(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】車両カメラ監視システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20230206BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230206BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G08B25/00 510M
B61L25/02 Z
(21)【出願番号】P 2020035976
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2021-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593202025
【氏名又は名称】株式会社エイビット
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】檜山 竹生
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002240(WO,A1)
【文献】特開2019-046053(JP,A)
【文献】特開2019-092154(JP,A)
【文献】特開2012-147376(JP,A)
【文献】特開2010-028754(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111409(WO,A1)
【文献】特開2008-207621(JP,A)
【文献】特許第6654767(JP,B1)
【文献】特開2008-091993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08B 25/00
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載され乗客を撮影する複数台のカメラと、列車に搭載されたGPSセンサと、列車の停車駅に設置された映像受信解析装置と、
該映像受信解析装置と通信する警察センタ装置とで構成され、
列車が所定の停車駅に停車したことを前記GPSセンサで判定し、前記所定の停車駅に停車する都度、停車時間中に、前の停車駅から撮影されているすべてのカメラの映像信号を停車駅に設けられた前記映像受信解析装置に無線送信すべく、前記映像受信解析装置は、列車との通信速度をもとに、前記所定の停車駅より1つ前の停車駅との運転時間、停車時間、列車に搭載したカメラの台数に基づき決定した映像信号のフレーム数で前記カメラからの映像信号を受信し、前記警察センタ装置から前記映像受信解析装置に届けられている不審者の顔を中心とする特徴データをもとに前記カメラ映像に含まれる不審者を判定し、不審者と判定されたときは、不審者の映像を撮影したカメラの設置位置情報と不審者の映像信号を前記警察センタ装置に送信し、前記警察センタ装置は、受信した映像をもとに真の不審者かの判定を目視により行い、対応停車駅での警備員の出動や、不審者映像を撮影したカメラに対し撮影パラメータの変更を前記映像受信解析装置の全てに指示することができるように構成されたことを特徴とする車両カメラ監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に設置した監視カメラに映った映像より、乗客に指名手配犯などの不審者が乗車しているかをチェックするシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、街中のいたるところに監視カメラが設置されていて、犯罪防止対策として、効果を発揮している。また顔認証技術の進歩により、入国審査時にパスポートの写真と本人を撮影した映像を比較し本人認証を行う事は実用化されている。
【0003】
監視カメラの主たる用途は、犯罪や事件が起きてから、カメラ映像を観察し、犯人を推定あるいは特定すること、あるいは、犯人と推定・特定された人の行動を監視することで、録画されたカメラ映像の観察は、人手によることが多い。電車内の乗客を監視する例は、特許文献1に記述があるが、移動中の電車からカメラ映像を、受信するための通信システムを詳細に記述しているが、特定の人の認識については触れていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、多数のカメラ情報を一定のタイミングで抽出し、抽出後ただちに映像分析を行い、カメラ映像の中に、不審者等の特定の人がいるかどうかを、ほぼリアルタイムに判断するものである。
【0006】
