(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】燃料電池装置および燃料電池装置の制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04228 20160101AFI20230206BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230206BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20230206BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20230206BHJP
C01B 3/38 20060101ALN20230206BHJP
【FI】
H01M8/04228
H01M8/04 Z
H01M8/04313
H01M8/0432
C01B3/38
(21)【出願番号】P 2018228520
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 晋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-034701(JP,A)
【文献】特開2015-084280(JP,A)
【文献】特開2013-225445(JP,A)
【文献】特開2015-191863(JP,A)
【文献】特開2017-069104(JP,A)
【文献】特開2010-238485(JP,A)
【文献】特開2020-087623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を貯留する第一タンクと、
前記燃料電池を制御する制御装置と、
前記燃料電池の運転が停止した回数を累積して記憶する記憶装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第一タンク内の水位が、予め定められた下限水位未満である場合に、燃料電池の運転を停止する第一運転停止制御と、
所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する第二運転停止制御と、を実行可能であり、
前記記憶装置に記憶された累積運転停止回数が、第一警告回数以上である場合、前記第二運転停止制御を実行しない、燃料電池装置。
【請求項2】
前記第一条件とは、
前記第一タンク内の水位が、前記下限水位と前記第一タンクの上限水位との間の位置に予め定められた、第一設定水位未満であり、かつ、
前記水の回収に関連する第一計測温度が、予め定められた第二設定温度以上である、ことである請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記排ガスと熱交換される熱媒を貯留する第二タンクを備え、
前記第一計測温度とは、前記第二タンクの外部空間で測定された温度である、請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記第一タンクに水を補給する水補給装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第一タンク内の水位が、前記第一設定水位未満であり、かつ、前記第一計測温度が、前記第二設定温度未満である場合に、
前記水補給装置により前記第一タンクへ水を補給する補水制御を実行する、請求項
2または3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記所定の第一条件が満たされ、かつ、前記記憶装置に記憶された累積運転停止回数が、所定の第一警告回数未満である場合、
前記制御装置は、前記第二運転停止制御を実行した後、予め定められた待機時間経過後に、前記燃料電池の運転を再開する運転開始制御を実行し、
前記累積運転停止回数が、予め前記第一警告回数よりも複数回少ない回数に設定された第二警告回数以上である場合に設定される第一待機時間は、
前記累積運転停止回数が、前記第二警告回数未満である場合に設定される第二待機時間よりも長い、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
燃料電池と、水を貯留する第一タンクと、前記燃料電池を制御する制御装置と、前記燃料電池の運転が停止した回数を累積して記憶する記憶装置と、を備え、
所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する運転停止ステップと、
前記記憶装置に記憶されている累積運転停止回数と、所定の第一警告回数とを比較する停止可能回数確認ステップと、を含み、
前記制御装置は、前記第一条件が満たされて、前記運転停止ステップが実行される前に、前記停止可能回数確認ステップを実行して、
前記累積運転停止回数が前記第一警告回数以上である場合は、前記運転停止ステップを実行せず、
前記累積運転停止回数が前記第一警告回数未満である場合は、前記運転停止ステップを実行する、燃料電池装置の制御方法。
