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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】車両用安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/12 20060101AFI20230206BHJP
   B60R 22/415 20060101ALI20230206BHJP
   B60R 22/44 20060101ALI20230206BHJP
   B60R 22/46 20060101ALI20230206BHJP
   B60R 22/48 20060101ALI20230206BHJP
   B60R 21/0136 20060101ALI20230206BHJP
   A62B 35/00 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B60R22/12
B60R22/415
B60R22/44 173
B60R22/46 128
B60R22/48 102
B60R21/0136 310
A62B35/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019044313
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020147087
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】笹本 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福島 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 展幸
(72)【発明者】
【氏名】大中 崇弘
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156185(JP,A)
【文献】特開平08-072669(JP,A)
【文献】特開2010-076682(JP,A)
【文献】特開2011-126311(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1931805(KR,B1)
【文献】実開昭51-010725(JP,U)
【文献】独国実用新案第202005014874(DE,U1)
【文献】中国実用新案第203198906(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1549336(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者の身体のうち胴部に装着可能な装具と、
所定の長さのものであって、一端が車両内部の少なくとも一部に巻取装置を介して連結され、他端が前記装具に連結されている連結部材と、
緊急時において前記巻取装置に巻き取り動作の実行をさせる命令信号を、前記巻取装置に送信可能な制御部と、
を備え、
前記巻取装置は、前記連結部材を巻き取ることが可能な巻取機構を有しているとともに、前記制御部からの前記命令信号により、前記連結部材の所定長さ分を必要に応じて巻き取るものであることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項2】
前記巻取装置は、前記連結部材を所定の長さまで送り出し、前記所定の長さを保持する送出機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【請求項3】
前記巻取装置は、所定の張力を生じた状態で前記連結部材を送り出す長さを可変できる送出機構を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用安全装置。
【請求項4】
前記巻取装置は、所定以上の張力で前記連結部材が送り出された場合、前記連結部材の送り出しを止めるロック機構を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用安全装置。
【請求項5】
前記巻取機構が、
ガス発生器と、
所定方向へ回転することによって前記連結部材を巻き取り可能な巻取軸と、
複数の回転歯が設けられ、前記所定方向へ回転することで前記巻取軸を前記所定方向へ回転させることが可能な回転部材と、
複数の移動歯が設けられ、前記ガス発生器において発生したガスの圧力を利用することによって前記回転部材側へ移動することで、前記移動歯が前記回転歯に噛合されて前記回転部材を前記所定方向へ回転させる移動部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用安全装置。
【請求項6】
前記巻取機構が、
ガス発生器と、
所定方向へ回転することによって前記連結部材を巻き取り可能な巻取軸と、
複数の回転歯が設けられ、前記所定方向へ回転することで前記巻取軸を前記所定方向へ回転させることが可能な回転部材と、
外周側に設けられた外歯と、前記回転部材の前記回転歯に係合可能に内周側に設けられた内歯と、を有した環状のリングギアと、
前記リングギアに動力を伝達する動力伝達手段と、
を備え、
前記動力伝達手段が、
