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特許7220854低屈折率層形成用塗液、低屈折率層、および反射防止フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】低屈折率層形成用塗液、低屈折率層、および反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/11 20150101AFI20230206BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20230206BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230206BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230206BHJP
【FI】
G02B1/11
G02B1/14
C09D4/02
C09D7/61
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021198165
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2021-12-16
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健弘
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-030363(JP,A)
【文献】特開2021-173831(JP,A)
【文献】特開2021-173979(JP,A)
【文献】特開2008-088309(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020504(WO,A1)
【文献】特開2011-102977(JP,A)
【文献】米国特許第07816487(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径(D50)が150nm以下の中空粒子(A)と、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの無機酸化物微粒子(B)(ただし、中空粒子(A)は除く)と、多官能(メタ)アクリレート(C)とを含み、
前記中空粒子(A)100質量部に対し、前記無機酸化物微粒子(B)を0.5~15質量部含有する、低屈折率層形成用塗液。
【請求項2】
さらに含フッ素(メタ)アクリレート(D)を含む、請求項1記載の低屈折率層形成用塗液。
【請求項3】
含フッ素(メタ)アクリレート(D)の含有率は、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、0.5~10質量%である、請求項2記載の低屈折率層形成用塗液。
【請求項4】
多官能(メタ)アクリレート(C)が、シリコーン鎖を有する多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1~3いずれか1項記載の低屈折率層形成用塗液。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項記載の低屈折率層形成用塗液から形成された低屈折率層。
【請求項6】
表面の水接触角が90°以上、かつスチールウール試験による200g/cm荷重で10往復した場合のヘイズの変化量が0.1以下である、請求項5記載の低屈折率層。
【請求項7】
透明基材上に、請求項5または6記載の低屈折率層を備えた反射防止フィルム。
【請求項8】
視感反射率が1.5%以下である、請求項7記載の反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折率層形成用塗液、低屈折率層、および反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネル等の画像表示装置における画像表示面には、外光の映り込みを抑制するために、低屈折率層を有する反射防止フィルムや防眩フィルムが設けられている。
【0003】
反射防止フィルムは、低屈折率層の表面で反射する光と、低屈折率層と低屈折率層に隣接する層(例えばハードコート層や高屈折率層)との界面で反射する光とで、光の干渉効果により反射率を低減させるものである。
【0004】
反射防止フィルムはディスプレイの最表面層に積層されることが多く、耐擦傷性や耐摩耗性が求められる。
【0005】
特許文献1では低屈折率層に、低屈折率層の平均厚みより大きな平均粒子径をもつ無機酸化物粒子を添加することにより、低屈折率層の表面に凸部を形成している。表面の凸部により、スチールウールに対する耐擦傷性が向上している。柔らかい有機高分子樹脂よりも堅牢な無機粒子の方が傷つきにくいことから、表面に無機粒子による凸部を形成することで研磨材が高分子樹脂の表層に接地しにくくなり、層全体の耐擦傷性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2021/020504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、反射防止フィルムは、様々なディスプレイ等の画像表示装置に用いられるため、表面の防汚性や汚れの拭き取り性が求められる。汚れを拭き取る際にはエタノール等のアルコールを含侵させたガーゼや布でふき取ることが多く、ガーゼに対する耐擦傷性が要求される。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の低屈折率層の表面に凹凸を形成した場合、スチールウールのような剛直な繊維の研磨材は荷重をかけた際に表面層の凸部に接地して、高分子樹脂表層に接地しにくいのに対して、ガーゼや金巾などの綿布のように、柔軟性の高い繊維は、比較的表面層の凸部のみならず凹部にも接地しやすい。そのため、スチールウールに対する耐擦傷性は向上させることはできても、表面平滑性が低下していることで、研磨材に対する滑り性が低下することから、ガーゼ等に対する耐擦傷性は劣る。
