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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】工作機械用の液体循環装置及びタンク
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20230206BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019065617
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163508
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】西澤 信也
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-268244(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0037283(KR,A)
【文献】特開2014-087871(JP,A)
【文献】特開2006-187851(JP,A)
【文献】特開2014-155974(JP,A)
【文献】特開2006-035337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の導入部と導出部とを有し、工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクと、
前記タンク内に配置される熱交換器と、
を備え、
前記タンクは、前記導入部と前記導出部との間に液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも前記導入部側の第1貯留部とを有し、
前記熱交換器の少なくとも一部が前記絞り部に配置され、
前記導入部が、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央よりもX方向に離れた液体内の位置で、前記X方向と交差するY方向に液体を送り出し、
前記絞り部は、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央から前記X方向と前記Y方向とに直交する方向に配置されている
工作機械用の液体循環装置。
【請求項2】
液体の導入部と導出部とを有し、工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクと、
前記タンク内に配置される熱交換器と、
を備え、
前記タンクは、前記導入部と前記導出部との間に液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも前記導入部側の第1貯留部とを有し、
前記タンクは、上層貯留部と下層貯留部とが仕切り板により仕切られた二層構造部を備え、
前記仕切り板の一部に前記絞り部として貫通孔が設けられ、
前記熱交換器の一部が前記貫通孔に位置するように前記貫通孔の上方に前記熱交換器が配置されている
工作機械用の液体循環装置。
【請求項3】
工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクであって、
液体が導入される側と、液体が導出される側との間に、液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも液体が導入される側の第1貯留部とを有し、
前記絞り部に熱交換器の一部が配置され、
液体が導入される導入部が、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央よりもX方向に離れた液体内の位置で、前記X方向と交差するY方向に液体を送り出し、
前記絞り部は、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央から前記X方向と前記Y方向とに直交する方向に配置されているタンク。
【請求項4】
工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクであって、
液体が導入される側と、液体が導出される側との間に、液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも液体が導入される側の第1貯留部とを有し、
更に、上層貯留部と下層貯留部とが仕切り板により仕切られた二層構造部を有し、
前記仕切り板の一部に前記絞り部として貫通孔が設けられ、
