(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】コンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 15/00 20060101AFI20230206BHJP
F24C 3/02 20210101ALI20230206BHJP
【FI】
F24C15/00 M
F24C3/02 H
(21)【出願番号】P 2018224978
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113999(JP,A)
【文献】特開2009-250498(JP,A)
【文献】特開2011-140780(JP,A)
【文献】特開2018-044709(JP,A)
【文献】特開2013-213643(JP,A)
【文献】実開昭54-073389(JP,U)
【文献】特開2008-104885(JP,A)
【文献】特開2012-225604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/00
F24C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナを収容する筐体と、
上部構成体と、前記上部構成体の下側に配置されるとともに前記上部構成体と共に前方側に開口した孔部を構成する下部構成体と、を備え、前記筐体の前部に固定されるフロント部材と、
前記フロント部材によってガイドされる被ガイド部を備えるとともに、前記孔部内に配置され、前記フロント部材の前側に突出した前方位置と前記前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する操作パネルと、
少なくとも前記退避位置にある前記操作パネルに対して前方側への移動力を継続的に付与する付勢部と、
ピニオン部と、前記ピニオン部の回転エネルギーを減衰させる減衰部と、を備え、前記操作パネルに固定されるダンパ装置と、
を有し、
前記フロント部材は、
前記被ガイド部に対向して配置されるとともに前後方向に沿って延び、前記被ガイド部の移動の際に当該被ガイド部を案内するガイド壁と、
前記ガイド壁と一体成形されるとともに前記ガイド壁と
左右方向に対向して配置され且つ
前記前後方向に沿って延び、前記ピニオン部と噛み合うラック部と、
を備
え、
前記ピニオン部は、前記ガイド壁と前記ラック部との間の第1空間に配置され、
前記ラック部は、前記付勢部が収容された第2空間と前記第1空間とを仕切る構成で配置され、
前記操作パネルの左右方向の一方側に前記付勢部が配置されるとともに、他方側に前記ピニオン部が配置され、
前記ラック部が、前記ピニオン部に対して前記付勢部側に配置され、
前記付勢部の付勢によって前記操作パネルが前方側へ移動する際に、前記付勢部によって前記操作パネルの左右方向一方側の部分が前側に引っ張られることによって生じる回転力により、前記ピニオン部が前記ラック部に押し付けられる
コンロ。
【請求項2】
点火操作を行うための点火操作部と、
火力の調整操作を行うための火力調整操作部と、
を備え、
前記上部構成体は、
貫通した開口形状をなし、自身の内部に前記点火操作部が嵌り込むように配置される第1開口部と、
前記火力調整操作部が挿し通されるとともに、自身の内部領域が前記火力調整操作部の移動経路として構成され、前記第1開口部と一体成形される第2開口部と、
を有する請求項1に記載のコンロ。
【請求項3】
前記下部構成体は、前記被ガイド部の下方側において前記被ガイド部と対向して配置される底部を有し、
前記底部から立ち上がる構成で、前記ガイド壁及び前記ラック部が形成されており、
前記底部には、当該底部の上面に入り込んだ異物を下方に逃がす逃がし孔が形成されている
請求項1又は請求項2に記載のコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンロ本体2と、このコンロ本体2の前面に設けられた装置ユニット20とを備えたコンロ(ビルトインコンロ1)が開示されている。このコンロの装置ユニット20は、前後方向に出退する操作パネル45を備えている。この操作パネル45の左右両側には、前後方向に延びるガイドリブが設けられており、操作パネル45の左方及び右方には、各ガイドリブを前後方向にガイドするためのガイド溝が形成されたガイド部材41,42が設けられている。これにより、操作パネル45はガイド溝に沿って前後方向にガイドされるようになっている。
【0003】
更に、操作パネル45の後部には、操作パネル45を一定速度で前方に押し出すための定荷重バネ装置100が設けられている。このため、操作パネル45は、定荷重バネ装置100のバネ102の弾性復帰力によって、一定速度で前方に押し出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のコンロでは、操作パネル45の進行速度を適度に抑えることが望まれている。そこで、操作パネル45に加わる進行方向への力を減衰させる減衰機構を設けることが考えられる。しかし、単に減衰機構を追加するだけでは、部品点数が増加するという問題がある。
