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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20230206BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
G01R15/18 C
G01R15/20 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019116021
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2020016643
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018133852
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】横田 修
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206596(JP,A)
【文献】特開2002-296303(JP,A)
【文献】特表2009-536743(JP,A)
【文献】特開2002-228689(JP,A)
【文献】特開2012-68191(JP,A)
【文献】特開2002-84670(JP,A)
【文献】米国特許第6750644(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第105353200(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103616550(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出導体が挿通される磁気コア、当該磁気コアに配設された磁電変換部、前記磁気コアに巻回された帰還巻線、検出電流が前記検出導体に流れることによって前記磁気コア内に生じる磁束を打ち消す負帰還電流を前記磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記帰還巻線の一端に供給する電圧電流変換回路、および出力端子を備えている電流センサであって、
前記帰還巻線の他端から出力される前記負帰還電流を第1検出抵抗を用いて電圧に変換することにより、前記検出電流を第1検出レートで第1検出電圧に変換して出力する1または2以上の第1電圧変換部、および前記負帰還電流を第2検出抵抗を用いて電圧に変換すると共に当該電圧を増幅器で増幅することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも大きな第2検出レートで第2検出電圧に変換して出力する1または2以上の第2電圧変換部を有し、
前記1または2以上の第1電圧変換部および前記1または2以上の第2電圧変換部のうちの任意の1つの要素が前記他端と前記出力端子との間に接続される接続状態に切り替える切替部を備えている電流センサ。
【請求項2】
前記第1検出抵抗および前記第2検出抵抗のうちの前記任意の1つの要素に含まれる検出抵抗の抵抗値は、前記帰還巻線の前記他端から当該任意の1つの要素までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項1記載の電流センサ。
【請求項3】
前記磁気コア、前記磁電変換部および前記帰還巻線が収納されたセンサユニットと、
前記電圧電流変換回路および伝送路が収納された中継ユニットと、
前記切替部、前記第1電圧変換部、前記第2電圧変換部および前記出力端子が収納された終端ユニットと、
第1接続ケーブルと、
第2接続ケーブルとを備え、
前記センサユニットと前記中継ユニットとが前記第1接続ケーブルを介して接続されると共に、前記電圧電流変換回路が当該第1接続ケーブルを構成する配線を介して前記磁電変換部と前記帰還巻線の前記一端との間に接続され、かつ前記伝送路の一端が当該第1接続ケーブルを構成する他の配線を介して前記帰還巻線の前記他端に接続され、
前記中継ユニットと前記終端ユニットとが前記第2接続ケーブルを介して接続されると共に、前記切替部が、当該第2接続ケーブルを構成する配線を介して接続された前記伝送路の他端と前記出力端子との間に前記任意の1つの要素が接続される接続状態に切り替える請求項1または2記載の電流センサ。
【請求項4】
検出導体が挿通される磁気コア、当該磁気コアに配設された磁電変換部、前記磁気コアに巻回された帰還巻線、検出電流が前記検出導体に流れることによって前記磁気コア内に生じる磁束を打ち消す負帰還電流を前記磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記帰還巻線の一端に供給する電圧電流変換回路、および出力端子を備えている電流センサであって、
供給された電流を電圧に変換する第1検出抵抗、供給された電流を電圧に変換する第2検出抵抗、当該第2検出電圧で変換された電圧を増幅して出力する増幅器、伝送路および切替部を有し、
前記切替部は、前記帰還巻線の他端から出力される前記負帰還電流を、前記第2検出抵抗と前記増幅器とで構成される電流電圧変換回路および前記伝送路のうちの任意の一方の要素に切り替えて供給すると共に、当該一方の要素から出力される信号を前記第1検出抵抗に供給し、
前記切替部が前記一方の要素として前記伝送路に切り替えた切替状態では、前記第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換することにより、前記検出電流を第1検出レートで第1検出電圧に変換して前記出力端子に出力し、
前記切替部が前記一方の要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態では、当該電流電圧変換回路および前記第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換して増幅することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも大きな第2検出レートで第2検出電圧に変換して前記出力端子に出力する電流センサ。
【請求項5】
前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記切替部が前記一方の要素として前記伝送路に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項4記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第2検出抵抗の抵抗値は、前記切替部が前記一方の要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該電流電圧変換回路までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項4記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記電流電圧変換回路から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項6記載の電流センサ。
【請求項8】
前記磁気コア、前記磁電変換部および前記帰還巻線が収納されたセンサユニットと、
前記電圧電流変換回路、前記伝送路、前記電流電圧変換回路および前記切替部が収納された中継ユニットと、
前記第1検出抵抗および前記出力端子が収納された終端ユニットと、
第1接続ケーブルと、
第2接続ケーブルとを備え、
前記センサユニットと前記中継ユニットとが前記第1接続ケーブルを介して接続されると共に、前記電圧電流変換回路が当該第1接続ケーブルを構成する配線を介して前記磁電変換部と前記帰還巻線の前記一端との間に接続され、かつ前記切替部が当該第1接続ケーブルを構成する他の配線を介して前記帰還巻線の前記他端に接続され、
前記中継ユニットと前記終端ユニットとが前記第2接続ケーブルを介して接続されると共に、前記切替部が、前記第1接続ケーブルを構成する前記他の配線を介して接続された前記帰還巻線の前記他端と前記第2接続ケーブルを構成する配線を介して接続された前記第1検出抵抗との間に前記一方の要素が接続される接続状態に切り替える請求項4から7のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項9】
検出導体が挿通される磁気コア、当該磁気コアに配設された磁電変換部、前記磁気コアに巻回された帰還巻線、検出電流が前記検出導体に流れることによって前記磁気コア内に生じる磁束を打ち消す負帰還電流を前記磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記帰還巻線の一端に供給する電圧電流変換回路、および出力端子を備えている電流センサであって、
供給された電流を電圧に変換する第1検出抵抗、供給された電流を電圧に変換する第2検出抵抗、当該第2検出電圧で変換された電圧を増幅して出力する増幅器、供給された電流を電圧に変換する第3検出抵抗、伝送路、第1切替部および第2切替部を有し、
前記第1切替部は、前記帰還巻線の他端から出力される前記負帰還電流を、前記第2検出抵抗と前記増幅器とで構成される電流電圧変換回路および前記伝送路のうちの任意の一方の第1要素に切り替えて供給すると共に、当該一方の第1要素から出力される信号を前記第2切替部に供給し、
前記第2切替部は、前記第1切替部から供給される前記信号を、前記第1検出抵抗および前記第3検出抵抗のうちの任意の一方の第2要素に切り替えて供給すると共に、当該一方の第2要素から出力される信号を前記出力端子に出力し、
前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第1検出抵抗に切り替えた切替状態では、当該第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換することにより、前記検出電流を第1検出レートで第1検出電圧に変換して前記出力端子に出力し、
