(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】接合構造および床版の接合方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230206BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20230206BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20230206BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D21/00 B
E04B5/02 T
E04B1/58 603
(21)【出願番号】P 2019060762
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 和仁
(72)【発明者】
【氏名】濱野 真彰
(72)【発明者】
【氏名】大島 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】細谷 学
(72)【発明者】
【氏名】笠倉 和義
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203298(JP,A)
【文献】特開2011-080323(JP,A)
【文献】特開2003-176505(JP,A)
【文献】特開2012-202150(JP,A)
【文献】特開平04-221146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04B 5/02
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主桁と、前記主桁に上載されたプレキャスト床版との接合構造であって、
前記主桁に固定されたブラケットと、
前記ブラケットに固定された接続部材と、
前記プレキャスト床版に形成された箱抜きに挿入されたコンクリートブロックと、
前記箱抜きの内面と前記コンクリートブロックとの隙間に充填された充填材と、を有し、
前記接続部材は、前記ブラケットの上面に重ねられた状態で当該ブラケットにボルト接合された基部と、前記基部の上面に立設された本体部と、を有し、
前記
本体部の上部が前記コンクリートブロックに埋設されていることを特徴とする、接合構造。
【請求項2】
前記主桁と前記プレキャスト床版との間に充填材が介設されていることを特徴とする、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記箱抜きは平面視矩形状を呈しており、当該箱抜きの四つの内側面のうち、少なくとも対向する一対の内側面は、下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記コンクリートブロックは四角柱状を呈しており、当該コンクリートブロックの四つの側面のうち、少なくとも対向する一対の側面は、下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜していることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の接合構造。
【請求項5】
主桁のウェブにブラケットを固定するブラケット固定工程と、
前記ブラケットに接続部
材を固定するとともに、前記接続部材の上部をプレキャスト床版の箱抜きに挿入する床版配設工程と、
前記接続部材の上部を前記プレキャスト床版に固定する床版固定工程と、を備える床版の接合方法であって、
前記接続部材
は、基部と、前記基部に立設されて上部がコンクリートブロックに埋設された本体部とにより逆T字状を呈しており、
前記床版配設工程では、
前記基部を前記ブラケットの上面に重ねた状態で、前記基部および前記ブラケットを貫通するボルトにより当該基部を前記ブラケットに固定する作業と、前記コンクリートブロックを前記箱抜きに挿入
する作業とを行い、
前記床版固定工程では、前記箱抜きの内面と前記コンクリートブロックとの隙間に充填材を充填することを特徴とする、床版の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版と主桁との接合構造および床版の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床版と鋼桁との接合部では、鋼桁の上端に立設されたスタッドボルトやジベル等を巻き込んだ状態でコンクリート床版を形成するのが一般的である。ところが、現場打ちコンクリートによりコンクリート床版を施工すると手間がかかり、工期短縮化の妨げとなる。特に供用中の橋梁の床版更新工事においては、急速施工が不可欠であった。
