(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】解析対象領域の設定方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
C21B5/00 310
(21)【出願番号】P 2019080925
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2021-12-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「環境調和型製鉄プロセス技術開発(STEP2)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】西岡 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153371(JP,A)
【文献】特開2016-113677(JP,A)
【文献】特開2011-214022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00
C21B 7/16
C21B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の内部領域を、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルによって解析するときの解析対象領域を設定する方法であって、
前記高炉は、炉高方向における第1所定高さに設置される第1羽口が炉周方向に等間隔で複数配置されており、前記第1所定高さにおける前記高炉の炉半径Rに対する、炉周方向で隣接する前記第1羽口
間の炉周方向における長さIの比率I/Rが0.5以上であり、
前記高炉の中心軸から炉半径方向に放射状に延びる複数の仮想面により、前記内部領域を等角度に区画する区画工程と、
複数の前記仮想面により区画された複数の区画領域のうち、一部の前記区画領域を前記解析対象領域として設定する設定工程と、を含み、
複数の前記仮想面は、前記中心軸を回転軸として前記区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、前記各区画領域に存在する前記第1羽口同士が互いに重なり合うように、前記内部領域を区画することを特徴とする解析対象領域の設定方法。
【請求項2】
炉周方向で隣接する2つの前記第1羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記仮想面がなす角度が互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項3】
前記高炉には、前記第1所定高さとは異なる第2所定高さに第2羽口が複数設置されており、
複数の前記仮想面は、前記中心軸を回転軸として前記区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、前記各区画領域に存在する前記第2羽口同士が互いに重なり合うように、前記内部領域を区画することを特徴とする請求項1に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項4】
前記第2羽口は、炉周方向に等間隔で配置されており、
炉周方向で隣接する2つの前記第1羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記第2羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記仮想面がなす角度が互いに等しいことを特徴とする請求項3に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項5】
前記高炉には、前記高炉を炉高方向からみたときに、羽口が炉周方向に等間隔で複数設置されており、
前記高炉に設けられる複数の前記羽口は、前記第1羽口及び前記第2羽口であることを特徴とする請求項3に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項6】
前記高炉には、前記第1所定高さ及び前記第2所定高さとは異なる第3所定高さに第3羽口が複数設置されており、
複数の前記仮想面は、前記中心軸を回転軸として前記区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、前記各区画領域に存在する前記第3羽口同士が互いに重なり合うように、前記内部領域を区画することを特徴とする請求項3に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項7】
前記第2羽口及び前記第3羽口は、炉周方向に等間隔で配置されており、
炉周方向で隣接する2つの前記第1羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記第2羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記第3羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記仮想面がなす角度が、互いに等しいことを特徴とする請求項6に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項8】
前記高炉には、前記高炉を炉高方向からみたときに、羽口が炉周方向に等間隔で複数設置されており、
前記高炉に設けられる複数の前記羽口は、前記第1羽口、前記第2羽口及び前記第3羽口であることを特徴とする請求項6に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項9】
高炉の内部領域を、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルによって解析するときの解析対象領域を設定する方法であって、
前記高炉は、炉高方向における第1所定高さに設置される第1羽口が炉周方向に等間隔で複数配置されており、前記第1所定高さにおける前記高炉の炉半径Rに対する、炉周方向で隣接する前記第1羽口
間の炉周方向における長さIの比率I/Rが0.5以上であり、
前記高炉の中心軸から炉半径方向に放射状に延びる複数の仮想面により、前記内部領域を等角度に区画する区画工程と、
複数の前記仮想面により区画された複数の区画領域のうち、一部の前記区画領域を前記解析対象領域として設定する設定工程と、を含み、
複数の前記仮想面は、前記各仮想面を介して隣接する2つの前記区画領域間において、前記第1羽口の形状が前記仮想面に対して面対称となるように、前記内部領域を区画することを特徴とする解析対象領域の設定方法。
【請求項10】
前記高炉には、前記第1所定高さとは異なる第2所定高さに第2羽口が複数設置されており、
複数の前記仮想面は、前記各仮想面を介して隣接する2つの前記区画領域間において、前記第2羽口の形状が前記仮想面に対して面対称となるように、前記内部領域を区画することを特徴とする請求項9に記載の解析対象領域の設定方法。
【請求項11】
前記高炉には、前記第1所定高さ及び前記第2所定高さとは異なる第3所定高さに第3羽口が複数設置されており、
複数の前記仮想面は、前記各仮想面を介して隣接する2つの前記区画領域間において、前記第3羽口の形状が前記仮想面に対して面対称となるように、前記内部領域を区画することを特徴とする請求項10に記載の解析対象領域の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質収支、運動量収支、及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルの解析対象領域の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の観点から、CO2排出量の削減が喫緊の課題となっている。高炉から排出されるCO2量を削減するには、高炉で使用するコークスや微粉炭等、炭素を多く含む還元材(以下、「炭素還元材」ともいう)の削減、すなわち溶銑1tあたりの炭素消費量(つまり、炭素消費原単位)の削減が不可避である。そこで、近年、コークス炉から排出されるガス由来の高濃度H2ガスや、高炉の炉頂から排出されるガスからCO2およびH2Oを除去したガスを、炉下部に設けられる通常羽口や、シャフト部に設けられるシャフト羽口から吹き込み、これらのガスに含まれるCOやH2を炭素還元材の代替として使用することが検討されている(特許文献1)。
【0003】
このような新たな操業の設計を行うには、高炉数学モデルによる数値シミュレーション(以下、「解析」ともいう)を行うことが必要不可欠である。高炉数学モデルとしては、高炉の内部領域を炉高方向、炉半径方向及び炉周方向の3次元方向に分割することで複数の小領域(以下、「計算格子」ともいう)を規定し、各計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解くことにより、高炉内の温度分布、ガス濃度分布、鉱石の還元率分布等の炉内状態を解析する数学モデル(以下、「3次元の高炉数学モデル」ともいう)がある(非特許文献1)。特許文献2では、3次元の高炉数学モデルにより炉内状態を解析するとともに、解析した炉内状態と実測した炉内状態とに基づき、的確な操業条件を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-113677号公報
【文献】特開平8-295910号公報
【文献】特開2017-128805号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kouji Takatani,Takanobu Inada,Yutaka Ujisawa,「Three-dimensional Dynamic Simulator for Blast Furnace」、ISIJ International、一般社団法人日本鉄鋼協会、1999年、Vol.39、No.1、p15-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高炉で使用する操業諸元の妥当性は、商用高炉による操業試験に先立ち、試験高炉などの小型高炉による操業試験により検証される。このため、高炉数学モデルによる解析は、商用高炉だけでなく、小型高炉についても行う必要がある。
【0007】