一例としては、東京の山手線の電車の運行中、電車が駅に停車している時間内にカメラ映像を抽出し、次の駅への移動中に、特定の人が乗車しているかどうかを判断できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
列車の各車両のドアには、乗車客、降車客の顔を中心にした映像が撮影できるようにカメラを設置する。1車両の各ドアにカメラを設置するとすると、1車両につき4台、11両編成の列車では、1列車当たりのカメラの総数は44台となる。列車が駅に停止する30秒程度の時間内に、44台のカメラに対し、前の停車駅から今の停車駅までの映像(時間的には、山手線の場合5分程度)を、駅(ホームが好適)に設けた映像受信解析装置に送る。映像受信解析装置では、特定の人が乗車しているかが解析される。特定の人とは、(1)指名手配中の人、(2)警察が事件の容疑者として行動を監視している人、(3)凶悪犯罪を起こした前科のある人、(4)執行猶予中の人で要注意人物、(5)痴漢、スリの常習者であり、警察センタから映像受信解析装置に、それらの人物の顔写真とともに特徴パターンが随時送信されている。映像受信解析装置は、カメラ映像を受信したら、次の駅までの間に、特定の人を発見する作業に入り、発見できたら、発見した列車、車両番号、ドア番号等の情報と映像の一部を警察センタに送る。各列車には、設置しているカメラのすべてを制御するコントローラが車掌室に置かれ、映像受信解析装置を介して、警察センタの指示を各カメラに伝令したりする。
【0008】
なお、44台のカメラ映像を5分間で、映像受信解析装置に送信するには、無線通信方式として、20Gbpsの伝送速度能力を持つ5G通信が望ましいが、1Gbps弱の4G通信でもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、東京都内の山手線はもちろん新幹線、私鉄などあらゆる電車さらにバスにも適用可能で、交通機関を利用する不審者を、ほぼリアルタイムで発見可能で、テロ対策にも有効であるし、不審者だけでなく、家族から捜索願が出ている人物の発見も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の
図1に示す全体構成図におけるカメラの内部構成を示す図である。
【
図3】本発明の
図1に示す全体構成図におけるコントローラの内部構成を示す図である。
【
図4】本発明の
図1に示す全体構成図における映像受信解析装置の内部構成を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施例での
図1に示す全体構成図におけるカメラの内部構成を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施例での本発明の
図1に示す全体構成図におけるコントローラの内部構成を示す図である。
【
図7a】本発明の第1の実施例で、列車編成時の車両情報管理部、コントローラ間の通信シーケンスを示す図である。
【
図7b】本発明の第1の実施例で、列車運行中の、カメラ、コントローラ、映像受信解析装置、警察センタ装置間の通信シーケンスを示す図である。
【
図7c】本発明の第1の実施例で、列車運行終了時のカメラ、コントローラ、映像蓄積センタ間の通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電車をはじめ公共交通機関に適用可能であるが、ここでは東京の山手線を例にして、第1の実施例を説明する。
【0012】
本発明の基本構成は、
図1に示すように、列車の各車両21の各ドアに設けられたカメラ11と、各車両で車両内のカメラの設置状況などを把握している車両情報管理部12、列車のすべてのカメラを集中管理・指示する車掌室や運転室などに設けられたコントローラ13、列車が停止する各駅(山手線の例では渋谷駅や新宿駅など)に設けられた映像受信解析装置30、映像受信解析装置30の解析結果を受信する警察センタ装置50、通信網70、列車運行時間中に撮影した映像信号を蓄積する映像信号蓄積センタ60よりなる。警察センタ装置50は、車両内のカメラ11へ、コントローラ13を介して撮影についての指示(例:何番カメラはズームを5倍にせよ)を出したり、駅の監視人に行動を指示したりする。通信網70は、映像受信解析装置30と警察センタ装置50、映像信号蓄積センタ60との通信のためのもので、公衆通信網(無線か有線かは問わない)が使用されるだろう。
【0013】
列車は、列車構成時に、コントローラ13が各車両の設備情報を収集し、この列車は何両編成でカメラは何台設置しているのかを把握しておく。コントローラ13と、車両情報管理部12とカメラ11との通信路は有線でも無線でもよい。
【0014】
カメラ11は、