熱交換器の一部が前記貫通孔に位置するように前記貫通孔の上方に前記熱交換器が配置されているタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械用の液体循環装置及びタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
研削盤などの工作機械においては、加工部にクーラント液などの液体が流されることで、加工部の温度が調整される。このような液体を供給する装置として、工作機械との間で液体を循環させつつ、液体の温度を調整する液体循環装置がある(例えば特許文献1を参照)。液体循環装置は、熱交換器(冷却コイル)と熱交換器の温度を調節する温調機(冷凍機)とを有し、循環される液体の中に熱交換器を配置して液体の温度を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-138492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械の加工部に流される液体には、加工で発生した金属屑が含まれる。金属屑は、通常、液体から分離及び回収される。しかし、金属屑を完全に回収することは難しく、熱交換器が何ら工夫なく液体中に配置されていると、液体中の金属屑が熱交換器に堆積し、熱交換器の熱交換効率を低下させるという課題が生じる。また、熱交換器は、液体が貯留される容量の大きなタンクに配置される。したがって、何ら工夫なくタンクに熱交換器を配置すると、熱交換器の周囲で低温にされた液体と、熱交換器の遠くで温度の高い液体とが生じ、工作機械へ送られる液体の温度が安定しないという課題が生じる。
【0005】
本発明は、液体中の金属屑が熱交換器に堆積することを抑制でき、液体を均一に温度調節できる液体循環装置及びタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械用の液体循環装置は、
液体の導入部と導出部とを有し、工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクと、
前記タンク内に配置される熱交換器と、
を備え、
前記タンクは、前記導入部と前記導出部との間に液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも前記導入部側の第1貯留部とを有し、
前記熱交換器の少なくとも一部が前記絞り部に配置され、
前記導入部が、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央よりもX方向に離れた液体内の位置で、前記X方向と交差するY方向に液体を送り出し、
前記絞り部は、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央から前記X方向と前記Y方向とに直交する方向に配置されている構成とした。
本発明に係るもう一つの態様の工作機械用の液体循環装置は、
液体の導入部と導出部とを有し、工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクと、
前記タンク内に配置される熱交換器と、
を備え、
前記タンクは、前記導入部と前記導出部との間に液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも前記導入部側の第1貯留部とを有し、
前記タンクは、上層貯留部と下層貯留部とが仕切り板により仕切られた二層構造部を備え、
前記仕切り板の一部に前記絞り部として貫通孔が設けられ、
前記熱交換器の一部が前記貫通孔に位置するように前記貫通孔の上方に前記熱交換器が配置されている構成とした。
【0007】
本発明に係るタンクは、
工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクであって、
液体が導入される側と、液体が導出される側との間に、液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも液体が導入される側の第1貯留部とを有し、
前記絞り部に熱交換器の一部が配置され、
液体が導入される導入部が、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央よりもX方向に離れた液体内の位置で、前記X方向と交差するY方向に液体を送り出し、
前記絞り部は、前記第1貯留部の水平方向及び垂直方向における中央から前記X方向と前記Y方向とに直交する方向に配置されている
【0008】
本発明に係るもう一つの態様のタンクは、
工作機械との間で循環される液体が貯留されるタンクであって、
