(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】ゲル粒子及びそれを含む皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230206BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230206BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230206BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230206BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/06
A61Q19/00
A61K8/81
(21)【出願番号】P 2018151700
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】鴛渕 孝太
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210770(JP,A)
【文献】特表2013-513558(JP,A)
【文献】特開2001-096146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00ー90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトースを構成骨格に持つ親水性ゲル化剤
1.2~3質量%と、
水およびC2~C5のポリオールを含むゲル化剤分散媒と、
アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸基を有する水溶性ポリマーと、
を含
み、
ポリオール/(水+ポリオール)の質量比が0.13~0.71である
ことを特徴とするゲル粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のゲル粒子において、
水およびC2~C5のポリオールを含むゲル化剤分散媒80質量%以上
を含み、
ゲル粒子の数平均粒子径が0.05~3mmであることを特徴とするゲル粒子。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のゲル粒子において、さらにゲル化剤分散媒中に分散した内油相を含むことを特徴とするゲル粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のゲル粒子において、多糖類は寒天又はカラギーナンであることを特徴とするゲル粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゲル粒子において、該ゲル粒子を構成するゲルの降伏応力が50~350[g/mm2]単位であることを特徴とするゲル粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゲル粒子において、該ゲル粒子を構成するゲルの降伏歪みは1.5~3.5[mm]単位であることを特徴とするゲル粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のゲル粒子において、該ゲル粒子を構成するゲルの降伏エネルギーは、35~600[g/mm]単位であることを特徴とするゲル粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のゲル粒子において、該ゲル粒子を構成するゲルの硬度は、50~200[g/mm3]単位であることを特徴とするゲル粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のゲル粒子を含み、且つゲル粒子の外相は10000~100000mPa・sの粘度を有することを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル粒子及びそれを含む皮膚外用剤、特にゲル粒子の崩壊性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧品を主体とした皮膚外用剤に対し、ゲル粒子の配合が行われており、ゲル粒子内の成分の経時安定性を高め、或いは化粧品の外観、肌に適用した際の粒子崩壊に伴う独特の感触が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3756042号
【文献】特許第4637991号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に化粧品に配合されるゲル粒子は、内包した成分の放出を行うにせよ、或いは外観、感触を楽しむにせよ、肌上で手指によりゲル粒子を崩壊させる必要があり、適度な柔軟性と崩壊性を有する必要がある一方、化粧品への配合時にはかなりの強度の撹拌に耐える必要があり、両者の両立は困難であった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、柔軟性、崩壊性等の使用適性と、撹拌耐久性などの製造適性の両立を図ったゲル粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明者らは、ガラクトースを構成骨格に持つ多糖類によりゲル粒子を形成する際、特定のポリオールを共存させることにより、製造適性に優れ、しかも、柔軟性、崩壊性が高いゲル粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかるゲル粒子は、ガラクトースを構成骨格に持つ親水性ゲル化剤と、