そのため、施工時の手間の低減化を図ることを目的として、プレキャスト床版を鋼桁に載置する構造が採用されている。このようなプレキャスト床版と鋼桁との接合構造としては、プレキャスト床版を上下方向に貫通する箱抜きに、鋼桁の上面に固定されたスタッドボルトやジベル等の接合部材を挿入させた状態で、無収縮モルタルやコンクリート等からなる充填材を充填することでプレキャスト床版と鋼桁とを一体化させた構造が知られている。ところが、床版更新後に供用を再開するには、箱抜きに充填した充填材が十分な強度を発現する必要がある。一方、充填材に必要な強度が発現するまでには、充填材の養生期間を十分に確保する必要があるため、工期短縮化の妨げとなっていた。
【0003】
そのため、本出願人は、特許文献1に示すように、下面に開口するインサートが埋め込まれたプレキャスト床版を、上側のフランジにインサートの位置に応じて貫通孔が形成された鋼桁に載置して、貫通孔を挿通させたボルトを取付治具に螺合する接合構造を開発し、実用化に至っている。この接合構造によれば、ボルトの締着によりコンクリート床版と鋼桁との接合が完了するため、工期短縮化を図ることができる。
また、本出願人は、特許文献2に示すように、鋼桁の上面に立設させたせん断芯材が予めコンクリートブロックに埋設されており、このコンクリートブロックをプレキャスト床版に形成された箱抜きに収容するとともに、コンクリートブロックと箱抜きとの隙間に充填材を充填する接合構造を開発し、実用化に至っている。この接合構造によれば、必要な強度を有したコンクリートブロックが予め形成されているため、充填材は、鉛直力に対する強度を確保していればよい。そのため、充填材の低強度化が可能となり、ひいては、充填材の養生に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-086595号公報
【文献】特開2011-080323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接合構造は、プレキャスト床版に埋め込まれたインサートの位置に応じて、鋼桁に貫通孔を形成する作業に手間がかかっていた。
また、特許文献2の接合構造は、鋼桁の上面にせん断芯材を固定するため、位置決めおよび溶接等に手間がかかる。また、床版更新工事に特許文献2の接合構造を採用する場合には、鋼桁にせん断芯材を固定した後、せん断芯材の周囲にコンクリートを打設してコンクリートブロックを形成する必要があるため、工期短縮化の妨げになるおそれがある。
このような観点から、本発明は、工期短縮化を図ることができ、なおかつ、信頼性の高いプレキャスト床版と鋼桁との接合構造および床版の接合方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の接合構造は、主桁と前記主桁に上載されたプレキャスト床版との接合構造であって、前記主桁に固定されたブラケットと、前記ブラケットに固定された接続部材と、前記プレキャスト床版に形成された箱抜きに挿入されたコンクリートブロックと、前記箱抜きの内面と前記コンクリートブロックとの隙間に充填された充填材とを有し、前記接続部材は、前記ブラケットの上面に重ねられた状態で当該ブラケットにボルト接合された基部と、前記基部の上面に立設された本体部と、を有し、前記本体部の上部が前記コンクリートブロックに埋設されている。
また、本発明の床版の接合方法は、主桁のウェブにブラケットを固定するブラケット固定工程と、前記ブラケットに接続部材を固定するとともに、前記接続部材の上部をプレキャスト床版の箱抜きに挿入する床版配設工程と、前記接続部材の上部を前記プレキャスト床版に固定する床版固定工程とを備えている。前記接続部材は、基部と、前記基部に立設されて上部がコンクリートブロックに埋設された本体部とにより逆T字状を呈しており、前記床版配設工程では、前記基部を前記ブラケットの上面に重ねた状態で、前記基部および前記ブラケットを貫通するボルトにより当該基部を前記ブラケットに固定する作業と、前記コンクリートブロックを前記箱抜きに挿入する作業とを行う。また、前記床版固定工程では前記箱抜きの内面と前記コンクリートブロックとの隙間に充填材を充填する。なお、前記床版配設工程では、前記ブラケットに前記接続部材の下部を固定した後、前記コンクリートブロックを前記箱抜きに挿入するのが望ましい。
【0007】