図2に示すように、カメラ部115、映像処理部116、映像記憶部113制御回路112、コントローラ通信部111、無線通信回路114よりなる。映像処理部116は映像信号のデータ圧縮を行い映像記憶部113は各駅間の映像を記憶するものである。映像記憶部113には、図示しないが、列車の運行期間中の全映像を記憶する部分と、駅間の映像を記憶する一時的記憶部分があり、一時的記憶部分では、車両が駅に停車し、コントローラ13の指示により、記憶されている映像の送信が完了したら、その後の映像の記憶を始める。
【0015】
コントローラ13は、
図3に示すように、列車内通信部131、指示受信転 送部132、無線通信部133、GPS受信部134、制御部135、情報入力部136、諸元データ管理部137よりなる。なお、
カメラ11にある無線通信回路114は、映像受信解析装置30と
直接通信するためのものである。
【0016】
情報入力部136は、列車が編成されたとき、出発前に、この列車は何両編成であり1台目の車両は車両番号何番かなどを入力するものである。この操作はコントローラ13が各車両の車両情報管理部12にポーリング問合わせを行うことで自動的に行うこともできる。
【0017】
列車が編成されたとき、制御部135は、各車両からカメラの設置状況を知るために列車内通信部131より、車両情報管理部12へ情報提供を求め設置されているカメラ11のカメラIDを知る。カメラ11のIDを知ることで、諸元データ管理部137に管理されているカメラの諸元データ(解像度、ズーム機能、最大フレーム数等)を知ることができる。
【0018】
GPS受信部134は、列車の位置を知り、正規の駅に停車しているのか、駅の途中で臨時停車しているのかを知るためのものである。制御部135が、列車が正規の駅のホームに停車したと判断すると、列車のカメラの1台ごとに順次映像信号の送信を命令する。停車時間を30秒とすると、1台当たりの送信時間は、30/44(1列車のカメラの総数)=0.68秒となる。
【0019】
無線通信部133は、カメラ11と映像受信解析装置30間の無線通信速度を知っているので、カメラに蓄積されている映像情報量(何分の映像か)とともに、0.68秒で伝送できる映像信号のフレーム数を算出でき、その数字を制御部135に送り、制御部135から列車内通信部131に送る。その指示を受けたカメラは停車中に前の駅からの映像を、指示を受けたフレーム数、あるいは後記する映像受信解析装置の処理能力によっては、1秒に1枚とか3秒に1枚とかの静止画で送信する。
【0020】
ちなみに、伝送速度を5Gの20Gbpsとし、4Kカメラの映像を、0.68秒で伝送できる駅間の時間は、4Kカメラ映像の1秒の情報量が20Mbitであり、0.68×20Gbps/20M =680秒=11分である。4Gを使うときは伝送速度がその20分の1になり、11/20=0.55分になり、山手線では、駅間時間が1~3分なので、映像信号の情報量を下げる工夫が必要になる。
【0021】
また映像受信解析装置30の処理速度も考慮しておく必要がある。映像受信・解析装置30が5分の映像を解析し、発見すべき人の存在を発見する処理速度を有していれば、問題ないが、発見すべき人の数、乗客の数より、それが困難なときは映像信号の情報量を下げるため、フレーム数を落とすとか、1秒間隔の静止画あるいは3秒間隔の静止画を送ってもらうようにするとかの指示が必要になる。この必要性は、前記した伝送速度の観点からも重要である。
【0022】
なお、乗客の少ないときは、映像受信解析装置30の処理能力には余裕が出てくるので、スローモーション映像の送信(フレーム数を上げる)を求めることもできる。
【0023】
上記したカメラへの送信映像のフレーム数や静止画についての指示、つまり情報量変更の指示は、映像受信解析装置30からコントローラ13に送り、コントローラ13内の指示受信転送部132から制御部135を介し、各カメラ11に指示される。また、映像受信解析装置30の処理結果にもとづき、次の駅でのカメラの指示を行うことも必要である。例えば目黒駅から次の恵比寿駅までの間に映像受信・解析装置で解析した結果、1枚の静止画分しか、処理できなかったとすると、次の恵比寿駅での「映像受信は静止画3枚で充分、それ以上受信しても処理が間に合わない」という指示を出したくなるが、この場合目黒駅の映像受信解析装置30から列車が次の駅(恵比寿駅)に到着寸前に、列車のコントローラ13と恵比寿駅の映像受信解析装置30に指示することになる。
【0024】
【0025】
電波受信部41で受信された映像信号は映像蓄積部31に蓄積され、車内の人を含めた物体の認識を輪郭検出部32で行い、人だと判断できたら人の顔部と骨格部の情報を、顔部検出部33、骨格検出部34で抜きとり比較判定部35に送る。
【0026】
