(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-02
(45)【発行日】2023-02-10
(54)【発明の名称】融雪用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20230203BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230203BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230203BHJP
【FI】
C09K3/18
C09D201/00
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2022160952
(22)【出願日】2022-10-05
【審査請求日】2022-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522392999
【氏名又は名称】秋葉 正晴
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 正晴
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112266697(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108373705(CN,A)
【文献】特開2014-201683(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0113793(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケイ素の微粒子と、分散媒と、接着剤と、を含有することを特徴とする融雪用塗料組成物
であって、
金属ケイ素の微粒子が、純度90%以上のケイ素から構成されるテラヘルツ鉱石であって、かつ、体積平均粒子径が0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする融雪用塗料組成物。
【請求項2】
金属ケイ素の微粒子の濃度が1g/L以上300g/L以下であることを特徴とする請求項1に記載の融雪用塗料組成物。
【請求項3】
接着剤がストレートアスファルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の融雪用塗料組成物。
【請求項4】
分散媒が水であり、融雪用塗料組成物のpHが6以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の融雪用塗料組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の融雪用塗料組成物が塗布されたアスファルト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪量の多い寒冷地では、冬の路面凍結や積雪が交通障害の要因となっている。このような冬場の路面凍結や路面への積雪を防止するために、凍結抑止や融雪、融氷のため、融雪剤が用いられている。
【0003】
従来から用いられている融雪剤としては、例えば、塩化カルシウムや塩化ナトリウムが知られている。これら融雪剤は、融雪能力が高く、散布後直ちにその効果を発揮するため、固体状(粒状)または水溶液の状態で積雪した、あるいは凍結した路面等に散布され使用される(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、塩化カルシウムや塩化ナトリウムは、融雪効果は速効性を有する反面、効果の持続時間が短く、融雪水が再凍結して路面に鏡面が発生するとかえって滑りやすくなり交通に支障を来たし、また地表に残存した塩化カルシウムが車両やフェンスなどの金属を錆びさせ、また土壌の残留や河川への流出によって環境汚染の原因となり、さらに植物の生長を阻害するなど動植物に対して安全衛生面での問題がある。
【0005】
特許文献2には、融雪剤である金属塩にセルロースナノファイバーを含有させる融雪剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-241621号公報
【文献】特開2021-113248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されたいずれの融雪剤も塩化カルシウムや塩化ナトリウムをはじめとする金属塩を使用したものであって、車両やフェンスなどの金属を錆びさせる塩害を発生させること、また土壌の残留や河川への流出による環境汚染を引き起こすという問題が生じる。
【0008】
また、路面の積雪や凍結のおそれが生じる度に、融雪剤を路面に散布する必要が生じるため、手間とコストを要していた。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の融雪用塗料組成物を路面に塗布することにより、コンクリートやアスファルト等の路面に簡単に融雪効果を付与することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]金属ケイ素の微粒子と、分散媒と、接着剤と、を含有することを特徴とする融雪用塗料組成物。
【0011】
[2]金属ケイ素の微粒子が、純度90%以上のケイ素から構成されるテラヘルツ鉱石であって、かつ、体積平均粒子径が0.1μm以上100μm以下であることを特徴とする[1]に記載の融雪用塗料組成物。
【0012】
[3]金属ケイ素の微粒子の濃度が1g/L以上300g/L以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の融雪用塗料組成物。
【0013】
[4]接着剤がストレートアスファルトであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の融雪用塗料組成物。
【0014】
[5]分散媒が水であり、融雪用塗料組成物のpHが6以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の融雪用塗料組成物。
【0015】
[6][1]又は[2]に記載の融雪用塗料組成物が塗布されたアスファルト組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る融雪用塗料組成物によれば、金属塩から成る融雪剤を使用せずに、又は、少ない使用量であっても、コンクリート又はアスファルト表面に存在している雪や氷を効率的に融解させることができる。また、コンクリート又はアスファルトの熱をコンクリート又はアスファルト表面に存在している雪や氷に効率的に伝えることができるため、積雪や凍結を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る融雪用塗料組成物の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<<融雪用塗料組成物>>
