(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】水抜き管、水抜き管埋設方法、および筒状織物
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
E02D17/20 106
(21)【出願番号】P 2018155527
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】岡村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 京太郎
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040125(JP,A)
【文献】特開2010-070919(JP,A)
【文献】実開昭60-036416(JP,U)
【文献】実公昭48-032679(JP,Y1)
【文献】実開昭60-154425(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される水抜き管であって、
たて糸に対しよこ糸をスパイラル状に配置することにより筒状に形成され、前記よこ糸の少なくとも一部に剛性を有する糸が使用されてなる自己保形性を有する外筒体と、
前記外筒体に挿入され、前記外筒体の内面に当接する有孔樹脂管である内筒体と、
を備え、
前記外筒体の全長にわたって、前記外筒体の内面に前記内筒体が当接しており、
前記内筒体は、
前記外筒体に挿入される外筒体保持部と、
前記外筒体保持部の端部に
前記外筒体保持部と一体で設けられ
るか、
または、前記外筒体保持部とは別体で設けられて前記外筒体保持部の端部に嵌合され、隣り合わせられる他の前記内筒体が差し込まれる雌継手部と、
を有し、
前記雌継手部が、前記外筒体保持部よりも径方向外側に凸とされており、
前記外筒体保持部が挿入された状態の前記外筒体の外径よりも前記雌継手部の外径の方が大きくされており、
作業者の手で地中に挿入される、水抜き管。
【請求項2】
請求項1に記載の水抜き管において、
前記外筒体の両端部にほつれ止め部が形成されている、水抜き管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水抜き管を地中に埋設する水抜き管埋設方法であって、
前記水抜き管の外径よりも大径の挿入穴を地中に形成する挿入穴形成工程と、
前記外筒体に前記内筒体を挿入することによって前記水抜き管を形成する水抜き管形成工程と、
前記水抜き管形成工程で形成された前記水抜き管を、地中に形成された前記挿入穴に押し込んで挿入することによって前記水抜き管を埋設する埋設工程と、
を備える、水抜き管埋設方法。
【請求項4】
請求項3に記載の水抜き管埋設方法において、
前記挿入穴形成工程は、前記水抜き管の外径よりも大きい内径を有する筒状のガイド管を地中に仮埋設する工程であり、
前記埋設工程は、
前記挿入穴としての前記ガイド管の中に前記水抜き管を押し込んで挿入する水抜き管挿入工程と、
地中から前記ガイド管を引き抜くガイド管引抜工程と、
を有する、水抜き管埋設方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の水抜き管を構成する前記外筒体として用いられる筒状織物であって、
前記内筒体が挿入された状態で地中に埋設される、筒状織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抜き管、水抜き管埋設方法、および筒状織物に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1に記載の従来技術がある。その従来技術は、次のような技術である。
【0003】
特許文献1には、水抜き管としてフレキシブル筒状織物を用い、このフレキシブル筒状織物を、その径よりも大径の地中に形成された水抜き管挿入孔に押し込んで挿入することで、水抜き管としてのフレキシブル筒状織物を地中に埋設することが記載されている。
【0004】
ここで、フレキシブル筒状織物は、全面に微細孔を有するのでその全表面から集水することが可能であり、有孔塩ビ管に比べて、高い排水性を有する。また、フレキシブル筒状織物はフィルター効果も有するので、フレキシブル筒状織物を水抜き管として用いると、有孔塩ビ管の場合よりも、土砂の流出を大幅に抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、次のような問題がある。