【請求項7】
燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置およびそれに付随する記憶装置に、前記燃料電池の運転が停止した回数を累積して記憶装置に記憶する運転記録ステップと、
所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する運転停止制御ステップと、
記憶装置に記憶されている累積運転停止回数と、所定の演算により得られる第一警告回数とを比較する停止可能回数確認ステップと、を実行させる制御プログラムであって、
前記運転停止制御ステップを実行する前に、前記停止可能回数確認ステップを実行して、
前記累積運転停止回数が前記第一警告回数以上である場合は、前記運転停止制御ステップを実行せず、
前記累積運転停止回数が前記第一警告回数未満である場合は、前記運転停止制御ステップを実行する、燃料電池装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置および燃料電池装置の制御方法、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は、燃料電池から排出される燃焼排ガスに含まれる水蒸気が凝縮した凝縮水を、イオン交換樹脂等により浄化処理して、第一タンクである水タンクに貯留し、貯留された水を、天然ガス等の原燃料を水蒸気改質する改質器に、改質水として供給している。
【0003】
このような、改質水を利用した燃料電池の運転や制御に関し、特許文献1には、たとえば外気温が高い等により、水タンクに貯留した改質水の量が不足する場合、燃料電池に供給する単位時間当たりの反応空気供給量を減らして、燃料電池の空気利用率を大きくすることが開示されている。これによれば、改質水となる、回収される凝縮水を増やして、貯留された水の量を回復させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、熱媒または冷媒である低温の水との熱交換によって凝縮水を生成する凝縮部を備える燃料電池装置において、水タンクに貯留した改質水の量に応じて、熱交換器に供給する熱媒の量を制御することが開示されている。これによっても、回収される凝縮水を増やして、貯留される改質水の量を回復させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-234869号公報
【文献】特開2012-119086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、所定の水位を下回った後、水位を回復させる制御を所定時間行なってもなお、水位が回復しない場合、効率よく発電運転を行なうことができない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の燃料電池装置は、燃料電池と、該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を貯留する第一タンクと、前記燃料電池を制御する制御装置と、前記燃料電池の運転が停止した回数を累積して記憶する記憶装置と、を備える。
前記制御装置は、前記第一タンク内の水位が、予め定められた下限水位未満である場合に、燃料電池の運転を停止する第一運転停止制御と、所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する第二運転停止制御と、を実行可能である。
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された累積運転停止回数が、第一警告回数以上である場合、前記第二運転停止制御を実行しない。
【0008】
また、本開示の燃料電池装置の制御方法は、燃料電池と、水を貯留する第一タンクと、前記燃料電池を制御する制御装置と、前記燃料電池の運転が停止した回数を累積して記憶する記憶装置と、を備える。
前記制御方法は、所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する運転停止ステップと、 前記記憶装置に記憶されている累積運転停止回数と、所定の第一警告回数とを比較する停止可能回数確認ステップと、を含む。
前記制御装置は、前記第一条件が満たされて、前記運転停止ステップが実行される前に、前記停止可能回数確認ステップを実行して、前記累積運転停止回数が前記第一警告回数以上である場合は、前記運転停止ステップを実行せず、前記累積運転停止回数が前記第一警告回数未満である場合は、前記運転停止ステップを実行する。
【0009】
また、本開示の制御プログラムは、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置およびそれに付随する記憶装置に、前記燃料電池の運転が停止した回数を累積して記憶装置に記憶する運転記録ステップと、所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する運転停止制御ステップと、記憶装置に記憶されている累積運転停止回数と、所定の演算により得られる第一警告回数とを比較する停止可能回数確認ステップと、を実行させる制御プログラムである。
