円の直径/波長は3.0以下であることが好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0とすることがさらに好ましいことがわかる。一方、内側円の直径が7mmより小さくなると、マイクロホン15およびカメラ12の配置が困難になる場合があるので、内側円の直径は7mm以上であることが好ましい。3以上の共円多角形の各頂点にマイクロホン15が設けられるアレイセンサの場合には、最も内側にある共円多角形の外接円の直径を3.0×λ以下とすればよい。
【0061】
以上の結果をまとめると、マイクロホン15が同一平面であって中心が同じ2つの共円多角形の頂点にそれぞれ設けられ、全体として非回転対称となるように配置されたアレイセンサにおいては、下記1-5に記載した通りにマイクロホン15を配置することが好ましく、これにより、グレーチングローブの発生を抑制できることが確認された。
1.外側の共円多角形の頂点の数は奇数である。
2.アレイセンサのマイクロホン15の数は24個以下である。
3.アレイセンサのマイクロホン15の数は9個以上である。
4.アレイセンサの開口は0.5×λ×n以下である(λ:音波の波長、n:マイクロホン数)。
5.内側円の直径は3.0×λ以下である(λ:音波の波長)。
【符号の説明】
【0062】
10 音源方位標定装置
12 カメラ
14 アレイセンサ
15 マイクロホン
16 演算手段
18 表示手段
20 入力手段
22 筐体
30 処理部
32 格納部
40 アレイセンサ
42 アレイセンサ
44 アレイセンサ
46 アレイセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図18