IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 現代自動車株式会社の特許一覧 ▶ 起亞自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-全固体電池の製造方法 図1
  • 特許-全固体電池の製造方法 図2
  • 特許-全固体電池の製造方法 図3
  • 特許-全固体電池の製造方法 図4
  • 特許-全固体電池の製造方法 図5
  • 特許-全固体電池の製造方法 図6
  • 特許-全固体電池の製造方法 図7
  • 特許-全固体電池の製造方法 図8
  • 特許-全固体電池の製造方法 図9
  • 特許-全固体電池の製造方法 図10
  • 特許-全固体電池の製造方法 図11
  • 特許-全固体電池の製造方法 図12
  • 特許-全固体電池の製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230206BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230206BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20230206BHJP
   H01M 50/103 20210101ALN20230206BHJP
   H01M 50/121 20210101ALN20230206BHJP
   H01M 50/184 20210101ALN20230206BHJP
   H01M 50/193 20210101ALN20230206BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M6/18 Z
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/184 A
H01M50/193
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018194066
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020064710
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武典
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135287(JP,A)
【文献】特開2010-262807(JP,A)
【文献】特開2013-069529(JP,A)
【文献】特開2008-183791(JP,A)
【文献】特開昭61-227012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
H01M 6/00- 6/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、固体電解質、及び負極からなる複数のセルと、前記複数のセルが直列に積層された積層方向に向かって屈曲した端子台が一側の端部に形成されると共に積層方向の外側表面に樹脂カバーが形成されて積層方向の両端部に置かれる集電板とからなる積層体が、型開き状態の金型に投入される段階と、
金型を閉じて、前記積層体を加圧する段階と、
前記積層体の加圧状態で、樹脂注入口から樹脂を圧入し、積層体における前記樹脂カバーを除く4側面及び前記端子台を樹脂によって覆った状態で、樹脂を固化することにより電池ユニットを作成する段階と、
金型を開いて、前記電池ユニットを取り出す段階と、
が備えられることを特徴とする全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂の圧入段階では、樹脂の射出圧力が、前記積層方向と直交する前記積層体周囲の4側面で均等となっていることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂の圧入段階では、樹脂が硬化するまでの間、樹脂に保圧が加えられていることを特徴とする請求項2に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂の圧入段階では、樹脂の射出圧力が、段階的に大きくなるように調整されることを特徴とする請求項3に記載の全固体電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池の製造方法に係り、より詳しくは、電池ユニットとなるの積層体を加圧して樹脂封止ができる全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合剤を塗布した正極箔に剥離シート付きの固体電解質層をロールプレスし、同様に合剤を塗布した負極箔に剥離シート付きの固体電解質層をロールプレスし、各剥離シートをはがした上、固体電解層を互いに向かい合わせにしてロールプレスし、正極と固体電解層と負極からなる帯状の積層体を製造する方法が開示される。
【0003】
しかしながら、帯状のロール体は、反り、押し出し、割れなどを生じることがあり、ロール体を所定のセル形状に切り出しても平坦な板状ではない。そのため、複数のセルを容器に積層しても、良好な接続状態が得られない。また、固体電解質と電極(正極、負極)は界面が粒子同士の接触になるので、接触抵抗が大きい。これを小さくするため、500MPa程度の高圧でプレスすることが望ましいが、ロールプレスでは、このような高圧でのプレスは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-118870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電池ユニットとなるのセルの積層体を高圧で加圧でき、周囲を樹脂封止できる全固体電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による全固体電池の製造方法は、正極、固体電解質、及び負極からなる複数のセルと、前記複数のセルが直列に積層され、積層方向の両端部に置かれる集電板とからなる積層体が、型開き状態の金型に投入される段階と、金型を閉じて、前記積層体を加圧する段階と、前記積層体の加圧状態で、樹脂注入口から樹脂を圧入し、樹脂を固化することにより電池ユニットを作成する段階と、金型を開いて、前記電池ユニットを取り出す段階と、が備えられることを特徴とする。