上記のように、フレキシブル筒状織物は、排水性能および土砂の流出抑制性能に優れるが、金属製や塩ビ製の水抜き管と比べて地中への挿入性が低く、長尺施工(例えば、80m)を安定して行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、排水性能および土砂の流出抑制性能を維持しつつ、地中への挿入性を向上させることができる水抜き管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地中に埋設される水抜き管であって、この水抜き管は、たて糸に対しよこ糸をスパイラル状に配置することにより筒状に形成され、前記よこ糸の少なくとも一部に剛性を有する糸が使用されてなる自己保形性を有する外筒体と、前記外筒体に挿入され、前記外筒体の内面に当接する有孔樹脂管である内筒体と、を備え、前記外筒体の全長にわたって、前記外筒体の内面に前記内筒体が当接しており、前記内筒体は、前記外筒体に挿入される外筒体保持部と、前記外筒体保持部の端部に前記外筒体保持部と一体で設けられるか、または、前記外筒体保持部とは別体で設けられて前記外筒体保持部の端部に嵌合され、隣り合わせられる他の前記内筒体が差し込まれる雌継手部と、を有し、前記雌継手部が、前記外筒体保持部よりも径方向外側に凸とされており、前記外筒体保持部が挿入された状態の前記外筒体の外径よりも前記雌継手部の外径の方が大きくされており、作業者の手で地中に挿入される。
【0009】
本発明の水抜き管は、次のような作用効果を有する。
上記内筒体により水抜き管の剛性が担保されるため、地中への水抜き管の挿入性を向上させることができる。また、地中の土砂と接触する外筒体が、たて糸に対しよこ糸をスパイラル状に配置することにより筒状に形成されたものであるので、排水性能および土砂の流出抑制性能の両方を維持することができる。さらには、外筒体を構成するよこ糸の少なくとも一部に剛性を有する糸が使用されていることで、圧縮コイルバネに似た効果を発揮し、外筒体の径方向にはもちろんのこと、長さ方向にも圧縮されにくくなり、地中に形成された挿入穴への水抜き管の挿入時、外筒体と内筒体との間で剥離が生じにくく、外筒体と内筒体というように水抜き管が別体で構成されているものの上記挿入穴に水抜き管を一体的に押し込んで挿入することができる。また、排水は有孔樹脂管の孔の位置まで外筒体を浸透することで行われることから、フィルター効果は外筒体の厚さ方向だけではなく長さ方向にも作用し、優れた土砂流出抑制効果を得ることができる。
【0010】
また、この構成によると、地中に形成された挿入穴への水抜き管の挿入時、外筒体と内筒体との間の剥離をより抑制することができる。また外筒体の長さ方向のフィルター効果をより高めることができるので、さらに優れた土砂流出抑制効果を得ることができる。
【0011】
また、この構成によると、地中に形成された挿入穴への水抜き管の挿入時、上記雌継手部がストッパー的役割を奏し、外筒体と内筒体との間の剥離をより抑制することができる。
【0012】
また、この構成によると、雌継手部によるストッパー的効果の発揮がより確実なものとなり、外筒体と内筒体との間の剥離をより抑制することができる。
【0013】
また本発明において、前記外筒体の両端部にほつれ止め部が形成されていることが好ましい。
この構成によると、地中に形成された挿入穴への水抜き管の挿入時、外筒体の両端部がつぶれにくくなり、外筒体が短くなることを防止できる。
【0014】
本発明は、別の観点では、前記水抜き管を地中に埋設する水抜き管埋設方法でもあり、次のように構成される。本発明の水抜き管埋設方法は、前記水抜き管の外径よりも大径の挿入穴を地中に形成する挿入穴形成工程と、前記外筒体に前記内筒体を挿入することによって前記水抜き管を形成する水抜き管形成工程と、前記水抜き管形成工程で形成された前記水抜き管を、地中に形成された前記挿入穴に押し込んで挿入することによって前記水抜き管を埋設する埋設工程と、を備える。
この構成によると、地中への水抜き管の挿入性が向上し、その結果、長尺施工の安定性が向上する。
【0015】
上記発明において、前記挿入穴形成工程は、前記水抜き管の外径よりも大きい内径を有する筒状のガイド管を地中に仮埋設する工程であり、前記埋設工程は、前記挿入穴としての前記ガイド管の中に前記水抜き管を押し込んで挿入する水抜き管挿入工程と、地中から前記ガイド管を引き抜くガイド管引抜工程と、を有することが好ましい。
この構成によると、ガイド管を用いることで、地中への水抜き管の挿入性がより向上する。
【0016】
本発明は、さらに別の観点では、前記水抜き管を構成する前記外筒体として用いられる筒状織物であって、前記内筒体が挿入された状態で地中に埋設される筒状織物である。
