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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】地盤凍結工法、凍結管ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20230206BHJP
   E21D 9/04 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
E02D3/115
E21D9/04 C
E21D9/04 F
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020065534
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021161787
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(73)【特許権者】
【識別番号】596011792
【氏名又は名称】大東工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】清時 健士
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 靖典
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-344460(JP,A)
【文献】特開2016-160717(JP,A)
【文献】特開2016-118024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0277017(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に凍結管を設置する設置工程と、
前記凍結管内に、供給管、回収管、流体管、および複数のパッカーを挿入して、前記パッカーを前記凍結管の管軸方向の所定位置に配置する内挿工程と、
前記流体管を通して前記パッカー内に流体を流入させて、前記凍結管を閉塞するように前記複数のパッカーを膨張させる膨張工程と、
前記複数のパッカーの膨張により形成される前記凍結管内の閉塞区間に、前記供給管を通して冷却材を供給するとともに、前記閉塞区間から前記回収管を通して前記冷却材を回収することにより、前記冷却材を循環させて前記閉塞区間の周囲の地盤を凍結させる循環凍結工程と、
前記パッカー内の前記流体を前記流体管を通して流出させて、前記複数のパッカーを収縮させる収縮工程と、
前記凍結管内で、前記供給管、前記回収管、前記流体管、および収縮した前記複数のパッカーを前記管軸方向に移動させる移動工程と、を含むことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤凍結工法において、
前記設置工程、前記内挿工程、前記膨張工程、前記循環凍結工程、前記収縮工程、および前記移動工程を順に実行した後、前記膨張工程、前記循環凍結工程、前記収縮工程、および前記移動工程を順に繰り返し実行する、ことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の地盤凍結工法において、
前記内挿工程で、前記複数のパッカーと連結された線材を前記凍結管内に挿入して、当該線材の少なくとも一方の端部を前記凍結管から導出し、
前記内挿工程または前記移動工程で、前記線材の導出された端部を引っ張ることにより、前記供給管、前記回収管、前記流体管、および前記複数のパッカーを、前記凍結管内で前記管軸方向に移動させる、ことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の地盤凍結工法において、
少なくとも前記膨張工程より前に、前記凍結管内に不凍材を充満させる充満工程を実行する、ことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の地盤凍結工法において、
前記設置工程で、前記地盤中に埋設された大径管内に、当該大径管の管軸方向と平行に前記凍結管を1つ以上設置し、
その後、少なくとも前記循環凍結工程より前に、前記大径管内に充填材を充填する充填工程を実行する、ことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項6】
請求項5に記載の地盤凍結工法において、
前記設置工程で、前記凍結管から分岐して、前記大径管の管軸方向に対して交差する方向または平行な方向に延びて、前記凍結管に連結される分岐凍結管を、前記大径管内に所定の間隔で複数設置し、
前記凍結管と前記分岐凍結管との分岐箇所を含む前記凍結管内の一区間の両側に前記パッカーを配置するとともに、前記凍結管と前記分岐凍結管との連結箇所を含む前記凍結管内の他区間の両側にも前記パッカーを配置し、
次に、前記膨張工程で、前記各パッカーを膨張させて、前記凍結管内の前記一区間と前記他区間とを閉塞し、
その後、前記循環凍結工程で、前記凍結管内の前記一区間と前記他区間と前記分岐凍結管内に対して前記冷却材を循環させる、ことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項7】
地盤中に設置される凍結管と、
前記凍結管内に冷却材を供給する供給管と、
前記凍結管内の冷却材を回収する回収管と、
前記凍結管を閉塞するパッカーと、
前記パッカー内に流体を流入させる流体管と、を備え、
前記パッカーにより前記凍結管を閉塞した状態で、前記供給管を通して前記冷却材を前記凍結管内に供給するとともに、前記凍結管内から前記回収管を通して前記冷却材を回収することにより、前記冷却材を循環させて前記凍結管の周囲の地盤を凍結させる凍結管ユニットにおいて、
前記パッカーは、複数のパッカーからなり、前記流体管を通して前記流体が流入することにより膨張して前記凍結管を閉塞するとともに、前記流体管を通して前記流体が流出することにより収縮し、
前記供給管、前記回収管、前記流体管、および前記複数のパッカーは、前記凍結管内に挿入されて、当該凍結管の管軸方向の所定位置に配置され、
前記供給管は、前記複数のパッカーにより閉塞された前記凍結管内の閉塞区間において、一方のパッカーの近傍で当該閉塞区間と連通し、
前記回収管は、前記閉塞区間において、他方のパッカーの近傍で当該閉塞区間と連通し、
前記パッカーが収縮した状態で、前記凍結管内において、前記供給管、前記回収管、前記流体管、および前記パッカーが前記管軸方向に移動可能になる、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の凍結管ユニットにおいて、
前記凍結管内に挿入される保持台車をさらに備え、
前記保持台車は、前記供給管、前記回収管、または前記流体管を個別に保持する複数の保持部と、前記凍結管の内周面を前記管軸方向に転動する車輪とを有している、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の凍結管ユニットにおいて、
前記パッカーと連結され、前記凍結管内に前記管軸方向に挿入され、少なくとも一方の端部が前記凍結管から導出される線材をさらに備えた、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の凍結管ユニットにおいて、
前記凍結管の先端側に設置され、前記線材が掛けられる滑車をさらに備え、
前記線材は、前記滑車により方向転換された一端部が、前記凍結管の最も先端側に配置される前記パッカーに連結されるとともに、他端部が前記凍結管の後端側から導出される、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の凍結管ユニットにおいて、
前記パッカー内に設けられ、前記パッカーを収縮方向に付勢する弾性部材をさらに備えた、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項12】
請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の凍結管ユニットにおいて、
前記パッカーは、
前記供給管、前記回収管、または前記流体管が連結されるフレームと、
前記フレームの周面を覆うチューブ状のラバーと、
前記ラバーの両端部を前記フレームの周面にそれぞれ保持する複数の保持部材と、を有し、
前記複数の保持部材のうち少なくとも一つは、前記フレームの軸方向へ移動可能になっている、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項13】
請求項7ないし請求項12のいずれかに記載の凍結管ユニットにおいて、
前記凍結管は、地盤中に埋設された大径管内に、当該大径管の管軸方向と平行に設置され、
前記大径管内に所定の間隔で複数設置され、前記凍結管から分岐して、前記管軸方向に対して交差する方向または平行な方向に延びて、前記凍結管に連結される分岐凍結管をさらに備え、
前記パッカーは、前記凍結管と前記分岐凍結管との分岐箇所を含む前記凍結管内の一区間の両側に配置されるとともに、前記凍結管と前記分岐凍結管との連結箇所を含む前記凍結管内の他区間の両側に配置されて、それぞれ膨張することにより前記一区間と前記他区間とを閉塞し、
前記供給管は、前記一区間に連通し、
前記回収管は、前記他区間に連通し、
前記供給管と前記回収管を通して、前記一区間と前記他区間と前記分岐凍結管内に対して前記冷却材を循環させる、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載の凍結管ユニットにおいて、
前記凍結管は、前記大径管内に複数設置され、
前記分岐凍結管は、一方の前記凍結管から分岐して、他方の前記凍結管に連結され、
前記一方の凍結管内に前記供給管、前記流体管、および前記複数のパッカーが挿入され、
前記他方の凍結管内に前記回収管、前記流体管、および前記複数のパッカーが挿入される、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【請求項15】
地盤中に凍結管を設置する設置工程と、
前記凍結管内に、供給管、流体管、およびパッカーを挿入して、前記パッカーを前記凍結管の管軸方向の所定位置に配置する内挿工程と、
前記流体管を通して前記パッカー内に流体を流入させて、前記凍結管の予め閉塞されていない管軸方向の一方側を閉塞するように前記パッカーを膨張させる膨張工程と、
前記パッカーの膨張により形成される前記凍結管内の閉塞区間に、前記供給管を通して冷却材を供給するとともに、前記閉塞区間から前記冷却材を回収することにより、前記冷却材を循環させて前記閉塞区間の周囲の地盤を凍結させる循環凍結工程と、
前記パッカー内の前記流体を前記流体管を通して流出させて、前記パッカーを収縮させる収縮工程と、
前記凍結管内で前記供給管、前記流体管、および収縮した前記パッカーを管軸方向に移動させる移動工程と、を含むことを特徴とする地盤凍結工法。
【請求項16】
地盤中に設置される凍結管と、
前記凍結管内に冷却材を供給する供給管と、
前記凍結管内の冷却材を回収する回収管と、
前記凍結管を閉塞するパッカーと、
前記パッカー内に流体を流入させる流体管と、を備え、
前記パッカーにより前記凍結管を閉塞した状態で、前記供給管を通して前記冷却材を前記凍結管内に供給するとともに、前記凍結管内から前記回収管を通して前記冷却材を回収することにより、前記冷却材を循環させて前記凍結管の周囲の地盤を凍結させる凍結管ユニットにおいて、
前記供給管および前記流体管は、前記パッカーに連結された状態で前記凍結管内に挿入され、
前記パッカーは、前記流体管を通して前記流体が流入し膨張することで、前記凍結管内の予め閉塞されていない管軸方向の一方側を閉塞して、前記凍結管内に閉塞区間を形成するとともに、前記流体管を通して前記流体が流出することにより収縮し、
