(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】ワイパ装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/24 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
B60S1/24
(21)【出願番号】P 2019114802
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】川端 悠介
(72)【発明者】
【氏名】サントス クリスチャン レックス サグ
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-64461(JP,U)
【文献】特開2017-190057(JP,A)
【文献】特開2009-287690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0283445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータの回転が出力される出力軸と、
前記出力軸の回転を揺動運動に変換するリンク機構と、
前記リンク機構により回動されるピボット軸と、
前記ピボット軸と一体に揺動可能なワイパアームと、
を備えたワイパ装置であって、
前記リンク機構は、
前記ピボット軸に固定されるクランクアームと、
前記クランクアームに固定されたジョイント機構と、
前記クランクアームに対して揺動可能に、前記ジョイント機構を介して連結されたリンクコンロッドと、
を有し、
前記ジョイント機構は、
前記クランクアームに固定される柱状部と、前記柱状部の一端に一体に設けられた球状部とを備えるボールジョイントと、
前記リンクコンロッドに設けられ、前記球状部の少なくとも一部を覆うボールリテーナと、
を備え、
前記球状部及び前記ボールリテーナの一方は、前記球状部及び前記ボールリテーナの他方に対して凹むように円形に形成された凹部を有し、
前記球状部及び前記ボールリテーナの他方は、前記凹部内に挿入された凸部を有し、
前記凸部は、前記リンクコンロッドの長手方向に沿う寸法より前記リンクコンロッドの幅方向に沿う寸法が大きいことを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
前記球状部は、前記凹部を有し、
前記ボールリテーナは、前記凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のワイパ装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記リンクコンロッドの幅方向に沿う端部にそれぞれ先尖部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイパ装置において、
前記凸部は、前記リンクコンロッドの幅方向に沿う端部にそれぞれ鋭角の先尖部を有し、前記リンクコンロッドの長手方向に沿う端部にそれぞれ円弧部を有することを特徴とするワイパ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイパ装置において、
前記凸部は、紡錘形であることを特徴とするワイパ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイパ装置において、
前記凹部は、該凹部の内部にグリスが塗布されたグリス保持部であることを特徴とするワイパ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイパ装置において、
前記クランクアームと前記リンクコンロッドとの間に配置され、かつ、前記柱状部に装着されたシール部材をさらに有することを特徴とするワイパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に用いられるワイパ装置として、クランクアームがジョイント機構を介してリンクコンロッドに連結され、リンクコンロッドがジョイント機構を介してピボットアームに連結され、ピボットアームがピボット軸に固定されたものが知られている。このワイパ装置によれば、クランクアームをワイパモータで作動することによりピボット軸を回動させ、ピボット軸でワイパアームを揺動させることにより、ワイパアームに取り付けられたワイパブレードでフロントガラスを払拭する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、ジョイント機構は、ボールジョイントにボールリテーナが球面対偶(すべり対偶)によって直交する3方向(ピッチ軸、ヨー軸、ロール軸)に回転可能に嵌合されている。これにより、ワイパモータの駆動力でクランクアーム、リンクコンロッド、ピボットアームを円滑に連動させて、ピボット軸を回動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイパ装置は、一般に、車両のエンジンルーム内の限られたスペースに取り付けられる。一方、特許文献1のワイパ装置は、リンクコンロッドがジョイント機構を介して直交する3方向(ピッチ軸、ヨー軸、ロール軸)に回転可能にクランクアームやピボットアームに支持されている。
