(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】艦船用多段寝台
(51)【国際特許分類】
B63B 29/10 20060101AFI20230206BHJP
A47C 19/20 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B63B29/10
A47C19/20
(21)【出願番号】P 2022118840
(22)【出願日】2022-07-26
(62)【分割の表示】P 2022072455の分割
【原出願日】2022-04-26
【審査請求日】2022-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591136908
【氏名又は名称】シンコウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】進藤 博信
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110683004(CN,A)
【文献】特開平11-192129(JP,A)
【文献】特開2001-008745(JP,A)
【文献】特開2006-204318(JP,A)
【文献】特開平06-072426(JP,A)
【文献】中国実用新案第204568008(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 29/10
A47C 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台枠の平面形において当該寝台枠の輪郭を形成する外枠と、前記外枠の内側にあって前記外枠に結合された床面材とを備えて、前記床面材の上にマットレスが載置される複数個の寝台枠と、
前記寝台枠の四隅に配置されて、設置場所に固定されて、前記寝台枠を支持する4本の脚部材を備えて、
前記複数個の寝台枠が上下方向に離隔して配置されるとともに、
前記脚部材が前記設置場所に固定された状態において、前記床面材が前記外枠に結合された状態を維持しながら、前記複数個の寝台枠の前記脚部材に対する取り付け高さを変更可能にした
艦船用多段寝台であって、
前記寝台枠の四隅において前記寝台枠の下面に当接して、前記寝台枠
の下面にボルト止めされる
とともに、前記脚部材に係止される支持金物であって、前記脚部材に向かう方向に突出する突出片を備える支持金物と、
4本の前記脚部材のそれぞれにおいて、前記設置場所から測った高さが異なる複数の箇所に穿設されて、前記支持金物の前記突出片が嵌合される嵌合穴を備え、
4本の前記脚部材のそれぞれにおいて、前記嵌合穴を備える箇所の数が前記寝台枠の個数よりも多い、
艦船用多段寝台。
【請求項2】
前記脚部材は、山形鋼で構成されるとともに、前記寝台枠と前記支持金物は前記山形鋼の内角側に配置され、
前記支持金物は、前記山形鋼の一方の辺に当接する端面から突出する第1の突出片と、前記山形鋼の他方の辺に当接する端面から突出する第2の突出片とを備え、
4本の前記脚部材のそれぞれにおいて、前記山形鋼の一方の辺に穿設されて、前記支持金物の前記第1の突出片が嵌合される第1の嵌合穴と、前記第1の嵌合穴と同じ高さにあって、前記山形鋼の他方の辺に穿設されて、前記支持金物の前記第2の突出片が嵌合される第2の嵌合穴の組を、前記設置場所から測った高さが異なる複数の箇所に備えて、
4本の前記脚部材のそれぞれにおいて、前記第1の嵌合穴と前記第2の嵌合穴の組を備える箇所の数が前記寝台枠の個数よりも多い、
請求項1に記載の
艦船用多段寝台。
【請求項3】
前記支持金物を介して前記脚部材に支持される上段寝台枠及び中段寝台枠と、
前記脚部材の特定の位置に固定される下段寝台枠と、を備える、
請求項1又は請求項2に記載の
艦船用多段寝台。
【請求項4】
前記上段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において支持する2組の前記第1及び第2の嵌合穴の組と、
前記中段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において支持する2組の前記第1及び第2の嵌合穴の組と、を備える、
請求項3に記載の
艦船用多段寝台。
【請求項5】
2段寝台として使用される形態と3段寝台として使用される形態との間で相互に変更可能な、
請求項4に記載の