液体が導入される側と、液体が導出される側との間に、液体の通路の断面積が絞られた絞り部と、前記絞り部よりも液体が導入される側の第1貯留部とを有し、
更に、上層貯留部と下層貯留部とが仕切り板により仕切られた二層構造部を有し、
前記仕切り板の一部に前記絞り部として貫通孔が設けられ、
熱交換器の一部が前記貫通孔に位置するように前記貫通孔の上方に前記熱交換器が配置されている
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体中の金属屑が熱交換器に堆積することを抑制でき、液体を均一に温度調節できる液体循環装置及びタンクを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る液体循環装置を示す回路図である。
図2図1の温調部の構成を示す図である。
図3図1の温調部を上方から眺めた一部破断の平面図である。
図4】温調部の第1変形例(A)と第2変形例(B)とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る液体循環装置を示す回路図である。
【0013】
本実施形態の液体循環装置1は、例えば研削盤などの工作機械100との間で液体を循環させつつ、液体の温度を調整する装置である。液体は、クーラント液、真水など、様々な液体を適用できる。液体循環装置1は、工作機械100の加工部に流された液体を受けるスラッジコンベア10と、スラッジコンベア10から吸い上げられた液体から金属屑(スラッジ)を分離する分離器12と、分離器12により金属屑と分離された液体を浄化する浄化槽14と、浄化槽14から吸い上げられた液体をろ過処理する第1フィルタ16A及び第2フィルタ16Bと、第1フィルタ16A又は第2フィルタ16Bでろ過処理された液体を集合配管17を介して導入する温調部20とを備える。第1フィルタ16Aと第2フィルタ16Bとは、所定サイクルで交互に使用され、一方が使用されているサイクルのときに、もう一方の洗浄が行われる。第1フィルタ16A及び第2フィルタ16Bの洗浄は、圧縮エアを利用したエア洗浄設備18により行ってもよい。温調部20は、導入された液体の温度を調整する。そして、温調部20で温度が調整された液体がポンプ34で吸い上げられて工作機械100へ送られる。各部間において液体はポンプ31~34により圧送される。ポンプ31~34の導出部には圧力ゲージが設けられ、ポンプ31~34の圧力が計測されるように構成されてもよい。
【0014】
図2は、温調部の構成を示す図である。図2は、温調部20の内部を示す一部破断の側面図である。図3は、温調部を上方から眺めた一部破断の平面図である。図3において仮想線により温調機24を示す。図2及び図3において、太矢印線により液体の流れを示す。
【0015】
温調部20は、液体が貯留されるタンク21と、液体を導入する導入管22と、液体内に配置される熱交換器23と、熱交換器23の温度を制御する温調機24と、液体を導出する導出管25とを備える。
【0016】
タンク21は、水平な仕切板211により間が仕切られた二層構造部213と、導出前の液体が溜められる第2貯留部214とを備える。仕切板211は、二層構造部213を上層貯留部213Aと下層貯留部213Bとの上下二層に仕切る。仕切板211は、中央に貫通孔211hを有し、上層貯留部213Aと下層貯留部213Bとは貫通孔211hを介して連通している。上層貯留部213Aは、液体がオーバーフローした場合に、例えば浄化槽14に液体を戻す、図示略の流路を有していてもよい。上層貯留部213Aは、本発明に係る第1貯留部の一例に相当する。下層貯留部213Bと第2貯留部214とを合わせた構成が、本発明に係る他の貯留部の一例に相当する。上層貯留部213Aの容量は、下層貯留部213Bと第2貯留部214との合計の容量よりも小さい。貫通孔211hは、本発明に係る絞り部と開口部の一例に相当する。
【0017】
熱交換器23は、一部が貫通孔211hに位置するように、貫通孔211hの上方に配置されている。すなわち、熱交換器23は、上層貯留部213Aの水平方向における中央P0に配置されている。熱交換器23は、コイル状の構造を有していてもよい。温調機24は、タンク21上に配置され、熱交換器23に接続されている。
【0018】
導入管22の液体の送出口22aは、上層貯留部213Aの液体中で、上層貯留部213Aの水平方向における中央P0よりも、水平なX方向に離れた位置に配置されている(図2図3)。さらに、送出口22aは、X方向とほぼ直交する水平なY方向へ液体を送り出す向きに配置されている(図3)。さらに、貫通孔211hは、上層貯留部213Aの中央P0から-Z方向(X方向とY方向とに直交する方向、すなわち鉛直方向)に配置されている(図2)。送出口22aは、上層貯留部213Aの底よりも高い位置に配置されている。導入管22の送出口22aは、本発明に係る導入部の一例に相当する。