前記制御プログラムは、前記運転停止制御ステップを実行する前に、前記停止可能回数確認ステップを実行して、前記累積運転停止回数が前記第一警告回数以上である場合は、前記運転停止制御ステップを実行せず、前記累積運転停止回数が前記第一警告回数未満である場合は、前記運転停止制御ステップを実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の燃料電池装置および燃料電池装置の制御方法、制御プログラムは、発電運転に必要な水が確保できない場合でも、効率的な発電運転を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
【
図2】実施形態の燃料電池装置における改質水の水量制御フローの前半である。
【
図3】実施形態の燃料電池装置における改質水の水量制御フローの後半である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参考にしながら、実施形態の燃料電池装置について説明する。
図1は、実施形態の燃料電池装置100の構成の概略を示すブロック図である。
【0013】
燃料電池装置100は、天然ガス,LPガス等の原燃料と空気とを使用して発電を行なう燃料電池モジュール1の稼動による電力供給と、熱交換器2、熱媒循環ポンプP2および第二タンクである蓄熱タンク4(貯湯タンクともいう)等からなる排熱回収システムを備える。なお、燃料電池装置は、温水の供給を行なわない、いわゆるモノジェネレーションシステムとしてもよい。
【0014】
また、燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1等の他、補機として、本開示の第一タンクである改質水タンク3、制御装置20、制御装置に搭載された記憶装置30と、第二タンクである蓄熱タンク4外部の空間の温度(気温)を測定する温度計TM1もしくはサーミスタ等を備える。
【0015】
なお、本実施形態において温度計TM1が測定する、蓄熱タンク4の外部空間の温度は、水の回収に関連する温度(第一計測温度)の一例である。また、水の回収に関連する温度とは、水が回収しやすい状況にあるか否かを判断するための指標として利用可能な温度のことを指す。よって、上述の蓄熱タンク4の外部空間の温度以外にも、蓄熱タンク4の底部の温度や、後述する熱媒循環流路Fにおいてラジエータ5を通過した後の熱媒の温度を、温度計TM1で計測してもよい。
【0016】
さらに、燃料電池装置100は、流体(気体)の流路として、原燃料ポンプおよび原燃料流路等を含む原燃料供給装置と、空気ブロアおよび酸素含有ガス流路等を含む酸素含有ガス供給装置と、排ガス流路Eとを備える。
【0017】
そして、流体(液体)の流路として、排ガスから回収した凝縮水を前述の改質水タンク3に流下させる凝縮水流路Cと、改質水タンク3と改質水供給ポンプP1および改質水流路Rを含む改質水供給装置と、先に述べた熱交換器2、蓄熱タンク4、ラジエータ5、熱媒循環ポンプP2とこれらを環状に接続する熱媒循環流路Fとからなる熱媒循環装置、および、排水流路Dを備える。
【0018】
なお、改質水タンク3(第一タンク)には、外部水(水道水)を改質水タンク3に補給する水補給装置の一部を構成する、止水栓を含む水補給流路Wが接続されている。外部水(水道水)は、水補給流路Wの途中に配設されたイオン交換樹脂14等の浄化装置により、塩素等の不純物が取り除かれた状態で、改質水タンク3(第一タンク)に給水(以下、補水)される。
【0019】
また、改質水タンク3に貯留された改質水の水量制御に関連するセンサとしては、改質水タンク3の水位検出装置である、補水の要否を判断するための中水位位置に配置された水検知器H(Hセンサ)、および、運転停止の是非を判断するための低水位(渇水を意味する下限水位)位置に配置された水検知器L(Lセンサ)を備える。
【0020】
燃料電池装置100における、排ガスから回収した凝縮水(改質水)を用いた発電運転(いわゆる、水自立運転)について簡単に説明する。
【0021】
発電運転中の燃料電池装置100においては、燃料電池モジュール1に隣接して配置された熱交換器2で、モジュールから排出された排ガスと、熱交換器2内を流れる水等の熱媒との間で熱交換が行なわれ、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。
【0022】
生じた凝縮水は、気液分離器等により分離され、イオン交換樹脂13等の浄化装置を経由して浄化された後、凝縮水流路Cを通じて、改質水タンク3に貯留される。一方、水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、燃料電池装置の外に排気される。
【0023】