艦船用多段寝台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として艦船に装備される艦船用多段寝台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、艦船の居住区においては、3段式の寝台が装備されていた(特許文献1)。近年は、居住区の快適性が求められるとともに、艦船の省人化が進んだので、2段式の寝台が主流になりつつある。一方、艦船は、任務の多様化が進められていて、付与された任務によって、乗員の人数が一時的に増加することが予定されるようになった。つまり、特定の任務が付与されると、固有の乗員に加えて、臨時の乗員が乗り組むことが予定されるようになった。そのため、通常は、2段式の寝台として使用し、必要に応じて3段式の寝台に変更することができる艦船用多段寝台が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3段式寝台は、3組の寝台枠を必要とするが、2段式寝台は2組の寝台枠があれば足りる。そのため、従来の3段式寝台を2段式寝台として使用する場合には、不要となる1組の寝台枠を取り外して、別の場所に格納する必要がある。そして、そのための作業スペースと格納スペースを必要とする。つまり、不要となる1組の寝台枠を引き出して、運搬して、格納するスペースを必要とするという問題がある。容積が限られている艦船において、かかるスペースを確保することは容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、形態変更が可能な艦船用多段寝台であって、形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としない艦船用多段寝台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る艦船用多段寝台は、寝台枠の平面形において当該寝台枠の輪郭を形成する外枠と、外枠の内側にあって外枠に結合された床面材とを備えて、床面材の上にマットレスが載置される複数個の寝台枠と、寝台枠の四隅に配置されて、設置場所に固定されて、寝台枠を支持する4本の脚部材を備えて、複数個の寝台枠が上下方向に離隔して配置されるとともに、脚部材が設置場所に固定された状態において、床面材が外枠に結合された状態を維持しながら、複数個の寝台枠の脚部材に対する取り付け高さを変更可能にしたものである。更に、本発明に係る艦船用多段寝台は、寝台枠の四隅において寝台枠の下面に当接して、寝台枠の下面にボルト止めされるとともに、脚部材に係止される支持金物であって、脚部材に向かう方向に突出する突出片を備える支持金物と、4本の脚部材のそれぞれにおいて、設置場所から測った高さが異なる複数の箇所に穿設されて、持金物の突出片が嵌合される嵌合穴を備える。そして、4本の脚部材のそれぞれにおいて、嵌合穴を備える箇所の数が寝台枠の個数よりも多くされている。
【0007】
脚部材は、山形鋼で構成されるとともに、寝台枠と支持金物は山形鋼の内角側に配置され、支持金物は、山形鋼の一方の辺に当接する端面から突出する第1の突出片と、山形鋼の他方の辺に当接する端面から突出する第2の突出片とを備えるようにしても良い。そして、4本の脚部材のそれぞれにおいて、山形鋼の一方の辺に穿設されて、支持金物の第1の突出片が嵌合される第1の嵌合穴と、第1の嵌合穴と同じ高さにあって、山形鋼の他方の辺に穿設されて、支持金物の第2の突出片が嵌合される第2の嵌合穴の組を、設置場所から測った高さが異なる複数の箇所に備えて、4本の脚部材のそれぞれにおいて、第1の嵌合穴と第2の嵌合穴の組を備える箇所の数が寝台枠の個数よりも多くされても良い。
【0008】
艦船用多段寝台は、支持金物を介して脚部材に支持される上段寝台枠及び中段寝台枠と、脚部材の特定の位置に固定される下段寝台枠とを備えても良い。
【0009】
艦船用多段寝台は、上段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において支持する2組の第1及び第2の嵌合穴の組と、中段寝台枠を高位置あるいは低位置の2箇所において支持する2組の第1及び第2の嵌合穴の組とを備えても良い。
【0010】
艦船用多段寝台は、2段寝台として使用される形態と3段寝台として使用される形態との間で相互に変更可能なものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る艦船用多段寝台は形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としないので、スペースが制約される艦船の居住区に設置することができる。スペースに制約のある居住区内において、形態変更の作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る多段寝台の外形を示す斜視図である。