【0009】
したがって、本発明では、スチールウールのような剛直な繊維と、ガーゼのような柔軟な繊維のいずれに対しても高い耐擦傷性をもつような低屈折率層の形成のために、表面平滑性と無機微粒子による堅牢性を両立させることを目的とする。また、反射防止フィルムに求められる透明性、低反射率、防汚性を達成することを目的とする。
【0010】
すなわち本発明が解決しようとする課題は、種々の研磨材に対する耐擦傷性に優れ、かつ防汚性にも優れた反射防止フィルム用の低屈折率層形成用塗液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明に至った。すなわち、第1の発明は粒子径(D50)が150nm以下の中空粒子(A)と粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの無機酸化物微粒子(B)(ただし、中空粒子(A)は除く)と、多官能(メタ)アクリレート(C)とを含み、
前記中空粒子(A)100質量部に対し、前記無機酸化物微粒子(B)を0.5~15質量部含有する、低屈折率層形成用塗液に関する。
【0012】
また、第2の発明は、さらに含フッ素(メタ)アクリレート(D)を含む、前記低屈折率層形成用塗液に関する。
【0013】
また、第3の発明は、含フッ素(メタ)アクリレート(D)の含有率は、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、0.5~10質量%である、前記低屈折率層形成用塗液に関する。
【0014】
また、第4の発明は、多官能(メタ)アクリレート(C)が、シリコーン鎖を有する多官能(メタ)アクリレートを含む、前記低屈折率層形成用塗液に関する。
【0015】
また、第5の発明は、前記低屈折率層形成用塗液から形成された低屈折率層に関する。
【0016】
また、第6の発明は、表面の水接触角が90°以上、かつスチールウール試験による200g/cm2荷重で10往復した場合のヘイズの変化量が0.1以下である、前記低屈折率層に関する。
【0017】
また、第7の発明は、透明基材上に前記低屈折率層を備えた反射防止フィルムに関する。
【0018】
また、第8の発明は、視感反射率が1.5%以下である、前記反射防止フィルムに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、種々の研磨材に対する耐擦傷性に優れ、防汚性にも優れた反射防止フィルム用の低屈折率層形成用塗液を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明するが、初めに本明細書で用いられる用語について説明する。尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、および「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロまたはメタクリロ」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」および「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。また、「粒子径(D50)が150nm以下の中空粒子(A)」を「中空粒子(A)」、「粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの無機酸化物微粒子(B)」を「無機酸化物微粒子(B)」とそれぞれ称することがある。
また、本発明における低屈折率とは、屈折率1.45以下であることをいう。
また、粒子径(D50)ならびに粒子径(D99)とは、粒度分布測定値から求められる体積基準の粒子径分布において、累積値がそれぞれ50%、99%となる粒子径を表し、動的光散乱法を利用したナノトラック粒子径分布測定装置により求めることができる。
また、視感反射率は、JIS Z8722に従って求められる。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
《低屈折率層形成用塗液》
低屈折率層形成用塗液は、粒子径(D50)が150nm以下の中空粒子(A)と、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの無機酸化物微粒子(B)と、多官能(メタ)アクリレート(C)とを含み、
前記中空粒子(A)100質量%に対し、前記無機酸化物微粒子(B)を0.5~15質量%含有する。
【0022】
<中空粒子(A)>
中空粒子(A)は、粒子径(D50)が150nm以下の中空粒子であり、中空粒子とは、内部に空隙を有する中空シリカ粒子、中空ポリマー粒子等である。
中空ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、架橋アクリル系ポリマー、架橋スチレン系ポリマー、ビニル系ポリマー等が挙げられる。低屈折率とできる観点から、架橋アクリル系ポリマーが好ましい。
市販品としては、中空シリカ粒子としてスルーリア4320(粒子径(D50)60nm、日揮触媒化成)、中空ポリマー粒子としてテクポリマーXX5964Z(粒子径(D50)80nm、積水化成品工業)等が挙げられる。
【0023】
