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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】包装箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/50 20060101AFI20230206BHJP
   B65D 5/02 20060101ALI20230206BHJP
   B65D 81/02 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B65D5/50 B
B65D5/02 K
B65D81/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019118884
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004067
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 積弥
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-326959(JP,A)
【文献】特開2004-131114(JP,A)
【文献】特開2012-254815(JP,A)
【文献】実開昭50-096123(JP,U)
【文献】特開2002-096826(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0274448(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/50
B65D 5/02
B65D 81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1側壁(10A)と一対の第2側壁(10B)とを交互に連ねて筒状に形成された周壁(1W)と、
一対の前記第1側壁の端部に連設され、内向きに折曲可能な一対の内フラップ(13)と、
一対の前記第2側壁の端部に連設され、内向きに折り曲げられて前記内フラップに重なり前記周壁の開口面の一部または全部を塞ぐ一対の外フラップ(14)と、を備え、
前記内フラップは、被包装物(90)の角部(91)を保護するための緩衝構造(18)を形成する少なくとも1つの緩衝部(17)を有し、
前記緩衝部は、
前記第1側壁との境界(L3)と前記第2側壁に沿った前記内フラップの一辺とが直角を成す直角三角形に形成された第1平面部(21)と、
前記第1平面部と共通の斜辺に正折線(25)を介して連設され、前記正折線を軸として前記第1平面部と線対称となる直角三角形を成す第2平面部(22)と、
前記第2平面部の直角を成す2辺のうち少なくとも何れか1辺に逆折線(26)を介して連設された側面部(23)と、を含み、
前記第2平面部が前記正折線に沿って折り返されて前記第1平面部に積層される過程において、前記側面部は、前記第1側壁と前記第2側壁のうち少なくとも一方の裏面に摺接しながら前記逆折線に沿って折れ曲がり、前記第1側壁と前記第2側壁のうち少なくとも一方の裏面に圧力をもって重ねられた圧接状態になることで、前記第2平面部を前記第1平面部に積層した積層状態に保持し、
積層状態となった前記第2平面部および圧接状態となった前記側面部は、前記被包装物の角部に接触することで前記被包装物の角部を保護することを特徴とする包装箱。
【請求項2】
前記内フラップには、前記第1側壁との境界から前記内フラップの先端に向かって突出した接続面部(16)が形成され、
前記緩衝部は、前記内フラップの先端から前記接続面部まで延びた切断線(20)に沿って前記内フラップを分割することで形成され、
前記第1平面部は、前記第1側壁と前記接続面部とに連設されたことを特徴とする請求項1に記載の包装箱。
【請求項3】
前記側面部は、
前記第2平面部の直角を成す一方の辺に前記逆折線を介して連設され、前記第1側壁の裏面に重なる第1側面部(23A)と、
前記第2平面部の直角を成す他方の辺に前記逆折線を介して連設され、前記第2側壁の裏面に重なる第2側面部(23B)と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の包装箱。
【請求項4】
前記周壁、前記内フラップおよび前記外フラップは、段ボールシートで構成され、
