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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】軌きょう扛上装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 29/04 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
E01B29/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020122114
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018772
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591153145
【氏名又は名称】ユニオン建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】梶井 敏史
(72)【発明者】
【氏名】松井 良博
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】青井 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】下村 満
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】水野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勝則
(72)【発明者】
【氏名】小黒 教示
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-021421(JP,A)
【文献】特公昭49-023161(JP,B1)
【文献】実開平04-037601(JP,U)
【文献】実開昭63-145903(JP,U)
【文献】特開2017-036617(JP,A)
【文献】特開平03-158504(JP,A)
【文献】特開2004-162524(JP,A)
【文献】特開昭63-246608(JP,A)
【文献】特開平03-158502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0031412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 29/04
E01B 27/04
E01B 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム先端にバラストを突き固めるタイタンパー部が設けられた軌陸バックホウと、
前記軌陸バックホウに第1連結部材を介し連結され、前記軌陸バックホウの走行に応じてレール上を走行すると共に、レールをクランプしてレールおよびマクラギからなる軌きょうを扛上する軌きょう扛上用台車と、
前記軌きょう扛上用台車に第2連結部材を介し連結され、前記軌陸バックホウの走行に応じて前記軌きょう扛上用台車に引っ張られながら前記軌陸バックホウと前記軌きょう扛上用台車との間でレール上を走行すると共に、レベル検測用レーザー光線を送信するレベル検測用レーザーが設けられたレーザー用台車とを備え、
前記軌きょう扛上用台車には、前記レーザー用台車のレベル検測用レーザーを受信してレベルを表示するレーザーレシーバが設けられていることを特徴とする軌きょう扛上装置。
【請求項2】
請求項1記載の軌きょう扛上装置において、
前記第1連結部材の長さは、前記第2連結部材の長さよりも長尺に構成されており、
前記軌きょう扛上用台車は、前記第1連結部材を介して前記軌陸バックホウの前方に第1の所定間隔をあけて取り付けられる一方、
前記レーザー用台車は、前記軌陸バックホウよりも前方であって前記第2連結部材を介して前記軌きょう扛上用台車の後方に第2の所定間隔をあけて取り付けられ、
前記軌陸バックホウのタイタンパーは、前記軌きょう扛上用台車と前記レーザー用台車との間でバラストの突き固め作業等を行うことを特徴とする軌きょう扛上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーム先端に鉄道のバラスト(砕石)を突き固めるタイタンパー部が設けられた軌陸バックホウを利用した軌きょう扛上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マクラギと一対のレールとから構成される軌きょうを持ち上げる従来の軌きょう扛上装置として、例えば、一対のレール上を走行可能な台車と、台車上に設けられ軌きょうを台車ごと持ち上げるための扛上機構とを備え、扛上機構は、台車上の両側位置に台車の進行方向と直交する方向にそれぞれ開閉自