【0019】
第2貯留部214は、下層貯留部213Bと連通され、下層貯留部213Bから温度の調整された液体が送られる。導出管25の吸入口25aは、第2貯留部214の液体中に配置される。導出管25は、ポンプ34の駆動によって第2貯留部214から工作機械100へ液体を導出する。導出管25の吸入口25aは、本発明に係る導出部の一例に相当する。
【0020】
<動作説明>
液体循環装置1は、工作機械100の動作中、ポンプ31~34の駆動により継続的に液体を循環させる。すなわち、工作機械100の加工部に流された液体は、先ず、スラッジコンベア10へ送られ、多くの金属屑が回収される。スラッジコンベア10に溜められた液体は、分離器12に送られ磁力を用いて金属屑と分離される。そして、金属屑が分離された液体が浄化槽14へ送られる。ポンプ32の駆動と、もう一つのポンプ33の駆動とは、所定サイクルで切り替えられる。或るサイクルでは、ポンプ32の駆動により液体が浄化槽14から吸い上げられ、第1フィルタ16Aでろ過される。第1フィルタ16Aでろ過されている間、第2フィルタ16Bは洗浄処理される。別のサイクルでは、ポンプ33の駆動により液体が浄化槽14から吸い上げられ、第2フィルタ16Bでろ過される。第2フィルタ16Bでろ過されている間、第1フィルタ16Aは洗浄処理される。第1フィルタ16A又は第2フィルタ16Bでろ過された液体は、導入管22を通って温調部20のタンク21へ送られる。
【0021】
導入管22の送出口22aから送り出された液体は、上述した送出口22aの向き及び配置により、図2及び図3に示すように、上層貯留部213A内で旋回する流れを発生させる。このため、上層貯留部213Aの液体は、比較的に大きな流速で熱交換器23を横切り、仕切板211の中央の貫通孔211hを抜けて下層貯留部213Bへ送られる。また、上層貯留部213Aと下層貯留部213Bとの間は貫通孔211hにより液体の通路の断面積が絞られている。このため、その前後で液体の大きな流速が得られ、大きな流速で液体が熱交換器23の近傍を通過する。液体は、熱交換器23の周囲を流れる際に、熱交換器23との間で熱を交換し、温度調節(例えば冷却、加熱又はその両方)される。しかし、熱交換器23の周辺で液体の流速が大きいことから、液体に混じっている金属屑が熱交換器23に堆積することが抑制される。さらに、下層貯留部213Bへ送られる液体は、等しく熱交換器23を横切るため、下層貯留部213Bの液体は均等な温度に調整される。
【0022】
温度調節された液体は、下層貯留部213Bから第2貯留部214へ送られ、ポンプ34の駆動によって工作機械100へ戻される。
【0023】
以上のように、本実施形態の液体循環装置1によれば、温調部20のタンク21内において、液体の通路の断面積を絞る仕切板211及び貫通孔211hを有し、熱交換器23の一部が貫通孔211hに配置されている。このような構成によれば、貫通孔211hの前後で液体の速い流速が得られる。その結果、熱交換器23の周囲の液体の流速が高まることから、液体に含まれる金属屑が熱交換器23に堆積することを抑制できる。さらに、貫通孔211hに一部が含まれるように熱交換器23が配置されていることによって、液体は等しく熱交換器23の近傍を通過することから、液体を均等に温度調節することができる。したがって、熱交換器23により効率的にかつ均等に温度調節された液体を、工作機械100へ供給することができる。
【0024】
さらに、本実施形態の液体循環装置1によれば、温調部20のタンク21内において、導入管22の送出口22aが、液体中で、かつ、上層貯留部213Aの中央よりもX方向に離れた位置で、X方向と交差するY方向を向いて配置されている。このような向き及び配置により、導入管22の送出口22aから送り出された液体により、上層貯留部213A内の液体に旋回する流れを発生させることができる。したがって、熱交換器23の近傍を通過する液体の流速を、液体の旋回によってより高くすることができる。これにより、液体に含まれる金属屑が熱交換器23に堆積してしまうことをより抑制することができる。
【0025】
