(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】光送受信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/564 20130101AFI20230206BHJP
H01S 5/0683 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
H04B10/564
H01S5/0683
(21)【出願番号】P 2018210502
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】517123173
【氏名又は名称】KAIフォトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 康博
(72)【発明者】
【氏名】井上 梓
(72)【発明者】
【氏名】遠松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平岡 佑一
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-034633(JP,A)
【文献】特開2009-118473(JP,A)
【文献】特開2009-239879(JP,A)
【文献】特開昭56-031242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝送する光ファイバと、
電気信号を伝送する金属線と、
前記光ファイバ及び前記金属線のそれぞれの2つの端部のうちの一方の端部に接続された光送信機と、
前記光ファイバ及び前記金属線のそれぞれの2つの端部のうちの他方の端部に接続された光受信機と、を備え、
前記光送信機は、
外部から電気信号である高周波信号が入力される入力端子と、
バイアス電流を生成する電流制御部と、
前記電流制御部により生成された前記バイアス電流の供給を受け、前記バイアス電流に応じた平均レベルで且つ前記入力端子に入力された前記高周波信号に応じて調整された強度の前記光信号を前記光ファイバへ出力する発光素子と、
前記光ファイバの伝送損失を設定するためにユーザにより操作される損失設定部と、を備え、
前記光受信機は、
前記光ファイバを介して伝送された前記光信号を受光し、受光した前記光信号をその強度に応じた電気信号である高周波信号に変換する受光素子と、
前記受光素子によって変換された前記高周波信号を外部へ出力する出力端子と、
前記受光素子によって変換された前記高周波信号の平均レベルを検出し、検出した平均レベルを示すレベル信号を前記金属線を介して前記光送信機へ送信する受光レベル検出部と、を備え、
前記電流制御部は、前記受光レベル検出部から送信された前記レベル信号に基づいて、前記光信号の強度の平均レベルが所定値になるように、生成する前記バイアス電流を制御
し、
前記電流制御部は、前記損失設定部を介して設定された伝送損失を考慮して、前記レベル信号に基づいて前記発光素子から出力される前記光信号の強度の平均レベルを推定し、推定した前記平均レベルが一定となるように前記バイアス電流を制御する、出力制御モードを実行する、
光送受信システム。
【請求項2】
光信号を伝送する光ファイバと、
電気信号を伝送する金属線と、
前記光ファイバ及び前記金属線のそれぞれの2つの端部のうちの一方の端部に接続された光送信機と、
前記光ファイバ及び前記金属線のそれぞれの2つの端部のうちの他方の端部に接続された光受信機と、を備え、
前記光送信機は、
外部から電気信号である高周波信号が入力される入力端子と、
バイアス電流を生成する電流制御部と、
前記電流制御部により生成された前記バイアス電流の供給を受け、前記バイアス電流に応じた平均レベルで且つ前記入力端子に入力された前記高周波信号に応じて調整された強度の前記光信号を前記光ファイバへ出力する発光素子と、
前記光ファイバの伝送損失を設定するためにユーザにより操作される損失設定部と、を備え、
前記光受信機は、
前記光ファイバを介して伝送された前記光信号を受光し、受光した前記光信号をその強度に応じた電気信号である高周波信号に変換する受光素子と、
前記受光素子によって変換された前記高周波信号を外部へ出力する出力端子と、
前記受光素子によって変換された前記高周波信号の平均レベルを検出し、検出した平均レベルを示すレベル信号を前記金属線を介して前記光送信機へ送信する受光レベル検出部と、を備え、
前記電流制御部は、前記受光レベル検出部から送信された前記レベル信号に基づいて、前記光信号の強度の平均レベルが所定値になるように、生成する前記バイアス電流を制御
し、
前記電流制御部は、前記レベル信号に基づいて、前記受光レベル検出部によって検出される前記平均レベルが一定となるように前記バイアス電流を制御する受光制御モード、及び、前記損失設定部を介して設定された伝送損失を考慮して、前記レベル信号に基づいて前記発光素子から出力される前記光信号の強度の平均レベルを推定し、推定した前記平均レベルが一定となるように前記バイアス電流を制御する出力制御モード、のいずれかを選択して実行する、