上記筒状織物によると、水抜き管の排水性能および土砂の流出抑制性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排水性能および土砂の流出抑制性能を維持しつつ、地中への挿入性を向上させることができる水抜き管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水抜き管の側面図である。
【
図3】
図1に示す水抜き管を構成する外筒体の側面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る水抜き管の側面図である。
【
図5】
図4に示す水抜き管を構成する内筒体の一端部にコーンが差し込まれた状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施例に係る水抜き管および比較例に係る有孔塩ビ管の排水性および土砂の流出抑制性に関する比較実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(水抜き管の構成)
図1~3を参照しつつ本発明の第1実施形態に係る水抜き管101について説明する。水抜き管101は、地中に埋設される管であって、筒状織物からなる自己保形性を有する外筒体1と、外筒体1に挿入される有孔樹脂管である内筒体2とを備える。
【0021】
図3に示すように、外筒体1は、たて糸11とよこ糸12とを筒状に織成してなるものである。よこ糸12は、例えば2本用いられ、2本とも、または2本のうちの1本は、剛性を有する糸が使用されて、スパイラル状とされる。剛性を有する糸としては、モノフィラメント糸、金属線が挙げられる。なお、よこ糸12の本数は、2本に限られるものではない。また、
図3中に斜線のハッチングで示すように、外筒体1の両端部には、ほつれ止め部1aが形成されている。例えばこのほつれ止め部1aは、端部のたて糸11とよこ糸12を熔融させて一体化した加熱処理や、接着剤の塗布などによって形成される。内筒体2は、例えば塩ビ管(硬質塩ビ管)であり、その長さは2m~4m程度である。
【0022】
図1に示すように、内筒体2は、外筒体1に挿入される外筒体保持部3と、外筒体保持部3の端部に設けられた雌継手部4とを有する。外筒体保持部3には、排水用の複数の孔3a(例えば直径7mm)があけられている。上記雌継手部4は、外筒体保持部3よりも径方向外側に凸とされており、本実施形態では、さらに、その外径D1は、外筒体保持部3が挿入された状態の外筒体1の外径D2よりも大きくされている。
【0023】
(水抜き管の埋設方法)
上記構成の水抜き管101を地中に埋設する方法について説明する。
【0024】
<挿入穴形成工程>
作業者は、削孔機を用いて、地山に穴をあけつつ筒状のガイド管をその地中に挿入(仮埋設)する。上記ガイド管として、水抜き管101の最大外径よりも大きい内径を有する例えば鋼管が用いられる。この鋼管(ガイド管)を地中に挿入(仮埋設)することで、水抜き管101の外径よりも大径の挿入穴が地中に形成される。
【0025】
<水抜き管形成工程>
作業者は、内筒体2の外筒体保持部3を外筒体1に挿入することによって水抜き管101を形成する。この作業は施工現場で実施してもよいし、工場で予め組み立てたものを用いてもよい。なお、施工長さに合わせて、複数本の水抜き管101が形成される。
【0026】
<埋設工程>
作業者は、地中に仮埋設された上記ガイド管の中に水抜き管101を1本ずつ押し込んで挿入していく(水抜き管挿入工程)。なお、地中への挿入1本目の水抜き管101を構成する内筒体2の先端部には、例えば、
図5中に示すようなコーン21が装着され、ガイド管内への水抜き管101の挿入を容易なものとするとともに、水抜き管101内部への土砂の侵入を防止している。
【0027】
ここで、水抜き管101は、内筒体2によりその剛性が担保されるため、筒状織物だけで構成される従来の水抜き管に比べてその挿入性は優れる。また、外筒体1を構成するよこ糸12の少なくとも一部に剛性を有する糸が使用されていることで、水抜き管101の挿入時、外筒体1と内筒体2との間で剥離が生じにくく、外筒体1と内筒体2というように水抜き管101が別体で構成されているものの、ガイド管に水抜き管101を一体的に押し込んで挿入することができる。また、外筒体1の全長にわたって、外筒体1の内面に内筒体2が当接しているため、外筒体1と内筒体2との間の剥離はより抑制される。
【0028】
