(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20230206BHJP
C25D 21/10 20060101ALI20230206BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C25D17/08 L
C25D17/08 G
C25D21/10 301
C25D17/10 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018139056
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518264310
【氏名又は名称】セムシスコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEMSYSCO GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolingerstrasse 7C 5020 Salzburg Republic of Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グライスナー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルンスベルガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エツリンゲル,ヘルベルト
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0308955(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0248361(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024178(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318977(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/08 - 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体中における基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム(10)であって、
第1の素子(A)と、
第2の素子(B)と、
ロックユニット(50)と
を備え、
前記第1の素子(A)および前記第2の素子(B)は、互いの間に前記基板(30)を保持するように構成され、
前記ロックユニット(50)は、前記第1の素子(A)および前記第2の素子(B)を互いにロックするように構成され、
前記ロックユニット(50)は、磁石制御装置と、少なくとも1つの磁石(51)とを含み、
前記磁石(51)は、前記第1の素子(A)に配置され、前記第2の素子(B)は磁性材料を少なくとも部分的に含み、
前記磁石制御装置は、前記第1の素子(A)と前記第2の素子(B)との間の磁力を制御するように構成され、
前記磁石制御装置は、前記第1の素子(A)に対する前記第2の素子(B)の反発を可能にするために永久磁石の磁力を反転させるように構成された、
基板ロックシステム(10)。
【請求項2】
前記第1の素子(A)は第1の接触リング(46)であり、前記第2の素子(B)は第2の接触リング(46)であり、両方が互いの間に1つの基板(30)を保持するように構成された、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項3】
前記第1の素子(A)は基板ホルダ(20)であり、前記第2の素子(B)は接触ループ(40)であり、両方が互いの間に1つの基板(30)を保持するように構成された、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項4】
前記基板ホルダの裏面と追加の接触ループ(41)との間に追加の基板(30)を保持するように構成された前記追加の接触ループ(41)をさらに備える、請求項3に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項5】
前記磁石(51)は、前記第1の素子(A)を前記第2の素子(B)へロックするように構成された永久磁石である、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項6】
前記ロックユニット(50)は、保持されることになる前記基板(30)に沿って前記第1の素子(A)に分布した幾つかの磁石(51)を含む、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項7】
前記磁石制御装置は、前記第1の素子(A)からの前記第2の素子(B)の解放を可能にするために前記永久磁石の前記磁力を少なくとも減少させるように構成された、請求項5に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項8】
前記磁石制御装置は、前記第1の素子(A)からの前記第2の素子(B)の解放を可能にするために前記永久磁石の前記磁力を消失させるように構成された、請求項5に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項9】