【0007】
前記集電板は、積層方向の外側表面に、あらかじめ樹脂カバーが形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記樹脂の圧入段階では、樹脂の射出圧力が、前記積層方向と直交する前記積層体周囲の4側面で均等となっていることを特徴とする。
【0009】
前記樹脂の圧入段階では、樹脂が硬化するまでの間、樹脂に保圧が加えられることを特徴とする。
【0010】
前記樹脂の圧入段階では、樹脂の射出圧力が、段階的に大きくなるように調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による全固体電池の製造方法によれば、
(a)複数のセルと両端部の集電板とからなる積層体を金型に投入し、金型を閉じて積層体を加圧したので、ロールプレスに比べて、金型により積層方向に超高圧の加圧ができる。これにより、電池ユニットの界面抵抗が低減でき、エネルギー密度も向上できる。
(b)積層体を加圧状態にして樹脂を圧入し、樹脂を固化することにより電池ユニットを作成するため、電池ユニットの周囲を樹脂で覆うことができ、金属製のケースを用いる必要がない。
(c)電池ユニットは、複数のセルを直列に積層した構造なので、電極の配線がなく、省スペースでコンパクトな形状にできる。
【0012】
集電板の積層方向の外側表面に、あらかじめ樹脂カバーが形成されているので、積層体の上下面を確実にカバーできる。
【0013】
樹脂の射出圧力が、積層方向と直交する積層体周囲の4側面で、均等に加圧されるので、樹脂厚みが偏ることがなくようにできる。
【0014】
射出後の樹脂が硬化するまでの間、樹脂に保圧が加えられるので、圧入した樹脂の逆流がない。一般に樹脂は小型のシリンダに用意され、ピストンで所定量が注入されるが、注入後もピストンで加圧状態が保持される。
【0015】
樹脂の射出圧力が、段階的に大きくなるよう調整されることにより、例えば、最初は5MPaで、100MPaに向けて段階的に大きくなるように調整されるので、狭い隙間にも樹脂を充填でき、急激な圧力をかけないので亀裂も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による全固体電池の製造方法を示し、金型を開く段階(S1)である。
図2】本発明による全固体電池の製造方法を示し、複数のセルと両端部の集電板とで構成される積層体が金型の左凹部に投入される段階(S2)である。
図3】本発明による全固体電池の製造方法を示し、複数のセルと両端部の集電板とで構成される積層体が金型の右凹部に投入される段階(S2)である。
図4】本発明による全固体電池の製造方法を示し、金型を閉じて、積層体を加圧する段階(S3)である。
図5】本発明による全固体電池の製造方法を示し、積層体の加圧状態で、樹脂注入口から樹脂を圧入する段階(S4)である。
図6】本発明による全固体電池の製造方法を示し、樹脂が固まった後、金型を開く段階(S5)である。
図7】本発明による全固体電池の製造方法を示し、樹脂で固めた積層体をエジェクターピンにより下金型の上部に移動する段階(S6)である。
図8】本発明による全固体電池の製造方法を示し、電池ユニットを金型から取り出して、湯口を切断する段階(S7)である。
図9】本発明による全固体電池の製造方法を示し、金型を閉じ、エジェクターピンを初期状態に戻す段階(S8)である。
図10図1~9に示す方法で製作した電池ユニットの外観図である。
図11図10のA-A断面図である。
図12】積層体の積層詳細図である。
図13】複数の電池ユニットを直列に連結した全固体電池の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明による全固体電池の製造方法を説明する。
【実施例
【0018】
図1~9は、本発明による全固体電池の製造方法を示す図である。
図1は、はじめに金型を開く段階(S1)である。金型50は、射出成型金型で、上金型1と下金型2からなる。この実施例では上金型1が上下動する可動型であり、はじめに上金型1を上昇させて金型50を開く。
【0019】
図1に示す上金型1は、次のように構成される。上型基部3には、底面側に押圧板7が設けられ、固定ピン5で固定される。ガイドピン6は、上金型1の下方向への移動をガイドする。上金型1の中央には、樹脂注入口8と樹脂を導くランナ4が設けられ、樹脂が注入できる。
【0020】
図1に示す下金型2は、次のように構成される。下型基部14には、凹部27の壁が固定ピン15で固定される。凹部27は、左凹部27aと、右凹部27bからなり、左凹部27aと右凹部27bのそれぞれに積層体25を投入しての加圧ができる。左凹部27aの底部と、右凹部27bの底部には受圧板13が設けられ、支持ピン12で下型基部14に固定される。上金型1のガイドピン6は、下型基部14のガイド孔10に係合する。エジェクター台18が凹部27の下側に上下動可能に設けられる。エジェクター台18のリターンピン11が、エジェクター台18の移動をガイドする。リターンピン11は、リターンピン孔33に収納される。エジェクター台18が上昇すると、エジェクター台18に取り付けられたエジェクターピン16も上昇し、エジェクターピン16が左凹部27aと右凹部27b内の積層体25を凹部27の上方に押し出す。下型基部14の台座19の中央を突き抜けて、エジェクターロッド17が設けられており、エジェクターロッド17を上昇させると、エジェクター台18が上昇する。
