(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】ボールねじ装置に設けられるシール構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/324 20160101AFI20230206BHJP
F16J 15/3268 20160101ALI20230206BHJP
F16J 15/20 20060101ALI20230206BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230206BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230206BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20230206BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
F16J15/324
F16J15/3268
F16J15/20
F16H25/22 A
F16H25/24 M
F16J15/3204 201
F16J15/16 C
(21)【出願番号】P 2020166302
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2021-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591077818
【氏名又は名称】日本ベアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】高坂 章
(72)【発明者】
【氏名】佐治 匡
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亨
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02818745(US,A)
【文献】特開2000-161462(JP,A)
【文献】特開平10-002394(JP,A)
【文献】特開2000-179640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/324-15/3296
F16J 15/3204-15/3236
F16J 15/16-15/32
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじ体とボールナット体とで構成されたボールねじ装置に設けられるシール構造であって、前記ボールねじ体の周囲に設けられるシールと、前記シールを挟持した状態で前記ボールナット体に設けられ前記ボールねじ体が貫通する貫通部を有するシール支持体とから成り、前記シールの内縁部は、前記ボールねじ体の螺子溝に適量嵌入するように構成され、前記シール支持体
は、前記シールの前記ボールねじ体の軸方向を向く第一の面に当接する第一の挟持部材と、前記シールの前記第一の面の反対側の第二の面に当接する第二の挟持部材と、前記第一の面若しくは前記第二の面が係止する係止突起
とを有し、この係止突起により前記シールは前記シール支持体に対して位置ずれ防止固定されるように構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【請求項2】
ボールねじ体とボールナット体とで構成されたボールねじ装置に設けられるシール構造であって、前記ボールねじ体の周囲に設けられるシールと、前記シールを挟持した状態で前記ボールナット体に設けられ前記ボールねじ体が貫通する貫通部を有するシール支持体とから成り、前記シールの内縁部は、前記ボールねじ体の螺子溝に適量嵌入するように構成され、前記シール支持体の貫通部の周囲には前記シールが配設される凹所が設けられ、この凹所に係止突起が設けられ、この係止突起により前記シールは前記シール支持体に対して位置ずれ防止固定されるように構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【請求項3】
ボールねじ体とボールナット体とで構成されたボールねじ装置に設けられるシール構造であって、前記ボールねじ体の周囲に設けられるシールと、前記シールを挟持した状態で前記ボールナット体に設けられ前記ボールねじ体が貫通する貫通部を有するシール支持体とから成り、前記シールの内縁部は、前記ボールねじ体の螺子溝に適量嵌入するように構成され、前記シール支持体には前記シールが係止する係止突起が設けられ、この係止突起により前記シールは前記シール支持体に対して位置ずれ防止固定されるように構成され、前記シール支持体は、前記シールを挟持する2枚のプレートで構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【請求項4】
請求項1
~3いずれか1項に記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シールは含油性を有する多孔質材で構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【請求項5】
請求項1
~3いずれか1項に記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シールは不織布材であることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【請求項6】
請求項
2記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シール支持体の凹所には油溜まり凹部が
該シール支持体の貫通部の外周に所定間隔をおいて設けられていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シールは、前記ボールねじ体が貫通する孔を設けた環状,半円状若しくは扇形状のシールであることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置に設けられるシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボールねじ体とボールナット体とで構成されるボールねじ装置は、ボールナット体内への塵埃の侵入防止と、ボールナット体外への潤滑油の飛散防止を目的としてシール構造が設けられており、例えば特許文献1に開示されるシール構造(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【0003】