光送受信システム。
【請求項3】
前記光送信機は、
前記出力制御モードにおいて、前記電流制御部によって推定される前記平均レベルが一定とならない場合に、前記発光素子のメンテナンスを促す警告を出力する出力部を備える、
請求項
1又は2に記載の光送受信システム。
【請求項4】
前記光送信機は、
前記受光制御モードにおいて、前記受光レベル検出部によって検出される前記平均レベルが一定とならない場合に、前記発光素子のメンテナンスを促す警告を出力する出力部を備える、
請求項
2に記載の光送受信システム。
【請求項5】
前記電流制御部は、電流回路と可変抵抗器とを備え、
前記電流回路は、前記発光素子に接続される回路出力端子と、前記金属線に接続される回路入力端子と、を備え、
前記可変抵抗器は、前記回路入力端子に接続されている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の光送受信システム。
【請求項6】
前記光ファイバ及び前記金属線は、一本の光ケーブルに収納されている、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の光送受信システム。
【請求項7】
前記光受信機は、
前記受光レベル検出部により送信された前記レベル信号を増幅する増幅部と、
前記電流制御部に供給する電源を、前記増幅部により増幅された前記レベル信号に重畳して、前記金属線を介して前記光送信機へ送信する重畳部と、を備える、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の光送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テレビ信号等の送受信に用いる光送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送では、いわゆる4K、8Kと呼ばれる、より高画質の放送が検討されている。4Kや8Kの高画質の放送では、テレビ信号が広帯域化する。広帯域の信号の伝送には、同軸ケーブルよりも広帯域の伝送が可能な光ファイバが適している。そのため、高画質の放送に伴い、テレビ信号を光信号に変換し、変換した光信号を光ファイバを介して伝送することが考えられる。テレビ信号から光信号への変換には発光素子が用いられるが、一般に、発光素子の電気/光交換率は、経年劣化によって低下する。
【0003】
特許文献1に記載の光送信機は、発光素子のモジュール内に、発光素子の光出力パワーを検出するためのモニタフォトダイオードを設けている。そして、特許文献1に記載の光送信機は、モニタフォトダイオードの検出結果を用いて、発光素子に供給するバイアス電流のレベルを調整することによって、発光素子の出力パワーの変動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光送信機は、発光素子のモジュール内にモニタフォトダイオードを設けるため、部品点数や光送信機の体格、コストが増大するという問題がある。
本開示は、光送信機内のモニタフォトダイオードを削減しつつ、発光素子から出力される光信号の平均レベルを制御可能な光送受信機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、光送受信システムであって、光ファイバと、金属線と、光送信機と、光受信機と、を備える。光ファイバは、光信号を伝送する。金属線は、電気信号を伝送する。光送信機は、光ファイバ及び金属線のそれぞれの2つの端部のうちの一方の端部に接続される。光受信機は、光ファイバ及び金属線のそれぞれの2つの端部のうちの他方の端部に接続される。光送信機は、入力端子と、電流制御部と、発光素子と、を備える。入力端子は、外部から電気信号である高周波信号が入力される。電流制御部は、バイアス電流を生成する。発光素子は、電流制御部により生成されたバイアス電流の供給を受け、前記バイアス電流に応じた平均レベルで且つ前記入力端子に入力された高周波信号に応じて調整された強度の光信号を光ファイバへ出力する。光受信機は、受光素子と、出力端子と、受光レベル検出部と、を備える。受光素子は、光ファイバを介して伝送された光信号を受光し、受光した光信号をその強度に応じた電気信号である高周波信号に変換する。出力端子は、受光素子によって変換された高周波信号を外部へ出力する。受光レベル検出部は、受光素子によって変換された高周波信号の平均レベルを検出し、検出した平均レベルを示すレベル信号を金属線を介して光送信機へ送信する。そして、電流制御部は、受光レベル検出部から送信されたレベル信号に基づいて、前記光信号の強度の平均レベルが所定値になるように、生成するバイアス電流を制御する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、光受信機は、受光素子によって変換された高周波信号の平均レベルを検出し、検出した平均レベルを示すレベル信号を光送信機へ送信する。そして、光送信機は、光受信機から送信されたレベル信号に基づいて、光信号の強度の平均レベルが所定値になるように、発光素子に供給するバイアス電流を制御する。