【0006】
本発明は上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、部品点数の増加を抑えつつ、操作パネルに加わる進行方向への力を減衰させること可能なコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のコンロは、
ガスバーナを収容する筐体と、
上部構成体と、前記上部構成体の下側に配置されるとともに前記上部構成体と共に前方側に開口した孔部を構成する下部構成体と、を備え、前記筐体の前部に固定されるフロント部材と、
前記フロント部材によってガイドされる被ガイド部を備えるとともに、前記孔部内に配置され、前記フロント部材の前側に突出した前方位置と前記前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する操作パネルと、
少なくとも前記退避位置にある前記操作パネルに対して前方側への移動力を継続的に付与する付勢部と、
ピニオン部と、前記ピニオン部の回転エネルギーを減衰させる減衰部と、を備え、前記操作パネルに固定されるダンパ装置と、
を有し、
前記フロント部材は、
前記被ガイド部に対向して配置されるとともに前後方向に沿って延び、前記被ガイド部の移動の際に当該被ガイド部を案内するガイド壁と、
前記ガイド壁と一体成形されるとともに前記ガイド壁と対向して配置され且つ前後方向に沿って延び、前記ピニオン部と噛み合うラック部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記一態様のコンロによれば、付勢部から付与される移動力によって操作パネルが前方側へ移動する際に、フロント部材のガイド壁によって操作パネルを案内することができる。また、このコンロでは、操作パネルに加わる前後方向への力が、ラック部及びピニオン部を介して減衰部に伝達されるので、操作パネルに加わる進行方向への力を減衰させることができる。更に、このコンロでは、減衰機構の一部を構成するラック部がガイド壁と一体成形されるので、ラック部をガイド壁と別体で構成する場合と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。即ち、このコンロによれば、部品点数の増加を抑えつつ、操作パネルに加わる進行方向への力を減衰させることができる。
しかも、このコンロによれば、ラック部とガイド壁とを一体成形することにより、ラック部とガイド壁とを所望の位置関係に、より高精度で配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1のガスコンロを概略的に示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施例1のガスコンロを概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、フロント部材と操作パネルとが組み付けられたものを前方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、上部構成体を概略的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、上部構成体を概略的に示す右側面図である。
【
図6】
図6は、下部構成体を後方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、下部構成体を後方から見た平面図である。
【
図8】
図8は、下部構成体を概略的に示す背面図である。
【
図9】
図9は、操作パネルを後方から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを後方から見た平面図である。
【
図13】
図13は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを概略的に示す背面図である。
【
図14】
図14は、下部構成体に操作パネルを組み付けたものを、
図12のA-A位置で切断した左側部分の斜視図である。
【
図15】
図15は、操作パネルが下部構成体に係合された状態を示す平面図である。
【
図16】
図16は、操作パネルが下部構成体との係合が解除されて前方に移動している様子を示す平面図である。
【
図17】(A)は、操作パネルが退避位置にあるときの操作パネル及び下部構成体を示す平面図であり、(B)は、退避位置での保持が解除された直後の操作パネル及び下部構成体を示す平面図であり、(C)は、操作パネルが前方位置にあるときの操作パネル及び下部構成体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本発明の望ましい一例を示す。