前記閉塞区間において、前記管軸方向の一方の端部の近傍で前記供給管が前記閉塞区間と連通し、前記管軸方向の他方の端部の近傍で前記回収管が前記閉塞区間と連通し、
前記パッカーが収縮した状態で、前記凍結管内において、前記供給管、前記流体管、および前記パッカーが前記管軸方向に移動可能になる、ことを特徴とする凍結管ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に設置した凍結管に冷却材を循環させて、周囲の地盤を凍結させる地盤凍結工法および凍結管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に設置した凍結管に対して、冷凍機で冷却された冷却材(ブライン)を循環させることにより、冷却材の冷熱で凍結管の周囲の地盤を凍結させるブライン循環方式の地盤凍結工法がある。この地盤凍結工法は、近年、たとえば特許文献1および特許文献2に開示されているような、大深度において大断面の地中構造物を構築する際に、周囲の地盤の安定化と止水を図る防護工として採用されている。
【0003】
ブライン循環方式の地盤凍結工法で用いられる凍結管ユニットには、特許文献3の図4に開示されているように、凍結管、供給管、回収管、およびパッカーが備わっている。特許文献3では、凍結管の両端部には、地盤改良用の有孔鋼管が接続されている。凍結管の一方側(先端側)は充填材で閉塞され、他方側は単一のパッカーで閉塞されている。パッカーは凍結管内ではなく、有孔鋼管内に挿入されている。凍結管内の充填材近傍には、供給管の先端部が配置され、パッカーの近傍には、回収管の先端部が配置されている。供給管と回収管の中間部は、パッカーにより保持され、後端部は冷凍機に連結されている。そして、冷凍機で冷却された冷却材を供給管を通して凍結管内の所定区間内に供給し、所定区間内から冷却材を回収管を通して冷凍機へ回収するように、当該冷却材を循環させて、所定区間の周囲の地盤を凍結させる。また、これとは逆に、凍結管の先端側をパッカーで閉塞する工法もある(たとえば特許文献4)。
【0004】
一方、特許文献5には、液化炭酸ガスを地盤中に噴射して、その気化熱により周囲の地盤を凍結させる炭酸ガス噴射方式の地盤凍結工法が開示されている。この地盤凍結工法で用いられる凍結管ユニットには、いわゆるスリーブパイプから成るパイプ材と、パイプ材内に挿入される圧送パイプ、2本の内管、およびパッカーとが備わっている。圧送パイプは、パッカーにより保持されている。2本の内管は、パッカーに連結されている。パッカー、圧送パイプ、および内管は、パイプ材内で管軸方向に移動可能である。パイプ材の所定位置に設けられた噴射孔の近傍に二重パッカーを位置させた後、空気供給源から圧縮空気を一方の内管を通して二重パッカー内に供給して、二重パッカーを膨張させ、パイプ材内の噴射孔に対して管軸方向の両側を二重パッカーで閉塞する(特許文献5の図4参照)。または、パイプ材内の噴射孔に対して管軸方向の一方側を単一のパッカーで閉塞する(同図5参照)。そして、圧送パイプを通してパッカー内またはパイプ材内に液化炭酸ガスを供給する。すると、液化炭酸ガスが噴射孔からゴムスリーブを押し上げて、周囲の地盤中に噴射する。この噴射した液化炭酸ガスの気化熱により、パイプ材の周囲の地盤が凍結される。パッカー内の圧縮空気は、他方の内管を通して排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-31810号公報
【文献】特許第6257814号公報
【文献】特開2005-344460号公報
【文献】特開2019-183441号公報
【文献】特開2003-239270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
長い区間に渡って地盤を凍結させるには、地盤中に長距離に渡って凍結管を設置する必要がある。しかし、凍結管内の長い内部空間に対して一度に冷却材を循環した場合には、温度分布が生じて周囲の凍結状態にムラが生じる可能性があり、さらには一度に多くの冷熱が必要となるという問題もある。また、長期間にわたって凍結管内に冷却材を循環し続けることにより、地盤の安定強化や止水のために必要な凍土に対して、過大な凍土を造成してしまうことが懸念される。
【0007】
また、たとえば特許文献3のように、地質に応じて、地盤中の所定の箇所だけを凍結させたり、周囲環境の変化やその他の事情に応じて、地盤中の凍結箇所や凍結範囲を変更したりする場合、地盤中に凍結管を設置した後では、凍結箇所や凍結範囲を変更することは困難である。
【0008】
本発明の課題は、地盤をムラなく効率よく凍結させ、かつ地盤の凍結箇所や凍結範囲を容易に変更することができる地盤凍結工法および凍結管ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地盤凍結工法は、地盤中に凍結管を設置する設置工程と、凍結管内に、供給管、回収管、流体管、および複数のパッカーを挿入して、パッカーを凍結管の管軸方向の所定位置に配置する内挿工程と、流体管を通してパッカー内に流体を流入させて、凍結管を閉塞するように複数のパッカーを膨張させる膨張工程と、複数のパッカーの膨張により形成される凍結管内の閉塞区間に、供給管を通して冷却材を供給するとともに、閉塞区間から回収管を通して冷却材を回収することにより、冷却材を循環させて閉塞区間の周囲の地盤を凍結させる循環凍結工程と、パッカー内の流体を流体管を通して流出させて、複数のパッカーを収縮させる収縮工程と、凍結管内で、供給管、回収管、流体管、および収縮した複数のパッカーを管軸方向に移動させる移動工程とを含む。
【0010】
また、本発明の凍結管ユニットは、地盤中に設置される凍結管と、凍結管内に冷却材を供給する供給管と、凍結管内の冷却材を回収する回収管と、凍結管を閉塞するパッカーと、パッカー内に流体を流入させる流体管とを備えている。パッカーにより凍結管を閉塞した状態で、供給管を通して冷却材を凍結管内に供給するとともに、凍結管内から回収管を通して冷却材を回収することにより、冷却材を循環させて凍結管の周囲の地盤を凍結させる。本発明の凍結管ユニットでは、パッカーは、複数のパッカーからなり、流体管を通して流体が流入することにより膨張して凍結管を閉塞するとともに、流体管を通して流体が流出することにより収縮する。供給管、回収管、流体管、および複数のパッカーは、凍結管内に挿入されて、当該凍結管の管軸方向の所定位置に配置される。供給管は、複数のパッカーにより閉塞された凍結管内の閉塞区間において、一方のパッカーの近傍で当該閉塞区間と連通し、回収管は、上記閉塞区間において、他方のパッカーの近傍で当該閉塞区間と連通している。パッカーが収縮した状態で、凍結管内において、供給管、回収管、流体管、およびパッカーが管軸方向に移動可能になる。
【0011】
上記のような本発明の地盤凍結工法および凍結管ユニットによると、凍結管内に管軸方向に所定の間隔で複数のパッカーを配置し、各パッカーに流体管を通して流体を流入させて、各パッカーを膨張させることで、凍結管内に所定の長さを有した閉塞区間が形成される。そして、この閉塞区間に対して、供給管と回収管を通して冷却材を循環させることにより、冷却材を閉塞区間に隈なく行き渡らせて、閉塞区間の周囲にある所定区間の地盤を確実に凍結させることができる。また、所定区間の地盤の凍結が完了すると、パッカー内の流体を流体管を通して流出させて、パッカーを収縮させる。そして、凍結させた所定区間の地盤と隣接する未凍結の地盤で囲まれた凍結管内の所定位置に、供給管、回収管、流体管、およびパッカーを移動させ、その後、上述した膨張工程と循環凍結工程と収縮工程と移動工程とを順に繰り返し実行する。これにより、凍結管が長距離に渡って設置されても、凍結管の周囲にある広範囲の地盤を、所定の区間毎にムラなく効率よく凍結させることが可能となる。また、地質や、周囲環境の変化や、その他の事情に応じて、上述した膨張工程と循環凍結工程と収縮工程と移動工程とを順に繰り返す回数を設定したり、凍結管内で供給管、回収管、流体管、およびパッカーを移動させる移動長を変えたり、パッカーを配置する位置を変えたりすることができる。このため、地盤中に凍結管を設置した後であっても、地盤中の所定の箇所だけを凍結させることが可能となり、また、地盤中の凍結箇所や凍結範囲を容易に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の地盤凍結方法および凍結管ユニットによれば、地盤をムラなく効率よく凍結させ、かつ地盤の凍結箇所や凍結範囲を容易に変更することができる。また、長期間にわたって凍結管内に冷却材を循環し続ける必要がある場合においても、凍結管の長手方向の一部分を限定的に冷却することができるため、余分な凍土成長を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】大断面の地中構造物の構築例を示した図である。
図2】大断面の地中構造物の構築例を示した図である。
図3】ブライン循環方式の地盤凍結工法の設備構成図である。
図4】本発明の第1実施形態による凍結管ユニットを示した図である。
図5図4の凍結管ユニットの横断面図である。
図6図5のパッカー近傍の拡大図である。
図7図5の凍結管の先端部の断面図である。
図8図5の保持台車近傍の断面図である。
図9】本発明の第2実施形態による凍結管ユニットを示した図である。
図10図9の凍結管ユニットの横断面図である。
図11】本発明の第3実施形態による凍結管ユニットを示した図である。
図12】本発明の第4実施形態による凍結管ユニットを示した図である。
図13図12の凍結管ユニットの横断面図である。
図14】地中構造物の他の構築例を示した図である。
図15】地中構造物の他の構築例を示した図である。
図16】本発明の第5実施形態による凍結管ユニットを示した図である。
図17図16の凍結管ユニットを用いた凍結工法の一工程を示した図である。
図18】本発明の第6実施形態による凍結管ユニットを示した図である。
図19図18の凍結管ユニットを用いた凍結工法の一工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0015】
まず、実施形態の地盤凍結工法および凍結管ユニットの適用例を説明する。
【0016】
図1および図2は、大断面の地中構造物1の構築例を示した図である。図1には、地中構造物1の水平断面を示し、図2には、地中構造物1の垂直断面を示している。本例の場合、地中構造物1は、大深度の地盤G中において、車両が走行する本線トンネル2にランプトンネル3を接続する工事を行う前に構築される大断面のトンネルである。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、本線トンネル2の所定箇所の周囲に発進基地4を構築する。また、本線トンネル2の別の所定箇所の周囲に到達基地5を構築し、到達基地5にランプトンネル3を接続する。発進基地4から到達基地5までの距離は、たとえば数百メートル以上である。
【0018】
そして、発進基地4から到達基地5に向かって、公知のシールド工法により、複数のシールド管7、8を環状に設置する(図2参照)。この際、複数の先行シールド管7を設置してから、後行シールド管8を先行シールド管7の一部の管壁を削りながら掘進させて、各先行シールド管7の間に後行シールド管8を設置する。これにより、図2(a)に示すように、トンネル2、3の周囲の地盤G中に、先行シールド管7と後行シールド管8とが交互に埋設されて、トンネル状の外殻シールド1’が形成される。また、後行シールド管8の一部が先行シールド管7に食い込んだ状態となる。
【0019】
次に、各シールド管7、8の周囲の地盤Gを凍結させる凍結工法を行う。この凍結工法の詳細は後述する。凍結工法を行うことで、図1(b)および図2(b)に示すように、外殻シールド1’の周囲に高い強度と止水性能とを有する凍土壁6が形成される。