この従来例は、ボールナット体の端面にしてボールねじ体が貫通する貫通孔の開口部周囲に、環状のシール部材を止着部材で止着するものであり、シール部材の内縁部がボールねじ体の螺子溝に適量嵌入した状態でボールナット体に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例は、シール機能を良好に発揮させるべく、シール部材に止着部材で止着するための止着穴(キリ穴)を適正位置に設ける必要があるなど、製造が厄介である。
【0006】
また、シール性能を高めるべく、シール部材をボールねじ体の螺子溝に多量に嵌入させると、シール部材がボールねじ体の回転に追従して回転してしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑み、発明されたもので、従来にない実用的なボールねじ装置に設けられるシール構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
ボールねじ体51とボールナット体52とで構成されたボールねじ装置50に設けられるシール構造であって、前記ボールねじ体51の周囲に設けられるシール1と、前記シール1を挟持した状態で前記ボールナット体52に設けられ前記ボールねじ体51が貫通する貫通部2aを有するシール支持体2とから成り、前記シール1の内縁部は、前記ボールねじ体51の螺子溝51aに適量嵌入するように構成され、前記シール支持体2は、前記シール1の前記ボールねじ体51の軸方向を向く第一の面に当接する第一の挟持部材と、前記シール1の前記第一の面の反対側の第二の面に当接する第二の挟持部材と、前記第一の面若しくは前記第二の面が係止する係止突起3とを有し、この係止突起3により前記シール1は前記シール支持体2に対して位置ずれ防止固定されるように構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【0010】
また、ボールねじ体51とボールナット体52とで構成されたボールねじ装置50に設けられるシール構造であって、前記ボールねじ体51の周囲に設けられるシール1と、前記シール1を挟持した状態で前記ボールナット体52に設けられ前記ボールねじ体51が貫通する貫通部2aを有するシール支持体2とから成り、前記シール1の内縁部は、前記ボールねじ体51の螺子溝51aに適量嵌入するように構成され、前記シール支持体2の貫通部2aの周囲には前記シール1が配設される凹所4が設けられ、この凹所4に係止突起3が設けられ、この係止突起3により前記シール1は前記シール支持体2に対して位置ずれ防止固定されるように構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【0011】
また、ボールねじ体51とボールナット体52とで構成されたボールねじ装置50に設けられるシール構造であって、前記ボールねじ体51の周囲に設けられるシール1と、前記シール1を挟持した状態で前記ボールナット体52に設けられ前記ボールねじ体51が貫通する貫通部2aを有するシール支持体2とから成り、前記シール1の内縁部は、前記ボールねじ体51の螺子溝51aに適量嵌入するように構成され、前記シール支持体2には前記シール1が係止する係止突起3が設けられ、この係止突起3により前記シール1は前記シール支持体2に対して位置ずれ防止固定されるように構成され、前記シール支持体2は、前記シール1を挟持する2枚のプレート2’,2”で構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【0012】
また、請求項1~3いずれか1項に記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シール1は含油性を有する多孔質材で構成されていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シール1は不織布材であることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【0014】
また、請求項2記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シール支持体2の凹所4には油溜まり凹部5が該シール支持体2の貫通部2aの外周に所定間隔をおいて設けられていることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【0015】
また、請求項1~6いずれか1項に記載のボールねじ装置に設けられるシール構造において、前記シール1は、前記ボールねじ体51が貫通する孔1aを設けた環状,半円状若しくは扇形状のシール1であることを特徴とするボールねじ装置に設けられるシール構造に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、シール機能が良好に発揮するようにボールナット体に対してシールを簡易に設けることができるなど、従来に無い実用的なボールねじ装置に設けられるシール構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施例に係るシール構造を備えたボールネジ装置を示す斜視図である。
【
図2】本実施例に係るシール構造を備えたボールネジ装置を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施例に係るシール構造を備えたボールネジ装置を説明する断面図である。
【
図8】別例のボールネジ装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
シール1はシール支持体2で挟持された状態でボールナット体52に設けられる。
【0020】
このボールナット体52に設けられたシール1は、シール支持体2に設けられた係止突起3により係止されて位置ずれ防止固定され、この状態でシール1の内縁部がボールねじ体51の螺子溝51aに適量嵌入した状態となる。
【0021】
従って、良好なシール効果を発揮することができ、しかも、シール1をボールナット体52に設ける為の構成として、従来のようにシール1に特別な加工をする必要はなく、シール支持体2を介してボールナット体52に設ける構成であるから、シール効果を発揮する最適な位置にシール1を簡易且つ確実に位置ずれ防止固定することができる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、ボールねじ体51とボールナット体52とで構成されたボールねじ装置50に設けられるシール構造であって、ボールねじ体51の周囲に設けられるシール1と、シール1を挟持した状態でボールナット体52に設けられボールねじ体51が貫通する貫通部2a(孔)を有するシール支持体2とから成るものである。尚、本実施例のボールネジ装置50は、