ピニオン部は、ガイド壁とラック部との間の第1空間に配置されていてもよい。ラック部は、付勢部が収容された第2空間と第1空間とを仕切る構成で配置されていてもよい。この構成によれば、ラック部がピニオン部と付勢部との間に介在するので、仮に作動する付勢部によって異物等が弾かれたとしても、その異物等がピニオン部に噛み込むことを抑制し得る。
【0011】
操作パネルの左右方向の一方側に付勢部が配置されるとともに、他方側にピニオン部が配置されるようにしてもよい。ラック部は、ピニオン部に対して付勢部側に配置されるようにしてもよい。ラック部は、ピニオン部に対して付勢部側に配置されるようにしてもよい。このように、左右方向一方側に付勢部が配置されていると、付勢部の付勢によって操作パネルが前方側に移動するときに、左右方向一方側(左右方向において付勢部が配置される側)がより強く引っ張られることになる。このような引っ張り動作が生じると、操作パネルでは、左右方向一方側が他方側よりも早く前側に移動しようとする回転力(即ち、左右方向他方側が左右方向一方側よりも遅れるような回転力)が生じやすくなり、この回転力に応じてピニオン部は左右方向一方側(即ち、付勢部側)に向かおうとする。つまり、付勢部の付勢によって操作パネルが前方側に移動するときには、ピニオン部がラック部に押し付けられるように作用しながら移動しやすくなるため、ラック部との噛み合いが外れにくい状態で操作パネルを前方側に移動させることができる。
【0012】
上記コンロは、点火操作を行うための点火操作部と、火力の調整操作を行うための火力調整操作部とを備えていてもよい。上部構成体は、貫通した開口形状をなし、自身の内部に点火操作部が嵌り込むように配置される第1開口部と、火力調整操作部が挿し通されるとともに、自身の内部領域が前記火力調整操作部の移動経路として構成され、第1開口部と一体成形される第2開口部と、を有するようにしてもよい。この構成によれば、火力調整操作部が挿し通される第2開口部が点火操作部の配置される第1開口部と一体成形されるので、第2開口部を第1開口部と別体で構成する場合と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。
【0013】
下部構成体は、被ガイド部の下方側において被ガイド部と対向して配置される底部を有するようにしてもよい。ガイド壁及びラック部は、底部から立ち上がる構成としてもよい。底部には、この底部の上面に入り込んだ異物を下方に逃がす逃がし孔が形成されていてもよい。この構成によれば、底部の上面に入り込んだ異物を逃がし孔から逃がすことができるので、底部の上面に異物が滞留することによる下部構成体の機能(例えば、操作パネルを案内する機能、操作パネルに加わる進行方向への力を減衰する機能など)の低下を抑制することができる。
【0014】
<実施例1>
以下、実施例1について、図面を参照して説明する。
図1、
図2のように、ガスコンロ1(コンロ)は、ガスバーナ4,5,6、ガスバーナ4,5,6を収容するコンロ本体部1Aなどを有しており、図示しないキャビネットに組み込まれるビルトインコンロとして構成されている。
【0015】
以下の説明では、ガスコンロ1において、板状に構成された天板3の板面方向のうち、短手方向を前後方向とし、前後方向と直交する方向である天板3の長手方向を左右方向とする。更に、前後方向及び左右方向と直交する方向である天板3の板厚方向を上下方向として説明する。
図1では、左右方向がガスコンロ1の左右方向であり、上下方向がガスコンロ1の上下方向である。また、
図2において、左斜め下方、右斜め上方、右斜め下方、左斜め上方を、それぞれ、ガスコンロ1の前方、後方、右方、左方とする。
【0016】
図2のように、ガスコンロ1はコンロ本体部1Aによって外殻(ケース体)が構成されており、このコンロ本体部1Aの内部にガスバーナ4,5,6などの各種部品が収容された構成をなす。コンロ本体部1Aは、ガスバーナ4,5,6を収容する筐体2と、筐体2の上端部に固定される天板3と、筐体2の前部に固定されるフロント部材20と、フロント部材20の前側に装着される化粧パネル90と、操作パネル60と、操作パネル60の前側に装着される化粧パネル92と、を備える。
【0017】
筐体2は、公知の金属材料を主体として上方側が開放した箱状に構成されている。左右に一対の側壁部(
図2では、一方の側壁部2Cのみを図示)を備えるとともに、これら側壁部の後端部に連結される形で後壁部(図示略)が設けられる。また、筐体2の前面部(図示略)はフレーム状又は壁状に構成されており、これら前面部、側壁部、後壁部によって筐体2の内部空間の前後左右を囲む構成をなし、これら前面部、側壁部、後壁部の下部には底壁部(図示略)が連結されている。筐体2は、これらの壁部によって上部が開口した箱状形態をなしており、筐体2の上端部には、天板3が取り付けられている。