由に支持され先端部には閉成時に各レールと係合する爪片を備えた一対の爪機構と、各爪機構を連動させて開閉動作させる駆動機構と、台車上の両側位置に設けられる一対の昇降ジャッキとを備えており、各昇降ジャッキは地面に押し付けられる台部と、台部に対する地面からの反力によって押し上げられる昇降部とを有する軌きょう扛上装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の軌きょう扛上装置では、爪機構が台車上に開閉自由に支持されるとともに昇降ジャッキの昇降部に連結されているので、駆動機構により爪機構を閉じて爪片を軌きょうの各レールに係合させた状態で、昇降ジャッキの台部を地面に押し付けてその反力により昇降部を押し上げると、この昇降ジャッキの上昇よりレールおよびマクラギからなる軌きょうを持ち上げるように構成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-36617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1の従来の軌きょう扛上装置は、軌きょう扛上装置自体については開示されているものの、バラスト(砕石)を突き固めるタイタンパー装置自体や軌きょう扛上装置との関係については何ら開示されていないため、軌きょう扛上装置とタイタンパー装置の移動は、別の作業員が行う必要があり、軌きょう扛上作業の負担が大きいという問題がある。
【0006】
また、上述の特許文献1の従来の軌きょう扛上装置では、軌きょう扛上装置の台車の床面部上であって扛上機構の後側にオートレベル受光器を取り付けると共に、軌きょう扛上装置の台車よりも後方であって既に整備の終わった軌きょう上にオートレベル発光器を設置し、そのオートレベル発光器から発光させる赤外線を受信して軌きょうの扛上量(持ち上げ量)を測定しているが、作業場所を移動しながら軌きょう扛上作業を行う場合は、オートレベル発光器の移動作業や発光する赤外線等の光線をオートレベル受光器に正確に照射させる調整作業も必要であり、この点でも軌きょう扛上作業の負担が大きいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、バラストの突き固め作業等も含めた軌きょうの扛上作業を行う作業者の負担を軽減することができる軌きょう扛上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る軌きょう扛上装置は、アーム先端にバラストを突き固めるタイタンパー部が設けられた軌陸バックホウと、前記軌陸バックホウに第1連結部材を介し連結され、前記軌陸バックホウの走行に応じてレール上を走行すると共に、レールをクランプしてレールおよびマクラギからなる軌きょうを扛上する軌きょう扛上用台車と、前記軌きょう扛上用台車に第2連結部材を介し連結され、前記軌陸バックホウの走行に応じて前記軌きょう扛上用台車に引っ張られながら前記軌陸バックホウと前記軌きょう扛上用台車との間でレール上を走行すると共に、レベル検測用レーザー光線を送信するレベル検測用レーザーが設けられたレーザー用台車とを備え、前記軌きょう扛上用台車には、前記レーザー用台車のレベル検測用レーザーを受信してレベルを表示するレーザーレシーバが設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る軌きょう扛上装置では、前記第1連結部材の長さは、前記第2連結部材の長さよりも長尺に構成されており、前記軌きょう扛上用台車は、前記第1連結部材を介して前記軌陸バックホウの前方に第1の所定間隔をあけて取り付けられる一方、前記レーザー用台車は、前記軌陸バックホウよりも前方であって前記第2連結部材を介して前記軌きょう扛上用台車の後方に第2の所定間隔をあけて取り付けられ、前記軌陸バックホウのタイタンパーは、前記軌きょう扛上用台車と前記レーザー用台車との間でバラストの突き固め作業等を行うことも特徴とする。
また、本発明に係る軌きょう扛上装置では、前記軌きょう扛上用台車は、レール上を走行する車輪が設けられた軌きょう扛上用台車本体と、前記軌きょう扛上用台車本体の左右両側に設けられ、軌陸バックホウからの油圧操作により左右のレールの上方で回動して、左右のレールの外側からそれぞれのレールにレールクランプ部を引掛けるレールクランプ機構部と、軌陸バックホウからの油圧操作によりピストン部を路盤に押し当て、前記レールクランプ部によってレールをクランプしている前記レールクランプ機構部を昇降させる軌きょう扛上機構部とを備え、前記レーザーレシーバは、レールをクランプして昇降する前記レールクランプ機構部に取付けられることも特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る軌きょう扛上装置では、アーム先端にバラストを突き固めるタイタンパー部が設けられた軌陸バックホウと、軌陸バックホウに第1連結部材を介し連結され、軌陸バックホウの走行に応じてレール上を走行すると共に、レールをクランプしてレールおよびマクラギからなる軌きょうを扛上する軌きょう扛上用台車と、軌きょう扛上用台車に第2連結部材を介し連結され、軌陸バックホウの走行に応じて軌きょう扛上用台車に引っ張られながら軌陸バックホウと軌きょう扛上用台車との間でレール上を走行すると共に、レベル検測用レーザー光線を送信するレベル検測用レーザーが設けられたレーザー用台車とを備え、軌きょう扛上用台車には、レーザー用台車のレベル検測用レーザーを受信してレベルを表示するレーザーレシーバを設けている。