しかしながら、高炉の内部領域全てを、炉高方向、炉半径方向及び炉周方向の3次元方向に分割し、その全ての計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解くと、計算負荷が高くなる。これまで試験高炉などの小型高炉では、高炉数学モデルにより、炉高方向及び炉半径方向に加えて、炉周方向における分布(3次元方向における分布)が検討された例は無かった。
【0008】
本発明は、高炉操業の解析において、特に試験高炉などの小型高炉における操業の解析において計算負荷を低減できる3次元の高炉数学モデルの解析対象領域の設定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る解析対象領域の設定方法は、(1)高炉の内部領域を、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルによって解析するときの解析対象領域を設定する方法であって、前記高炉は、炉高方向における第1所定高さに設置される第1羽口が炉周方向に等間隔で複数配置されており、前記第1所定高さにおける前記高炉の炉半径Rに対する、炉周方向で隣接する前記第1羽口の炉周方向における長さIの比率I/Rが0.5以上であり、前記高炉の中心軸から炉半径方向に放射状に延びる複数の仮想面により、前記内部領域を等角度に区画する区画工程と、複数の前記仮想面により区画された複数の区画領域のうち、一部の前記区画領域を前記解析対象領域として設定する設定工程と、を含み、複数の前記仮想面は、前記中心軸を回転軸として前記区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、前記各区画領域に存在する前記第1羽口同士が互いに重なり合うように、前記内部領域を区画することを特徴とする。
【0010】
(2)炉周方向で隣接する2つの前記第1羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記仮想面がなす角度が互いに等しいことを特徴とする(1)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0011】
(3)前記高炉には、前記第1所定高さとは異なる第2所定高さに第2羽口が複数設置されており、複数の前記仮想面は、前記中心軸を回転軸として前記区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、前記各区画領域に存在する前記第2羽口同士が互いに重なり合うように、前記内部領域を区画することを特徴とする(1)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0012】
(4)前記第2羽口は、炉周方向に等間隔で配置されており、炉周方向で隣接する2つの前記第1羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記第2羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記仮想面がなす角度が互いに等しいことを特徴とする(3)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0013】
(5)前記高炉には、前記高炉を炉高方向からみたときに、羽口が炉周方向に等間隔で複数設置されており、前記高炉に設けられる複数の前記羽口は、前記第1羽口及び前記第2羽口であることを特徴とする(3)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0014】
(6)前記高炉には、前記第1所定高さ及び前記第2所定高さとは異なる第3所定高さに第3羽口が複数設置されており、複数の前記仮想面は、前記中心軸を回転軸として前記区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、前記各区画領域に存在する前記第3羽口同士が互いに重なり合うように、前記内部領域を区画することを特徴とする(3)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0015】
(7)前記第2羽口及び前記第3羽口は、炉周方向に等間隔で配置されており、炉周方向で隣接する2つの前記第1羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記第2羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記第3羽口から前記中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面がなす角度と、炉周方向で隣接する2つの前記仮想面がなす角度が、互いに等しいことを特徴とする(6)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0016】
(8)前記高炉には、前記高炉を炉高方向からみたときに、羽口が炉周方向に等間隔で複数設置されており、前記高炉に設けられる複数の前記羽口は、前記第1羽口、前記第2羽口及び前記第3羽口であることを特徴とする(6)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0017】
(9)高炉の内部領域を、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルによって解析するときの解析対象領域を設定する方法であって、前記高炉は、炉高方向における第1所定高さに設置される第1羽口が炉周方向に等間隔で複数配置されており、前記第1所定高さにおける前記高炉の炉半径Rに対する、炉周方向で隣接する前記第1羽口の炉周方向における長さIの比率I/Rが0.5以上であり、前記高炉の中心軸から炉半径方向に放射状に延びる複数の仮想面により、前記内部領域を等角度に区画する区画工程と、複数の前記仮想面により区画された複数の区画領域のうち、一部の前記区画領域を前記解析対象領域として設定する設定工程と、を含み、複数の前記仮想面は、前記各仮想面を介して隣接する2つの前記区画領域間において、前記第1羽口の形状が前記仮想面に対して面対称となるように、前記内部領域を区画することを特徴とする解析対象領域の設定方法。
【0018】
(10)前記高炉には、前記第1所定高さとは異なる第2所定高さに第2羽口が複数設置されており、複数の前記仮想面は、前記各仮想面を介して隣接する2つの前記区画領域間において、前記第2羽口の形状が前記仮想面に対して面対称となるように、前記内部領域を区画することを特徴とする(9)に記載の解析対象領域の設定方法。
【0019】
(11)前記高炉には、前記第1所定高さ及び前記第2所定高さとは異なる第3所定高さに第3羽口が複数設置されており、複数の前記仮想面は、前記各仮想面を介して隣接する2つの前記区画領域間において、前記第3羽口の形状が前記仮想面に対して面対称となるように、前記内部領域を区画することを特徴とする(10)に記載の解析対象領域の設定方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、計算負荷を低減できる3次元の高炉数学モデルの解析対象領域の設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】高炉の垂直断面(a)及び水平断面(b)を示す図である。
【
図2】高炉に設けられる羽口の位置を示す概略図である。
【
図3】第1羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図4】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図5】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図6】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図7】第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図9】第1羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図10】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図11】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図12】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図13】第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図14】第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図15】第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図である。
【
図17】還元率とサンプリングレベルの関係を示すグラフである。
【
図19】解体結果から得られた融着帯の形状と、解析結果から得られた温度分布を重ねた図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明を完成するに至った経緯を説明する。
【0023】
試験高炉などの小型高炉は、炉容積が商用高炉よりも小さい。例えば、ある試験高炉の炉容積は12m3であり、商用高炉の炉容積の1/100以下である。また、小型高炉は、羽口の本数が、商用高炉よりも非常に少ない。例えば、先述の試験高炉の通常羽口の本数は3本であるのに対し、商用高炉の通常羽口の本数は40本程度である。このため、試験高炉などの小型高炉は、商用高炉と比較し、高炉の炉半径に対して、高炉の炉周方向で隣接する2つの羽口の炉周方向における長さ(以下、「羽口間長さ」ともいう)が長くなる傾向にある。なお、羽口間長さの詳細については後述する。
【0024】
本発明者等は、小型高炉のように、高炉の炉半径に対して羽口間長さが長い高炉では、離間した羽口と羽口の間には、高温のガスが十分に行き渡らず、温度分布、ガス濃度分布、鉱石の還元率分布等の炉内状態に関し、炉周方向において大きな違いが生じると考えた。そこで、小型高炉(高炉の炉半径に対して羽口間長さが長い高炉)を対象として、高炉数学モデルによる解析を行った。
【0025】