水およびC2~C5のポリオールを含むゲル化剤分散媒と、を含むことを特徴とする。
また、前記ゲル粒子は、
ガラクトースを構成骨格に持つ親水性高分子ゲル化剤0.1~5質量%と、
水およびC2~C5のポリオールを含むゲル化剤分散媒80質量%以上と、
を含み、
ポリオール/(水+ポリオール)の質量比が0.13~0.71であり、ゲル粒子の数平均粒子径が0.05~3mmであることが好適である。
また、前記ゲル粒子は、さらにアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸基を有する水溶性ポリマーを含むことが好適である。
また、前記ゲル粒子は、さらにゲル化剤分散媒中に分散した内油相を含むことが好適である。
また、前記ゲル粒子の、多糖類は寒天又はカラギーナンであることが好適である。
また、前記ゲル粒子を構成するゲルの降伏応力が50~350g/mm2であることが好適である。
また、前記ゲル粒子を構成する降伏歪みは、1.5~3.5mmであることが好適である。
また、前記ゲル粒子を構成する降伏エネルギーは、500~600g/mmであることが好適である。
また、前記ゲル粒子を構成する硬度は、50~200g/mm3であることが好適である。
また、本発明にかかる皮膚外用剤は、前記ゲル粒子を含み、且つゲル粒子の外相は10000~100000mPa・sの粘度を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明にかかるゲル粒子は、ガラクトースを構成骨格に持つ多糖類と、C2~C5のポリオールと、を含むことにより、製造適性とともに、柔軟性、崩壊性等の使用感にも優れたゲル粒子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施例に基づき、本発明の構成を詳細に説明する。
まず、本発明者らは、ガラクトースを構成骨格に持つ多糖類として寒天を用い、ゲル粒子を調製し、その物性について検討を行った。
本発明のゲル粒子は、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相を調製し、これを外油相中に分散乳化してW/Oエマルジョンとし、該W/Oエマルジョンの水相を固化してゲル粒子化することにより得ることができる。
【0008】
親水性高分子ゲル化剤としては、化粧品や医薬品等において通常使用されるもので、固化して親水性のゲルを形成できるものであり、特に寒天、カラギーナンなどの加熱冷却により固化してゲルを形成するものは、イオンの影響を受けにくく、また製法が簡便で均一に固化できるという点で好ましい。本発明においては、このような加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤をゲル粒子の主成分とすることが好適である。中でも、ゲルの性質、安定性、使用感等の点から、寒天、カラギーナンが好ましく、特に好ましくは寒天である。寒天としては、例えば、伊那寒天PS-84、Z-10、AX-30、AX-100、AX-200、T-1、S-5、M-7、CS-110(伊那食品工業社製)等の市販品を用いることができる。
親水性ゲル化剤の添加量は、ゲル粒子中1.2~3質量%が好ましく、1.2質量%に満たないとゲル粒子の撹拌耐性が劣るようになり、また3質量%を超えると手指によるゲル粒子の意図的崩壊を難しく感じる場合がある。
また、本発明において、前記親水性高分子ゲル化剤をゲル化剤分散媒に分散させるが、分散媒として水と共にC2~C5のポリオールを用いる。
ここで、C2~C5のポリオールとしては、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールが例示される。
また、水およびC2~C5のポリオールを含むゲル化剤分散媒は、ゲル粒子中、80質量%以上であり、また、ポリオール/(水+ポリオール)の質量比が0.13~0.71であることが必要である。
本発明において、特定のポリオールはゲルの硬度、降伏応力を低減させるが、降伏エネルギーにはほとんど影響を与えない。
ここで、化粧品を製造する際の撹拌によるゲル粒子の損傷しやすさは、主に降伏エネルギーに依存し、降伏エネルギーが大きいほど製造中にゲル粒子が受ける損傷が減少する。一方、手指によるゲル粒子の意図的崩壊に際し、化粧品使用者の受ける感触には、ゲル粒子の硬度、降伏応力が大きな影響を与え、硬度、降伏応力が小さいほど崩壊しやすいと把握される。
このため、ゲル化剤の濃度が同一であれば、ゲル化剤分散媒に水のみを用いた場合と比較し、ポリオールと水を用いた場合には、製造適性はほぼ同一、手指による崩壊性ははるかに高くなったものと認識される。
本発明においては、加熱冷却により固化する親水性ゲル化剤と共に、アルギン酸やカードラン、ヒアルロン酸等のように、Ca等のイオンや、その他の凝固剤により固化する親水性高分子ゲル化剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。