したがって、光送信機内のモニタフォトダイオードを削除しつつ、発光素子から出力される光信号の平均強度レベルを制御することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、電流制御部は、光ファイバの伝送損失を考慮して、レベル信号に基づいて発光素子から出力される光信号の強度の平均レベルを推定し、推定した平均レベルが一定となるようにバイアス電流を制御する、出力制御モードを実行してもよい。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、光ファイバの伝送損失を考慮して、レベル信号に基づいて発光素子から出力される光信号の強度の平均レベルを推定し、推定した平均レベルを一定にすることができる。ひいては、発光素子の寿命が来て、発光素子から出力される光信号の強度の平均レベルを一定にすることができなくなった場合に、寿命が来た時期を精度良く判別することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、電流制御部は、レベル信号に基づいて、受光レベル検出部によって検出される平均レベルが一定となるようにバイアス電流を制御する、受光制御モードを実行してもよい。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、経年劣化により、発光素子の電気/光変換効率が低下した場合に、レベル信号に基づいて、発光素子により受光される光信号の強度の平均レベルを一定に維持することができる。ひいては、発光素子により変換された電気信号のキャリアノイズ比を維持することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、電流制御部は、出力制御モード及び受光制御モードのいずれかを選択して実行してもよい。
請求項4に記載の発明によれば、状況に応じて、出力制御モード及び受光制御モードのうちの適切なモードを選択して実行することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、光送信機は、出力制御モードにおいて、電流制御部によって推定される平均レベルが一定とならない場合に、発光素子のメンテナンスを促す警告を出力する出力部を備えていてもよい。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、出力制御モードにおいて推定される平均レベルが一定とならない場合には、発光素子のメンテナンスを促す旨が出力される。これにより、ユーザは発光素子の寿命が来たことを認識することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、光送信機は、受光制御において、受光レベル検出部によって検出される平均レベルが一定とならない場合に、発光素子のメンテナンスを促す警告を出力する出力部を備えていてもよい。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、受光制御モードにおいて検出される平均レベルが一定とならない場合には、発光素子のメンテナンスを促す旨が出力される。これにより、ユーザは発光素子の寿命が来たことを認識することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、光送信機は、ユーザが光ファイバの伝送損失を設定するための損失設定部を備えていてもよい。
請求項7に記載の発明によれば、電流制御部は、ユーザによって設定された光ファイバの伝送損失を用いて、発光素子から出力される光信号の強度の平均レベルを推定することができる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、電流制御部は、電流回路と可変抵抗器とを備えていてもよい。電流回路は、回路出力端子と、回路入力端子と、を備えていてもよい。出力端子は、発光素子に接続される。回路入力端子は、金属線に接続される。可変抵抗器は、回路入力端子に接続されている。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、経年劣化によって受光素子により受光される光信号の強度の平均レベルが低下した場合に、可変抵抗器の抵抗値を増加させることにより、電流回路に印加される電圧が大きくなり、発光素子に供給されるレベル電流が大きくなる。その結果、受光される光信号の強度の平均レベルが上昇し、受光素子に流れる電流が大きくなる。よって、抵抗値を調整して、バイアス電流を変化させることにより、受光素子に流れる電流を一定にすることができる。受光素子に流れる電流は受光される光信号の強度の平均レベルに比例するため、受光素子に流れる電流を一定にすることで、平均レベルを一定にすることができる。
【0020】
請求項9に記載の発明では、光ファイバ及び金属線は、一本の光ケーブルに収納されていてもよい。
請求項9に記載の発明によれば、光ファイバと金属線が一本の光ケーブルに収納されている。このため、光ファイバと金属線とを個別に配線する場合と比べて、簡易な配線を実現することができる。