このため、ワイパ装置を車両の内部に取り付ける際に、ボールジョイントに対するリンクコンロッドの回転角度を考慮して、ワイパ装置と車体部品との干渉を避けるようにワイパ装置のレイアウトを決める必要がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、車内レイアウト性が向上したワイパ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るワイパ装置は、電動モータと、前記電動モータの回転が出力される出力軸と、前記出力軸の回転を揺動運動に変換するリンク機構と、前記リンク機構により回動されるピボット軸と、前記ピボット軸と一体に揺動可能なワイパアームと、を備えたワイパ装置であって、前記リンク機構は、前記ピボット軸に固定されるクランクアームと、前記クランクアームに固定されたジョイント機構と、前記クランクアームに対して揺動可能に、前記ジョイント機構を介して連結されたリンクコンロッドと、を有し、前記ジョイント機構は、前記クランクアームに固定される柱状部と、前記柱状部の一端に一体に設けられた球状部とを備えるボールジョイントと、前記リンクコンロッドに設けられ、前記球状部の少なくとも一部を覆うボールリテーナと、を備え、前記球状部及び前記ボールリテーナの一方は、前記球状部及び前記ボールリテーナの他方に対して凹むように円形に形成された凹部を有し、前記球状部及び前記ボールリテーナの他方は、前記凹部内に挿入された凸部を有し、前記凸部は、前記リンクコンロッドの長手方向に沿う寸法より前記リンクコンロッドの幅方向に沿う寸法が大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るワイパ装置において、前記球状部は、前記凹部を有し、前記ボールリテーナは、前記凸部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るワイパ装置において、前記凸部は、前記リンクコンロッドの幅方向に沿う端部にそれぞれ先尖部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るワイパ装置において、前記凸部は、前記リンクコンロッドの幅方向に沿う端部にそれぞれ鋭角の先尖部を有し、前記リンクコンロッドの長手方向に沿う端部にそれぞれ円弧部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るワイパ装置において、前記凸部は、紡錘形であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るワイパ装置において、前記凹部は、該凹部の内部にグリスが塗布されたグリス保持部であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るワイパ装置において、前記クランクアームと前記リンクコンロッドとの間に配置され、かつ、前記柱状部に装着されたシール部材をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボールジョイント及びボールリテーナの一方に形成した凹部に、他方に形成した凸部を挿入し、リンクコンロッドの長手方向に沿う寸法より幅方向に沿う寸法を大きくした。これにより、ワイパ装置を車内に取り付ける際のレイアウト(すなわち、車内レイアウト)の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施形態のワイパ装置を備えた車両を示す正面図。
【
図3】実施形態におけるワイパ装置のリンクコンロッドを示す斜視図。
【
図4】
図3のIV-IVに沿って破断した状態を示す断面図。
【
図5】
図3のV-Vに沿って破断した状態を示す断面図。
【
図6】実施形態におけるボールリテーナを示す斜視図。
【
図7】実施形態におけるボールリテーナの凸部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係るワイパ装置について、図面を参照して説明をする。
(車両)
図1は、ワイパ装置5を備えた車両1を示す斜視図である。
図1に示すように、車両1には、フロントガラス2を払拭するために、第1のワイパブレード3aと第2のワイパブレード3bとが設けられている。
【0017】