改質水タンク3に貯留された改質水は、改質水流路Rおよび改質水ポンプP1を介して、燃料電池モジュール1内の改質器12に供給され、改質水を用いた原燃料の水蒸気改質に利用される。
【0024】
ところで、先にも述べたように、燃料電池の発電運転中に、改質水タンク3に貯留された改質水の量が不足する場合がある。この場合、先に述べた特許文献1,2等に開示の燃料電池装置と同様、本実施形態の燃料電池装置100においても、燃料電池に供給する反応空気供給量を減らして空気利用率を大きくする、あるいは、熱交換器に供給する熱媒の量を多くする等の制御により、回収される凝縮水の量を増やす運転(いわゆる、水回収運転制御)が行なうことができる。
【0025】
しかしながら、何らかの理由により、凝縮水が回収されず、改質水タンク3内の改質水の水位が低下する場合がある。改質水タンク3の水位が、予め定められた下限水位である所定の低水位を下回った場合、燃料電池装置100の制御装置20は、燃料ガス(改質ガス)がセルスタックに供給されないことに起因する失火等により、燃料電池の温度が急激に低下して、セルスタックに損傷等が発生するのを防止するために、緊急に燃料電池の運転をシャットダウンする「第一運転停止制御」を実行する。
【0026】
第一運転停止制御は、装置を守るためのフェイルセーフとして実行されるものであり、前述の水回収運転制御を実行している間に、改質水タンク3の水位が、発電運転継続の是非を判断するための低水位(渇水を意味する下限水位)位置を下回った場合、すなわち具体的には、前記下限位置に配置された改質水タンク3の水検知器L(
図1ではLセンサ)が水を検知しなくなった場合に、制御装置20は、セルスタックに損傷が発生する可能性があると判断して、燃料電池の運転を即時に停止する第一運転停止制御を実行する。
【0027】
しかしながら、燃料電池の運転をシャットダウンしてしまうと、メンテナンスを行なって運転再開が可能であるか否かを判断した後でなくては、発電運転を再開することができない。そのため、制御装置20は、第一運転停止制御に至る前に、所定の第一条件が満たされている場合に、発電運転を停止する第二運転停止制御を実行することができる。
【0028】
第二運転停止制御を実行することで改質水タンク3内の水位の低下を防ぎ、凝縮水が回収されやすい環境となってから、発電運転を再開することにより、効率よく発電運転を行なうことができる。ただし、この第二運転停止制御は、累積運転停止回数が第一警告回数以上である場合には、実行されない。
【0029】
図2および
図3は、第二運転停止制御を実行するかの判定を含む、燃料電池装置の制御のフローチャートである。
【0030】
詳しく説明すると、
図2,
図3に示す一連の制御フローは、改質水タンク3内の改質水の水位が、前述の下限水位であるLセンサ位置と上限水位であるタンクのオーバーフロー位置との間に設定された第一設定水位(
図1のHセンサ位置)を下回った場合、すなわち、改質水タンク3に配設された、補水の要否を判断する中水位位置に配置された水検知器Hが、水の存在を示す水検出信号を発信しなくなった場合に、「スタート」する。
【0031】
なお、以下の説明では、各ステップを「S」と省略して呼称する。たとえば、ステップ1,ステップ2・・・は、それぞれ、〔S1〕,〔S2〕・・・と称する。図中も同じである。また、制御フローは、燃料電池装置100の制御装置20が備える記憶装置30に記憶された制御プログラムに従って実行されるものである。制御装置20および記憶装置30の詳細構成についての説明は、後記で行なう。
【0032】
さらに、制御装置20は、制御フローおよびプログラムが実行可能か否かを判断するために、イオン交換樹脂等の浄化装置を経由して浄化された改質水の水質を、制御フローのスタート前に確認しておいてもよい。
【0033】
フローがスタートすると、制御装置20は、まず、〔S1〕および〔S2〕のループ制御により、前述の「水回収運転制御」の実施による改質水の水量回復が可能か否かを確認、見極めするための「待機」を実行する。すなわち、具体的には、改質水タンク3の水位が、水回収運転制御を行なっている第1時間(T1)の間、第一設定水位(Hセンサ位置)未満の状態が継続するか否かを、〔S1〕,〔S2〕のループ制御により確認する。
【0034】
なお、上述の、改質水タンク3内の改質水の水位が、「第一設定水位未満」であることを確認する〔S2〕は、本開示の「第一条件」を構成する2つの条件(水位と温度)の一方の例である。他方の、2つめの条件である「温度」は、後記〔S3〕で説明する。
【0035】
前述のループ制御中、〔S1〕において、この第1時間の間に、改質水タンク3の水位が、第一設定水位(H)以上に回復すれば、以降のステップを実行せず、通常の発電運転に復帰する〔S8〕。なお、第1時間(T1)の間とは、たとえば3時間程度の待機である。
【0036】
一方、〔S2〕において、第1時間の間、中水位位置に配置された水検知器Hが、水の存在を示す水検出信号を発信せず、改質水タンク3の水位が第一設定水位(H)未満である状態が続いた[Yes]場合、制御装置20は、〔S3〕において、「第一条件」を構成する2つめの条件(温度)である、第一計測温度を確認する制御に移行する。