前記磁石制御装置は、電圧を印加することによって前記第1の素子(A)と前記第2の素子(B)との間の前記磁力を制御するように構成された、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項10】
前記第2の素子(B)は少なくとも部分的に導電性である、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項11】
前記第2の素子(B)は、磁性材料でできたいくつかの接触フィンガ(42)を含む、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項12】
前記第2の素子(B)は、前記第1の素子(A)に分布した幾つかの磁石(51)と接触して配置されることになる接触フィンガ(42)の幾つかのアレイを含む、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項13】
前記第1の素子(A)は、前記第1の素子(A)に沿って延びる少なくとも1つの導電体ロッド(27)を含む、請求項1のうちの何れか一項に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項14】
前記第1の素子(A)に分布した幾つかの磁石(51)と接触して配置されることになる接触フィンガ(42)の一端は前記磁石(51)と接触し、前記磁石(51)は前記導電体ロッド(27)と接触する、請求項13に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項15】
前記第1の素子(A)と前記第2の素子(B)との間に配置され、前記基板(30)、前記第1の素子(A)および前記第2の素子(B)の間の液密接続を確実にするように構成されたシールユニット(44、45)をさらに含む、請求項1に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項16】
前記第1の素子(A)は基板ホルダ(20)であり、前記第2の素子(B)は接触ループ(40)であり、両方が互いの間に1つの基板(30)を保持するように構成され、
前記シールユニット(44、45)は、
前記基板(30)と前記接触ループ(40)との間の液密接続を確実にするように構成された内側シール(45)と、
前記基板ホルダ(20)と前記接触ループ(40)との間の液密接続を確実にするように構成された外側シール(44)と
を含む、請求項15に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項17】
前記ロックユニット(50)は、両方の接触ループ(40、41)および前記基板ホルダ(20)を互いに同時にロックするように構成された、請求項4に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項18】
前記ロックユニット(50)は、各接触ループ(40、41)および前記基板ホルダ(20)を互いに独立してロックするように構成された、請求項4に記載の基板ロックシステム(10)。
【請求項19】
プロセス流体中における基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス(100)であって、
請求項1~18のうちの何れか一項に記載の基板ロックシステム(10)と、
分布部(21)と
を備え、
前記分布部(21)は、前記プロセス流体および電流の少なくとも一方の流れを前記基板(30)へ導くように構成された、
デバイス(100)。
【請求項20】
プロセス流体中における基板(30)の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロック方法であって、
第1の素子(A)と第2の素子(B)との間に基板(30)を配置し、
ロックユニット(50)によって前記第1の素子(A)および前記第2の素子(B)を互いにロックする
ことを含み、
前記ロックユニット(50)は、磁石制御装置と、少なくとも1つの磁石(51)とを含み、
前記磁石(51)は、前記第1の素子(A)に配置されて、前記第2の素子(B)は磁性材料を少なくとも部分的に含み、
前記磁石制御装置は、前記第1の素子(A)と前記第2の素子(B)との間の磁力を制御するように構成され、
前記磁石制御装置は、前記第1の素子(A)に対する前記第2の素子(B)の反発を可能にするために永久磁石の磁力を反転させるように構成された、
基板ロック方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス、ならびにプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロック方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業においては、材料をウェーハの表面上に堆積させるか、またはそこから除去するために様々なプロセスを用いることができる。
【0003】
例えば、予めパターン形成されたウェーハ表面上に銅などの導体を堆積させてデバイスの相互接続構造を作製するために、電気化学堆積(ECD:electrochemical deposition)または電気化学機械堆積(ECMD:electrochemical mechanical deposition)プロセスを用いることができる。
【0004】