第1のワイパブレード3aは、第1のワイパアーム4aの先端に取り付けられている。第1のワイパブレード3aは、第1のワイパアーム4aに内装されている不図示のスプリングにより、フロントガラス2側に向かって付勢されている。第2のワイパブレード3bは、第2のワイパアーム4bの先端に取り付けられている。第2のワイパブレード3bは、第2のワイパアーム4bに内装されている不図示のスプリングにより、フロントガラス2側に向かって付勢されている。
【0018】
車両1の内部には、各ワイパアーム4a,4bを駆動して払拭動作を行わせるためにワイパ装置5が設けられている。このワイパ装置5の払拭パターンは、各ワイパアーム4a,4bを支持する各ピボット軸6a,6bがフロントガラス2の車幅方向運転席側と車幅方向略中央に配置される所謂タンデム式になっている。そして、各ワイパアーム4a,4bはワイパ装置5により駆動されて上反転位置と下反転位置との間で同一方向に揺動してフロントガラス2を払拭する。
【0019】
(ワイパ装置)
図2は、ワイパ装置5を示す正面図である。
図3は、ワイパ装置5のリンクコンロッド21を示す斜視図である。
図1から
図3に示すように、ワイパ装置5は、第1のブラケット(モータブラケット)7及び第2のブラケット8がパイプフレーム9で連結されている。第1のブラケット7の支持部11に第1のピボット軸6aが回転自在に支持されている。第2のブラケット8の支持部12に第2のピボット軸6bが回転自在に支持されている。
【0020】
第1のピボット軸6aは、フロントガラス2の下方の車幅方向外側に配置されている。第2のピボット軸6bは、フロントガラス2の下方の車幅方向略中央に配置されている。第1のピボット軸6aの先端には、第1のワイパアーム4aの基端が取り付けられている。また、第2のピボット軸6bの先端には、第2のワイパアーム4bの基端が取り付けられている。
【0021】
第1のピボット軸6aに第1のクランクアーム14の中央が固定されている。第1のクランクアーム14の他端に第1のジョイント機構15が固定されている。第2のピボット軸6bに第2のクランクアーム17の一端が固定されている。第2のクランクアーム17の他端に第2のジョイント機構18が固定されている。
第1のクランクアーム14の他端に第1のリンクコンロッド21の一端が第1のジョイント機構15を介して連結されている。また、第2のクランクアーム17の他端に第1のリンクコンロッド21の他端が第2のジョイント機構18を介して揺動可能に連結されている。これにより、第1のピボット軸6aと第2のピボット軸6bとが同期して回動する。
【0022】
第1のブラケット7にワイパモータ23が設けられている。ワイパモータ23は、第1のピボット軸6a及び第2のピボット軸6bを駆動する駆動源となる部品である。ワイパモータ23は、電動モータ24と、電動モータ24に連結されている減速機構25とにより構成されている。
減速機構25の出力軸26に第3のクランクアーム27の一端が連結され、第3のクランクアーム27の他端が第3のリンクコンロッド28の一端に連結されている。第3のリンクコンロッド28の他端が第1のクランクアーム14の一端に連結されている。
【0023】
第1のクランクアーム14、第2のクランクアーム17、第1のジョイント機構15、第2のジョイント機構18、第1のリンクコンロッド21、第3のクランクアーム27、及び第3のリンクコンロッド28は、リンク機構29を構成する。リンク機構29は、出力軸26の回転を揺動運動に変換する機構である。
ワイパ装置5は、第1のブラケット7及び第2のブラケット8で車両1の内部に取り付けられている。
【0024】
(ワイパ装置の動作)
次に、ワイパ装置5の動作について説明する。
ワイパモータ23の電動モータ24が作動することにより、電動モータ24の回転が減速機構25を経て出力軸26から出力される。出力軸26の回転が第3のクランクアーム27に伝達され、第3のクランクアーム27が揺動する。第3のクランクアーム27が揺動することにより、第3のリンクコンロッド28を介して第1のクランクアーム14の一端が作動し、第1のクランクアーム14が第1のピボット軸6aを軸に回転する。第1のクランクアーム14が回転することにより第1のピボット軸6aが回動する。第1のピボット軸6aが回動することにより、第1のピボット軸6aの先端に取り付けられた第1のワイパアーム4aが第1のピボット軸6aと一体に所定範囲内を揺動運動する。
【0025】
また、第1のピボット軸6aに固定された第1のクランクアーム14と、第2のピボット軸6bに固定された第2のクランクアーム17とが、第1、第2のジョイント機構15,18を介して第1のリンクコンロッド21により連結されている。よって、第1のクランクアーム14が回転することにより第2のクランクアーム17が揺動する。第2のクランクアーム17が揺動することにより第2のピボット軸6bが回動する。これにより、第2のピボット軸6bの先端に取り付けられた第2のワイパアーム4bも、第1のワイパアーム4aと同期して所定範囲内を揺動運動する。
