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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】鮮度保持用袋体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20230206BHJP
   A23B 9/20 20060101ALI20230206BHJP
   A23L 3/3445 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B65D85/50 100
B65D85/50 120
B65D85/50 200
A23B9/20
A23L3/3445
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019144654
(22)【出願日】2019-08-06
(62)【分割の表示】P 2018077377の分割
【原出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019194111
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516340342
【氏名又は名称】株式会社W
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/034344(WO,A1)
【文献】特開2018-16403(JP,A)
【文献】特開2011-37521(JP,A)
【文献】国際公開第2018/064340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
A23B 9/20
A23L 3/3445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムによって形成された鮮度保持用袋体であって、
前記フィルムの2つの端部が重ね合わされて接合されている幅5mm以上15mm以下の帯状の接合領域を備え、
前記接合領域が、前記フィルムの2つの端部同士が接合されている複数の超音波接合部と、隣接する前記超音波接合部の間に配置され前記重ね合わされたフィルムの端部同士が接合されていない非接合部とを有し、
前記非接合部が、前記袋体の内部空間と該袋体の外部とを連通する非直線状の通気路を構成し、
該通気路は幅Wが、0.2mm≦W≦3mmであり、長さLが、22mm≦L≦45mmである、
ことを特徴とする鮮度保持用袋体。
【請求項2】
前記フィルムが、酸素バリア層を有している、
請求項1に記載の鮮度保持用袋体。
【請求項3】
前記フィルムは、厚さが20μm以上100μm以下である、
請求項1または2に記載の鮮度保持用袋体。
【請求項4】
フィルムによって形成された袋状の鮮度保持用袋体であって、前記フィルムの2つの端部が重ね合わされて接合されている幅5mm以上15mm以下の帯状の接合領域を有し、前記接合領域が、前記フィルムの2つの端部同士が接合されている複数の接合部と、隣接する前記接合部の間に配置され前記重ね合わされたフィルムの端部同士が接合されていない非接合部とを有し、前記非接合部が、前記袋体の内部空間と該袋体の外部とを連通する非直線状の通気路を構成し、該通気路は幅Wが、0.2mm≦W≦3mmであり、長さLが、22mm≦L≦45mmである鮮度保持用袋体の製造方法であって、
超音波溶着によって前記接合部を形成するステップを備えている、
ことを特徴とする鮮度保持用袋体の製造方法。
【請求項5】
前記接合部を形成するステップが、円板状の超音波溶着ホーンを前記フィルムに対して回転させながら、前記フィルムに連続的に接合部を形成するステップである、
請求項4に記載の鮮度保持用袋体の製造方法。
【請求項6】
前記フィルムとして酸素バリアフィルム用いている、
請求項4または5に記載の鮮度保持用袋体の製造方法。
【請求項7】
前記フィルムは、厚さが20μm以上100μm以下である、
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の鮮度保持用袋体の製造方法。
【請求項8】
フィルムによって形成された鮮度保持用袋体を製造するために使用される袋体製造用筒体であって、
前記フィルムの2つの端部が重ね合わされて接合されている幅5mm以上15mm以下の帯状の接合領域を備え、
前記接合領域が、前記フィルムの2つの端部同士が接合されている複数の超音波接合部と、隣接する前記超音波接合部の間に配置され前記重ね合わされたフィルムの端部同士が接合されていない非接合部とを有し、