【
図2】2段寝台として使用される状態にある
図1に記載の多段寝台の正面図である。
【
図3】3段寝台として使用される状態にある
図1に記載の多段寝台の正面図である。
【
図4】(A)は、
図1に記載の多段寝台の上段寝台枠の周辺を
図2において、I-I線で示す平面で切断して示す断面図である。(B)は、(A)の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】(A)は、
図4に記載の多段寝台が備える第1の支持金物の外形を示す斜視図である。(B)は、
図4に記載の多段寝台が備える第2の支持金物の外形を示す斜視図である。(C)は、
図4に記載の多段寝台が備える脚部材の嵌合穴周りの形状を示す斜視図である。(D)は、(C)に記載の多段寝台が備える脚部材に第1の支持金物を係止させた状態を示す斜視図である。(E)は、脚部材に係止された第1の支持金物の上に第2の支持金物を重ねて、脚部材に係止させた状態を示す斜視図である。
【
図6】多段寝台を、
図2においてII-II線で示す平面で切断して示す断面図である。
【
図7】(A)~(E)は、脚部材を
図6においてIII-III線で示す平面で切断して示す断面図であって、第1の支持金物と第2の支持金物を脚部材に係止する手順を時系列に沿って示す図である。
【
図8】(A)~(E)は、多段寝台を
図2においてI-I線で示す平面で切断して示す断面図であって、上段寝台枠と中段寝台枠を低位置から高位置に移動させる手順を時系列に沿って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る多段寝台の構成と作用を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0014】
図1は、本開示の実施の形態に係る多段寝台1の外形を示す斜視図である。
図1に示すように、多段寝台1は、設置場所に固定される4本の脚部材2と、上下方向に離隔して配置された上段寝台枠3と中段寝台枠4と下段寝台枠5とを備えている。上段寝台枠3と中段寝台枠4と下段寝台枠5の上には、図示しないマットレスと寝具が置かれる。なお、以下において、上段寝台枠3と中段寝台枠4と下段寝台枠5を総称して、「寝台枠3,4,5」と記載することがある。
【0015】
図1に示すように、4本の脚部材2は寝台枠3,4,5の四隅に配置され、寝台枠3,4,5は4本の脚部材2に依って支持される。下段寝台枠5は脚部材2の特定の位置に固定されている。上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれ、高位置と低位置のいずれかの位置を選択して、脚部材2に係止されている。また、脚部材2には、上段寝台枠3の高位置と低位置、及び中段寝台枠4の高位置と低位置の、合計4箇所の係止位置に、嵌合穴6を備えている。嵌合穴6には後述する支持金物が嵌合されて、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、支持金物を介して脚部材2に係止される。
【0016】
なお、
図1は、多段寝台1が2段寝台として使用される状態を示していて、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの低位置において、脚部材2に係止されている。また、上段寝台枠3と中段寝台枠4には安全柵7,8が取付けられている。下段寝台枠5からは、安全柵7,8が取り外されている。
【0017】
図2は、2段寝台として使用される状態、つまり
図1に示す状態と同じ状態にある多段寝台1の正面図である。前述したように、この状態において、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの低位置において係止されている。この場合において、上段寝台枠3と中段寝台枠4の上方のクリアランスは十分に確保されている。一方、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間の間隔は接近しているので、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間に使用者が入ることができない。
【0018】
図3は、3段寝台として使用される状態にある多段寝台1の正面図である。この状態において、上段寝台枠3と中段寝台枠4は、それぞれの高位置に係止されている。この場合において、上段寝台枠3と中段寝台枠4の上方のクリアランスは、