前記側面部の前記逆折線の反対側となる自由端側の領域には、前記段ボールシートを厚み方向に潰した段潰し部(27)が形成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物の角部を保護することができる包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被梱包物を保持する緩衝部を設けた組立箱が開示されている。緩衝部は、内フラップを二分割し、夫々分割された内フラップを折り畳んだときに組立箱の内部の隅角部に形成されていた。緩衝部は中空の三角柱状に形成され、緩衝部の上面には被梱包物の角部が嵌合する凹部が凹設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-326959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した組立箱では、三角柱状の緩衝部を形成するために、分割された内フラップの多数の部分を所定の順番で折り曲げる必要があった。従って、上記した組立箱では、緩衝部を簡単に組み立てることができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、簡単に緩衝構造を形成することができる包装箱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するため、本発明に係る包装箱は、一対の第1側壁と一対の第2側壁とを交互に連ねて筒状に形成された周壁と、一対の前記第1側壁の端部に連設され、内向きに折曲可能な一対の内フラップと、一対の前記第2側壁の端部に連設され、内向きに折り曲げられて前記内フラップに重なり前記周壁の開口面の一部または全部を塞ぐ一対の外フラップと、を備え、前記内フラップは、被包装物の角部を保護するための緩衝構造を形成する少なくとも1つの緩衝部を有し、前記緩衝部は、前記第1側壁との境界と前記第2側壁に沿った前記内フラップの一辺とが直角を成す直角三角形に形成された第1平面部と、前記第1平面部と共通の斜辺に正折線を介して連設され、前記正折線を軸として前記第1平面部と線対称となる直角三角形を成す第2平面部と、前記第2平面部の直角を成す2辺のうち少なくとも何れか1辺に逆折線を介して連設された側面部と、を含み、前記第2平面部が前記正折線に沿って折り返されて前記第1平面部に積層される過程において、前記側面部は、前記第1側壁と前記第2側壁のうち少なくとも一方の裏面に摺接しながら前記逆折線に沿って折れ曲がり、前記第1側壁と前記第2側壁のうち少なくとも一方の裏面に圧力をもって重ねられた圧接状態になることで、前記第2平面部を前記第1平面部に積層した積層状態に保持し、積層状態となった前記第2平面部および圧接状態となった前記側面部は、前記被包装物の角部に接触することで前記被包装物の角部を保護する。
【0007】
この場合、前記内フラップには、前記第1側壁との境界から前記内フラップの先端に向かって突出した接続面部が形成され、前記緩衝部は、前記内フラップの先端から前記接続面部まで延びた切断線に沿って前記内フラップを分割することで形成され、前記第1平面部は、前記第1側壁と前記接続面部とに連設されたことが好ましい。
【0008】
この場合、前記側面部は、前記第2平面部の直角を成す一方の辺に前記逆折線を介して連設され、前記第1側壁の裏面に重なる第1側面部と、前記第2平面部の直角を成す他方の辺に前記逆折線を介して連設され、前記第2側壁の裏面に重なる第2側面部と、を含むことが好ましい。
【0009】
この場合、前記周壁、前記内フラップおよび前記外フラップは、段ボールシートで構成され、前記側面部の前記逆折線の反対側となる自由端側の領域には、前記段ボールシートを厚み方向に潰した段潰し部が形成されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単に緩衝構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る包装箱を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る包装箱のブランクを示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る包装箱のブランクの一部を拡大して示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る包装箱の緩衝部を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る包装箱の緩衝構造を形成する過程を説明する斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る包装箱の緩衝構造を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る包装箱に被包装物を収容する過程を説明する斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る包装箱の緩衝構造と被包装物の角部との関係を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示す「Fr」は「前」を示し、「Rr」は「後」を示し、「L」は「左」を示し、「R」は「右」を示し、「U」は「上」を示し、「D」は「下」を示している。