高炉数学モデルによる解析は、非特許文献1に基づいて行った。すわなち、高炉の内部領域を炉高方向、炉半径方向及び炉周方向の3次元方向に分割するとともに、分割された計算格子それぞれにおいて、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解き、炉内状態を解析する3次元の高炉数学モデルにより解析を行った。また、解析対象とした小型高炉では、シャフト羽口から、コークス炉ガス(以下、「COG」ともいう)を改質したガス(以下、「改質COG」ともいう)が吹き込まれることとした。改質COGの組成は、水素77.7%及び窒素22.3%とした。シャフト羽口の詳細は後述する。
【0026】
本発明者等は、上述した3次元の高炉数学モデルによる解析を行い、
図1(a)に示す高炉の垂直断面について、還元率分布及び温度分布を確認した。
図1(a)は、高炉の垂直断面を示す図であり、
図1(b)に示すB-B断面で高炉を切断した図である。なお、
図1(b)は、高炉の水平断面を示す図であり、
図1(a)に示すA-A断面で高炉を切断した図である。温度分布及び還元率分布は、通常羽口及びシャフト羽口を含む垂直断面aと、通常羽口及びシャフト羽口を含まない垂直断面bの両方について確認した。
【0027】
その結果、後述の実施例に示す通り、羽口を含む断面aと、羽口を含まない断面bとの間では、還元率分布及び温度分布が大きく異なることを確認した。本発明者等は、この解析結果から、高炉の炉半径に対して羽口間長さが長い高炉について、解析精度を確保するには、離間した羽口から吹き込まれるガスの影響を考慮するため、炉高方向及び炉半径方向だけでなく、炉周方向にも高炉の内部領域を分割して解析を行うことが必要であると理解した。
【0028】
しかしながら、高炉の内部領域全てを炉高方向、炉半径方向及び炉周方向の3次元方向に分割し、各計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解くと、計算負荷が高くなる。そこで、本発明者等は、さらに検討を進めたところ、羽口の位置を考慮した解析対象領域を設定することで、解析精度を確保しながら、3次元の高炉数学モデルの計算負荷を低減できることを見出した。
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
本実施形態は、解析を行う高炉(以下、「対象高炉」ともいう)の内部領域に対して、3次元の高炉数学モデルの解析対象領域を設定する方法である。まず、対象高炉について説明する。
【0031】
本実施形態では、高炉の炉半径に対して羽口間長さが長い高炉を対象高炉とする。高炉の炉半径に対して羽口間長さが長い高炉とは、炉周方向に等間隔に設置される複数の羽口が、炉高方向における所定高さに配置されている高炉であって、当該羽口が設置されている所定高さにおける高炉の炉半径に対する、当該羽口の羽口間長さの比率(以下、「羽口間長さ比率」ともいう)が0.5[-]以上の高炉を指す。なお、羽口間長さとは、炉周方向で隣接する2つの羽口の軸間の長さであって、炉壁の内面に沿った長さを指す。つまり、羽口間長さは、羽口径によっては変化しない。ここで、羽口の軸とは、羽口を通過するガスの流れる方向に対して垂直な断面における中心を通る軸を指す。
【0032】
羽口間長さ比率が0.5以上である高炉としては、例えば、炉半径が0.5~1m前後であり、炉周が3~6m前後であり、羽口が3~6本程度設置されている小型高炉(試験高炉)が挙げられる。この小型高炉では、羽口間の炉周方向における長さが0.5~2m程度となり、羽口間長さ比率が1.0~2.0[-]となる。この小型高炉のように、羽口間長さ比率が0.5以上である高炉は、離間した羽口から吹き込まれるガスの影響により、温度分布、ガス濃度分布、鉱石の還元率分布等の炉内状態に関し、炉周方向において大きな違いが生じやすく、炉周方向における分布を無視することができない。
【0033】
一方で、商用高炉、特に炉容積5000m3級の大型高炉は、例えば、炉半径が5m前後であり、炉周が30m前後であり、通常羽口が30~40本程度設置されている。この大型高炉では、羽口間の炉周方向における長さが0.75~1m程度となり、羽口間長さ比率が0.15~0.2[-]となる。この大型高炉のように、羽口間長さ比率が0.5未満である高炉は、炉半径に対して羽口間長さが十分に短いとみなせることから、温度分布、ガス濃度分布、鉱石の還元率分布等の炉内状態に関し、炉周方向における大きな違いが生じにくく、炉周方向における分布を無視することができる。すなわち、炉高方向及び炉半径方向の平面について2次元の高炉数学モデルで解析を行い、炉周方向の対称性を仮定して当該解析結果を炉周方向に回転させることにより高炉全体の炉内状態を解析することができる。
【0034】
羽口間長さ比率は、同一高さに設けられる羽口(複数の羽口)毎に求められる値であり異なる高さに設けられる羽口(複数の羽口)間では、羽口間長さ比率が異なることがある。例えば、
図2に示すように、羽口A、羽口B及び羽口Cが異なる高さに設けられている高炉において、羽口A、羽口B、羽口Cの数がそれぞれ異なる場合、羽口間長さ比率が異なる。具体的には、羽口Aの羽口間長さ比率であるI
A/R
A(羽口Aが設けられる所定高さH
Aにおける高炉の炉半径R
Aに対する、羽口Aの羽口間長さI
Aの比率)と、羽口Bの羽口間長さ比率であるI
B/R
B(羽口Bが設けられる所定高さH
Bにおける高炉の炉半径R
Bに対する、羽口Bの羽口間長さI
Bの比率)と、羽口Cの羽口間長さ比率であるI
C/R
C(羽口Cが設けられる所定高さH
Cにおける高炉の炉半径R
Cに対する、羽口Cの羽口間長さI
Cの比率)は、互いに異なる値となる。このように異なる高さに設けられる羽口(複数の羽口)間において、羽口間長さ比率が異なる高炉では、羽口間長さ比率が0.5以上である羽口(複数の羽口)が少なくとも1種あれば、対象高炉となり得る。なお、炉半径とは、高炉内部における半径(内径)を指す。
【0035】
対象高炉は、
図2に示すように、炉周方向に等間隔に設置される羽口(複数の羽口)が、異なる高さに複数設けられている高炉だけでなく、ある特定の高さにしか設置されていない高炉であってもよい。このような場合、特定の高さに設置される羽口(複数の羽口)の羽口間長さ比率が0.5以上であれば、対象高炉となり得る。また、
図2に示す高炉では、異なる高さに設けられる羽口が、いずれも炉周方向に等間隔で配置されているが、羽口間長さ比率が0.5以上である羽口以外の羽口(つまり、羽口間長さ比率が0.5以上である羽口とは異なる高さに設けられる羽口)については、炉周方向に異なる間隔で配置されていてもよい。このような場合であっても対象高炉となり得る。
【0036】
対象高炉に設けられる羽口としては、例えば、予熱羽口、シャフト羽口及び通常羽口を挙げることができる。予熱羽口は、シャフト部の中部から上部に設けられるガス吹込み口であり、
図2に示す羽口Aに対応する。シャフト羽口は、シャフト部の下部に設けられるガス吹込み口であり、
図2に示す羽口Bに対応する。通常羽口は、炉下部の上部に設けられるガス吹込み口であり、
図2に示す羽口Cに対応する。なお、シャフト部とは、炉頂に向かって炉周が小さくなる部位を指し、炉下部とは、炉頂に向かって炉周が大きくなる朝顔部よりも下方の部位を指す。
【0037】
シャフト羽口からは、例えば、改質COGや、高炉の炉頂から排出されるガス(以下、「BFG」ともいう)からCO2およびH2Oを除去したガス(以下、「調整BFG」ともいう)や、改質COGを吹き込むことができる。また、予熱羽口からは、例えば、所定温度(例えば、700℃~1000℃)に加熱したBFGを吹き込むことができる。通常羽口からは、例えば、所定温度(例えば、1000℃~1200℃)に加熱した富化酸素や空気を吹き込むことができる。
【0038】
対象高炉は、上述した羽口以外の構成について限定されるものではなく、従来公知の構成を用いることができる。また、対象高炉の操業諸元は、特に限定されるものではなく、解析の目的を考慮の上、適宜設定することができる。
【0039】
次に、対象高炉の内部領域に対して、解析対象領域を設定する方法を説明する。本実施形態の解析対象領域の設定方法は、高炉の内部領域を仮想面により区画する区画工程と、仮想面で区画された区画領域から解析対象領域を設定する設定工程を含む。
【0040】
区画工程では、高炉の内部領域に、高炉の中心軸から炉半径方向に延びる仮想面を放射状に複数配置し、これらの仮想面により、対象高炉の内部領域を等角度に区画して、中心角が等しい略扇形柱の複数の区画領域を形成する。なお、本明細書において、高炉の中心軸とは、高炉の水平断面における高炉の中心を通る軸を指す。
【0041】
区画工程において、仮想面が配置される位置は、炉高方向における所定高さに設けられる、羽口間長さ比率が0.5以上である羽口(以下、「第1羽口」ともいう)の位置に応じて決定される。具体的には、複数の仮想面は、第1羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在できる位置に配置され、高炉の中心軸を回転軸として、区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、各区画領域に存在する第1羽口同士が互いに重なり合うように内部領域を区画する。
【0042】
区画工程における仮想面の配置の一例について、
図3を用いて具体的に説明する。なお、第1羽口は、羽口間長さ比率が0.5以上である羽口であればよく、例えば、シャフト羽口、予熱羽口及び通常羽口からなる群から一つ選択することができる。
【0043】
図3は、第1羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図3に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、炉周方向で隣接する2つの第1羽口から中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面のなす角度(以下、「第1羽口間角度」ともいう)はα(具体的には120度)である。
【0044】
図3(a)では、3つの仮想面は、炉周方向で隣接する2つの仮想面のなす角度(以下、「仮想面間角度」ともいう)がαとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、炉周方向で隣接する2つの第1羽口の中間(第1羽口を分割しない位置)に位置していている。一方、