そのため、本発明によれば、軌陸バックホウがレールに沿って走行すると、軌陸バックホウの走行に応じて軌きょう扛上用台車およびレーザー用台車もレールに沿って走行して移動することができ、軌陸バックホウの操作者(運転手)とは別の作業員が軌きょう扛上用台車およびレーザー用台車を移動させる必要がなくなり、軌きょう扛上作業を行う作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置の全体構成を示す正面図である。
図2】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置における軌きょう扛上用台車の概略構成および軌きょう扛上用台車と第1連結部材および第2連結部材との連結部分等を示す要部拡大正面図である。
図3】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレーザー用台車の概略構成およびレーザー用台車と第2連結部材の連結、軌陸バックホウと第1連結部材との連結部分を示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態の軌きょう扛上装置について図面を参照しながら具体的に説明する。尚、下記に説明する実施形態は、形状や寸法なども含めあくまで本発明の一例であり、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置は、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
<実施形態の軌きょう扛上装置の構成>
本発明に係る実施形態に係る軌きょう扛上装置は、図1および図2に示すようにアーム先端にバラストを突き固めるタイタンパー部12cが設けられた軌陸バックホウ1と、軌陸バックホウ1に第1連結部材4を介し連結され、軌陸バックホウ1の走行に応じてレール上を走行すると共に、レールをクランプしてレールおよびマクラギからなる軌きょうを扛上する軌きょう扛上用台車2と、軌きょう扛上用台車2に第2連結部材5を介し連結され、軌陸バックホウ1の走行に応じて軌きょう扛上用台車2に引っ張られながらレール上を走行すると共に、レベル検測用レーザー光線を送信するレベル検測用レーザーが設けられたレーザー用台車3とを備えて構成される。
【0013】
(軌陸バックホウ1)
軌陸バックホウ1は、図1および図2に示すように、レールR,R上を走行するための前輪11a1が設けられ昇降する前輪支持昇降部11aおよび後輪11b1が設けられ昇降する後輪支持昇降部11bと、レールR以外の場所、特に2本のレールR.Rの両側を走行するためのクローラ11cとを備えた走行部本体11と、その走行部本体11に対し回動可能に設けられると共に、伸縮可能に設けられた作業アーム12aを有し、運転席12bに乗車した作業者の操作によってその作業アーム12a先端に取り付けたタイタンパー部12cのアタッチメントによって道床のバラストを突き固める等の作業を行う作業部本体12とを有する周知の軌陸両用バックホウを利用したタイタンパー装置である。
【0014】
前輪支持昇降部11aには、例えば、3m~5m程の長さを有し、図2図3に示すように軌陸バックホウ1と軌きょう扛上用台車2とを例えば3m~5m程の第1の所定間隔をあけて連結する第1連結部材4の一端が連結部11a2を介して上下左右方向に回動自在に連結される。
【0015】
タイタンパー部12cは、いわゆる4頭タイタンパーを使用しており、4本の爪部12c1によってバラストを突き固める周知の構成である
【0016】
(軌きょう扛上用台車2)