前記非接合部が、前記袋体の内部空間と該袋体の外部とを連通する非直線状の通気路を構成し、
該通気路は幅Wが、0.2mm≦W≦3mmであり、長さLが、22mm≦L≦45mmである、
ことを特徴とする袋体製造用筒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鮮度保持用袋体およびその製造方法等に関し、詳細には、呼吸や発酵により保存中に二酸化炭素を発生する食品や生花の鮮度低下を抑制することができる、鮮度保持用袋体およびその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、生花、コーヒー豆、加工食品などのように、呼吸や発酵によって二酸化炭素を発生する食物等を、鮮度を維持した状態で保存することができる袋体、あるいは生花を長期間保存できる袋体へのニーズが高まっている。
【0003】
上記食品等を長期間保存する袋体には、内部で発生した二酸化炭素や水蒸気の排出と、外部からの酸素の流入の防止という、相反する二つ機能が要求される。二酸化炭素や水蒸気の排出が不充分だと内圧が上昇して、袋体が破損する場合があり、また、酸素の流入を防止しないと酸化によって内容物の鮮度が低下するためである。
【0004】
このようなニーズに対し、袋体の熱シール部に、ストライプ状に配置された非接合部を設け、この非接合部を袋体の外部と連通する流路として利用する青果物包装品(袋体)が提案されている(特許文献1)。この袋体では、非接合部(流路)が、幅0.1~5mm、長さ1~20mmの直線状(即ち細長い長方形)の平面形状を有している。
【0005】
この袋体では、流路によって、袋体の内部が、酸素濃度が低く且つ二酸化炭素濃度が高い状態に維持され、内部の青果物の鮮度が保持される。この袋体では、ある程度の期間、内容物の鮮度を保持できるが、流路の長さが比較的、短いため、外部からの酸素の流入が比較的多く、長期間にわたって青果物の鮮度を保持することが難しかった。
【0006】
この問題点に対処すべく、斜めに延びる幅3mm以上の通気口がセンターシール部に設けられた包装品が提案されている(特許文献2)。この構成によれば、通気路の長さを長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3259166号公報
【文献】特許第6052729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献2の構成では、通路口(流路)の幅が、3mm以上と比較的に広いため、通気口(通気路)内で結露が生じ易かった。この結果、結露で生じた水分で通気口の内部空間が塞がれ、通気口中の空気の流れが阻害されて、鮮度保持が十分に行なわれないという問題があった。
【0009】
また、特許文献1および特許文献2のいずれの構成においても、通気路はシール部で直線状に延びる構成であるため、通気路が延びる方向におけるシール部の強度が低下してしまう、という問題があった。
【0010】
さらに、特許文献1および特許文献2のいずれの構成においても、通気路が熱シールによって形成されているため、形成する通気路の幅および形状を正確に制御することが難しいという問題もあった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、袋体外からの酸素の流入が非常に少なく、内容物の鮮度を長期間保つことが可能な鮮度保持用袋体及びその製造方法等を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、通気路が形成された部分の強度低下が抑制された鮮度保持用袋体とその製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、
フィルムによって形成された鮮度保持用袋体であって、
前記フィルムの2つの端部が重ね合わされて接合されている幅5mm以上15mm以下の帯状の接合領域を備え、
前記接合領域が、前記フィルムの2つの端部同士が接合されている複数の超音波接合部と、隣接する前記超音波接合部の間に配置され前記重ね合わされたフィルムの端部同士が接合されていない非接合部とを有し、
前記非接合部が、前記袋体の内部空間と該袋体の外部とを連通する非直線状の通気路を構成し、
該通気路は幅Wが、0.2mm≦W≦3mmであり、長さLが、20mm≦L≦50mmである、
ことを特徴とする鮮度保持用袋体が提供される。
【0014】
このような構成によれば、
