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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】ボトル缶、キャップ付きボトル缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230206BHJP
   B21D 51/38 20060101ALI20230206BHJP
   B21D 51/50 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B65D1/02 212
B21D51/38 C
B21D51/38 E
B21D51/50
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017245234
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2018135153
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2016254020
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017029047
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】実末 一
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-036255(JP,A)
【文献】特開2016-196331(JP,A)
【文献】特開2002-096895(JP,A)
【文献】特開2006-176183(JP,A)
【文献】意匠登録第1174331(JP,S)
【文献】意匠登録第1258938(JP,S)
【文献】特開2007-91330(JP,A)
【文献】特許第4570838(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0127077(US,A1)
【文献】国際公開第2012/133391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B21D 51/38
B21D 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口金部にキャップが螺着される構成とされたボトル缶であって、
前記口金部は、缶軸方向上側の始端および缶軸方向下側の終端の間で螺設された雄ネジ部と、
この雄ネジ部の缶軸方向下端に連設されるとともに、下方に向かうに従い漸次拡径された第1周壁部、および該第1周壁部の下端に径方向外方へ凸とされた凸曲面部を介して連設されるとともに、下方に向かうに従い漸次縮径された第2周壁部を有する膨出部とを備え、
前記第1周壁部は、この第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部のネジ谷と前記凸曲面部との間に、第1直線部を有し、
前記第1直線部は、前記缶軸に沿った前記口金部の断面において直線状に延び、
前記第1直線部は、前記膨出部の全周に亙って設けられ、
この第1直線部が前記断面において前記缶軸に平行な直線に対してなす傾斜角度が、前記膨出部の全周に亙って13.9°以下であり、
前記傾斜角度は、前記凸曲面部と、前記第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部の前記ネジ谷との間の間隔により周方向に向けて変化してゆき、この間隔が最も小さくなる前記雄ネジ部の最下部周辺において最大となり、
前記第2周壁部は、前記缶軸に沿った前記口金部の断面において直線状に延びる第2直線部を前記膨出部の全周に亙って有し、
前記断面において、前記凸曲面部に外接する缶軸を中心とした円筒面がなす直線と前記第2直線部との交点と、前記第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部のネジ谷の谷底との間の缶軸方向の距離が、前記膨出部の全周に亙って3.9mm以上であることを特徴とするボトル缶。
【請求項2】
前記傾斜角度は、前記膨出部の全周に亙って10°以下であることを特徴とする請求項1に記載のボトル缶。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のボトル缶と、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成された有底筒状のキャップとを備えたことを特徴とするキャップ付きボトル缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上端部の外周に雄ネジ部が形成されたネジ付きのボトル缶、およびこのボトル缶にキャップが取り付けられたキャップ付きボトル缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有底円筒状のボトル缶体の開口部を縮径して形成されたボトル缶の口金部には、この口金部を閉塞するキャップに形成された雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が形成されている。また、こうした雄ネジ部の下側(ボトル缶体の底部側)には、雄ネジ部の形成されていない拡径部分を残した膨出部が形成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