粒子径(D50)は、150nm以下であり、ヘイズおよび耐ガーゼ性の観点から80nm以下であることが好ましい。下限値は特に制限されないが、屈折率向上のために、40nm以上であることが好ましい。
なお、中空粒子の粒子径(D50)は、動的光散乱法を利用したナノトラック粒子径分布測定装置により求めることができる。
ナノトラック粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装(株)製「ナノトラックUPA」等が挙げられる。
具体的には、解析ソフト「Microtrac」でのローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定できる。
希釈液は、中空粒子の分散溶媒の主成分である分散溶媒と同じ分散溶媒を用いることが好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
中空粒子の含有率は、屈折率低減のために、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中に10~80質量%であることが好ましい。より好ましくは15~70質量%である。
【0025】
<無機酸化物微粒子(B)>
無機酸化物微粒子(B)は、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの無機酸化物微粒子である。ただし、中空粒子(A)は除く。
これにより、ヘイズ、および着色を少なくすることができるために、透明性に優れた低屈折率層とすることができる。また、透明性と耐擦傷性の両立のために、粒子径(D99)は180~280nmであることが好ましく、200~250nmであることがより好ましい。
低屈折率層の耐擦傷性向上のためには、無機酸化物微粒子(B)の粒子径(D50)は50~90nmであることが好ましく、より好ましくは65~90nmである。
なお、無機酸化物微粒子の分散粒径は動的光散乱法を利用したマイクロトラック粒子径分布測定装置等により求めることができる。
マイクロトラック粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装(株)製「ナノトラックUPA」等が挙げられる。
具体的には、無機酸化物微粒子を溶剤に分散させた無機酸化物微粒子分散体を、ローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定できる。
希釈液は、無機酸化物微粒子の分散溶媒の主成分である分散溶媒と同じ分散溶媒を用いることが好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0026】
用いる無機酸化物微粒子としては特に制限されないが、透明性と耐擦傷性の観点から、酸化アルミニウム(Al)、またはシリカ(SiO)微粒子等が挙げられる。
透明性と耐擦傷性の観点から、酸化アルミニウム微粒子が好ましく、さらに耐擦傷性向上のために、酸化アルミニウム微粒子の結晶構造がθ型および/またはα型であることが好ましい。
【0027】
無機酸化物微粒子(B)の含有率は、耐擦傷性と低屈折率化、及び透明性の両立の観点から、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、0.3~5質量%であることが好ましく、0.4~3質量%がより好ましい。
【0028】
前記無機酸化物微粒子(B)の含有量は、中空粒子(A)100質量部に対し、0.5~15質量部であり、1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。この範囲にあることで耐擦傷性と透明性を両立できる。
【0029】
<多官能(メタ)アクリレート(C)>
多官能(メタ)アクリレート(C)は、2以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であれば制限されない。
多官能(メタ)アクリレート(C)としては、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;
トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、PO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びε-カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの三量体(イソシアヌレート);
その他、(メタ)アクリロイル基が3つ以上のポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート等のポリマーポリオールのポリアクリレート;
ポリエポキシ(メタ)アクリレート;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
また、耐擦傷性と防汚性の観点から、多官能(メタ)アクリレート(C)はシリコーン鎖を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
本発明におけるシリコーン鎖とは、シロキサン結合を有する骨格である。
【0031】
多官能(メタ)アクリレート(C)の市販品としては、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(日立化成社製 FANCRYL FA-731A、第一工業製薬社製 NEW FRONTIER TEICA(GX-8430)等)、EO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製アロニクスM-313、M-315、新中村化学工業社製NKエステル A-9300、ARKEMA社製SARTOMER SR-368等)、PO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製 NKエステル A-9300-1CL等)等の市販品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