さらに、本実施形態の液体循環装置1によれば、仕切板211の貫通孔211hが、上層貯留部213Aの中央P0からZ方向の位置に配置されている。Z方向とは、導入管22の送出口22aが中央P0から離れたX方向と、送出口22aから液体が送り出されるY方向とに直交する方向である。このような配置によれば、送出口22aの作用により上層貯留部213Aで旋回した液体を、その旋回の中央付近から下層貯留部213Bへ送ることができる。さらに、旋回の中央付近に熱交換器23が配置されることになる。このような液体の流れ方及び熱交換器23の配置によって、金属屑の熱交換器23への堆積抑制作用、並びに、熱交換器23による液体の均等な温度調節作用を、より高めることができる。
【0026】
さらに、本実施形態の液体循環装置1によれば、温調部20のタンク21は、上層貯留部213Aと下層貯留部213Bとを有する二層構造部213を有し、液体の通路の断面積を絞る構成として、仕切板211の貫通孔211hが採用されている。さらに、液体を旋回させる構成として、水平面に沿った方向に液体を旋回させる構成が採用されている。このような構成によれば、タンク21の配置スペースの低減、特に、タンク21を設置する水平方向の面積低減を図ることができ、さらに、液体の旋回速度をより高くすることができる。加えて、液体の通路の断面積を絞る構成を、少ない材料で低コストに実現できる。
【0027】
さらに、本実施形態の液体循環装置1によれば、上層貯留部213Aと、これより容量の大きな別の貯留部(下層貯留部213Bと第2貯留部214)とを備え、容量の小さな上層貯留部213Aに熱交換器23が配置されている。そして、上層貯留部213Aには、下層貯留部213Bへ通じる貫通孔211hが設けられている。仮に、温度を調節する液体の全体が一度に貯留される大きな貯留部に熱交換器23が配置された場合、大きな貯留部の中には熱交換器23の遠くを通過してしまう液体が生じ、液体を均一に温度調節することが難しい。しかしながら、上記構成のように、温度を調整する液体の全体量よりも小さな容量を有する上層貯留部213Aに熱交換器23が配置されることで、熱交換器から離れたまま上層貯留部213Aを通過してしまう液体が減り、液体を均一に温度調節することができる。また、上層貯留部213Aでは、容量が小さい分、比較的に流速を高くすることができ、熱交換器23への金属屑の堆積を抑制することができる。さらに、別の貯留部(下層貯留部213Bと第2貯留部214)の一部は、上層貯留部213Aの下方に位置し、上層貯留部213Aから別の貯留部へ液体を送る貫通孔211hが、上層貯留部213Aの下部(例えば底)に配置されている。したがって、熱交換器23が配置される上層貯留部213Aにおいて、上方から下方への液体の流れが形成される。これにより、導入管22から導入される液体に金属屑が含まれていても、その金属屑を貫通孔211hから次の貯留部(下層貯留部213B)へ流しやすく、金属屑が上層貯留部213Aに溜まってしまうことを抑制できる。そして、熱交換器23へ金属屑が堆積してしまうことをより抑制することができる。
【0028】
(変形例)
図4は、温調部の第1変形例(A)と第2変形例(B)とを示す図である。図4(A)及び図4(B)において、液体の流れを太矢印線で示す。
【0029】
液体循環装置1は、上述した温調部20の替わりに、第1変形例の温調部20A(図4(A))又は第2変形例の温調部20B(図4(B))を備えてもよい。
【0030】
第1変形例の温調部20Aは、タンク21A内で液体の通路の断面積を絞る構成として、第1貯留部261と第2貯留部262との間に介在し、径又は幅が小さく構成された介在流路271を有する。そして、熱交換器23の一部が介在流路271に配置されている。第1貯留部261と第2貯留部262とは縦に並んで配置されている。液体の導入部は、上層貯留部213Aの底よりも高い位置に配置されている。介在流路271は第1貯留部261の下部に開口し、鉛直方向に液体を通す。第2貯留部262は液体を導出する導出部25Aを下部に有する。このような構成としても、実施形態の温調部20と同様に、熱交換器23の近傍を通過する液体の流速を早くして、熱交換器23への金属屑の堆積を抑制することができ、さらに、液体を一様に熱交換器23の近傍を通過させることができ、液体を均等に温度調節することができる。
【0031】
第1変形例の温調部20Aにおいても、図4(A)に示すように、実施形態と同様の向き及び配置で、導入管22の送出口22aの設けてもよい。このような構成を付加することで、第1変形例においても、第1貯留部261内で液体を旋回させて、熱交換器23への金属屑の堆積をより抑制することができる。
【0032】