【0020】
次に、シールド管7、8内を掘削して隣り合うシールド管7、8を連通させた後、図2(c)および図1(c)に示すように、各シールド管7、8を横切るように筒状の覆工体9を構築する。これにより、地中構造物1の構築が完了する。この後、地中構造物1内において所定の工事が行われて、図1(c)に示すように、本線トンネル2にランプトンネル3が接続される。
【0021】
次に、実施形態の地盤凍結工法を実行するための設備構成を説明する。
【0022】
図3は、ブライン循環方式の地盤凍結工法の設備構成図である。凍結管ユニット10は、適宜数設けられていて、図4のようにシールド管7、8内に設置される。凍結管ユニット10の構造と機能の詳細は後述する。冷凍機40と機械室は、たとえば前述の発進基地4または到達基地5に設けられる。冷凍機40には、凝縮器41と冷却器42とコンプレッサ43とが備わっている。
【0023】
機械室に設けられた循環ポンプ45の圧送力により、クーリングタワー44と凝縮器41との間で配管51~53を通して、冷却水が循環される。冷凍機40のコンプレッサ43の圧送力により、凝縮器41と冷却器42との間で配管54~56を通して、冷媒が循環される。循環ポンプ46の圧送力により、冷却器42と凍結管ユニット10との間で配管57~59、中継分岐管60、61、開閉弁62、供給管12b、および回収管13などを通して、冷却材(ブライン)が循環される。冷却材としては、たとえば塩化カルシウム水溶液が用いられる。
【0024】
凝縮器41は、クーリングタワー44で冷却された冷却水により、冷媒を冷却する。冷却器42は、凝縮器41で冷却された冷媒により、冷却材を冷却する。凍結管ユニット10は、冷却器42で冷却された冷却材により、シールド管7、8の周囲にある地盤Gを凍結させる。
【0025】
凍結管ユニット10に備わる流体管14bは、コンプレッサなどの流体供給源47に連結されている。また、凍結管ユニット10に備わる線材16a、16bは、ワイヤなどから成り、ウインチなどの牽引機48に連結されている。
【0026】
次に、第1実施形態の凍結管ユニット10の構造を、図4図8を参照しながら説明する。
【0027】
図4は、第1実施形態の凍結管ユニット10の設置状態を示した図である。図4(a)は、シールド管7、8の管軸方向に対して垂直な断面図、図4(b)は、シールド管7、8の先端側の斜視断面図、図4(c)は、シールド管7、8の後端側の斜視断面図を示している。凍結管ユニット10に備わる凍結管11は、前述したように地盤Gに埋設されたシールド管7、8の内周面に複数設置される。各シールド管7、8の直径は、たとえば約4メートルである。凍結管11の直径は、たとえば約160mmである。シールド管7、8は、本発明の「大径管」の一例である。
【0028】
図5は、凍結管ユニット10の横断面図である。図5(a)と図5(b)は、凍結管11の管軸周りに90°異なる断面となっている。凍結管11内には、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、パッカー15a、15b、線材16a、16b、および保持台車17が挿入される。パッカー15a、15bは、凍結管11内に所定の間隔で管軸方向に配置されている。
【0029】
図6は、図5(b)のパッカー15a近傍の拡大図である。図7は、凍結管11の先端部とパッカー15a、15b近傍の断面図である。図5図7に示すように、パッカー15a、15bは、それぞれ円柱状のフレーム18a、18bを有している。
【0030】
凍結管11の先端側(図5図7で左側)に配置されるパッカー15aのフレーム18aの先端部は、閉塞されている。このフレーム18aには、供給路18i(図5(a))、流体路18k(図5(b)、図6)、および挿通孔18g、18h(図7)が形成されている。
【0031】
フレーム18aの後端部(図5図7で右側の端部)には、供給路18iと連通するように、供給管12aの先端部が連結されている(図5(a))。フレーム18aの供給路18iは一端が開口しており、供給管12aは、この供給路18iを介して、凍結管11内にあるパッカー15a、15b間の空間(後述する閉塞区間X)に連通している。供給路18iと供給管12aとの隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0032】
また、フレーム18aの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14aの先端部が連結されている(図5(b))。フレーム18aの流体路18kと流体管14aとの隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0033】
凍結管11の後端側に配置されるパッカー15bのフレーム18bには、図5および図7に示すように、供給路18i、回収路18j、流体路18k、および挿通孔18g、18hが形成されている。フレーム18bの先端部には、供給路18iと連通するように、供給管12aの後端部が連結されている(図5(a))。フレーム18bの後端部には、供給路18iと連通するように、供給管12bの先端部が連結されている。このパッカー15bの供給路18iを介して、供給管12bと供給管12aとは連通している。フレーム18bの供給路18iと供給管12a、12bとの隙間は、それぞれ図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0034】
フレーム18bの後端部には、回収路18jと連通するように、回収管13の先端部が連結されている。フレーム18bの回収路18jは一端が開口しており、回収管13は、この回収路18jを介して、凍結管11内にあるパッカー15a、15b間の空間(閉塞区間X)に連通している。回収路18jと回収管13との隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0035】
また、フレーム18bの先端部には、流体路18kと連通するように、流体管14aの後端部が連結されている(図5(b))。フレーム18bの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14bの先端部が連結されている。フレーム18bの流体路18kと流体管14a、14bとの隙間は、それぞれ図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0036】
図3に示したように、供給管12bの他端部、回収管13の他端部、および流体管14bの他端部は、それぞれ凍結管11の後端部から引き出される。そして、供給管12bは中継分岐管60に連結され、回収管13は中継分岐管61に連結され、流体管14bは流体供給源47に接続される。
【0037】
図7に示すように、各パッカー15a、15bのフレーム18a、18bには、凍結管11の管軸方向と平行に、挿通孔18g、18hが形成されている。各挿通孔18g、18hには、それぞれ線材16a、16bが挿通される。これにより、各線材16a、16bが、凍結管11の管軸方向に各パッカー15a、15bを貫通した状態になる。
【0038】
線材16bは、フレーム18a、18bに連結(固定)されている。線材16aは、フレーム18a、18bの挿通孔18g内で、凍結管11の管軸方向に移動可能になっている。各挿通孔18g、18hと各線材16a、16bとの隙間は、図示しないシール部材によりほぼ気密状態に封止される。各線材16a、16bの後端部は、図3に示すように、凍結管11の後端側から導出されて、牽引機48に連結される。
【0039】
図5図7に示すように、各フレーム18a、18bの周面には、チューブ状のラバー19が設けられている。ラバー19は、各フレーム18a、18bの周面を覆っている。各ラバー19の両端部は、保持部材20a、20b、21a、21bにより保持されている。
【0040】
詳しくは、図6に示すように、パッカー15aのラバー19の一端部(右側)は、フレーム18aの周面に装着されたスリーブ20aと、このスリーブ20aに装着された保持リング21aとによって挟持されている。スリーブ20aは、ねじ22でフレーム18aに固定されている。また、ラバー19の他端部(左側)は、フレーム18aの周面に装着された筒状のスライダ20bと、このスライダ20bに装着された保持リング21bとによって挟持されている。スライダ20bは、フレーム18aに固定されておらず、フレーム18aに沿って管軸方向へ所定長摺動可能になっている。フレーム18aの先端部には、スライダ20aが抜け落ちるのを防止するためのフランジ部18yが形成されている。つまり、ラバー19の一端部は固定端であり、他端部は自由端である。パッカー15bのラバー19の各端部も同様に、保持部材20a、20b、21a、21bとフレーム18bの周面により保持されている。
【0041】
また、各フレーム18a、18bの周面には、流体路18kと連通する流入出孔18pが形成されている(図5(b)、図6)。流入出孔18pは、ラバー19で覆われている。ラバー19とフレーム18a、18bとの間には、弾性部材23が設けられている。弾性部材23は、コイルばねから成り、スライダ20bをフランジ部18y側へ付勢することにより、ラバー19の他端部(図6などで左側の端部)を凍結管11の管軸方向へ引っ張って、ラバー19の中央部をフレーム18a、18bの周面側へ引き寄せる。
【0042】
図7に示すように、凍結管11の先端部はカバー24により閉塞されている。カバー24には、ターンボックス25が取り付けられている。ターンボックス25内には、リール群26と滑車27が設けられている。パッカー15aのフレーム18aの挿通孔18gを通って、フレーム18aの先端側へ突出した線材16aは、カバー24の貫通孔24aを貫通して、ターンボックス25内のリール群26を経由し、滑車27に掛けられている。そして、この線材16aは、滑車27により方向転換した後、リール群26を経由して、カバー24の貫通孔24bを貫通し、フレーム18aの先端部に連結されている。貫通孔24a、24bと線材16aとの隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0043】
図5に示すように、凍結管11内のパッカー15bより後端側には、保持台車17が挿入されている。図8は、その保持台車17近傍の断面図である。
【0044】
保持台車17は、複数の保持部17a、17b、17c、17d、17eと複数の車輪17tとを有している。保持部17a、17b、17c、17d、17eは、それぞれ、供給管12b、回収管13、流体管14b、線材16a、および線材16bを個別に保持する。供給管12b、回収管13、流体管14b、および線材16a、16bの内、少なくとも1つは、対応する保持部17a~17eに固定される。各車輪17tは、凍結管11の内周面を管軸方向に転動する。保持台車17は、凍結管11内に適宜数配置される。
【0045】
次に、第1実施形態の凍結管ユニット10を用いた地盤凍結工法を説明する。
【0046】
まず、前述したように、シールド管7、8を地盤G中に埋設する前または埋設した後に、図4に示すように各シールド管7、8内に凍結管11を複数設置する(設置工程)。詳しくは、この設置工程では、前述の地中構造物1の外殻シールド1’(図2)の外周側と内周側に相当する、シールド管7、8の内周面の位置に、凍結管11をシールド管7、8の管軸方向と平行で、かつ管の周方向に所定の間隔で設置する。これにより、凍結管11がシールド管7、8を介して、地盤G中に設置された状態となる。
【0047】
次に、図5図8に示したように、凍結管11内に、パッカー15a、15b、線材16a、16b、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、および保持台車17を挿入する(内挿工程)。
【0048】