また、ガイド管の中に水抜き管101を1本ずつ押し込んで挿入していく際、水抜き管101の雌継手部4とは反対側の端部101aと、隣り合う(直列接続される)他の水抜き管101の雌継手部4とが連結する。これにより、外筒体1に関し、水抜き管101の押し込み方向の前後に雌継手部4が存在することになる。この雌継手部4は、外筒体1の内面が当接する外筒体保持部3よりも径方向外側に凸とされているため、水抜き管101の押し込み挿入の際に、ガイド管の内面に外筒体1の外面が接触などしても、雌継手部4がストッパー的役割を奏し、外筒体1と内筒体2との間の剥離(外筒体1のずれ)は抑制される。本実施形態では、雌継手部4の外径D1が、外筒体保持部3が挿入された状態の外筒体1の外径D2よりも大きくされているので、雌継手部4によるストッパー的効果の発揮がより確実なものとなり、外筒体1と内筒体2との間の剥離をより抑制することができる。また、外筒体1の両端部にほつれ止め部1aが形成されていることで、外筒体1の両端部がつぶれにくくなり、排水機能およびフィルター機能を有する外筒体1の両端部がつぶれて外筒体1が短くなることを防止できる。
【0029】
ガイド管内への全ての水抜き管101の挿入が完了したら、作業者は、地中からガイド管を引き抜く(ガイド管引抜工程)。これにより、水抜き管101の地中への埋設が完了する。なお、水抜き管挿入工程時の上記効果と同様の効果が、ガイド管引抜工程時にも得られ、地中からガイド管を引き抜く際、内筒体2から外筒体1が剥離して、ガイド管とともに外筒体1が戻ってくることは防止される。また、外筒体1の端部がつぶれて外筒体1が短くなることも防止される。また、外筒体1は、筒状織物からなるため表面に凹凸があり、地盤とのなじみがよく地盤の崩壊が抑制される。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態と第1実施形態との相違点は、次のとおりである。
【0031】
第1実施形態の水抜き管101を構成する内筒体2は、外筒体保持部3と雌継手部4とが一体である(一体成形品)。これに対して、第2実施形態の水抜き管102を構成する内筒体5は、外筒体保持部6と雌継手部7とが別体であり、外筒体保持部6としての筒体が雌継手部7としての短い筒体に差し込まれて接着剤にて固定されてなる。外筒体保持部6には、排水用の複数の孔6aがあけられている。なお、本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様、雌継手部7の外径D1は、外筒体保持部6が挿入された状態の外筒体1の外径D2よりも大きくされている。
【0032】
図5は、
図4に示す水抜き管102を構成する内筒体5の一端部にコーンが差し込まれた状態を示す図である。
【0033】
図5に示すように、地中への挿入1本目の水抜き管102を構成する内筒体5の先端部(雌継手部7)には、先端が円錐形状のコーン21が装着され、ガイド管内への水抜き管102の挿入を容易なものとするとともに、水抜き管102内部への土砂の侵入を防止している。
【0034】
(排水性等の検証実験)
本発明の水抜き管が、十分な排水性能、および十分な土砂の流出抑制性能を有するか確認することを目的に以下の模型実験を行った。
【0035】
<実験条件>
模型実験に用いた、水抜き管を構成する排水材の仕様は、表1のとおりである。
【表1】
【0036】
表1に示す筒状織物を外筒体として用い、この外筒体に表1に示す有孔硬質塩ビ管を内筒体として挿入したものを本発明の一実施例としての水抜き管とした。また、表1に示す有孔硬質塩ビ管のみのものを比較例としての水抜き管とした。
【0037】
道路法面を模した盛土を、上面が開口する直方体形状の透明樹脂ケースの中に成形した。具体的には、集水ボーリング施工時に採取した土を用い、当該土を締め固めて透明樹脂ケースの中に上記盛土を成形した。この土の最適含水比は11.2%で、締固め度86%になるように調整した。また、この土は、粘性土質砂に分類され、その透水係数は2.11×10-5(m/s)であった。上記盛土を、別々の透明樹脂ケースの中に成形した。
【0038】
<実験方法>
一方の盛土内に、上記実施例に係る水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)を設置し、他方の盛土内に、上記比較例に係る水抜き管(有孔硬質塩ビ管)を設置して、集中豪雨に相当する96mm/hの雨量の水を、雨のように各盛土に3時間与えた。降雨を模した水の付与開始から一定時間ごとに各水抜き管からの排水量とその排水の濁度を測定し、且つ排水を乾燥させて排水土砂(残留物)の重量を測定した。また、降雨を模した水の付与終了後に、各水抜き管内部に残っている土砂も含めて各水抜き管により排出された排水土砂(残留物)の乾燥重量を測定した。
【0039】
<実験結果>
図6は、実験結果を示すグラフであり、横軸は経過時間(min)、縦軸は累積排水量(g)および累積残留物量(g)である。実線は、実施例に係る水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)の結果データを示し、点線は、比較例に係る水抜き管(有孔硬質塩ビ管)の結果データを示す。●印は、累積排水量に関するデータであり、▲印は、累積残留物量に関するデータである。