通気路は、幅Wが、0.2mm≦W≦3mmであり、長さLが、20mm≦L≦50mmであるので、通気路を通しての酸素の侵入を抑制しながら、袋体内で発生した二酸化炭素や水蒸気を、通気路を通して速やかに外部に排出することができる。
また、通気路が非直線状であるため、非接合部によって構成される通気路に起因する接合領域の強度低下が抑制される。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記フィルムが、酸素バリア層を有している。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記フィルムは、厚さが20μm以上100μm以下である。
【0017】
本発明の他の態様によれば、
フィルムによって形成された袋状の鮮度保持用袋体であって、前記フィルムの2つの端部が重ね合わされて接合されている幅5mm以上15mm以下の帯状の接合領域を有し、前記接合領域が、前記フィルムの2つの端部同士が接合されている複数の接合部と、隣接する前記接合部の間に配置され前記重ね合わされたフィルムの端部同士が接合されていない非接合部とを有し、前記非接合部が、前記袋体の内部空間と該袋体の外部とを連通する非直線状の通気路を構成し、該通気路は幅Wが、0.2mm≦W≦3mmであり、長さLが、20mm≦L≦50mmである鮮度保持用袋体の製造方法であって、
超音波溶着によって前記接合部を形成するステップを備えている、
ことを特徴とする鮮度保持用袋体の製造方法が提供される。
【0018】
このような構成によれば、接合部が超音波溶接によって形成されるので、隣接する溶接部間に位置する非接合部によって構成される通気路の幅および形状を正確に制御することが可能となる。この結果、収容する内容物に適した換気が可能となる寸法形状の通気路を形成することができる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、上記鮮度保持用袋体を製造するために使用される袋体製造用筒体が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、袋体外からの酸素の流入が非常に少なく、内容物の鮮度を長期間保つことが可能な鮮度保持用袋体及びその製造方法等が提供される。
【0021】
さらに、本発明によれば、通気路が形成された部分の強度低下が抑制された鮮度保持用袋体とその製造方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好ましい実施形態の袋体100の模式的な平面図である。
図2図1のII-II線に沿った模式的な断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った模式的な断面図である。
図4】非接合部で構成される通気路の変形例を示す模式的な図面である。
図5】非接合部で構成される通気路の変形例を示す模式的な図面である。
図6】非接合部で構成される通気路の変形例を示す模式的な図面である。
図7】非接合部で構成される通気路の変形例を示す模式的な図面である。
図8】非接合部で構成される通気路の変形例を示す模式的な図面である。
図9】非接合部で構成される通気路の変形例を示す模式的な図面である。
図10】袋体の変形例の模式的な平面図である。
図11】袋体の製造で使用する溶着装置の構成を模式的に示す図面である。
図12図11の溶着装置の溶着用のホーンの外観を示す模式的な斜視図である。
図13】本発明の実施形態の袋体製造を説明する模式的に示す図面である。
図14】本発明の実施形態の袋体製造を説明する模式的に示す図面である。
図15】本発明の袋体を製造するための筒状体を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態の袋体100の構成を図面に沿って詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態の袋体100の模式的な平面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図であり、図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。本願では、図面中、明確化のため、各要素の寸法の比率は正確に表わされていない。
【0024】
本実施態様に袋体100は、例えば、コーヒー等の食品を保存する長方形の平面形状を有している袋体である。本実施形態の袋体100の寸法は、20cm×40cmであるが、本発明は、この寸法に限定されるものではない。
【0025】