【0018】
図1、
図2のように、天板3は、板状に構成されると共にガスバーナ4,5,6を露出させるための開口部(貫通孔)が複数個形成された構成をなす。天板3は、カウンタトップ(図示略)の上側に配置される。
【0019】
図2のように、天板3において右手前(右端寄りかつ前端寄りの位置)にはガスバーナ(右バーナ)4、左手前(左端寄りかつ前端寄りの位置)にはガスバーナ(左バーナ)5、中央奥側にはガスバーナ(奥バーナ)6が夫々設けられている。
【0020】
筐体2の中央付近には、グリル部8が設けられている。グリル部8は、箱状に構成されたグリル庫、グリル庫を開閉するグリル扉8B、ガスバーナとして構成されるとともにグリル庫内に配置されるグリルバーナ(図示略)、グリル扉8Bの後方側においてグリル扉8Bと一体的に設けられる受け皿、受け皿の上に載置される焼き網などを備える。受け皿はグリル庫の底面部に載置されており、グリル扉8Bを前方側に引き出すように操作することで、グリル扉8Bとともに受け皿及び焼き網が一体的に引き出されるようになっている。なお、グリル庫にレールユニットを設けて、グリル扉8Bや受け皿などをレールユニットによって前後方向に案内する構成となっていてもよい。なお、天板3において後端寄りの位置には、グリル庫と連通するグリル排気口9が設けられている。
【0021】
図1のように、筐体2の前面の右寄りには2つの点火ボタン11,14(点火操作部)が、左寄りにはもう2つの点火ボタン12,13が設けられている。点火ボタン11は、ガスバーナ4の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンであり、点火ボタン12は、ガスバーナ5の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンであり、点火ボタン13は、ガスバーナ6の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン14は、グリル部8のガスバーナの点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。各点火ボタン11,12,13,14は、フロント部材20の前面よりも前方へ突出して設けられ、筐体2の内部に設けられた図示しない制御回路と接続されており、使用者が押し込み操作すると、制御回路による制御により、その操作されたボタンに対応するガスバーナの点火又は消火が行われるようになっている。
【0022】
図1のように、筐体2の前面の右寄りには2つのレバー16A,16D(火力調整操作部)が、左寄りにはもう2つのレバー16B,16Cが設けられている。レバー16A,16B,16C,16Dはそれぞれ、対応するガスバーナ4,5,6又はグリル部8のグリルバーナにおける火力の調整操作を行うための火力調整レバーである。点火ボタン12,13の下側には、ガスコンロ1に電力を供給するための電池を収容する電池ボックス18が設けられている。
【0023】
フロント部材20は、例えば、金属材料又は樹脂材料を主体として構成されている。上述した筐体2には、前方に開口した収容凹部2Aが形成されている。フロント部材20は、グリル部8の側方(本実施例では右方)において、この収容凹部2Aの内部を前方から覆うように配置され、筐体2の前部に固定される。
【0024】
図3には、フロント部材20に操作パネル60を組付けた組付状態の様子が示されている。フロント部材20は、上部構成体22と下部構成体24とを有する。上部構成体22及び下部構成体24の各々は、全体が一体成形されている。
【0025】
上部構成体22は、
図3~5のように、正面視において略矩形状をなしており、収容凹部2Aの内部を前方から覆うように収容凹部2Aの開口部分に配置される。上部構成体22は、前面側に第1開口部32,33と、第2開口部34,35と、を有する。第1開口部32,33は、前後方向に貫通した開口形状をなしており、自身の内部に上述した点火ボタン11,14が嵌り込むように配置される。
【0026】
第2開口部34,35はそれぞれ、第1開口部32,33の上方に配置され、正面視において所定方向(本実施例では左右方向)に長い形態をなしている。上述したレバー16A,16Dは、収容凹部2Aの内部から前方に向かって突出した形態をなしている。第2開口部34,35は、これらのレバー16A,16Dが後方から挿し通されるとともに、自身の内部領域がレバー16A,16Dの移動経路として構成されている。即ち、レバー16A,16Dは、第2開口部34,35を介して前方に突出した状態で配置され、突出した部分が操作されることで第2開口部34,35を左右方向に移動し得るようになっている。レバー16A,16Dが左右方向に操作されることで、対応するガスバーナ4又はグリル部8のグリルバーナにおける火力が調整される。