かかる接合構造および床版の接合方法によれば、接続部材の上部に予め形成されたコンクリートブロックが必要な強度を確保しているため、充填材の強度の低強度化が可能となる。すなわち、床版と主桁との接合部に作用する応力に対して必要な耐力をコンクリートブロックにより確保しているため、充填材は、鉛直力に対する強度とコンクリートブロックからプレキャスト床版に作用する支圧力に対する強度を確保していればよく、箱抜き内において接続部材を巻き込む充填材を充填する従来の接合構造に比べて、充填材の低強度化が可能となる。管理する充填材の低強度化により、養生期間の短縮化が可能となり、その結果、工期短縮化を図ることができる。また、箱抜きとコンクリートブロックとの隙間により誤差を吸収することができる。接続部材は、ブラケットに固定するため、主桁の上面に直接固定する場合に比べて作業性に優れている。
【0008】
なお、前記床版固定工程において、前記主桁と前記プレキャスト床版との隙間に充填材を充填してもよい。こうすることで、主桁の上面に不陸が生じていた場合や、主桁の上面とブラケット上面との間に段差が生じていた場合であっても、プレキャスト床版と主桁との間に隙間が生じることがない。
また、前記箱抜きは平面視矩形状を呈しており、当該箱抜きの四つの内側面のうち、少なくとも対向する一対の内側面は、下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜しているのが望ましい。さらに、前記コンクリートブロックは四角柱状を呈しており、当該コンクリートブロックの四つの側面のうち、少なくとも対向する一対の側面は、下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜しているのが望ましい。こうすることで、コンクリートブロックとプレキャスト床版との接合性が高められる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予め必要な強度を有したコンクリートブロックが接続部材の上部に一体に形成されているため、接合部として必要な強度が確保されていて、信頼性の高い接合構造を提供することが可能となる。また、現場施工により施工する充填材を低強度で管理することができるため、養生管理時間を短くすることができ、工期短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態に係るプレキャスト床版と主桁との接合構造を示す図であって、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【
図2】第一実施形態の床版の接合方法のブラケット固定工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】同床版の接合方法の床版配設工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図4】
図3に続く床版配設工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図5】第一実施形態の床版の接合方法の床版固定工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図6】第二実施形態に係るプレキャスト床版と主桁との接合構造を示す図であって、(a)は横断面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は同C-C断面図である。
【
図7】第二実施形態の床版の接合方法の接続部材設置工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図8】同床版の接合方法の床版配設工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図9】第二実施形態の床版の接合方法の床版固定工程を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
第一実施形態では、供用中の道路橋における床版の更新工事について説明する。床版の更新工事は、道路供用と並行して、既設の床版を新設のプレキャストコンクリート床版(プレキャスト床版3)に更新する工事である。床版の更新工事は、本実施形態の接合構造1による床版の接合方法を採用することにより、急速施工を可能としている。
本実施形態の接合構造1は、
図1(a)および(b)に示すように、鋼製の主桁2と、主桁2に上載されたプレキャスト床版3とを接合するものであって、ブラケット4と、接続部材5と、コンクリートブロック6と、充填材7とを備えている。
【0012】