警察センタより発見してほしい人物の特徴(正面、側面、背面写真や体格等のデータ)が、別途送られていて、その特徴データは不審者データ部36に保存されていて、比較判定部35ではその人物かどうかを判定する。一致したと判定できたら、車両情報検知部42で検知している「何駅で何両目の車両の何番カメラ」というカメラの設置位置情報とともに特定者Aが発見されたことを発見部37に送り、その人物の映像を映像抜き取り部38で抜き取り、発見部37の情報とともに抜き取り映像が通信部39から警察センタ装置50へ送られる。
【0027】
映像受信解析装置30で不審者を発見する時間について試算してみる。カメラ映像より、一人の乗客に対し、判定すべき不審者が一人としたときに発見に要する時間が1msとする。混雑時に各ドアから乗車する人数が30人とすると、カメラ総数44台分のカメラ映像の処理に要す時間は、44×30×1ms=1.3秒である。発見すべき不審者の数が100人とすると、1.3×100÷60 =2.16分となる。不審者を発見するアルゴリズム等、AI機能の進歩により、この時間はさらに短縮されよう。
【0028】
各車両では、ドアから乗降する人を監視するカメラの設置に加え、座席部を監視するカメラを設置することで、さらに監視能力を向上することができる。
【0029】
また、映像受信解析装置30で不審者を発見する処理速度では、駅間の時間が長い時や発見すべき不審者の数が多くなる時に処理しきれないとき、特に混雑する時間帯は、各駅は、映像受信解析装置30を複数設置し、個々の映像受信・解析装置30が担当する車両を決めておく方法も採れよう。例えば、1~6号車を担当する映像受信・解析装置、6~11号車を担当する映像受信・解析装置という具合にする。
【0030】
不審者発見の連絡を受けた警察センタ装置50では、抜き取られた映像信号を見ながら真の不審者であるかを判定し、判定結果より、「真の不審者らしいから、もう少し細かい映像が欲しい、その人物を撮影しているカメラのズーム比率を上げてほしい」とかのカメラの撮影パラメータを変更する要求や「不審者に間違いない、各駅に警備員を配置し、降車したら、まずは職務質問してほしい」とかの指示を、各駅の映像受信解析装置30に送る。映像受信解析装置30は、この指示を指示受信処理部40で受け、カメラのズーム比率を上げるときは、その指示を映像受信解析装置30から当該列車のコントローラ13に送る。警備強化など人的手段が必要なときは、映像受信解析装置30から、手段は図示しないが、駅事務室に緊急連絡を行う。
【0031】
列車の運行が終了した時、カメラに蓄積されている運行中のすべての映像は、コントローラ13の指示により映像信号蓄積センタ60に転送する。映像受信解析装置で不審者の発見を行っているが、発見誤りや、新たに認識された不審者で、不審者データができてないこともあり、警察では、映像信号そのものを閲覧する必要もある。そのときのために撮影した映像はフレーム数変更などの処理は行わず、原映像のまま送信する。運行時間が6時間であったとすると、映像情報量は432Gに達し、5Gの20gbpsで送信した場合21.6秒、4Gでは8分程度になるが、列車の運行終了時には、その他の作業もあり、その作業時間内に送信は完了するだろう。
【0032】
本発明の第2の実施例は、カメラ11から映像受信解析装置30への無線送信の代わりに、カメラ11の映像はコントローラ13に送り、コントローラ13から映像受信解析装置30に無線送信しようとするものである。コントローラ13の無線通信部133は、第2の実施例では5Gであることが望ましい。5Gの無線通信機能は列車にひとつあればよく、5G通信の電波到達距離(ミリ波を用いた通信での到達距離は20m程度)を考慮すると、より望ましいことである。
【0033】
【0034】
第1の実施例との相違は、無線通信回路114がないことである。このことによりカメラのコストを軽減できる。
【0035】
図6は、この第2の実施例におけるコントローラ13の構成図である。列車内通信部131より、映像信号抽出部138で、制御部135の指示により無線通信部133へ映像信号を送る。制御部135の指示は列車が駅に停止してから、すべてのカメラに順次映像の送信命令を行い、それに呼応して、送られてきた映像を無線通信部133に転送する。無線通信部133の通信速度は5Gでは20Gbps であるため、コントローラ13と各車両との通信速度は20Gbps以上が必要で、配線はLANケーブルよりは光ファイバが望ましい。列車の運行終了時に、制御部135は全カメラに対し、カメラの映像記憶部113に記憶されている運行期間中の全映像のコントローラ13への送信を指示し、コントローラ13から映像信号蓄積センタ60に転送する。この場合、伝送時間にゆとりがあるので、5G通信である必要はなく、4G通信でもよい。コントローラ13の無線通信部133は、5Gと4Gの二つの通信機能を具備することが望ましい。
【0036】
次に、車両情報管理部、コントローラ、カメラ、映像解析装置、警察センタ、映像信号蓄積センタ間の通信シーケンスを、