前後方向は左右方向に直交し、上下方向は前後方向と左右方向とに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
[包装箱の概要]
図1および図2を参照して、包装箱1の構成について説明する。図1は包装箱1を示す斜視図である。図2は包装箱1のブランク5を示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、包装箱1は、略直方体状に形成されている。包装箱1は、略角筒状の周壁1Wの上端面および下端面を閉じることで封緘されるA式の箱である。包装箱1の内部には、略直方体状の被包装物90が収容される(図7参照)。
【0015】
包装箱1は、図2に示すブランク5を組み立てることで形成される。包装箱1(ブランク5)は、例えば、波状の中しん9Aの表裏に表ライナ9Bと裏ライナ9C(図4参照)とを貼り付けた紙製の両面段ボールシートから形成されている。ブランク5は、例えば、一枚の段ボールシートを抜型等で打ち抜いて形成されている。なお、図2(および図3)は、表ライナ9B側(包装箱1の外面側)を示している。本明細書では、段ボールの中しん9Aと平行な方向を「段方向」と呼び、段方向(中しん9A)に直交する方向を「流れ方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「段方向」を示し、「Y」は「流れ方向」を示している。また、本明細書では、方向や位置を示す用語は、包装箱1を組み立てた状態(組立状態)における方向や位置を指している。
【0016】
[ブランク]
図2に示すように、ブランク5は、一対の第1側壁10Aと、一対の第2側壁10Bと、一対の上内フラップ11と、一対の上外フラップ12と、一対の下内フラップ13(内フラップ)と、一対の下外フラップ14(外フラップ)と、を含んでいる。
【0017】
<端壁,側壁>
一対の第1側壁10Aと一対の第2側壁10Bとは、第1折曲線L1を介して流れ方向の一方から他方に向かって交互に連設されている。第1側壁10Aと第2側壁10Bとは、略長方形状に形成されている。詳細には、第2側壁10Bは、第1側壁10Aよりも流れ方向に長い略長方形状に形成されている。第2側壁10Bの流れ方向の他方の端部には、第1罫線L1を介して継代片15が連設されている。
【0018】
<上内フラップ,上外フラップ>
一対の上内フラップ11は、第2折曲線L2を介して一対の第1側壁10Aの段方向の一端部(上端部)に連設されている。上内フラップ11は略長方形状に形成され、その段方向の寸法(延出寸法)は第1側壁10Aの流れ方向の寸法の略半分に設定されている。一対の上外フラップ12は、第2折曲線L2を介して一対の第2側壁10Bの段方向の一端部(上端部)に連設されている。上外フラップ12は略長方形状に形成され、その段方向の寸法(延出寸法)は上内フラップ11の延出寸法と略同一である。
【0019】
<下内フラップ,下外フラップ>
一対の下内フラップ13は、第3折曲線L3を介して一対の第1側壁10Aの段方向の他端部(下端部)に連設されている。詳細は後述するが、各々の下内フラップ13は、被包装物90の角部91を保護するための緩衝構造18を形成する2つの緩衝部17を有している。下内フラップ13の概形は、上内フラップ11と略同一形状に形成されている。下内フラップ13の流れ方向の中央部には、先端(自由端)から基端に向かって略M字状の切欠き(凹み)が凹設されている。一対の下外フラップ14は、第3折曲線L3を介して一対の第2側壁10Bの段方向の他端部(下端部)に連設されている。下外フラップ14は、上外フラップ12と略同一形状に形成されている。
【0020】
なお、第1~第3罫線L1~L3は、段ボールシートを裏ライナ9C側から厚み方向に直線状に潰した汎用罫線である。汎用罫線は、裏ライナ9Cを内側に向けるように段ボールシートを折曲させる(正折りする)機能を有している。上記した第1~第3罫線L1~L3は、汎用罫線に限らず、汎用罫線上に複数の切目を所定間隔に形成したリード罫線等、段ボールシートを折り曲げるための線であれば如何なるものでもよい。
【0021】