図2に示した状態に比べて、小さくなっているが、使用者の出入りに必要なクリアランスは確保されている。一方、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間の間隔は、
図2に示した状態に比べて、大きくなっているので、中段寝台枠4と下段寝台枠5の間に使用者が入ることができる。また、多段寝台1を3段寝台として使用する場合には、
図3に示すように、下段寝台枠5に安全柵7,8が取り付けられる。
【0019】
図4(A)は、多段寝台1の上段寝台枠3の周辺を
図2において、I-I線で示す平面で切断して示す断面図である。
図4(B)は、
図4(A)の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図4(A)と
図4(B)に示すように、脚部材2には、第1の支持金物9と第2の支持金物10が係止されている。なお、後述するように、第1の支持金物9と第2の支持金物10は嵌合穴6に嵌合される。しかしながら、第1の支持金物9と第2の支持金物10が現に嵌合されている嵌合穴6は、第1の支持金物9と第2の支持金物10の後に隠れているので、
図4(A)と
図4(B)においては、見えない。また、
図4(A)においては、使用されていない嵌合穴6、つまり第1の支持金物9と第2の支持金物10が現に嵌合されていない嵌合穴6が図示されている。
【0020】
また、
図4(A)と
図4(B)に示すように、第1の支持金物9と第2の支持金物10は互いに重ねられていて、ボルト11によって、上段寝台枠3に固定されている。そのため、上段寝台枠3は第1の支持金物9と第2の支持金物10を介して脚部材2に係止される。上段寝台枠3は、四隅において、第1の支持金物9と第2の支持金物10を介して脚部材2に係止される。同様に、中段寝台枠4も、その四隅において、第1の支持金物9と第2の支持金物10を介して、脚部材2に係止される。
【0021】
図5(A)は、第1の支持金物9の外形を示す斜視図である。
図5(A)に示すように、第1の支持金物9は四隅が面取りされた略矩形の金属片であって、隅部を挟んで隣接する2辺に第1の突出片9Aと第2の突出片9Bとを備えている。また、第1の支持金物9は、ボルト11(
図5(A)において図示なし)が螺合されるねじ穴9Cを備えている。なお、本実施の形態において、ねじ穴9Cは第1の支持金物9に直接ねじ切り加工を施して形成される。
【0022】
図5(B)は、第2の支持金物10の外形を示す斜視図である。
図5(B)に示すように、第2の支持金物10も四隅が面取りされた略矩形の金属片であって、1辺に第3の突出片10Aを備えている。第3の突出片10Aの幅W3は
図5(A)に示した第1の支持金物9の第1の突出片9Aの幅W1より大きくされている。また、第2の支持金物10は、ボルト11(
図5(B)において図示なし)が挿通される挿通穴10Bを備えている。
【0023】
図5(C)は、脚部材2の嵌合穴6周りの形状を示す斜視図である。なお、
図5(C)は脚部材2を多段寝台1の内側、つまり多段寝台1の寝台枠3,4,5が配置される側から見た状態を示している。
【0024】
図5(C)に示すように、脚部材2は山形鋼で構成されている。山形鋼の内角側から見て右側に見える辺には第1の嵌合穴6Aが穿設されている。そして、山形鋼の内角側から見て左側に見える辺には第2の嵌合穴6Bが穿設されている。なお、本明細書では、第1の嵌合穴6Aと第2の嵌合穴6Bとを総称して嵌合穴6と呼ぶ。
【0025】
図5(C)に示すように、第1の嵌合穴6Aは、断面形において、上部と下部の幅が異なっている。第1の嵌合穴6Aの下部は、幅W1を有する第1の突出片9Aを嵌合させるのに十分であるが、幅W3を有する第3の突出片10Aを嵌合させることができない幅W4を有している。第1の嵌合穴6Aの上部は、第3の突出片10Aを嵌合させるのに十分な幅W5を有している。つまり、第1の嵌合穴6Aにおいては、W1<W4<W3<W5の関係が成立する。そして、第1の嵌合穴6Aの下部には、第1の突出片9Aが嵌合し、嵌合穴6Aの上部には、第3の突出片10Aが嵌合する。
【0026】
図5(C)に示すように、第2の嵌合穴6Bは、断面形において、矩形を成している。第2の嵌合穴6Bは、幅W2を有する第2の突出片9Bを嵌合させるのに十分な幅W6を有している。つまり、第2の嵌合穴6Bにおいては、W2<W6の関係が成立する。そして、第2の嵌合穴6Bには、第2の突出片9Bが嵌合する。