第1のワイパアーム4a及び第2のワイパアーム4bが揺動運動することにより、第1のワイパブレード3a及び第2のワイパブレード3bでフロントガラス2を払拭する。
【0026】
なお、第1、第2のピボット軸6a,6b、第1、第2のジョイント機構15,18は同一構成である。よって、以下、第1のピボット軸6a及び第1のジョイント機構15を「ピボット軸6a」及び「ジョイント機構15」と略記して説明し、第2のピボット軸6b、第2のジョイント機構18についての詳しい説明を省略する。また、第1のクランクアーム14を「クランクアーム14」と略記し、第1のリンクコンロッド21を「リンクコンロッド21」と略記して説明する。
【0027】
(ボールジョイント)
図4は、
図3のIV-IVに沿って破断した状態を示す断面図である。
図5は、
図3のV-Vに沿って破断した状態を示す断面図である。
図4、
図5に示すように、ジョイント機構15は、例えば金属製のボールジョイント41と、例えば樹脂製のボールリテーナ42と、シール部材43と、を備えている。ボールジョイント41は、クランクアーム14の他端に固定される柱状部45と、柱状部45の一端に一体に設けられた球状部46と、を備えている。
【0028】
柱状部45は、球状部46の基部46aに一体形成された大径部48と、大径部48のうち、球状部46の反対側に一体形成された小径部49とを有する。小径部49は、例えば、クランクアーム14の他端に形成された取付孔51に挿入された状態において加締め等が施されることによりクランクアーム14の他端に固定されている。
大径部48のうち、小径部49の反対側に球状部46が一体に形成されている。
【0029】
球状部46は、球状に形成された球面53と、球面53に形成された凹部54を有する。球面53には、断面逆凹状のボールリテーナ42の摺動面67aが球面対偶(すべり対偶)により摺動自在に嵌合されている。
凹部54は、球面53のうち、大径部48の反対側に形成されている。凹部54は、ボールリテーナ42に対して反対側に凹むように、すなわち大径部48に向けて凹むように円形に形成されている(
図7も参照)。凹部54には、ボールリテーナ42の摺動面67aが球面対偶により摺動自在に嵌合された状態において、内部にグリスが塗布されている。すなわち、凹部54は、グリス保持部としての役割も兼用している。凹部54をグリス保持部として活用することで、ジョイント機構15の摺動性を確保できる。
【0030】
ボールリテーナ42は、リテーナ環状部56と、リテーナ蓋部57と、を有する。
リテーナ環状部56の外周には環状溝58が環状に形成されている。環状溝58は、リンクコンロッド21の一端に形成された嵌合孔61に嵌合されている。これにより、リンクコンロッド21の一端にボールリテーナ42が固定されている。また、ボールリテーナ42は、断面がU字状に形成され、内部に収納凹部63と、凸部64と、を有する。
【0031】
収納凹部63は、球状部46の球面53の少なくとも一部を覆うように形成され、開口部66と、内周壁67と、底部68と、を有する。収納凹部63に開口部66から球状部46が嵌入されることにより、球状部46の球面53の少なくとも一部が収納凹部63により覆われている。
内周壁67は、環状に形成された摺動面67aを有する(
図6も参照)。摺動面67aに球状部46の球面53が球面対偶により摺動自在に嵌合されている。
底部68は、円形状に形成され(
図6も参照)、中央に凸部64が形成されている。凸部64は、摺動面67aに球状部46の球面53が球面対偶により摺動自在に嵌合された状態において、凹部54の内部に挿入されている。
【0032】
ここで、ジョイント機構として、例えば、ボールリテーナ42の底部68に凹部54を形成し、球状部46に凸部64を形成することも考えられる。しかし、底部68に凹部54を形成した場合、凹部54からボールリテーナ42の外周までの肉厚寸法が小さくなる。ボールリテーナは、例えば樹脂材で形成されている。このため、凹部54からボールリテーナ42の外周までの肉厚寸法が小さくなると、ボールリテーナ42の強度を確保することが難しい。
【0033】
そこで、実施形態のジョイント機構15において、球状部46に凹部54を形成し、ボールリテーナ42の底部68に凸部64を形成するようにした。よって、ボールリテーナ42の底部68から外周までの肉厚寸法を好適に確保できる。ボールリテーナ42の強度を確保した状態でジョイント機構15を構成できる。
球状部46の凹部54にボールリテーナ42の凸部64が挿入された状態において、凸部64が凹部54の内壁54aに当接することにより、球状部46を中心にしたボールリテーナ42の回転(回動)が規定される。
【0034】