【0037】
前述の第一計測温度を測定する温度計TM1は、先にも述べたように、第二タンクである蓄熱タンク4外部の空間の温度(気温)を測定するためのものであり、燃料電池モジュール1と蓄熱タンク4とが、外装ケース等の1つの筐体内に配設されている場合、
図1のように、その外装ケース内の空気温度、もしくは、ケース外の外気温を計測するように配設される。
【0038】
また、蓄熱タンク4が、貯湯タンクとして、燃料電池モジュール1とは別の筐体(ケース)に収められている場合は、その筐体内の空気温度、もしくは、蓄熱タンク4が収容された筐体外部の外気温を計測するように配設される。
【0039】
なお、本実施形態において、「第一条件」を満たす場合には、排ガスと熱交換される熱媒の温度が高く、凝縮水が回収されにくい場合であると判断できる。故に、熱媒の温度を直接測ってもよい。
【0040】
そして、〔S3〕において、上記のような配置の温度計TM1が測定する第一計測温度、たとえばケース外の外気温等が、予め定められた第二設定温度以上[Yes]であれば、制御装置20は、以上の2項目からなる第一条件が満たされたとして、運転停止回数を確認する〔S4〕に移行する。
【0041】
なお、第二設定温度は、たとえばケース外の外気温の場合38℃、ケース内の温度の場合40℃程度に設定される。一方、〔S3〕において、第一計測温度が第二設定温度未満[No]であれば、制御装置20は、前述の第一条件が満たされていないとして、〔S5〕以降の補水制御に移行する。
【0042】
つぎに、制御装置20は、〔S4〕において、現時点で燃料電池の発電運転の停止を実行するが否かを確認する制御を行なう。すなわち、〔S4〕においては、記憶装置30に記憶された、燃料電池の累積運転停止回数が、「第一警告回数」以上であるか否かを確認する。
【0043】
前述の第一警告回数とは、燃料電池装置の運転を停止することができる上限の回数である停止可能回数より、少ない回数である。たとえば、停止可能回数より1回少ない回数としてもよい。
【0044】
燃料電池の累積運転停止回数が、第一警告回数未満である場合、制御装置20は、前述の異常時のシャットダウンに相当する第一運転停止制御とは異なる「第二運転停止制御」を実行する。
【0045】
一方、燃料電池の累積運転停止回数が、第一警告回数」以上である場合、制御装置20は前述の異常時のシャットダウンに相当する第一運転停止制御とは異なる「第二運転停止制御」を実行しない。
【0046】
上述の第二運転停止とは、燃料電池の運転を即時に停止する第一運転停止とは異なり、燃料電池装置の耐久性の低下を抑制するために、所定の手順を経て燃料電池装置の運転を停止させる制御である。
【0047】
停止可能回数および第一警告回数は、演算により得られる変数としてもよい。たとえば、燃料電池装置が設置されてから経過した時間に比例して、当該回数が増加してもよい。
【0048】
停止可能回数の具体例としては、初期値である停止可能回数15回に、1時間あたり0.002を乗じた回数を加えた回数とすることができ、第一警告回数としては当該停止可能回数より1回少ない回数とすることができる。
【0049】
これにより、燃料電池装置が設置されてから経過した時間が長いほど、より多くの運転停止(回数)が可能になる。言い換えれば、時間の経過とともに停止可能回数および第一警告回数は増加する。
【0050】
本実施形態において、累積運転停止回数が第一警告回数以上の場合には燃料電池装置は第二運転停止制御を行なわないため、累積運転停止回数が停止可能回数となることはない。一方、第二運転停止制御以外の制御により運転停止が実行されて、累積運転停止回数が停止可能回数となった(運転停止をできる上限の回数に達した)場合、時間の経過によって停止可能回数および第一警告回数が増加するまで、すなわち運転を停止できる環境となるまで、燃料電池装置は運転を再開することはできない。
【0051】
図2のフローチャートには記載していないが、〔S4〕において、燃料電池の累積運転停止回数が第一警告回数を超えていることを、ユーザもしくは装置管理者等に情報発信するために、表示または音、合成音声などを用いた外部への連絡、通報、信号伝達等を含む発報制御を行なってもよい。
【0052】
なお、〔S4〕の停止可能回数確認制御において、累積運転停止回数が、第一警告回数未満である場合、制御装置20は、第二運転停止を実行し、スタンバイ状態〔S10〕に移行する。これにより、以後の、改質水タンク3内の水位低下を防ぐことができる。また、このスタンバイ状態は、凝縮水が回収されやすい環境となるまで継続し、スタンバイ状態から発電開始に移行する条件については後述する。
【0053】
つぎに、〔S4〕で第二運転停止を行なわなかった燃料電池装置100は、〔S5〕~〔S7〕において補水制御を実行し、燃料電池の発電運転を継続する。
【0054】