【0027】
図5(D)は、脚部材2に第1の支持金物9を係止させた状態を示す斜視図である。
図5(D)に示すように、第1の支持金物9の第1の突出片9Aは第1の嵌合穴6Aの下部に嵌合され、第1の支持金物9の第2の突出片9Bは第2の嵌合穴6Bに嵌合される。
【0028】
図5(E)は、脚部材2に係止された第1の支持金物9の上に第2の支持金物10を重ねて、脚部材2に係止させた状態を示す斜視図である。
図5(E)に示すように、第2の支持金物10の第3の突出片10Aは第1の嵌合穴6Aの上部に嵌合される。なお、第1の支持金物9と第2の支持金物10を脚部材2に係止する具体的な手順については後述する。
【0029】
図6は、多段寝台1を
図2において、II-II線で示す平面で切断して示す断面図である。
図6に示すように、多段寝台1が備える、4本の脚部材2の全てにおいて、多段寝台1の内側、つまり上段寝台枠3が配置される側から見て右側の辺に第1の嵌合穴6Aを備えるとともに、左側の辺に第2の嵌合穴6Bを備えている。そのため、4本の脚部材2の全てに、全く同形の第1の支持金物9と第2の支持金物10を係止させることができる。
【0030】
図7(A)~(E)は、脚部材2を
図6においてIII-III線で示す平面で切断して示す断面図であって、第1の支持金物9と第2の支持金物10を脚部材2に係止する手順を時系列に沿って示す図である。
【0031】
第1の支持金物9を脚部材2に係止する際には、最初に、
図7(A)に示すように、第1の支持金物9の第1の突出片9Aを第1の嵌合穴6Aの上部に差し込む。この時、第1の支持金物9の第2の突出片9Bは、第2の嵌合穴6Bの外にある。その後、
図7(B)に示すように、第1の支持金物9を図において左方向に移動させながら、第2の突出片9Bが下に下がる方向に第1の支持金物9を傾けて、第2の突出片9Bを第2の嵌合穴6Bに接近させる。その後、
図7(C)に示すように、第1の支持金物9を図において左方向に移動させながら、第1の支持金物9の傾きを元に戻すと同時に第1の支持金物9を下方に移動させる。その結果、
図7(D)に示すように、第1の支持金物9の第1の突出片9Aが第1の嵌合穴6Aの下部に嵌合され、第1の支持金物9の第2の突出片9Bが第2の嵌合穴6Bに嵌合される。
【0032】
最後に、
図7(E)に示すように、第1の支持金物9の上に第2の支持金物10を載置して、第2の支持金物10が備える第3の突出片10Aを、第1の嵌合穴6Aの上部に嵌合させる。第3の突出片10Aが第1の嵌合穴6Aの上部に嵌合されると、第1の支持金物9が備える第1の突出片9Aを第1の嵌合穴6Aの上部に移動させることができなくなるので、第1の支持金物9が備える第2の突出片9Bを第2の嵌合穴6Bから引き出すことができなくなる。つまり
図7(A)に示す状態に戻すことができなくなる。このように、第2の支持金物10は第1の支持金物9の脱落を防止する「抜け止め」として機能する。その後、
図4(B)に示すように、ボルト11を締めて、上段寝台枠3と第1の支持金物9と第2の支持金物10を相互に固定すれば、第1の支持金物9と第2の支持金物10の脚部材2から脱落が防止される。その結果、上段寝台枠3が、第1の支持金物9と第2の支持金物10を介して、脚部材2に係止される。
【0033】
図8(A)~(E)は、多段寝台1を
図2においてI-I線で示す平面で切断して示す断面図であって、上段寝台枠3と中段寝台枠4を低位置から高位置に移動させる手順を時系列に沿って示す図である。
【0034】
図8(A)に示す状態において、上段寝台枠3は低位置において、第1の支持金物9と第2の支持金物10を介して、脚部材2に係止されている。また、上段寝台枠3は、ボルト11によって、第1の支持金物9と第2の支持金物10に固定されている。
【0035】
図8(B)に示すように、ボルト11を取り外して、上段寝台枠3と第1の支持金物9と第2の支持金物10との結合を解除すると、上段寝台枠3の上方への移動が可能になる。なお、この時、第1の支持金物9と第2の支持金物10は元の位置に残っている。
【0036】
その後、第1の支持金物9と第2の支持金物10の係止を解除して、
図8(C)に示すように、第1の支持金物9と第2の支持金物10を高位置に移動させて、そこで、脚部材2に係止して、
図8(D)に示すように、ボルト11を締めて、上段寝台枠3を第1の支持金物9と第2の支持金物10を固定する。以上のプロセスを経て、上段寝台枠3の低位置から高位置への移動が完了する。
【0037】
同様の手順を経て、中段寝台枠4を低位置から高位置へ移動させることができる。上段寝台枠3と中段寝台枠4を低位置から高位置へ移動させて、その後、