【0027】
これらの第1開口部32,33と第2開口部34,35とは一体成形されている。また、化粧パネル90は、第1開口部32,33及び第2開口部34,35を塞がないように、第1開口部32,33及び第2開口部34,35に対応する部分が前後方向に貫通した開口形状をなしている。
【0028】
上部構成体22は、収容凹部2Aの内部を前方から覆う前面部26と、前面部26の下側部分の左右両端部から後方に延びる一対の側面部28,28とを有する。各側面部28の下側部分には、少なくとも1つ(本実施例では4つ)の連結孔28Aが前後方向に等間隔で形成されている。
【0029】
下部構成体24は、
図3のように、上部構成体22の下側に配置されるとともに上部構成体22と共に前方側に開口した孔部30を構成する部材である。下部構成体24は、
図6~8のように、平面視において左右方向に長い略矩形状をなしており、底部36と、一対のガイド壁38,38と、ラック部40と、係止部42と、被係合部44と、を有する。
【0030】
底部36は、平面視において左右方向に長い略矩形状をなしており、上下方向に厚みを有する。
【0031】
一対のガイド壁38,38の各々は、板状をなしており、底部36の左右両端部からそれぞれ立ち上がり前後方向に沿って延びている。一対のガイド壁38,38の各々の外側面には、上部構成体22に設けられた各連結孔28Aの位置に対応して連結孔28Aと同数(本実施例では4つ)の連結部38Aが形成されている。各連結部38Aは、左右方向外方に突出した形状をなしており、ガイド壁38,38が揺動することで各連結孔28Aに嵌まり込む。これにより、下部構成体24が上部構成体22に連結される。また、ガイド壁38,38の各々の内側面には、前後方向に沿って延びるガイド溝38B,38Bが形成されている。
【0032】
ラック部40は、後述のピニオン部84と噛み合う部分であり、底部36の上面から立ち上がり前後方向に沿って延びている。ラック部40は、左右方向において一対のガイド壁38,38の間に配置される。ラック部40は、一対のガイド壁38,38の一方側(本実施例では右側のガイド壁38側)寄りに配置される。ラック部40と一方のガイド壁38(本実施例ではラック部40と近い方のガイド壁38)との間の第1空間S1には、ピニオン部84が配置される。そして、ラック部40の第1空間S1側の面がピニオン部84と噛み合う。ラック部40は、下部構成体24の一部として、一対のガイド壁38,38と一体成形されている。
【0033】
上述した底部36には、底部36の上面に入り込んだ異物を下方に逃がす逃がし孔36Bが形成されている。逃がし孔36Bは、底部36のうち、第1空間S1の下面を構成する特定底部36Aに形成されており、特定底部36Aにおける左右方向のガイド壁38側において前後方向に沿って少なくとも1つ(本実施例では4つ)設けられている。特定底部36Aの上面(第1空間S1の下面)は、左右方向において、ラック部40側から逃がし孔36B側に向かって下るように傾斜している。
図6、
図7では、ガイド壁38の壁面から続く形で逃がし孔36Bの内壁面が構成されている。
【0034】
係止部42は、後述する付勢部80の被係止部80Aが係止される部分であり、底部36の上面から立ち上がり前方に突出した形状をなしている。係止部42は、下部構成体24の左右方向において、第1空間S1とは反対側に配置される。
【0035】
被係合部44は、後述する操作パネル60の係合部70と係合する部分である。被係合部44は、係合部70とともに、押圧操作が行われるごとに係合状態とこの係合状態が解除された係合解除状態とに交互に切り替わるプッシュラッチ機構を構成する。被係合部44は、底部36の左右方向中央部の後端部から上方に立ち上がって構成されている。
【0036】
操作パネル60は、ガスコンロ1による調理の加熱温度、加熱時間等を設定するために用いられるものである。操作パネル60は、フロント部材20に組み付けられた組付状態において孔部30内に配置され、フロント部材20の前側に突出した前方位置と前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する。
図9~11のように、操作パネル60は、前後方向に長く上下方向に厚みを有するベース部62と、一対の被ガイド部68,68と、係合部70とを有している。
【0037】
ベース部62は、前側ベース部64と後側ベース部66とを有する。前側ベース部64は、ベース部62の前側部分を構成し、左右方向に長い略矩形状をなしている。後側ベース部66は、ベース部62の後側部分を構成し、前側ベース部64の左右両側の後端部からそれぞれ後方に延びる右後側ベース部66Aと左後側ベース部66Bとを有する。右後側ベース部66Aと左後側ベース部66Bとの間には後方に開口した空間が形成されている。
【0038】