軌きょう扛上用台車2は、図1および図2に示すように3m~5m程の長さを有する第1連結部材4を介し軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11aに上下左右方向に回動自在に連結されて、軌陸バックホウ1に押されてレールR,R上を走行するもので、レールR、R上を走行する車輪2a1が4つ設けられると共に、第1連結部材4の先端部が上下左右方向のいずれの方向に回動可能に連結される連結部2a2が設けられた軌きょう扛上用台車本体2aと、軌きょう扛上用台車本体2aの左右両側に設けられ、軌陸バックホウ1からの油圧操作により左右のレールR,Rの上方で回動して、左右のレールR,Rの外側からそれぞれのレールR,Rにレールクランプ部2b1,2b1を引掛けるレールクランプ機構部2bと、軌陸バックホウ1からの油圧操作によりシリンダ部2c1からピストン部2c2を入出させ、ピストン部2c2下端部の地当て板2c3を路盤等に押し当て、レールクランプ部2b1によってレールRをクランプしているレールクランプ機構部2bおよび軌きょう扛上用台車本体2aを昇降させる軌きょう扛上機構部2cとを備える。
【0017】
尚、軌きょう扛上機構部2cは、軌きょう扛上用台車2が移動、すなわちレールR上を走行する場合には、ピストン2c2下端部の地当て板2c3等がマクラギMやバラスト等に干渉するおそれがあるため、図2に2点破線で示すように90度回転させ水平状態に寝かせるようにする。
【0018】
また、軌きょう扛上用台車本体2aの左右両側には、それぞれ、検測ロッド2dが設けられており、検測ロッド2dには、レーザー用台車3のレベル検測用レーザー送信機3bから送信されたレベル検測用レーザーを受信するレーザーレシーバ2eが設けられており、左右それぞれのレーザーレシーバ2e,2eは、レベル検測用レーザー送信機3bから送信されたレベル検測用レーザーを受信してレーザーレシーバ2e,2e自身の高さや、レベル検測用レーザー送信機3bと左右のレーザーレシーバ2e,2eとの高低差等をデジタル表示等によって表示し、近くにいる作業員がその表示を読み取って高低差等がなくなるようにリモコン(図示せず。)等を操作し、左右それぞれの軌きょう扛上機構部2c,2cに対し左右それぞれのレールRおよびマクラギMを扛上できるように構成されている。尚、レールクランプ機構部2bは軌きょう扛上用台車本体2aに取付けられ、軌きょう扛上用台車本体2aと共に軌きょう扛上機構部2cによって扛上されるため、レールクランプ機構部2bに検測ロッド2dおよびレーザーレシーバ2eが設けられていても良い。
【0019】
(レーザー用台車3)
レーザー用台車3は、軌きょう扛上用台車2に第2連結部材5を介し連結され、軌陸バックホウ1の走行に応じて軌きょう扛上用台車2に引っ張られながら軌陸バックホウ1と軌きょう扛上用台車2との間でレールR上を走行するもので、レールR、R上を走行する車輪3a1が4つ設けられると共に、第2連結部材5の後端部が上下左右方向のいずれの方向に回動可能に連結される連結部3a2が設けられ、軌きょう扛上用台車2に引っ張られてレールR、R上を走行するレーザー用台車本体3aと、レーザー用台車本体3aの上であって軌きょう扛上用台車本体2aの左右両側にそれぞれ検測ロッド2dを介し設けられたレーザーレシーバ2eとほぼ同じ高さに設置され、左右それぞれのレーザーレシーバ2e,2eに対しレベル検測用レーザーを送信するレベル検測用レーザー送信機3bとを備えている。
【0020】
ここで、第2連結部材5の長さは、軌陸バックホウ1の作業アーム12a先端に取り付けた4頭タイタンパーのタイタンパー部12cによるバラストの突き固め作業等スペース等を確保するため、軌きょう扛上用台車2とレーザー用台車3との間に、例えば、1.5m~2m程の第2の所定間隔があくように、軌陸バックホウ1と軌きょう扛上用台車2とを連結する3m~5m程の第1連結部材4の長さよりも短い、例えば、2m~3m程の長さを有するものとする。
【0021】
また、レベル検測用レーザー送信機3bは高さや場所的に軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11a等に設けることも可能であるが、本実施形態の軌きょう扛上装置では、レベル検測用レーザー送信機3bを軌陸バックホウ1とは別のレーザー用台車3に設け、軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11a等に設けなかった理由は、軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11a等に設けると、軌陸バックホウ1運転時の振動がレベル検測用レーザー送信機3bに伝達するので故障し易かったり、レベル検測用レーザー送信機3bが送信するレーザーの方向や角度がブレ易いと共に、前輪支持昇降部11aは昇降するため、レベル検測用レーザー送信機3bが送信(照射)するレーザーの方向や角度の再設定、例えば水平方向へのレーザー送信(照射)や左右それぞれのレーザーレシーバ2e,2eへのレーザ送信(照射)が困難で、正確かつ迅速な軌きょう扛上作業が困難となるからである。
【0022】