水相としては、水の他、水に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。
【0009】
本発明の外油相としては、水相と混合せず、製造時に全体として液状であれば極性油~非極性油まで、通常使用され得る幅広い油分の中から選択することができる。例えば、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、天然油脂、シリコーン油等が挙げられる。また、これら油分に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。
また、本発明において、ゲル粒子の硬度、降伏応力を増大することなく、製造適性を向上させるため、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸モノマー(AMPS)を有する親水性増粘剤をゲル化剤分散媒に添加することが好適である。親水性増粘剤のゲル粒子への配合量は、0.05~0.3質量%が好ましい。0.05質量%に満たないと、親水性増粘剤の効果が十分に発揮されないことがあり、また0.3質量%を超えて配合すると降伏応力が増大することがある。
また、本発明において、ゲル粒子内に内油相を形成することも好適である。
ゲル粒子内に内油相を形成する場合には、内包油滴となる内油相と、親水性ゲル化剤を含有するゲル化剤分散媒とからO/Wエマルジョンを調製し、これを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、O/W/Oエマルジョンの水相を固化してゲル粒子化する。
なお、内包油滴の外油相への浸潤防止の点から、内油相と外油相の極性に差がある方が好ましい。
【0010】
本発明のゲル粒子製造の第1段階であるO/Wエマルジョンの調製においては、平均粒径が0.01~30μm、好ましくは0.1~5μmと非常に微細で、しかも安定なエマルジョンとすることが必要である。粒径が大きすぎると、その後のO/W/O乳化で内油相同士の融合や、内油相と外油相との合一を生じやすく、十分な乳化を行うことができない。また、内油相のロスが大きくなる傾向がある。
【0011】
このようなO/Wエマルジョンを容易に得る方法として、例えば、親水性非イオン界面活性剤と水溶性溶媒とを用いた乳化法(特公昭57-29213号公報)が有効である。すなわち、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを製造し、該エマルジョンに親水性高分子ゲル化剤水溶液を添加して、O/Wエマルジョンを得る。親水性高分子ゲル化剤の添加については、水溶性溶媒中油型エマルジョンに水を加えてO/Wエマルジョンとしてから、親水性高分子ゲル化剤水溶液で希釈してもよい。また、特に問題を生じない限り予め水溶性溶媒中に親水性高分子ゲル化剤を添加しておくことも可能である。
【0012】
前記水溶性溶媒としては、親水性非イオン界面活性剤を溶解し、その後に添加する内油相との界面に効率よく配向させる効果を持つものであり、低級多価アルコール類、具体的にはエタノール、プロパノール等の低級一価アルコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級多価アルコールである。なお、水溶性溶媒中に少量の水、例えば水溶性溶媒に対して15重量%以下の水を含有していてもよい。
【0013】
また、親水性非イオン性界面活性剤としては、POE付加型、又はPOE・POP付加型非イオン性界面活性剤が好ましく、具体的には特公昭57-29213号公報記載のものが例示される。
第2段階のO/W/Oエマルジョンの調製は、O/Wエマルジョンを外油相に分散乳化することにより行う。このとき用いる乳化機は特に限定されず、通常乳化に用いられる攪拌装置を適宜用いればよい。
なお、外油相中には、乳化剤として親油性界面活性剤を配合しておくことが好ましい。親油性界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の何れも用いることができ、外油相成分の種類等に応じて公知のものから適宜選択して用いればよい。
【0014】
このようなO/W/Oエマルジョンの水相を固化することにより、微細な内包油滴を多数含有するゲル粒子とすることができる。
本発明のゲル粒子の好ましい製法としては、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め水(問題のない限り他の水性成分を含んでいてもよい)に加熱溶解してゲル化剤水溶液を調製しておき、これを前記水溶性溶媒中油型エマルジョンにゲル化剤の固化温度以上で添加してO/Wエマルジョンとし、系の温度を固化温度以上に維持しながらO/W/Oエマルジョンまで調製した後、固化温度以下に冷却して水相を固化し、ゲル粒子とする方法が挙げられる。例えば、寒天やカラギーナンの場合、固化温度は約30℃であり、ゲル化剤水溶液の調製温度は90~100℃、エマルジョンの調製温度は約50~90℃とすることが好適である。
なお、イオン等の添加により固化するものを併用する場合には、冷却前にO/W/Oエマルジョンに、そのイオンを含む金属塩またはその水溶液を添加後、冷却すればよい。
【0015】