係合部70は、上述した被係合部44と係合する部分である。係合部70は、前側ベース部64の後面から後方に突出した形状をなしており、右後側ベース部66Aと左後側ベース部66Bとの間に形成された空間に配置される。
【0039】
一対の被ガイド部68,68は、上述した一対のガイド壁38,38(フロント部材20)によってガイドされる部分である。一対の被ガイド部68,68は、操作パネル60の左右両側面の下端部から左右方向外方に突出して前後方向に延びる形状をなしている。
【0040】
操作パネル60の後側ベース部66(左後側ベース部66B)には、上方に開口した第2空間S2が形成されており、この第2空間S2には、付勢部80が収容される。付勢部80は、例えば定荷重ばねとして構成されている。即ち、付勢部80は、シート状をなしており、操作パネル60に回転可能に軸支されるドラム81に基端側が巻き付けられてドラム81に保持されている。付勢部80の先端部が引っ張られると、ドラム81が回転して付勢部80の先端側が直線状に引き出され、付勢部80に復元力が働く。付勢部80の先端部寄りには、孔状の被係止部80Aが形成されており、この被係止部80Aが上述した係止部42に引っ掛かることで係止部42に係止される。
【0041】
操作パネル60の下面には、ダンパ装置82が固定される。ダンパ装置82は、ピニオン部84と、減衰部86とを有する。ピニオン部84は、下部構成体24(フロント部材20)のラック部40と噛み合うように配置される。減衰部86は、例えばロータリーダンパとして構成されており、ピニオン部84の回転エネルギーを減衰させる機能を有する。
【0042】
図12~14のように、操作パネル60は、自身の被ガイド部68,68が、下部構成体24(フロント部材20)におけるガイド壁38,38のガイド溝38B,38Bに挿通されることで、下部構成体24(フロント部材20)に組み付けられる。その際、第2空間S2に収容された付勢部80の被係止部80Aが下部構成体24(フロント部材20)の係止部42に係止される。また、操作パネル60に固定されたダンパ装置82のピニオン部84は、ラック部40に噛み合う。
【0043】
操作パネル60が下部構成体24(フロント部材20)に組み付けられた状態(組付状態)では、ガイド壁38,38が、被ガイド部68,68に対向して配置される。更に、ラック部40は、ピニオン部84が配置される第1空間S1と、付勢部80が収容される第2空間S2とを仕切る構成で配置される。即ち、ラック部40は、ピニオン部84に対して付勢部80側に配置される。更に、操作パネル60の左右方向の一方側(本実施例では左側)に付勢部80が配置されるとともに、他方側(本実施例では右側)にピニオン部84が配置される。より具体的には、操作パネル60の左右方向の中央位置よりも一方側(左側)且つ操作パネル60の前後方向中央位置よりも一方側(後方側)に付勢部80が配置されている。付勢部80は、操作パネル60の前後方向中央位置よりも一方側(左側)且つ操作パネル60の左右方向中央位置よりも一方側(後方側)の所定部位(具体的には、付勢部80を保持する保持部付近)を継続的に前側に押すように力を加え続ける。一方で、操作パネル60の左右方向の中央位置よりも他方側(右側)且つ操作パネル60の前後方向中央位置付近にピニオン部84が配置されている。更に、ピニオン部84は、操作パネル60が
図15で示す退避位置にあるとき及び退避位置から前方位置に変位するまでの間は、左右方向他方側(右側)のガイド壁38の前端部38Cよりも後方側及びこのガイド壁38に形成されたガイド溝38Bの前端部よりも後方側に位置するようになっている。更に、底部36は、被ガイド部68,68の下方側において被ガイド部68,68と対向して配置される。
【0044】
下部構成体24(フロント部材20)に組み付けられた操作パネル60(組付状態にある操作パネル60)は、下部構成体24(フロント部材20)のガイド壁38,38に沿って前後方向に移動する。即ち、ガイド壁38,38は、被ガイド部68,68の移動の際に被ガイド部68,68を案内する。
【0045】
図17(A)(B)(C)には、操作パネル60の変化を示しており、
図17(A)は、操作パネル60が退避位置に配置された状態(
図15と同様の状態)であり、
図17(B)は、退避位置での保持が解除された直後の状態(
図16と同様の状態)であり、
図17(C)は、操作パネル60が前方位置に配置された状態(
図12と同様の状態)である。
【0046】
操作パネル60は、
図15、
図17(A)のように、係合部70が下部構成体24(フロント部材20)の被係合部44に係合した状態では、退避位置に配置される。付勢部80は、操作パネル60が退避位置に配置されているときに、付勢部80の少なくとも一部が直線状に延びた状態で配置される。このとき、付勢部80の被係止部80A(