さらに、第1変形例の温調部20Aは、第1貯留部261が第2貯留部262よりも液体の容量が小さく、第1貯留部261に熱交換器23が配置されている。第2貯留部262は本発明に係る別の貯留部の一例に相当し、介在流路271は本発明に係る開口部の一例に相当する。このような構成によれば、温度を調整する液体の全体量よりも小さな容量を有する第1貯留部261に熱交換器23が配置されるので、熱交換器から離れたまま第1貯留部261を通過してしまう液体が減り、液体を均一に温度調節することができる。また、第1貯留部261では、容量が小さい分、比較的に流速を高くすることができ、熱交換器23への金属屑の堆積を抑制することができる。
【0033】
さらに、第2貯留部262は、第1貯留部261の下方に位置し、第1貯留部261から第2貯留部262へ液体を送る介在流路271が、第1貯留部261の下部(例えば底)に開口している。したがって、熱交換器23が配置される第1貯留部261において、上方から下方への液体の流れが形成され、第1貯留部261に導入される液体に金属屑が含まれていても、その金属屑を介在流路271から第2貯留部262へ流しやすく、金属屑が第1貯留部261に溜まってしまうことを抑制できる。これにより、熱交換器23へ金属屑が堆積してしまうことをより抑制することができる。
【0034】
第二変形例の温調部20Bは、タンク21B内で液体の通路の断面積を絞る構成として、第1貯留部263と第2貯留部264との間に介在し、径又は幅が小さく構成されたな介在流路272を有する。そして、熱交換器23の一部が介在流路272に配置されている。第1貯留部263と第2貯留部264とは縦に並んで配置されているが、横に並んで配置されてもよい。介在流路272は、第1貯留部263から水平方向に液体を流すように、第1貯留部263の側壁部に設けられている。介在流路272は、途中で向きを変えて、鉛直方向に液体を流すように第2貯留部264の天面部に通じていてもよい。第2貯留部264には液体を導出する導出部25Bを有する。このような構成としても、実施形態の温調部20と同様に、熱交換器23の近傍を通過する液体の流速を早くして、熱交換器23への金属屑の堆積を抑制することができる。さらに、液体を一様に熱交換器23の近傍を通過させることができ、液体を均等に温度調節することができる。
【0035】
第2変形例の温調部20Bにおいても、図4(B)に示すように、導入管22Bの送出口22aBは、液体中で第1貯留部263の中央より一方(-Z方向)に離れた位置で、離れた方向と直交する方向(Y方向)を向いて配置されてもよい。このような向き及び配置により、第1貯留部の263にY-Z面に沿って液体が旋回する流れを生成することができる。そして、第1貯留部263の中央からY-Z面に直交する方向(-X方向)に介在流路272を配置することで、液体の旋回中央付近から介在流路272を介して液体を第2貯留部264へ移動させることができる。これにより、熱交換器23の近傍を通過する液体の流速をより高くして、熱交換器23への金属屑の堆積をより抑制することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、液体循環装置により液体が供給される工作機械は、研削盤に限られず、旋盤、フライス盤など、様々な工作機械を対象としてもよい。また、上記実施形態では、液体循環装置の構成要素として、温調部以外の要素を一例として示したが、温調部以外の要素は様々に変更可能である。また、上記実施形態では、絞り部に熱交換器の一部が配置された例を示したが、熱交換器は、絞り部と、絞り部よりも導入部側の貯留部の中央と、の間に一部が配置されていればよい。これにより、熱交換器を、絞り部と接触させることなく簡易に熱交換器をタンクに設置することができ、温調機能の低下を抑制しつつ、タンクの組付け性能を向上させことができる。また、上記実施形態では、液体をタンクに導入する導入部及びタンクから導出する導出部として、導入管の送出口と導出管の吸入口とを示したが、例えば、タンクの壁体に設けられた孔を導入部又は導入部として適用してもよいなど、その形態は管体に制限されない。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 液体循環装置
20、20A、20B 温調部
21、21A、21B タンク
22、22B 導入管
22a、22aB 送出口
23 熱交換器
24 温調機
25 導出管
25a 吸入口
25A、25B 導出部
211 仕切板
211h 貫通孔(絞り部、開口部)
213 二層構造部
213A 上層貯留部(第1貯留部)
213B 下層貯留部
214 第2貯留部
261、263 第1貯留部
262、264 第2貯留部
271 介在流路(絞り部、開口部)
272 介在流路(絞り部)
図1
図2
図3
図4