【0021】
請求項10に記載の発明では、光受信機は、増幅部と、重畳部と、を備えてもよい。増幅部は、受光レベル検出部により送信されたレベル信号を増幅する。重畳部は、電流制御部に供給する電源を、増幅部により増幅されたレベル信号に重畳して、金属線を介して光送信機へ送信する。
【0022】
請求項10に記載の発明によれば、光受信機から光送信機へ電源が供給されるため、光送信機に外部電源に接続するコンセント及び電源回路を設けなくてもよい。また、レベル信号を増幅した後に、レベル信号を電源に重畳するため、レベル信号が電源に埋もれることがなく、レベル信号の時間変化を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る光送受信システムの構成を示す図である。
【
図2】光送信機の発光部及び電制御部と光受信機の受信部及び受光レベル検出部の構成を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る光送受信システムの構成を示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る光送受信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
(第1実施形態)
<1-1.構成>
まず、第1実施形態に係る光送受信システム100の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0025】
光送受信システム100は、光送信機10と、光受信機20と、光ケーブル50と、を備える。
光送信機10は、入力端子30と、第1増幅調整部11と、発光部13と、バイアス電流制御部17と、第1電源60と、選択スイッチ40と、損失設定部43と、出力部45と、を備える。入力端子30は、外部から電気信号である高周波信号(以下、RF信号)が入力される。第1増幅調整部11は、入力端子30に入力されたRF信号を増幅して、RF信号の振幅を調整する。RF信号は、例えば外部のアンテナで受信されたテレビ信号である。
【0026】
発光部13は、混合器14と発光素子15とを備える。混合器14は、コンデンサ14aとコイル14bとを備える。コンデンサ14aは、第1端及び第2端を有し、第1端がRF信号の入力部に接続されており、第2端がコイル14b及び発光素子15に接続されている。コイル14bは、第1端及び第2端を有し、第1端がバイアス電流制御部17に接続されており、第2端がコンデンサ14a及び発光素子15に接続されている。よって、混合器14は、コンデンサ14aを介して入力されたRF信号である変調電流と、コイル14bを介してバイアス電流制御部17から入力されたバイアス電流とを混合して駆動電流を生成し、生成した駆動電流を発光素子15へ供給する。
【0027】
発光素子15は、レーザダイオード又は発光ダイオードによって構成されている。発光素子15は、駆動電流を光信号に変換し、光信号を光ファイバ51へ出力する。詳しくは、発光素子15は、バイアス電流に応じた平均強度で且つRF信号に応じて強度が調整された(すなわち、RF信号の変化に応じて強度が変化する)光信号を、後述する光ケーブル50に含まれる光ファイバ51へ出力する。光信号の波長は、発光素子15の材料等によって予め決められている。以下では、発光素子15から出力される光信号を発光信号とも称する。
【0028】
バイアス電流制御部17は、定電流IC18と、可変抵抗器16aと、抵抗器16bと、を備える。定電流IC18は、回路入力端子18bがコイル14bに接続されており、回路出力端子18aが後述する金属線52に接続されている。可変抵抗器16aは、第1端及び第2端を有し、第1端が回路入力端子18bに接続されており、第2端が抵抗器16bに接続されている。また、抵抗器16bは、第1端及び第2端を有し、第1端が可変抵抗器16aに接続されており、第2端が接地されている。
【0029】
定電流IC18は、接続点Pの電位に応じたバイアス電流を混合器14へ供給する。接続点Pは、可変抵抗器16aの第1端と回路入力端子18bとの接続点である。すなわち、定電流IC18が供給するバイアス電流の大きさは、可変抵抗器16aの抵抗値に応じて変化する。
【0030】
第1電源60は、コンセントを介して100Vの交流電源に接続される。第1電源60は、100Vの交流電源から所定電圧の直流電源を生成し、生成した直流電源を第1増幅調整部11及びバイアス電流制御部17へ供給する。
【0031】
選択スイッチ40は、ユーザが、出力制御モード及び受光制御モードのいずれかを選択するためのスイッチである。出力制御モード及び受光制御モードについては後述する。損失設定部43は、出力制御モードにおいて、ユーザが光ファイバ51の伝送損失を設定するためのダイヤルなどである。ユーザは、使用する光ファイバ51の決まっている伝送損失を設定する。
【0032】
出力部45は、発光素子15の寿命が来たと判断した場合に、発光素子15のメンテナンスを促す旨を出力する。出力部45は、出力制御モードにおいて、発光素子15から出力される光信号の強度の平均レベルが一定にならない場合、又は、受光制御モードにおいて、受光素子24により受光される光信号の強度の平均レベルが一定とならない場合に、発光素子15の寿命が来たと判断する。