主桁2は、上下一対のフランジ21(
図1(a)および(b)では上側のフランジ21のみを表示している)と両フランジ21を連結するウェブ22とを有したI型鋼からなる。なお、主桁2を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、H形鋼や溝型鋼等であってもよい。
本実施形態の主桁2の上面(上側のフランジ21の上面)には、凹凸が形成されている。主桁2の上面の凹凸は、既設の床版と主桁2とを接合するためスタッドジベルを切断した際の残部である。なお、主桁2の上面は、平坦であってもよい。
主桁2のウェブ22には、ボルト8を挿通するための複数(本実施形態では10か所)のボルト挿通孔が形成されている。なお、ウェブ22のボルト挿通孔の数は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0013】
プレキャスト床版3は、工場等において製造されたコンクリート部材であって、主桁2に上載される。プレキャスト床版3には、主桁2に沿って複数の箱抜き31が形成されている。箱抜き31は、主桁2の上側のフランジ21よりも外側に形成されている。すなわち、箱抜き31は、主桁2の直上ではなく、主桁2の側方に形成されている。箱抜き31は、主桁2とプレキャスト床版3との全ての接合部に対応して形成されている。
箱抜き31は平面視矩形状を呈している。箱抜き31の四つの内側面は、下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜している。すなわち、箱抜き31は、逆四角錐台状を呈している。なお、箱抜き31の形状は限定されるものではない。例えば、箱抜き31の四つの内側面のうちの対向する一対の内側面のみが下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜していてもよい。また、箱抜き31は、逆円錐台状であってもよい。また、箱抜き31は、の側面は、傾斜していなくてもよい。箱抜き31は、プレキャスト床版3の平面誤差を考慮した寸法を有している。すなわち、箱抜き31は、コンクリートブロック6との間に平面誤差を吸収可能な隙間を有した大きさとする。
主桁2の上面とプレキャスト床版3の下面との間には、不陸調整材として、充填材7が介設されている。本実施形態では、充填材7としてモルタルを使用する。なお、充填材7を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、コンクリートであってもよい。
【0014】
ブラケット4は、主桁2に固定されている。本実施形態のブラケット4は、主桁2のウェブ22にボルト接合されている。
ブラケット4は、鋼材からなる第一片41および第二片42を逆L字状に組み合わせることにより形成されている。
第一片41には、主桁2のウェブ22に形成されたボルト挿通孔の位置に対応してボルト挿通孔が形成されている。第一片41は、主桁2のウェブ22の板面に重ねられた状態で、ボルト接合されている。
第二片42は、主桁2の上側のフランジ21の下面に添設されている。第二片42は、フランジ21の幅よりも大きな長さを有していて、主桁2のフランジ21よりも外側に張り出している。第二片42のフランジ21から張り出した部分には、複数(本実施形態では四つ)のボルト挿通孔が形成されている。なお、フランジ21のボルト挿通孔の数は限定されるものではない。
ブラケット4は、第一片41の表面(ウェブ22と反対側の面)と、第二片42の下面とを連結する補強リブ43を有している。補強リブ43は、第一片41および第二片42の板面と直交するように固定された鋼板からなる。本実施形態では、一対の補強リブ43,43が、第一片41および第二片42の縁部に固定されている。なお、補強リブ43の数は限定されるものではない。また、補強リブ43は、必要に応じて設ければよい。
本実施形態では、一対のブラケット4、4が、ウェブ22を挟んで対向した状態で、ボルト接合されている。ボルト(高力ボルト)8は、頭部を一方のブラケット4に係止させた状態で、一対のブラケット4,4(第一片41,41)およびウェブ22のボルト挿通孔に挿通した軸部にナット81を締結することにより、主桁2とブラケット4,4とを固定している。
【0015】
接続部材5は、主桁2とプレキャスト床版3とを接合する部材であり、ブラケット4の第二片42に固定されている。