【0021】
図2図3は、複数のセル20と両端部の集電板24、24とで構成される積層体25を金型50に投入する段階(S2)である。セル20は、正極、固体電解質及び負極からなる。ここで金型50は、左凹部27aと右凹部27bからなる凹部27が設けられるとする。積層体25は、本実施例では、左凹部27aと右凹部27bに、それぞれ6個が投入される。図2では、左凹部27aに、積層体25を投入したことを示す。なお、右凹部27b(27)は、積層体25を投入中であることを示す。積層体25は上下に積層するので、積層方向は、金型50の上下方向になる。ここでセル20は、上から正極、固体電解層及び負極からなる3層の電池モジュールで、押し固めはしていない仮接着のものである。1つのセル20の正極の上に、次のセル20の負極が積まれるので、複数のセル20は、直列の積層となる。
【0022】
図3は、左凹部27a(27)と右凹部27b(27)の両方に積層体25が投入されたことを示す。凹部27の前後左右の寸法は、積層体25より大きく、隙間がある。
【0023】
図4は、金型50を閉じて、積層体25を加圧する段階(S3)である。上金型1のガイドピン6が、下金型2のガイド孔10に係合して、上金型1が下金型2の上部を閉じるので、上金型1の押圧板7と、下金型2の受圧板13とで挟まれた積層体25を押圧する。500MPaの高圧をかける。
【0024】
図5は、積層体25の加圧状態で、樹脂注入口8から樹脂26を圧入する段階(S4)である。樹脂26は、樹脂注入口8からランナ4を通過し、積層体25の前後左右の側面に射出される。樹脂26は、積層体25の前後左右の側面を均等に押圧し、積層体25の側面と凹部27との隙間に樹脂26を充填する。樹脂26の射出圧は、5MPa程度から始まり、段階的に上昇させ、約100MPa程度まで上げる。射出した後も、樹脂が逆流しないように樹脂が固まるまでの間、保圧をかけておく。
【0025】
図6は、樹脂26が固まった後、金型50を開く段階(S5)である。ランナ4に残った樹脂がピンのように突き出す。
【0026】
図7は、樹脂26で固めた積層体25をエジェクターピン16により下金型2の上部に移動する段階(S6)である。エジェクターピン16は、エジェクター台18に取り付けられているので、エジェクターロッド17でエジェクター台18を上昇させると、エジェクターピン16が押し上げられ、積層体25を左凹部27aと右凹部27bの上方に押し出す。
【0027】
図8は、積層体25を金型50から取り出して、不要な湯口28を切断する段階(S7)である。図9は、金型50を閉じ、エジェクターピン16を初期状態に戻す段階(S8)である。
【0028】
図10は、図1~9に示す方法で製作した電池ユニット100の外観図である。右側の一部を切断して示す。端子台29が上になるように置くので、積層体25の積層方向は縦になる。電池ユニット100は、全体が樹脂ケース30で覆われている。金型50で射出した樹脂26は、図10の前後の側面と、上下の側面を覆う。集電板24の積層方向の外側表面には、あらかじめ樹脂カバー32が形成している。この面は金型50による押圧面で、射出成型の樹脂を導けないからである。端子台29は、一方が正極の端子台で、他方が負極の端子台である。樹脂ケース30は、左右側面の集電板にあらかじめ設けられた樹脂カバー32と、上下と前後の側面を覆う射出成型で形成した樹脂26からなる。
【0029】
図11は、図10のA-A断面図である。電池ユニット100は、端子台29が設けられる。端子台29は、集電板24の上端の一部を延長して曲げたもので、先端にはウェルデドナットが取り付けられる。電池のセル20は、正極21、固体電解層23及び負極22からなる。電池のセル20は、直列接続31である。
【0030】
図12は、積層体25の積層詳細図である。図2と同じ積層方向で示す。上端部と下端部には、、集電板24が設けられる。集電板24の積層方向の外側表面には、あらかじめ樹脂カバー32が形成されている。樹脂カバー32は、集電板24の外径寸法よりやや小さくした。これにより圧入の樹脂26が角部を回り込むので、樹脂26の貼付けが良好になる。電池のセル20は、正極21、固体電解層23及び負極22からなり、直列接続(符号31で示す)である。
【0031】
図13は、複数の電池ユニット100を直列に5つ連結した全固体電池の図である。端子台29は、連結具34で連結される。図には示さないが、電池ユニット100の並列接続も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、金型を使用し、電池ユニットとなる積層体を加圧して樹脂封止ができる全固体電池の製造方法として好適である。
【符号の説明】
【0033】
1 上金型
2 下金型
3 上型基部
4 ランナ
5 固定ピン
6 ガイドピン
7 押圧板
8 樹脂注入口
10 ガイド孔
11 リターンピン
12 支持ピン
13 受圧板
14 下型基部
15 固定ピン
16 エジェクターピン
17 エジェクターロッド
18 エジェクター台
19 台座
20 セル
21 正極
22 負極
23 固体電解質
24 集電板
25 積層体
26 樹脂
27 凹部
27a 左凹部
27b 右凹部
28 湯口
29 端子台
30 樹脂ケース
31 直列接続
32 樹脂カバー
33 リターンピン孔
34 連結具
50 金型
100 電池ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13