詳しくは、上記内挿工程では、まず、凍結管11の外部において、パッカー15a、15b、線材16b、供給管12a、12b、回収管13、および流体管14a、14bを連結する。また、線材16aの一端をパッカー15aのフレーム18aに連結する。次に、線材16aのパッカー15aと連結していない側の端部を、凍結管11の後端部(図7で右側)から管内へ挿入して、凍結管11の先端部(図7で左側)から引き出す。そして、引き出された線材16aを、図7に示すカバー24の挿通孔24a、24bと、ターンボックス25のリール類26と滑車27に通す。次に、線材16aの端部を凍結管11の先端部から管内へ挿入して、凍結管11の後端部から引き出す。そして、引き出した線材16aを、パッカー15a、15bの挿通孔18gに挿通する。また、凍結管11の先端部に、カバー24とターンボックス25を取り付ける。
【0049】
そして、パッカー15a、15bに挿通された線材16aの後端部を、牽引機48(図3)に連結した後、牽引機48で線材16aを引っ張ることで、図5図7に示すように、凍結管11内にパッカー15a、15b、線材16a、16b、供給管12a、12b、回収管13、および流体管14a、14bを引き込んで、パッカー15a、15bを所定の位置に所定の間隔で配置する。
【0050】
また、この引き込み時に、パッカー15bの後方側にある供給管12b、回収管13、流体管14b、および線材16a、16bを適宜数の保持台車17で保持して、この保持台車17も凍結管11内に挿入する。
【0051】
他の例として、パッカー15aとパッカー15bの間にも、保持台車17を適宜数挿入して、この保持台車17で供給管12a、流体管14a、および線材16a、16bを保持するようにしてもよい。
【0052】
次に、シールド管7、8内に充填材を充填する(充填工程)。この充填工程で用いられる充填材は、たとえばモルタル土から成る。
【0053】
次に、凍結管11内に不凍材を充満させる(充満工程)。この充満工程で用いられる不凍材は、たとえば冷却材(ブライン)と同一の塩化カルシウム水溶液から成る。
【0054】
次に、流体供給源47から供給される流体を流体管14a、14bを通して各パッカー15a、15b内に流入させて、図5(a)および図6(b)に示すように、パッカー15a、15bを膨張させる(膨張工程)。詳しくは、この膨張工程では、流体供給源47から流体として、たとえば不凍液や圧縮空気などを流体管14bに流入させる。すると、その流体が、図5(b)に矢印で示すように、流体管14bからパッカー15bの流体路18kと流入出孔18pを通って、フレーム18bの周面とこの周面を覆うラバー19との間に流入する。また、この流体は、フレーム18bの流体路18kから、流体管14aと、パッカー15aの流体路18kおよび流入出孔18pとを通って、フレーム18aの周面とこの周面を覆うラバー19との間に流入する(図6(a))。
【0055】
そして、流体が各パッカー15a、15bのラバー19を、フレーム18a、18bの周面から離れるように膨らませて、凍結管11の内周面に押し付けることにより、パッカー15a、15bが膨張して、凍結管11が閉塞された状態となる(図5(a)、図6(b))。
【0056】
上記のように各パッカー15a、15bのラバー19が流体により凍結管11の内周面側へ押される際、各パッカー15a、15bのスリーブ20aと保持リング21aによって保持されたラバー19の一端部は固定端であるため動かない。一方、スライダ20bと保持リング21bによって挟持されたラバー19の他端部は自由端であるため、スライダ20bとともに凍結管11の管軸方向へ移動する(図6(b)参照)。
【0057】
上記の膨張工程により、図5(a)に示すように、凍結管11内にパッカー15a、15bにより閉塞された閉塞区間Xが形成される。供給管12a、12bは、パッカー15aの近傍で閉塞区間Xと連通している。回収管13は、パッカー15bの近傍で閉塞区間Xと連通している。
【0058】
次に、冷凍機40の冷却器42(図3)により冷却された冷却材を、供給管12bから供給管12aを通して、凍結管11内の閉塞区間Xに供給する。そして、この閉塞区間X内の冷却材を回収管13を通して冷却器42へ回収するように、当該冷却材を循環させて、凍結管11の閉塞区間Xの周囲の地盤Gを凍結させる(循環凍結工程)。
【0059】
詳しくは、上記循環凍結工程では、まず、図3に示す開閉弁62を開いて、冷却器42で冷却された冷却材を、循環ポンプ46の圧送力により、配管57と中継分岐管60と開閉弁62とを通して、供給管12bに供給する。すると、冷却材が、図5(a)に矢印で示すように、供給管12b、パッカー15bの供給路18i、供給管12a、およびパッカー15aの供給路18iを通って、パッカー15aの近傍で閉塞区間Xに供給される。そして、閉塞区間X内にある冷却材の冷熱が、凍結管11と、当該凍結管11が設置されたシールド管7、8とを介して、シール管7、8内の充填材や閉塞区間Xの周囲にある地盤に伝わって、充填材と地盤が冷却される。
【0060】
閉塞区間X内で冷熱を奪われた冷却材は、図5(a)に矢印で示すように、パッカー15bの回収路18jと回収管13とを通り、さらに図3に示した開閉弁62と中継分岐管61と配管58、59などを通って、冷却器42に回収される。そして、回収された冷却材は、冷却器42で冷却された後、再び、凍結管11内の閉塞区間Xに供給され、ここで冷熱を奪われた後、冷却器42へ回収される。このように、冷却材を冷却器42と凍結管11内の閉塞区間Xとの間で循環することを所定時間継続することで、閉塞区間Xの周囲にある充填材および地盤が凍結される。
【0061】
閉塞区間Xの周囲の地盤を凍結させた後、上記冷却材の循環を停止してから、パッカー15a、15b内の流体を流体管14a、14bを通して流出させて、パッカー15a、15bを収縮させる(収縮工程)。詳しくは、この収縮工程では、パッカー15a、15bのフレーム18a、18bの周面とラバー19との間にある流体を、フレーム18a、18bの流入出孔18pと流体路18kと流体管14a、14bとを通して、流体供給源47に回収して、外部へ排気する(図6(c)の矢印参照)。これにより、パッカー15a、15bのラバー19が凍結管11の内周面から離れて、弾性部材23の弾性力でスライダ20bがフランジ部18y側へ摺動することにより、ラバー19の中央部がフレーム18a、18bの周面側へ引き寄せられ、パッカー15a、15bが収縮した状態となる。
【0062】
上記のように各パッカー15a、15bのラバー19がフレーム18a、18bの周面側へ引き寄せられる際にも、各パッカー15a、15bのラバー19の一端部は固定端であるため動かない。一方、ラバー19の他端部は自由端であるため、凍結管11の管軸方向へ移動する(図6(c)参照)。上記のようにパッカー15a、15bが収縮することで、凍結管11内の閉塞状態が解除される。
【0063】
次に、線材16bを牽引機48(図3)により引っ張って、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを、凍結管11内で管軸方向に所定距離移動させる(移動工程)。詳しくは、この移動工程では、上述した凍結管11内の閉塞区間Xの長さと同等の距離だけ、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを凍結管11の後端側(図5で右方向)へ移動させる。これにより、たとえば図5の位置にあるパッカー15aは、ほぼ同図のパッカー15bの位置まで移動する。その結果、移動後の供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bは、凍結させた地盤と隣接する未凍結の地盤で囲まれた状態となる。この状態で、前記の膨張工程および循環凍結工程を実行することにより、未凍結の地盤が凍結される。凍結が完了すると、前記の収縮工程と移動工程を実行して、再びパッカー15a、15b等を凍結管11の後端側へさらに移動させ、次の未凍結の地盤を凍結させる。
【0064】
以降も同様にして、上述した膨張工程、循環凍結工程、収縮工程、および移動工程を順に繰り返し実行することで、長距離に渡って設置された凍結管11の周囲にある広範囲な地盤Gを、パッカー15a、15b等を順次移動させながら、所定の区間毎に凍結させて行く。
【0065】
以上のような処理を、各シールド管7、8内に設置された各凍結管11について実行し、図1および図2に示したように、各シールド管7、8の周囲にある広範囲な地盤Gを凍結させて行く。これにより、地中構造物1の外殻シールド1’の周囲に、所定の強度と止水性能を有した凍土壁6が形成される。
【0066】
上述の第1実施形態によると、凍結管11内に管軸方向に所定の間隔で複数のパッカー15a、15bを配置し、各パッカー15a、15bを膨張させることにより、凍結管11内に所定の長さを有した閉塞区間Xを形成している。そして、この閉塞区間Xと冷凍機40の冷却器42とに対して、供給管12a、12bと回収管13とを通して冷却材を循環させている。このため、冷却材を閉塞区間Xに隈なく行き渡らせて、閉塞区間Xの周囲にある所定区間の地盤を確実に凍結させることができる。
【0067】
また、所定区間の地盤の凍結が完了すると、パッカー15a、15b内の流体を流体管14a、14bを通して流出させて、パッカー15a、15bを収縮させる。それから、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを、凍結管11内で管軸方向に移動させて、凍結した所定区間の地盤に隣接する未凍結の地盤で囲まれた凍結管11内の所定位置に配置する。そして、上述した膨張工程と循環凍結工程と収縮工程と移動工程とを順に繰り返し実行する。これにより、凍結管11が長距離に渡って設置されても、凍結管11の周囲にある広範囲の地盤を、所定の区間毎にムラなく効率よく凍結させることが可能となる。
【0068】
また、地盤中に埋設された複数のシールド管7、8内に、凍結管11を複数設置し、各シールド管7、8内に充填材を充填した後、各凍結管11に対して、上述した膨張工程と循環凍結工程と収縮工程と移動工程とを順に繰り返し実行する。これにより、各凍結管11内の閉塞区間Xに循環させた冷却材の冷熱を、凍結管11、シールド管7、8、または充填材を介して、シールド管7、8の周囲にある地盤に伝えて、当該地盤を所定区間毎にムラなく効率よく凍結させることが可能となる。
【0069】
さらに、複数のシールド管7、8に対して、所定区間毎に、周囲の地盤の凍結作業と、内部の掘削作業と、覆工体9の構築作業とを、並行して行うことができるので、地中構造物1の構築までにかかる工事期間の短縮が可能となる。
【0070】
また、上述の第1実施形態では、凍結管11内に線材16aを挿入し、凍結管11の先端部に取り付けたターンボックス25内の滑車27に、線材16aを掛けて方向転換させた後、線材16aを凍結管11の後端部から導出する。また、線材16aの一端部をパッカー15aに連結し、パッカー15a、15b同士を管12a、14aや線材16bで連結する。そして、凍結管11から導出した線材16aの他端部を牽引機48で引っ張ることにより、凍結管11内に供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを任意の位置まで容易かつ確実に挿入することができる。また、この挿入時に、供給管12a、12b、回収管13、および流体管14a、14bや、これらの各管とパッカー15a、15bとの連結部分にかかる応力やストレスを軽減して、各管や連結部分の損傷を防止することができる。
【0071】