材料除去ステップには化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)がよく用いられる。ウェーハの表面から過剰な材料を除去するために、別の技術、電解研磨または電解エッチングを用いることもできる。
【0005】
ウェーハ表面上の材料の電気化学(または電気化学機械)堆積あるいはウェーハ表面からの材料の電気化学(または電気化学機械)除去は、まとめて「電気化学処理」と呼ばれる。電気化学、化学および電解の少なくとも一方の表面処理技術は、電解研磨(または電解エッチング)、電気化学機械研磨(または電気化学機械エッチング)、電気化学堆積および電気化学機械堆積を含みうる。すべての技術がプロセス流体を利用する。
【0006】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理技術は、以下のステップを伴う。処理されることになる基板は、基板ホルダに取り付けられ、電解プロセス流体中に浸漬されてカソードとしての機能を果たす。電極は、プロセス流体中に浸漬されてアノードとしての機能を果たす。プロセス流体に直流が印加されて、正に帯電した金属イオンをアノードにおいて解離する。次にイオンがカソードへ移動して、カソードに取り付けられた基板をめっきする。
【0007】
プロセス流体中における基板のかかる化学および電解の少なくとも一方の表面処理の取り扱いを改善できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、特に基板の取り扱いを改善する、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のために改善されたシステムを提供する必要がありうる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態は、従属請求項に限定される。留意すべきは、以下に記載される本発明の態様が、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス、ならびにプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロック方法にも適用されることである。
【0010】
本発明によれば、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステムが提示される。
【0011】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理は、いずれかの材料堆積、亜鉛めっきコーティング、化学または電気化学エッチング、陽極酸化、金属分離もしくは同様のものであってよい。
【0012】
基板は、導体平板、半導体基板、フィルム基板、基本的に平板形状の金属もしくは金属化ワークピースまたは同様のものを含んでよい。処理されることになる表面は、少なくとも部分的にマスクされていてもいなくてもよい。
【0013】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステムは、第1の素子、第2の素子およびロックユニットを含む。
【0014】
第1の素子および第2の素子は、互いの間に基板を保持するように構成される。第1の素子は、第1の接触リングであってよく、第2の素子は、第2の接触リングであってよく、これらの素子は、片側または両側のいずれかの表面処理のために、互いの間に1つの基板を保持してよい。第1の素子は、基板ホルダであってもよく、第2の素子のみが接触リング(以下ではこの構成を区別するためにいわゆる接触ループ)である。第2の異なる基板が次に基板ホルダの背面に保持されてよい。
【0015】
ロックユニットは、第1の素子および第2の素子を互いにロックするように構成される。ロックユニットは、磁石制御装置と少なくとも1つの磁石とを含む。磁石は、第1の素子および第2の素子のうちの一方に配置される。磁石制御装置は、第1の素子と第2の素子との間の磁力を制御するように構成される。磁石制御装置は、ロックユニットを開くために且つ基板を基板ホルダから解放するために、磁力に影響を及ぼしうる。
【0016】
結果として、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための本発明による基板ロックシステムは、単数又は複数の基板および基板ホルダの容易な取り扱いを可能にする。外ねじまたは同様のものは必要ない。単数又は複数の基板を基板ホルダにより非常に容易にロックして保持し、さらにロック解除して解放することができる。手順は、容易に自動化されうる。
【0017】
さらに、単数又は複数の基板が基板ホルダにより非常に安全に保持され、それによって、例えば、表面処理中の均一な材料堆積、基板ホルダにより保護された単数又は複数の基板の基板ホルダ内での搬送などが容易になる。結果として、本発明による基板ロックシステムは、表面処理手順全体を改善する。
【0018】
さらに、基板ロックシステムは、1つまたは2つのいずれかの基板を処理するために用いることができ、1つの基板を処理するときには、片側または両側のいずれの表面処理にも用いることができるため、非常に融通が利く。
【0019】
1つの局面では、第1の素子および第2の素子は、それらの間に1つの基板を保持する2つの接触リングであってよい。この例では、第1の素子は、第1の接触リングであり、第2の素子は、第2の接触リングであり、両方のリングが互いの間に1つの基板を保持するように構成される。第1の素子および第2の素子は、片側または両側のいずれかの表面処理のために1つの基板を保持してよい。基板を通って延びる通過孔またはビアの表面処理さえ可能である。