図3(b)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がαとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、第1羽口上に位置しており、具体的には、第1羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置している。ここで、実際の羽口は、所定のサイズを有しているため、仮想面(炉高方向及び炉半径方向の二次元平面)によって均等又は不均等に分割されることになる。このように配置される仮想面によれば、対象高炉の内部領域が、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。そして、高炉の中心軸を回転軸として区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、各区画領域に存在する第1羽口同士が互いに重なり合う。
【0045】
なお、本明細書において、等しいとは、高炉設計上の誤差を含む概念である。また、本明細書において、ある区画領域に羽口が存在する、とは、当該区画領域に羽口の一部または全部が位置することを意味し、一つの区画領域に一以上の羽口が含まれていてもよい。また、本明細書において、区画領域を回転させて互いに重ね合わせるとは、区画領域を高炉の中心軸を基準に炉周方向に回転させ、各区画領域の端面(つまり、仮想面による断面)が重なるよう、全ての区画領域を互いに重ねることを意味する。また、羽口同士が互いに重なり合うとは、羽口の少なくとも一部分が互いに重なり合うことを意味し、羽口の軸同士(言い換えれば、羽口の全部分)が重なり合うことに厳密には限定されない。つまり、羽口同士が互いに重なり合うとは、高炉設計上の微差による誤差を許容する概念であり、高炉数学モデル解析の求める精度にもよるが、例えば羽口の軸同士が±5°程度ずれていてもよい。以下の説明では、羽口同士が互いに重なり合うことを、羽口の位置が全ての区画領域で等しいともいう。
【0046】
設定工程では、上述した仮想面により区画された複数の区画領域のうち一部の区画領域を、解析対象領域として設定する。上述した仮想面により区画される全ての区画領域は、互いに等しい形状となり、第1羽口の位置がすべての区画領域で等しくなる。このような区画領域では、第1羽口から吹き込まれるガスが各区画領域において同様の挙動を示すため、1つの区画領域についての解析結果は、他の区画領域についての解析結果と見做すことができる。従って、複数の区画領域のうち1つの区画領域を解析対象領域として解析を行えば、その解析結果を、解析を行っていない他の区画領域の解析結果として用いることができる。従って、対象高炉の内部領域全てを解析する場合と比較し、計算負荷を低減することができ、
図3の例においては計算時間をおよそ三分の一に削減できる。
【0047】
なお、特許文献3では、モデルによる計算負荷を軽減するために、高炉の内部領域を中心角20°の扇形に区画し、この扇形領域を計算領域としている。この方法によれば、計算負荷は軽減できるものの、高炉の内部領域の一部分である扇形領域の解析結果が得られるだけであり、他の領域における炉内状態を把握することができない。すなわち、炉周方向の対称性を仮定できる大型高炉においては有効であるが、羽口の位置に応じて解析対象領域を決定するものではなく、小型高炉への適用の検討は十分でない。
【0048】
対象高炉には、上述したように、第1羽口に加え、第1所定高さとは異なる第2所定高さに羽口(以下、「第2羽口」ともいう)が複数設置されていてもよい。第2羽口は、炉周方向に異なる間隔で配置されていてもよく、等間隔で配置されていてもよい。また、第2羽口の羽口間長さ比率は、0.5以上であってもよく、0.5未満であってもよい。第1羽口だけでなく第2羽口からもガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、区画工程では、第1羽口及び第2羽口の位置に応じて仮想面を配置する。具体的には、複数の仮想面は、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域にそれぞれ存在できる位置に配置され、高炉の中心軸を回転軸として、区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、各区画領域に存在する第1羽口同士及び第2羽口同士が互いに重なり合うように内部領域を区画する。
【0049】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第1例について、
図4を用いて具体的に説明する。なお、第2羽口は、第1羽口とは異なる羽口であればよく、例えば、シャフト羽口、予熱羽口及び通常羽口からなる群から一つ選択することができる。
【0050】
図4は、第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図4に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβ(具体的には120度)である。また、3つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、炉周方向で隣接する2つの第2羽口から中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面のなす角度(以下、「第2羽口間角度」ともいう)はβである。第1羽口と第2羽口の数は同じであるが、第1羽口と第2羽口の位置は炉周方向にずれている。各第1羽口は、炉周方向で隣接する2つの第2羽口の中間に位置し、各第2羽口は、炉周方向で隣接する2つの第1羽口の中間に位置している。つまり、対象高炉に設けられる羽口(第1羽口と第2羽口)は、対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向に等間隔で設置されている。
【0051】
図4(a)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がβとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、第1羽口上に位置しており、具体的には、第1羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置している。一方、
図4(b)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がβとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、第2羽口上に位置しており、具体的には、第2羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置している。このように配置される仮想面によれば、対象高炉の内部領域が、互いに等しい形状の3つの区画領域に区画される。そして、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域にそれぞれ存在し、第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0052】
なお、
図4(a)や
図4(b)では、それぞれの仮想面は、第1羽口と第2羽口のいずれか一方を分割する位置に位置しているが、第1羽口及び第2羽口を分割しない位置に位置していてもよい(つまり、それぞれの仮想面が、第1羽口と第2羽口の間に位置していてもよい)。それぞれの仮想面が、第1羽口及び第2羽口を分割しない位置に位置していても、仮想面間角度がβとなるように3つの仮想面を放射状に配置すれば、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、各区画領域内における第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0053】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第2例について、
図5を用いて具体的に説明する。
【0054】
図5に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、6つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はβ/2である。第2羽口の数は、第1羽口の数の2倍であり、炉周方向における位置が第1羽口と一致している第2羽口(以下、「重複第2羽口」ともいう)と、炉周方向における位置が第1羽口と一致していない第2羽口(以下、「非重複第2羽口」ともいう)とが炉周方向に交互に設けられている。
【0055】
図5では、複数の仮想面は、仮想面間角度がβとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、非重複第2羽口上に位置しており、具体的には、非重複第2羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置している。このように配置される仮想面によれば、対象高炉の内部領域が、互いに等しい形状の3つの区画領域に区画される。そして、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0056】
なお、
図5では、ぞれぞれの仮想面は、非重複第2羽口を分割する位置に位置しているが、非重複第2羽口を分割しない位置に位置していてもよい。例えば、それぞれの仮想面が、第1羽口及び重複第2羽口を分割する位置に位置していてもよい。また、例えば、それぞれの仮想面が、第1羽口と第2羽口の間(つまり、第1羽口及び第2羽口を分割しない位置)に位置していてもよい。これらの場合であっても、仮想面間角度がβとなるように3つの仮想面が放射状に配置されていれば、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0057】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第3例について、
図6を用いて具体的に説明する。
【0058】