こうした口金部における雄ネジ部の下側に形成されている膨出部は、雄ネジ部から缶軸方向の下方に向かうに従い漸次拡径された第1周壁部と、この第1周壁部の下端に連なり、径方向外方へ凸とされた凸曲面部と、この凸曲面部の下端に連なり、缶軸方向の下方に向かうに従い漸次縮径された第2周壁部とから構成されている。
【0004】
近年、ボトル缶の軽量化のために、缶本体の薄肉化を検討している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4570838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ボトル缶が従来よりも薄肉化されると、口金部の成形時に加わる応力によって膨出部が座屈して口金部が缶軸方向から見て楕円形に変形してしまい、例えばキャップを取り付けた後に一旦取り外したキャップを再び雄ネジ部にねじ込んで口金部にリシールする際のリシールトルクが増大するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、口金部に加工応力が加わっても、口金部を構成する膨出部が座屈することを防止できるボトル缶、およびキャップ付きボトル缶を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の発明者等が鋭意研究した結果、特に口金部において雄ネジ部の下端は膨出部に入り込む形となっているので、口金部の成形時に缶軸方向に作用する応力により、特にボトル缶を薄肉化した場合には雄ネジ部の最下部を起点として膨出部が座屈して口金部が楕円形に変形し易くなるとの知見を得るに至った。
【0009】
そこで、このような知見に基づき、本発明のボトル缶は、口金部にキャップが螺着される構成とされたボトル缶であって、前記口金部は、缶軸方向上側の始端および缶軸方向下側の終端の間で螺設された雄ネジ部と、この雄ネジ部の缶軸方向下端に連設されるとともに、下方に向かうに従い漸次拡径された第1周壁部、および該第1周壁部の下端に径方向外方へ凸とされた凸曲面部を介して連設されるとともに、下方に向かうに従い漸次縮径された第2周壁部を有する膨出部とを備え、前記第1周壁部は、この第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部のネジ谷と前記凸曲面部との間に、第1直線部を有し、前記第1直線部は、前記缶軸に沿った前記口金部の断面において直線状に延び、前記第1直線部は、前記膨出部の全周に亙って設けられ、この第1直線部が前記断面において前記缶軸に平行な直線に対してなす傾斜角度が、前記膨出部の全周に亙って13.9°以下であり、前記傾斜角度は、前記凸曲面部と、前記第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部の前記ネジ谷との間の間隔により周方向に向けて変化してゆき、この間隔が最も小さくなる前記雄ネジ部の最下部周辺において最大となり、前記第2周壁部は、前記缶軸に沿った前記口金部の断面において直線状に延びる第2直線部を前記膨出部の全周に亙って有し、前記断面において、前記凸曲面部に外接する缶軸を中心とした円筒面がなす直線と前記第2直線部との交点と、前記第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部のネジ谷の谷底との間の缶軸方向の距離が、前記膨出部の全周に亙って3.9mm以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のキャップ付きボトル缶は、このようなボトル缶と、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成された有底筒状のキャップとを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のボトル缶およびキャップ付きボトル缶によれば、膨出部の第1周壁部が、この第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する雄ネジ部のネジ谷と前記凸曲面部との間に、缶軸に沿った前記口金部の断面において直線状に延びる第1直線部を前記膨出部の全周に亙って有しており、この第1直線部が前記断面において前記缶軸に平行な直線に対してなす傾斜角度が前記膨出部の全周に亙って13.9°以下であって、缶軸と平行に近い角度とされている。このため、口金部を含むボトル缶が薄肉化されても、口金部の成形時に缶軸方向に作用する応力に対する強度を膨出部の全周に亙って向上させることができ、雄ネジ部の最下部を起点として膨出部が座屈するのを防止することができる。
また、前記第2周壁部が、前記缶軸に沿った前記口金部の断面において直線状に延びる第2直線部を前記膨出部の全周に亙って有し、前記断面において、前記凸曲面部に外接する缶軸を中心とした円筒面がなす直線と前記第2直線部との交点と、前記第1周壁部の缶軸方向上側に隣接する前記雄ネジ部のネジ谷の谷底との間の缶軸方向の距離は、前記膨出部の全周に亙って3.9mm以上である。これにより、膨出部の前記第1直線部の缶軸方向の長さを確保して、缶軸方向に作用する応力に対する強度をさらに一層確実に向上させることができる。
【0012】