また、レーザー用台車3は第2連結部材5を介し軌きょう扛上用台車2に引っ張られながらレールR,R上を走行するように構成し、軌きょう扛上用台車2のように第1連結部材4を介し軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11aに連結しなかった理由は、軌陸バックホウ1に連結した場合、軌きょう扛上用台車2よりも軌陸バックホウ1に近くなるため、軌陸バックホウ1運転時の振動が軌きょう扛上用台車2よりもレーザー用台車3に伝わり易いからである。また、レーザー用台車3上にはレベル検測用レーザー送信機3bが設置されており、軌陸バックホウ1運転時の振動が直接、レーザー用台車3に伝達されないようにして、レーザー用台車3に設けられたレベル検測用レーザー送信機3b自体や、レベル検測用レーザー送信機3bが送信するレベル検測用レーザーの方向や角度等に悪影響を与えないようにするためである。
【0023】
(第1連結部材4)
第1連結部材4は、上述したように、例えば、3m~5m程の長さを有する鋼管等を利用した長尺部材で、その両端部には、それぞれ、軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11aの連結部11a2と、軌きょう扛上用台車2の軌きょう扛上用台車本体2aの連結部2a2にそれぞれ、連結ピン11a3,2a3で上下左右方向に回動自在に連結される第1部材回動自在連結板4a,4bが設けられている。尚、図3において、符号の11a4は、軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11aの連結部11a2から連結ピン11a3を取り外して軌陸バックホウ1と軌きょう扛上用台車2を切り離した際に、連結ピン11a3の紛失を防止するため、連結ピン11a3を軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11に連結するピン紛失防止チェーンである。
【0024】
(第2連結部材5)
第2連結部材5は、上述したように、例えば、2m~3m程の長さを有する鋼管等を利用した短尺部材で、その両端部には、それぞれ、レーザー用台車3のレーザー用台車本体3aの連結部3a2と、軌きょう扛上用台車2の軌きょう扛上用台車本体2aの連結部2a2にそれぞれ、連結ピン3a3,2a3で上下左右方向に回動自在に連結される第2部材回動自在連結板5a,5bが設けられている。
【0025】
<本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置の動作>
次に、以上のように構成された本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置の動作について説明する。
【0026】
(軌きょうの扛上作業現場へ移動)
軌きょうの扛上作業現場へ移動する場合、実施形態の軌きょう扛上装置では、長い距離であれば、軌陸バックホウ1前輪11a1および後輪11b1を,クローラ11cよりも降下させ前輪11a1および後輪11b1を駆動して、前輪11a1および後輪11b1によってレールR,R上を走行して移動する。
【0027】
これに対し、短い距離であれば、軌陸バックホウ1前輪11a1および後輪11b1を,クローラ11cよりも上昇させてクローラ11cを駆動し、左右のクローラ11c,11cによってレールR,Rを跨ぐようにレールR,R外側の路盤等を走行して移動する。
【0028】
すると、軌陸バックホウ1前側の前輪支持昇降部11aには、図1および図2に示すように3m~5m程の長さを有する第1連結部材4を介して軌きょう扛上用台車2が連結されている一方、軌きょう扛上用台車2の後方には2m~3m程の長さを有する第2連結部材5を介してレーザー用台車3が連結されているため、軌陸バックホウ1の移動に伴って一定間隔をあけたまま軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3が連動してレールR,R上を走行することになる。
【0029】
そのため、実施形態の軌きょう扛上装置によれば、軌陸バックホウ1と、軌きょう扛上用台車2と、レーザー用台車3それぞれを、それぞれ別の作業員によって移動させる必要がなくなり、軌きょう扛上作業の負担を軽減することができる。
【0030】
(軌きょうの扛上作業)
軌きょうの扛上作業現場へ到着した場合、軌きょう扛上用台車2にてレールRおよびマクラギMからなる軌きょうを扛上し(持ち上げ)、軌陸バックホウ1のタイタンパー部12cによってバラストの突き固め作業等を行うが、その際、本実施形態の軌陸バックホウ1では、図1に示すように、軌陸バックホウ1の前輪11a1および後輪11b1をクローラ11cよりも上昇させ、左右のクローラ11c,11cを路盤等に接地させてバラストの突き固め作業等を行う。
【0031】