図11参照)はドラム81(付勢部80の基端部)よりも前方側において下部構成体24の係止部42に係止されるので、付勢部80の被係止部80Aがドラム81(付勢部80の基端部)を前方側に引っ張るように作用する。即ち、付勢部80は、少なくとも退避位置にある操作パネル60に対して前方側への移動力を継続的に付与する。
【0047】
操作パネル60が退避位置に配置された状態において、操作パネル60が後方に押圧されると、
図16、
図17(B)のように係合部70と被係合部44との係合状態が解除される。そして、付勢部80が操作パネル60に付与する移動力によって、操作パネル60が前方側に移動する。このとき、操作パネル60に加わる移動力は、ラック部40及びピニオン部84を介して減衰部86に伝達され、減衰部86によって減衰される。
【0048】
本構成では、操作パネル60が
図16、
図17(B)のような状態(退避位置での保持状態が開示された直後の状態)となり、付勢部80の付勢によって操作パネル60が前方側に移動しようとしたときに、操作パネル60の左右方向一方側(左右方向において付勢部80が配置される側)がより強く前側に引っ張られることになる。このような引っ張り動作が生じると、操作パネル60では、左右方向一方側が他方側よりも早く前側に移動しようとする回転力(即ち、左右方向他方側が左右方向一方側よりも遅れるような回転力)が継続的に生じやすくなり、この回転力により、ピニオン部84を左右方向一方側に向かわせようとする力が継続的に加わる。より具体的には、
図16のように、下部構成体24に保持される操作パネル60において前端部38C付近を支点とするような回転力(
図16において反時計回りの向きの回転力)が生じ、左側が右側より前側に位置するような傾きを生じさせようとする力が継続的に加わる。このような傾きを生じさせようとする力が継続的に生じると、右後側ベース部66A及びその前側部分において前端部38Cよりも後方側に位置する部位を左右方向一方側(付勢部80側)に寄せようとする力が継続的に生じることになる。このような作用が生じるため、
図16のように付勢部80の付勢によって操作パネル60が前方側に移動しようとするときには、ピニオン部84がラック部40に継続的に押し付けられるように作用しながら移動しやすくなる。よって、ピニオン部84とラック部40との噛み合いが外れにくい状態で操作パネル60を前方側に移動させることができる。
【0049】
付勢部80から付与された移動力によって前方側に移動した操作パネル60は、
図16、
図17(B)のような状態を経て、
図17(C)のように前方位置に配置される。また、前方位置に配置された操作パネル60が孔部30内に押し込まれ、係合部70が被係合部44に係合すると、操作パネル60が退避位置に配置される。
【0050】
次に、本構成の効果を例示する。
本構成のガスコンロ1は、筐体2と、フロント部材20と、操作パネル60と、付勢部80と、ダンパ装置82とを有する。筐体2は、ガスバーナ4,5,6を収容する。フロント部材20は、上部構成体22と、上部構成体22の下側に配置されるとともに上部構成体22と共に前方側に開口した孔部30を構成する下部構成体24と、を備え、筐体2の前部に固定される。操作パネル60は、フロント部材20によってガイドされる一対の被ガイド部68,68を備えるとともに、孔部30内に配置され、フロント部材20の前側に突出した前方位置と前方位置のときよりも後方側に退避した退避位置とに変位する。付勢部80は、少なくとも退避位置にある操作パネル60に対して前方側への移動力を継続的に付与する。ダンパ装置82は、ピニオン部84と、ピニオン部84の回転エネルギーを減衰させる減衰部86と、を備え、操作パネル60に固定される。フロント部材20は、一対のガイド壁38,38と、ラック部40とを備える。一対のガイド壁38,38は、一対の被ガイド部68,68に対向して配置されるとともに前後方向に沿って延び、被ガイド部68,68の移動の際に被ガイド部68,68を案内する。ラック部40は、一対のガイド壁38,38と対向して配置され且つ前後方向に沿って延び、ピニオン部84と噛み合う。このラック部40は、一対のガイド壁38,38と一体成形される。
【0051】
このガスコンロ1によれば、付勢部80から付与される移動力によって操作パネル60が前方側へ移動する際に、フロント部材20のガイド壁38,38によって操作パネル60を案内することができる。また、このガスコンロ1では、操作パネル60に加わる前後方向への力が、ラック部40及びピニオン部84を介して減衰部86に伝達されるので、操作パネル60に加わる進行方向への力を減衰させることができる。更に、このガスコンロ1では、減衰機構の一部を構成するラック部40がガイド壁38,38と一体成形されるので、ラック部をガイド壁と別体で構成する場合と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。即ち、このガスコンロ1によれば、部品点数の増加を抑えつつ、操作パネル60に加わる進行方向への力を減衰させることができる。