【0020】
別の局面では、第1の素子は、基板ホルダであってよく、第2の素子は、いわゆる接触ループであってよい。接触ループは、接触リングと同じであってよい。基板ホルダは、基板を保持するように構成されてもよい。基板ホルダは、1つ(片側または両側表面処理)あるいは2つの基板(基板ホルダの各側面に1つの基板)を保持するように構成されてもよい。その例では、第1の素子が基板ホルダであり、第2の素子が接触ループである。基板ホルダおよび接触ループは、互いの間に1つの基板を保持するように構成される。この構成は、第1の局面より安定であろう。
【0021】
さらに、この構成を同時に2つの基板の表面処理に用いることができる。その例では、基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステムは、基板ホルダの裏面と追加の接触ループとの間に追加の基板を保持するように構成された追加の接触ループをさらに含んでよい。基板ホルダは、次に、基板ホルダの各側面に1つずつ、2つの基板を保持してよい。
【0022】
一例では、磁石制御装置は、電圧を印加することによって第1の素子と第2の素子との間の磁力を制御するように構成される。磁石制御装置は、プロセッサであってよい。一例では、磁石制御装置は、第1の素子からの第2の素子の解放を可能にするために永久磁石の磁力を少なくとも減少させるように構成される。一例では、磁石制御装置は、第1の素子からの第2の素子の解放を可能にするために永久磁石の磁力を消失させるように構成される。一例では、磁石制御装置は、第1の素子に対する第2の素子の反発を可能にするために永久磁石の磁力を反転させるように構成される。磁石制御装置は、それによってロックユニットを開いて、単数又は複数の基板を基板ホルダから解放することを可能にできる。
【0023】
一例では、磁石は、第1の素子を第2の素子へロックするように構成された永久磁石である。一例では、ロックユニットの磁石は、第1の素子に配置される。もちろん、磁石を第2の素子に配置することもできる。一例では、ロックユニットは、保持されることになる基板に沿って第1の素子に分布した幾つかの磁石を含む。これは、磁気的ロック力の均一性および強度の少なくとも一方を改善できる。
【0024】
磁石を含まない第1の素子および第2の素子のうちの一方は、磁性を有してよい。それが第2の素子である場合、第2の素子は、磁性材料を少なくとも部分的に含んでよい。この例では、第2の素子は、少なくとも部分的に導電性であってもよい。
【0025】
基板ホルダが2つの基板を保持するように構成される場合、ロックユニットは、両方の基板のロックを同時に、または互いに独立してオンおよびオフに切り換えるように構成されてもよい。一例では、ロックユニットは、それゆえに両方の接触ループおよび基板ホルダを互いに同時にロックするように構成される。別の例では、ロックユニットは、それゆえに各接触ループおよび基板ホルダを互いに独立してロックするように構成される。
【0026】
磁石を含まない第1の素子および第2の素子のうちの一方は、少なくとも1つの磁気接触フィンガを含んでよい。それが第2の素子である場合、第2の素子は、磁性材料でできた幾つかの接触フィンガを含んでよい。さらなる例では、第2の素子は、第1の素子に分布した幾つかの磁石と接触して配置される接触フィンガの幾つかのアレイを含む。
【0027】
それが磁石を保持する第1の素子である場合、第1の素子は、第1の素子に沿って延びる少なくとも1つの導電体ロッドを含んでよい。一例では、接触フィンガの一端が磁石に接触し、その磁石が導電体ロッドと接触する。
【0028】
もちろん、第1の素子および第2の素子の機能が交換される場合には、第1の素子および第2の素子のうちの一方について述べたこと全てが第1の素子および第2の素子のうちの他方にも適用され得る。もちろん、例えば、第1の素子および第2の素子の各々が磁性を有して一緒に機能する磁石を含むように第1の素子および第2の素子を混合することもできる。
【0029】
一例では、基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステムは、第1の素子と第2の素子との間に配置されたシールユニットをさらに含む。シールユニットは、基板と第1の素子と第2の素子との間の液密接続を確実にするように構成されてもよい。一例では、シールユニットは、基板と接触ループとの間の液密接続を確実にするように構成された内側シールを含む。一例では、シールユニットは、基板ホルダと接触ループとの間の液密接続を確実にするように構成された外側シールを含む。内側および外側の少なくとも一方のシールは、取換え可能であってよい。
【0030】
本発明によれば、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスも提示される。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、上記のような基板ロックシステムおよび分布部を含む。
【0031】
分布部は、プロセス流体および電流の少なくとも一方の流れを基板へ導くように構成される。分布部は、特にその形状およびサイズを考慮して、処理されることになる基板に対応してよい。分布システムは、基板が垂直に挿入される垂直めっきチャンバをもつ垂直分布システムであってよい。分布システムは、基板が水平に挿入される水平めっきチャンバをもつ水平分布システムであってもよい。
