(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】樹脂成形体、その製造方法及びシース接続口成形用挿入具
(51)【国際特許分類】
B28B 23/00 20060101AFI20230206BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20230206BHJP
E04C 5/10 20060101ALI20230206BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B28B23/00
E01D1/00 D
E04C5/10
E04G21/12 104D
(21)【出願番号】P 2019037894
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 統央
(72)【発明者】
【氏名】山中 大明
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
(72)【発明者】
【氏名】川村 剛史
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123672(JP,A)
【文献】特開2017-040112(JP,A)
【文献】特開2004-324330(JP,A)
【文献】特開2002-030610(JP,A)
【文献】特公昭32-009788(JP,B2)
【文献】韓国登録特許第10-1161357(KR,B1)
【文献】特開平10-252222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 23/00
E04C 5/00
E04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートセグメントの端面に埋め込まれるシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具に使用する樹脂成形体の製造方法であって、
所定長さの円筒状の樹脂成形管と、上記シース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有する円筒部を絞り成形する先細部及び該先細部よりも外径が大きく、拡径フランジ部を成形する拡径部を有する絞り加工用金型とを準備し、
上記樹脂成形管を加熱し、
上記加熱した樹脂成形管を上記拡径部側から挿入して上記先細部に向かって加圧し、
上記円筒部及び上記拡径フランジ部で形成される境界部に、円筒状弾性部材の上記樹脂成形体の軸方向側の側面と面接触する当接面を形成するように、上記円筒部及び上記拡径フランジ部が一体に成形された樹脂成形体を成形する
ことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法において、
上記拡径フランジ部を上記樹脂成形体の軸線方向と垂直な断面で又は該垂直な面から傾斜した断面で切断する
ことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂成形体の製造方法において、
上記拡径フランジ部を上記樹脂成形体の軸線方向と垂直な断面から0°以上15°以下の範囲で切断する
ことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の樹脂成形体の製造方法において、
上
記当接面を機械加工にて形成する
ことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
コンクリートセグメントの端面に埋め込まれるシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記シース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該シース接続管の開口端に弾性部材が円筒状に巻き付けられた状態で挿入される円筒部と、
上記円筒部に一体に形成され、上記シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジ部とを備えており、
上記円筒部と拡径フランジ部との間の境界部には、上記円筒部の軸方向側における、上記弾性部材の側面と面接触する当接面が形成されている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項6】
コンクリートセグメントの端面に埋め込まれるシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を製造するために使用する樹脂成形体であって、
円筒部と、
上記円筒部に一体に形成され、シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジ部とを備えている
ことを特徴とする樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体、その製造方法及びシース接続口成形用挿入具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレキャスト工法として、予め工場でコンクリートセグメントを製造し、これを現場で組み立て、接合するものが知られている。特に橋梁の場合、現場で組み立てた複数のコンクリートセグメントにPCケーブルを挿通し、引っ張ってストレスを与えた状態で接合される。
【0003】
このとき、各コンクリートセグメントには、PCケーブル挿通用のシースが埋設される。PCケーブルは、コンクリートセグメントを貫通するので、上記シースは開口端がコンクリートセグメントの端面に臨むように埋設される。そして、一対のコンクリートセグメントを、それぞれの端面のシース開口端が互いに連続するように配置し、連結されたシース内部にPCケーブルを挿通してグラウトを充填して一体化する。