また、上述の第1実施形態では、線材16bをパッカー15a、15bと連結した状態で凍結管11内に挿入して、線材16bの一端部を凍結管11の後端部から導出する。そして、その線材16bの一端部を牽引機48で引っ張ることにより、凍結管11内で供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを凍結管11の後端側へ容易かつ確実に移動させることができる。また、この移動時に、供給管12a、12b、回収管13、および流体管14a、14bや、これらの各管とパッカー15a、15bとの連結部分にかかる応力やストレスを軽減することができ、各管や連結部分の損傷を防止することができる。さらに、凍結管11からの線材16a、16bの引き出し長を調整することで、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを、凍結管11内の任意の位置に容易に配置することができる。
【0072】
また、上述の第1実施形態では、パッカー15a、15bの膨張工程より前に、凍結管11内に不凍材を充満させる。このため、冷却材の循環時に、供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、またはパッカー15a、15bの表面に、霜柱や氷などの水性異物が生成されるのを防止することができる。また、パッカー15a、15bの収縮時に、冷却材が閉塞区間Xから漏れて、凍結管11の内周面などに結露が発生するのを阻止し、凍結管11内での水性異物の生成を一層防止することができる。そして、凍結管11内での供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、またはパッカー15a、15bの移動が水性異物により妨げられなくなるので、これらを所定の位置に確実に移動させることができる。
【0073】
また、上述の第1実施形態では、供給管12b、回収管13、および流体管14bを個別に保持した状態で、凍結管11の内周面を管軸方向に転動する保持台車17を、凍結管11内に挿入している(図8)。このため、凍結管11に対する供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bの挿入時や移動時に、これらの管12a、12b、13、14a、14bのねじれや弛みを防止して、各管とパッカー15a、15bを管軸方向にスムーズに移動させることができる。
【0074】
また、上述の第1実施形態では、パッカー15a、15bに弾性部材23を設けて、この弾性部材23でパッカー15a、15bのラバー19を収縮方向に付勢している。このため、パッカー15a、15b内の流体を流体管14a、14bを通して流出させたときに、パッカー15a、15bの収縮を弾性部材23により助長して、パッカー15a、15bを迅速かつ確実に収縮させることができる。このため、その後の供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bの移動時に、凍結管11内でパッカー15a、15bのスムーズな移動が阻害されるのを防止することができる。
【0075】
また、上述の第1実施形態では、膨縮するパッカー15a、15bのラバー19の一方の端部をフレーム18a、18bに対して固定された固定端とし、もう一方の端部を管軸方向に移動可能な自由端としている。このため、流体管14a、14bを通してパッカー15a、15bのラバー19の内側に流体を流入させたときに、ラバー19を無理なく凍結管11の管径方向に膨張させて、凍結管11内を確実に閉塞することができる。また、ラバー19の内側にある流体を流体管14a、14bを通して流出させたときに、ラバー19を無理なく収縮させて、凍結管11から離間させることができる。
【0076】
さらに、上述の第1実施形態の凍結管ユニット10において、たとえば、地質や周囲環境の変化やその他の事情に応じて、上述した膨張工程と循環凍結工程と収縮工程と移動工程とを順に繰り返す回数を設定したり、凍結管11内で供給管12a、12b、回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15a、15bを移動させる移動長を変えたり、パッカー15a、15bを配置する位置を変えたりすることができる。このため、地盤G中に凍結管11を設置した後であっても、地盤G中の所定の箇所だけを凍結させることが可能となり、また、地盤G中の凍結箇所や凍結範囲を容易に変更することが可能となる。また、長期間にわたって凍結管11内に冷却材を循環し続ける必要がある場合においても、凍結管11の長手方向の一部分を限定的に冷却することができるため、余分な凍土成長を抑制することができる。
【0077】
上述の第1実施形態では、シールド管7、8内に真直な凍結管11だけを設置したが、以下の第2~第4実施形態のように、屈曲した分岐凍結管をシールド管7、8内に設置してもよい。
【0078】
図9は、第2実施形態の凍結管ユニット10aの設置状態を示した図である。図9(a)はシールド管7、8の先端側、図9(b)はシールド管7、8の後端側を示している。第2実施形態では、地中構造物1の外殻シールド1’(図2)の外周側と内周側に相当するシールド管7、8の内周面の位置に、それぞれ凍結管11が1本ずつ設置される。各凍結管11には、各シールド管7、8の管軸方向に所定の間隔をおいて、分岐凍結管31が複数連結される。図9では、一部の分岐凍結管31を図示している。
【0079】
分岐凍結管31は、凍結管11の所定位置から分岐して、シールド管7、8の内周面に沿うように、シールド管7、8の管軸方向に対して垂直に交差する方向と、管軸方向に対して平行な方向とに延びている。また、分岐凍結管31は、凍結管11の管径方向の両側に延びている。そして、この分岐凍結管31は、凍結管11に合流するように、分岐位置とは別の位置で凍結管11に連結されている。凍結管11と分岐凍結管31は、シールド管7、8の内周面に固定されている。
【0080】
図10は、第2実施形態の凍結管ユニット10aの横断面図である。図10(a)と図10(b)は、凍結管11の管軸周りに90°異なる断面となっている。凍結管11内には、供給管12a、12b、12c、回収管13、流体管14a、 14b、14c、パッカー15a、15b、15c、および線材16a、16bが挿入される。また、図10には図示していないが、前述の保持台車17(図8)も挿入される。
【0081】
図10および図9に示すように、凍結管11と分岐凍結管31との分岐箇所を含む凍結管11内の一区間Xaの先方側には、パッカー15aが配置される。また、一区間Xaの後方側でかつ、凍結管11と分岐凍結管31との連結箇所を含む凍結管11内の他区間Xbの先方側には、パッカー15cが配置される。さらに、他区間Xbの後方側には、パッカー15bが配置される。
【0082】
パッカー15aの構造と、パッカー15aに対する供給管12a、流体管14a、および線材16a、16bの連結構造は、図5図7に示した第1実施形態と同様である。また、パッカー15bの構造と、パッカー15bに対する供給管12b、回収管13、流体管14b、および線材16a、16bの連結構造も、第1実施形態と同様である。
【0083】
図10に示すように、パッカー15cに備わる円柱状のフレーム18cには、供給路18iと流体路18kと挿通孔18hが形成されている。フレーム18cの先端部には、供給路18iと連通するように、供給管12aの後端部が連結されている。また、フレーム18cの先端部には、流体路18kと連通するように、流体管14aの後端部が連結されている。フレーム18cの後端部には、供給路18iと連通するように、供給管12cの先端部が連結されている。また、フレーム18cの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14cの先端部が連結されている。フレーム18cの供給路18iと供給管12a、12cとの隙間と、流体路18kと流体管14a、14cとの隙間は、それぞれ図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0084】
パッカー15bのフレーム18bの先端部には、フレーム18bの供給路18iと連通するように、供給管12cの後端部が連結されている。また、フレーム18bの先端部には、フレーム18bの流体路18kと連通するように、流体管14cの後端部が連結されている。フレーム18bの供給路18iと供給管12cとの隙間と、流体路18kと流体管14cとの隙間は、それぞれ図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0085】
また、パッカー15cのフレーム18cには、線材16bを挿通する挿通孔18hが形成されている。さらに、図示を省略しているが、フレーム18cには、フレーム18a、18bの挿通孔18g(図7)と同様に、線材16aを挿通する挿通孔が形成されている。フレーム18cの各挿通孔と各線材16a、16bとの隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0086】
フレーム18cの周面は、ラバー19により覆われている。このラバー19の保持構造は、パッカー15a、15bのフレーム18a、18bと同様である。また、フレーム18a、18b、18cの周面には、流入出孔18pが形成されている。ラバー19とフレーム18a、18bとの間には、弾性部材23が設けられている。
【0087】
前述の第1実施形態と同様の手順で(図7参照)、凍結管11からの線材16aの導出部分を牽引機48で引っ張ることにより、凍結管11内に供給管12a、12b、12c、回収管13、流体管14a、14b、14c、パッカー15a、15b、15c、および線材16a、16bが挿入され、図9および図10に示すようにこれらが管内に配置される。そして、シールド管7、8内へ充填材を充填する充填工程と、凍結管11内へ不凍材を充満させる充満工程とを実行した後、各パッカーを、パッカー15b→15c→15aの順に膨張させる膨張工程を実行する。
【0088】
詳しくは、上記膨張工程では、流体供給源47から流体を流体管14bに流入させる。すると、流体が、図10(b)に矢印で示すように、流体管14bから、パッカー15bの流体路18kと流入出孔18pとを通って、フレーム18bの周面とこの周面を覆うラバー19との間に流入する。また、流体は、パッカー15bの流体路18kから、流体管14cと、パッカー15cの流体路18kおよび流入出孔18pとを通って、フレーム18cの周面とこの周面を覆うラバー19との間に流入する。さらに、流体は、パッカー15cの流体路18kから、流体管14aと、パッカー15aの流体路18kおよび流入出孔18pとを通って、フレーム18aの周面とこの周面を覆うラバー19との間に流入する。
【0089】
そして、流体が各パッカー15a、15b、15cのラバー19をフレーム18a、18b、18cの周面から離れるように膨らませて、凍結管11の内周面に押し付けることにより、パッカー15a、15b、15cが膨張して、凍結管11内が閉塞された状態となる。つまり、凍結管11内の一区間Xaがパッカー15a、15cにより閉塞され、他区間Xbがパッカー15b、15cにより閉塞される。供給管12a、12b、12cは閉塞区間Xaと連通しており、回収管13は閉塞区間Xbと連通している。
【0090】
次の循環凍結工程では、冷却器42で冷却された冷却材を、供給管12bに供給する。すると、冷却材は、図10(a)に矢印で示すように、供給管12bからパッカー15bの供給路18i、供給管12c、パッカー15cの供給路18i、供給管12a、およびパッカー15aの供給路18iを通って、凍結管11内の閉塞区間Xaに供給される。また、冷却材は、閉塞区間Xaから分岐凍結管31を通って、凍結管11内の閉塞区間Xbに流入する。そして、閉塞区間Xa、Xbと分岐凍結管31内にある冷却材の冷熱が、凍結管11とシールド管7、8とを介して、シール管7、8内の充填材や周囲の地盤に伝わって、充填材と地盤が冷却される。
【0091】