接続部材5は、逆T字状の構成部材であって、ブラケット4の第二片42の上面に立設された板状の本体部(孔あき鋼板ジベル)51と、第二片42の上面に固定された基部52とを備えている。基部52は、第二片42の上面に重ねられた板材であって、第二片42に形成されたボルト挿通孔の位置に対応する位置にボルト挿通孔が形成されている。接続部材5は、第二片42のボルト挿通孔および基部52のボルト挿通孔を挿通させたボルト(高力ボルト)8にナット81を締結することより、ブラケット4に固定されている。本体部51は、基部52の上面に立設された状態で一体に固定されている。本体部51の上部(接続部材5の上部)は、コンクリートブロック6に埋設されていて、本体部51の下部は、コンクリートブロック6の下面から下側に向けて突出している。本体部51には、コンクリートブロック6との接合性の向上を図るための孔53が貫通している。なお、本体部51に形成する孔53の数および配置は限定されるものではない。また、本体部51は、必ずしも板状である必要はなく、例えば、棒状部材(スタッドジベル等)であってもよい。また、接続部材5の構成は限定されるものではなく、本体部51および基部52として、2枚の鋼板を組み合わせることにより形成する必要はない。例えば、一枚の鋼板を折り曲げ加工することにより本体部51と基部52を形成してもよい。
【0016】
コンクリートブロック6は、プレキャスト床版3の箱抜き31に挿入されている。
コンクリートブロック6は、接続部材5とプレキャスト床版3との接合部において必要な強度を発現する配合のコンクリートにより形成されている。本実施形態では、コンクリートブロック6を繊維補強コンクリートにより形成するが、コンクリートブロック6を構成する材料(コンクリートの配合)は限定されるものではない。コンクリートブロック6は、四角柱状を呈しており、当該コンクリートブロック6の四つの側面は、下に向かうにしたがって対向する側面に近づくように傾斜している。すなわち、コンクリートブロック6は、下に向かうに従って、断面積が小さくなるように側面が傾斜した逆四角錐状を呈している。コンクリートブロック6の上面の平面形状は、箱抜き31の下端の平面形状よりも小さい。すなわち、コンクリートブロック6は、箱抜き31に対して、下側から挿入可能な形状を有している。また、コンクリートブロック6の高さは、箱抜き31の高さ(プレキャスト床版3の厚さ)以下である、なお、コンクリートブロック6の形状は限定されるものではなく、四つの側面のうちの対向する一対の側面のみが下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜していてもよい。また、コンクリートブロック6は、逆円錐台状であってもよい。さらに、コンクリートブロック6の側面は傾斜していなくてもよい。
【0017】
充填材7は、箱抜き31の内面とコンクリートブロック6との隙間に充填されている。また、充填材7は、プレキャスト床版3の下面と、主桁2およびブラケット4の上面との間に充填されている。また、充填材7は、コンクリートブロック6の上側にも充填されていて、プレキャスト床版3の上面の平坦性を確保している。本実施形態では、充填材7としてモルタルを使用する。なお、充填材7を構成する材料は、硬化して所定の強度を発現するものであれば限定されるものではなく、例えばコンクリートやエポキシ樹脂であってもよい。また、箱抜き31に充填される充填材7と、プレキャスト床版3と主桁2およびブラケット4との間に充填される充填材7は、それぞれ異なる材料であってもよい。
【0018】
接合構造1による床版の接合方法は、ブラケット固定工程と、床版配設工程と、床版固定工程とを備えている。
ブラケット固定工程では、
図2(a)および(b)に示すように、主桁2のウェブ22にブラケット4を固定する。具体的には一対のブラケット4,4の第一片41同士を、ウェブ22を挟んだ状態で対向させて、ボルト挿通孔に挿通したボルト8にナット81を締結することにより固定する。なお、ブラケット4の主桁2への固定方法は限定されるものではなく、例えば、溶接してもよい。
【0019】
床版配設工程では、主桁2の上方にプレキャスト床版3を配設する。
プレキャスト床版3の設置に先立ち、まず、
図3(a)および(b)に示すように、ブラケット4に接続部材5を固定する。接続部材5は、ブラケット4の第二片42の上面に接続部材5の基部52を載置するとともに、第二片42および基部52のボルト挿通孔に挿通したボルト8にナット81を螺合することにより固定する。
次に、
図4(a)および(b)に示すように、接続部材5の上部が挿入されたコンクリートブロック6が箱抜き31に挿入されるように、プレキャスト床版3を主桁2の上方から吊下ろす。すなわち、本実施形態では、ブラケット4に接続部材5を固定してから、プレキャスト床版3を主桁2の上方に配設する。