多官能(メタ)アクリレート(C)の含有率は、耐擦傷性と低屈折率の両立の観点から、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0033】
<含フッ素(メタ)アクリレート(D)>
含フッ素(メタ)アクリレート(D)は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレートであれば制限されないが、例えば、パーフルオロポリエーテル骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
市販品としてはFLUOROLINK AD1700(ソルベイ社製)や、メガファックRS-90(DIC社製)等が挙げられる。
【0034】
含フッ素(メタ)アクリレート(D)を含むことにより、表面の水接触角を向上させることができ、防汚性を向上させることができる。含フッ素(メタ)アクリレートの含有率は、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中に、1~11質量%であることが好ましく、1.4~8質量%がさらに好ましい。
【0035】
<任意成分>
本発明の低屈折率形成用塗液には、さらに様々な添加剤を含有してもよい。添加剤としては、光重合開始剤、熱硬化性樹脂、重合禁止剤、レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電剤、無機充填剤、等が挙げられる。
【0036】
《反射防止フィルム》
本発明の反射防止フィルムは、透明基材上に本発明の低屈折率形成用塗液により形成された低屈折率層を有する。
これにより、種々の研磨材に対する耐擦傷性に優れ、防汚性にも優れた反射防止フィルムとできる。
反射防止フィルムは、ハードコート層、または光学調整層等の他の硬化膜層をさらに有していてもよく、透明基材上に、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に備えることが好ましい。透明基材層とハードコート層間やハードコート層と低屈折率層間に、さらに別の硬化膜層等を有してもよい。透明基材上に、ハードコート層、光学調整層及び低屈折率層をこの順に備えることも好ましい。
本発明の反射防止フィルムの視感反射率は1.5%以下であり、反射防止性の観点から好ましくは1.2%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0037】
[低屈折率層]
低屈折率層は、本発明の低屈折率層形成用塗液から形成され、例えば、低屈折率層形成用塗液をハードコート層上等に塗工して乾燥後、硬化させることで得られる。
【0038】
低屈折率層は、屈折率が1.45以下であり、反射率の低減のために、屈折率は1.41以下であることが好ましい。
低屈折率層の厚みは、反射率低減のために、厚みが80~150nmであることが好ましく、100~140nmであることがより好ましい。
【0039】
水接触角は90°以上であることが好ましく、これにより、防汚性に優れた反射防止フィルムとすることができる。また、水接触角の値が高ければ高いほど防汚性が高くなるため、好ましくは100°以上であり、より好ましくは110°以上である。
【0040】
[透明基材]
透明基材は、光透過性を有する基材であれば特に制限されず、ガラス、合成樹脂成型物、フィルムなどが挙げられる。
基材の厚みは特に限定されないが、通常50~200μm程度である。
【0041】
合成樹脂成型物としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレートを主成分とする共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の成型物が挙げられる。
【0042】
また、フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等が挙げられる。
【0043】
[ハードコート層]
ハードコート層は、従来公知のハードコート層形成用塗液を用いて形成することができ、特に制限されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤等とを含む公知のハードコート層形成用塗液を、基材上に積層させて得られる。
通常、ハードコート層の膜厚は0.5μm~5μm程度であり、耐擦傷性のために、3~5μm程度が好ましい。屈折率は、1.5~1.8程度である。
また、反射防止の観点から、屈折率は1.50以上であることが好ましく、1.60以上であることがより好ましい。
【0044】
[光学調整層]
光学調整層は、従来公知の光学調整層形成用塗液を用いて形成することができ、特に制限されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤等と、高屈折率微粒子を含む公知の光学調整層形成用塗液を、基材上もしくは前記ハードコート層上に積層させて得られる。
通常、光学調整層の膜厚は30~500nm程度であり、反射防止の観点から50~300nm程度が好ましい。屈折率は、1.60~1.9程度であり、反射防止の観点から1.65以上であることが好ましい。
【0045】
[反射防止フィルムの製造方法]