【0032】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、基板ホルダをさらに含んでよい。基板ホルダは、基板を保持するように構成されてもよい。基板ホルダは、1つ(片側または両側表面処理)あるいは2つの基板(基板ホルダの各側面に1つの基板)を保持するように構成されてもよい。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、1つまたは2つの基板をさらに含んでよい。
【0033】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、アノードをさらに含んでよい。アノードは、マルチゾーン・アノードであってよい。さらに、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、電源を含んでよい。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスは、プロセス流体源をさらに含んでよい。
【0034】
本発明によれば、プロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロック方法も提示される。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法は、必ずしもこの順序とは限らないが、以下のステップ、すなわち、
a)第1の素子と第2の素子との間に基板を配置するステップ、および
b)ロックユニットによって第1の素子および第2の素子を互いにロックするステップ
を含む。
【0035】
ロックユニットは、磁石制御装置と少なくとも1つの磁石とを含む。磁石は、第1の素子および第2の素子のうちの一方に配置される。磁石制御装置は、第1の素子と第2の素子との間の磁力を制御するように構成される。
【0036】
本発明による基板ロック方法は、単数又は複数の基板および基板ホルダの容易な取り扱いを可能にする。特に、単数又は複数の基板を基板ホルダにより非常に容易にロックして保持し、さらにロック解除して解放することができる。
【0037】
本発明によるシステム、デバイスおよび方法は、構造化された半導体基板、導体平板、フィルム基板、平面状金属および金属化基板の表面全体などを処理するのに適しうる。システム、デバイスおよび方法は、太陽エネルギー発電のための大表面光電パネル、大規模モニタパネルまたは同様のものの製造に用いられてもよい。
【0038】
独立請求項によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのシステム、デバイスおよび方法は、特に、従属請求項において規定されるのと同様および同一の少なくとも一方の好ましい実施形態を有することが理解されよう。さらに、本発明の好ましい実施形態を従属請求項とそれぞれの独立請求項とのいずれかの組み合わせとすることもできることが理解されよう。
【0039】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイスの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
【
図2】2つの基板を保持する基板ホルダの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
【
図3】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステムの一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
【
図4】第2の素子の一実施形態を模式的および例示的に示す図である。
【
図5】
図2に示されるような基板ホルダの一部分の断面を模式的および例示的に示す図である。
【
図6】本発明による基板ロックシステムの一部分のさらにより詳しい断面を模式的および例示的に示す図である。
【
図7】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステムのさらなる実施形態を模式的および例示的に示す図である。
【
図8】
図7の基板ロックシステムのさらなる実施形態の異なる図である。
【
図9】
図7および8の実施形態の分解組立図を模式的および例示的に示す図である。
【
図10】本発明によるプロセス流体中における基板の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための分布方法の一例の基本的なステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の例示的な実施形態が添付図面を参照して以下に記載される。
【0042】
図1は、本発明によるプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100の一実施形態を模式的および例示的に示す。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100は、プロセス流体中におけるここでは2つの基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム10を含む。基板30は、基板ホルダ20により保持される。
【0043】