すなわち、制御装置20は、上述の〔S4〕において、累積運転停止回数が第一警告回数以上である[Yes]の場合、もしくは、先に述べた〔S3〕において、第一計測温度が第二設定温度未満の[No]である場合、〔S5〕において、外部水導入用の、水補給流路Wに配設された電磁開閉式の止水栓を開け、外部水である水道水を、イオン交換樹脂14等を備える浄化装置を経由して改質水タンク3に導入し、給水(補水)を開始する。
【0055】
ついで、制御装置20は、〔S6〕のループ制御において、改質水タンク3の水位が、発電運転を継続可能な、第一設定水位(H)以上に回復したことを確認してから、〔S7〕で前述の止水栓を閉めて補水を停止し、通常の発電運転に復帰する〔エンド〕。
【0056】
本実施形態は、上述した通り、「第一条件」が満たされた場合、すなわち凝縮水が回収されにくい環境にある場合に、凝縮水が回収されやすい環境となるまで発電運転を停止させる(第二運転停止制御)。イオン交換樹脂の寿命が尽きると、メンテナンスが必要となり、当該メンテナンスが完了するまでは、燃料電池装置の発電運転を行なえず、効率のよい運転をすることができない。
【0057】
しかしながら、当該制御を行なうことで、繰り返し補水が行なわれてイオン交換樹脂の寿命が急激に短くなることを抑制できる。すなわち、イオン交換樹脂の寿命を延ばすことで、効率よく燃料電池装置を運転することができる。
【0058】
ただし、本実施形態のように、「第二運転停止制御」が行なわれないからといって、直ちにメンテナンスが必要となる場合は想定されないため、必要に応じて「第二運転停止制御」を行なわないように燃料電池装置を制御してもよい。
【0059】
また、本実施形態は、上述した通り、「第一警告回数」以上である場合、制御装置20は「第二運転停止制御」を実行しない。これにより、運転停止をできる上限の回数に達してしまい、運転を停止できる環境となるまで、燃料電池装置は運転を再開できないといった、効率のよい発電運転が阻害されることを抑制できる。
【0060】
すなわち、本実施形態における燃料電池装置は、改質水タンク3の水位が所定の水位を下回った後、水位を回復せしめる制御を所定時間してもなお水位が回復しない場合であっても、効率よく発電運転を行なうことができる。
【0061】
他の実施形態として、補水を行なうことなく、水回収運転制御のみで所定水位まで水位を回復させようとする場合においても、「第一条件」が満たされた場合には、発電運転を停止させてもよい。これにより、早期に、燃料電池装置を、凝縮水が回収されやすい環境にすることで、効率のよい発電運転を行なうことができる。
【0062】
さらに他の実施形態として、イオン交換樹脂の寿命が尽き(破過)た場合で、かつ、改質水タンク3内の水位が第一設定水位未満の場合に、運転を停止する制御を行なってもよい。当該場合においても、累積停止回数が「第一警告回数」以上である場合には、運転を停止する制御を行なわないようにしてもよい。
【0063】
つぎに、
図3に示すフローチャートは、
図2の〔S4〕停止可能回数確認制御(ステップ)において、累積運転停止回数が第一警告回数未満で、第二運転停止制御が実行され、燃料電池装置がスタンバイ状態となった後の制御を説明するものである。
【0064】
その〔S11〕において、制御装置20は、
図2の〔S4〕と同様に、記憶装置30に記憶された、現時点における燃料電池の累積運転停止回数が、前述の第一警告回数よりも複数回少ない回数に設定された第二警告回数以上であるか否かを確認する。
【0065】
なお、〔S11〕における累積運転停止回数の確認制御は、
図3に示すように、以降の〔S14〕~〔S17〕の制御・実行に変更を加えるものではなく、発電運転を再開するまでの「待機時間」を変更するものである。
【0066】
すなわち、〔S11〕において、燃料電池の累積運転停止回数が、第二警告回数以上[Yes]である場合、制御装置20は、前述のスタンバイ状態(運転停止状態)のまま、たとえば10日間(240時間)等、比較的長期間である第一待機時間の間、待機した後、〔S14〕において、燃料電池の発電運転を再開する。
【0067】
他方、〔S11〕において、燃料電池の累積運転停止回数が、第二警告回数未満[No]の場合、制御装置20は、前述のスタンバイ状態(運転停止状態)のまま、たとえば1日間(24時間)等、比較的短期間である第二待機時間の間、待機した後、〔S14〕において、燃料電池の発電運転を再開する。
【0068】
そして、先述の第一待機時間は、前記第二待機時間より長く設定されている。この構成により、装置周辺で高温環境が続く際に、装置が短期間で起動-停止を繰り返し、累積停止回数が増加することを抑制できる。
【0069】
上述の待機期間が終了したら、制御装置20は、〔S14〕において、運転開始(再開)制御を開始する。すなわち、制御装置20は、内蔵する時計や通信回線を介した外部のタイムサーバ等から、日本標準時等の、燃料電池装置設置場所の標準時に基づく現在時刻、いわゆる現地時間を取得し、その現在時刻が、たとえば真夜中である午前2時や3時等の、比較的外気温が低いと推定される時間帯に予め設定された第1所定時刻を、前記待機期間終了後に初めて迎えた際に実行され、燃料電池装置は、前述のスタンバイ状態から、発電運転の再開に向けた起動準備制御へと、移行する。