前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第1検出抵抗に切り替えた切替状態では、当該電流電圧変換回路および当該第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換して増幅することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも大きな第2検出レートで第2検出電圧に変換して前記出力端子に出力し、
前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第3検出抵抗に切り替えた切替状態では、当該第3検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも小さな第3検出レートで第3検出電圧に変換して前記出力端子に出力する電流センサ。
【請求項10】
前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として当該第1検出抵抗に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項9記載の電流センサ。
【請求項11】
前記第2検出抵抗の抵抗値は、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第1検出抵抗に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該電流電圧変換回路までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項9記載の電流センサ。
【請求項12】
前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記電流電圧変換回路から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項11記載の電流センサ。
【請求項13】
前記第3検出抵抗の抵抗値は、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として当該第3検出抵抗に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該第3検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている請求項9記載の電流センサ。
【請求項14】
前記磁気コア、前記磁電変換部および前記帰還巻線が収納されたセンサユニットと、
前記電圧電流変換回路、前記伝送路、前記電流電圧変換回路および前記第1切替部が収納された中継ユニットと、
前記第1検出抵抗、前記第3検出抵抗、前記第2切替部および前記出力端子が収納された終端ユニットと、
第1接続ケーブルと、
第2接続ケーブルとを備え、
前記センサユニットと前記中継ユニットとが前記第1接続ケーブルを介して接続されると共に、前記電圧電流変換回路が当該第1接続ケーブルを構成する配線を介して前記磁電変換部と前記帰還巻線の前記一端との間に接続され、かつ前記第1切替部が当該第1接続ケーブルを構成する他の配線を介して前記帰還巻線の前記他端に接続され、
前記中継ユニットと前記終端ユニットとが前記第2接続ケーブルを介して接続され、
前記第1切替部は、前記第1接続ケーブルを構成する前記他の配線を介して接続された前記帰還巻線の前記他端と前記第2接続ケーブルを構成する配線を介して接続された前記第2切替部との間に前記一方の第1要素が接続される接続状態に切り替え、
前記第2切替部は、前記第2接続ケーブルを構成する前記配線と前記出力端子との間に前記一方の第2要素が接続される接続状態に切り替える請求項9から13のいずれかに記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼロフラックス法により検出導体に流れる検出電流を検出する電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電流センサとして、下記特許文献1において、検出導体(被測定電線)に流れる検出電流(測定電流)をゼロフラックス方式(コア、磁電変換部(ホール素子やフラックスゲート素子など)、帰還巻線(負帰還コイル)、電圧電流変換回路、負帰還電流を電圧に変換して出力する検出抵抗回路、および検出抵抗回路から出力される電圧を増幅して出力電圧として出力する増幅回路を備えた方式)で検出する電流センサであって、検出抵抗回路を構成する検出抵抗と増幅回路を構成する演算増幅器の入力抵抗との組み合わせを切り替えることで、検出レート(測定電流を出力電圧に変換する際の変換レート)を切り替え得る電流センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-215065号公報(第5-8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来の電流センサには、以下のような改善すべき課題が存在している。すなわち、従来の電流センサでは、いずれの検出レートにおいても、検出抵抗で検出された検出電圧はすべて増幅回路を構成する演算増幅器で増幅されて出力電圧として出力される構成のため、この電流センサには、すべての検出レートにおいて出力される出力電圧は増幅回路を構成する演算増幅器自体で発生するノイズの影響を受けるという課題が存在している。
【0005】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、検出レートを切り替え可能としつつ、増幅器で発生するノイズの影響を軽減し得る電流センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の電流センサは、検出導体が挿通される磁気コア、当該磁気コアに配設された磁電変換部、前記磁気コアに巻回された帰還巻線、検出電流が前記検出導体に流れることによって前記磁気コア内に生じる磁束を打ち消す負帰還電流を前記磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記帰還巻線の一端に供給する電圧電流変換回路、および出力端子を備えている電流センサであって、前記帰還巻線の他端から出力される前記負帰還電流を第1検出抵抗を用いて電圧に変換することにより、前記検出電流を第1検出レートで第1検出電圧に変換して出力する1または2以上の第1電圧変換部、および前記負帰還電流を第2検出抵抗を用いて電圧に変換すると共に当該電圧を増幅器で増幅することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも大きな第2検出レートで第2検出電圧に変換して出力する1または2以上の第2電圧変換部を有し、前記1または2以上の第1電圧変換部および前記1または2以上の第2電圧変換部のうちの任意の1つの要素が前記他端と前記出力端子との間に接続される接続状態に切り替える切替部を備えている。
【0007】
また、請求項2記載の電流センサは、請求項1記載の電流センサにおいて、前記第1検出抵抗および前記第2検出抵抗のうちの前記任意の1つの要素に含まれる検出抵抗の抵抗値は、前記帰還巻線の前記他端から当該任意の1つの要素までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0008】
また、請求項3記載の電流センサは、請求項1または2記載の電流センサにおいて、前記磁気コア、前記磁電変換部および前記帰還巻線が収納されたセンサユニットと、前記電圧電流変換回路および伝送路が収納された中継ユニットと、前記切替部、前記第1電圧変換部、前記第2電圧変換部および前記出力端子が収納された終端ユニットと、第1接続ケーブルと、第2接続ケーブルとを備え、前記センサユニットと前記中継ユニットとが前記第1接続ケーブルを介して接続されると共に、前記電圧電流変換回路が当該第1接続ケーブルを構成する配線を介して前記磁電変換部と前記帰還巻線の前記一端との間に接続され、かつ前記伝送路の一端が当該第1接続ケーブルを構成する他の配線を介して前記帰還巻線の前記他端に接続され、前記中継ユニットと前記終端ユニットとが前記第2接続ケーブルを介して接続されると共に、前記切替部が、当該第2接続ケーブルを構成する配線を介して接続された前記伝送路の他端と前記出力端子との間に前記任意の1つの要素が接続される接続状態に切り替える。
【0009】
また、請求項4記載の電流センサは、検出導体が挿通される磁気コア、当該磁気コアに配設された磁電変換部、前記磁気コアに巻回された帰還巻線、検出電流が前記検出導体に流れることによって前記磁気コア内に生じる磁束を打ち消す負帰還電流を前記磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記帰還巻線の一端に供給する電圧電流変換回路、および出力端子を備えている電流センサであって、供給された電流を電圧に変換する第1検出抵抗、供給された電流を電圧に変換する第2検出抵抗、当該第2検出電圧で変換された電圧を増幅して出力する増幅器、伝送路および切替部を有し、前記切替部は、前記帰還巻線の他端から出力される前記負帰還電流を、前記第2検出抵抗と前記増幅器とで構成される電流電圧変換回路および前記伝送路のうちの任意の一方の要素に切り替えて供給すると共に、当該一方の要素から出力される信号を前記第1検出抵抗に供給し、前記切替部が前記一方の要素として前記伝送路に切り替えた切替状態では、前記第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換することにより、前記検出電流を第1検出レートで第1検出電圧に変換して前記出力端子に出力し、前記切替部が前記一方の要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態では、当該電流電圧変換回路および前記第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換して増幅することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも大きな第2検出レートで第2検出電圧に変換して前記出力端子に出力する。
【0010】
また、請求項5記載の電流センサは、請求項4記載の電流センサにおいて、前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記切替部が前記一方の要素として前記伝送路に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0011】