【0004】
例えば、特許文献1のように、プレキャストコンクリート製セグメント同士を接合して構築されるPC橋において、各セグメントに、PC鋼材を挿通するためのシースを、その両端開口部がセグメント接合面に露出するように、セグメント接合面に対して斜め方向に予め一体に埋設して、互いに隣接するセグメントのシース間に跨って筒状の接続部材を挿入しながら、互いに隣接するセグメントのセグメント接合面同士を接合するようにした接合構造が知られている。この接合構造により、斜め方向にシースを接続する際に、接続を容易に行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コンクリートセグメントに傾斜したシース接続口を成形するために、コンクリート打設時に挿入具が必要となる。
【0007】
かかる挿入具は、設置個所に応じた多種の形状が必要で、さらに多量に使用されるため、生産性、コスト性の向上が望まれる。
【0008】
また、挿入具とシースの接続部との間に隙間があると、その隙間にコンクリートが流れ込まないように、隙間部分をビニールテープ等で巻かなければならず、手間がかかる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多種、多量の挿入具の生産性を高め、よりコストを低減することにある。また、コンクリート打設前にシース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間の隙間をビニールテープで塞ぐ作業をなくせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、コンクリートセグメントの端面に埋め込まれるシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具に使用する樹脂成形体の製造方法を対象とし、
上記製造方法は、
所定長さの円筒状の樹脂成形管と、上記シース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有する円筒部を絞り成形する先細部及び該先細部よりも外径が大きく、拡径フランジ部を成形する拡径部を有する絞り加工用金型とを準備し、
上記樹脂成形管を加熱し、
上記加熱した樹脂成形管を上記拡径部側から挿入して上記先細部に向かって加圧し、
上記円筒部及び上記拡径フランジ部が一体に成形された樹脂成形体を成形する構成とする。
【0011】
上記の構成によると、挿入具の外径は略筒体であるため、形状が近くかつ安価に入手可能な樹脂成形管を利用して、それを加熱して絞り加工用金型に圧入するという簡易なプロセスにより、短時間で容易に所望形状の挿入具が生産できる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記拡径フランジ部を上記樹脂成形体の軸線方向と垂直な断面から0°以上15°以下の範囲で切断する構成とする。
【0013】
上記の構成によると、同じ樹脂成形体の拡径フランジ部を切断するだけで、コンクリートセグメント内でのシースの埋設角度が変わるときにも適用でき、傾斜角度毎に金型を揃えることが不要となり、同じ絞り加工用金型で対応することができる。また、拡径フランジ部をシース接続管の角度に合わせて斜め加工されるので、シース接続管側は斜め加工しなくて済む。
【0014】
第3の発明では、第2の発明において、
上記拡径フランジ部を上記樹脂成形体の軸線方向と垂直な断面から0°以上15°以下の範囲で切断する構成とする。
【0015】
上記の構成によると、コンクリートセグメント内に埋設されるシースの一般的な角度に対応できる。
【0016】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記樹脂成形体における、上記円筒部及び上記拡径フランジ部で形成される境界部に、円筒状弾性部材の上記樹脂成形体の軸方向側の側面と面接触する当接面を機械加工にて形成する構成とする。
【0017】
上記の構成によると、弾性部材が当接面に確実に当接するため、従来のように、シース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間の隙間をビニールテープ等で巻いてコンクリートが流れ込まないようにする作業が不要となり、作業効率が向上する。
【0018】
第5の発明では、コンクリートセグメントの端面に埋め込まれるシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし、
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記シース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該シース接続管の開口端に弾性部材が円筒状に巻き付けられた状態で挿入される円筒部と、
上記円筒部に一体に形成され、上記シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジ部とを備えており、
上記円筒部と拡径フランジ部との間の境界部には、上記円筒部の軸方向側における、上記弾性部材の側面と面接触する当接面が形成されている。
【0019】
上記の構成によると、円筒状に巻いた弾性部材の軸方向側の側面が当接する当接面を境界部に設けているので、弾性部材が当接面に確実に当接する。このため、従来のように、シース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間の隙間をビニールテープ等で巻いてコンクリートが流れ込まないようにする作業が不要となり、作業効率が向上する。
【0020】