本発明のゲル粒子は、O/Wエマルジョンの段階で内油相を上記のように微細且つ安定に分散しているので、O/W/Oエマルジョン調製時の乳化条件を自由に設定でき、ゲル粒子径のコントロールが容易である。例えば、O/W/O乳化時の温度は室温~約90℃、攪拌速度は約100~10,000rpmの広い範囲で行うことができ、このような場合でも、内油相のロスがなく、内油相の融合による内包油滴径の増大もほとんどない。O/W/O乳化時の温度、攪拌速度が高い程、ゲル粒子径は小さくなり、親水性ゲル化剤濃度や外油相の粘度が高いほど、ゲル粒子径は大きくなる傾向がある。本発明の方法によれば、数平均ゲル粒子径は5~5000μm、好ましくは50~3,000μmの幅広い範囲で制御可能である。
【0016】
従来のゲル粒子では、乳化工程などに添加するとゲル粒子が破壊されてしまうことがあり、ゲル粒子を乳化系に配合する場合には、予め乳化物を調製し、その後ゆっくりと攪拌しながらゲル粒子を配合する必要があり、工程が煩雑であった。
本発明のゲル粒子は、高速攪拌を伴う乳化工程に添加した場合でもゲル粒子の破壊がほとんど起こらないという、非常に優れた製造適性を有する。従って、乳化系に配合する場合には、ゲル粒子を固形分として、あるいは油性分散物のまま他の成分とともに仕込んでから、乳化を行うこともできる。また、その他種々の基剤にも配合できる。
【0017】
また、本発明のゲル粒子は、保存中、内包油滴が経時的にゲル粒子内に浸潤して内油相が外油相中にしみ出したり、ゲル粒子が壊れたりすることがほとんどない。従って、内包油滴中に安定性の悪い油性薬剤を配合しておけば、薬剤の安定性を改善することができる。例えば、レチノール、ビタミンE等の易酸化性薬剤や、シクロスポリン、ビタミンCパルミテート、4-tert-ブチル-4’-メトキシベンゾイルメタン等の易結晶性油性薬剤が挙げられる。
【0018】
特に、O/Wエマルジョン調製時に油性ゲル化剤として油相に高級脂肪酸グリセリル、デキストリン脂肪酸エステル等を配合すると、内包油滴の浸潤を顕著に抑制することができる。なお、これら油性ゲル化剤の配合量としては、内油相中0.05~5重量%、好ましくは0.2~1重量%である。少なすぎるとこれら油性ゲル化剤の浸潤防止効果が十分に発揮されず、多すぎる場合には他の成分に影響を及ぼすことがある。
【0019】
ゲル粒子配合化粧料としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、ローション、美容液、マッサージ料、スクラブ料等の基礎化粧料、ボディソープ、クレンジング料等の洗浄料、ファンデーション、フェイスパウダー、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、マスカラ、フェイスパウダー等のメークアップ化粧料、ヘアークリーム、へアートニック、トリートメント、育毛料、シャンプー、リンス等の毛髪化粧料等が挙げられる。また、その性状としては乳化状、可溶化状、液状、固形状、ジェル状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。これらは、本発明の効果が損なわれない限り特に制限されない。また、本発明の化粧料には、通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。
【0020】
なお、本発明のゲル粒子は、油性分散物の状態で、あるいは、遠心分離、濾過等の常法により外油相の一部あるいは全部を除去してから他の基剤に配合することもできる。また、ファンデーションや口紅等の固形化粧料や、ローション等の水性基剤に配合することも可能である。なお、本発明のゲル粒子を固形分のまま長期にわたって放置すると収縮を生じることがあるので、水性基剤又は油性基剤中でストックすることが好ましい。
【0021】
以下、具体例を挙げて本発明を説明する。なお、配合量は特に指定のない限り重量%で示す。
【0022】
(降伏試験)
水相を90℃で加熱溶解し、冷却して厚さ32mmのゲルを調製した。このゲルに対し、TEXTURE ANALYSER TA XT plus(英弘精機(株)製)を用いて円柱状プローブを圧入し、極大応力値を降伏値、極大応力を生じるまでの傾きを硬度、極大応力を生じるまでのエネルギー値を降伏エネルギーとして評価した。
レンジ:350g
テストスピード:10mm/s
プローブ径:10mm
【0023】
(撹拌耐性)
ゲル粒子を乳化工程に添加した場合の安定性(撹拌耐性)について、次のように調べた。すなわち、下記の処方でゲル粒子を配合したW/Oクリームを調製した。W/O乳化はホモミキサーで70℃×9000rpmで行った。
得られたクリーム中のゲル粒子の破壊の有無を顕微鏡にて観察し、ゲル粒子の破壊が認められた場合;撹拌耐性×、やや破壊が認められたが、実使用上問題ない範囲であった場合;撹拌耐性△、破壊が認められなかった場合;撹拌耐性○とした。
【0024】
製造適性被験クリーム:
マイクロクリスタリンワックス 9.0重量%
固形パラフィン 2.0
ミツロウ 3.0
ワセリン 5.0
スクワラン 34.0
ヘキサデシルアジピン酸エステル 10.0
プロピレングリコール 5.0
モノオレイン酸グリセリン 3.5
POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