次に、図3を参照して、下内フラップ13の詳細について説明する。図3はブランク5の一部を拡大して示す平面図である。なお、一対の下内フラップ13は同一構造であるため、以下、1つの下内フラップ13について説明する。
【0022】
下内フラップ13には、接続面部16と、一対の緩衝部17とが形成されている。
【0023】
<接続面部>
接続面部16は、第3折曲線L3(第1側壁10Aとの境界)から下内フラップ13の先端に向かって突き出すように形成されている。接続面部16は、下内フラップ13の流れ方向の略中央部にて略半円形状に形成されている。
【0024】
<緩衝部>
一対の緩衝部17は、下内フラップ13の先端(自由端)から接続面部16(の頂点)まで延びた切断線20に沿って下内フラップ13を分割することで形成されている。切断線20は、複数の切目と複数の継目とを交互に並設した線である。なお、一対の緩衝部17は切断線20を対称軸として線対称となる形状であるため、以下、1つの緩衝部17について説明する。
【0025】
緩衝部17は、第1平面部21と、第2平面部22と、第1側面部23Aと、第2側面部23Bと、を含んでいる。
【0026】
(第1平面部)
第1平面部21は、下内フラップ13の基端側、且つ流れ方向の外側に形成されている。第1平面部21は、第3折曲線L3と下内フラップ13の流れ方向の外縁(組立状態において第2側壁10Bに沿った下内フラップ13の一辺)とが直角を成す略直角三角形に形成されている。第1平面部21の段方向の基端は第3折曲線L3を介して第1側壁10Aに連設され、第1平面部21の流れ方向の内端は接続面部16に連設されている。
【0027】
(第2平面部)
第2平面部22は、第1平面部21と共通の斜辺に正折線25を介して連設されている。また、第2平面部22は、正折線25を軸として第1平面部21と線対称となる直角三角形に形成されている。第2平面部22の段方向の基端は、湾曲した切目20Aを介して接続面部16に隣接している。
【0028】
正折線25は、下内フラップ13の流れ方向の外縁から接続面部16までの間に斜めに形成されている。正折線25は、複数(例えば3つ)の切目線25Aと複数(例えば2つ)の額縁部25Bとを交互に並設した線である。切目線25Aは、段ボールシートの厚み方向に刃物を貫通させて形成された線である。額縁部25Bは、切目線25Aの端部にて切目線25Aに直交する向きに形成された一対の終端線25Cと、一対の終端線25Cの端部同士を結ぶように形成された一対の折返し線25Dと、を有している。終端線25Cは、段ボールシートの厚み方向に刃物を貫通させて形成された線である。折返し線25Dは、切目線25Aと平行に形成された汎用罫線である。
【0029】
(第1側面部)
第1側面部23Aは、第2平面部22の流れ方向の端部(第2平面部22の直角を成す一方の辺)に逆折線26を介して連設されている。第1側面部23Aは、逆折線26と切断線20との間にて切断線20を斜辺とする直角三角形に形成されている。第1側面部23Aの段方向の基端は、湾曲した切目20Aを介して接続面部16に隣接している。また、第1側面部23Aの切断線20側の領域(逆折線26の反対側となる自由端側の領域)には、段ボールシートを厚み方向に潰した段潰し部27が形成されている(図3の斜線部分参照)。
【0030】
(第2側面部)
第2側面部23Bは、第2平面部22の段方向の先端部(第2平面部22の直角を成す他方の辺)に逆折線26を介して連設されている。第2側面部23Bは、逆折線26を斜辺とする直角三角形(正確には四角形)に形成されている。第2側面部23Bの逆折線26の反対側となる自由端は、下外フラップ14の先端と揃っている。また、第2側面部23Bの逆折線26の反対側となる自由端側の領域には、段潰し部27が形成されている(図3の斜線部分参照)。
【0031】
なお、逆折線26は、段ボールシートを表ライナ9B側から厚み方向に直線状に潰した逆罫線と、逆罫線上に切り込まれたミシン刃と、によって構成されている。逆折線26は、表ライナ9Bを内側に向けるように段ボールシートを折曲させる(逆折りする)機能を有している。逆折線26は、上記の構成に限らず、逆罫線のみ、ミシン刃のみとしてもよいし、その他、段ボールシートを折り曲げるための線であれば如何なるものでもよい。
【0032】
なお、本明細書において、第1平面部21、第2平面部22、第1側面部23Aおよび第2側面部23Bが、「直角三角形に形成される」とは、厳密な意味で直角三角形であることを要求するものではなく、概ね1つの内角が直角を成す三角形に形成されていることを意味する。また、第1平面部21と第2平面部22とが「線対称となる」とは、厳密な意味で線対称であることを要求するものではなく、多少の誤差を許容する意味である。