また、請求項6記載の電流センサは、請求項4記載の電流センサにおいて、前記第2検出抵抗の抵抗値は、前記切替部が前記一方の要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該電流電圧変換回路までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0012】
また、請求項7記載の電流センサは、請求項6記載の電流センサにおいて、前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記電流電圧変換回路から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0013】
また、請求項8記載の電流センサは、請求項4から7のいずれかに記載の電流センサにおいて、前記磁気コア、前記磁電変換部および前記帰還巻線が収納されたセンサユニットと、前記電圧電流変換回路、前記伝送路、前記電流電圧変換回路および前記切替部が収納された中継ユニットと、前記第1検出抵抗および前記出力端子が収納された終端ユニットと、第1接続ケーブルと、第2接続ケーブルとを備え、前記センサユニットと前記中継ユニットとが前記第1接続ケーブルを介して接続されると共に、前記電圧電流変換回路が当該第1接続ケーブルを構成する配線を介して前記磁電変換部と前記帰還巻線の前記一端との間に接続され、かつ前記切替部が当該第1接続ケーブルを構成する他の配線を介して前記帰還巻線の前記他端に接続され、前記中継ユニットと前記終端ユニットとが前記第2接続ケーブルを介して接続されると共に、前記切替部が、前記第1接続ケーブルを構成する前記他の配線を介して接続された前記帰還巻線の前記他端と前記第2接続ケーブルを構成する配線を介して接続された前記第1検出抵抗との間に前記一方の要素が接続される接続状態に切り替える。
【0014】
また、請求項9記載の電流センサは、検出導体が挿通される磁気コア、当該磁気コアに配設された磁電変換部、前記磁気コアに巻回された帰還巻線、検出電流が前記検出導体に流れることによって前記磁気コア内に生じる磁束を打ち消す負帰還電流を前記磁電変換部から出力される電圧に基づいて生成して前記帰還巻線の一端に供給する電圧電流変換回路、および出力端子を備えている電流センサであって、供給された電流を電圧に変換する第1検出抵抗、供給された電流を電圧に変換する第2検出抵抗、当該第2検出電圧で変換された電圧を増幅して出力する増幅器、供給された電流を電圧に変換する第3検出抵抗、伝送路、第1切替部および第2切替部を有し、前記第1切替部は、前記帰還巻線の他端から出力される前記負帰還電流を、前記第2検出抵抗と前記増幅器とで構成される電流電圧変換回路および前記伝送路のうちの任意の一方の第1要素に切り替えて供給すると共に、当該一方の第1要素から出力される信号を前記第2切替部に供給し、前記第2切替部は、前記第1切替部から供給される前記信号を、前記第1検出抵抗および前記第3検出抵抗のうちの任意の一方の第2要素に切り替えて供給すると共に、当該一方の第2要素から出力される信号を前記出力端子に出力し、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第1検出抵抗に切り替えた切替状態では、当該第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換することにより、前記検出電流を第1検出レートで第1検出電圧に変換して前記出力端子に出力し、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第1検出抵抗に切り替えた切替状態では、当該電流電圧変換回路および当該第1検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換して増幅することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも大きな第2検出レートで第2検出電圧に変換して前記出力端子に出力し、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第3検出抵抗に切り替えた切替状態では、当該第3検出抵抗が、前記負帰還電流を電圧に変換することにより、前記検出電流を前記第1検出レートよりも小さな第3検出レートで第3検出電圧に変換して前記出力端子に出力する。
【0015】
また、請求項10記載の電流センサは、請求項9記載の電流センサにおいて、前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として当該第1検出抵抗に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0016】
また、請求項11記載の電流センサは、請求項9記載の電流センサにおいて、前記第2検出抵抗の抵抗値は、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記電流電圧変換回路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として前記第1検出抵抗に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該電流電圧変換回路までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0017】
また、請求項12記載の電流センサは、請求項11記載の電流センサにおいて、前記第1検出抵抗の抵抗値は、前記電流電圧変換回路から当該第1検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0018】
また、請求項13記載の電流センサは、請求項9記載の電流センサにおいて、前記第3検出抵抗の抵抗値は、前記第1切替部が前記一方の第1要素として前記伝送路に切り替えた切替状態、かつ前記第2切替部が前記一方の第2要素として当該第3検出抵抗に切り替えた切替状態における前記帰還巻線の前記他端から当該第3検出抵抗までの線路の特性インピーダンスに規定されている。
【0019】
また、請求項14記載の電流センサは、請求項9から13のいずれかに記載の電流センサにおいて、前記磁気コア、前記磁電変換部および前記帰還巻線が収納されたセンサユニットと、前記電圧電流変換回路、前記伝送路、前記電流電圧変換回路および前記第1切替部が収納された中継ユニットと、前記第1検出抵抗、前記第3検出抵抗、前記第2切替部および前記出力端子が収納された終端ユニットと、第1接続ケーブルと、第2接続ケーブルとを備え、前記センサユニットと前記中継ユニットとが前記第1接続ケーブルを介して接続されると共に、前記電圧電流変換回路が当該第1接続ケーブルを構成する配線を介して前記磁電変換部と前記帰還巻線の前記一端との間に接続され、かつ前記第1切替部が当該第1接続ケーブルを構成する他の配線を介して前記帰還巻線の前記他端に接続され、前記中継ユニットと前記終端ユニットとが前記第2接続ケーブルを介して接続され、前記第1切替部は、前記第1接続ケーブルを構成する前記他の配線を介して接続された前記帰還巻線の前記他端と前記第2接続ケーブルを構成する配線を介して接続された前記第2切替部との間に前記一方の第1要素が接続される接続状態に切り替え、前記第2切替部は、前記第2接続ケーブルを構成する前記配線と前記出力端子との間に前記一方の第2要素が接続される接続状態に切り替える。
【発明の効果】
【0020】
請求項1,4記載の電流センサでは、検出電流の電流値が小さいために負帰還電流も小さくなり、第1検出抵抗だけでは十分な電圧値の第1検出電圧に変換し得ない場合には、第2検出抵抗および増幅器を含む構成の回路が、検出電流を第2検出レートで十分な電圧値の第2検出電圧に変換して出力するが、検出電流の電流値が大きいために負帰還電流も大きくなり、第1検出抵抗だけで十分な電圧値の第1検出電圧に変換し得る場合には、増幅器を含まずに第1検出抵抗で構成される電圧変換のための回路が、検出電流を第1検出レートで十分な電圧値の第1検出電圧に変換して出力する。
【0021】
したがって、この電流センサによれば、検出レートを切り替え可能としつつ、1つの検出レート(第1検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、検出電流を第1検出電圧に変換して出力することができる。
【0022】
請求項9記載の電流センサでは、検出電流の電流値が小さいために負帰還電流も小さくなり、第1検出抵抗だけでは十分な電圧値の第1検出電圧に変換し得ない場合には、第2検出抵抗および増幅器を含む構成の回路が、検出電流を第2検出レートで十分な電圧値の第2検出電圧に変換して出力するが、検出電流の電流値が大きいために負帰還電流も大きくなり、第1検出抵抗だけで十分な電圧値の第1検出電圧に変換し得る場合には、増幅器を含まずに第1検出抵抗で構成される回路が、検出電流を第1検出レートで十分な電圧値の第1検出電圧に変換して出力する。また、検出電流の電流値がさらに大きいために負帰還電流もさらに大きくなり、第1検出抵抗による電圧変換では電圧値が大き過ぎる場合には、増幅器を含まずに第1検出抵抗よりも小さな抵抗値の第3検出抵抗で構成される回路が、検出電流を第1検出レートよりも小さな第3検出レートで第3検出電圧に変換して出力する。
【0023】
したがって、この電流センサによれば、電流値の大きい検出電流については、増幅器を含まない構成で、第1検出電圧や第3検出電圧に変換して出力することができる。すなわち、この電流センサによれば、3つの検出レートを切り替え可能としつつ、そのうちの2つの検出レート(第1検出レートおよび第3検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、検出電流を第1検出電圧や第3検出電圧に変換して出力することができる。
【0024】