第6の発明では、コンクリートセグメントの端面に埋め込まれるシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を製造するために使用する樹脂成形体を対象とし、
上記樹脂成形体は、
円筒部と、
上記円筒部に一体に形成され、シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジ部とを備えている。
【0021】
上記の構成によると、樹脂成形品で構成されるので、安価に且つ安定してシース接続口成形用成形具を製造できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、加熱した樹脂成形管から円筒部及び拡径フランジ部が一体に成形された樹脂成形体を成形するようにしたことにより、短時間でかつ低コストで生産でき、シースの埋設角度が変わる場合でも、拡径フランジ部を適切に切断することで、同じ金型で対応でき、この樹脂成形体(挿入具)によって形成されるシース接続口はモルタル等充填剤の埋め戻し量を可能な限り減らし、強度の高いコンクリートセグメントの形成に寄与することができる。
【0023】
また、シース接続口成形用挿入具において、円筒部と拡径フランジ部との間の境界部に、円筒部の軸方向側における、弾性部材の側面と面接触する当接面を形成したことにより、コンクリート打設前にシース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間の隙間をビニールテープで塞ぐ必要がなくなり、作業効率を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る拡径フランジ部切断前のシース接続口成形用挿入具の第2樹脂成形体を一部破断して示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシース接続口成形用挿入具の製造方法を示し、(a)~(d)は、その各工程を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係るシース接続口成形用挿入具の第1樹脂成形体を一部破断して示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
【
図5】一方のシース接続口に中子が挿入された状態で他方のコンクリートセグメントに引き寄せる状態を示す断面図である。
【
図6】シース接続口に中子が挿入された状態で一対のコンクリートセグメントが突き合わせされた状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る拡径フランジ部切断後のシース接続口成形用挿入具を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態の変形例に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るシース接続口成形用挿入具のバリエーションを示す正面図であり、(a)~(e)に0°から13°に変化させた場合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
-シース接続口成形用挿入具の構造-
図4は、本発明の実施形態に係るシース接続口成形用挿入具10が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す。シース接続管3は、コンクリートセグメント2の端面2aに開口端3aが臨むように埋設される。すなわち、型枠1を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメント2の端面2aにおいて、一対のシース接続管3が型枠1の例えば円形の第1ボルト挿通孔1aを挟んで対向する位置に埋め込まれる。このシース接続管3は、例えば、ポリ塩化ビニール等の樹脂成形品よりなるが、金属成形品等でもよい。
図4に示すように、コンクリート打設前のシース接続管3は、長尺の被接続シースが鉄筋枠に必要に応じて勾配をもって固定されるので、コンクリートセグメント2の端面2aに対して垂直ではなく傾斜して埋め込まれることが多い。
【0027】
そして、コンクリートを打設する前に、一対のシース接続管3の開口端3aの内部にシース接続口成形用挿入具10が設けられる。
【0028】
図7にも示すように、シース接続口成形用挿入具10は、シース接続管3の開口端3aの内径よりも小さな外径を有する円筒部11aと、これに連続し、型枠1に当接する拡径フランジ部11bを有する芯材11を備えている。芯材11は、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂成形品よりなる。
【0029】
円筒部11aの拡径フランジ部11bと反対側は、例えば樹脂製の円板部12が接着剤等により連結されており、この円板部12の中心には、第2ボルト挿通孔12aが開口されている。そして、第1ボルト挿通孔1a及び第2ボルト挿通孔12aに固定部材14の固定用ボルト14aを挿通し、締付ナット14b,14cを、テーパワッシャ14dを仕切板に当接させた状態で締結する。これにより、円筒部11aをより堅固に型枠1に固定できる。このため、コンクリート打設時に円筒部11aが型枠1に対してずれず、コンクリートがシース接続管3にさらに流れ込みにくくなる。
【0030】
図4に示すように、この拡径フランジ部11bを予め設定された角度に斜め加工することにより、シース接続管3側は斜め加工しなくて済む。
【0031】