前記リングギアの外歯に係合可能に構成された動力伝達部材と、
前記動力伝達部材を収容するパイプと、
前記パイプの端部に配置された前記ガス発生器から発生したガスを受けて前記動力伝達部材を押圧するピストンと、
内部に前記動力伝達部材の通路を有しているハウジングと、
を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用安全装置。
【請求項7】
前記ガス発生器が、電気信号を受信して作動する点火器を含む火薬式であり、圧縮ガスまたは火薬の燃焼によりガスを発生させるものであることを特徴とする請求項5または6に記載の車両用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の搭乗者の安全性を確保する車両用安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転技術が実用化されつつあるが、自動運転技術の実用化が確立された場合、走行中に操縦用のハンドルを握る必要はなくなり、車両内の座席配置なども従来とは異なって、自由度が増すと考えられている。自動運転中に運転以外の行為を指す言葉として、セカンダリアクティビティがある。セカンダリアクティビティ中に乗員の安全を確保する車両用安全装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-094865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような座席配置などの自由度が増した場合において、従来のシートベルトをそのまま採用して車両搭乗時の快適性を追求したい場合、搭乗者の姿勢に制限をかけてしまうことになるので、従来のシートベルトをそのまま採用することは難しい。また、従来のシートベルトをそのまま採用する場合において車両搭乗時の快適性を追求するには、たとえば、シートベルトの張力を緩和することも考えられるが、この場合、衝突事故などにおいて車両が衝撃を受けると、衝突する向きによっては、シートベルト自体の搭乗者への加害性が大幅に向上してしまうことが考えられる。また、このようなシートベルトの張力を緩和した状態では、エアバッグシステムの効力も大幅に減少し、搭乗者を十分に保護できない可能性が高くなってしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、搭乗者の身体のうち胴部に装着可能な装具と、所定の長さのものであって、一端が車両内部の少なくとも一部に巻取装置を介して連結され、他端が前記装具に連結されている連結部材と、緊急時(たとえば、車両が衝突を検知または予測したときなど)において前記巻取装置に巻き取り動作の実行をさせる命令信号を、前記巻取装置に送信可能な制御部と、を備え、前記巻取装置は、前記連結部材を巻き取ることが可能な巻取機構を有しているとともに、前記制御部からの前記命令信号により、前記連結部材の所定長さ分を必要に応じて巻き取るものであることを特徴とする車両用安全装置である。
【0007】
(2) 上記(1)の車両用安全装置において、前記巻取装置は、前記連結部材を所定の長さまで送り出し、前記所定の長さを保持する送出機構を有していることが好ましい。
【0008】
(3) 別の観点として、上記(1)の車両用安全装置において、前記巻取装置は、所定の張力を生じた状態で前記連結部材を送り出す長さを可変できる送出機構を有しているものであってもよい。
【0009】
(4) 上記(2)または(3)の車両用安全装置においては、前記巻取装置は、所定以上の張力で前記連結部材が送り出された場合、前記連結部材の送り出しを止めるロック機構を有していることが好ましい。
【0010】
(5) 上記(1)~(4)の車両用安全装置においては、前記ロック機構が、ガス発生器と、所定方向へ回転することによって前記連結部材を巻き取り可能な巻取軸と、複数の回転歯が設けられ、前記所定方向へ回転することで前記巻取軸を前記所定方向へ回転させることが可能な回転部材と、複数の移動歯が設けられ、前記ガス発生器において発生したガスの圧力を利用することによって前記回転部材側へ移動することで、前記移動歯が前記回転歯に噛合されて前記回転部材を前記所定方向へ回転させる移動部材と、を備えているものであることが好ましい。
【0011】
(6) 別の観点として、上記(1)~(4)の車両用安全装置においては、ガス発生器と、前記ロック機構が、所定方向へ回転することによって前記連結部材を巻き取り可能な巻取軸と、複数の回転歯が設けられ、前記所定方向へ回転することで前記巻取軸を前記所定方向へ回転させることが可能な回転部材と、外周側に設けられた外歯と、前記回転部材の前記回転歯に係合可能に内周側に設けられた内歯と、を有した環状のリングギアと、前記リングギアに動力を伝達する動力伝達手段と、を備え、前記動力伝達手段が、前記リングギアの外歯に係合可能に構成された動力伝達部材と、前記動力伝達部材を収容するパイプと、前記パイプの端部に配置された前記ガス発生器から発生したガスを受けて前記動力伝達部材を押圧するピストンと、内部に前記動力伝達部材の通路を有しているハウジングと、を備えているものであってもよい。
【0012】