反射防止フィルムの製造方法は特に制限されないが、例えば、基材上に、低屈折率層形成用塗液により低屈折率層を形成することで、反射防止フィルムが得られる。また、ハードコート層を備える場合には例えば、基材上にハードコート層を形成し、さらにハードコート層上に低屈折率層を積層させることで反射防止フィルムが得られる。その他、基材層とハードコート層間やハードコート層と低屈折率層間にさらに光学調整層などの別の硬化膜層等を有してもよい。
反射防止フィルムの膜厚は、通常、50~200μm程度である。
【実施例
【0046】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
また、表中の配合量は、質量%であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、中空粒子と無機酸化物微粒子の平均粒子径、低屈折率層の膜厚は、下記の方法で測定した。
【0047】
<中空粒子と無機酸化物微粒子の平均粒子径>
動的光散乱法を利用したナノトラック粒子径分布測定装置として、日機装(株)製「ナノトラックUPA」を用いて測定した。
中空粒子および無機酸化物微粒子をローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定した。希釈液は中空粒子と無機酸化物微粒子の分散溶媒に応じて、主成分となる分散溶媒と同じものを用いた。
【0048】
<低屈折率層の膜厚>
光学式非接触膜厚計(FILMETRICS, Inc、F20膜厚測定装置)を用いて、低屈折率層の膜厚を測定した。
【0049】
<多官能ポリエステルアクリレートの製造>
(多官能ポリエステルアクリレートPE1の製造)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、水酸基価122mgKOH/gのペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製ペンタエリスリトールトリアクリレート商品名:KAYARAD PET-30、副生成物としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む)250.0部、メチルヒドロキノン0.24部、シクロヘキサノン217.8部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで触媒として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン1.65部を加え、90℃で8時間撹拌した。その後、メタクリルグリシジルエーテル78.3部、シクロヘキサノン54.0部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.65部を加え、100℃で6時間撹拌し、反応を継続しながら定期的に反応物の酸価を測定し、酸価が5.0mgKOH/g以下になったところで、室温まで冷却して反応を停止させた。得られた樹脂ワニスは淡黄色透明で、固形分60%であるポリエステルアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(固形分質量比がポリエステルアクリレート:ペンタエリスリトールテトラアクリレート=76:24)である、多官能ポリエステルアクリレートPE1溶液を得た。多官能ポリエステルアクリレートPE1は、官能基数8 重量平均分子量3500であった。
【0050】
《無機酸化物微粒子(B)》
<酸化アルミニウム微粒子分散体の製造>
[酸化アルミニウム微粒子分散体(1)]
酸化アルミニウム(1)(θ型結晶 一次粒子径 10nm)を35部と、多官能ポリエステルアクリレートPE1を固形分で14部、有機溶剤としてメチルエチルケトンを25.5部、メトキシブタノールを25.5部混合し、ディスパー攪拌後、サンドミルにて分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B-1)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(1)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B-1)は、粒子径(D50)が80nm、粒子径(D99)が200nmであった。
【0051】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(2)]
酸化アルミニウム(1)を14.3部と、多官能ポリエステルアクリレートPE1を固形分で5.7部、有機溶剤としてメチルエチルケトンを40部、メトキシブタノールを40部混合した以外は製造例1と同様の手順で分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B-2)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(2)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B-2)は、粒子径(D50)が60nm、粒子径(D99)が160nmであった。
【0052】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(3)]
酸化アルミニウム(2)(θ型結晶 一次粒子径 30nm)を用いた以外は製造例1と同様の手順で分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B-3)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(3)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B-3)は、粒子径(D50)が90nm、粒子径(D99)が280nmであった。