図6(a)に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、6つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はβ/2である。第2羽口の数は、第1羽口の数の2倍であり、第1羽口と第2羽口の位置は、炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口の間隔は、炉周方向で隣接する第2羽口と第2羽口の間隔よりも狭い。つまり、対象高炉を炉高方向から見たときに、対象高炉に設けられる羽口(第1羽口と第2羽口)は、炉周方向に異なる間隔で配置されている。
【0059】
図6(a)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がβとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、炉周方向で隣接する2つの第2羽口の中間に位置している(つまり、第1羽口及び第2羽口を分割していない位置に位置している)。このように配置される仮想面によれば、対象高炉の内部領域が、互いに等しい形状の3つの区画領域に区画される。そして、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0060】
図6(b)に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、6つの第2羽口が炉周方向に異なる間隔で設置されており、第2羽口間角度は2β/3又はβ/3である。第2羽口の数は、第1羽口の数の2倍であり、第1羽口と第2羽口の位置は、炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口の間隔は、炉周方向で隣接する第2羽口と第2羽口の間隔と等しい。つまり、対象高炉を炉高方向から見たときに、対象高炉に設けられる羽口(第1羽口及び第2羽口)は、炉周方向に等間隔で配置されている。
【0061】
図6(b)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がβとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、炉周方向で隣接する2つの第2羽口の中間に位置している(つまり、第1羽口及び第2羽口を分割していない位置に位置している)。このように配置される仮想面によれば、対象高炉の内部領域が、互いに等しい形状の3つの区画領域に区画される。そして、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0062】
なお、
図6では、それぞれの仮想面は、第2羽口と第2羽口の間に位置しているが、第2羽口と第2羽口の間に位置していなくてもよい。例えば、それぞれの仮想面が、第2羽口上に位置していてもよく、具体的には、第2羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置していてもよい。また、例えば、それぞれの仮想面が、第1羽口上に位置していてもよく、具体的には、第1羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置していてもよい。さらに、例えば、それぞれの仮想面が、第1羽口と第2羽口の間に位置していてもよい。これらの場合であっても、仮想面間角度がβとなるように3つの仮想面が放射状に配置されていれば、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、各区画領域内における第1羽口及び第2羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0063】
第1羽口だけでなく第2羽口からもガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、設定工程では、上述した仮想面により区画された複数の区画領域のうち一部の区画領域を、解析対象領域として設定する。上述した仮想面により区画される全ての区画領域は、互いに等しい形状となり、第1羽口及び第2羽口位置が全ての区画領域で等しくなる。このため、全ての区画領域では、第1羽口及び第2羽口から吹き込まれるガスが同様の挙動を示す。従って、一部の区画領域を解析対象領域として解析を行えば、この解析結果を他の区画領域にも反映させて、内部領域全てを解析する場合のおよそ三分の一の計算時間で高炉の内部領域全ての解析結果を得ることができる。
【0064】
対象高炉には、第1羽口及び第2羽口に加え、第1所定高さ及び第2所定高さとは異なる第3所定高さに羽口(以下、「第3羽口」ともいう)が複数設置されていてもよい。第3羽口は、炉周方向に異なる間隔で配置されていてもよく、等間隔で配置されていてもよい。また、第3羽口の羽口間長さ比率は、0.5以上であってもよく、0.5未満であってもよい。第1羽口及び第2羽口だけでなく第3羽口からもガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、区画工程では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口の位置に応じて仮想面を配置する位置を決定する。具体的には、複数の仮想面は、第1羽口及び第2羽口及び第3羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在できる位置に配置され、高炉の中心軸を回転軸として、区画領域を回転させて互いに重ね合わせたときに、各区画領域に存在する第1羽口同士、第2羽口同士及び第3羽口同士が互いに重なり合うように内部領域を区画する。
【0065】
第1羽口、第2羽口及び第3羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の一例について、
図7を用いて具体的に説明する。なお、第3羽口は、第1羽口及び第2羽口と異なる羽口であればよく、例えば、シャフト羽口、予熱羽口及び通常羽口からなる群から一つ選択することができる。
【0066】
図7は、第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図7に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はγ(具体的には120度)である。また、3つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はγである。また、3つの第3羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、炉周方向で隣接する2つの第3羽口から中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面のなす角度(以下、「第3羽口間角度」ともいう)はγである。第1羽口と第2羽口と第3羽口の数は同じであるが、第1羽口と第2羽口と第3羽口の位置は互いに炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向で隣接する羽口の間隔(第1羽口と第2羽口の間隔、第2羽口と第3羽口の間隔、第3羽口と第1羽口の間隔)は互いに等しい。つまり、対象高炉を炉高方向から見たときに、対象高炉に設けられる羽口(第1羽口、第2羽口及び第3羽口)は、炉周方向に等間隔で配置されている。
【0067】
図7(a)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がγとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、第2羽口と第3羽口の中間(第1羽口、第2羽口及び第3羽口を分割しない位置)に位置している。
図7(b)では、3つの仮想面は、仮想面間角度がγとなるように放射状に配置され、それぞれの仮想面は、第1羽口上に位置しており、具体的には、第1羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置している。このように配置される仮想面によれば、対象高炉の内部領域が、互いに等しい形状の3つの区画領域に区画される。そして、第1羽口、第2羽口及び第3羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し第1羽口、第2羽口及び第3羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0068】
なお、
図7(b)では、それぞれの仮想面は、第1羽口を分割する位置に位置しているが、第1羽口以外の羽口(第2羽口又は第3羽口)を分割する位置に位置していてもよい。例えば、それぞれの仮想面が、第2羽口上に位置していてもよく、具体的には、第2羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置していてもよい。また、例えば、それぞれの仮想面が、第3羽口上に位置していてもよく、具体的には、第3羽口を水平面内で均等に分割する位置に位置していてもよい。これらの場合であっても、仮想面間角度がγとなるように3つの仮想面が放射状に配置されていれば、第1羽口、第2羽口及び第3羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在し、各区画領域内における第1羽口、第2羽口及び第3羽口の位置が全ての区画領域で等しくなる。
【0069】
第1羽口、第2羽口及び第3羽口からガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合には、設定工程では、上述した仮想面により区画された複数の区画領域のうち一部の区画領域を、解析対象領域として設定する。上述した仮想面により区画される全ての区画領域は、形状が互いに等しくなり、第1羽口、第2羽口及び第3羽口の位置が等しくなる。このため、全ての区画領域では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口から吹き込まれるガスが同様の挙動を示す。従って、一部の区画領域を解析対象領域として解析を行えば、この解析結果を他の区画領域にも反映させて、高炉の内部領域全ての解析結果をおよそ三分の一の計算時間で得ることができる。
【0070】