(7) 上記(5)または(6)の車両用安全装置においては、前記ガス発生器が、電気信号を受信して作動する点火器を含む火薬式であり、圧縮ガスまたは火薬の燃焼によりガスを発生させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両搭乗時の快適性を従来よりも確保しつつ、車両搭乗時の安全性も保持可能な車両用安全装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態における車両用安全装置を搭乗者が使用している状態を示す図である。
図2図1の車両用安全装置の構成を説明するための図である。
図3図1の車両用安全装置の巻取り装置を示す図である。
図4図3のA-A矢視断面図であって、(a)はロック機構の初期状態を示す図、(b)はロック機構の動作後の状態を示す図である。
図5図1の車両用安全装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態における車両用安全装置を搭乗者が使用している状態を示す図である。
図7図6の車両用安全装置の巻取り装置を示す図である。
図8図6の車両用安全装置の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の車両用安全装置における装具の変形例を示す図である。
図10】本発明の車両用安全装置におけるロック機構の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る車両用安全装置について、図1図5に基づいて説明する。
【0016】
図1に示したように、車両用安全装置100は、車両内部に設けられものであり、装具10と、紐部材または表面にゴムなどの柔らかい部材を被覆したワイヤーなどの連結部材11と、巻取装置12とを備えている。
【0017】
装具10は、図1および図2に示したように、車両の搭乗者P1の胴部に取り付けることができるようになっている。また、装具10は、図2(a)に示したように、ベルト部材1と、ベルト部材1の一端に取り付けられたバックル2と、ベルト部材1の他端に取り付けられ、バックル2に結合・取り外しすることが可能な結合部3と、ベルト部材1の途中に1対設けられたリング部4と、を備えている。なお、図2(a)は、装具10が取り付けられた搭乗者を前方から見た図、図2(b)は、装具10が取り付けられた搭乗者を後方から見た図である。
【0018】
リング部4は、図1に示したように、連結部材11の一端が取付可能なものである。連結部材11の他端は、巻取装置12に連結されている。
【0019】
巻取装置12は、図3に示したように、座席13側部の下部に設けられている。また、巻取装置12は、内部に、支持台21と、サーボモータ22と、リールシャフト23と、リール24と、ロック機構25と、を備えている。
【0020】
支持台21は、座席13に固定されている。サーボモータ22は、支持台21の一端側の側部に固定されており、リールシャフト23の一端部と一体化している出力軸を有している。リールシャフト23の他端部は、後述するロック機構25の巻取軸32と結合し一体化している。リール24は、リールシャフト23を中心に回転可能に支持されているものである。これらの構成により、各巻取装置12は、サーボモータ22によって、リール24に連結部材11を巻き取る操作、リール24から連結部材11を送出機構として送り出す(繰り出す)操作、または、所定の長さ(たとえば、車両内の比較的硬い装備品との衝突を避けることができる程度の長さ)以上に連結部材11が繰り出されないように連結部材11の繰り出し長さを調整する操作などを適宜行うことができる。
【0021】
図4(a)、(b)に示すように、ロック機構25は、リールシャフト23を介してリール24に接続する巻取軸32と、複数の回転歯33aを有した回転部材33と、複数の移動歯34aを有した移動部材34と、発生させたガス圧で移動部材34を筒部材36内壁に沿って移動させることが可能なガス発生器31と、を備え、支持台21の他端側の側部に設けられている。
【0022】
回転部材33は、箱状のケース35内に設けられているとともに、巻取軸32の先端部に固定され、巻取軸32が軸回りに回転した場合、同方向に回転する。すなわち、回転部材33が図4(a)に示す円弧矢印方向へ回転した場合、巻取軸32およびリールシャフト23を巻取方向へ回転させることができるようになっている。
【0023】
移動部材34は、一端部が閉塞し他端部がケース35内部と連通している筒部材36内に摺動可能に挿入されている。筒部材36の内部は、移動部材34と対向する位置にガス発生器31が設けられており、移動部材34とガス発生器31との間に空間37を備えている。この空間37は、ガス発生器31において発生したガスが供給されるようになっている。そして、移動部材34は、ガスの圧力を利用して回転部材33側へ移動することで、移動歯34aが回転歯33aに噛合されて回転部材33を図4(a)に示す円弧矢印方向へ回転させることができるようになっている。したがって、ロック機構25では、ガス発生器31の作動により巻取軸32およびリールシャフト23が巻取方向へ回転することで、リール24に連結部材11を所定長さのみ巻き取るとともに、巻取軸32およびリールシャフト23を所定時間、ロックする(回転できないようにする)ことができるようになっている。
【0024】