精製水 22.5
ゲル粒子油性分散物 5.0
防腐剤 適量
香料 適量
【0025】
(手指崩壊性試験)
ゲル粒子油性分散物0.1gをそれぞれ左右の手首内側にへらでのせた。これを指先でのばす前(塗布前)、のばした直後(塗布直後)について、ゲル粒子残存率を下記の基準で評価した。
評価基準
◎:ゲル粒子の残存が全く認められない。
○:ゲル粒子の破片が少量認められる。
△:ゲル粒子の破片が認められ、塗布時に違和感を感じる。
×:ゲル粒子の残存が認められる。
【0026】
【表1】
(ゲル粒子製法)
内油相(流動パラフィン)を、ポリオール及びPOE(60)硬化ヒマシ油の混合物(ポリオール無添加の場合には水の一部)に徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。寒天をイオン交換水に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記寒天水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョンを得た。
O/Wエマルジョンを外油相(オクタメチルシクロテトラシロキサン49重量部,POEメチルポリシロキサン共重合体1重量部)に添加して50℃×500rpmで乳化し、O/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却し、水相の寒天を固化させることにより、ゲル粒子油性分散物を得た。
【0027】
試験例1-1にはポリオールが配合されていないが、寒天1.8質量%が配合されていると、形成されたゲル粒子は、撹拌耐久性はあるものの、手指によってはつぶれにくい。これに対し、試験例1-2のように寒天を0.9質量%まで減少させると、形成されたゲル粒子は、手指崩壊性は向上するものの、撹拌耐久性が悪化する。
一方、試験例1-3では、寒天1.8質量%及びポリオールの配合により、撹拌耐久性を維持したまま手指崩壊性を改良している。
さらに、試験例1-4ではAMPS/ACRYLAMIDE(N,N'-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム-N,N'-メチレンビスアクリルアミド共重合体)を加えることにより、手指崩壊性がさらに改善された。
次に本発明者らはポリオールの種類と添加量について検討を行った。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
試験例2-1では、一価アルコールであるエチルアルコールを、また試験例2-2では炭素数C6以上のポリグリセリン(ポリオール)を用いたが、いずれも製造適性の点で適用できなかった。
これに対し、試験例1-4,2-4,2-5に示すように、C3~5のポリオールであるグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールを用いた場合には、いずれも優れた撹拌耐久性、手指崩壊性を示した。
また、試験例2-3に示すように、ポリオール/(水+ポリオール)が11%であると、十分な手指崩壊性が得られないが、13%であると撹拌耐久性、手指崩壊性のいずれの効果も発現し、71%(試験例2-5)までは両効果の発現が確認された。しかしながら、77%(試験例2-6)となると手指崩壊性が低下するため、ポリオールの割合は13~71%が好ましい。
また、本発明者らは、ゲル化剤(寒天)の添加量について検討を行った。結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
同表に示すように、ゲル化剤の添加量は、ゲル粒子に対し1.2~3質量%で手指による崩壊性と撹拌耐久性の両者を満足させることができた。
また、本発明者らは増粘剤に関し検討を行った。結果を表4,5に示す。
【0030】
【0031】
【表5】
表4より明らかなように、AMPSモノマーを有するAMPS/アクリルアミド(SU-GEL 東邦化学工業製)、AMPS/メタクリル酸POE付加ベヘニルエーテル/VP(Aristoflex-HMB クラリアントGMBH製)、アクリロイルジメチルタウリン/VP(Aristoflex-AVD クラリアント GMBH製)はいずれも優れた効果を示した。一方、AMPSモノマーを有さない(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(アデカノールGT-700)、キサンタンガム(ケルトロール)、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)は所期の効果を奏さず、本発明において好適に用いられる増粘剤は、AMPSモノマーを含むものである。
また、表5に示すように、増粘剤の配合量は0.05~0.3質量%において顕著な効果を奏することが理解される。
次に本発明者らが検討を行ったところ、ゲル粒子の手指崩壊性は、ゲル粒子が配合される組成物の粘度と密接な関係があることが解った。すなわち、ゲル粒子は手指で潰そうとしたときに、脇に逃げてしまい、潰しにくいことがある。この「脇への逃げ」は、ゲル粒子が添加される組成物の粘度と密接な関係がある。
本発明にかかるゲル粒子に関し、その配合される組成物の粘度との関係を調査したところ、組成物粘度が好ましくは10000~100000mPa・s以上であることが解った。