本実施態様の袋体100は、フィルム1で構成されている。袋体100で使用されるフィルムは、非晶質のポリマーのフィルムが好ましい。具体的な例として、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル、ポリカーボネート、スチレンアクリロニトリル共重合体などのフィルムが挙げられる。
【0026】
フィルム1は、異なる素材からなる複数枚のフィルムが積層された積層フィルムでもよい。積層フィルムとしてはポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンのフィルムの内側にポリスチレンのフィルムを積層した積層フィルム等が挙げられる。
【0027】
フィルム1として、酸素バリアフィルムと他のフィルムを積層したものも用いることができる。酸素バリアフィルムとしては、ビニルアルコールまたは塩化ビニリデンを構成成分として含むポリマーからなるフィルム、シリカ、アルミナ、アルミニウムのいずれかを蒸着したポリマーフィルム、金属箔層などの公知のものを用いることができる。この酸素バリアフィルムの内側にポリスチレンを積層した積層フィルムを本発明のフィルムとして用いることができる。
【0028】
フィルム1は、透明であっても不透明であってもよい。内容物が日光によって劣化する場合は不透明な包装フィルムを用いることが好ましい。また、意匠性を高めるために表面に印刷を施したフィルムでもよい。
【0029】
フィルム1の厚みは、10μm以上300μm以下、より好ましくは15μm以上200μm以下、更に好ましくは20μm以上100μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みが10μm未満の場合、袋体の強度が不充分になる場合があり、300μmを超えるとコスト上、不利になる場合があるためである。
【0030】
袋体100は、横長の長方形のフィルム1を、上下方向に延びる中心線に沿って二つ折りにした形状を有している。袋体100の上下端は、ヒートシールによって形成されたトップシール2、ボトムシール4によって完全に封止されている。これらのシール2、4は、接着剤による接着、テープによる封止等の他の方法によって形成されたものでもよい。また、開閉可能なファスナーを用いてトップシール部を形成することもできる。さらに、当初はトップシールを設けず、袋体100に内容物を充填した後、トップシールを形成してもよい。
【0031】
また、フィルム1の両側端部1a、1bが重ね合わされている袋体100の一側端(図1の左端)は、フィルム1の側端部1a、1bの重ね合わせ部分の全長にわたって延びる帯状の接合領域6によって、接合され閉鎖されている。袋体100では、接合領域6がサイドシール部となる。
【0032】
本実施形態の袋体100では、帯状の接合領域6は、幅が5mm以上15mm以下に設定されている。帯状の接合領域6の幅は、6mm以上13mm以下がより好ましく、8mm以上11mm以下がさらに好ましい。
【0033】
接合領域6の幅が5mm未満になると、接合部の強度が不充分になる、通気路の長さを確保しにくくなる等の問題が生じる場合がある。また、接合領域6の幅が15mmを超えると接合が不均一になる、通気路の幅を一定にし難くなる等の問題が生ずる場合がある。
【0034】
帯状の接合領域6には、それぞれが肉厚のV字状の形状を有する複数の超音波融着部(超音波接合部)8が、長手方向に所定間隔で配列されている。各超音波融着部8は、フィルム1の両側端部1a、1bが、超音波融着により接合され一体化された部分であり、後述のようにフィルム1の両側端部1a、1b同士を重ねて、超音波融着装置でこれらを融着することによって形成されている(図1および図2)。
【0035】
隣接する超音波融着部8、8の間は、重ね合わされたフィルム1の側端部1a、1b同士が接合(融着)されていない非接合部10とされている。上述したように、各超音波融着部8はV字状の形状を有しているので、図1に示されているように、隣接する超音波融着部8間の非接合部10もV字形状を有している。
【0036】
非接合部10の内方端は、袋体100の内部空間に開口し、非接合部10の外方端は、袋体100の外部空間に開口している。この結果、非接合部10によって構成される通気路10は、袋体100の内部空間と外部とを連通する、一定幅のV字状(すなわち非直線状)の通気路となる(図1および図3)。
【0037】
この結果、本実施形態の袋体100では、サイドシール部に、同一方向に配向され、V字状の通気路10が、一定間隔で形成されていることになる。