【0053】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(4)]
酸化アルミニウム(3)(α型結晶 一次粒子径 30nm)を用いた以外は製造例2と同様の手順で分散処理を行い、α型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B-4)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(4)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B-4)は、粒子径(D50)が80nm、粒子径(D99)が200nmであった。
【0054】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(5)]
酸化アルミニウム(4)(γ型結晶 一次粒子径10nm)を用いた以外は製造例1と同様の手順で分散処理を行い、γ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B-5)を含む均一なアルミナ分散体(5)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B-5)は、粒子径(D50)が80nm、粒子径(D99)が200nmであった。
【0055】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(6)]
酸化アルミニウム(5)(α型結晶 一次粒子径50nm)を用いた以外は製造例2と同様の手順で分散処理を行い、α型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B’-1)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(6)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B’-1)は、粒子径(D50)が110nm、粒子径(D99)が280nmであった。
【0056】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(7)]
酸化アルミニウム(3)(α型結晶 一次粒子径30nm)を用いた以外は製造例1と同様の手順で分散処理を行い、α型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B’-2)を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体(5)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B’-2)は、粒子径(D50)が90nm、粒子径(D99)が320nmであった。
【0057】
[酸化アルミニウム微粒子分散体(8)]
酸化アルミニウム(4)(γ型結晶 一次粒子径10nm)を用いた以外は製造例2と同様の手順で分散処理を行い、γ型結晶の酸化アルミニウム微粒子(B’-3)を含む均一なアルミナ分散体(8)を得た。酸化アルミニウム微粒子(B’-3)は、粒子径(D50)が60nm、粒子径(D99)が140nmであった。
【0058】
<シリカ微粒子>
・無機酸化物微粒子(B-6):MEK―AC-2140(日産化学(株)社製、シリカ微粒子、粒子径(D50)が20nm、粒子径(D99)が150nm)
【0059】
無機酸化物微粒子の種類、結晶系、平均粒子径を下記にまとめた。
【0060】
【表1】
【0061】
<ハードコート層または光学調整層形成用塗液の調製>
[ハードコート層または光学調整層形成用塗液1(塗液1)]
酸化ジルコニウム粒子を100部、多官能ポリエステルアクリレートPE1を155.4部、光重合開始剤としてESACURE ONE(IGM RESINS(株)社製)を4.6部と、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを不揮発分濃度40%となるように調整してハードコート層または光学調整層形成用塗液1(塗液1)を得た。
【0062】
[ハードコート層または光学調整層形成用塗液2(塗液2)]
多官能ポリエステルアクリレートPE1を155.4部、光重合開始剤としてESACURE ONE(IGM RESINS(株)社製)を4.6部と、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを不揮発分濃度40%となるように調整してハードコート層または光学調整層形成用塗液2(塗液2)を得た。
【0063】
[ハードコート層または光学調整層形成用塗液3(塗液3)]
酸化チタン粒子を100部、多官能ポリエステルアクリレートPE1を60部、光重合開始剤としてESACURE ONE(IGM RESINS(株)社製)を3部と、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを不揮発分濃度40%となるように調整してハードコート層または光学調整層形成用塗液3(塗液3)を得た。
【0064】
実施例および比較例の製造に用いた材料は以下のとおりである。
<中空粒子>
・中空粒子(A-1);テクポリマーXX-5964Z(中空ポリマー粒子、架橋アクリル系樹脂、粒子径(D50)80nm、中空率43%、固形分10%、積水化成品工業(株)社製)
・中空粒子(A-2);中空ポリマー粒子、ビニル系樹脂、粒子径(D50)150nm、固形分10%
・中空粒子(A-3);スルーリア4320(中空シリカ粒子、粒子径(D50)60nm、粒子屈折率1.30、固形分20.5%、日揮触媒化成(株)社製)