このシース接続口成形用挿入具10は、一対のシース接続管3の開口端3aに弾性部材としてのゴムシート13が巻き付けられた状態で挿入される。ゴムシート13は、例えば、巻きやすい幅及び厚さを有するゴム部材よりなり、円筒部11aとゴムシート13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する、洗剤、油、グリースなどの摩擦低減手段としての潤滑剤が塗布されているのが望ましい。なお、摩擦低減手段として、潤滑剤以外でゴムシート13が円筒部11aから抜けやすくする工夫を加えてもよい。例えば、接触面積の低減のためゴムシート13の内径を円筒部11aの外径に対し大きく設定してもよい。また、摩擦係数の低いゴムシート13又は円筒部11aを使用したり、ゴムシート13又は円筒部11aに摩擦を低減するコーティング等の表面修飾を行ったりしてもよい。ゴムシート13が巻かれた状態のシース接続口成形用挿入具10の外径は、シース接続管3の内径よりも若干小さいようにすると、シース接続管3に挿入しやすい。
【0032】
-シース接続口成形用挿入具の製造方法-
まず、
図2(a)に示すように、所定長さの円筒状の樹脂成形管30を準備する。
【0033】
次いで、
図2(b)に示すように、シース接続管3の開口端3aの内径よりも小さな外径を有する円筒部11aを絞り成形する先細部31a及びこの先細部31aよりも外径が大きく、拡径フランジ部11bを成形する拡径部31bを有する絞り加工用金型31を準備する。
【0034】
次いで、樹脂成形管30を加熱し、加熱した樹脂成形管30を拡径部31b側から挿入して先細部31aに向かって加圧し、
図2(c)及び
図3に示すように、円筒部11a及び拡径フランジ部11bが一体に成形された第1樹脂成形体11’’を成形する。
【0035】
次いで、この第1樹脂成形体11’’における、円筒部11a及び拡径フランジ部11bで形成される境界部11cに、円筒状に丸めたゴムシート13の軸方向側の側面と面接触する当接面11dを機械加工にて切削加工し、
図2(d)及び
図1に示すように、第2樹脂成形体11’を得る。
【0036】
そして、拡径フランジ部11bを軸線方向と垂直な断面から0°以上15°以下の範囲に傾けた平面で切断し、余分な被切断部11eを取り除いて芯材11が完成する。この角度は、シース接続管3の型枠1に対する傾斜角度に合わせられる。
【0037】
このように、絞り加工用金型31による成型後に傾斜角度に合わせて拡径フランジ部11bを切断するので、切断角度に合わせて別々の成形型を用意する必要がない。
【0038】
また、円筒部11aの拡径フランジ部11bと反対側の端部に円板部12を接着剤等により接着してシース接続口成形用挿入具10が完成する。
【0039】
このシース接続口成形用挿入具10の円筒部11aの外周面に
図7に示すように、ゴムシート13を円筒形状に丸めてビニールテープ17等で貼り付ける。
【0040】
そして、シース接続口成形用挿入具10,10’の外径は略筒体であるため、形状が近くかつ安価に入手可能な樹脂成形管30を利用して、それを加熱して絞り加工用金型31に圧入するという簡易なプロセスにより、短時間で容易に所望形状のシース接続口成形用挿入具10,10’が生産できる。
【0041】
-シース接続口の成形方法-
次いで、このシース接続口成形用挿入具10を用いてコンクリートセグメント2を成形した後、設置場所にて設置する方法について説明する。
【0042】
まず、上述したシース接続口成形用挿入具10を用意する。
【0043】
次いで、型枠1を設置して配筋した後、シース接続口20に対応する位置にシースを配管する。
【0044】
次いで、
図4に示すように、シース接続口成形用挿入具10を型枠1のシース接続口に対応する位置に固定する。具体的には、円筒部11aを固定部材14を用いて第1ボルト挿通孔1aに固定する。
【0045】
次いで、型枠1の両側のシース接続管3の開口端3aにシース接続口成形用挿入具10を挿入する。このとき、ゴムシート13の外周面と開口端3aの内周面とが当接し、さらに、開口端3aが当接面11d又はその周辺に当接するまで奥深くに挿入される。
【0046】
次いで、
図4に示すように、型枠1の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメント2を成形する。このとき、ゴムシート13が確実に当接面11dに当接するので、ビニールテープを巻いていなくても、コンクリートが隙間に流れ込みにくい。
【0047】
次いで、型枠1の両側から一対のコンクリートセグメント2を取り外す。本実施形態では、型枠1に円筒部11aが固定されているので、そのときに、シース接続口成形用挿入具10がコンクリートセグメント2から外れる。拡径フランジ部11bの作用により、シース接続口20の周縁の内径がラッパ状に拡がっているため、シース接続口成形用挿入具10がシース接続口20の周縁に引っ掛からずに外れやすい。しかも、ゴムシート13が芯材11から外れやすいので、シース接続口20の周縁のコンクリートが剥がれない。シース接続口20に残ったゴムシート13は手で取り除く。
【0048】
次いで、シース接続口成形用挿入具10を取り外してできた一方のコンクリートセグメント2におけるシース接続口に中子15を挿入する。このとき、シース接続口20の周縁の内径が拡がっているので、中子15を挿入しやすい。
【0049】
次いで、
図5に示すように、一対のコンクリートセグメント2の端面2aに接着剤16を塗る。接着剤16の種類は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂系の接着剤、モルタル等である。本実施形態では、当接面11dを設けることで、シース接続管3の開口端3aができるだけ当接面11dに近付いて余分な空間の発生をできるだけ防いでいるので、この接着剤16等の体積が少なくなり、コンクリートの体積をできるだけ増やして強度の低下が抑えられる。
【0050】
次いで、