閉塞区間Xa、Xbと分岐凍結管31内で冷熱を奪われた冷却材は、パッカー15bの回収路18jと回収管13を通って、冷却器42に回収される。そして、冷却材は、冷却器42で冷却された後、再び、凍結管11内の閉塞区間Xa、Xbと分岐凍結管31に供給されて、ここで冷熱を奪われた後、冷却器42へ回収される。このように、冷却材を冷却器42と凍結管11内の閉塞区間Xa、Xbと分岐凍結管31との間で循環させることを所定時間継続することで、閉塞区間Xa、Xbと分岐凍結管31の周囲にある充填材および地盤が凍結される。
【0092】
次の収縮工程では、パッカー15a、15b、15cの各ラバー19の内側にある流体を、フレーム18a、18b、18cの流入出孔18p、流体路18k、および流体管14a、14b、14cを通して、外部へ排気することにより、各パッカーを、パッカー15a→15c→15bの順に収縮させる。
【0093】
次の移動工程では、凍結管11から導出された線材16bの後端部を牽引機48で引っ張ることにより、供給管12a、12b、12c、回収管13、流体管14a、14b、14c、およびパッカー15a、15b、15cを、凍結管11内で管軸方向(図10で右方向)に所定距離移動させる。そして、隣の分岐凍結管31と凍結管11との分岐箇所を含む、凍結管11内の一区間Xaの先方側に、パッカー15aを配置する。また、一区間Xaの後方側でかつ、分岐凍結管31と凍結管11との連結箇所を含む、凍結管11内の他区間Xbの先方側に、パッカー15cを配置する。さらに、他区間Xbの後方側に、パッカー15bを配置する。
【0094】
その後、上述したように膨張工程、循環凍結工程、収縮工程、および移動工程を順に繰り返し実行することで、凍結管11と分岐凍結管31の周囲にある地盤を所定の区間毎に凍結させて行く。また、各シールド管7、8内に設置された各凍結管11において、上述した各工程を同様に実行して、各シールド管7、8の周囲にある地盤Gを凍結させ、凍土壁6を形成する(図1図2)。
【0095】
上述の第2実施形態によると、凍結管11内のパッカー15a、15b、15cにより閉塞された一区間Xaおよび他区間Xbと、これらと連通する分岐凍結管31に冷却材を循環させることにより、冷却材で冷却して凍結させる地盤の凍結範囲を広げることができる。また、同一の凍結管11に分岐凍結管31の両端部を連結しているので、1本の凍結管11に供給する冷却材で凍結させる地盤の凍結範囲も広げることができる。このため、シールド管7、8の周囲にある地盤を所定の区間毎にムラなく、一層効率よく凍結させることが可能となる。また、径が大きなシールド管7、8内に設置する凍結管11の数を減らして、各工程の実行数も減らすことができ、工事負担を軽減することが可能となる。
【0096】
図11は、第3実施形態の凍結管ユニット10bの設置状態を示した図である。図11(a)はシールド管7、8の先端側、図11(b)はシールド管7、8の後端側を示している。第3実施形態では、第2実施形態と同様に、シールド管7、8の内周面に凍結管11が設置され、各凍結管11に分岐凍結管32が複数連結されるが、分岐凍結管32の形状は、第2実施形態の分岐凍結管31(図9)と異なっている。図11では、一部の分岐凍結管32を図示している。
【0097】
分岐凍結管32は、凍結管11の所定位置から分岐して、シールド管7、8の内周面に沿うように、シールド管7、8の管軸方向に対して垂直に交差する方向と、管軸方向に対して平行な方向とに延びている。そして、この分岐凍結管32は、凍結管11と合流するように、分岐位置とは別の位置で凍結管11に連結されている。凍結管11と分岐凍結管32は、シールド管7、8の内周面に固定されている。以上の点は、第2実施形態の分岐凍結管31と同じであるが、第3実施形態の分岐凍結管32は、凍結管11の管径方向の片側だけに延びている。また、凍結管11における分岐凍結管32の分岐箇所と連結箇所(合流箇所)との間隔は、分岐凍結管32における凍結管11の管軸と平行な部分の長さより短くなっている。
【0098】
凍結管11内において、凍結管11と分岐凍結管32との分岐箇所を含む一区間Xaの先方側には、パッカー15aが配置される。また、凍結管11と分岐凍結管32との分岐箇所と連結箇所(合流箇所)の間には、パッカー15cが配置される。さらに、凍結管11内の他区間Xbの後方側には、パッカー15bが配置される。パッカー15cとパッカー15bとの間隔は、分岐凍結管32における凍結管11の管軸と平行な部分の長さと同程度である。
【0099】
凍結管11内には、図10に示した第2実施形態と同様に、供給管12a、12b、12c、回収管13、流体管14a、14b、14c、および線材16a、16bなどが挿入される(図示省略)。これらとパッカー15a、15b、15cとの連結状態も、第2実施形態と同様である。
【0100】
このような第3実施形態においても、凍結管11内のパッカー15a、15b、15cにより閉塞された一区間Xaと他区間Xbと分岐凍結管32内に冷却材を循環させることにより、冷却材で冷却して凍結させる地盤の範囲を広げることができる。また、同一の冷凍管11に対して分岐凍結管32の両端部を連結しているので、1本の凍結管11に供給する冷却材で冷却して凍結させる地盤の範囲を広げることができる。このため、シールド管7、8の周囲にある地盤を所定の区間毎にムラなく、一層効率よく凍結させることが可能となる。また、シールド管7、8内に設置する凍結管11の数を減らして、各工程の実行数も減らすことができ、工事負担を軽減することが可能となる。
【0101】
図12は、第4実施形態の凍結管ユニット10cの設置状態を示した図である。図12(a)はシールド管7、8の後端側、図12(b)はシールド管7、8の先端側を示している。第4実施形態では、地中構造物1の外殻シールド1’(図2)の外周側と内周側に相当するシールド管7、8の内周面の位置のうち、一方の位置に凍結管11aが設置され、他方の位置に凍結管11bが設置される。凍結管11a、11bには、シールド管7、8の管軸方向に所定の間隔をおいて、それぞれ分岐凍結管33a、33bが複数連結されている。図12では、一部の分岐凍結管33a、33bを図示している。
【0102】
各分岐凍結管33a、33bは、各凍結管11a、11bの所定位置から分岐して、シールド管7、8の内周面に沿うように、シールド管7、8の管軸方向に対して垂直に交差する方向と、管軸方向に対して平行な方向とに延びている。シールド管7、8の管径方向に対向する分岐凍結管33aと分岐凍結管33bとは、シールド管7、8を横切るように設けられた中継管34により互いに接続されている。分岐凍結管33a、33bと中継管34は連通している。つまり、中継管34により接続された分岐凍結管33a、33bは、凍結管11a、11bのうち、一方から分岐して、他方に連結されている。凍結管11a、11bと分岐凍結管33a、33bは、シールド管7、8の内周面に固定されている。中継管34の外周面は、断熱材35により覆われている。
【0103】
図13は、第4実施形態の凍結管ユニット10cの横断面図である。図13では、(a)に凍結管11aと分岐凍結管33aとの分岐箇所の近傍を示し、(b)に凍結管11bと分岐凍結管33bとの分岐箇所の近傍を示している。
【0104】
図13(a)および図12に示すように、凍結管11aと分岐凍結管33aとの分岐箇所を含む凍結管11a内の一区間Xcの先方側には、パッカー15dが配置される。また、一区間Xcの後方側には、パッカー15cが配置される。
【0105】
図13(a)に示すように、パッカー15dに備わる円柱状のフレーム18dの先端部は閉塞されている。フレーム18dには、流体路18kが形成されている。フレーム18dの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14aの先端部が連結されている。フレーム18dの流体路18kと流体管14aとの隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0106】
パッカー15cのフレーム18cには、供給路18iと流体路18kが形成されている。フレーム18cの先端部には、流体路18kと連通するように、流体管14aの後端部が連結されている。フレーム18cの供給路18iの先端部は開口している。フレーム18cの後端部には、供給路18iと連通するように、供給管12bの先端部が連結されている。つまり、供給管12bは、フレーム18cの供給路18iを介して、凍結管11a内の一区間Xcに連通している。また、フレーム18cの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14bの先端部が連結されている。フレーム18cの供給路18iと供給管12bとの隙間と、流体路18kと流体管14a、14bとの隙間は、それぞれ図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0107】
図13(b)および図12に示すように、凍結管11bと分岐凍結管33bとの分岐箇所を含む凍結管11b内の他区間Xdの先方側には、パッカー15dが配置される。また、他区間Xdの後方側には、パッカー15eが配置される。
【0108】
図13に示すように、凍結管11b内のパッカー15dの構造は、凍結管11a内のパッカー15の構造と同様である。凍結管11b内のパッカー15dの後端部には、流体管14aの先端部が連結されている。
【0109】
図13(b)に示すように、パッカー15eに備わる円柱状のフレーム18eには、回収路18jと流体路18kが形成されている。フレーム18eの先端部には、流体路18kと連通するように、流体管14aの後端部が連結されている。フレーム18eの回収路18jの先端部は開口している。フレーム18eの後端部には、回収路18jと連通するように、回収管13の先端部が連結されている。つまり、回収管13は、フレーム18eの回収路18jを介して、凍結管11b内の他区間Xdに連通している。また、フレーム18eの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14bの先端部が連結されている。フレーム18eの回収路18jと回収管13との隙間と、流体路18kと流体管14a、14bとの隙間は、それぞれ図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0110】
図示を省略しているが、各凍結管11a、11bには、図7等に示された線材16a、16bが挿入される。また、各パッカー15c、15d、15eには、図7等に示された挿通孔18g、18hと同様の、線材16a、16bを挿通させる挿通孔が形成されている。線材16a、16bとパッカー15dの連結状態や貫通状態は、前述のパッカー15aと同様である。線材16a、16bとパッカー15c、15eの連結状態や貫通状態は、前述のパッカー15bと同様である。
【0111】
各パッカー15c、15d、15eのフレーム18c、18d、18eの周面には、ラバー19が保持されている。このラバー19の保持構造は、第1~第3実施形態のパッカー15a、15b、15cと同様である。また、第1~第3実施形態と同様に、ラバー19とフレーム18c、18d、18eとの間には、弾性部材23が設けられており、各フレーム18c、18d、18eの周面には、流入出孔18pが形成されている。
【0112】
前述の第1実施形態と同様の手順で(図7参照)、凍結管11aからの線材16aの導出部分を牽引機48で引っ張ることにより、凍結管11a内に供給管12b、流体管14a、14b、パッカー15c、15d、および線材16a、16b(図示省略)が挿入され、図13(a)に示すようにこれらが管内に配置される。また、凍結管11bからの線材16aの導出部分を引っ張ることにより、凍結管11b内に回収管13、流体管14a、14b、パッカー15d、15e、および線材16a、16b(図示省略)が挿入され、図13(b)に示すようにこれらが管内に配置される。そして、シールド管7、8内へ充填材を充填する充填工程と、凍結管11a、11b内へ不凍材を充満させる充満工程とを実行した後、各パッカー15c、15d、15eを膨張させる膨張工程を実行する。この膨張工程は、第1実施形態や第2実施形態の場合と基本的に同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0113】