ここで、軌きょうの扛上作業は、例えば、軌きょう扛上用台車2の近傍にいる作業員が軌きょう扛上用台車2の左右両側のレーザーレシーバ2e,2eのレベル値を読みながら高低差等がなくなるように左右の軌きょうの扛上量(持ち上げ量)を決定し、その決定した軌きょうの扛上量(持ち上げ量)をリモコン(図示せず。)等で入力すると共に、左右のレールクランプ機構部2b,2bに動作指示を出力してそれぞれレールクランプ部2b1,2b1によって左右のレールR,Rをクランプさせると共に、左右それぞれの軌きょう扛上機構部2c,2cに動作指示を出力して、シリンダ部2c1からピストン部2c2を出してピストン部2c2下端部の地当て板2c3を路盤等に押し当て、レールR,RおよびマクラギMからなる軌きょうを決定した軌きょうの扛上量(持ち上げ量)まで扛上させる。
【0032】
また、バラストの突き固め作業は、軌きょう扛上用台車2の近傍にいる作業員等がトランシーバ(図示せず。)等で軌陸バックホウ1の運転手に連絡し、軌陸バックホウ1の運転手が軌陸バックホウ1を操作してアーム11aを伸縮させたり、昇降させ、アーム11aのタイタンパー部12cをレーザー用台車3と軌きょう扛上用台車2との間に降下させ、軌きょう扛上用台車2の近傍にいる作業員等と連絡を取りながら軌きょうの扛上量(持ち上げ量)に達するようにバラストを突き固める。
【0033】
ここで、前輪11a1および後輪11b1をクローラ11cより下降させて、前輪11a1および後輪11b1をレールR,Rの上に乗せたまま軌陸バックホウ1のタイタンパー部12cによってバラストの突き固め作業等を行うこともできるが、バラストの突き固め時の振動等が軌陸バックホウ1の前輪11a1および後輪11b1を介してレールR,Rに伝達され、レールR,R上の軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3にも伝達されて、レーザー用台車3のレベル検測用レーザー送信機3bと軌きょう扛上用台車2のレーザーレシーバ2e,2eとによる軌きょうの扛上量(持ち上げ量)の測定や、レベル検測用レーザー送信機3bおよびレーザーレシーバ2e等の精密機械に悪影響をあたえることを防止するためである。
【0034】
そして、軌きょう扛上用台車2の近傍にいて軌きょうの扛上作業を行う作業員と軌陸バックホウ1の運転手との連携による軌きょうの扛上作業とバラストの突き固め作業によって軌きょうの高さに凹凸がなくなると、軌陸バックホウ1の運転手は、左右のクローラ11c,11cを駆動して軌陸バックホウ1を前方へ走行させ、次の扛上作業場所まで移動する。
【0035】
すると、本実施形態の軌きょう扛上装置では、上述したように軌陸バックホウ1には第1連結部材4を介して軌きょう扛上用台車2が連結されている一方、軌きょう扛上用台車2には第2連結部材5を介してレーザー用台車3が連結されているため、軌陸バックホウ1の移動に伴って軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3も連動してレールR,R上を走行させることができるので、作業者による軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3の移動の負担を軽減することができる。
【0036】
尚、移動距離が長い場合には、上述したように軌陸バックホウ1前輪11a1および後輪11b1を,クローラ11cよりも降下させ、前輪11a1および後輪11b1を駆動して、前輪11a1および後輪11b1によってレールR,R上を走行して移動しても、軌陸バックホウ1には第1連結部材4を介して軌きょう扛上用台車2が連結されている一方、軌きょう扛上用台車2には第2連結部材5を介してレーザー用台車3が連結されているため、作業者による軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3の移動の負担を軽減させて次の扛上作業場所まで移動することができる。
【0037】
そして次の扛上作業場所に到達した場合は、上述した軌きょう扛上用台車2の近傍にいて軌きょうの扛上作業を行う作業員と軌陸バックホウ1の運転手との連携による軌きょうの扛上作業とバラストの突き固め作業を同様に繰り返し行う。
【0038】
<本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置のまとめ>
【0039】
従って、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置では、アーム11a先端にバラストを突き固めるタイタンパー部12cが設けられた軌陸バックホウ1と、軌陸バックホウ1に第1連結部材4を介し連結され、軌陸バックホウ1の走行に応じてレール上を走行すると共に、レールRをクランプしてレールRおよびマクラギMを扛上する軌きょう扛上用台車2と、軌きょう扛上用台車2に第2連結部材5を介し連結され、軌陸バックホウ1の走行に応じて軌きょう扛上用台車2と連動してレールR,R上を走行すると共に、レベル検測用レーザー送信機3bが設けられたレーザー用台車3とを備え、軌きょう扛上用台車2には、レーザー用台車3のレベル検測用レーザー送信機3bからのレベル検測用レーザーを受信してレベルを表示するレーザーレシーバ2b,2bを設けている。