【0033】
光受信機20は、受光部23と、第2増幅調整部21と、受光レベル検出部25と、第2電源70と、出力端子80と、を備える。受光部23は、受光素子24を備える。受光素子24は、フォトダイオードにより構成されており、光ファイバ51を介して伝送された光信号を受光し、受光した光信号をその強度に応じた電気信号(具体的には電流)に変換する。変換された電気信号は、直流成分と高周波成分とを含む高周波信号である。直流成分は、受光された光信号の強度の平均レベルに対応した大きさの直流電流である。高周波成分は、受光された光信号の強度の変化に応じて振幅が変化する電流である。以下では、受光素子24により受光された光信号を受光信号とも称する。
【0034】
第2増幅調整部21は、受光素子24により変換された電気信号の高周波成分(すなわち変調電流)を取り出して増幅する。増幅された変調電流はRF信号に相当する。
出力端子80は、第2増幅調整部21により増幅されて振幅を調整されたRF信号を外部へ出力する。出力されたRF信号は、テレビ等へ入力される。
【0035】
受光レベル検出部25は、検出コイル26を備えて構成されており、受光信号の強度の平均レベルを検出し、検出した平均レベルを示すレベル信号を、金属線52を介してバイアス電流制御部17へ送信する。詳しくは、受光レベル検出部25は、検出コイル26によって、受光素子24により変換された電気信号の直流成分(すなわち直流電流)を取り出す。取り出した直流電流の大きさが受光信号の強度の平均レベルに相当し、直流電流がレベル信号に相当する。
【0036】
第2電源70は、コンセントを介して100Vの交流電源に接続される。第2電源70は、100Vの交流電源から所定電圧の直流電源を生成し、生成した直流電源を第2増幅調整部21へ供給する。
【0037】
光ケーブル50は、光ファイバ51と金属線52とを備える。光ケーブル50は、光ファイバ51と金属線52とを、樹脂製の被覆材によって覆って構成されている。光ケーブル50は、発光素子15と受光素子24とを接続し、発光素子15によって出力された光信号を受光素子24へ伝送する。金属線52は、検出コイル26と定電流IC18とを接続し、検出コイル26から定電流IC18へレベル信号を伝送する。
【0038】
<1-2.動作>
バイアス電流制御部17は、ユーザによる選択スイッチ40の操作に応じて、出力制御モード及び受光制御モードのいずれかを選択して実行する。
【0039】
出力制御モードは、光ファイバ51の伝送損失を考慮して、受信したレベル信号に基づいて、発光信号の強度の平均レベルを推定し、推定した発光信号の強度の平均レベルが一定となるようにバイアス電流を制御するモードである。
【0040】
光ファイバ51の伝送損失は、ユーザにより損失設定部43から設定される。ユーザは、テレビが受信するRF信号の強度が低下した場合には、経年劣化により光ファイバ51の伝送損失が大きくなったと判断して、初期に設定した伝送損失よりも大きな値に設定しなおしてもよい。
【0041】
バイアス電流制御部17は、ユーザにより設定された損失が大きくなると、可変抵抗器16aの抵抗値を大きくして、接続点Pの電位を上げる。これにより、定電流IC18から出力されるバイアス電流が大きくなり、損失の増加分が補われて、発光信号の強度の平均レベルが所定値に維持される。
【0042】
一方、受光制御モードは、レベル信号に基づいて、受光信号の強度の平均レベルが一定となるように、バイアス電流を制御するモードである。経年劣化により、発光素子15の電気/光交換率が低下すると、受光信号の強度の平均レベルが低下する。バイアス電流制御部17は、受光信号の強度の平均レベルが低下した場合に、可変抵抗器16aの抵抗値を大きくして、定電流IC18から出力されるバイアス電流を大きくし、受光信号の強度の平均レベルを上げる。これにより、受光信号の強度の平均レベルが所定値に維持される。
【0043】
しかしながら、発光素子15の寿命が来ると、出力制御モードにおいて発光信号の強度の平均レベルを所定値に維持できなくなる。また、発光素子15に寿命が来ると、受光制御モードにおいて受光信号の強度の平均レベルを所定値に維持できなくなる。よって、出力部45は、出力制御モードにおいて発光信号の強度の平均レベルが所定値に維持されなくなった場合、及び、受光制御モードにおいて受光信号の強度の平均レベルが所定値に維持されなくなった場合に、発光素子15のメンテナンスを促す警告を出力する。具体的には、出力部45は、点灯又は点滅することによって警告を出力するインジケータでもよいし、音を出力することによって警告を出力するブザーでもよい。
【0044】
<1-3.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)光受信機20は、受光素子24によって受光された光信号の強度の平均レベルを検出し、検出した平均レベルを示すレベル信号を光送信機10へ送信する。そして、光送信機10は、光受信機20から送信されたレベル信号に基づいて、発光素子15に供給するバイアス電流を制御する。したがって、光送信機10内のモニタフォトダイオードを削除しつつ、発光素子15の出力を制御することができる。