図7aには列車編成時(始発前)、
図7bには列車運行中、
図7cには列車運行終了時の3つのケースについて示す。
【0037】
図7aでは、車両車庫で、出発前に、列車は11両とかの編成車両数によって、車両が集められ連結される、各車両に設置される複数のカメラの仕様は、すべて同一ということも多いが、1台だけは望遠機能(ズーム機能)が高いカメラ、回転可能でかつ静止可能(ある角度での映像を中心に撮影)なカメラ、スローモーション撮影が可能でフレーム数の多いカメラを設置することもある。鉄道会社では所有するすべてのカメラにIDを付与していて、カメラの仕様や修理履歴などを管理している。車両情報管理部12では、当該車両に設置されているカメラのIDを把握していて、出発前にコントローラ13は、各車両に「車両情報問合せ信号」を送り、列車に設置されているすべてのカメラの情報を管理している。
図7bに示すが、警察センタ装置50からコントローラ13に、「N号車のM番カメラのズームを2倍にせよ」とかの指示が来るが、その場合「M番カメラはズームを変更できないが、(M+1)番カメラを回転させズーム比率を2倍にする」という返事を返すことができる。
【0038】
図7bは、列車運行中で、コントローラ13がGPSセンサで列車が駅に到着したことを知ると、すべての車両のカメラに順次映像信号の送信を依頼する。映像信号は第1の実施例では、映像受信解析装置30に送られ、第2の実施例では、一旦コントローラ13に送られ、コントローラ13から映像受信解析装置30に届けられる。映像受信解析装置30では映像を解析し不審者発見作業を行うが、発見すると直ちに警察センタ装置50にその旨を映像信号とともに届ける。警察センタ装置50でその映像を見て不審者に間違いないと判断すると、駅員に「その不審者に職務質問しろ」あるいは、「もうちょっと観察したいから、前記したズームを2倍にするとかの詳しいカメラ映像を送れ」とかの指示を映像受信解析装置30に送る。映像受信解析装置30は、その指示をコントローラ13に転送し、コントローラ13からカメラ11に指示を出したり、コントローラ13から警察センタ装置50に返信したりする。
【0039】
図7cは、列車が運転を終了し、車両車庫に戻ったとき、運行期間中の映像信号のすべてを、映像信号蓄積センタ60に届けるシーケンスで、前記したように、列車の運行中に停車駅で、映像受信解析装置30に送られるカメラ映像は、駅での乗車客数や、前の駅からの運転時間の関係で、静止画が届けられたりする。一方、全映像の映像信号そのものを一日単位、運行単位で保管していくことは後々の捜査のためにも重要なことで、映像信号蓄積センタ60がこの役割を果たす。第1の実施例では、コントローラ13がカメラ11に送信指示をすると、カメラ11から直接映像信号蓄積センタ60に映像が届けられる。第2の実施例では、映像信号のすべては、コントローラ13に保存されているので、コントローラ13から映像信号蓄積センタ60 に届けられる。
以上の説明では複数の車両で構成される列車の例を示したが、バスや地方で見かけられる一つの車両よりなる電車の例にも、本発明は適用可能である。また、映像受信解析装置は、列車が停車する各駅に設置する例が示されているが、乗客数や映像受信解析装置の処理能力を考慮しながら、列車が移動する区間内で、所定の場所ごと(例えば、数駅に一つ、移動する区間が短い場合は、区間内に一つとか)に設置してもよい。
なお、警察センタ装置50は、広義的には、センタ装置、と呼ばれるものである。さらに、上記の説明では、映像信号蓄積センタ60は警察センタ装置50と別物のように描かれているが、センタ装置が映像信号蓄積センタの機能を包含してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、不審者の乗車をリアルタイムに把握できるシステムで、犯罪に関わる不審者の発見はもとより、テロ対策等保安上重要なシステムであり、すべての列車への導入が期待され、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0041】
11 カメラ
12 車両管理情報部
13 コントローラ
30 映像受信解析装置
31 映像蓄積部
32 輪郭検出部
33 顔部検出部
34 骨格検出部
35 比較判定部
36 不審者データ部
37 発見部
38 映像抜取部
39 通信部
40 指示受信・処理部
41 電波受信部
42 車両情報検知部
50 警察センタ装置
60 映像信号蓄積センタ
70 通信網
111 コントローラ通信回路
112 制御回路
113 映像記憶部
114 無線通信回路
115 カメラ部
116 映像処理部
131 列車内通信部
132 指示受信・転送部
133 無線通信部
134 GPS受信部
135 制御部
136 情報入力部
137 諸元データ管理部
138 映像信号抽出部