ここで、このような膨出部の缶軸方向に作用する応力に対する強度を一層確実に向上させるには、前記傾斜角度は、前記膨出部の全周に亙って10°以下であって、第1直線部の傾斜角度がより缶軸と平行に近い角度とされることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、缶本体を薄肉化した場合でも、口金部に作用する缶軸方向の応力によって口金部を構成する膨出部が座屈するのを防止することができるボトル缶、キャップ付きボトル缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のボトル缶の一実施形態を示す一部破断側面図である。
図2図1に示す実施形態の口金部周辺を示す拡大側面図である。
図3図1に示す実施形態にキャップを取り付けた本発明のキャップ付きボトル缶の一実施形態の口金部周辺を示す一部破断側面図である。
図4図2のZZ断面(缶軸に沿った断面)を示す拡大断面図である。
図5図1ないし図4に示す実施形態の変形例を示す、図2のZZ断面に相当する拡大断面図である。
図6】本発明の実施例に対する比較例における図2のZZ断面に相当する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1およびは、本発明のボトル缶の一実施形態を示すものであり、図は、本発明のキャップ付きボトル缶の一実施形態を示すものである。本実施形態のボトル缶1は、底部2と、この底部2と一体に形成されて底部2の外周縁から上端側(図1において上側)に延びる外周部3とを備えた缶軸Cを中心とする概略多段の有底円筒状を成す缶本体11を有する。
【0017】
底部2には、缶軸C方向の内側(缶本体11の上端側)に凹む断面略円弧状のドーム部2aが中央に形成されるとともに、このドーム部2aの外周には缶軸C方向の外側(缶本体11の下端側)に突出する環状凸部2bが缶軸C回りの周方向に連続して形成されている。
【0018】
また、外周部3には底部2から缶本体11の上端側の開口部4に向けて順に、缶軸Cを中心とした円筒状の胴部5と、上端側に向かうに従い一定の傾斜で漸次縮径する円錐台面状の肩部6と、この肩部6からさらに上端側に向かって延びる筒状の首部7と、首部7の上端から外周側に張り出す膨出部8と、雄ネジ部9と、カール部10とが形成され、首部7よりも上側のこれら膨出部8、雄ネジ部9、カール部10を含む部分が口金部12を構成している。
【0019】
図2は、この口金部12の周辺を示す拡大側面図である。雄ネジ部9は、カール部10側から缶軸C方向から見た平面視において時計回り方向に向かうに従い下端側に向かって螺旋状に螺設されており、ネジ山9aが缶軸C方向上側の始端から不完全ネジ部9bにおいて徐々に外周側に突出し、ネジ始まり部9cにおいてネジ山9aの左右が略対称なネジとして有効に機能する完全ネジ部9dとなる。さらに、雄ネジ部9は、この完全ネジ部9dにおいてネジ山9aが1巻以上(例えば2.2巻)周回したところで内周側に徐々に後退して再び不完全ネジ部9bとなり、缶軸C方向下側の終端において膨出部8の上端部に没する。
【0020】
この膨出部8は、図3に拡大して示すように、缶本体11の下方に向かうに従い漸次拡径された第1周壁部8aと、この第1周壁部8aの下端に繋がり、径方向外方へ凸とされた凸曲面部8bと、この凸曲面部8bの下端に繋がり、缶本体11の下方に向かうに従い漸次縮径された第2周壁部8cとを備えている。
【0021】
そして、第1周壁部8aは、この第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷9eと凸曲面部8bとの間に、図に示すように缶軸Cに沿った口金部12の断面において直線状に延びる第1直線部8dを膨出部8の全周に亙って有しており、この第1直線部8dが前記断面において缶軸Cに平行な直線L1に対してなす傾斜角度θは、雄ネジ部9の最下部を含めて膨出部8の全周に亙って13.9°以下とされている。ここで、図は、雄ネジ部9の最下部付近において傾斜角度θが13.873°の場合を示している。
【0022】
このような傾斜角度θは、膨出部8の凸曲面部8bと、第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷9eとの間の間隔により周方向に向けて変化してゆき、この間隔が最も小さくなる雄ネジ部9の最下部周辺において最大となる。そして、この最大となる傾斜角度θが、本実施形態では13.9°以下の13.873°とされている。
【0023】
また、本実施形態では、前記第2周壁部8cも、缶軸Cに沿った口金部12の断面において直線状に延びる第2直線部8eを膨出部8の全周に亙って有している。そして、前記断面において、凸曲面部8bに外接する缶軸Cを中心とした円筒面がなす直線L2と第2直線部8eの延長線L3との交点Pと、第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷9eの谷底との間の缶軸C方向の距離Dは、本実施形態では膨出部8の全周に亙って3.9mm以上とされている。
【0024】
このようなボトル缶1を製造するには、まずカッピングプレス機によるカッピングプレス工程においてアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属板を円板状に打ち抜いて絞り加工を施すことにより深さの浅いカップ状素材を製造する。次いで、このカップ状素材にDIプレス機によるDIプレス工程において再絞りおよびしごき加工を施して缶軸C方向に延伸することにより、底部2に前記ドーム部2aと環状凸部2bが形成された有底円筒体(DI缶)を成形する。