本発明に係る融雪用塗料組成物は、少なくとも、金属ケイ素の微粒子と、分散媒と、接着剤と、を含有することを特徴とする融雪用塗料組成物である。
【0019】
本発明に係る融雪用塗料組成物における金属ケイ素の微粒子の濃度は、融雪用塗料組成物中に金属ケイ素の微粒子が均一に分散することができる濃度であれば特に制限されるものではないが、1g/L以上300g/L以下の範囲が好ましく、10g/L以上100g/Lであることがより好ましく、15g/L以上50g/L以下であることがさらに好ましい。
【0020】
分散媒及び接着剤の組成により最適な金属ケイ素微粒子の濃度は変化するものの、融雪用塗料組成物における金属ケイ素の微粒子の濃度が上記の範囲内であれば、分散媒に微粒子を均一に分散することが可能であり、塗料を塗布した際に均一厚みの塗膜を得ることができる。
微粒子濃度が上記範囲より高い場合には、粘度が高いことにより塗膜の形成が困難になる。微粒子濃度が上記範囲より低い場合には、融雪効果が著しく低下する。
【0021】
本発明に係る融雪用塗料組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、分散剤、防腐剤、レベリング剤、防汚剤等が挙げられる。
【0022】
<金属ケイ素の微粒子>
金属ケイ素の微粒子は、ケイ素を主成分として含む微粒子であれば良い。主成分とは、50質量%以上を意味するものとする。本発明に係る金属ケイ素の微粒子は、単結晶であってもよく、多結晶であってもよく、非晶質であってもよい。
また、本発明に係る金属ケイ素の微粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、1μm以上10μm以下の範囲であることがより好ましい。金属ケイ素の微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球形、フレーク形状、板状であってもよい。
【0023】
金属ケイ素は、他のセラミック材料に比べて熱伝導率が高く、熱交換効率を高くすることができるため、路面の熱を雪や氷に伝えやすく好ましい。さらに、金属ケイ素のモース硬度は7であり、硬度が高い上に酸化しにくいため、コンクリート又はアスファルトに塗布した場合であっても、劣化が生じにくい。
【0024】
(テラヘルツ鉱石)
テラヘルツ鉱石は、金属ケイ素を主成分とする鉱石である。本発明に係るテラヘルツ鉱石は、純度90%以上のケイ素から構成されていることが好ましく。より好ましくは純度95%以上である。また、本発明に係るテラヘルツ鉱石の微粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、1μm以上10μm以下の範囲であることがより好ましい。テラヘルツ鉱石の微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球形、フレーク形状、板状であってもよい。
【0025】
テラヘルツ鉱石は、外部から加熱等のエネルギーを加えることにより、テラヘルツ波を発生させると言われている鉱石である。テラヘルツ波は、周波数100GHz~10THzの電磁波であり、周波数が光波と電波との中間領域に該当する。ケイ素の純度が高いテラヘルツ鉱石を用いることにより、コンクリート又はアスファルトからの熱を受けた際に、テラヘルツ鉱石が効率的にテラヘルツ波を発生させることが期待でき、融雪効果を高めることができる。
【0026】
本発明において体積平均粒子径は、水に金属ケイ素の微粒子又はテラヘルツ鉱石の微粒子を分散させて調製した分散液を光散乱法により測定することにより見積もることができる。体積平均粒子径は、前記微粒子の体積基準の粒度分布を光散乱法により測定し、得られた粒度分布(体積基準)において累積頻度が50%となる粒子径(D50)を採用することができる。
【0027】
<分散媒>
分散媒は、金属ケイ素の微粒子を分散させ、接着剤に均一に分散させる役割を有する。本発明に係る融雪用塗料組成物中の分散媒の量は、金属ケイ素の微粒子の濃度が1g/L以上300g/L以下の範囲内に収まるように調製できれば特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係る融雪用塗料組成物の全体重量に対して、5重量%以上95重量%以下の範囲とすることもできるし、50重量%以上90重量%以下の範囲とすることもできる。これら溶媒量は、塗布方法や外気温などにより使用者が適宜調整することが好ましい。
【0028】
分散媒は、分散媒の用途に応じて適宜選択することができ、金属ケイ素の微粒子と親和性の高いものであれば特に限定されるものではない。好適に用いることができる分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール類や、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類や、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類を好適に用いることができる。
【0029】
また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン等の環状炭化水素や、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類や、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類を用いることもできる。
【0030】
また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類や、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類を用いることもできる。
【0031】
また、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油、石油系重質油等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等の疎水性の分散媒を用いてもよい。
以上述べた様々な種類の分散媒は、必要に応じて1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