【0038】
本実施形態の袋体100では、非接合部(通気路)10の幅Wは、0.2mm以上、3mm以下に設定されている。通気路10の幅Wは、0.3mm以上2.5mm以下がさらに好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。
【0039】
通気路10の幅Wを0.2mm以上3.0mm以下にすることで、袋体100の内部で生成された二酸化炭素や水蒸気の放出と、袋体100の外部からの酸素の侵入防止を両立が可能になる。さらに袋体100を動かした際に通気路10の内部で気体が流動し難く、外部から酸素が侵入し難くなる。
【0040】
本実施形態の袋体100では、通気路10の長さLは、20mm以上50mm以下に設定されている。なお、通気路10の長さLとは、通気路10の内方端から外方端までの通気路10の中心軸に沿った長さを指す。
【0041】
通気路10の長さLは、22mm以上45mm以下がより好ましく、25mm以上40mm以下がさらに好ましい。
【0042】
本実施形態の袋体100では、通気路10の長さLを20mm以上50mm以下にすることで、袋体100の内部で発生した二酸化炭素や水蒸気の放出と、袋体100の外部からの酸素の侵入防止とが両立させている。
【0043】
また、本実施形態の袋体100では、通気路10の長さLと幅Wの比L/Wは、10以上200以下に設定されている。長さLと幅Wの比L/Wが、10未満になると内容物の保存性が顕著に悪化し、また、この比が200を超えると通気路の内部に水分が凝縮して酸化炭素の排出が不充分になる場合があるためである。
【0044】
通気路10の長さLと幅Wの比L/Wは、15以上150以下がより好ましく、20以上100以下がさらに好ましい。
【0045】
更に、本実施形態の袋体100では、通気路10の間隔は、1mm以上100mm以下に設定されている。通気路10の間隔を1mmとすることにより通気路10の正確な形状を確保できる。また、30mm以下とすることにより、必要な数の通気路10を設けることができる。
【0046】
通気路10の間隔は、2mm以上50mm以下がより好ましく、3mm以上15mm以下が更に好ましい。
【0047】
本実施形態の袋体100では、袋体100に形成する通気路10の数は1個以上に設定されているが、3以上100以下が好ましく、5以上75以下がさらに好ましい。
【0048】
特に、保存中に比較的に多量の二酸化炭素を発生させる青果物などを保存する場合は、通気路の数を3以上100以下、より好ましくは5以上75以下に設定することで、通気路10が水により閉塞されて二酸化炭素の排出が不充分になることを防止でき、好ましい。
【0049】
図4乃至図9は、非直線状の通気路10の形状の変形例を示す模式的な図面である。
本発明の通気路は、図4に示すような逆「へ」字状の通気路104、図5に示すような「W」字状の通気路105のように、複数の屈曲した直線部によって構成された通気路であってもよい。
【0050】
また、本発明の通気路は、図6に示すような傾斜した「W」字状の通気路106であってもよい。さらに、本発明の通気路は、図7乃至9に示すような複数の湾曲部が直線部によって接続された形状の通気路107、108、109であってもよい。
【0051】
さらにまた、本発明の通気路には、上記具体例に限定されず、他の折れ線、曲線形、これらを組み合わせた形状を有するものが含まれる。
【0052】
また、上記実施形態の袋体100では、超音波融着部(超音波接合部)8を有する帯状の接合領域6が、サイドシール部に設けられていたが、超音波融着部(超音波接合部)8を有する帯状の接合領域6を、サイドシール部以外の他のシール部、例えば、トップシール2、ボトムシール4に形成してもよい。
【0053】
例えば、図10に示されているような、センターシール部20で封止されている袋体200において、このセンターシール部20を、上述した超音波融着部(超音波接合部)8と非接合部(通気路)とを有する帯状の接合領域としてもよい。
【0054】
更に、上記実施形態の袋体100は、1枚のフィルムの両端部を重ねて構成されていたが、複数のフィルムを用いて構成されたものでもよい。
【0055】
次に、本発明の実施態様の袋体100の製造方法について説明する。本実施態様の製造方法は、長方形状のフィルム1の2つの側端部1a、1bを、部分的に超音波溶着法で接合すること等により、上記袋体等を形成するものである。
【0056】
本実施態様の製造方法では、まず、袋体100を構成する横長の矩形形状のフィルム1を準備する。次いで、フィルム1を、上下方向に延びる中心線に沿って二つ折りにして、両側端部1a、1bを重ね合わせる。