膨張工程の実行により、パッカー15c、15d、15eが膨張して、凍結管11a内の一区間Xcがパッカー15d、15cにより閉塞され、凍結管11b内の他区間Xdがパッカー15d、15eにより閉塞される。供給管12bは閉塞区間Xcと連通しており、回収管13は閉塞区間Xdと連通している。
【0114】
次の循環凍結工程では、冷却器42で冷却された冷却材を、供給管12bに供給する。すると、冷却材は、図13(a)に矢印で示すように、供給管12bからパッカー15cの供給路18iを通って、閉塞区間Xcに供給される。さらに、冷却材は、閉塞区間Xcから分岐凍結管33aと中継管34(図12)と分岐凍結管33bとを通って、凍結管11b内の閉塞区間Xdに流入する。そして、閉塞区間Xc、Xdと分岐凍結管33a、33b内にある冷却材の冷熱が、シール管7、8内の充填材や周囲の地盤に伝わって、充填材と地盤が冷却される。
【0115】
閉塞区間Xc、Xdと分岐凍結管33a、33b内で冷熱を奪われた冷却材は、パッカー15eの回収路18jと回収管13を通って、冷却器42に回収される。そして、冷却材は、冷却器42で冷却された後、再び凍結管11a、11b内の閉塞区間Xc、Xdと分岐凍結管33a、33b内に供給されて、ここで冷熱を奪われた後、冷却器42へ回収される。このように、冷却材を、冷却器42と、凍結管11a、11b内の閉塞区間Xc、Xdと、分岐凍結管33a、33bとの間で循環させることを所定時間継続することで、閉塞区間Xc、Xdと分岐凍結管33a、33bの周囲にある充填材および地盤が凍結される。
【0116】
次の収縮工程では、各パッカーのラバー19の内側にある流体を、流入出孔18p、流体路18k、および流体管14bを通して、外部へ排気することにより、各パッカー15c、15d、15eを収縮させる。
【0117】
次の移動工程では、前記と同様に、凍結管11a、11bから導出された線材16b(図示省略)の後端部を牽引機48で引っ張ることにより、供給管12b、回収管13、流体管14b、およびパッカー15c、15d、15eを、凍結管11a、11b内で管軸方向(図13で右方向)に所定距離移動させる。そして、隣の分岐凍結管33aと凍結管11aとの分岐箇所を含む、凍結管11a内の一区間Xcの先方側に、パッカー15dを配置し、一区間Xcの後方側に、パッカー15cを配置する。また、隣の分岐凍結管33bと凍結管11bとの分岐箇所を含む、凍結管11b内の他区間Xdの先方側に、パッカー15dを配置し、他区間Xdの後方側に、パッカー15eを配置する。
【0118】
その後、上述したように膨張工程、循環凍結工程、収縮工程、および移動工程を順に繰り返し実行することで、凍結管11a、11bと分岐凍結管33a、33bの周囲にある地盤を所定の区間毎に凍結させて行く。また、各シールド管7、8内に設置された各凍結管11a、11bにおいて、上述した各工程を同様に実行して、各シールド管7、8の周囲にある地盤Gを凍結させ、凍土壁6を形成する(図1図2)。
【0119】
上述の第4実施形態によると、シールド管7,8内に設置された凍結管11a、11bにそれぞれ分岐凍結管33a、33bを複数連結し、対向する分岐凍結管33a、33bを中継管34で接続している。また、一方の凍結管11a内に供給管12b、流体管14a、14b、およびパッカー15d、15cが挿入され、他方の凍結管11b内に回収管13、流体管14a、14b、およびパッカー15d、15eが挿入されている。そして、冷却材を一方の凍結管11aの閉塞区間Xcと、分岐凍結管33a、33bと、他方の凍結管11bの閉塞区間Xdとに循環させている。
【0120】
そのため、凍結管11a、11b内のパッカー15c、15d、15eにより閉塞された一区間Xcと他区間Xdと分岐凍結管33a、33b内に冷却材を循環させて、この冷却材で凍結させる地盤の凍結範囲を広げることができる。また、各凍結管11a、11b内に挿入する管の数を減らすことができるので、各凍結管11a、11b内に対する管とパッカーなどの挿入と移動を容易に行うことができる。
【0121】
以上述べた実施形態では、地盤中に埋設されたシールド管7、8内に凍結管11、11a、11bを設置した例を示したが、以下の実施形態のように、地盤中に直接凍結管を設置してもよい。
【0122】
図14および図15は、地中構造物71の他の構築例を示した図である。図14には、地中構造物71の水平断面を示し、図15には、地中構造物71の垂直断面を示している。地中構造物71は、地盤G中に構築されるトンネルである。
【0123】
地中構造物71を構築するには、まず、図14(a)に示すように、地盤G中に所定の深さで複数の立坑72、73を構築する。次に、たとえば水平型ボーリングパイプとしても機能する凍結管11cを用いて、一方の立坑72から他方の立坑73に向かって、水平方向に地盤Gを掘削しながら、凍結管11cを地盤G中に設置する。この際、複数の立坑72、73の間にある地盤Gに対して、図15(a)に示すように、所定の間隔で複数の凍結管11cを環状に設置する。
【0124】
そして、各凍結管11cの周囲の地盤Gを凍結させる凍結工法を行う。この凍結工法は、たとえば図5図8に示した第1実施形態の凍結管ユニット10(凍結管11が凍結管11cに置き換わる)と、図3に示した設備とを用いて、前述した手順で行う。それにより、立坑72、73の間にある地盤G中に、高い強度と止水性能とを有する環状の凍土壁76が所定区間毎に形成される。
【0125】
その後、図14(b)および図15(b)に示すように、凍土壁76の内側の凍結されていない地盤Gを掘削し、覆工体79を筒状に組み立てて行く。この際、凍土壁76の外側の地盤Gが崩れず、凍土壁76の内側に地下水が浸水してくることがないので、掘削と覆工体79の組み立てを安全に行うことができる。それにより、複数の立坑72、73に連通する地中構造物71を確実に構築することができる。
【0126】
図16は、第5実施形態による凍結管ユニット10dの横断面図である。図16(a)と図16(b)は、凍結管ユニット10dに備わる凍結管11dの管軸周りに90°異なる断面となっている。
【0127】
凍結管11dは、地盤G中に鉛直方向に設置されている。凍結管11dの先端部(図16で下側の端部)は、予め閉塞されている。凍結管11d内には、供給管12b、流体管14b、線材16b、およびパッカー15aが挿入されている。凍結管11dの後端部(図16で上側の端部)は、地上に表出していて、閉塞部材29で閉塞されている。
【0128】
閉塞部材29には、複数の貫通孔29h、29i、29j、29kが形成されている。図16(a)に示すように、貫通孔29hと連通するように、閉塞部材29には回収管13の先端部が接続されている。つまり、回収管13は、凍結管11dの後端部近傍で凍結管11dの内部と連通している。回収管13の後端部は、中継分岐管61(図3)に連結されている。図16の例では、回収管13は凍結管11d内に挿入されていないが、他の例として、回収管13を貫通孔29hへ貫通させて、回収管13の先端部を凍結管11d内に挿入してもよい。
【0129】
図16(a)、(b)に示すように、貫通孔29i、29j、29kには、供給管12b、流体管14b、および線材16bが挿通されている。各貫通孔29i、29j、29kと供給管12b、流体管14b、および線材16bとの隙間は、図示しないシール部材により気密状態に封止されている。
【0130】
パッカー15aのフレーム18aには、供給路18i(図16(a))、流体路18k(図16(b))、および挿通孔18h(図16(b))が形成されている。図16(a)に示すように、フレーム18aの後端部には、供給路18iと連通するように、供給管12bの先端部が連結されている。供給路18iの一端部は、凍結管11d内を望むように開口している。供給管12bの後端部は、凍結管11dの外部にある中継分岐管60(図3)に連結されている。
【0131】
また、図16(b)に示すように、フレーム18aの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14bの先端部が連結されている。流体路18kは、フレーム18aの先端側で閉塞されている。流体管14bの後端部は、凍結管11dの外部にある流体供給源47(図3)に接続されている。
【0132】
また、図16(b)に示すように、フレーム18aの挿通孔18hには、線材16bの先端部が挿通されている。線材16bの先端部はフレーム18aに連結(固定)されている。挿通孔18hは、フレーム18aの先端側で閉塞されている。線材16bの後端部は、凍結管11dの外部にある牽引機48(図3)に連結されている。
【0133】
フレーム18aの周面には、ラバー19が保持部材20a、20b、21a、21bにより保持されている。また、フレーム18aの周面には、流体路18kと連通する流入出孔18pが形成されている。流入出孔18pは、ラバー19で覆われている。ラバー19とフレーム18aとの間には、スライダ20bをフレーム18aのフランジ部18y側へ摺動させることにより、ラバー19をフレーム18aの周面側へ引き寄せて、パッカー15aを収縮させるための、弾性部材23が設けられている。
【0134】
図17は、凍結管ユニット10dを用いて行う凍結工法の一工程を示した図である。図17では、図16(b)と同一平面の断面図を示している。
【0135】
凍結管ユニット10dを用いた凍結工法では、まず、図16および図17に示すように、凍結管11dを地盤G中に設置する(設置工程)。次に、凍結管11d内に、パッカー15a、線材16b、供給管12b、および流体管14bを挿入する(内挿工程)。この際、たとえば図17に示すように、凍結管11dの先端部近傍にパッカー15aが位置するように、一旦各部材を挿入する。それから、牽引機48(図3)により線材16を引っ張ることで、図16(b)に示すように、凍結させたい地盤G中の所定範囲の最下位置近傍にパッカー15aが位置するように、各部材を凍結管11dの管軸方向へ移動させる(移動工程)。この際、供給管12bと流体管14bが凍結管11d内で弛まないように、供給管12bと流体管14bも引っ張っておく。また、凍結管11dの後端部に回収管13を連結する。
【0136】
次に、流体供給源47(図3)から供給される流体を、流体管14bを通してパッカー15aの内部(流体路18k、流入出孔18p、およびフレーム18aとラバー19の間)に流入させて、凍結管11d内を閉塞するように、パッカー15aのラバー19を膨張させる(膨張工程)。これにより、図16(a)に示すように、凍結管11d内のパッカー15aより上方に閉塞区間Xsが形成される。次に、冷却器42(図3)により冷却された冷却材を、図3の配管57と中継分岐管60と図16(a)の供給管12bを通して、凍結管11d内のパッカー15a近傍から閉塞区間Xsへ供給する。そして、この閉塞区間Xs内の冷却材を凍結管11dの後端部近傍から回収管13と、図3の中継分岐管61と配管59を通して冷却器42へ回収するように、当該冷却材を循環させて、閉塞区間Xsの周囲の地盤Gを凍結させる(循環凍結工程)。図16(a)では、地盤G中の凍結させた部分をクロスハッチングで示している。
【0137】
閉塞区間Xsの周囲の地盤Gを凍結させた後は、上記冷却材の循環を停止してから、パッカー15aの内部(フレーム18aとラバー19の間)の流体を、流体管14bを通して流出させて、パッカー15aのラバー19を収縮させる(収縮工程)。そして、凍結管11dの後端部から閉塞部材29を外して、線材16bを引っ張ることにより、凍結管11d内から供給管12b、流体管14b、線材16b、およびパッカー15aを抜き出して、これらを回収する。また、回収管13も回収する。