請求項3記載の電流センサでは、大きな電流値の負帰還電流が流れるとき(第1検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路と第1検出抵抗とがそれぞれ異なるユニット内に収納される構成のため(電圧電流変換回路が中継ユニットに収納され、第1検出抵抗が終端ユニットに収納される構成のため)、電圧電流変換回路および第1検出抵抗での各発熱を異なるユニットに分散させることができる。これにより、この電流センサによれば、中継ユニット内の温度上昇および終端ユニット内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、第1検出抵抗の発熱による電圧電流変換回路への影響を回避することができる。また、センサユニットに配設された磁気コア、磁電変換部および帰還巻線への第1検出抵抗の発熱による影響についても回避することができる。
【0025】
請求項8記載の電流センサでは、大きな電流値の負帰還電流が流れるとき(第1検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路と第1検出抵抗とが異なるユニット内に収納される構成のため(電圧電流変換回路が中継ユニットに収納され、第1検出抵抗が終端ユニットに収納される構成のため)、電圧電流変換回路および第1検出抵抗での各発熱を異なるユニットに分散させることができる。これにより、この電流センサによれば、中継ユニット内の温度上昇および終端ユニット内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、この電流センサによれば、電圧電流変換回路および電流電圧変換回路(第2検出抵抗と増幅器とで構成される回路)が第1検出抵抗とは異なる中継ユニット内に収納されているため、第1検出抵抗の発熱に起因して平均温度がより高くなる傾向にある終端ユニット内に収納される構成とは異なり、電圧電流変換回路および電流電圧変換回路の増幅器への第1検出抵抗の発熱による影響を回避することができる。
【0026】
請求項14記載の電流センサでは、大きな電流値の負帰還電流が流れるとき(第1検出レートや第3検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路、第1検出抵抗および第3検出抵抗のうちの、電圧電流変換回路と、第1検出抵抗および第3検出抵抗とが異なるユニット内に収納される構成のため(電圧電流変換回路が中継ユニットに収納され、第1検出抵抗および第3検出抵抗が終端ユニットに収納される構成のため)、電圧電流変換回路での発熱と、第1検出抵抗および第3検出抵抗での発熱とを異なるユニットに分散させることができる。これにより、この電流センサによれば、3つの検出レートを切り替え可能としつつ、中継ユニット内の温度上昇および終端ユニット内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、この電流センサによれば、電圧電流変換回路および電流電圧変換回路(第2検出抵抗と増幅器とで構成される回路)が第1検出抵抗および第3検出抵抗とは異なる中継ユニット内に収納されているため、第1検出抵抗や第3検出抵抗の発熱に起因して平均温度がより高くなる傾向にある終端ユニット内に収納される構成とは異なり、電圧電流変換回路および電流電圧変換回路の増幅器への第1検出抵抗や第3検出抵抗の発熱による影響を回避することができる。
【0027】
請求項2記載の電流センサによれば、負帰還電流を第1検出電圧および第2検出電圧のうちの対応する検出電圧に変換する検出抵抗の抵抗値が、検出抵抗に負帰還電流を供給する線路の特性インピーダンスに規定されているため、検出電圧についての波形歪みを低く抑えることができる。
【0028】
請求項5,10記載の電流センサによれば、負帰還電流を第1検出電圧に変換する第1検出抵抗の抵抗値が、第1検出抵抗に負帰還電流を供給する線路の特性インピーダンスに規定されているため、第1検出電圧についての波形歪みを低く抑えることができる。
【0029】
請求項6,11記載の電流センサによれば、負帰還電流を電圧に変換する第2検出抵抗の抵抗値が、第2検出抵抗を含む電流電圧変換回路に負帰還電流を供給する線路の特性インピーダンスに規定されているため、第2検出抵抗において変換される電圧についての波形歪みを低く抑えることができる。
【0030】
請求項7,12記載の電流センサによれば、第1検出抵抗の抵抗値が、第2検出抵抗を含む電流電圧変換回路で変換された電圧を第1検出抵抗に伝送する線路の特性インピーダンスに規定されているため、第1検出抵抗から出力される第2検出電圧についての波形歪みをさらに低く抑えることができる。
【0031】
請求項13記載の電流センサによれば、負帰還電流を第3検出電圧に変換する第3検出抵抗の抵抗値が、第3検出抵抗に負帰還電流を供給する線路の特性インピーダンスに規定されているため、第3検出電圧についての波形歪みを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】電流センサ1Aの構成図である。
図2】電流センサ1Aの構成要素を、センサユニット51と終端ユニット52とに2分割して配設する例を示す構成図である。
図3】電流センサ1Bの構成図である。
図4】電流センサ1Cの構成図である。
図5】電流センサ1Dの構成図である。
図6】電流センサ1Eの構成図である。
図7】電流センサ1Fの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、電流センサの実施の形態について説明する。
【0034】
まず、電流センサとしての電流センサ1Aの構成について、図1を参照して説明する。
【0035】
電流センサ1Aは、図1に示すように、磁気コア2、磁電変換部3、帰還巻線4、電圧電流変換回路5、複数の電圧変換部(本例では一例として、2つの電圧変換部6a,6b)、第1切替部7(以下、単に切替部7ともいう)および出力端子9を備えて、ゼロフラックス方式の電流センサとして構成されている。また、電流センサ1Aは、磁気コア2の内部に挿通される検出導体の一例としての被検出電線61に流れる検出電流I1の電流値に応じて電圧値が変化する出力電圧Voを出力端子9から出力する。
【0036】
磁気コア2は、一例として、基端部(図1中の下端部)を中心として開閉可能な分割型に形成されて、活線状態の被検出電線61をクランプ可能(内部に被検出電線61を挿通可能)に構成されている。なお、磁気コア2については、分割型に限定されず、貫通型(非分割型)とすることもできる。
【0037】
磁電変換部3は、一例としてホール素子やフラックスゲートなどの磁電変換素子で構成されている。また、磁電変換部3は、一例として、磁気コア2の基端部に配設されている。また、磁電変換部3は、作動状態において、磁気コア2の内部に発生する磁束を検出して、磁束密度に応じた(具体的には、比例、またはほぼ比例した)電圧値の電圧V1を出力する。この場合、磁気コア2の内部に発生する磁束とは、磁気コア2に挿通された被検出電線61に検出電流I1が流れることによって発生する磁束φ1と、帰還巻線4に後述する負帰還電流I2が流れることによって発生する磁束φ2(磁束φ1と逆向きの磁束)との合成磁束(φ1-φ2)である。
【0038】
帰還巻線4は、磁気コア2に線材が予め規定された巻回数n(ターン数n。本例では一例として、n=50)で巻回されて構成されている。電圧電流変換回路5は、演算増幅器などで構成されて、磁電変換部3から電圧V1を入力すると共に、この電圧V1に基づいて負帰還電流I2を生成して、帰還巻線4の一端4aに供給する。この場合、電圧電流変換回路5は、電圧V1がゼロボルトに近づくように、つまり、磁電変換部3において検出される磁気コア2の内部に発生している合成磁束(φ1-φ2)の磁束密度がゼロに近づくように(言い換えれば、磁束φ2で磁束φ1を相殺するように)、負帰還電流I2の電流値を制御する。つまり、負帰還電流I2は、検出電流I1を巻回数nで除算した値(I2=I1/n)となる。
【0039】
切替部7は、例えば1回路2接点構造の2つの切替スイッチ7a,7bを有して構成されて、2つの電圧変換部6a,6bのうちの任意の1つの第1要素(電圧変換部)が帰還巻線4の他端4bと出力端子9との間に接続される接続状態に切り替える。具体的には、切替スイッチ7aが、帰還巻線4の他端4bと、各電圧変換部6a,6bの後述する入力部11,21との間に接続されて、帰還巻線4の他端4bから出力される負帰還電流I2を電圧変換部6a,6bのいずれか一方に選択的に切り替えて出力する。また、切替スイッチ7bが、各電圧変換部6a,6bの後述する出力部12,22と出力端子9との間に接続されて、切替スイッチ7aと連動して切り替えられる。具体的には、切替スイッチ7aが帰還巻線4の他端4bと電圧変換部6aの入力部11とを接続するように切り替えられたときには、切替スイッチ7bは、電圧変換部6aの出力部12と出力端子9とを接続するように切り替えられる。また、切替スイッチ7aが帰還巻線4の他端4bと電圧変換部6bの入力部21とを接続するように切り替えられたときには、切替スイッチ7bは、電圧変換部6bの出力部22と出力端子9とを接続するように切り替えられる。この構成により、切替部7は、電圧変換部6a,6bのうちの負帰還電流I2が供給されている一方から出力される検出電圧(負帰還電流I2が電圧変換部6aに供給されているときには、電圧変換部6aから出力される第1検出電圧Vd1、負帰還電流I2が電圧変換部6bに供給されているときには、電圧変換部6bから出力される第2検出電圧Vd2)を出力端子9に出力電圧Voとして出力する。また、切替部7(本例では、切替スイッチ7a,7b)は、リレーなどの機械的なスイッチや、アナログスイッチなどの半導体素子で構成されたスイッチで構成されている。
【0040】
電圧変換部6aは、第1電圧変換部であって、入力部11が切替部7の切替スイッチ7aに接続されて、切替スイッチ7aから入力部11に負帰還電流I2が出力されているときには、この負帰還電流I2を第1検出電圧Vd1に変換して、この第1検出電圧Vd1をそのまま出力部12から出力する。本例では一例として、電圧変換部6aは、予め規定された抵抗値R1(例えば、50Ω)の第1検出抵抗13を備えて構成されている。第1検出抵抗13は、一端が入力部11および出力部12に接続され、他端が電流センサ1Aにおける基準電位の部位(グランドG)に接続されて、電流電圧変換回路として構成されている。この構成により、電圧変換部6aは、入力部11に入力される負帰還電流I2を、第1検出抵抗13(抵抗値R1)で第1検出電圧Vd1(=I2×R1)に変換してそのまま出力部12から出力する。また、第1検出電圧Vd1は、抵抗値R1および巻回数nで規定される第1検出レート(R1/n)を用いて、(I1×R1/n)と表される。本例では、R1=50Ωで、かつn=50であることから、電圧変換部6aは、第1検出レート(数値「1」)で、検出電流I1を第1検出電圧Vd1に変換する。