分散媒として水性溶媒又は水を用いる場合には、分散媒中に塩酸、硫酸、硝酸、脂肪酸を添加し、本発明に係る融雪用塗料組成物のpHを適宜調整することができる。本発明に係る融雪用塗料組成物のpHは、1以上6以下であることが好ましく、金属ケイ素の微粒子と接着剤との親和性、分散性を向上させる点で3以上5以下であることがより好ましい。
【0033】
分散媒は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、界面活性剤、増粘剤、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、鉱物油、植物油、動物油等が挙げられる。
【0034】
<接着剤>
接着剤は、金属ケイ素の微粒子を基材であるコンクリート又はアスファルト表面に固定する役割を有する。接着剤は、金属ケイ素と親和性が高く、かつ、コンクリート又はアスファルト表面と接着することができる物であれば特に限定されるものではなく、公知公用の物を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレア樹脂、ウレタン樹脂などを接着剤として使用してもよく、舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルト、改質アスファルトを接着剤として使用してもよい。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等のポリマー(高分子材料)で改質したアスファルト等が挙げられる。
【0035】
金属ケイ素の微粒子をアスファルト表面に固定する場合には、中でもストレートアスファルトを接着剤として用いることが好ましい。ストレートアスファルトは、金属ケイ素の微粒子を均一に分散させることができることに加え、アスファルトと親和性が高く、金属ケイ素の微粒子をアスファルト表面に強固に固定することができる。ストレートアスファルトを接着剤として用いる場合には、塗布方法や外気温に応じて重質油をさらに添加して用いることもできる。
【0036】
ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。
【0037】
接着剤を塗布する工程の前に、コンクリート又はアスファルトの上面を研磨又は清掃する工程を備えていることが好ましい。金属ケイ素と、コンクリート又はアスファルトとの密着性をより一層強固にすることができる。
【0038】
接着剤は、金属ケイ素の微粒子の濃度が1g/L以上300g/L以下の範囲内に収まるように調製できれば特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係る融雪用塗料組成物の全体重量に対して、1重量%以上50重量%以下の範囲とすることが好ましく、5重量%以上20重量%以下の範囲とすることがより好ましい。接着剤の量が多い場合には、コンクリート又はアスファルト表面に融雪用塗料組成物を塗布する際に伸びが悪く均一な膜厚で塗布することが難しくなる。接着剤の量が少ない場合には、金属ケイ素と、コンクリート又はアスファルトとの密着性を確保することができない懸念がある。
【0039】
<<融雪用塗料組成物の作製>>
本発明に係る融雪用塗料組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、分散媒に金属ケイ素の微粒子を加え、金属ケイ素分散液を作製した後、接着剤を加えて、再度よく攪拌することで製造することができる。
前記の攪拌の方法は、特に限定されるものではなく、公知の混合装置で機械的に混合する方法を用いることができる。例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。
【0040】
<<融雪用塗料の塗膜形成>>
本発明に係る融雪用塗料組成物をコンクリート又はアスファルトの表面に塗布し、塗膜を形成させる方法としては、公知公用の方法を採用することができる。例えばロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、刷毛塗り法等の通常の塗布方法により、塗膜を形成することができる。
【0041】
融雪用塗料の塗膜の膜厚に関しは、特に限定されるものではないが、例えば、乾燥後の膜厚が5μm以上3mm以下の範囲とすることが好ましく、100μm以上1mm以下の範囲とすることがさらに好ましい。
【実施例】
【0042】
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0043】
<アスファルト基材の作製>
本実施例において、融雪用塗料組成物の融雪効果を検証するための基材として、アスファルト材を使用した。アスファルト材は、砂利等の骨材と加熱アスファルトとを混錬することにより作製した。混錬した骨材入りの高温のアスファルト混合物を直径30cm、高さ10cmの金属製の容器に敷き詰めた。その後、アスファルト混合物を約80kgの重さで踏み固めた後に放冷し、厚さ5cm程度のアスファルト基材を作製した。
【0044】
<融雪用塗料組成物の融雪効果の検証>
融雪用塗料組成物の性能は、各アスファルト基材の上に-18℃の1辺6cmの立方体の氷を乗せ、25℃の環境で氷が融解するまでの時間を測定することにより評価した。
【0045】
[実施例1]
<融雪用塗料組成物の作製>
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子10gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。
得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、融雪用塗料組成物を作製した。
【0046】
<融雪用塗料組成物の塗膜形成>
作製した融雪用塗料組成物をアスファルト基材の表面に刷毛を用いて塗布した。膜厚は、乾燥後の塗膜厚さが約500μmになるように調整した。塗膜を室温で2時間ほど乾燥させ、アスファルト基材の表面に融雪用塗料組成物の塗膜を形成させた。
【0047】
<融雪用塗料組成物の融雪効果の検証>
作製した融雪用塗料組成物の塗膜が形成されたアスファルト基材の上に-18℃の1辺6cmの立方体の氷を乗せ、25℃の環境で氷が融解するまでの時間を測定した。
氷が融解するまでに要した時間が15分未満を「◎」、15分以上17分未満を「〇」、17分以上を「×」として評価した。その結果を表1に記載した。
【0048】
[実施例2]
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子20gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、融雪用塗料組成物を作製した。