【0025】
カッピングプレス工程においてカップ状素材に成形される金属板は、本実施形態では元板厚が0.285mm~0.300mmのJIS H 4000におけるA3004またはA3104のアルミニウム合金板であって、205℃×20分ベーキング後の0.2%耐力が235N/mm~265N/mmの範囲のものが用いられる。
【0026】
また、このカップ状素材から成形される有底円筒体には、外周部に前記缶軸Cを中心とした円筒部が形成され、この円筒部の外径は缶本体11の胴部5の外径と略等しい一定外径である。ただし、この円筒部は、その上端側部分の厚さが0.220mm~0.225mmの範囲である一方で、下端側部分の厚さは0.110mm~0.135mmの範囲であって、上端側部分よりも薄い。
【0027】
このように成形された有底円筒体は、第1の洗浄工程において洗浄、乾燥され、次いで塗装工程において内外面に塗装が施されて焼き付けられる。そして、塗装が施された有底円筒体は、ボトルネッカーによるボトルネック成形工程において、円筒部の前記上端側部分の下端側が金型によって縮径されて前記肩部6と首部7が成形される。
【0028】
次いで、首部7の上端側が拡径工具によって拡径されて前記膨出部8が形成されるとともに、この膨出部8よりもさらに上端側にねじ切り加工が施されて前記雄ネジ部9が形成される。さらに、雄ネジ部9よりも上端側が外周側に折り返されてカールされてからスロットル加工によって潰されてカール部10が形成され、図1に示したようなボトル缶1の缶本体11に成形される。
【0029】
こうして成形された缶本体11は、第2の洗浄工程によって洗浄、乾燥された後に、検査工程においてピンホールの有無や外面の異物付着、傷、汚れ、印刷不良等が検査されて飲料工場等に搬送され、飲料等の内容物が充填された後に、図3に示すように開口部4を覆ってカール部10から雄ネジ部9および膨出部8にかけてキャップ20が取り付けられて封止され、本発明の一実施形態のキャップ付きボトル缶21として出荷される。なお、缶本体11の前記各工程の間や各工程中には、有底円筒体の上端縁を切断するトリミングや、必要に応じて底部の環状凸部2bの断面形状を再成形するボトムリフォームが行われる。
【0030】
キャップ20は、缶本体11のカール部10を覆う天板部22と、雄ネジ部9を覆う周壁部23とが一体に形成されてなる。周壁部23には、雄ネジ部9に螺合する雌ネジ部24が形成されて螺着されるとともに、この雌ネジ部24よりも下側の周壁部23の下端縁が膨出部8の第2周壁部8cに巻締められている。また、キャップ20の天板部22と口金部12との間には、シール部材(シーリングライナー)26が配されている。このように、缶本体11に形成された雄ネジ部9と、キャップ20に形成された雌ネジ部24によって、キャップ20の開栓後も、キャップ20の再閉栓(リシール)が自在にされる。
【0031】
このように構成されたボトル缶1およびキャップ付きボトル缶21によれば、膨出部8の第1周壁部8aが、この第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷9eと凸曲面部8bとの間に、缶軸Cに沿った口金部12の断面において直線状に延びる第1直線部8dを膨出部8の全周に亙って有しており、この第1直線部8dが断面において缶軸Cに平行な直線L1に対してなす傾斜角度θは、膨出部8の全周に亙って13.9°以下であって、すなわち缶軸Cと平行に近い角度とされている。
【0032】
このため、口金部12の成形時に缶軸C方向に作用する応力に対する強度を膨出部8の全周に亙って向上させることができるので、口金部12を含めてボトル缶1の缶本体11が薄肉化しても、雄ネジ部9の最下部を起点として膨出部8が座屈するのを防止することができる。従って、このような膨出部8の座屈による口金部12の変形によって雄ネジ部9とキャップ20の雌ネジ部24との摩擦抵抗が増大し、上述したキャップ20のリシールの際に要するトルクが大きくなって再閉栓し難くなるのを防ぐことができる。
【0033】
ここで、このような膨出部8の缶軸C方向に作用する応力に対する強度を一層確実に向上させるには、前記傾斜角度θは10°以下であるのが望ましい。図5に示したのは、この傾斜角度θが7.85°の場合であり、図4に示した13.873°の場合よりも第1直線部8dが缶軸Cに平行に近く、口金部12の成形時に缶軸C方向に作用する応力に対する強度を一層向上させて、膨出部8の座屈による口金部12の変形をさらに確実に防止することができる。
【0034】
これらの実施形態に対して、図6は、後述する本発明の実施例に対する比較例において傾斜角度θが22.866°の場合であり、説明のために実施形態と相当する部分には同一の符号を配してあるが、第1直線部8dが缶軸Cに平行な直線L1に対して大きく傾斜しているので、缶軸C方向に作用する応力によって膨出部8に座屈が発生し易いことが分かる。なお、前記傾斜角度θの下限値は0°よりも大きければよいが、実際には7.1°程度までとされるのが望ましい。
【0035】