【0057】
次いで、少なくとも重ね合わされたフィルム1の両側端部1a、1bを所定温度(摂氏30度乃至75度)まで加熱する。加熱は、加熱ロール、赤外線加熱等の方法によって行なわれるのが好ましい。
【0058】
次いで、加熱したフィルムの除電を行なう。加熱されたフィルムは弾性率が低下してしなやかになるため、搬送ロールなどの物体に接触した時に接触面積が増大する等の理由により、帯電しやすい。この帯電を排除するために、超音波溶着の前に除電をすることが好ましい。
【0059】
具体的には、イオン風、除電ブラシ等を用いて除電が行なわれる。除電後のフィルムの表面電位が、1kv以下となるように除電が行なわれるのが好ましい。表面電位の測定は、例えばトレック・ジャパン株式会社製の表面電位計MODEL341Bで測定することができる。除電を行なうことにより、このような帯電に起因する埃の付着が抑制される。
【0060】
除電後のフィルムの表面電位はゴミ付き防止の観点から絶対値が1kV以下であることが好ましい。表面電位の測定は、例えばトレック・ジャパン株式会社製の表面電位計MODEL341Bで測定することができる。
【0061】
次いで、重ね合わされているフィルムの両側端部1a、1bの上下両端をヒートシール等によって接合し、重ね合わされたフィルムの両側端部1a、1bを相対位置がずれないように仮留めする。この仮留めによって、重ね合わされたフィルムの両側端部1a、1bの相対位置ずれが防止される。
【0062】
次に、超音波溶着法によって、フィルム1の両側端部1a、1bに、所定間隔で複数の線状の超音波融着部8を形成することによって接合部を設ける。
【0063】
図11は、超音波溶着法に用いる溶着装置300の構成を模式的に示す図面である。
図11に示されているように、溶着装置300は、50Hzまたは60Hzの商用電気を15~70KHz程度の高周波信号に変換する超音波発振機302と、この信号を機械的振動に変換するコンバータ304と、この機械的振動を増幅するブースター306と、増幅された振動を溶着対象(フィルム1)に伝えるホーン308と、ホーン308との間でフィルム1を挟持する受け座310と、を備えている。受け座310は温度を制御できるものであることが好ましい。
【0064】
本実施形態の溶着装置300は、ホーン308が、図12に示されているような円板形状を有するロータリ式の溶着装置である。円板形状のホーン308の外周面308aには、袋体100の超音波融着部8の形状に対応した複数のV字状の突起308bが、所定間隔で連続的に形成されている。
【0065】
このロータリ式の溶着装置300を使用した溶着作業では、フィルムの側端部1a、1bに、連続的に線状の超音波融着部8が形成される。具体的には、ホーン308と受け座310の間に、重ね合わされたフィルムの側端部1a、1bを挟持した状態で、円板状のホーン308を回転させ、長尺状のフィルムの側端部1a、1bに、図13に示されているように、複数の超音波融着部8を有する接合領域6を連続的に形成していく。
【0066】
さらに、側端部1a、1bが接合領域6で接合され筒状に形成されたフィルムは、トップシール2とボトムシール4が形成され、袋体100とされる(図14)。トップシール2は、袋体100への内容物収容後に形成されるのが一般的である。
【0067】
次に、上記実施形態の袋体100を製造するために使用される筒体400について説明する。図15は、本実施形態の袋体用筒体400の模式的な正面図である。
【0068】
図15に示されているように、本実施形態の袋体用筒体400は、長尺状のフィルム401を、その長手方向中心線に沿って幅方向に折り曲げて両側端部を重ね合わせ、重ね合わされた両側端部が、第1の実施形態の袋体100と同様の接合領域406によって接合されているものである。
【0069】
この接合領域406には、第1の実施形態の袋体100と同様の接合部408と非直線状の通気路410が、交互に形成されている。
【0070】
この細長い袋体用筒体400を、図15に点線で示すように、横方向に切断し、上下端を、ボトムシール部とトップシール部によって密封し、第1の実施形態の袋体100と同様の形態として使用する。
【0071】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【実施例
【0072】
以下、実施例に沿って、本発明をさらに詳しく説明する。
【0073】
(実施例1)