本実施形態により設定した解析対象領域の解析は、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルにより行われる。ここで、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルとは、解析対象領域を、炉高方向、炉半径方向及び炉周方向の3次元方向に分割して得られる各計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解き、炉内の状態を解析する高炉数学モデルである。物質収支、運動量収支及びエネルギー収支を考慮した3次元の高炉数学モデルは、例えば、非特許文献1に記載されているため詳細な説明は省略する。
【0071】
解析対象領域に設定する計算格子の数は、特に限定されるものではない。一例としては、
図8に示すように、仮想面間角度を120°とする解析対象領域を、炉高方向に60分割し、炉半径方向に7分割し、炉周方向に24分割することができる。また、解析対象領域に、仮想面により分割された羽口の一部分が含まれる場合、当該解析対象領域の解析に用いる、ガスの流量は、分割された羽口の体積割合に応じた値を用いることができる。なお、上述した条件を満足する区画領域を形成することができれば、仮想面により分割される羽口は、必ずしも、水平面内において均等に分割されている必要はなく、不均等に分割されていてもよい。
【0072】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、高炉の内部領域を仮想面により区画する区画工程と、仮想面で区画された区画領域から解析対象領域を設定する設定工程を含む。なお、本実施形態において、対象高炉や3次元の高炉数学モデルなど、解析対象領域の設定方法以外の構成は、第1実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
区画工程では、高炉の内部領域に、高炉中心軸から炉半径方向に延びる仮想面を放射状に複数配置し、これらの仮想面により、対象高炉の内部領域を等角度に区画して、中心角が等しい略扇形柱の複数の区画領域を形成する。
【0074】
仮想面が配置される位置は、炉高方向における第1所定高さに設けられる、羽口間長さ比率が0.5[-]以上である羽口(第1羽口)の位置に応じて決定される。具体的には、複数の仮想面は、第1羽口が全ての区画領域内にそれぞれ存在できる位置に配置され、各仮想面を介して隣接する2つの区画領域間において、第1羽口の形状が仮想面に対して面対称となるように、内部領域を区画する。なお、羽口の形状が仮想面に対して面対称であるとは、高炉設計上の微差による誤差を許容する概念であり、必ずしも、羽口の軸が面対称である必要はない。
【0075】
仮想面の配置の一例について、
図9を用いて具体的に説明する。
【0076】
図9は、第1羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図9に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度がαである。
【0077】
複数の仮想面は、
図9に示すように、第1羽口を水平面内で均等に分割する仮想面(以下「分割仮想面」ともいう)と、第1羽口を分割しない仮想面(以下、「非分割仮想面」ともいう)が、炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がα/2となるように放射状に配置されている。このように配置される仮想面によれば、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方が存在する第1区画領域(以下、単に「第1区画領域」ともいう)と、分割された第1羽口の他方が存在する第2区画領域(以下、単に「第2区画領域」ともいう)とからなり、これらの区画領域が、炉周方向に交互に配置される。そして、分割仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口の形状が分割仮想面に対して面対称となり、非分割仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口の形状が非分割仮想面に対して面対称となる。なお、第1区画領域と第2区画領域の間において、第1羽口の位置は互いに異なる。
【0078】
設定工程では、上述した仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)により区画された複数の区画領域のうち一部の区画領域を、解析対象領域として設定する。解析対象領域として設定する区画領域は、第1区画領域のみであってもよく、第2区画領域のみであってもよい。
【0079】
上述した仮想面(分割仮想面や非分割仮想面)を介して隣接する第1区画領域及び第2区画領域間において、第1羽口の形状は、
図9に示すように、仮想面に対して面対称となる。このような区画領域間では、第1羽口から吹き込まれるガスの挙動が仮想面に対して面対称となる。このため、第1区画領域と第2区画領域のいずれか一方の解析結果を得れば、得られた解析結果を仮想面に対して面対称となるように配置しなおしたものを、他方の解析結果と見做すことができる。また、第1羽口の形状は、高炉の内部領域に配置した一部の仮想面だけでなく、全ての仮想面それぞれに対して面対称である。このため、第1羽口の位置が全ての第1区画領域で等しくなり、また、第1羽口の位置が全ての第2区画領域で等しくなる。従って、第1区画領域の1つの解析結果は、他の第1区画領域の解析結果と見做すことができる。同様に、第2区画領域の1つの解析結果は、他の第2区画領域の解析結果と見做すことができる。このため、第1区画領域と第2区画領域のいずれか一方の区画領域について、その一部の区画領域を解析すれば、その解析結果や解析結果を配置しなおしたものを、解析を行っていない他の区画領域の解析結果として用いることができ、高炉の内部領域全ての解析結果を得ることができる。従って、対象高炉の内部領域全てを解析する場合と比較し、計算負荷を低減することができ、
図9の例においては計算時間をおよそ六分の一に削減できる。
【0080】
なお、本実施形態では、第1区画領域と第2区画領域の両方を解析対象領域に含めてもよい。第1区画領域と第2区画領域の両方を解析対象領域として設定する場合には、解析対象領域として設定した第1区画領域の解析結果を、その他の第1区画領域の解析結果として用いることができ、解析対象領域として設定した第2区画領域の解析結果を、その他の第2区画領域の解析結果として用いることができる。従って、解析結果を配置しなおす操作を行うことなく、高炉の内部領域全ての解析結果を得ることができる。第1区画領域の一つと第2区画領域の一つを解析対象領域とする場合、
図9の例においては、計算時間をおよそ三分の一に削減できる。
【0081】
対象高炉には、第1羽口に加えて、第1所定高さとは異なる第2所定高さに複数の羽口(第2羽口)が設置されてもよい。第2羽口は、炉周方向に異なる間隔で配置されていてもよく、等間隔で配置されていてもよい。第2羽口の羽口間長さ比率は、0.5以上であってもよく、0.5未満であってもよい。第1羽口及び第2羽口からガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、区画工程では、複数の仮想面は、第1羽口及び第2羽口が全ての区画領域にそれぞれ存在できる位置に配置され、各仮想面を介して隣接する2つの区画領域間において、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となるように、内部領域を区画する。
【0082】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第1例を、
図10を用いて説明する。
【0083】
図10は、第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図10に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に並んでおり、第1羽口間角度はβである。また、3つの第2羽口が炉周方向に等間隔に並んでおり、第2羽口間角度はβである。第1羽口と第2羽口の数は同じである。第1羽口と第2羽口の位置は、炉周方向にずれており、対象高炉を炉高方向から見たときに炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口から中心軸に向かってそれぞれ延びる2つの面のなす角度は、β/2である。つまり、対象高炉を炉高方向から見たときに、羽口(第1羽口と第2羽口)は、炉周方向に等間隔で配置されている。
【0084】
図10では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がβ/2なるように放射状に配置されている。第2羽口は、第1羽口を分割しない非分割仮想面によりそれぞれ水平面内で均等に分割されている。このように、第1羽口、第2羽口及び仮想面が配置されることで、高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と分割された第2羽口の一方が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と分割された第2羽口の他方が存在する3つの第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0085】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第2例を、
図11を用いて説明する。
【0086】
図11は、第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図11に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、3つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はβである。第1羽口と第2羽口の数は同じである。第1羽口と第2羽口は、炉周方向における位置が一致している。
【0087】
図11では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がβ/2となるように放射状に配置されている。第2羽口は、第1羽口を分割する分割仮想面により水平面内で均等に分割されている。このように、第1羽口、第2羽口及び仮想面が配置されることで、高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と分割された第2羽口の一方が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と分割された第2羽口の他方が存在する3つの第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0088】