・中空粒子(A’-1);中空シリカ粒子、粒子径(D50)200nm、固形分20.5%
【0065】
<多官能(メタ)アクリレート(C)>
・SIU2400;Miramer SIU2400(シリコーン鎖含有10官能ウレタンアクリレート、分子量8000、Miwon製)
・DPHA-2C;KAYARAD DPHA-2C(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)社製)
・多官能ポリエステルアクリレートPE1
【0066】
<含フッ素(メタ)アクリレート(D)>
・含フッ素(メタ)アクリレート(D-1);FLUOROLINK AD1700(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート、固形分65%、ソルベイ社製)
・含フッ素(メタ)アクリレート(D-2);メガファックRS-90(含フッ素UV反応性オリゴマー、固形分10%、DIC社製)
【0067】
<光重合開始剤>
・OMNIRAD907(IGM RESINS(株)社製)
【0068】
[実施例1]
<低屈折率層形成用塗液の調製>
中空粒子(A)として中空粒子(A-1)(テクポリマーXX-5964Z、中空ポリマー粒子、架橋アクリル系樹脂、平均粒子径80nm、積水化成品工業(株)社製)100部(固形分100%換算値)、多官能(メタ)アクリレート(C)としてMiramer SIU2400(Miwon製)100部、含フッ素(メタ)アクリレート(D)として含フッ素(メタ)アクリレート(D-1)(FLUOROLINK AD1700(ソルベイ社製))15部(固形分100%換算値)、アルミナ分散体(1)4部及び光重合開始剤としてOMNIRAD907(IGM RESINS(株)社製)5部をよく混合し、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを不揮発分濃度4%となるように調整して低屈折率層形成用塗液X1を得た。
アルミニウム微粒子(B-1)はアルミナ分散体(1)中に25質量%含まれるため、中空粒子(A-1)とアルミナ微粒子(B-1)の比率は100:1である。
また、含フッ素(メタ)アクリレート(D)は不揮発分中6.78質量%含まれる。
多官能ポリエステルアクリレートPE1はアルミナ分散体(1)中10質量%含まれる。
【0069】
<反射防止フィルムの製造>
50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーUH-13」)上に、ハードコート層形成用塗液1(塗液1)を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が3.0μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。ハードコート層上に、得られた低屈折率層形成用塗液X1を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0070】
[実施例2~19、比較例1~7]
表1~3に示す組成および配合量(不揮発分換算)とした以外は、実施例1と同様にして、不揮発分濃度4%の低屈折率層形成用塗液X2~X26をそれぞれ得た。
続いて、低屈折率層形成用塗液X2~X26を用いた以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
【0071】
[実施例20、21、28]
実施例1と同様にして、低屈折率層形成用塗液X1を得た。
表5に示す通りに、50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーUH-13」)または80μm厚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム(株)社製「フジタック」)上に、ハードコート層形成用塗液1~3(塗液1~3)を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が3.0μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。ハードコート層上に、得られた低屈折率層形成用塗液X1を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0072】
[実施例22]
実施例1と同様にして、低屈折率層形成用塗液X1を得た。
50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーUH-13」)上に、得られた低屈折率層形成用塗液X1を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0073】
[実施例23、24]
実施例1と同様にして、低屈折率層形成用塗液X1を得た。
表5に示す通りに、50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーUH-13」)上に、塗液1または3を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射し、光学調整層を形成した。光学調整層上に、得られた低屈折率層形成用塗液X1を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0074】
[実施例25~27]
実施例1と同様にして、低屈折率層形成用塗液X1を得た。