図1に図示したように金属棒体の周面に螺子溝51aが形成されたボールねじ体51(ねじ軸)と、このボールねじ体51に被嵌する筒状の基体52a内にボールベアリング構造52bを備えたボールナット体52とで構成されている。
【0024】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0025】
シール1は、
図2に図示したように不織布材(フェルト)をボールねじ体51が貫通する所定径の孔1aを有する環状に形成したものであり、適度な柔軟性を有すると共に、含油性を有している。尚、このシール1の形状は、後述するシール支持体2の貫通部2aの周囲に設けられる凹所4の形状に応じて、環状に限らず、内縁部に孔を有する半円状若しくは扇形状や、略四角形状など適宜採用し得るものである。
【0026】
この柔軟性は、後述するシール支持体2を介してボールナット体52に固定した際、シール支持体2に設けられる係止突起3による位置ずれ防止固定(回り止め係止)を可能とし、含油性は、ボールねじ体51及びボールナット体52の作動を円滑にする潤滑剤(グリス)を保持することに貢献する。
【0027】
尚、シール1は不織布材に限らず、適度な柔軟性及び含油性(多孔質材故の含油性)を有する素材であれば適宜採用し得るものである。
【0028】
また、シール1は、内縁部所定位置に突状部1bが一つ設けられている。
【0029】
この突状部1bは、シール支持体2を介してボールナット体52に設けられた際、シール1を貫通するボールねじ体51の螺子溝51aに適量嵌入するように構成されている。
【0030】
この嵌入度合いは、突状部1bの先端が螺子溝51aの底面に当接する程度でも良いし、突状部1bの先端が螺子溝51aの底面に当接しない僅かな隙間が形成される程度でも良く、ボールねじ体51及びボールナット体52の作動を円滑に行い且つ潤滑油がボールナット体52外に飛散するのを防止する状態であれば良い。
【0031】
シール支持体2は、シール1を挟持した状態でボールナット体52に設けられるものであり、2枚のプレート(第一プレート2’及び第二プレート2”)で構成されている。
【0032】
第一プレート2’は、
図2,3に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で形成した環状板体であり、ボールねじ体51が貫通する貫通部2a(孔)を有し、この貫通部2aの周囲にはシール1が嵌合配設される環状の凹所4が段形状に設けられている。尚、貫通部2aは円形の孔に限らず、半円形の孔であったり扇形状の孔であっても良い。
【0033】
また、この凹所4の底部には複数(8個)の係止突起3が周方向に等間隔で並設されている。
【0034】
この係止突起3は、先端先鋭形状(円錐形状)に形成されており、シール支持体2を介してシール1をボールナット体52に固定した際、このシール1に係止し、シール支持体2に対して位置ずれ防止固定(回り止め係止)されるように構成されている。
【0035】
また、第一プレート2’の貫通部2aの外周には、複数(8個)の凹部が周方向に所定間隔を介して並設されており、この凹部は潤滑剤を溜める油溜まり凹部5として構成されている。
【0036】
また、第一プレート2’は、第二プレート2”と重合連結し且つボールナット体52に止着するための止着部材20を貫通する止着孔2bが設けられている。
【0037】
第二プレート2”は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成した環状板体であり、第一プレート2’に止着部材20を介して重合連結され、この第一プレート2’と共にシール1を挟持保持するように構成されている。符号2cは止着部材20を貫通する止着孔、2dはボールねじ体51が貫通する貫通部(孔)であり、前述した貫通部2aと同様、貫通部2dは円形の孔に限らず、半円形の孔であったり扇形状の孔であっても良い。
【0038】
図7,8は、ベース部材10a,ガイドレール部材10b及び軸受部材10cなどから成るアクチュエータ本体10にボールネジ装置を設けたタイプ(アクチュエータータイプ)を図示したものである。
【0039】
本実施例は上述のように構成したから、シール1はシール支持体2で挟持された状態でボールナット体52に設けられる。
【0040】
このボールナット体52に設けられたシール1は、シール支持体2に設けられた係止突起3により係止されて位置ずれ防止固定され、この状態でシール1の孔1aの内縁部がボールねじ体51の螺子溝51aに適量嵌入した状態となる。
【0041】
よって、本実施例によれば、良好なシール効果を発揮することができ、しかも、シール1をボールナット体52に設ける為の構成として、従来のようにシール1に特別な加工をする必要はなく、シール支持体2を介してボールナット体52に設ける構成であるから、シール効果を発揮する最適な位置にボールナット体52に対してシール1を簡易且つ確実に位置ずれ防止固定することができる。
【0042】
また、本実施例は、シール1は不織布材であるから、前述した作用効果を確実に奏することになる。
【0043】
また、本実施例は、シール1を含油性を有する多孔質材で構成した場合には、シール機能の他にも、例えばボールねじ体51とボールナット体52との作動を円滑にする潤滑剤を作動部位に供給する機能も発揮する。
【0044】
また、本実施例は、シール支持体2の貫通部2a(孔)の周囲にはシール1が配設される環状の凹所4が設けられ、この凹所4に係止突起3が設けられているから、シール1の固定がより一層堅固に行われる。
【0045】
また、本実施例は、シール支持体2の環状の凹所4には油溜まり凹部5がシール支持体2の貫通部2a(孔)の外周に所定間隔をおいて設けられているから、この点においてもボールねじ体51とボールナット体52との作動を円滑にする潤滑剤を作動部位に供給することができる。
【0046】
また、本実施例は、シール支持体2は、シール1を挟持する2枚のプレート2’,2”で構成されているから、シール1を確実に固定した状態でボールナット体52に設けることができる。
【0047】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0048】
1 シール
1a 孔
2 シール支持体
2’ プレート
2” プレート
2a 貫通部
3 係止突起
4 凹所
5 油溜まり凹部
50 ボールねじ装置
51 ボールねじ体
51a 螺子溝
52 ボールナット体