図2は、基板ホルダ20の一実施形態を模式的および例示的に示す。基板ホルダ20は、1つまたは2つの基板30、基板ホルダ20の各側面に1つの基板30を保持するように構成される。基板ホルダ20は、ここでは丸みを帯びた角をもつ例えば370×470mmのサイズの矩形基板30を保持する。もちろん、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100は、好ましくは水平配置において片側または両側表面処理のために1つだけの基板30を保持するように構成された基板ホルダ20とともに用いられてもよい。
【0044】
基板30は、電気または電子部品の製造のための基本的に平板形状のワークピースであってよく、基板ホルダ20に機械的に固定される。処理媒質が分布部21から出るにつれて、処理されることになる基板の表面は、プロセス流体中に浸される。特別な場合には、基板30は、マスクされているかもしくはマスクされていない導体平板、半導体基板またはフィルム基板であってよく、あるいはほぼ平面状の表面を有するいずれかの金属または金属化ワークピースであってもよい。
【0045】
図1に戻って参照すると、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100は、分布部21をさらに含む。分布部21は、化学および電解の少なくとも一方の表面処理のために目標とする流れおよび電流密度パターンを生成し、プロセス流体(示されない)中に沈んでいる。各分布部21に対向するのは、基板ホルダ20に取り付けられた基板30である。基板30の表面は、プロセス流体によって濡らされる。分布部21は、基板30に向けられた複数の分布開口部(示されない)を含む。複数の分布開口部は、プロセス流体の流れを基板30へ導くための出口開口部、およびプロセス流体の逆流を基板30から受け取るための逆流開口部の少なくとも一方を含む。基板30は、アノードの対電極として、または言い換えればカソードとして機能する。分布部21は、好ましくは、プラスチック、特に好ましくは、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、アクリルガラスすなわちポリメチルメタクリラート、ポリテトラフルオロエチレン、またはプロセス流体によって分解されない別の材料を含んでよい。
【0046】
化学および電解の少なくとも一方の表面処理のためのデバイス100は、各々が分布部21のうちの一方の基板30とは反対側に位置して、やはりプロセス流体中に浸されたアノード22をさらに含む。各アノード22は、プロセス流体内で対電極として機能する基板30とアノード22との間に電流の流れが生じるように、分布部21と機械的に接触するか、または分布部21から空間的に分離して、それぞれの分布部21の背面領域に取り付けられる。用いられる表面処理方法に応じて、アノード22は、プロセス液体に不溶な白金被覆チタンなどの材料か、または別の状況では、例えば、ガルバニックに分離されることになる金属などの可溶な材料を含んでよい。
【0047】
図3~6は、本発明によるプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム10の実施形態を模式的および例示的に示す。基板ロックシステム10は、第1の素子A、第2の素子Bおよびロックユニット50を含む。
【0048】
第1の素子Aおよび第2の素子Bは、互いの間に基板30を保持するように構成される。第1の素子Aは、ここでは基板ホルダ20であり、第2の素子Bは、接触リングまたは接触ループ40である。基板ロックシステム10は、ここでは基板ホルダ20の裏面と追加の接触ループ41との間に追加の基板30を保持する追加の接触ループ41をさらに含む(
図5におけるより詳細な断面も参照)。基板ホルダ20は、次に、基板ホルダ20の各側面に1つずつ、2つの基板30を保持する。
【0049】
ロックユニット50は、第1の素子A・基板ホルダ20と第2の素子B・接触ループ40とを互いにロックするように構成される。ロックユニット50は、磁石制御装置(示されない)と、第1の素子A・基板ホルダ20に配置されるとともに第1の素子A・基板ホルダ20に沿って分布された幾つかの磁石51とを含む。磁石制御装置は、基板30を閉じてロックして保持するために、または基板ホルダ20から基板30をロック解除して開いて解放するために、第1の素子A・基板ホルダ20と第2の素子B・接触ループ40との間の磁力を制御する。結果として、本発明による基板ロックシステム10は、基板30および基板ホルダ20の非常に容易かつ融通の利いた取り扱いを可能にする。
【0050】
ここでは磁石51は基板ホルダ20に沿って分布された永久磁石であるのに対して、接触ループ40は磁性材料でできている。磁石制御装置は、電圧を印加することによって第1の素子A(基板ホルダ20)と第2の素子B(接触ループ40)との間の磁力を制御する。
【0051】
図4は、ここでは接触ループ40である第2の素子Bの一実施形態を模式的および例示的に示す。接触ループ40は磁気接触フィンガ42の幾つかのアレイを含み、これらの磁気接触フィンガ42は、閉じた構成では、基板ホルダ20に沿って分布した磁石51と接触することになる。接触フィンガ42は、ここでは直立するか、または立っている。接触ループ40は接触フィンガ43の幾つかのアレイをさらに含み、これらの接触フィンガ43は基板30と接触することになり、それゆえに平面状かまたは横たわっていてよい。
【0052】
図5は、