【0033】
[包装箱の組立]
次に、図1図4ないし図8を参照して、包装箱1の組立手順(封緘手順)について説明する。図4は緩衝部17を示す斜視図である。図5は緩衝構造18を形成する過程を説明する斜視図である。図6は緩衝構造18を示す斜視図である。図7は包装箱1に被包装物90を収容する過程を説明する斜視図である。図8は緩衝構造18と被包装物90の角部91との関係を説明する断面図である。なお、包装箱1は、作業者によって手作業で組み立てられてもよいし、製函機によって自動または半自動で組み立てられてもよい。ここでは、一例として、作業者が包装箱1を組み立てる場合について説明する。なお、包装箱1の組み立て前の初期状態として、ブランク5の流れ方向の両外側に位置する第1側壁10Aと第2側壁10Bとが第1折曲線L1で折り曲げられ、継代片15が第1側壁10Aの内面に接着され、包装箱1は二重に折り畳まれていることとする。
【0034】
まず、作業者は、一対の第1側壁10Aと一対の第2側壁10Bとを第1折曲線L1に沿って略直角に折り曲げ、上下両端面を開口した略角筒状の周壁1Wを形成する(図7参照)。
【0035】
続いて、作業者は、一対の下内フラップ13を第3折曲線L3に沿って周壁1Wの内側に折り曲げた後、一対の下外フラップ14を第3折曲線L3に沿って周壁1Wの内側に折り曲げる。この状態で、一対の下内フラップ13の先端部は離間しており、一対の下外フラップ14の先端部は突き合わされている(図4参照)。一対の下外フラップ14は、一対の下内フラップ13に重なり周壁1Wの下端の開口面の全部を塞いでいる(図4および図7参照)。作業者は、一対の下外フラップ14の突き合せ部に沿って粘着テープ(図示せず)を貼り付ける。以上によって、包装箱1の底面が形成される。
【0036】
次に、作業者は、包装箱1の底面の四隅に4つの緩衝構造18を形成する。なお、4つの緩衝構造18の形成手順は同一であるため、以下、1つの緩衝構造18の形成手順について説明する。また、第1側壁10Aと第2側壁10Bとに共通する説明では、単に「側壁10」と呼び、符号には算用数字のみを用いることとする。これと同様に、第1側面部23Aと第2側面部23Bとに共通する説明では、単に「側面部23」と呼び、符号には算用数字のみを用いることとする。
【0037】
作業者は、下内フラップ13を切断線20に沿って切断して一対の緩衝部17を形成する。続いて、図5に示すように、作業者は、緩衝部17の第2平面部22を把持し、第1平面部21に重ねるように第2平面部22を正折線25に沿って折り返す。第2平面部22は、切目線25Aで第1平面部21から分離され、各々の折返し線25Dで略直角に折れることで、略180度に折り返されることになる。
【0038】
ここで、図5に示すように、第2平面部22を折り返し始めると、第2側面部23Bの流れ方向の外端が第2側壁10Bの裏面(裏ライナ9C)上を摺接し始め、その摩擦力によって第2側面部23Bが逆折線26に沿って逆折れし始める。第2平面部22の折り返しが進むと、第1側面部23Aが流れ方向の中央側が第1側壁10Aの裏面(裏ライナ9C)に接触し始め、さらに第2平面部22の折り返しが進むに従って、第1側面部23Aの段方向の先端が第1側壁10Aの裏面上を摺接し始め、その摩擦力によって第1側面部23Aが逆折線26に沿って逆折れし始める。このように、第2平面部22の折り返しに伴って、側面部23は、側壁10に接触しながら移動して自然(自動的)に逆折線26に沿って逆折りされる。
【0039】
図6に示すように、第2平面部22が第1平面部21に重なるまで折り返されると、第1側面部23Aは逆折線26で略直角に折れて第1側面10Aの裏面に圧力をもって重なり(圧接し)、第2側面部23Bは逆折線26で略直角に折れて第2側面10Bの裏面に圧力をもって重なる(圧接する)。このように、側面部23は、側壁10の裏面に圧力をもって重ねられた圧接状態になることで、第2平面部22は、折目に作用する復元力によって元に戻ることを阻止される。すなわち、側面部23は、圧接状態になることで、第2平面部22を第1平面部21に積層した積層状態に保持する機能を有している。以上によって、被包装物90の角部91を保護するための緩衝構造18が完成する。なお、作業者は、以上と同様の手順で、他の緩衝部17を折り曲げ、包装箱1(周壁1W)の底面の四隅に4つの緩衝構造18を形成する。
【0040】
この緩衝構造18では、第2平面部22が第1平面部21に重なって二重底構造を構成している。正確には、第1平面部21が下外フラップ14に重なっているため、緩衝構造18における底部は三重底構造を構成している(図6および図8参照)。また、緩衝構造18では、第1側面部23Aが第1側壁10Aに重なって二重底構造を構成し、第2側面部23Bが第2側壁10Bに重なって二重底構造を構成している(図6および図8参照)。