表5に示す通りに、50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーUH-13」)上に、塗液1または2を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が3.0μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。ハードコート層上に、塗液1または3を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が800ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射し、光学調整層を形成した。光学調整層上に、得られた低屈折率層形成用塗液X1を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0075】
[実施例29]
実施例1と同様にして、低屈折率層形成用塗液X1を得た。
表5に示す通りに、50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーUH-13」)上に、ハードコート層形成用塗液1(塗液1)を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が3.0μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。ハードコート層上に、得られた低屈折率層形成用塗液X1を、バーコーターを用いて乾燥後の膜厚が140nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0076】
[評価項目および評価方法]
得られた低屈折率層および反射防止フィルムの評価方法は下記の通りである。結果を表2~5に示す。
【0077】
<屈折率の測定>
メトリコン社製「プリズムカプラモデル2010」を用いて、低屈折率層およびハードコート層、光学調整層の波長594nmにおける屈折率を求めた。
【0078】
<HZ;ヘイズ値の測定>
作製した反射防止フィルムについて、日本電色工業社製「ヘイズメーターSH7000」により低屈折率層表面のヘイズ値(HZ)を測定した。なお、△および〇が実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
・〇:1.5%以下
・△:1.5%超過2.0%以下
・×:2.0%超過
【0079】
<耐SW性;耐擦傷性>
作製した反射防止フィルムについて、テスター産業社製「学振型摩擦堅牢度試験機」により耐擦傷性を評価した。荷重200gを取り付けた摩擦子(表面積1cm)にスチールウール#0000を取り付け、ハードコート層の表面(1cm×15cm)を10往復させた。その後、反射防止フィルムのヘイズ値を測定し、下記基準で評価した。
[評価基準]
・◎: ΔHzが0.05%以下(非常に良好)
・〇: ΔHzが0.05%超過0.1%以下(良好)
・△: ΔHzが0.1%超過0.2%以下(可)
・×: ΔHzが0.2%超過(不良)
ここで、ΔHz=擦傷試験後のヘイズ値―擦傷試験前のヘイズ値である。
【0080】
<耐ガーゼ性>
作製した反射防止フィルムについて、テスター産業社製「学振型摩擦堅牢度試験機」により耐擦傷性を評価した。荷重500gを取り付けた摩擦子(表面積1cm)にガーゼ(イワツキガーゼ、綿100%)を取り付け、ハードコート層の表面(1cm×15cm)を100往復させた。その後、反射防止フィルムのヘイズ値を測定し、下記基準で評価した。
[評価基準]
・〇:ΔHzが0.05%以下(非常に良好)
・△:ΔHzが0.05%超過0.1%以下(良好)
・×:ΔHzが0.1%超過(不良)
【0081】
<防汚性>
防汚性を水接触角の結果から評価した。接触角が大きいほど水をはじきやすく、汚れにくいといえる。
水接触角は、協和界面化学社製全自動接触角計DM-701を用い、得られた反射防止フィルムの低屈折率層の表面の接触角値を求めた。
[評価基準]
・〇:接触角が100°以上(非常に良好)
・△:接触角が90°以上100°未満(良好)
・×:接触角が90°未満(不良)
なお、△および〇が実用上問題ないレベルである。
【0082】
<視感反射率の測定>
JIS Z8722に従って、株式会社日立ハイテクサイエンス社製「分光光度計U4100」と「5度正反射付属装置」を用いて測定した。フィルムは反射防止層の反対側の面を紙やすりで削った後、黒色インキを塗布して乾燥させることで、裏面からの光の反射ができるだけ影響しないようにして測定した。なお、△および〇が実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
・◎:0.5%以下
・〇:0.5%超過1.0%以下(非常に良好)
・△:1.0%超過1.5%以下(良好)
・×:1.5%超過(不良)
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
表2~5に示す通り、本発明の低屈折率層形成用塗液を用いて形成した低屈折率層は、スチールウールのような剛直な繊維と、ガーゼのような柔軟な繊維のいずれに対しても高い耐擦傷性を備え、さらに防汚性にも優れる反射防止フィルムが得られることが明らかとなった。
【要約】
【課題】
種々の研磨材に対する耐擦傷性に優れ、防汚性にも優れた反射防止フィルム用の低屈折率層形成用塗液を提供すること。
【解決手段】
粒子径(D50)が150nm以下の中空粒子(A)と、粒子径(D50)が10~90nm、かつ粒子径(D99)が150~300nmの無機酸化物微粒子(B)(ただし、中空粒子(A)は除く)と、多官能(メタ)アクリレート(C)とを含み、
前記中空粒子(A)100質量部に対し、前記無機酸化物微粒子(B)を0.5~15質量部含有する、低屈折率層形成用塗液により解決される。
【選択図】なし