図6に示すように、中子15を他方のコンクリートセグメント2のシース接続口に挿入するように、一対のコンクリートセグメント2を突き合わせる。このとき、拡径フランジ部11bによってシース接続口20の周縁が拡径されているので、中子15が引っ掛からず、コンクリートが損傷しない。なお、一対のコンクリートセグメント2が突き合わされる際のシース接続口20の周縁等の隙間は、この接着剤16で満たされる。
【0051】
また、
図9に示すように、拡径フランジ部11bの切断部を球面状に丸みを帯びた角部としているので、傾斜角度が変わっても、切断面は、楕円というよりも真円に近くなり、コンクリート打設後の隙間を埋める充填剤(モルタル、接着剤等)の体積が減ってコンクリートセグメント2におけるコンクリートの割合ができるだけ多くなって、強度低下が避けられる。
【0052】
このように、本実施形態では、コンクリートの打設後に型枠1からコンクリートセグメント2を外す際に潤滑剤の作用により円筒部11aからゴムシート13が外れやすいので、シース接続口20周縁のコンクリートが剥がれない。
【0053】
また本実施形態では、拡径フランジ部11bを利用して型枠1に固定することができるので、型枠1との間を塞ぐことができ、シース接続口成形用挿入具10が型枠1に対してずれず、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3により流れ込みにくくなる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、加熱した樹脂成形管30から円筒部11a及び拡径フランジ部11bが一体に成形された第1樹脂成形体11’を成形するようにしたことにより、シースの埋設角度が変わる場合でも、拡径フランジ部11bを適切に切断することで、同じ金型で対応できる。また、シース接続口成形用挿入具10,10’において、円筒部11aと拡径フランジ部11bとの間の境界部に、円筒部11aの軸方向側における、ゴムシート13の側面と面接触する当接面11dを形成したことにより、コンクリート打設前にシース接続口成形用挿入具10,10’とシース接続管3の開口端3aとの間の隙間をビニールテープ等で塞ぐ必要がなくなり、作業効率を格段に向上させることができる。また、拡径フランジ部11bにおける円筒部11aとの境界部側角部が自然に丸まった形状となっているので、この丸まった部分を適切な角度で切断することで、切断角度が変化しても、切断面は常に、軸線方向と垂直な真円状の切断面とほぼ同一となり、このような切断面を有したシース接続口成形用挿入具10,10’によって形成されるシース接続口20の断面は、真円に近いものとなり、モルタル等充填剤による埋め戻し量を必要最小限とすることができる。
【0055】
-変形例1-
図8は、本実施形態の変形例1に係るシース接続口成形用挿入具10’を示し、コンクリートセグメント2内に埋め込まれる一対のシース接続管3が直線状に延びている点が上記実施形態と異なる。
【0056】
すなわち、本変形例では、拡径フランジ部11bを傾斜させずに、その軸方向側に垂直な(傾斜角度0°の)平面で切断している。なお、傾斜角度0°の場合、製造時の加工用金型形状によっては、切断せずにそのまま用いることもできる。
【0057】
この場合でも、シース接続口20の拡径により、シース接続口成形用挿入具10’の取り外しが容易となり、中子15を嵌めたコンクリートセグメント2の突き合わせも容易となる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
すなわち、上記実施形態では、固定部材14を用いて円筒部11aを型枠1に固定するようにしているが、ガイドパイプを挿通する実施形態にも応用可能である。その場合には、ガイドパイプが挿通可能なように第1ボルト挿通孔1aの位置により大きな孔を形成すると共に、固定部材14とは異なる別の方法、例えばビス、クギ、接着剤等で拡径フランジ部11bを型枠1に固定すればよい。
【0060】
さらに、詳細は図示しないが、全ての実施形態において、ゴム等の弾性部材からなるシートを型枠1と拡径フランジ部11bとの間に挟むことで、コンクリートセグメント2の引き離し時にクッションとなり、剥がれ損傷がより生じにくくなる。
【0061】
上記実施形態では、型枠1の両側にコンクリートセグメント2を施工する実施形態について述べたが、既成のコンクリートセグメントがあってそれに連結されるコンクリートセグメント2を成形する場合にでも本実施形態のシース接続口成形用挿入具10,10’を利用できる。
【0062】
上記実施形態では、絞り成形を用いた第1及び第2樹脂成形体11’,11’’について述べたが、必ずしも絞り成形に製造方法は限定されない。例えば、射出成形型を用いた射出成形によって第1及び第2樹脂成形体を製造してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ゴムシート13を芯材11に巻き付けるようにしているが、これは必ずしも必須ではなく、シース接続口成形用挿入具10,10’はゴムシート13を用いなくても使用できる。
【0064】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 型枠
1a 第1ボルト挿通孔
2 コンクリートセグメント
2a 端面
3 シース接続管
3a 開口端
10,10’ シース接続口成形用挿入具
11 芯材
11’’ 第1樹脂成形体
11’ 第2樹脂成形体
11a 円筒部
11b 拡径フランジ部
11c 境界部
11d 当接面
12 円板部
12a 第2ボルト挿通孔
13 ゴムシート(弾性部材)
14 固定部材
14a 固定用ボルト
14b,14c 締付ナット
14d テーパワッシャ
15 中子
16 接着剤
17 ビニールテープ
20 シース接続口
30 樹脂成形管
31 加工用金型
31a 先細部
31b 拡径部