図10~11では、分割仮想面と非分割仮想面のいずれか一方の面内に第2羽口をそれぞれ位置する(つまり、分割仮想面と非分割仮想面のいずれか一方が第2羽口をそれぞれ水平面内で均等に分割する)ことで、各仮想面を介して隣接する2つの区画領域間において、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状を仮想面に対して面対称としている。一方で、以下に示す第3例(
図12)から第4例(
図13)のように、分割仮想面と非分割仮想面の両方の面内に第2羽口が位置していない場合や、分割仮想面と非分割仮想面の両方の面内に第2羽口がそれぞれ位置していている場合であっても、各仮想面を介して隣接する2つの区画領域間において、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となり得る。
【0089】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第3例を、
図12を用いて説明する。
【0090】
図12(a)は、第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図12(a)に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、6つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はβ/2である。第2羽口の数は、第1羽口の数の2倍であり、第1羽口と第2羽口の位置は、炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口の間隔は、炉周方向で隣接する第2羽口と第2羽口の間隔よりも狭い。つまり、対象高炉を炉高方向から見たときに、対象高炉に設けられる羽口(第1羽口と第2羽口)は、炉周方向に異なる間隔で配置されている。
【0091】
図12(a)では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がβ/2となるように放射状に配置されている。第2羽口は、炉周方向で隣接する2つの仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)の間(つまり、仮想面により分割されない位置)に位置している。このように、第1羽口、第2羽口及び仮想面が配置されることで、対象高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と第2羽口が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と第2羽口が存在する3つの第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0092】
図12(b)は、第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図12(b)に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、6つの第2羽口が炉周方向に異なる間隔で設置されており、第2羽口間角度は2β/3又はβ/3である。第2羽口の数は、第1羽口の数の2倍であり、第1羽口と第2羽口の位置は、炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口の間隔は、炉周方向で隣接する第2羽口と第2羽口の間隔と等しい。つまり、対象高炉を炉高方向から見たときに、対象高炉に設けられる羽口(第1羽口と第2羽口)は、炉周方向に等間隔で配置されている。
【0093】
図12(b)では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がβ/2となるように放射状に配置されている。第2羽口は、炉周方向で隣接する2つの仮想面の間に位置している。このように、第1羽口、第2羽口及び仮想面が配置されることで、対象高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と第2羽口が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と第2羽口が存在する3つの第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0094】
第1羽口及び第2羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第4例を、
図13を用いて説明する。
【0095】
図13は、第1羽口、第2羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図13に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はβである。また、6つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はβ/2である。第2羽口の数は、第1羽口の数の2倍であり、炉周方向における位置が第1羽口と一致している第2羽口(重複第2羽口)と、炉周方向における位置が第1羽口と一致していない第2羽口(非重複第2羽口)とが炉周方向に交互に設けられている。非重複第2羽口は、炉周方向で隣接する2つの重複第2羽口の中間に位置している。
【0096】
図13では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶように、仮想面間角度がβ/2となるように放射状に配置されている。全ての第2羽口は、仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)によりそれぞれ水平面内で均等に分割されている。このように、第1羽口、第2羽口及び仮想面が配置されることで、高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と分割された第2羽口が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と分割された第2羽口が存在する3つの第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。ここで、第1区画領域には、分割仮想面により分割された第2羽口の一方と、非分割仮想面により分割された第2羽口の一方が存在する。また、第2区画領域には、分割仮想面により分割された第2羽口の他方と、非分割仮想面により分割された第2羽口の他方が存在する。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0097】
第1羽口だけでなく第2羽口からもガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、設定工程では、上述した仮想面により区画される複数の区画領域のうちの一部の区画領域を、解析対象領域として設定する。上述した仮想面を介して隣接する2つの区画領域間(第1区画領域と第2区画領域)では、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状は、仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)に対して面対称となる。また、第1羽口及び第2羽口それぞれの形状は、高炉の内部領域に配置した一部の仮想面だけでなく、高炉の内部領域に配置した全ての仮想面それぞれに対して面対称となる。従って、第1区画領域と第2区画領域のいずれか一方の区画領域について、その一部の区画領域を解析対象領域として解析を行えば、その解析結果や解析結果を配置しなおしたものを、解析を行っていない他の区画領域の解析結果として用いることができ、高炉の内部領域全ての解析結果を得ることができる。
【0098】
対象高炉には、第1羽口及び第2羽口に加え、第1所定高さ及び第2所定高さとは異なる第3所定高さに、複数の羽口(第3羽口)が設置されていてもよい。第3羽口は、炉周方向に異なる間隔で配置されていてもよく、等間隔で配置されていてもよい。また、第3羽口の羽口間長さ比率は、0.5以上であってもよく、0.5未満であってもよい。第1羽口、第2羽口及び第3羽口からガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、区画工程では、複数の仮想面は、第1羽口、第2羽口及び第3羽口が全ての区画領域にそれぞれ存在できる位置に配置され、各仮想面を介して隣接する2つの区画領域間において、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となるように、内部領域を区画する。
【0099】
第1羽口、第2羽口及び第3羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第1例を、
図14を用いて説明する。
【0100】
図14は、第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図14に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はγである。また、3つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はγである。また、3つの第3羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第3羽口間角度はγである。第1羽口と第2羽口と第3羽口の数は同じである。第1羽口と第3羽口は、炉周方向における位置が一致している。一方、第2羽口の位置は、第1羽口及び第3羽口の位置に対して炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口から中心軸に向かって延びる2つの面のなす角度はγ/2である。同様に、対象高炉を炉高方向から見たときに炉周方向で隣接する第3羽口と第2羽口から中心軸に向かって延びる2つの面のなす角度はγ/2である。
【0101】