【0138】
図18は、第6実施形態による凍結管ユニット10eの横断面図である。図18(a)と図18(b)は、凍結管ユニット10eに備わる凍結管11dの管軸周りに90°異なる断面となっている。
【0139】
凍結管11dは、地盤G中に鉛直方向に設置されている。凍結管11dの先端部は、予め閉塞されている。凍結管11d内には、供給管12a、12b、回収管13、流体管14b、線材16b、およびパッカー15bが挿入されている。凍結管11dの後端部は、地上に表出していて、閉塞部材29で閉塞されている。閉塞部材29に形成された各貫通孔29h、29i、29j、29kには、回収管13、供給管12b、流体管14b、および線材16bがそれぞれ挿通されている。
【0140】
パッカー15bのフレーム18bには、供給路18i(図18(a))、回収路18j(図18(a))、流体路18k(図18(b))、および挿通孔18h(図18(b))が形成されている。図18(a)に示すように、フレーム18bの先端部(図18で下側の端部)には、供給路18iと連通するように、供給管12aの後端部が連結されている。供給管12aは、所定の長さを有していて、先端部が開口している。フレーム18bの後端部(図18で上側の端部)には、供給路18iと連通するように、供給管12bの先端部が連結されている。供給管12bの後端部は、凍結管11dの外部にある中継分岐管60(図3)に連結されている。
【0141】
また、図18(a)に示すように、フレーム18bの後端部には、回収路18jと連通するように、回収管13の先端部が連結されている。回収路18jは、フレーム18bの先端側で凍結管11d内を臨むように開口している。回収管13の後端部は、凍結管11dの外部にある中継分岐管61(図3)に連結されている。
【0142】
また、図18(b)に示すように、フレーム18bの後端部には、流体路18kと連通するように、流体管14bの先端部が連結されている。流体路18kは、フレーム18bの先端側で閉塞されている。流体管14bの後端部は、凍結管11dの外部にある流体供給源47(図3)に接続されている。
【0143】
また、図18(b)に示すように、フレーム18aの挿通孔18hには、線材16bの先端部が挿通されている。線材16bの先端部はフレーム18bに連結(固定)されている。挿通孔18hは、フレーム18bの先端側で閉塞されている。線材16bの後端部は、凍結管11dの外部にある牽引機48(図3)に連結されている。
【0144】
フレーム18bの周面には、ラバー19が保持部材20a、20b、21a、21bにより保持されている。また、フレーム18bの周面には、流体路18kと連通する流入出孔18pが形成されている。流入出孔18pは、ラバー19で覆われている。ラバー19とフレーム18bとの間には、スライダ20bを介してラバー19をフレーム18bの周面側へ引き寄せて、パッカー15bを収縮させるための、弾性部材23が設けられている。
【0145】
図19は、凍結管ユニット10eを用いて行う凍結工法の一工程を示した図である。図19では、図18(b)と同一平面の断面図を示している。
【0146】
凍結管ユニット10eを用いた凍結工法では、まず、図18および図19に示すように、凍結管11dを地盤G中に設置する(設置工程)。次に、凍結管11d内に、パッカー15b、線材16b、供給管12a、12b、回収管13、および流体管14bを挿入する(内挿工程)。この際、たとえば図19に示すように、凍結管11dの先端部近傍に供給管12aの先端部が位置するように、一旦各部材を挿入する。それから、牽引機48(図3)により線材16bを引っ張ることで、図18(b)に示すように、凍結させたい地盤G中の所定範囲の最上位置近傍にパッカー15bが位置するように、各部材を凍結管11dの管軸方向へ移動させる(移動工程)。この際、供給管12a、12b、回収管13、および流体管14bが凍結管11d内で弛まないように、これらの管も引っ張っておく。
【0147】
次に、流体供給源47(図3)から供給される流体を、流体管14bを通してパッカー15bの内部(流体路18k、流入出孔18p、およびフレーム18bとラバー19の間)に流入させて、凍結管11d内を閉塞するように、パッカー15bのラバー19を膨張させる(膨張工程)。これにより、図18(a)に示すように、凍結管11d内のパッカー15bより下方に閉塞区間Xtが形成される。次に、冷却器42(図3)により冷却された冷却材を、図3の配管57と中継分岐管60と図18(a)の供給管12a、12bを通して、凍結管11dの先端部近傍から閉塞区間Xtへ供給する。そして、この閉塞区間Xt内の冷却材を凍結管11d内のパッカー15b近傍から回収管13と、図3の中継分岐管61と配管59を通して冷却器42へ回収するように、当該冷却材を循環させて、閉塞区間Xtの周囲の地盤Gを凍結させる(循環凍結工程)。図18(a)では、地盤G中の凍結させた部分をクロスハッチングで示している。
【0148】
閉塞区間Xtの周囲の地盤Gを凍結させた後は、上記冷却材の循環を停止してから、パッカー15b内の流体を流体管14bを通して流出させて、パッカー15bを収縮させる(収縮工程)。そして、凍結管11dの後端部から閉塞部材29を外して、線材16bを引っ張ることにより、凍結管11d内から供給管12a、12b、回収管13、流体管14b、線材16b、およびパッカー15bを抜き出して、これらを回収する。
【0149】
上述の第5実施形態および第6実施形態によると、凍結管11d内の所定位置に挿入したパッカー15a、15bに流体管14bを通して流体を流入させて、パッカー15a、15bを膨張させることで、凍結管11dの管軸方向の一方側がパッカー15a、15bにより閉塞される。また、凍結管11dの管軸方向の他方側が予め閉塞されているため、凍結管11d内に所定の長さを有した閉塞区間Xs、Xtが形成される。そして、その閉塞区間Xs、Xtの一端側から供給管12a、12bを通して冷却材を供給し、閉塞区間Xs、Xtの他端側から回収管13を通して冷却材を回収するように、冷却材を循環させている。このため、冷却材を閉塞区間Xs、Xtに隈なく行き渡らせて、閉塞区間Xs、Xtの周囲にある所定範囲の地盤Gをムラなく効率よく凍結させることができる。
【0150】
また、地盤G中に凍結管11dを設置した後であっても、地質や周囲環境の変化やその他の事情に応じて、線材16bなどを引っ張ることで、凍結管11d内でのパッカー15a、15bの配置位置を変えて、閉塞区間Xs、Xtの大きさや位置を容易に変更することができる。このため、地盤G中の所定の箇所だけを凍結させることが可能となり、また、地盤G中の凍結箇所や凍結範囲を容易に変更することが可能となる。
【0151】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。
【0152】
たとえば、前記の第1~第4実施形態では、凍結管内に冷却材を循環させる循環系統を1つ設けて、凍結管の管軸方向における1つのスパン毎に周囲の地盤を凍結させた例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、循環系統を構成する供給管と回収管を、凍結管の管径方向に並ぶように複数の凍結管内に挿入することにより、凍結管内に冷却材を循環させる循環系統を複数設けてもよい。そして、各循環系統で冷却材を供給する凍結管内の閉塞区間を管軸方向にずらし、複数の循環系統で同時に冷却材を循環させて、複数のスパンの周囲の地盤を同時に凍結させてもよい。この場合、3つ以上のパッカーを凍結管内に管軸方向に所定の間隔で配置して、各供給管と各回収管を各パッカーに適宜数連結すればよい。
【0153】
また、前記の第1~第4実施形態では、シールド管内への凍結管の設置工程と、凍結管内への供給管、回収管、流体管、およびパッカーなどの内挿工程の後に、シールド管内への充填材の充填工程を実行した例を示したが、充填工程は設置工程の後でかつ内挿工程の前に実行してもよい。
【0154】
また、以上の実施形態では、パッカーに連結した線材を引っ張ることにより、パッカーを凍結管内で管軸方向に移動させた例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、線材を省略して、供給管、回収管、または流体管を引っ張ることにより、パッカーを移動させてもよい。
【0155】
また、第1実施形態では、凍結管の最も先端側に配置されるパッカーに連結した線材16aを、凍結管の先端部に設けた滑車27(図7)を通して方向転換した後、凍結管の後端部から導出し、当該線材16aの後端部を引っ張ることにより、供給管、回収管、流体管、およびパッカーを凍結管内に挿入した例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、滑車27を設けることなく、凍結管の最も先端側に配置されるパッカーに連結した線材を、凍結管の後端部から挿入し、凍結管内を通して凍結管の先端部から導出し、この線材の導出部分を引っ張ることにより、供給管、回収管、流体管、およびパッカーを凍結管内に挿入し、または移動させてもよい。
【0156】
また、以上の実施形態では、パッカーのラバーの内側に設けた弾性部材の弾性力により、ラバーを収縮し易くした例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、吸引機で流体管などを通してパッカーのラバーの内側にある流体を吸引することにより、パッカーを強制的に収縮させてもよい。
【0157】
また、以上の実施形態では、パッカーに対して供給管、回収管、または流体管が固定されている例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、供給管、回収管、または流体管といった内管を凍結管の管軸方向へ摺動可能に保持する機構をパッカーのフレームに設けて、パッカーからの内管の突出長を可変できるようにしてもよい。
【0158】
また、以上の実施形態では、凍結管内に形成された閉塞区間に対して、凍結管の先端側から冷却材を供給し、凍結管の後端側から冷却材を回収するように、供給管と回収管を配置した例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。逆に、凍結管内に形成された閉塞区間に対して、凍結管の後端側から冷却材を供給し、凍結管の先端側から冷却材を回収するように、供給管と回収管を配置してもよい。
【0159】
さらに、以上の実施形態では、大深度における大断面の地中構造物を構築する際に、周囲の地盤中に凍土壁を形成するために、本発明の地盤凍結工法と凍結管ユニットを適用した例を挙げたが、その他の用途の凍土壁を形成する場合にも、本発明の地盤凍結工法と凍結管ユニットを適用することができる。
【符号の説明】
【0160】
7、8 シールド管(大径管)
10、10a、10b、10c、10d、10e 凍結管ユニット
11、11a、11b、11c、11d 凍結管
12a、12b、12c 供給管
13 回収管
14a、14b、14c 流体管
15a、15b、15c、15d、15e パッカー
16a、16b 線材
17 保持台車
17a、17b、17c、17d、17e 保持部
17t 車輪
18a、18b、18c、18d、18e フレーム
19 ラバー
20a スリーブ(保持部材)
20b スライダ(保持部材)
21a、21b 保持リング(保持部材)
23 弾性部材
27 滑車
31、32、33a、33b 分岐凍結管
40 冷凍機
47 流体供給源
G 地盤
X、Xs、Xt 閉塞区間
Xa、Xc 一区間(閉塞区間)
Xb、Xd 他区間(閉塞区間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19