【0041】
電圧変換部6bは、第2電圧変換部であって、入力部21が切替部7の切替スイッチ7bに接続されて、切替スイッチ7bから入力部21に負帰還電流I2が出力されているときには、この負帰還電流I2を第2検出電圧Vd2に変換して出力部22から出力する。本例では一例として、電圧変換部6bは、予め規定された抵抗値R2(例えば、50Ω)の第2検出抵抗23、入力した電圧をk倍(kは、予め規定された1を超える実数。本例では一例として数値「10」)に増幅して出力する増幅器(例えば演算増幅器で構成された広帯域増幅器)24、および増幅器24の出力端子と出力部22との間に接続された出力抵抗25(抵抗値Ro。本例では一例として、50Ω)を備えて、電流電圧変換回路として構成されている。第2検出抵抗23は、一端が入力部21および増幅器24の入力端子に接続され、他端がグランドGに接続されている。この構成により、電圧変換部6bは、入力部21に入力される負帰還電流I2を、第2検出電圧Vd2(=I2×R2×k)に変換して、出力部12から出力する。また、第2検出電圧Vd2は、抵抗値R2、巻回数nおよび数値k(増幅器24の増幅率k)で規定される第2検出レート(R2/n×k)を用いて、(I1×R2/n×k)と表される。本例では、R2=50Ωで、n=50で、かつk=10であることから、電圧変換部6bは、第1検出レートよりも大きな第2検出レート(数値「10」)で、検出電流I1を第2検出電圧Vd2に変換する。
【0042】
次に、電流センサ1Aの使用方法および動作について図面を参照して説明する。また、電流センサ1Aは、入力インピーダンスが高インピーダンス(例えば、1MΩ以上)の計測器(例えば、オシロスコープなどの波形観測装置)にその出力端子9が接続されて使用される。これにより、この計測器において、電流センサ1Aで検出された検出電流I1の波形観測などが可能となっている。
【0043】
検出電流I1の流れている被検出電線61が磁気コア2の内部に挿通されている状態において、磁電変換部3は、磁気コア2の内部に発生する磁束を検出して、磁束密度に応じた電圧値の電圧V1を出力する。この場合、磁気コア2の内部には、被検出電線61に検出電流I1が流れることによって発生している磁束φ1と、帰還巻線4に負帰還電流I2(電圧電流変換回路5から出力されている電流)が流れることによって発生している磁束φ2との差分(φ1-φ2)の磁束が発生している。
【0044】
電圧電流変換回路5は、磁電変換部3から入力している電圧V1に基づいて、電圧V1がゼロボルトになるように、つまり、磁電変換部3において検出される磁気コア2の内部に発生している磁束(φ1-φ2)の磁束密度がゼロになるように、負帰還電流I2の電流値を制御しつつ、負帰還電流I2を生成して帰還巻線4に出力する。これにより、負帰還電流I2の電流値は、検出電流I1の電流値を帰還巻線4の巻回数nで除算した値になっている。
【0045】
この電流センサ1Aでは、検出しようとする検出電流I1の電流値の大小に応じて、切替部7の切り替えが行われる。具体的には、検出電流I1の電流値が大きいときには、電圧変換部6aが切替部7を介して帰還巻線4の他端4bと出力端子9との間に接続される接続状態に、切替部7が切り替えられる。一方、検出電流I1の電流値が小さいときには、電圧変換部6bが切替部7を介して帰還巻線4の他端4bと出力端子9との間に接続される接続状態に、切替部7が切り替えられる。
【0046】
なお、第1切替部7および第2切替部8については、電流センサ1Aの使用者が、検出電流I1の電流値の大小を判別すると共に、この判別の結果に基づいて例えば電流センサ1Aに設けられた不図示の操作部を操作することで(つまり、手動で)、第1切替部7および第2切替部8を切り替える構成とすることもできるし、電流センサ1A内にCPUおよびA/D変換器などで構成された不図示の処理部を設けて、処理部がA/D変換器を介して出力電圧Voの電圧値を検出すると共に、検出した出力電圧Voの電圧値の大小に基づいて第1切替部7および第2切替部8を切り替える構成(検出レートを自動で切り替える構成)とすることもできる。
【0047】
まず、検出電流I1の電流値が大きいことから、電圧変換部6aが帰還巻線4の他端4bと出力端子9との間に接続される接続状態に、切替部7が切り替えられているときには、電圧変換部6aが、切替部7の切替スイッチ7aを介して入力している負帰還電流I2を、第1検出抵抗13だけで第1検出電圧Vd1に変換すると共に、出力部12から切替部7の切替スイッチ7bを介して出力端子9へ出力する。このように、電流センサ1Aでは、検出電流I1の電流値が大きいために負帰還電流I2も大きくなり、検出抵抗だけで十分な電圧値の電圧に変換し得る場合には、増幅器を含まない構成の電圧変換部6aが、負帰還電流I2を第1検出抵抗13だけで(つまり、増幅器で発生するノイズの影響を受けない状態で)第1検出電圧Vd1に変換して、つまり、検出電流I1を第1検出レート(R1/n。本例では数値「1」)で第1検出電圧Vd1(=I1×R1/n)に変換して出力する。
【0048】
一方、検出電流I1の電流値が小さいことから、電圧変換部6bが帰還巻線4の他端4bと出力端子9との間に接続される接続状態に、切替部7が切り替えられているときには、電圧変換部6bが、切替部7の切替スイッチ7aを介して入力している負帰還電流I2を第2検出抵抗23および増幅器24で第2検出電圧Vd2に変換して、つまり、検出電流I1を第1検出レートよりも大きな第2検出レート(R2/n×k。本例では数値「10」)で第1検出電圧Vd1(=I1×R2/n×k)に変換すると共に、出力部22から切替部7の切替スイッチ7bを介して出力端子9へ出力する。以上のように、電流センサ1Aでは、検出電流I1の電流値が小さいために負帰還電流I2も小さくなり、検出抵抗だけでは十分な電圧値の電圧に変換し得ない場合には、増幅器24を含む構成の電圧変換部6bが、増幅器24で発生するノイズの影響を受けるものの、負帰還電流I2を十分な電圧値の第2検出電圧Vd2に変換して出力する。
【0049】
このように、この電流センサ1Aでは、検出電流I1の電流値が小さいために負帰還電流I2も小さくなり、検出抵抗だけでは十分な電圧値の電圧に変換し得ない場合には、増幅器24を含む構成の電圧変換部6bが、検出電流I1を第2検出レートで十分な電圧値の第2検出電圧Vd2に変換して出力するが、検出電流I1の電流値が大きいために負帰還電流I2も大きくなり、検出抵抗だけで十分な電圧値の電圧に変換し得る場合には、増幅器を含まない構成の電圧変換部6aが、検出電流I1を第2検出レートよりも小さな第1検出レートで十分な電圧値の第1検出電圧Vd1に変換して出力する。
【0050】
したがって、この電流センサ1Aによれば、いずれの検出レートにおいても検出抵抗で検出された検出電圧を増幅器(演算増幅器)で増幅して出力電圧として出力する構成を採用する従来の電流センサとは異なり、電流値の大きい検出電流I1については、増幅器を含まない構成の電圧変換部6aにおいて十分な電圧値の第1検出電圧Vd1に変換して出力することができる。すなわち、この電流センサ1Aによれば、検出レートを切り替え可能としつつ、1つの検出レート(第1検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、第1検出電圧Vd1を出力することができる。
【0051】
なお、出力端子を計測器に接続して使用される構成の電流センサでは、磁気コア、磁電変換部および帰還巻線が収納されたセンサユニットと、電圧変換部が収納されると共に計測器のコネクタに連結される出力端子が表面に配設された終端ユニットとに2分割して、ユニット相互間を接続ケーブル(同軸ケーブルやシールドケーブルなど)で連結する構成が公知となっており、この構成に電流センサ1Aを当てはめると図2のようになる。この場合、磁電変換部3は、温度変化の影響を受けやすいことから、演算増幅器などで構成されて、大きな電流値の負帰還電流I2を出力するときには発熱量も大きくなる電圧電流変換回路5については、磁電変換部3と同じセンサユニット51には収納せずに、終端ユニット52に収納される。
【0052】
しかしながら、終端ユニット52に収納された第1検出抵抗13については、小さな電流値の負帰還電流I2が流れる第2検出抵抗23とは異なり、より大きな電流値の負帰還電流I2が流れることから、発熱量も大きい。したがって、この大きな電流値の負帰還電流I2が流れるとき(第1検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路5と第1検出抵抗13とが同じ終端ユニット52に収納される図2の構成においては、終端ユニット52内の温度上昇が大きくなるおそれがあり、好ましくない。
【0053】
そこで、図3に示す電流センサ1Bでは、センサユニット51および終端ユニット52に加えて、中継ユニット53を有する構成を採用している。以下、電流センサ1Bについて説明する。なお、電流センサ1Aおよび図2に示す電流センサの構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
電流センサ1Bは、図3に示すように、磁気コア2、磁電変換部3、帰還巻線4、電圧電流変換回路5、2つの電圧変換部6a,6b、切替部7および出力端子9を備えている。また、センサユニット51には、磁気コア2、磁電変換部3および帰還巻線4が収納され、終端ユニット52には、電圧変換部6a,6bおよび切替部7が収納されると共に表面に出力端子9が配設され、かつ中継ユニット53には、電圧電流変換回路5が収納されている。また、中継ユニット53は、センサユニット51と第1接続ケーブルCB1(同軸ケーブルやシールドケーブルなど)を介して接続され、終端ユニット52は、中継ユニット53と第2接続ケーブルCB2(同軸ケーブルやシールドケーブルなど)を介して接続されている。また、中継ユニット53には、センサユニット51内における帰還巻線4の他端4bと終端ユニット52内における切替部7とを、各接続ケーブルCB1,CB2を介して接続するための伝送路TL1が収納されている。また、中継ユニット53内の電圧電流変換回路5は、第1接続ケーブルCB1を構成する2本の配線を介して、センサユニット51内の磁電変換部3と帰還巻線4の一端4aとの間に接続され、伝送路TL1の一端は、第1接続ケーブルCB1を構成する他の配線を介して帰還巻線4の他端4bに接続されている。また、伝送路TL1の他端は、第2接続ケーブルCB2を構成する配線を介して終端ユニット52内の切替部7に接続されている。