ここで、ガス発生器31は、小型軽量のものであり、ガス発生剤が充填されたカップ体と、ガス発生剤を着火させるための点火器と、点火器を保持するホルダとを備えるものである。また、ガス発生器31は、たとえば、マイクロガスジェネレータなどが挙げられるが、比較的、高出力でガス発生量が多く、作動時間が長いものであれば、どのような装置であってもよい。なお、ガス発生剤は、点火器が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤(火薬または推進薬)である。また、火薬の種類・薬量、ガス発生器の形態は適宜選択することができる。
【0025】
一般的にガス発生器は、非火薬式と火薬式とに大別できる。非火薬式の主流は、二酸化炭素や窒素等のガスを封入したガスボンベに、針等の鋭利部材と圧縮したバネとを連結して、バネ力を利用して鋭利部材を飛ばし、ボンベを封止している封板に衝突させて圧縮ガスを放出させるものである。このとき、バネの圧縮力を解放するために、サーボモータ等の駆動源が通常使用される。次に、火薬式の場合であるが、点火器単体でもよいし、点火器とガス発生剤とを備えたものでもよい。また、火薬の力で小型のガスボンベにおける封板を開裂させ、内部のガスを外部へと排出するハイブリッド型、ストアード型のガス発生器を使用してもよい。この場合、ガスボンベ内の加圧ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素などの不燃性のガスから少なくとも一つ以上から選ばれる。また、加圧ガスが放出される際、確実に膨張させるために火薬式の発熱体をガス発生器に備えていてもよい。さらにガス発生器には、必要に応じてフィルタまたは/およびガス流量を調整するオリフィスを備えてもよい。
【0026】
ガス発生剤としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、又は、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。また、ニトロセルロースを主成分としたシングルベース火薬、ダブルベース火薬、トリプルベース火薬を用いてもよい。
【0027】
また、ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状又は多孔筒形状等)の成形体も利用される。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズおよび充填量を適宜選択することが好ましい。
【0028】
図5に示したセンサ部40は、車両の衝突を検知し、検知した情報である車両衝突検知信号を制御部41に出力するようになっている。センサ部40の例としては、加速度センサ、振動センサなどが挙げられる。
【0029】
制御部41は、必要に応じて命令信号を送信して巻取装置12を制御するものであり、例えば、巻取装置12のサーボモータ22を作動または停止させる信号を出力したり、ロック機構25のガス発生器31に起動信号を出力したりするようになっている。また、制御部41は、センサ部40からリアルタイムで車両衝突検出信号を受信し、受信した車両衝突検出信号に応じてロック機構25を作動させるか否かの判断を行うようになっている。
【0030】
以上のように構成された車両用安全装置100を適用した場合、通常時において、搭乗者P1は、車両用安全装置100にシートベルトほど拘束を受けないので、車両内において移動するなどして快適に過ごすことができる。これに対して、車両が衝突するなどの事故に遭遇した場合、車両用安全装置100は作動する。すなわち、制御部41により巻取装置12のサーボモータ22を作動または停止させて、連結部材11の引き量を調整するように制御するとともに、ガス発生器31を作動させる。
【0031】
このとき、ガス発生器31において、ガス発生剤の燃焼により瞬時に大量のガスが発生し、そのガス圧によりカップ体を破断し、圧力を伴ったガスが筒部材36内の空間37に供給されることになる。このガスによって圧力が高まった空間37は、瞬時に移動部材34を図4(a)の白矢印方向に移動させ、移動部材34の移動歯34aが回転部材33の回転歯33aと噛み合い、回転部材33を回転させるとともに巻取軸32およびリールシャフト23を回転させることになる。最終的に、図4(b)に示すように、移動部材34は最大限度の位置まで移動して、この状態が維持されることになる。
【0032】
このようなロック機構25の作動により、リール24の回転を停止させ、ロックすることができる。したがって、車両が衝突するなどの事故に遭遇した場合、車両用安全装置100によって、必要に応じて連結部材11を所定長さ巻き取り、搭乗者P1は、車両外に放出されないようにすることができる。また、たとえば、車両内の比較的硬い装備品との衝突を避けることができる程度の長さまでしか連結部材11を伸ばすことができないようにサーボモータ22に調整させた場合、車両が衝突するなどの事故に遭遇しても、搭乗者P1と当該装備品との衝突を避けることができる。
【0033】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用安全装置200について、図6図8に基づいて説明する。なお、本実施形態において、特に説明がない限り、下二桁が同じ番号の符号は、同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0034】