実施例1に記載の方法と同様にしてアスファルト基材の表面に融雪用塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例3に記載の方法と同様にして融雪用塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0049】
[実施例3]
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子30gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、融雪用塗料組成物を作製した。
実施例1に記載した方法と同様にしてアスファルト基材の表面に融雪用塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例1に記載の方法と同様にして融雪用塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0050】
[実施例4]
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子40gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、融雪用塗料組成物を作製した。
実施例1に記載した方法と同様にしてアスファルト基材の表面に融雪用塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例1に記載の方法と同様にして融雪用塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0051】
[実施例5]
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子50gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、融雪用塗料組成物を作製した。
実施例1に記載した方法と同様にしてアスファルト基材の表面に融雪用塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例1に記載の方法と同様にして融雪用塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0052】
[比較例1]
蒸留水300mLに、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、比較例1の塗料組成物を作製した。
実施例1に記載の方法と同様にしてアスファルト基材の表面に比較例1の塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例3に記載の方法と同様にして比較例1の塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0053】
[比較例2]
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子5gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、比較例2の塗料組成物を作製した。
実施例1に記載した方法と同様にしてアスファルト基材の表面に比較例2の塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例1に記載の方法と同様にして比較例2の塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0054】
[比較例3]
体積平均粒子径が5umのテラヘルツ鉱石の微粒子100gを蒸留水300mLに加え、10分攪拌することによりテラヘルツ鉱石分散液を作製した。得られたテラヘルツ鉱石分散液に、ストレートアスファルト50重量%、蒸留水45重量%、A重油3重量%、添加剤等から構成される接着剤100mLを加え、10分攪拌した。さらに、塩酸を添加しpHを4に調整し、比較例3の塗料組成物を作製した。
実施例1に記載した方法と同様にしてアスファルト基材の表面に比較例3の塗料組成物の塗膜を形成させた後、実施例1に記載の方法と同様にして比較例3の塗料組成物の融雪効果の検証を行った。その結果を表1に記載した。
【0055】
【0056】
表1の結果より、テラヘルツ鉱石を10g以上20g以下の範囲で含む融雪用塗料組成物の塗膜を形成したアスファルト材では、アスファルト表面の氷を融解するのに要した時間が15分であった(実施例1及び2)。テラヘルツ鉱石を用いていない塗料組成物の塗膜を形成したアスファルト材の場合には、アスファルト表面の氷を融解するのに要した時間が17.5分であったことから、テラヘルツ鉱石がアスファルト表面に存在している氷又は雪の融解を促進する効果を有していることが分かる(比較例1)。これは、金属ケイ素から成るテラヘルツ鉱石の熱伝導率がアスファルト材よりも高いために地熱を効率的に氷や雪に伝えることができるためであると考えられる。
【0057】
テラヘルツ鉱石を30g含む融雪用塗料組成物の塗膜を形成したアスファルト材では、アスファルト表面の氷を融解するのに要した時間が15.5分であった(実施例3)。テラヘルツ鉱石を40g又は50g含む融雪用塗料組成物の塗膜を形成したアスファルト材では、アスファルト表面の氷を融解するのに要した時間が16分であった(実施例4又は5)。
【0058】
テラヘルツ鉱石を5g含む融雪用塗料組成物の塗膜を形成したアスファルト材では、アスファルト表面の氷を融解するのに要した時間が17分であった(比較例2)。この結果から、テラヘルツ鉱石が5g以下の融雪用塗料組成物を用いた場合には、融雪効果を得ることはできなかった。一方、テラヘルツ鉱石を100g含む融雪用塗料組成物の塗膜を形成したアスファルト材では、融雪用塗料組成物の粘度が高くなり、アスファルト表面に均一な塗膜を形成することができなかった(比較例3)。
【要約】
【課題】従来の融雪剤は塩化カルシウムや塩化ナトリウムをはじめとする金属塩を使用したものであって、車両やフェンスなどの金属を錆びさせる塩害を発生させること、また土壌の残留や河川への流出による環境汚染を引き起こすという問題があった。また、路面の積雪や凍結のおそれが生じる度に、融雪剤を路面に散布する必要が生じるため、手間とコストを要していた。
【解決手段】本発明の融雪用塗料組成物は、金属ケイ素の微粒子と、分散媒と、接着剤と、を含有することを特徴とする融雪用塗料組成物である。本発明に係る融雪用塗料組成物によれば、金属塩から成る融雪剤を使用せずに、又は、少ない使用量であっても、コンクリート又はアスファルト表面に存在している雪や氷を効率的に融解させることができる。
【選択図】なし