特に、
図3から
図6に示すように、リンクコンロッド21のロール軸(X軸)、ピッチ軸(Y軸)を中心にする回転を規制できる。
リンクコンロッド21のロール軸(X軸)を中心にする回転とは、リンクコンロッド21が長手方向(すなわち、X軸)を軸として矢印A方向に回転することをいう。
リンクコンロッド21のピッチ軸(Y軸)を中心にする回転とは、リンクコンロッド21が幅方向(すなわち、Y軸)を軸として矢印B方向に回転することをいう。
【0035】
図6は、ボールリテーナ42を示す斜視図である。
図7は、ボールリテーナ42の凸部64を示す平面図である。
図6、
図7に示すように、凸部64は、例えば、紡錘形やひし形に形成され、第1先尖部71と、第2先尖部72と、第1円弧部73と、第2円弧部74と、を有する。
凸部64は、リンクコンロッド21の長手方向(すなわち、X軸方向)に沿う寸法L2に比べて、リンクコンロッド21の幅方向(すなわち、X軸方向)に沿う寸法L1が大きく形成されている。
以下、リンクコンロッド21の長手方向に沿う寸法L2を「長手方向寸法L2」、リンクコンロッド21の幅方向に沿う寸法L1を「幅方向寸法L1」と称して説明する場合がある。
【0036】
第1先尖部71は、例えば、リンクコンロッド21の幅方向(Y軸方向)の先端部(端部)において鋭角に形成されている。第2先尖部72は、例えば、リンクコンロッド21の幅方向(Y軸方向)の先端部(端部)において鋭角に形成されている。
凸部64の先端部に第1先尖部71、第2先尖部72を形成することにより、凸部64の先端部の強度を確保できる。凸部64の先端部を他の形状に形成することも可能である。
リンクコンロッド21がX軸を中心に矢印A方向(
図5参照)に回転していない状態において、第1先尖部71と球状部46の凹部54とのクリアランスがS1に保たれる。また、第2先尖部72と球状部46の凹部54とのクリアランスがS1に保たれる。
【0037】
第1円弧部73は、例えば、リンクコンロッド21の長手方向(X軸方向)の端部において円弧に形成されている。第2円弧部74は、例えば、リンクコンロッド21の長手方向(X軸方向)の端部において円弧に形成されている。
凸部64の端部に第1円弧部73、第2円弧部74を形成することにより、凸部64の端部の強度を確保でき、さらに、凸部64の端部に第1先尖部71、第2先尖部72を容易に形成できる。凸部64の端部を他の形状に形成することも可能である。
リンクコンロッド21がY軸を中心に矢印B方向(
図4参照)に回転していない状態において、第1円弧部73と球状部46の凹部54とのクリアランスがS2に保たれる。また、第2円弧部74と球状部46の凹部54とのクリアランスがS2に保たれる。
ここで、S1はS2より小さい値に設定されている。
【0038】
このように、凸部64の形状を、リンクコンロッド21の長手方向寸法L2より幅方向寸法L1を大きくすることにより、リンクコンロッド21の幅方向(Y軸方向)において、凹部54と凸部64とのクリアランスS1を小さく抑えることができる。
よって、リンクコンロッド21が長手方向(X軸)を中心に回転する際に、凸部64(すなわち、第1先尖部71、第2先尖部72)を凹部54に当接し易くできる。これにより、リンクコンロッド21の回転角度θ1を、例えばθ1=5°を超えない範囲、好ましくはθ1=2°に小さく規制できる。
なお、リンクコンロッド21の回転角度θ1は適宜変更が可能である。
【0039】
これにより、ワイパ装置5の第1、第2のワイパブレード3a,3bによりフロントガラス2(
図1参照)を払拭する動作中において、リンクコンロッド21が長手方向(X軸方向)を中心に大きく回転して車体部品に干渉することを防止できる。したがって、ワイパ装置5を車両1(
図1参照)の内部に取り付ける際のレイアウト(すなわち、車内レイアウト)の自由度を向上できる。
【0040】
一方、リンクコンロッド21の長手方向(X軸方向)において、凹部54と凸部64とのクリアランスS2をある程度大きく確保することができる。よって、リンクコンロッド21が幅方向(Y軸)を軸として回転する際に、凸部64を凹部54に当接し難くでき、リンクコンロッド21の回転角度θ2を、例えばθ2=14°に大きく確保できる。なお、リンクコンロッド21の回転角度θ2は適宜変更が可能である。
【0041】
ここで、リンクコンロッド21が幅方向(Y軸)を軸として大きく回転できるようにした理由について説明する。
すなわち、リンクコンロッド21による幅方向(Y軸)を軸とする回転を小さく規制した場合、リンクコンロッド21の動作を円滑に保つことが難しい。このため、ワイパ装置5の第1、第2のワイパブレード3a,3bによるフロントガラス2(
図1参照)の払拭動作に影響が生じるおそれがある。
【0042】