【0055】
電流センサ1Bは、上記したように、各構成要素がセンサユニット51、中継ユニット53および終端ユニット52に分けて収納されている構成については電流センサ1Aと相違するものの、基本構成(磁気コア2、磁電変換部3、帰還巻線4、電圧電流変換回路5、2つの電圧変換部6a,6b、切替部7および出力端子9を有する構成)については電流センサ1Aと同一であることから、電流センサ1Aと同一に動作する。
【0056】
この場合、中継ユニット53は、第1接続ケーブルCB1を介してセンサユニット51の磁電変換部3から電圧V1を入力すると共に、電圧電流変換回路5から出力される負帰還電流I2を第1接続ケーブルCB1を介してセンサユニット51における帰還巻線4の一端4aに出力する。また、中継ユニット53は、センサユニット51における帰還巻線4の他端4bから出力された負帰還電流I2を第1接続ケーブルCB1を介して入力すると共に、伝送路TL1を介して第2接続ケーブルCB2に出力する。一方、終端ユニット52では、切替部7が、第2接続ケーブルCB2を介して入力したこの負帰還電流I2を、電流センサ1Aと同様にして、電圧変換部6a,6bのいずれか一方に切り替えて出力すると共に、この一方の電圧変換部から出力される検出電圧(第1検出電圧Vd1または第2検出電圧Vd2)を出力端子9に出力する。
【0057】
これにより、電流センサ1Bは、被検出電線61に流れる検出電流I1を、第1検出レートおよび第2検出レートのうちの選択された任意の一方の検出レートで、第1検出電圧Vd1および第2検出電圧Vd2のうちのこの一方の検出レートに対応する一方の検出電圧に変換して、出力電圧Voとして出力端子9から出力する。
【0058】
したがって、この電流センサ1Bによっても、電流センサ1Aと同様にして、検出レートを切り替え可能としつつ、1つの検出レート(第1検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、検出電流I1を十分な電圧値の第1検出電圧Vd1に変換して出力することができる。また、この電流センサ1Bによれば、大きな電流値の負帰還電流I2が流れるとき(第1検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路5と第1検出抵抗13とが異なるユニット内に収納される構成のため(電圧電流変換回路5が中継ユニット53に収納され、第1検出抵抗13が終端ユニット52に収納される構成のため)、電圧電流変換回路5および第1検出抵抗13での各発熱を異なるユニットに分散させることができる。これにより、この電流センサ1Bによれば、中継ユニット53内の温度上昇および終端ユニット52内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、第1検出抵抗13の発熱による電圧電流変換回路5への影響を回避することができる。また、センサユニット51に配設された磁気コア2、磁電変換部3および帰還巻線4への第1検出抵抗13の発熱による影響についても回避することができる。
【0059】
また、上記の電流センサ1A,1Bでは、第1電圧変換部(検出抵抗だけで電流電圧変換回路が構成される電圧変換部)として1つの電圧変換部6aを有し、かつ第2電圧変換部(検出抵抗と増幅器で電流電圧変換回路が構成される電圧変換部)として1つの電圧変換部6bを有する構成であるが、この構成に限定されない。図示はしないが、検出抵抗だけで電流電圧変換回路が構成される第1電圧変換部を2以上有したり、また検出抵抗と増幅器とで電流電圧変換回路が構成される第2電圧変換部を2以上有する構成として、1回路n接点構造(nは3以上)の切替スイッチ7a,7bを有する切替部7が、これらの電圧変換部のうちの任意の1つの第1要素(電圧変換部)が帰還巻線4の他端4bと出力端子9との間に接続される接続状態に切り替える構成を採用することもできる。
【0060】
なお、上記の電流センサ1Bでは、大きな電流値の負帰還電流I2が流れるとき(第1検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路5と第1検出抵抗13とについて、電圧電流変換回路5だけを中継ユニット53に収納する構成を採用したが、電圧電流変換回路5と第1検出抵抗13とを異なるユニット内に収納する構成はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示す電流センサ1Cのように、センサユニット51に収納される磁気コア2、磁電変換部3および帰還巻線4を除く他の構成要素(電圧電流変換回路5、2つの電圧変換部6a,6b、切替部7および出力端子9)のうちの電圧変換部6aおよび出力端子9だけを終端ユニット52に収納し、残りの構成要素(電圧電流変換回路5、電圧変換部6bおよび切替部7)を中継ユニット53に収納する構成を採用することもできる。以下、電流センサ1Cについて説明する。なお、電流センサ1Bの構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0061】
この電流センサ1Cの中継ユニット53は、第1接続ケーブルCB1を介してセンサユニット51の磁電変換部3から電圧V1を入力すると共に、電圧電流変換回路5から出力される負帰還電流I2を第1接続ケーブルCB1を介してセンサユニット51における帰還巻線4の一端4aに出力する。また、中継ユニット53は、センサユニット51における帰還巻線4の他端4bから出力された負帰還電流I2を第1接続ケーブルCB1を介して入力する。
【0062】
この場合、切替部7の切替スイッチ7a,7bが連動して切り替えられる構成であることから、切替スイッチ7aが負帰還電流I2を伝送路TL1の一端に切り替えて出力する切替状態のときには、切替スイッチ7bは伝送路TL1の他端を第2接続ケーブルCB2を介して終端ユニット52に接続する切替状態となる。また、切替スイッチ7aが負帰還電流I2を電圧変換部6bの入力部21に切り替えて出力する切替状態のときには、切替スイッチ7bは電圧変換部6bの出力部22を第2接続ケーブルCB2を介して終端ユニット52に接続する切替状態となる。この構成により、中継ユニット53では、切替部7が、この負帰還電流I2を第2電圧変換部6bおよび伝送路TL1のいずれか一方の第1要素に切り替えて出力(供給)すると共に、この一方の第1要素が第2電圧変換部6bのときにはこの第2電圧変換部6bから出力される信号としての第2検出電圧Vd2を、またこの一方の第1要素が伝送路TL1のときにはこの伝送路TL1から出力される信号としての負帰還電流I2を第2接続ケーブルCB2を介して終端ユニット52の第1電圧変換部6aに出力(供給)する。
【0063】
一方、終端ユニット52では、第1電圧変換部6aが、中継ユニット53から第2接続ケーブルCB2を介して負帰還電流I2を入力したときには、第1検出抵抗13(抵抗値R1)で第1検出電圧Vd1(=I2×R1)に変換して、出力電圧Voとして出力端子9に出力する。この第1検出電圧Vd1は、第1検出レート(R1/n)を用いて、(I1×R1/n)と表される。
【0064】
また、第1電圧変換部6aは、中継ユニット53から第2接続ケーブルCB2を介して第2検出電圧Vd2を入力したときには、第2検出電圧Vd2を出力電圧Voとして出力端子9に出力する。
【0065】
この場合、電圧変換部6bの出力抵抗25の抵抗値Roが第1電圧変換部6aを構成する第1検出抵抗13の抵抗値R1に対して無視し得る小さな値の場合には、第1電圧変換部6aは、第2検出電圧Vd2をそのまま出力電圧Voとして出力端子9に出力する。つまり、検出電流I1は、第2検出レート(R2/n×k)で第2検出電圧Vd2(=I1×R2/n×k)に変換されて、出力電圧Voとして出力される。一方、本例のように、電圧変換部6bの出力抵抗25の抵抗値Ro(本例では50Ω)が第1電圧変換部6aを構成する第1検出抵抗13の抵抗値R1(本例では50Ω)に対して無視できない値のときには、第1電圧変換部6aは、第1検出抵抗13と出力抵抗25とで分圧された第2検出電圧Vd2を出力電圧Voとして出力端子9に出力する。つまり、検出電流I1は、上記の第2検出レートとは異なる第2検出レート(R2/n×k×R1/(R1+Ro))で、第2検出電圧Vd2、さらには第1検出電圧Vd1(=I1×R2/n×k×R1/(R1+Ro))に変換されて、出力電圧Voとして出力される。このため、この電流センサ1Cでは、k=20とすることで、第2検出レートを電流センサ1A,1Bでの第2検出レート(数値「10」)に揃えることが可能となる。
【0066】
したがって、この電流センサ1Cによっても、電流センサ1Aと同様にして、検出レートを切り替え可能としつつ、1つの検出レート(第1検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、検出電流I1を十分な電圧値の第1検出電圧Vd1に変換して出力することができる。また、この電流センサ1Cによれば、大きな電流値の負帰還電流I2が流れるとき(第1検出レートのとき)に、発熱量が共に大きくなる電圧電流変換回路5と第1検出抵抗13とが異なるユニット内に収納される構成のため(電圧電流変換回路5が中継ユニット53に収納され、第1検出抵抗13が終端ユニット52に収納される構成のため)、電圧電流変換回路5および第1検出抵抗13での各発熱を異なるユニットに分散させることができる。これにより、この電流センサ1Cによれば、中継ユニット53内の温度上昇および終端ユニット52内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、この電流センサ1Cによれば、電圧電流変換回路5および電流電圧変換回路(第2検出抵抗23と増幅器24とで構成される回路:電圧変換部6b)が第1検出抵抗13とは異なる中継ユニット53内に収納されているため、第1検出抵抗13の発熱に起因して平均温度がより高くなる傾向にある終端ユニット52内に収納される構成とは異なり、電圧電流変換回路5および電流電圧変換回路の増幅器24への第1検出抵抗13の発熱による影響を回避することができる。