しかも、このガスコンロ1によれば、ラック部40とガイド壁38,38とを一体成形することにより、ラック部40とガイド壁38,38とを所望の位置関係に、より高精度で配置することができる。これにより、ガイド壁38,38による操作パネル60の案内と、操作パネル60に加わる進行方向への力の減衰とをより円滑に行うことができる。
【0052】
更に、ピニオン部84は、ガイド壁38,38とラック部40との間の第1空間S1に配置されている。ラック部40は、付勢部80が収容された第2空間S2と第1空間S1とを仕切る構成で配置されている。この構成によれば、ラック部40がピニオン部84と付勢部80との間に介在するので、仮に作動する付勢部80によって異物等が弾かれたとしても、その異物等がピニオン部84に噛み込むことを抑制し得る。
【0053】
更に、操作パネル60の左右方向の一方側(本実施例では左側)に付勢部80が配置されるとともに、他方側(本実施例では右側)にピニオン部84が配置されている。そして、ラック部40は、ピニオン部84に対して付勢部80側に配置されている。このように、左右方向一方側に付勢部80が配置されていると、
図16のように付勢部80の付勢によって操作パネル60が前方側に移動しようとしたときに、操作パネル60の左右方向一方側がより強く引っ張られることになる。そして、このような引っ張りが生じると、操作パネル60では、左右方向一方側が他方側よりも早く前側に移動するような回転力(即ち、左右方向他方側が左右方向一方側よりも遅れるような回転力)が生じやすくなり、この回転力に応じてピニオン部84は左右方向一方側(付勢部80側)に向かおうとする。つまり、付勢部80の付勢によって操作パネル60が前方側に移動するときには、ピニオン部84がラック部40に押し付けられるように作用しながら移動しやすくなるため、ラック部40との噛み合いが外れにくい状態で操作パネル60を前方側に移動させることができる。
【0054】
更に、ガスコンロ1は、点火操作を行うための点火ボタン11,14と、火力の調整操作を行うためのレバー16A,16Dとを備えている。上部構成体22は、貫通した開口形状をなし、自身の内部に点火ボタン11,14が嵌り込むように配置される第1開口部32,33と、レバー16A,16Dが挿し通されるとともに、自身の内部領域がレバー16A,16Dの移動経路として構成される第2開口部34,35と、を有する。これらの第1開口部32,33と第2開口部34,35とは一体成形される。この構成によれば、レバー16A,16Dが挿し通される第2開口部34,35が点火ボタン11,14の配置される第1開口部32,33と一体成形されるので、第2開口部34,35を第1開口部32,33と別体で構成する場合と比較して、部品点数の増加を抑えることができる。
【0055】
更に、下部構成体24は、被ガイド部68,68の下方側において被ガイド部68,68と対向して配置される底部36を有する。一対のガイド壁38,38及びラック部40は、底部36から立ち上がる構成となっている。そして、底部36には、この底部36の上面に入り込んだ異物を下方に逃がす逃がし孔36Bが形成されている。この構成によれば、底部36の上面に入り込んだ異物を逃がし孔36Bから逃がすことができるので、底部36の上面に異物が滞留することによる下部構成体24の機能(例えば、操作パネル60を案内する機能、操作パネル60に加わる進行方向への力を減衰する機能など)の低下を抑制することができる。
【0056】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
上述した実施例1では、ガイド壁38を下部構成体24に設ける構成としたが、フロント部材20であれば下部構成体24以外(例えば上部構成体22)に設けるようにしてもよい。
【0058】
上述した実施例1では、操作パネル60の左右方向の左側に付勢部80が配置されるとともに、右側にピニオン部84が配置されるようにした。しかし、操作パネル60の左右方向の右側に付勢部80が配置されるとともに、左側にピニオン部84が配置されるようにしてもよい。また、付勢部80及びピニオン部84が、操作パネル60の左右方向の一方側に偏って配置されるようにしてもよいし、付勢部80及びピニオン部84のうち少なくともいずれか一方が操作パネル60の左右方向中央部に配置されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ガスコンロ(コンロ)
2…筐体
4,5,6…ガスバーナ
11,14…点火ボタン(点火操作部)
16A,16D…レバー(火力調整操作部)
20…フロント部材
22…上部構成体
24…下部構成体
36…底部
36B…逃がし孔
38…ガイド壁
40…ラック部
60…操作パネル
80…付勢部
82…ダンパ装置
84…ピニオン部
86…減衰部
S1…第1空間
S2…第2空間