フィルムとして、縦40cm、横40cm、厚さ20μmのスチレンアクリロニトリル共重合体のフィルムを用いた。このフィルムの両面を春日電機(株)製、ファンタイプ静電気除去装置KD-410を用いて除電した。除電後のフィルムの表面電位は-1~+1kVになるようにした。
【0074】
その後、円板状のホーンを備えた超音波融着装置を用いて、図1に示すような幅10mmの接合部を形成した。ホーンの発振振動数は20KHz、振動振幅は15μm、押しつけ圧は250N、接合時間は0.2秒とした。
【0075】
通気路の形状は図7に示す形状であり、通気路どうしの間隔は10mmとし、通気路の幅は0.8mm、通気路の幅Lは24mm、L/Wは30とした。また、通気路の間隔は12mmとした。次いで、ヒートシールによりボトムシール部を形成した。
【0076】
このようにして製造した袋体の通気路を目視観察したところ、通気路部分には異物等はなく、通気路の幅も一定であった。
【0077】
この袋体に市販のニラ150gを入れて、ヒートシールによりトップシール部を形成して袋体とした。この袋体を15℃で14日間保存したところ、内容物のニラには外見上の変化は無く、可食状態であった。
【0078】
(実施例2)
フィルムの材料を延伸ポリプロピレン/未延伸ポリプロピレン(20μm/30μm)積層フィルムに変更し、通気路の形状を図5の「W」型とし、通気路の幅は1.2mm、通気路の幅Lを30mm、L/W25、通気路どうしの間隔は6mmとした点を除き実施例1と同条件として、実施例2とした。
【0079】
この鮮度保持用袋体に市販のニラ150gを入れて、ヒートシールによりトップシール部を形成し、袋体とした。この袋体を15℃で14日間保存したところ、内容物のニラには外見上の変化は無く、可食状態であった。
【0080】
(実施例3)
フィルムとしてアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート/未延伸ポリプロピレン(16μm/30μm、アルミ蒸着面と未延伸ポリプロピレンが接するように積層)積層フィルムを用い、未延伸ポリプロピレン面どうしを超音波溶着した。
【0081】
通気路は、図9の通気路とし、通気路の幅と長さはそれぞれ1.5mmと40mm、L/W26.7とした。また、通気路間の間隔は25mmとした。
【0082】
これ以外は実施例2と同様にして実施例3を実施した。得られた鮮度保持用袋体の通気路を目視観察したところ、通気路部分には異物等はなく、通気路の幅も一定であった。また、ストライプ状の接合部にフィルムのズレもなく、外見も良好であった。
この袋体に市販のニラを入れ、15℃で14日間保存したところ、内容物のニラには外見上の変化は無く、可食状態であった。
【0083】
(実施例4)
通気路の幅と長さを、それぞれ1.0mmと80mm、L/Wの値は80.0とした。また、通気路間の間隔は80mmとした点を除き、実施例3と同条件で、実施例4とした。得られた鮮度保持用袋体の通気路を目視観察したところ、通気路部分には異物等はなく、通気路の幅も一定であった。また、ストライプ状の接合部にフィルムのズレもなく、外見も良好であった。この袋体に市販のニラを入れ、15℃で14日間保存したところ、内容物のニラには外見上の変化は無く、可食状態であった。
【0084】
(実施例5)
トップシール部をヒートシールで形成する代わりに、この部分にファスナーを取り付けて、開閉可能とした。それ以外は、実施例1と同条件で、実施例5とした。得られた鮮度保持用袋体の通気路を目視観察したところ、通気路部分には異物等はなく、通気路の幅も一定であった。また、ストライプ状の接合部にフィルムのズレもなく、外見も良好であった。この袋体に市販のニラを入れ、15℃で14日間保存したところ、内容物のニラには外見上の変化は無く、可食状態であった。
【0085】
(実施例6)
実施例2と同じフィルムを用い、以下の方法で袋体用筒体を製造した。
まず、縦200cm、横40cmのフィルムの両面を春日電機(株)製、ファンタイプ静電気除去装置KD-410を用いて除電した。除電後のフィルムの表面電位は-1~+1kVになるようにした。次いで、実施例2と同様にして両端部を超音波溶着し、円筒形の袋体用筒体を得た。
【0086】
この袋体用筒体を、長さ500mmで裁断し、上端と下端をヒートシールすることにより、4つの鮮度保持用袋体が得られた。
【符号の説明】
【0087】
100:袋体
1:フィルム
2:トップシール
4:ボトムシール
6:接合領域
8:超音波融着部(接合部)
10:非接合部(通気路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15