【0067】
また、上記の各電流センサ1A,1B,1Cでは、複数の検出レートを切り替え可能とする構成の一例として、第1検出レートおよび第2検出レートの2つの検出レートを切り替え可能とする構成を採用したが、3つの検出レートを切り替え可能とする構成とすることもできる。以下、センサユニット51、中継ユニット53および終端ユニット52を備えた各電流センサ1B,1Cをベースとして、3つの検出レートを切り替え可能に構成された電流センサ1D,1Eについて説明する。なお、電流センサ1B,1Cの構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0068】
まず、電流センサ1Bをベースとして、3つの検出レートを切り替え可能に構成された電流センサ1Dについて図5を参照して説明する。なお、以下、電流センサ1Bと相違する終端ユニット52の構成について説明する。
【0069】
この終端ユニット52には、電圧変換部6a,6b、切替部7および出力端子9に加えて、電圧変換部6c(他の第1電圧変換部)が収納されている。また、切替部7を構成する切替スイッチ7a,7bは、例えば1回路3接点構造の切替スイッチとして構成されて、切替部7は、3つの電圧変換部6a,6b,6cのうちの任意の1つの第1要素が第2接続ケーブルCB2と出力端子9との間に接続される接続状態に切り替える。
【0070】
電圧変換部6cは、入力部31が第1切替部7に接続されて、第1切替部7から入力部31に負帰還電流I2が出力されているときにはこの負帰還電流I2を第3検出電圧Vd3に変換して、出力部32から出力電圧Voとして出力する。第1電圧変換部としての電圧変換部6cは、本例では一例として、予め規定された抵抗値R3(例えば、5Ω)の第3検出抵抗33で構成されている。第3検出抵抗33は、一端が入力部31および出力部32に接続され、他端が電流センサ1Dにおける基準電位の部位(グランドG)に接続されている。この構成により、電圧変換部6cは、入力部31に入力される負帰還電流I2を、第3検出抵抗33(抵抗値R3)で第3検出電圧Vd3(=I2×R3)に変換して、そのまま出力部12から出力電圧Voとして出力する。また、第3検出電圧Vd3は、抵抗値R3および巻回数nで規定される第3検出レート(R3/n)を用いて、(I1×R3/n)と表される。本例では、R3=5Ωで、かつn=50であることから、電圧変換部6cは、第3検出レート(数値「0.1」)で、検出電流I1を第3検出電圧Vd3に変換する。
【0071】
この構成により、この電流センサ1Dでは、電流センサ1A,1Bでの2つの第1検出レート(数値「1」)および第2検出レート(数値「10」)に、第3検出レート(数値「0.1」)を加えた3つの検出レートのうちのいずれかに切り替えて、負帰還電流I2を出力電圧Voに変換することが可能となっている。したがって、この電流センサ1Dによれば、3つの検出レートを切り替え可能としつつ、そのうちの2つの検出レート(第1検出レートおよび第3検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、検出電流I1を第1検出電圧Vd1や第3検出電圧Vd3に変換して出力することができる。また、電流センサ1Dにおいても、電流センサ1Bと同様にして、電圧電流変換回路5での発熱と、第1検出抵抗13および第3検出抵抗33での発熱とを、異なるユニットに分散させる構成のため、中継ユニット53内の温度上昇および終端ユニット52内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、第1検出抵抗13および第3検出抵抗33の発熱による電圧電流変換回路5への影響を回避することができる。
【0072】
次に、電流センサ1Cをベースとして、3つの検出レートを切り替え可能に構成された電流センサ1Eについて図6を参照して説明する。なお、以下、電流センサ1Cと相違する終端ユニット52の構成について説明する。
【0073】
この終端ユニット52には、電圧変換部6aおよび出力端子9に加えて、電圧変換部6c(他の第1電圧変換部)および第2切替部8(以下、単に切替部8ともいう)が収納されている。また、切替部8は切替部7と同様に1回路2接点構造の切替スイッチ8a,8bで構成されて、切替スイッチ8aは、第2接続ケーブルCB2と各電圧変換部6a,6cの入力部11,31との間に配設され、切替スイッチ8bは、各電圧変換部6a,6cの出力部12,32と出力端子9との間に配設されている。この構成により、切替部8は、切替スイッチ8a,8bが連動して切り替えられることで、2つの電圧変換部6a,6cのうちの任意の1つの第2要素が第2接続ケーブルCB2と出力端子9との間に接続される接続状態に切り替える。また、電圧変換部6cは、上記した電流センサ1Dと同一に構成されている。
【0074】
この構成の電流センサ1Eでは、切替部7は、帰還巻線4の他端4bから出力される負帰還電流I2を、第2検出抵抗23と増幅器24とで構成される電流電圧変換回路を有する電圧変換部6bおよび伝送路TL1のうちの任意の一方の第1要素に切り替えて出力(供給)すると共に、この一方の第1要素から出力される信号を第2接続ケーブルCB2を介して切替部8に出力(供給)する。また、切替部8は、切替部7から供給される信号を、第1検出抵抗13(電圧変換部6a)および第3検出抵抗33(電圧変換部6c)のうちの任意の一方の第2要素に切り替えて供給すると共に、この一方の第2要素から出力される信号を出力端子9に出力する。
【0075】
具体的には、電流センサ1Eは、切替部7が一方の第1要素として伝送路TL1に切り替えた切替状態で、かつ切替部8が一方の第2要素として第1検出抵抗13に切り替えた切替状態では、第1検出抵抗13が、伝送路TL1から供給される負帰還電流I2を第1検出電圧Vd1に変換して出力端子9に出力電圧Voとして出力する。また、電流センサ1Eは、切替部7が一方の第1要素として電圧変換部6b(第2検出抵抗23と増幅器24とで構成される電流電圧変換回路)に切り替えた切替状態で、かつ切替部8が一方の第2要素として第1検出抵抗13に切り替えた切替状態では、電圧変換部6bおよび第1検出抵抗13が、負帰還電流I2を第1検出抵抗13よりも大きな抵抗値R2の第2検出抵抗23で電圧に変換すると共に増幅することにより、第2検出電圧Vd2に変換して出力端子9に出力電圧Voとして出力する。また、電流センサ1Eは、切替部7が一方の第1要素として伝送路TL1に切り替えた切替状態で、かつ切替部8が一方の第2要素として第3検出抵抗33に切り替えた切替状態では、第3検出抵抗33が、負帰還電流I2を第1検出抵抗13よりも小さな抵抗値R3の第3検出抵抗33で第3検出電圧Vd3に変換して出力端子9に出力電圧Voとして出力する。
【0076】
この構成により、この電流センサ1Eでは、電流センサ1Cでの2つの第1検出レート(数値「1」)および第2検出レート(数値「10」)に、第3検出レート(数値「0.1」)を加えた3つの検出レートのうちのいずれかに切り替えて、検出電流I1を出力電圧Voに変換することが可能となっている。
【0077】
また、この電流センサ1Eにおいても、電流センサ1Cと同様にして、検出レートを切り替え可能としつつ、2つの検出レート(第1検出レートおよび第3検出レート)においては、増幅器を含まない構成で、すなわち増幅器で発生するノイズの影響を受けずに、検出電流I1を第1検出電圧Vd1や第3検出電圧Vd3に変換して出力することができる。また、電流センサ1Eにおいても、電流センサ1Cと同様にして、電圧電流変換回路5での発熱と、第1検出抵抗13および第3検出抵抗33での発熱とを、異なるユニットに分散させる構成のため、中継ユニット53内の温度上昇および終端ユニット52内の温度上昇を共に低く抑えることができる。また、この電流センサ1Eによれば、電圧電流変換回路5および電流電圧変換回路(第2検出抵抗23と増幅器24とで構成される回路:電圧変換部6b)が第1検出抵抗13および第3検出抵抗33とは異なる中継ユニット53内に収納されているため、第1検出抵抗13および第3検出抵抗33の発熱に起因して平均温度がより高くなる傾向にある終端ユニット52内に収納される構成とは異なり、電圧電流変換回路5および電流電圧変換回路の増幅器24への第1検出抵抗13の発熱による影響を回避することができる。
【0078】
また、電流センサ1Aにおいて説明したように、他の電流センサ1B~1Eについても、CPUおよびA/D変換器などで構成された不図示の処理部を設けて、処理部がA/D変換器を介して出力電圧Voの電圧値を検出すると共に、検出した出力電圧Voの電圧値の大小に基づいて切替部7(電流センサ1Eでは、さらに切替部8)を切り替える処理(検出レートを自動で切り替える検出レートの自動切替え処理)を実行するようにすることもできる。
【0079】
さらには、電流センサ1A~1Eについて、CPUおよびA/D変換器に加えて、D/A変換器を備えた処理部を設けて、処理部が、上記の検出レートの自動切替え処理と共に、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセットや、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセットを調整するオフセット調整処理を実行するようにすることもできる。以下、電流センサ1Eをベースとして、この処理部を備えた構成の電流センサ1Fについて図7を参照して説明する。なお、電流センサ1Eの構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0080】
この電流センサ1Fは、上記した電流センサ1Eの構成に加えて、バッファ16および処理部17を備えている。バッファ16は、第2接続ケーブルCB2の電圧を高入力インピーダンスで検出して、処理部17に出力する。
【0081】