【0040】
そのため、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置によれば、軌陸バックホウ1が1前輪11a1および後輪11b1またはクローラ11cによってレールR,Rに沿って走行すると、軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3もレールに沿って走行して移動することができるので、軌陸バックホウ1の操作者(運転手)とは別の作業員が軌きょう扛上用台車2およびレーザー用台車3を移動させたり、レベル検測用レーザー送信機3bのレベル送信方向や送信角度等の再設定が不要となり、軌きょう扛上作業を行う作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0041】
特に、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置では、レベル検測用レーザー送信機3bを軌陸バックホウ1とは別のレーザー用台車3に設け、昇降する軌陸バックホウ1の前輪支持昇降部11aに設けなかったため、軌陸バックホウ1運転時の振動によるレベル検測用レーザー送信機3bの故障やレベル検測用レーザー送信機3bが送信(照射)するレーザーの方向や角度のブレ等を防止できると共に、昇降する前輪支持昇降部11aに設けた場合とは異なり、レベル検測用レーザー送信機3bのレーザーの方向や角度の再設定が不要となるので、この点でも軌きょう扛上作業を行う作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0042】
また、レベル検測用レーザー送信機3bを搭載したレーザー用台車3は、軌陸バックホウ1に連結されるのではなく、軌きょう扛上用台車2に第2連結部材5を介し連結され、軌きょう扛上用台車2に引っ張られながらレールR,R上を走行するため、レベル検測用レーザー送信機3bは軌陸バックホウ1運転時の振動等が連結部材を介して直接伝達されることがなくなるので、レベル検測用レーザー送信機3bが送信するレベル検測用レーザーの方向や高さ等の精度に悪影響を及ぼすことを低減することが出来ると共に、レベル検測用レーザー送信機3b自体の故障や破損の悪影響も低減することができる。
【0043】
また、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置では、第1連結部材4の長さは、第2連結部材5の長さよりも長尺に構成されており、軌きょう扛上用台車2は、第1連結部材4を介して軌陸バックホウ1の前方に第1の所定間隔をあけて取り付けられる一方、レーザー用台車3は、第2連結部材5を介して軌きょう扛上用台車2の後方に第2の所定間隔をあけて取り付けられ、軌陸バックホウ1のタイタンパーは、軌きょう扛上用台車2とレーザー用台車3との間でバラストの突き固め作業等を行う。
【0044】
そのため、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置によれば、軌陸バックホウ1が前進しながら連続して軌きょうの扛上作業を行う場合には、軌きょう扛上用台車2によって軌きょう扛上作業を行った箇所は、軌きょう扛上用台車2の後方に第2連結部材5を介し連結されたレーザー用台車3が通った際、レールR,RおよびマクラギMの高さは扛上作業後の正しい高さとなっているため、軌きょう扛上箇所が長距離にわたる場合でも、軌陸バックホウ1を前進させながら軌きょう扛上作業を連続して行うことが可能となり、この点でも軌きょう扛上作業を行う作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 軌陸バックホウ
11 走行部本体
11a 前輪支持昇降部
11a1 前輪
11a2 連結部
11a3 連結ピン
11a4 ピン紛失防止チェーン
11b 後輪支持昇降部
11b1 後輪
11c クローラ
12 作業部本体
12a 作業アーム
12b 運転席
12c タイタンパー部
12c1 爪部
2 軌きょう扛上用台車
2a 軌きょう扛上用台車本体
2a1 車輪
2a2 連結部
2a3 連結ピン
2b レールクランプ機構部
2b1,2b1 レールクランプ部
2c 軌きょう扛上機構部
2c1 シリンダ部
2c2 ピストン部
2d 検測ロッド
2e レーザーレシーバ
3 レーザー用台車
3a レーザー用台車本体
3a1 車輪
3a2 連結部
3a3 連結ピン
3b レベル検測用レーザー送信機
4 第1連結部材
4a,4b 第1部材回動自在連結板
5 第2連結部材
5a,5b 第2部材回動自在連結板
R レール
M マクラギ
図1
図2
図3