コンクリートブロック6を箱抜き31に挿入することで、接続部材5(本体部51)の上部が箱抜き31に挿入される。
【0020】
床版固定工程では、
図5(a)および(b)に示すように、接続部材5の上部をプレキャスト床版3に固定する。
本実施形態では、箱抜き31の内面とコンクリートブロック6との隙間に充填材7を充填することにより、接続部材5とプレキャスト床版3とを固定する。充填材7は、プレキャスト床版3の上面が面一になるように、コンクリートブロック6の上面とプレキャスト床版3の上面との段差部分(箱抜き31内におけるコンクリートブロック6の上側部分)にも充填する。
また、箱抜き31への充填材7の注入に伴い、プレキャスト床版3と、主桁2との隙間にも充填材7を充填する。
【0021】
本実施形態の接合構造1および床版の接合方法によれば、接続部材5の上部に予め形成されたコンクリートブロック6が必要な強度を確保しているため、充填材7の強度の低強度化が可能となる。すなわち、プレキャスト床版3と主桁2との接合部に作用する応力に対して必要な耐力をプレキャスト製のコンクリートブロック6により確保しているため、充填材7は、鉛直力に対する強度とコンクリートブロック6からプレキャスト床版3に作用する支圧力に対する強度を確保していればよい。その結果、箱抜き内に接続部材を巻き込む充填材を充填する従来の接合構造に比べて、充填材7の低強度化が可能となる。管理する充填材7の低強度化により、養生期間の短縮化が可能となり、その結果、工期短縮化を図ることができる。
また、箱抜き31は、コンクリートブロック6よりも大きな平面形状を有しているため、主桁2とプレキャスト床版3との位置関係に設計時と現地との間で誤差が生じた場合であっても、箱抜き31とコンクリートブロック6との隙間により誤差を吸収することができる。
【0022】
主桁2とプレキャスト床版3との間に充填材7を充填することで、主桁2の上面に不陸が生じていた場合や、主桁2の上面とブラケット4の上面との間に段差が生じていた場合であっても、プレキャスト床版3と主桁2との間に隙間が生じることがない。そのため、安定性に優れたプレキャスト床版3の支持構造が構築される。
また、箱抜き31が平面視矩形状を呈しており、箱抜き31の四つの内側面が下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜しているとともに、コンクリートブロック6の四つの側面が下に向かうにしたがって互いに近づくように傾斜しているため、コンクリートブロック6とプレキャスト床版3との接合性が高められている。
【0023】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、供用中の道路橋における床版の更新工事について説明する。床版の更新工事は、道路供用と並行して、既設の床版を新設のプレキャストコンクリート床版(プレキャスト床版3)に更新する。床版の更新工事は、本実施形態の接合構造1による床版の接合方法を採用することにより、急速施工を可能としている。
本実施形態の接合構造1は、
図6(a)~(c)に示すように、鋼製の主桁2と、主桁2に上載されたプレキャスト床版3とを接合するものであって、ブラケット4と、接続部材5と、コンクリートブロック6と、充填材7とを備えている。なお、主桁2およびプレキャスト床版3の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。本実施形態の主桁2の箱抜き31の内面は略垂直であるが、箱抜きの内面は傾斜していてもよい。
【0024】
ブラケット4は、主桁2に固定されている。本実施形態のブラケット4は、主桁2のウェブ22のボルト接合されている。
ブラケット4は、鋼材からなる第一片41および第二片42を逆L字状に組み合わせることにより形成されている。
第一片41には、主桁2のウェブ22に形成されたボルト挿通孔の位置に対応するボルト挿通孔が形成されている。第一片41は、主桁2のウェブ22の板面に重ねられた状態で、ウェブ22にボルト接合されている。
第二片42は、主桁2の上側のフランジ21の下面に添設されている。第二片42は、フランジ21の幅よりも大きな長さを有していて、主桁2のフランジ21よりも外側に張り出している。第二片42のフランジ21から張り出した部分には、矩形状の貫通孔44が形成されている。貫通孔44は、主桁2の軸方向に長い長方形状である。
第二片42の下面には、貫通孔44を挟むように取付板45,45が固定されている。取付板45は、ウェブ22と平行である。取付板45には、ボルト挿通孔が形成されている。