図8(E)に示すように、下段寝台枠5に安全柵7(
図8において図示なし)と安全柵8を取りつければ、多段寝台1を3段寝台として使用することができる。このように、多段寝台1は2段寝台として使用される形態から、3段寝台として使用される形態に変更される。
【0038】
また、上記と逆順の作業を行えば、多段寝台1は3段寝台として使用される形態から、2段寝台として使用される形態に変更される。また、上記の作業は、上段寝台枠3あるいは中段寝台枠4を一時的に保持して、上げ下げを行う作業者2名、第1の支持金物9と第2の支持金物10とボルト11の着脱を行う作業者1名の合計3名の作業者が居れば足りる。また作業者が上段寝台枠3あるいは中段寝台枠4を保持する時間、あるいは上げ下げする時間は、短いので、作業者の筋力的負担は小さい。また、上記の作業において、特別な機械あるいは器具は不要である。
【0039】
また、上記の操作において、上段寝台枠3あるいは中段寝台枠4は、4本の脚部材2の間に形成されたスペースの中で移動するので、大きな作業スペースを必要としない。多段寝台1を2段寝台として使用する場合、つまり下段寝台枠5を使用しない場合であっても、下段寝台枠5を取り外さないので、下段寝台枠5を保管するスペースを用意する必要がない。
【0040】
以上、説明したように、本実施の形態に係る多段寝台1は、形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としない。そのため、スペースが制約される艦船の居住区内に設置して、当該居住区内で容易に形態変更を行うことができる。
【0041】
しかしながら、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態によっては限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、自由に変形あるいは改良して実施することができる。
【0042】
例えば、上記の実施の形態において、2段寝台あるいは3段寝台として利用できる多段寝台1を例示したが、本発明の技術的範囲は2段寝台あるいは3段寝台として利用できる艦船用多段寝台には限定されない。例えば、本発明に係る艦船用多段寝台は4段寝台と3段寝台あるいは2段寝台の間で形態変更可能な艦船用多段寝台であっても良い。
【0043】
上記の実施の形態において、下段寝台枠5が脚部材2に直接固定されると説明したが、下段寝台枠5が脚部材2に直接固定されるものには限定されない。下段寝台枠5は、上段寝台枠3及び中段寝台枠4と同様に、第1の支持金物9と第2の支持金物10を介して、脚部材2に係止されても良い。
【0044】
上記の実施の形態において、第1の支持金物9にねじ穴9Cを備えて、ねじ穴9Cにボルト11が螺合される例を示したが、ボルト11が螺合される対象はねじ穴9Cには限定されない。第1の支持金物9から独立したナットを備えて、該ナットにボルト11を螺合させても良い。つまり、該ナットとボルト11の間に第1の支持金物9と第2の支持金物10と上段寝台枠3を挟んでも良い。あるいは、第1の支持金物9にカシメナットを固定して、該カシメナットにボルト11を螺合させても良い。
【0045】
上記の実施の形態に示された多段寝台1の外観上の特徴は例示に過ぎない。本発明に係る艦船用多段寝台の外観は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において自由に変更できる。
【符号の説明】
【0046】
1 多段寝台、2 脚部材、3 上段寝台枠、4 中段寝台枠、5 下段寝台枠、6 嵌合穴、6A 第1の嵌合穴、6B 第2の嵌合穴、7,8 安全柵、9 第1の支持金物、9A 第1の突出片、9B 第2の突出片、9C ねじ穴、10 第2の支持金物、10A 第3の突出片、10B 挿通穴、11 ボルト、W1~W6 幅
【要約】
【課題】形態変更に伴う作業スペースと格納スペースを必要としない
艦船用多段寝台を提供する。
【解決手段】
艦船用多段寝台は、寝台枠の四隅において寝台枠の下面に当接して、寝台枠にボルト止めされる第1及び第2の支持金物9,10を備える。第1及び第2の支持金物9,10は、脚部材2に向かう方向に突出する第1~3の突出片9A,9B,10Aを備える。脚部材2には、第1~3の突出片9A,9B,10Aが嵌合される第1,2の嵌合穴6A,6Bが穿設されている。各脚部材2が備える第1,2の嵌合穴6A,6Bの組の数は、
艦船用多段寝台が備える寝台枠の個数よりも多くされている。
【選択図】
図5