図14では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がγ/2となるように放射状に配置されている。全ての第2羽口は、第1羽口を分割しない非分割仮想面によりそれぞれ水平面内で均等に分割されている。全ての第3羽口は、第1羽口を分割する分割仮想面によりそれぞれ水平面内で均等に分割されている。このように、第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面が配置されることで、高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と第2羽口と分割された第3羽口の一方が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と第2羽口と分割された第3羽口の他方が存在する第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面(分割仮想面、非分割仮想面)に対して面対称となる。
【0102】
なお、
図14では、第3羽口間角度をγとする第3羽口が分割仮想面内にそれぞれ配置される(つまり、分割仮想面が第3羽口をそれぞれ分割する)対象高炉を示しているが、第3羽口間角度をγとする第3羽口が非分割仮想面内にそれぞれ配置される(つまり、非分割仮想面が第3羽口をそれぞれ均等に分割する)対象高炉であってもよい。このような対象高炉であっても、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0103】
また、
図14では、第2羽口間角度をγとする第2羽口が非分割仮想面内にそれぞれ設置される(つまり、非分割仮想面が第2羽口をそれぞれ均等に分割している)対象高炉を示しているが、第2羽口間角度をγとする第2羽口が分割仮想面内にそれぞれ設置されている(つまり、分割仮想面が第2羽口をそれぞれ均等に分割する)対象高炉であってもよい。このような対象高炉であっても、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0104】
第1羽口、第2羽口及び第3羽口が設けられる対象高炉における、仮想面の配置の第2例を、
図15を用いて説明する。
【0105】
図15は、第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面の位置関係を示す概略図であり、対象高炉を炉高方向から見たときの平面図である。
図15に示す対象高炉では、3つの第1羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第1羽口間角度はγである。また、6つの第2羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第2羽口間角度はγ/2である。また、6つの第3羽口が炉周方向に等間隔に設置されており、第3羽口間角度はγ/2である。第2羽口と第3羽口の数は同じであり、第1羽口の数は、第2羽口や第3羽口の数の半分である。第2羽口と第3羽口は、炉周方向における位置が一致しており、第1羽口の位置は、第2羽口及び第3羽口の位置に対して炉周方向にずれている。対象高炉を炉高方向から見たときに、炉周方向で隣接する第1羽口と第2羽口の間隔(第1羽口と第3羽口の間隔)は、炉周方向で隣接する第2羽口と第2羽口の間隔(第3羽口と第3羽口の間隔)よりも狭い。
【0106】
図15では、6つの仮想面は、第1羽口を分割する3つの分割仮想面と、第1羽口を分割しない3つの非分割仮想面が炉周方向に交互に並ぶよう、仮想面間角度がγ/2となるように放射状に配置されている。第2羽口及び第3羽口は、炉周方向で隣接する2つの仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)の間(つまり、仮想面により分割されない位置)にそれぞれ位置している。このように、第1羽口、第2羽口、第3羽口及び仮想面が配置されることで、高炉の内部領域は、互いに等しい略扇形柱の複数の区画領域に区画される。複数の区画領域は、分割された第1羽口の一方と第2羽口と第3羽口が存在する3つの第1区画領域と、分割された第1羽口の他方と第2羽口と第3羽口が存在する3つの第2区画領域とからなり、これらの区画領域は、炉周方向に交互に配置される。そして、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0107】
なお、
図15では、第3羽口が炉周方向で隣接する2つの仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)の間(つまり、仮想面により分割されない位置)に設けられているが、第3羽口が全ての仮想面内(分割仮想面内及び非分割仮想面内)にそれぞれ配置されていてもよい。このような場合であっても、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面に対して面対称となる。
【0108】
また、
図15では、第2羽口が炉周方向で隣接する2つの仮想面(分割仮想面及び非分割仮想面)の間(つまり、仮想面により分割されない位置)に設けられているが、第2羽口が全ての仮想面内(分割仮想面内及び非分割仮想面内)にそれぞれ配置されていてもよい。このような場合であっても、各仮想面を介して隣接する第1区画領域と第2区画領域の間では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状が仮想面(分割仮想面、非分割仮想面)に対して面対称となる。
【0109】
第1羽口、第2羽口及び第3羽口からガスを吹き込む対象高炉について解析を行う場合、設定工程では、上述した仮想面により区画される複数の区画領域のうちの一部の区画領域を、解析対象領域として設定する。上述した仮想面を介して隣接する2つの区画領域間(第1区画領域と第2区画領域)では、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状は、仮想面に対して面対称となる。また、第1羽口、第2羽口及び第3羽口それぞれの形状は、高炉の内部領域に配置した一部の仮想面だけでなく、高炉の内部領域に配置した全ての仮想面それぞれに対して面対称となる。従って、第1区画領域と第2区画領域のいずれか一方の区画領域について、その一部の区画領域を解析対象領域として解析を行えば、その解析結果や解析結果を配置しなおしたものを、解析を行っていない他の区画領域の解析結果として用いることができ、高炉の内部領域全ての解析結果を得ることができる。
【実施例】
【0110】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0111】
通常羽口及びシャフト羽口が設けられる試験高炉を用意した。試験高炉において、通常羽口は、炉高方向における所定高さに、等間隔に3つ設置されていた。試験高炉において、シャフト羽口は、通常羽口とは異なる所定高さに、等間隔に3つ設置されていた。通常羽口とシャフト羽口は、炉周方向における位置が一致しており、両者ともに羽口間長さ比率が0.5以上であった。
【0112】
この試験高炉を用いて、所定の操業諸元で、所定期間操業を行った。所定期間経過後、下記表1に示す改質COG吹込み操業の操業諸元で、所定期間操業を行った。所定期間経過後、操業を中止し、試験高炉を解体のうえ、試験高炉内部の還元率分布及び融着帯の形状を調査した。
【0113】
【0114】
なお、表1に示す改質COGは、シャフト羽口から吹き込まれ、富化酸素及びPC(微粉炭)は、通常羽口から吹き込まれた。表1に示す改質COG吹込み操業において、送風量、送風温度、及び送風湿分は、通常羽口の条件を示している。
【0115】
一方、上述した試験高炉を対象高炉として、解析対象領域を設定し、設定した解析対象領域について3次元の高炉数学モデルによる解析を行った。具体的な方法を以下に示す。
【0116】
まず、対象高炉の内部領域に、中心軸から炉半径方向に延びる仮想面を、仮想面角度が120°となるように放射状に複数配置し、それぞれの仮想面を、炉周方向で隣接する羽口と羽口の間(通常羽口間及びシャフト羽口間)に位置させた。これらの仮想面により区画された3つの区画領域のうちの1つの区画領域を、解析対象領域として設定した。
【0117】
解析対象領域を、
図8に示すように、炉高方向に60分割、炉半径方向に7分割、炉周方向に24分割し、計算格子を形成した。次に、非特許文献1に基づき、各計算格子において、物質収支、運動量収支及びエネルギー収支の数式を解き、解析対象領域における還元率分布及び温度分布を取得した。
【0118】
なお、解析で使用した各パラメータは、解析に先立って行われた試験高炉の操業実績に基づいて設定した。
【0119】
解析対象領域の還元率分布及び温度分布を、仮想面により区画した3つの区画領域の解析結果としてそれぞれ使用し、対象高炉の内部領域すべての還元率分布及び温度分布を得た。
【0120】
対象高炉の垂直断面における還元率分布(解析結果)を
図16に示す。
図16の垂直断面は、
図1に示す垂直断面に対応する。また、解体調査の結果と解析結果を比較する、還元率とサンプリングレベルの関係を示すグラフを
図17に示す。なお、
図17に示すサンプリングレベルは、還元率を取得した位置(高さ)を示すものであり、
図16の矢印で示した箇所にサンプリングレベルを記載している。
【0121】
図17に示すように、還元率について、解析結果は解体調査の結果を良好に再現できていた。
【0122】
また、対象高炉の垂直断面における温度分布(解析結果)を
図18に示す。
図18の垂直断面は、
図1に示す垂直断面に対応する。また、解体調査から得られた融着帯の形状と、解析結果から得られた温度分布を重ねた図を
図19に示す。
図19において、垂直断面cは、解体調査の結果から得られた融着帯の形状を示し、垂直断面dは、解析結果から得られた温度分布を示す。垂直断面dにおいて、線で囲まれた領域(1200℃~1400℃の領域)が融着帯を示す。なお、垂直断面c及び垂直断面dは、ともに羽口を含む断面である。
【0123】
図19に示すように、融着帯の形状について、解析結果は操業時の炉内状況を良好に再現できていた。
【0124】
以上の結果より、本実施形態の解析対象領域の設定方法によれば、一部の区画領域を解析対象領域に設定して解析するだけで、この解析結果を他の区画領域に反映させることができ、高炉の内部領域の全てを把握することができる。そして、3次元の高炉数学モデルの計算負荷を低減しながら解析精度を確保できることが確認できた。