ブラケット4は、第一片41の表面(ウェブ22と反対側の面)と、第二片42の下面とを連結する補強リブ43を有している。補強リブ43は、第一片41および第二片42の板面と直交するように固定された鋼板からなる。本実施形態の補強リブ43は、第一片41および第二片42の中央部に固定されている。なお、補強リブ43の配置および数は限定されるものではない。また、補強リブ43は、必要に応じて設ければよい。補強リブ43には、貫通孔44の位置に応じて溝(図示せず)が形成されているとともに、溝を挟むように取付板45,45が固定されている。
【0025】
接続部材5は、主桁2とプレキャスト床版3とを接合する部材であり、ブラケット4に固定されている。
接続部材5の下部は、第二片42の貫通孔44を貫通してブラケット4の溝に挿入されているとともに、取付板45,45によって挟まれている。接続部材5は、取付板45および接続部材5を挿通するボルト8にナット81を締結することより固定されている。
接続部材5の上部は、第二片42の上面から上方に延設されている、接続部材5の上部は、コンクリートブロック6に埋設されている。コンクリートブロック6は、四角柱状を呈している。なお、この他のコンクリートブロック6の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
充填材7は、箱抜き31の内面とコンクリートブロック6との隙間に充填されている。また、充填材7は、プレキャスト床版3の下面と、主桁2およびブラケット4の上面との間に充填されている。本実施形態では、充填材7として、モルタルを使用する。
【0026】
接合構造1による床版の接合方法は、接続部材設置工程と、ブラケット固定工程と、床版配設工程と、床版固定工程とを備えている。
接続部材設置工程では、プレキャスト床版3に接続部材5を仮固定する。
図7(a)および(b)に示すように、プレキャスト床版3の箱抜き31にコンクリートブロック6を挿入し、仮止め治具61を介してコンクリートブロック6を箱抜き31の縁部に仮固定する。このとき、接続部材5の上部が箱抜き31に挿入された状態になるとともに、接続部材5の下部はプレキャスト床版3に下面にぶら下がった状態となる。なお、仮止め治具61の構成は限定されるものでない。
【0027】
ブラケット固定工程では、主桁2のウェブ22にブラケット4を固定する。一対のブラケット4,4の第一片41同士を、ウェブ22を挟んだ状態で対向させて、ボルト挿通孔に挿通させたボルト8にナット81を螺合することにより固定する。なお、ブラケット4の主桁2への固定方法は限定されるものではなく、例えば、溶接してもよい。
【0028】
床版配設工程では、主桁2の上方にプレキャスト床版3を配設する。
図8(a)および(b)に示すように、接続部材5の下部をブラケット4に固定する。接続部材5は、第二片42の貫通孔44に挿通させた後、取付板45,45および接続部材5に挿通したボルト8にナット81を締着することにより固定する。本実施形態では、主桁2の上方にプレキャスト床版3を配置してから、仮止め治具61を撤去して、ブラケット4に接続部材5を固定する。このとき、プレキャスト床版3の位置決めを行う。すなわち、箱抜き31とコンクリートブロック6との隙間により、プレキャスト床版3の位置のずれを吸収する。
【0029】
床版固定工程では、
図9(a)および(b)に示すように、接続部材5の上部をプレキャスト床版3に固定する。
本実施形態では、箱抜き31の内面とコンクリートブロック6との隙間に充填材7を充填することにより、接続部材5とプレキャスト床版3とを固定する。
また、箱抜き31への充填材7の注入に伴い、プレキャスト床版3と、主桁2との隙間にも充填材7を充填する。
【0030】
本実施形態の接合構造1および床版の接合方法によれば、第一実施形態の接合構造1および床版の接合方法と同様の作用効果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、接合構造1の施工方法は、前記各実施形態で示した手順に限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
また、主桁2とプレキャスト床版3との間には、充填材7に代えて不陸調整板材等を介設してもよい。また、主桁2の上面が平坦な場合には、直接プレキャスト床版3を載置してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 接合構造
2 主桁
21 フランジ
22 ウェブ
3 プレキャスト床版
31 箱抜き
4 ブラケット
5 接続部材
6 コンクリートブロック
7 充填材
8 ボルト