車両用安全装置200は、車両用安全装置100においてサーボモータ22の代わりに、ゼンマイばねを用いたばね部122を設けている点で異なっている。ここで、図示しないが、ゼンマイばねの中心にある一端部はリールシャフト123に固定され、ゼンマイばねの外縁部にある他端部はばね部122のケース122aの内側に固定されている。なお、ゼンマイばねは、弾性の高い素材を渦巻状に巻いた機械要素で、巻かれた渦巻きが、元に戻ろうとする力を機械装置の動力源として利用するばねの一種であり、渦巻きばねとも呼ばれるものである。
【0035】
これにより、リール124において連結部材111の繰り出し時に負荷を付与することができ、搭乗者P2が装着した装具110のリング部104と巻取装置112との間で、連結部材111に所定の張力を保持した状態とすることができる(図6参照)。
【0036】
上記構成の車両用安全装置200によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、搭乗者P2が装着した装具110のリング部104と巻取装置112との間で、連結部材111を所定の張力を保持した状態とすることができるので、連結部材111の弛みがない分、車両が衝突するなどの事故に遭遇した場合の車両用安全装置200の初動時間を車両用安全装置100と比較して速くすることができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0038】
例えば、上記第1実施形態において、上記第2実施形態のように、連結部材11が所定の張力を保持するように、制御部41によって巻取装置12のサーボモータ22の動作を制御してもよい。
【0039】
また、図9(a)、(b)に示したように、上記第1、第2実施形態における装具10、110の代わりにハーネス型の装具210を用いてもよい。これにより、搭乗者P3の身体全体について、上記第1、第2実施形態の作用効果について影響を及ぼすことができる。ここで、図9(a)は、ハーネス型の装具210が取り付けられた搭乗者を前方から見た図、図9(b)は、ハーネス型の装具210が取り付けられた搭乗者を後方から見た図である。
【0040】
また、上記第1実施形態においては、図4(a)、(b)に示したロック機構25を用いたが、この代わりに、図10(a)~(c)に示したロック機構50を用いてもよい。以下、ロック機構50について説明する。
【0041】
ロック機構50は、リングギア51と、緊急時(たとえば、車両が衝突を検知または予測したときなど)にリングギア51に動力を伝達する動力伝達部60(動力伝達手段)と、を備えている。動力伝達部60は、リングギア51の外歯51aに係合可能に構成された球状部材61と、球状部材61を収容するパイプ62と、パイプ62の端部に配置されたガス発生器63(上記ガス発生器31と同様のもの)と、ガス発生器63から発生したガスを受けて球状部材61(動力伝達部材)を押圧するピストン64と、球状部材61の通路71が内部に形成されているハウジング70と、を備えている。
【0042】
ハウジング70は、上記支持台21と同様の支持台(図示せず)の他端側の側部に設けられている。パイプ62は、上記支持台、および、連結部材11と同様の連結部材(図示せず)に接触しないように湾曲形成されている。巻取軸80は、上記巻取軸32と同様、リールシャフト(図示せず)に倣って回転可能なものであり、ピニオンギア81(回転部材)と同心軸上に接続されている。ピニオンギア81の外周に形成された外歯81aは、リングギア51の内周に形成された内歯51bと係合可能に構成されている。
【0043】
なお、図10(a)に示したように、初期状態(動作前)では、ピニオンギア81の外歯81aとリングギア51の内歯51bとの間にはクリアランスが設けられており、巻取軸80及びピニオンギア81は、リングギア51と干渉することなく回転可能な状態になっている。すなわち、初期状態では、ロック機構50は動作しておらず、上記リールシャフトが回転自在であり、上記連結部材の送り出しが可能になっている状態である。
【0044】
また、リングギア51の外歯51aは、図10(a)に示したように、最初の球状部材61のみを係合可能な谷間と、二番目以降の球状部材61を二つずつ係合可能な谷間と、を有するように形成されている。また、リングギア51は、円環状に形成されており、内周部にピニオンギア81の外歯81aと係合可能な内歯51bが形成されている。
【0045】
また、図10(a)に示したように、パイプ62内には複数の球状部材61が充填されており、初期状態では、リングギア51の外歯51aによって移動しないように支持されている。ハウジング70の内側には、側壁に沿って球状部材61がリングギア51の外周を移動できるように通路71が形成されている。
【0046】
また、パイプ62内に収容された球状部材61の最後尾には、ピストン64が配置されている(図10(b)参照)。パイプ62の終端部には、ガス発生器63が配置されている。
【0047】
このような構成のロック機構50を搭載した飛行体の着陸直前時または衝突直前時には、センサ部(上記実施形態のセンサ部40と同様のもの)の動作および制御部(上記実施形態の制御部41と同様のもの)の制御により作動したガス発生器63から高圧ガスがパイプ62内に噴出される。この高圧ガスによって、ピストン64は、パイプ62の内面に密着して高圧ガスの漏洩を防止しながらパイプ62内を摺動する。そして、ピストン64の摺動によって、一列に並んだ複数の球状部材61が押圧され、パイプ62内を移動する。