図2に示されるような基板ホルダ20の一部分の断面を模式的および例示的に示す。いわゆる導電体ロッド27は、基板ホルダ20の4つの縁のうちの少なくとも何れかに沿って少なくとも部分的に延びる。ここでは、第1の導体ロッド27が基板ホルダ20の長辺に沿って延びて、基板ホルダ20の短辺に沿って延びる第2の導体ロッド27と角で交わる。接触フィンガ・アレイ42の自由端は基板ホルダ20において磁石51と接触し、磁石51は導電体ロッド27と接触する。
【0053】
図6は、基板ロックシステム10の一部分のさらにより詳しい断面を模式的および例示的に示す。基板ロックシステム10は、シールユニット44、45をさらに含む。シールユニットは、接触ループ40と基板ホルダ20との間に位置する外側シール44を含む。外側シール44は、第1の素子Aと第2の素子Bとの間の液密接続を確実にする。基板ロックシステム10は、接触ループ40と基板30との間に位置する内側シール45を更に含む。内側シール45は、基板30と第2の素子Bとの間の液密接続を確実にする。
【0054】
図7~9は、本発明によるプロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための基板ロックシステム10のさらなる実施形態を模式的および例示的に示す。基板ロックシステム10は、第1の素子A、第2の素子Bおよびロックユニット50を含む。
【0055】
第1の素子Aおよび第2の素子Bは、ここではそれらの間に1つの基板30を保持する2つの接触リング46である。基板ホルダはない。2つの接触リング46は、ここでは両側表面処理のために1つの基板20を保持する。それゆえに、2つの接触リング46には、両側から基板20に到達できるように窪みが設けられている。
【0056】
ロックユニット50は、第1の素子Aおよび第2の素子Bを互いにロックする。ロックユニット50は、磁石制御装置(示されない)及び幾つかの磁石51を含む。磁石51は、2つの接触リング46のうちの一方の第1の素子Aに配置され、それに沿って分布する。磁石制御装置は、基板30を閉じてロックして保持するために、または基板30をロック解除して開いて解放するために、第1の素子Aおよび第2の素子Bとしての2つの接触リング46間の磁力を制御する。結果として、本発明による基板ロックシステム10は、基板30の非常に容易かつ融通の利いた取り扱いを可能にする。
【0057】
ここでは磁石51は接触リング46のうちの一方に沿って分布した永久磁石であるのに対して、接触リング46のうちの他方は磁性材料でできている。磁石制御装置は、電圧を印加することによって接触リング46間の磁力を制御する。
【0058】
図10は、プロセス流体中における基板30の化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法のステップの概略図を示す。化学および電解の少なくとも一方の表面処理のための方法は、以下のステップを含む、すなわち、
第1のステップS1において、第1の素子Aと第2の素子Bとの間に基板30を配置する。
第2のステップS2において、ロックユニット50によって第1の素子Aおよび第2の素子Bを互いにロックする。
【0059】
ロックユニット50は、磁石制御装置と少なくとも1つの磁石51とを含む。磁石51は、第1の素子Aおよび第2の素子Bのうちの一方に配置される。磁石制御装置は、第1の素子Aと第2の素子Bとの間の磁力を制御するように構成される。
【0060】
システム、デバイスおよび方法は、特に、構造化された半導体基板、導体平板、およびフィルム基板の処理に適するが、平面状金属および金属化基板の表面全体の処理にも適する。デバイスおよび方法は、本発明に従って太陽エネルギー発電のための大表面光電パネルまたは大規模モニタパネルの製造に用いられてもよい。
【0061】
本発明の実施形態が種々の主題を参照して記載されることに留意されたい。特に、幾つかの実施形態は方法の請求項を参照して記載されたのに対して、他の実施形態は、装置の請求項を参照して記載される。しかしながら、当業者は、以上および以下の記載から、別に通知されない限り、1つの主題に属する特徴のいずれかの組み合わせに加えて、異なる主題に関する特徴の間のいずれかの組み合わせも成し得、それらはこの出願により開示されると考えられる。しかしながら、すべての特徴を組み合わせて、特徴の単なる足し合わせを超えた相乗効果を提供することができる。
【0062】
本発明が図面および先の説明に詳細に図示され、記載されたが、かかる図示および記載は、例証または例示であり、それらに制限されない。本発明は、開示される実施形態には限定されない。請求項に係る発明の分野の当業者は、図面、開示および従属請求項の検討から、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、生み出すことができる。
【0063】
請求項において、単語「含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、複数を除外しない。一つの処理装置または他のユニットが請求項に列挙された複数の構成の機能を達成してもよい。幾つかの手段が互いに異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に用いることができないことを示すわけではない。請求項におけるいずれかの参照符号が範囲を限定すると解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0064】
10 基板ロックシステム
20 基板ホルダ
21 分布部
22 アノード
30 基板
100 デバイス