【0045】
(2)出力制御モードでは、光ファイバ51の伝送損失を考慮して、レベル信号に基づいて発光信号の強度の平均レベルを推定し、推定した平均レベルを一定にすることができる。ひいては、発光素子15の寿命が来て発光信号の強度の平均レベルを一定にすることができなくなった場合に、寿命が来た時期を精度良く判別することができる。
【0046】
(3)受光制御モードでは、経年劣化により発光素子15の電気/光変換効率が低下した場合に、レベル信号に基づいて、受光信号の強度の平均レベルを一定に維持することができる。ひいては、発光素子15により変換された電気信号のキャリアノイズ比を維持することができる。
【0047】
(4)ユーザは、状況に応じて、出力制御モード及び受光制御モードのうちの適切なモードを選択することができる。
(5)出力制御モードにおいて発光信号の強度の平均レベルが一定とならない場合、及び受光制御モードにおいて受光信号の強度の平均レベルが一定とならない場合には、発光素子のメンテナンスを促す旨が出力される。これにより、ユーザは発光素子の寿命が来たことを認識することができる。
【0048】
(6)経年劣化によって受光信号の強度の平均レベルが低下した場合、可変抵抗器16aの抵抗値を増加させることにより、定電流IC18に印加される電圧が大きくなり、発光素子15に供給されるバイアス電流が大きくなる。その結果、受光信号の強度の平均レベルが上昇し、受光素子24に流れる電流が大きくなる。よって、可変抵抗器16aの抵抗値を調整して、バイアス電流を変化させることにより、受光素子24に流れる電流を一定にすることができる。受光素子24に流れる電流は受光信号の強度の平均レベルに比例するため、受光素子24に流れる電流を一定にすることで、受光信号の強度の平均レベルを一定にすることができる。
【0049】
(7)光ファイバ51と金属線52が一本の光ケーブル50に収納されている。このため、光ファイバ51と金属線52とを個別に配線する場合と比べて、簡易な配線を実現することができる。
【0050】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0051】
図3に示すように、第2実施形態に係る光送受信システム100Aは、光送信機10Aと光受信機20Aとを備える。前述した第1実施形態に係る光送信機10は第1電源60を備えていた。これに対し、第2実施形態に係る光送信機10Aは電源を備えていない点で、第1実施形態と相違する。第2実施形態では、光送信機10Aは、光受信機20Aから電源供給を受ける。以下、光送信機10A及び光受信機20Aの構成について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0052】
光受信機20Aは、受光部23と、第2増幅調整部21と、受光レベル検出部25と、第2電源70と、増幅部22と、変調部27と、重畳部28と、を備える。
第2電源70は、第2増幅調整部21に加えて、増幅部22、変調部27及び重畳部28に接続されており、これらの各部へ直流電源を供給する。
【0053】
増幅部22は、受光レベル検出部25に接続されており、受光レベル検出部25から送信されたレベル信号を増幅する。変調部27は、増幅部22に接続されており、増幅部22により増幅されたレベル信号を変調する。
【0054】
重畳部28は、第2電源70から供給された直流電源を、変調部27により変調されたレベル信号に重畳した重畳信号を生成し、生成した重畳信号を金属線52を介して光送信機10Aへ送信する。すなわち、光受信機20Aから光送信機10Aへ、金属線52を介して、受光信号の強度の平均レベル情報の送信とともに電源供給が行われる。
【0055】
光送信機10Aは、第1増幅調整部11と、発光部13と、バイアス電流制御部17と、復調部12と、分離部19と、選択スイッチ40と、損失設定部43と、出力部45と、を備える。
【0056】
図4に示すように、分離部19は、コンデンサ19aとコイル19bとを備える。コンデンサ19a及びコイル19bは、それぞれ第1端及び第2端を有する。コンデンサ19a及びコイル19bの第1端は、金属線52に接続されている。コンデンサ19aの第2端は復調部12に接続されている。コイル19bの第2端はバイアス電流制御部17及び第1増幅調整部11に接続されている。
【0057】
金属線52を介して送信された重畳信号は、分離部19によって直流電源と変調されたレベル信号とに分離さる。変調されたレベル信号は、コンデンサ19aを介して復調部12に入力される。復調部12は、レベル信号を復調し、復調したレベル信号をバイアス電流制御部17へ出力する。直流電源は、コイル19bを介してバイアス電流制御部17及び第1増幅調整部11に供給される。
【0058】
<2-2.効果>
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(7)に加え、以下の効果が得られる。