さらに、本実施形態では、膨出部8の第2周壁部8cも、缶軸Cに沿った口金部12の断面において直線状に延びる第2直線部8eを膨出部8の全周に亙って有しており、前記断面において、凸曲面部8bに外接する缶軸Cを中心とした円筒面がなす直線L2と第2直線部8eとの交点Pと、第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷9eの谷底との間の缶軸C方向の距離Dが、やはり膨出部8の全周に亙って3.9mm以上とされている。
【0036】
これに伴い、上述のように缶軸Cに平行に近い傾斜角度θの膨出部8における第1直線部8dの缶軸C方向の長さも長く確保することができるので、缶軸C方向に作用する応力に対する強度をさらに一層確実に向上させることができる。ただし、この距離Dが長くなりすぎると、下端縁が膨出部8の第2周壁部8cに巻締められるキャップ20の周壁部23の缶軸C方向の長さも長くなり、キャップ付きボトル缶21としての軽量化を損ねることになるので、距離Dは7.0mm程度までとされるのが望ましい。
【実施例
【0037】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明の効果について実証する。本実施例では、前記の実施形態に基づき、膨出部8の第1直線部8dが缶軸Cに沿った断面において缶軸Cに平行な直線L1に対してなす傾斜角度θが膨出部8の全周に亙って13.9°以下のボトル缶1を5種、それぞれ10缶ずつ成形し、キャップ20をキャッピングしてキャップ付きボトル缶21を製造した。
【0038】
また、この実施例に対する比較例として、最大の傾斜角度が13.9°よりも大きなボトル缶を5種、それぞれ10缶ずつ成形し、同じくキャップ20をキャッピングしてキャップ付きボトル缶を製造した。これらを、傾斜角度が大きいものからそれぞれ実施例1~5、比較例1~5として、最大の傾斜角度の大きいものから順に、最大の傾斜角度および最短の前記距離Dとともに表1に示す。そして、これら実施例1~5と比較例1~5のキャップ付きボトル缶について、キャップを一旦開栓してから再び口金部12にねじ込んでリシールする際のリシールトルクを測定し、リシール性を確認して評価した。
【0039】
なお、これら実施例1~5と比較例1~5のボトル缶は、充填される飲料等の内容量が310ml用のものであって、底部2から開口部4までの缶軸C方向の缶高さが132.6mm、胴部5の直径が約66mm、雄ネジ部9の外径が37mm、雄ネジ部9のネジ山9aの高さが0.72mm、膨出部8の外径は37.8mmであった。
【0040】
また、キャッピングの際には、口金部12に天板部と周壁部を有する有底筒状のキャップ成形体を被せて、900N~1000Nの缶軸C方向の垂直荷重(トッププレッシャー)を加えることにより天板部外周を絞り加工して段部を成形するとともに、缶軸Cに対する径方向内周側に120N~140Nのスレッドローラー先端荷重で周壁部にスレッドローラーにより雄ネジ部9に倣うように雌ネジ部24を成形し、さらに同じく缶軸Cに対する径方向内周側に90N~110Nのスカートローラー先端荷重で周壁部の下端縁をスカートローラーによって膨出部8の第2周壁部8cに巻き締め(裾締め)した。
【0041】
そして、リシール性については、こうしてキャッピングされて口金部12に取り付けられたキャップを一旦開栓してから再び口金部12にねじ込んで、元の位置よりも手前に30°まで戻してリシールしたときに要した最大リシールトルクを測定し、この最大リシールトルクが10缶中で10N・cm以上となった缶数を表1に記載するとともに、評価としては10缶中で最大リシールトルクが10N・cm以上となった缶数が0缶であった場合を丸印、1缶だけであった場合を三角印、2缶以上であった場合をバツ印とした。
【0042】
【表1】
【0043】
この表1の結果より、最大の傾斜角度が13.9°よりも大きい比較例1~5のキャップ付きボトル缶では、キャッピングの際の缶軸C方向の成形荷重によって膨出部に座屈が生じて口金部12が変形し、缶本体の雄ネジ部とキャップの雌ネジ部との摩擦抵抗が増大することにより、10N・cm以上のリシールトルクを要する缶が10缶中で2缶以上となった。これに対して、実施例1~5のキャップ付きボトル缶では、10N・cm以上のリシールトルクを要する缶が10缶中で2缶を越えることはなく、特に傾斜角度が10°以下の実施例4、5と、実施例2では10N・cm以上のリシールトルクを要する缶は無かった。
【符号の説明】
【0044】
1 ボトル缶
2 底部
3 外周部
4 開口部
5 胴部
6 肩部
7 首部
8 膨出部
8a 第1周壁部
8b 凸曲面部
8c 第2周壁部
8d 第1直線部
8e 第2直線部
9 雄ネジ部
9e 第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷
10 カール部
11 缶本体
12 口金部
20 キャップ
21 キャップ付きボトル缶
24 雌ネジ部
C 缶軸
L1 缶軸Cに沿った断面における缶軸Cに平行な直線
L2 缶軸Cに沿った断面において凸曲面部8bに外接する缶軸Cを中心とした円筒面がなす直線
L3 缶軸Cに沿った断面における第2直線部8eの延長線
P 直線L2と延長線L3との交点
D 缶軸Cに沿った断面における交点Pと、第1周壁部8aの缶軸C方向上側に隣接する雄ネジ部9のネジ谷9eの谷底との間の缶軸C方向の距離
θ 第1直線部8dが缶軸Cに沿った断面において直線L1に対してなす傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6