【0041】
次に、図7に示すように、作業者は、被包装物90を上方から包装箱1(周壁1W)の内部に入れ、被包装物90の下部の4つの角部91を4つの緩衝構造18に配置する。詳細には、図8に示すように、被包装物90の各角部91は、積層状態となった第2平面部22上に配置される。また、圧接状態となった第1側面部23Aと第2側面部23Bとは、被包装物90の角部91の側面に接触する。このように、積層状態となった第2平面部22および圧接状態となった側面部23は、被包装物90の角部91(を構成する3面)に接触することで被包装物90の角部91を保護する。
【0042】
次に、作業者は、被包装物90の上部の4つの角部91に緩衝材(図示せず)を被せ、一対の上内フラップ11を第2折曲線L2に沿って周壁1Wの内側に折り曲げた後、一対の上外フラップ12を第2折曲線L2に沿って周壁1Wの内側に折り曲げる(図1参照)。最後に、作業者は、一対の上外フラップ12の突き合せ部に沿って粘着テープを貼り付ける。
【0043】
以上によって、包装箱1の天面が形成され、包装箱1は封緘された状態になる(図1参照)。なお、上下の各外フラップ12,14は、粘着テープに代えて、接着剤によって各内フラップ11,13の表面に接着されてもよい。下外フラップ14を下内フラップ13に接着する場合、緩衝部17の折り曲げを阻害しないように、接続面部16や第1平面部21に接着剤を塗布する。
【0044】
以上説明した本実施形態に係る包装箱1では、第2平面部22が正折線25に沿って折り返されて第1平面部21に積層される過程において、側面部23は、側壁10の裏面に摺接しながら逆折線26に沿って折れ曲がる構成とした。また、側面部23が側壁10の裏面に圧力をもって重ねられた圧接状態になることで、第2平面部22が第1平面部21に積層した積層状態に保持される構成とした。そして、第2平面部22が第1平面部21に重なって二重底構造を構成し、側面部23が側壁10に重なって二重壁構造を構成することで、包装箱1の底面の四隅に緩衝構造18が形成されていた。この構成によれば、第2平面部22を折り返すだけで、側面部23が自動的に圧接状態になり、包装箱1に緩衝構造18を形成することができる。また、側面部23が圧接状態になることで、第2平面部22が積層状態に保持されるため、折目に作用する復元力によって緩衝構造18が解体されることを抑制することができる。以上のように、被包装物90の角部91を保護するための緩衝構造18を簡単に形成することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る包装箱1では、下内フラップ13の基端に接続面部16が設けられ、一対の第1平面部21が連設されていた。仮に、接続面部16が省略(削除)され、切断線20が下内フラップ13の先端から基端まで延設された場合、下内フラップ13は完全に二分割にされてしまう。この場合、包装箱1の組立時において、作業者は、二分割にされた下内フラップ13を別々に折り曲げなければならず、組立作業を迅速に行うことができないという問題が生じる。これに対し、本実施形態に係る包装箱1によれば、下内フラップ13の基端に位置する接続面部16には切断線20が形成されていないため、下内フラップ13が先端から基端まで完全に二分割にされることを防止することができる。これにより、包装箱1の組立時において、作業者は、分割されていない下内フラップ13の基部全体を1度に折り曲げることができ、切断線20の無い一般的な下内フラップと同じ手順で組立作業を迅速に行うことができる。なお、上記のように、接続面部16が設けられることが好ましいが、本発明は、接続面部16を省略(削除)することを妨げない。
【0046】
また、本実施形態に係る包装箱1では、第2平面部22が被包装物90の角部91の底面に接触し、第1側面部23Aと第2側面部23Bとが被包装物90の角部91において隣接する2面に接触する構成とした。この構成によれば、被包装物90の角部91を構成する3面を保護することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る包装箱1によれば、段潰し部27は、他の部分に比べて薄く形成されているため、被包装物90を包装箱1の内部に収容する際に、被包装物90が側面部23の先端(自由端)に干渉することを抑制することができる。これにより、包装箱1の内部に被包装物90を円滑に収容することができる。なお、段潰し部27は、段ボールシートの表裏どちらの面から中しん9Aを潰しても構わないが、緩衝構造18への被包装物90の入れ易さを考慮すると、表側(表ライナ9A側)から中しん9Aを潰すことが好ましい。