【0059】
(8)光受信機20Aから光送信機10Aへ電源が供給されるため、光送信機10Aに外部電源に接続するコンセント及び電源を設けなくてもよい。また、増幅部22によりレベル信号を増幅した後に、電源をレベル信号に重畳するため、レベル信号が電源に埋もれることがなく、レベル信号の時間変化を判別することができる。
【0060】
(第3実施形態)
<3-1.第2実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0061】
図5に示すように、第3実施形態に係る光送受信システム100Bは、光送信機10Aと光受信機20Bとを備える。前述した第2実施形態に係る光受信機20Aは、第2電源70を備えていた。これに対し、第3実施形態に係る光受信機20Bは電源を備えていない点で、第2実施形態と相違する。第3実施形態では、光受信機20Bは、テレビ200から電源供給を受けるとともに、テレビ200から供給された電源を光送信機10Aへ伝送する。以下、光受信機20Bの構成について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0062】
光受信機20Bは、受光部23と、第2増幅調整部21と、受光レベル検出部25と、増幅部22と、変調部27と、重畳部28と、分離部29と、を備える。
分離部29は、コンデンサ29aとコイル29bとを備える。コンデンサ29a及びコイル29bは、それぞれ第1端及び第2端を有する。コンデンサ29a及びコイル29bの第1端は、コネクタ及び同軸ケーブルを介してテレビ200に接続されている。コンデンサ29a第2端は、第2増幅調整部21に接続されている。また、コイル29bの第2端は、第2増幅調整部21、増幅部22、変調部27及び重畳部28に接続されている。
【0063】
第2増幅調整部21により増幅されたRF信号は、コンデンサ29aを介してテレビ200へ入力される。また、テレビ200から出力された直流電源は、コイル29bを介して、第2増幅調整部21、増幅部22、変調部27、及び重畳部28へ供給される。第2実施形態と同様に、重畳部28は、テレビ200からコイル29bを介して供給された直流電源を、変調部27により変調されたレベル信号に重畳した重畳信号を生成し、生成した重畳信号を金属線52を介して光送信機10Aへ送信する。
【0064】
<3-2.効果>
以上説明した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(8)に加え、以下の効果が得られる。
【0065】
(9)テレビ200から光受信機20B及び光送信機10Aへ電源が供給されるため、光受信機20B及び光送信機10Aに、外部電源に接続するコンセント及び電源を設けなくてもよい。
【0066】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0067】
(a)上記各実施形態では、光送信機10,10Aが、選択スイッチ40を備えていたが、本開示はこれに限定されるものではない。光送信機10,10Aは、選択スイッチ40を備えていなくてもよい。バイアス電流制御部17が、光送信機10,10Aの使用状況に応じて、出力制御モード及び受光制御モードのうちの何れかを選択して実行してもよい。例えば、バイアス電流制御部17は、光送信機10,10Aの使用時間の積算値が所定値を超えるまでは、キャリアノイズ比を一定に維持する受光制御モードを選択し、使用時間の積算値が所定値を超えた場合には、発光素子15の寿命の時期を精度良く判定可能な出力制御モードを選択してもよい。
【0068】
(b)上記各実施形態では、光ファイバ51と金属線52とが一本の光ケーブル50に収納されていたが、光ファイバ51と金属線52は一本にまとめられていなくてもよい。すなわち、光ファイバ51と金属線52は個別に配線してもよい。
【0069】
(c)光ファイバ51は、例えば、グラスオプティカルファイバ(GoF)やプラスチックオプティカルファイバ(PoF)が用いられる。
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0070】
10…光送信機、10A…光送信機、11…第1増幅調整部、12…復調部、13…発光部、14…混合器、14a…コンデンサ、14b…コイル、15…発光素子、16a…可変抵抗器、16b…抵抗器、17…バイアス電流制御部、18…定電流IC、18a…回路出力端子、18b…回路入力端子、19…分離部、19a…コンデンサ、19b…コイル、20…光受信機、20A…光受信機、20B…光受信機、21…第2増幅調整部、22…増幅部、23…受光部、24…受光素子、25…受光レベル検出部、26…検出コイル、27…変調部、28…重畳部、29…分離部、29a…コンデンサ、29b…コイル、30…入力端子、40…選択スイッチ、43…損失設定部、45…出力部、50…光ケーブル、51…光ファイバ、52…金属線、60…第1電源、70…第2電源、80…出力端子、100…光送受信システム、100A…光送受信システム、100B…光送受信システム、200…テレビ、P…接続点。