【0070】
運転再開に向けた運転開始制御は、まず、先述の〔S5〕と同様、〔S15〕において、外部水導入用の、水補給流路Wに配設された電磁開閉式の止水栓を開け、外部水である水道水を、イオン交換樹脂等を備える浄化装置を経由して改質水タンク3に導入し、給水(補水)を開始する。
【0071】
ついで、制御装置20は、〔S16〕のループ制御において、改質水タンク3の水位が、発電運転を継続可能な、第一設定水位(H)以上に回復したことを確認してから、〔S17〕で前述の止水栓を閉めて補水を停止し、発電運転の準備を完了する〔エンド〕。
【0072】
以上の構成により、実施形態の燃料電池装置100は、効率的な発電運転を行なうことができる。
【0073】
なお、燃料電池装置100は、前述の燃料電池装置の制御およびそれに用いるプログラムを実行可能な、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置20を備える。
【0074】
すなわち、種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0075】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0076】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0077】
制御装置20は、記憶装置30と、燃料電池モジュール1と、改質水供給装置と、補水装置、および、図示していないパワーコンディショナ、原燃料供給装置、酸素含有ガス供給装置等、さらに、水位検出装置や水質測定装置などの各種センサ、および表示装置等と接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。
【0078】
制御装置20は、記憶装置30に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。また、表示装置は、制御装置20からの指示信号に基づいて、指定された必要な情報および警報または警告等を、可視化する。なお、表示装置は、警報または警告等を音で知らせるための発音・発報機能を備えていてもよい。
【0079】
制御装置20から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置20と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。
【0080】
なお、本実施形態において、制御装置20は特に、先に述べた、発電運転の起動-停止操作、および、運転停止回数および運転時間の積算、それらに伴う停止可能回数の演算・判定等を制御する。
【0081】
記憶装置30は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置30は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置30は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。
【0082】
また、記憶装置30は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置30は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置7は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0083】
そして、本実施形態において、記憶装置30は特に、先に述べた、運転停止の積算回数および運転時間の積算時間等を、記憶あるいは記録する。
【0084】
以上、詳述したように、本実施形態の燃料電池装置および燃料電池装置の制御方法、制御プログラムは、燃料電池装置100が備える制御装置20が、所定の第一条件が満たされた場合に、燃料電池の運転を停止する運転停止制御と、記憶装置30に記憶された累積運転停止回数と所定の演算により得られる停止可能回数である第一警告回数とを比較してその大小を判定する停止可能回数確認制御と、を実行可能であり、前記運転停止制御の実行前に、前記停止可能回数確認制御を行なって、前記累積運転停止回数が前記停止可能回数である第一警告回数以上である場合、第一条件が満たされていても、前記運転停止制御を実行せず、前記累積運転停止回数が、前記第一警告回数未満である場合に、前記第一条件が満たされた際に、前記運転停止制御を実行するため、発電運転に必要な改質水の確保が難しい場合でも、効率的な発電運転を継続することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 燃料電池モジュール
3 改質水タンク(第一タンク)
4 蓄熱タンク(第二タンク)
20 制御装置
30 記憶装置
100 燃料電池装置
C 凝縮水流路
R 改質水流路
W 水補給流路
H,L 水検知器