そこで、リンクコンロッド21が幅方向(Y軸)を軸として大きく回転できるように、凹部54と凸部64(すなわち、第1円弧部73、第2円弧部74)とのクリアランスS2を大きく確保するようにした。これにより、リンクコンロッド21の動作を円滑に保つことができ、ワイパ装置5の第1、第2のワイパブレード3a,3bによりフロントガラス2(
図1参照)を円滑に払拭することができる。
【0043】
また、凸部64を例えば、紡錘形やひし形に形成することにより、例えば、第1先尖部71と第1円弧部73との間等において、凹部54と凸部64とのクリアランスをある程度大きく確保できる。よって、球状部46を中心にしたボールリテーナ42の回転を、リンクコンロッド21の回転角を、幅方向(Y軸)を軸として回転する位置と、長手方向(X軸)を軸として回転する位置との間の中間位置において好適に確保できる。
これにより、リンクコンロッド21を、幅方向を軸とする位置、長手方向を軸とする位置、及び中間位置において円滑に作動させることができる。したがって、ワイパ装置5の第1、第2のワイパブレード3a,3bによるフロントガラス2(
図1参照)の払拭動作への影響を軽減できる。
【0044】
図4、
図5に示すように、クランクアーム14の他端とリンクコンロッド21の一端との間にシール部材43が装着されている。シール部材43は、例えば、ゴム製の弾性部材で形成され、小径シール部76と、傾斜シール部77と、大径シール部78と、フランジシール部79と、を有する。
小径シール部76は、環状に形成され柱状部45の大径部48に圧入状態に嵌合されている。傾斜シール部77は、小径シール部76からボールリテーナ42まで徐々に拡径するように形成されている。傾斜シール部77の径方向外側の端部から大径シール部78がリンクコンロッド21の一端まで筒状に延びている。
【0045】
大径シール部78は、ボールリテーナ42のリテーナ環状部56に嵌合されている。大径シール部78のうち、リンクコンロッド21の一端側の部位からフランジシール部79が柱状部45の径方向外側に向けて張り出されている。フランジシール部79は、リンクコンロッド21の一端に接触されている。
【0046】
このように、シール部材43が大径部48に嵌合され、フランジシール部79がリンクコンロッド21の一端に接触されることにより、ボールリテーナ42の開口部66をシール部材43で塞ぐことができる。
また、シール部材43は、弾性部材で形成されている。よって、ボールリテーナ42がリンクコンロッド21とともに回転した場合に、リンクコンロッド21やボールリテーナ42の回転に追従してシール部材43を弾性変形させることができる。これにより、球状部46とボールリテーナ42との間に開口部66から、例えば塵等が侵入することをシール部材43で防止できる。
【0047】
ここで、実施形態のジョイント機構15は、球状部46の凹部54と、ボールリテーナ42の凸部64とを用いて、リンクコンロッド21が長手方向を軸として回転する際に、凹部54と凸部64とを当接し易く設定して回転角度θ1を小さく規制する構成にした。よって、ボールリテーナ42の内部において凹部54と凸部64とによりリンクコンロッド21の回転角度θ1を小さく規制できる。
すなわち、実施形態のワイパ装置5は、例えば、ボールリテーナ42のうち、クランクアーム14の側の端部(外部)に回転規制部を設ける必要がない。
【0048】
よって、クランクアーム14とリンクコンロッド21との間にシール部材43を配置する空間を確保できる。加えて、リンクコンロッド21が長手方向を軸として回転する際に、クランクアーム14とリンクコンロッド21との間に配置したシール部材43の形状をボールリテーナ42や、リンクコンロッド21で必要以上に歪めることを抑制できる。これにより、シール部材43の防塵機能を阻害するおそれがなく、球状部46とボールリテーナ42との間に塵等が侵入することをシール部材43で防止できる。
【0049】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0050】
1…車両、4a…第1のワイパアーム(ワイパアーム)、4b…第2のワイパアーム(ワイパアーム)、5…ワイパ装置、6a…第1のピボット軸、6b…第2のピボット軸、14…第1のクランクアーム(クランクアーム)、17…第2のクランクアーム(クランクアーム)、15…第1のジョイント機構(ジョイント機構)、18…第2のジョイント機構(ジョイント機構)、21…リンクコンロッド、24…電動モータ、26…出力軸、29…リンク機構、41…ボールジョイント、42…ボールリテーナ、43…シール部材、45…柱状部、46…球状部、54…凹部、64…凸部、71…第1先尖部(先尖部)、72…第2先尖部(先尖部)、73…第1円弧部(円弧部)、74…第2円弧部(円弧部)、L1…幅方向寸法(リンクコンロッドの幅方向に沿う寸法)、L2…長手方向寸法L2(リンクコンロッドの長手方向に沿う寸法)