【0048】
パイプ62から押し出された最初の球状部材61は、リングギア51の外歯51aに係合しつつリングギア51を押圧し、リングギア51はピニオンギア81に向かって移動する。その結果、リングギア51の内歯51bとピニオンギア81の外歯とが係合し、リングギア51の回転によってピニオンギア81を回転させることができ、巻取軸80およびリールシャフトを回転させ始める。
【0049】
続いて、ガス発生器63から供給される高圧ガスによって、図10(b)に示したように、球状部材61は順次パイプ62から放出され、リングギア51を回転させた後、リングギア51の係合から離脱して通路71に沿って移動する。そして、通路71の終端部に到達した球状部材61は、移動を停止する。
【0050】
通路71の終端部に到達した球状部材61は、高圧ガスによって押圧されているが、図10(c)に示したように、他の球状部材61も自身の前に停止した球状部材61に衝突し、移動を停止する。
【0051】
このような構成のロック機構50は、上記実施形態のロック機構25と同様の効果を奏することができる。なお、球状部材61は、動力伝達部材の一例であるが、これに限られず、リングギアに動力を伝達することができるものであるなら、どのようなものであってもよい。たとえば、リングギアの各外歯の形状および位置に合わせた部分を有した可撓性のある樹脂製またはゴム製の長尺部材(径は上記球状部材61と同様)を、上記実施形態における複数の球状部材61の代わりに用いてもよい。これにより、ロック機構の動作時において、リングギアを回転させるとともにピニオンギアに向かって移動させることができるので、上記実施形態における複数の球状部材61が用いられた場合と同様の効果を奏することができる。
【0052】
また、上記第2実施形態においては、巻取装置112によって連結部材の自動巻き取りを行っているが、この代わりに、従来から存在する自動巻取装置を用いてもよい。たとえば、図示しないが、この自動巻取装置は、ハウジングと、ハウジングの一側に収容され、ワイヤーなどの連結部材を引っ張ると、リトラクタブル回転板に巻かれている連結部材を繰り出し、連結部材を引っ張るのを止めると自動的にロッキングされて現在の長さを維持し、ロッキングが解除されると自動的に連結部材を巻き取る自動巻線モジュールと、自動巻線モジュールと共に回転されるロッキングプレートと、ロッキングプレートと連動されて自動巻線モジュールの一方向への回転を許容し、他方向への回転をロックし、解除ボタンが押し下げられると他の方向への回転を許容するロッキングモジュールと、で構成される。
【0053】
上記自動巻線モジュールは連結部材が巻かれているリトラクタブル(retractable)回転板(図示せず)と、連結部材が巻かれる方向へとリトラクタブル回転板に回転力を印加する弾性部材(図示せず)を含む。リトラクタブル回転板と同一軸上に配置されて共に回転されるロッキングプレートには、一方向に回転を許容し、他方向には回転を抑制する複数個の制動歯が形成されているが、制動鋸歯の傾斜面を伝ってロッキングモジュールのストッパーが押し出されることで、一方向への回転は許容するが、他の方向に回転する際には、制動鋸歯の係止段部がロッキングモジュールのストッパーに引っ掛かることで他の方向への回転が防止されるようになっている。
【0054】
このような構造の自動巻取装置は、ユーザが連結部材を引っ張ると、制動鋸歯の傾斜面に沿ってロッキングモジュールのストッパーが押し出されつつ、リトラクタブル回転板が一方向へと回転することで、巻かれている連結部材を繰り出すのであり、ユーザが連結部材を離すと、リトラクタブル回転板の復元力によってロッキングプレートが反対方向へと回転し、制動鋸歯の係止段部がロッキングモジュールのストッパーに引っ掛かることで連結部材が現在の長さをそのまま維持するようになっている。
【0055】
ユーザがロッキングモジュールの解除ボタンを押すと、ロッキングモジュールの作動によって、係止段部に引っ掛かっていたストッパーが後方へと押し出されることでロッキングが解除され、リトラクタブル回転板が、復元力によって他の方向へと回転されることで連結部材を自動的に巻き取るようになる。したがって、連結部材は常に自動巻取装置によって、ハウジングに収納される程度の力で巻き取られている。そのため、乗員が装具を外すと、連結部材は自動で巻き取られ、ハウジングに収納される。
【符号の説明】
【0056】
1 ベルト部材
2 バックル
3 結合部
4、104 リング部
10、110、210 装具
11、111 連結部材
12、112 巻取装置
13、113 座席
21、121 支持台
22 サーボモータ
23、123 リールシャフト
24、124 リール
25、50 ロック機構
31 ガス発生器
32、80 巻取軸
33 回転部材
33a 回転歯
34 移動部材
34a 移動歯
35 ケース
36 筒部材
37 空間
40 センサ部
41 制御部
51 リングギア
51a 外歯
51b 内歯
60 動力伝達部
61 球状部材
62 パイプ
63 ガス発生器
64 ピストン
70 ハウジング
71 通路
81 ピニオンギア
81a 外歯
100、200 車両用安全装置
122 ばね部
122a ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10