(1)比較例に係る水抜き管(有孔硬質塩ビ管)
比較例に係る水抜き管では、水の浸透により盛土の飽和度が上昇し、浸透水の水抜き管への流入にともない水の付与開始から47分後に土粒子の吸出しが発生して、53分後に盛土表面が陥没した。56分後の排出水は濁っており、排出水には多くの土粒子が含まれていた。また、残留物量は、53分で0.266g、水の付与終了後では、水抜き管内部の残土量も加えて合計158.2gであった。
【0040】
(2)実施例に係る水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)
実施例に係る水抜き管も同様、水の浸透により盛土の飽和度が上昇し、浸透水が水抜き管に流入したが、筒状織物のフィルター効果により土粒子の吸出しが抑制されたため、盛土表面の陥没は見られなかった。残留物量は、3時間で0.59g、水の付与終了後では、水抜き管内部の残土量も加えて合計0.624gであった。0.624gという残土量は、比較例に係る水抜き管の場合の1/254であり、実施例に係る水抜き管は、十分な土砂の流出抑制性能を有する。排水性に関しては、水の付与開始から50分後ぐらいまでは有孔硬質塩ビ管の孔の位置まで水が筒状織物に浸透するのに時間を要して排水量が少ないが、その後は、約10cc/minの排水量が確保された。比較例に係る水抜き管の、二点鎖線で示す累積排水量の延長線と比較するに、実施例に係る水抜き管は十分な排水性能を有する。また、筒状織物は表面に凹凸があるので盛土とのなじみがよく、このことによっても、盛土の崩壊が起こらなかった。
【0041】
上記実験により、実施例に係る水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)は、比較例に係る水抜き管(有孔硬質塩ビ管)よりも、排水性能および土砂の流出抑制性能の両方が格段に優れていることがわかる。そのため、実施例に係る水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)は、筒状織物だけからなる水抜き管と比較しても、排水性能および土砂の流出抑制性能の両方を維持し得る。
【0042】
さらに従来技術であるフレキシブル筒状織物と実施例に関わる水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)について比較すると、排水量に関しては従来のフレキシブル筒状織物は全表面から集水することが可能であることから、実施例に関わる水抜き管と比べると特に初期段階での排水量の差は大きい。しかし最終的には実施例に関わる水抜き管も従来のフレキシブル筒状織物と同等の排水量にまで達することを確認している。
土砂流出抑制効果に関しては、従来技術のフレキシブル筒状織物はフィルター効果を有するので、有孔硬質塩ビ管の場合よりも土砂の流出を大幅に抑制することが可能ではあるが、それは筒状織物の厚さ方向のフィルター効果となる。一方、実施例に関わる水抜き管(筒状織物+有孔硬質塩ビ管)は、有孔硬質塩ビ管の孔の位置まで水が筒状織物に浸透してから排水することからそのフィルター効果は厚さ方向だけではなく長さ方向にも作用することとなり、より優れた土砂流出の抑制効果を有する。
【0043】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
上記実施形態では、雌継手部4、7の外径D1は、内筒体2、5の外筒体保持部3、6が挿入された状態の外筒体1の外径D2よりも大きくされている。雌継手部4、7は、外筒体保持部3、6よりも径方向外側に凸であればよく、その外径D1は、内筒体2、5の外筒体保持部3、6が挿入された状態の外筒体1の外径D2以下であってもよい。
【0044】
上記実施形態では、筒状のガイド管をあらかじめ地中に挿入(仮埋設)して、そのガイド管の空洞部を水抜き管の挿入穴とした。これに代えて、筒状のガイド管を用いず、地山にあけた穴自体を水抜き管の挿入穴としてもよい。
【0045】
地中への挿入1本目の水抜き管101、102を構成する内筒体2、5の先端部にコーン21を装着せずに、当該先端部を円板などで閉止してもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは勿論可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:外筒体
1a:ほつれ止め部
2、5:内筒体
3、6:外筒体保持部
4、7:雌継手部
11:たて糸
12:よこ糸
101、102:水抜き管