【0048】
なお、本実施形態に係る包装箱1では、第2平面部22の直角を成す2辺に第1側面部23Aと第2側面部23Bとが連設されていたが、本発明はこれに限定されない。第1側面部23Aと第2側面部23Bの何れか一方が省略(削除)されてもよい(図示せず)。すなわち、側面部23は、第2平面部22の直角を成す2辺のうち少なくとも何れか1辺に逆折線26を介して連設されていればよい。この場合、側面部23は、第1側壁10Aと第2側壁10Bのうち少なくとも一方の裏面に圧力をもって重ねられた圧接状態になることで第2平面部22を積層状態に保持する。また、第1側面部23Aと第2側面部23Bは、直角三角形に形成されていたが、これに限らず、直角三角形以外の三角形状、四角形状、半円形状等、他の形状に形成されてもよい(図示せず)。
【0049】
また、本実施形態に係る包装箱1では、直方体状の被包装物90の4つの角部91を保護するために、4つの緩衝部17(緩衝構造18)が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。緩衝部17(緩衝構造18)の数は、被包装物90の形状に応じて増減してもよい。例えば、切断線20で二分割にした下内フラップ13のうち何れか一方のみを緩衝部17としてもよい(図示せず)。
【0050】
また、本実施形態に係る包装箱1では、一対の上内フラップ11と一対の下内フラップ13とは、それらの先端同士を離間させていたが、これに限らず、それらの先端同士を突き合せてもよい(図示せず)。また、一対の上外フラップ12と一対の下外フラップ14とは、周壁1Wの開口面の全部を塞いでいたが、これに限らず、当該開口面の一部を塞ぐように形成されてもよい(図示せず)。つまり、一対の下外フラップ14等は、その先端部を離間させるように形成されてもよい(図示せず)。
【0051】
また、本実施形態に係る包装箱1では、緩衝部17(緩衝構造18)が下内フラップ13に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。緩衝部17は、下内フラップ13に代えて、上内フラップ11に設けられてもよい(図示せず)。緩衝部17を上内フラップ11に設けた場合、包装箱1は天地(上下)を逆にして組み立てられる(封緘される)。他にも、緩衝部17は、上内フラップ11と下内フラップ13の両方に設けられてもよい(図示せず)。緩衝部17を上下両方の内フラップ11,13に設けた場合の包装箱1の組立手順としては、例えば、下内フラップ13の緩衝構造18を形成して被包装物90を収容した後、上内フラップ11を第2折曲線L2で折り曲げる前に上内フラップ11の緩衝構造18を形成する。そして、側面部23を、側壁10と被包装物90との隙間に差し込むことで、緩衝構造18を被包装物90の上部の角部91に接触させる。
【0052】
また、本実施形態に係る包装箱1は、所謂A式の段ボール箱であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、包装箱1は、上内フラップ11や上外フラップ12を省略(削除)し、周壁1Wの上端面を開口させたトレイ状に構成されてもよい(図示せず)。
【0053】
また、本実施形態に係る包装箱1は、紙製の両面段ボールシートで形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、段ボールシートは、中しん9Aの片面にライナを貼り付けた片面段ボールシートを両面段ボールシートに貼り合せた複両面段ボールシートであってもよい。また、例えば、包装箱1は、紙製の段ボールシートに代えて、厚紙や樹脂製の板等で形成されていてもよい。
【0054】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る包装箱および包装箱の折り畳み方法における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 包装箱
1W 周壁
10 側壁
10A 第1側壁
10B 第2側壁
13 下内フラップ(内フラップ)
14 下外フラップ(外フラップ)
16 接続面部
17 緩衝部
18 緩衝構造
20 切断線
21 第1平面部
22 第2平面部
23 側面部
23A 第1側面部
23B 第2側面部
25 正折線
26 逆折線
27 段潰し部
90 被包装物
91 角部
L3 第3折曲線(境界)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8