処理部17は、CPU17a、A/D変換器(図7では単に「A/D」と表記するものとする)17b、および2つのD/A変換器(図7では単に「D/A」と表記するものとする)17c,17dを備えている。A/D変換器17bは、バッファ16から出力される電圧(一例として、第2接続ケーブルCB2の電圧と同じ電圧値の電圧)を、その電圧値を示す電圧データD1に変換してCPU17aに出力する。
【0082】
CPU17aは、検出レートの自動切替え処理において、切替部7を切り替えるための制御信号S1を出力すると共に、切替部8を切り替えるための制御信号S2を出力する。この制御信号S2については、第2接続ケーブルCB2を介して終端ユニット52に出力される。また、CPU17aは、オフセット調整処理において、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセットを調整するための調整データD2をD/A変換器17cに出力し、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセットを調整するための調整データD3をD/A変換器17dに出力する。D/A変換器17cは、CPU17aから入力した調整データD2を調整電圧S3に変換して、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセット調整端子に出力する。また、D/A変換器17dは、CPU17aから入力した調整データD3を調整電圧S4に変換して、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセット調整端子に出力する。
【0083】
次いで、オフセット調整処理について具体的に説明する。
【0084】
最初に、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセット調整について説明する。この場合、磁気コア2に被検出電線61が挿入されていない状態において、CPU17aは、まず、伝送路TL1側に切り替えるための制御信号S1を切替部7に出力し、電圧変換部6a側に切り替えるための制御信号S2を切替部8に出力する。これにより、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセットに起因する負帰還電流I2が、中継ユニット53からセンサユニット51に出力され、次いで、中継ユニット53を経由して終端ユニット52に出力されて、電圧変換部6aにおいて第1検出電圧Vd1に変換される。
【0085】
CPU17aは、バッファ16およびA/D変換器17bを介して入力される電圧データD1に基づいて、第1検出電圧Vd1の電圧値を検出しつつ、この第1検出電圧Vd1の電圧値がゼロに近づくように、調整電圧S3用の調整データD2を変更してD/A変換器17cに出力する。D/A変換器17cは、この調整データD2を調整電圧S3に変換して、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセット調整端子に出力する。CPU17aは、検出している第1検出電圧Vd1の電圧値がゼロになるまで、D/A変換器17cへの調整データD2の変更を繰り返す。また、CPU17aは、第1検出電圧Vd1の電圧値がゼロになった時点での調整データD2を記憶すると共に、この調整データD2のD/A変換器17cへの出力を継続する。これにより、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセット調整端子への調整電圧S3の電圧値が、第1検出電圧Vd1の電圧値がゼロになった時点での電圧値に維持される。つまり、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセットがゼロの状態に維持される。これにより、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセット調整が完了する。
【0086】
なお、CPU17aがバッファ16およびA/D変換器17bを介して検出している第1検出電圧Vd1(の電圧データD1)には、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセットだけでなく、磁電変換部3において生じるオフセットに起因して生じる電圧も含まれていることから、この電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器のオフセット調整においては、結果として、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器および磁電変換部3全体でのオフセット調整が完了する。
【0087】
次に、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセット調整について説明する。この場合、上記のようにして、電圧電流変換回路5を構成する演算増幅器および磁電変換部3全体でのオフセット調整が完了し、かつ磁気コア2に被検出電線61が挿入されていない状態において、CPU17aは、まず、電圧変換部6b側に切り替えるための制御信号S1を切替部7に出力し、電圧変換部6a側に切り替えるための制御信号S2を切替部8に出力する。これにより、電圧変換部6bは、オフセット調整が完了した状態の電圧電流変換回路5から出力される負帰還電流I2を第2検出電圧Vd2に変換して出力する。このときの負帰還電流I2はゼロアンペアであることから、第2検出電圧Vd2は、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセットに起因する電圧となっている。
【0088】
CPU17aは、バッファ16およびA/D変換器17bを介して入力される電圧データD1に基づいて、第2検出電圧Vd2の電圧値を検出しつつ、この第2検出電圧Vd2の電圧値がゼロに近づくように、調整電圧S4用の調整データD3を変更してD/A変換器17dに出力する。D/A変換器17dは、この調整データD3を調整電圧S4に変換して、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセット調整端子に出力する。CPU17aは、検出している第2検出電圧Vd2の電圧値がゼロになるまで、D/A変換器17dへの調整データD3の変更を繰り返す。また、CPU17aは、第2検出電圧Vd2の電圧値がゼロになった時点での調整データD3を記憶すると共に、この調整データD3のD/A変換器17dへの出力を継続する。これにより、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセット調整端子への調整電圧S4の電圧値が、第2検出電圧Vd2の電圧値がゼロになった時点での電圧値に維持される。つまり、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセットがゼロの状態に維持される。これにより、増幅器24を構成する演算増幅器のオフセット調整が完了する。
【0089】
次に、検出レートの自動切替え処理について具体的に説明する。なお、電流センサ1Eをベースとするこの電流センサ1Fには、中継ユニット53の伝送路TL1を経由して終端ユニット52内の電圧変換部6cに負帰還電流I2を供給したときの第3検出レート(数値「0.1」)と、中継ユニット53の伝送路TL1を経由して終端ユニット52内の電圧変換部6aに負帰還電流I2を供給したときの第1検出レート(数値「1」)と、中継ユニット53の電圧変換部6bに負帰還電流I2を供給すると共にこの電圧変換部6bから出力される電圧を終端ユニット52内の電圧変換部6aに供給したときの第2検出レート(数値「10」)の3つの検出レートが存在している。したがって、この電流センサ1Fは、最も低い第3検出レートの検出レンジ(最も大きな検出電流I1を検出し得る最大検出レンジ)と、2番目に低い第1検出レートの検出レンジ(2番目に大きな検出電流I1を検出し得る中間検出レンジ)と、最も高い第2検出レートの検出レンジ(最も小さな検出電流I1を検出し得る最小検出レンジ)の3つの検出レンジを備えている。
【0090】
この検出レートの自動切替え処理では、CPU17aは、バッファ16およびA/D変換器17bを介して入力される電圧データD1に基づいて、現在の検出レンジでの検出電圧(検出電圧Vd1,Vd2,Vd3のいずれか)を検出しつつ、この検出電圧が、出力電圧Voに対して予め規定されているレンジアップ電圧範囲(例えば、出力電圧Voの最大電圧値の90%以上となる電圧範囲)やレンジダウン電圧範囲(例えば、出力電圧Voの最大電圧値の10%以下となる電圧範囲)に含まれるか否かを判別する。
【0091】
CPU17aは、この判別の結果、検出電圧がレンジアップ電圧範囲に含まれていて、かつ現在の検出レンジの上の検出レンジが存在しているときには、切替部7に制御信号S1を出力すると共に、切替部8に制御信号S2を出力して、この上の検出レンジとなるように(検出レートが1段低くなるように)、切替部7および切替部8を連動して切り替える。また、CPU17aは、この判別の結果、検出電圧がレンジダウン電圧範囲に含まれていて、かつ現在の検出レンジの下の検出レンジが存在しているときには、切替部7に制御信号S1を出力すると共に、切替部8に制御信号S2を出力して、この下の検出レンジとなるように(検出レートが1段高くなるように)、切替部7および切替部8を連動して切り替える。また、CPU17aは、この判別の結果、検出電圧がレンジアップ電圧範囲およびレンジダウン電圧範囲のいずれにも含まれていないときには、切替部7に出力している制御信号S1、並びに切替部8に出力している制御信号S2を現状の状態に維持して(つまり、切替部7および切替部8を切り替えずに)、現在の検出レンジを維持する(つまり、現在の検出レートを維持する)。
【0092】
この電流センサ1Fでは、上記したように、電圧電流変換回路5および増幅器24が収納された中継ユニット53にバッファ16および処理部17を配設したことにより、中継ユニット53と終端ユニット52とを接続する第2接続ケーブルCB2の信号線を、負帰還電流I2および検出電圧(検出電圧Vd1,Vd2,Vd3のいずれか)を伝送する信号線以外に、制御信号S2のための信号線だけで済ますことができる。
【0093】
また、上記した各電流センサ1A,1B,1C,1E,1Fにおいて、第1検出抵抗13の抵抗値R1および第2検出抵抗23の抵抗値R2を一例として50Ωとしたのは、第1検出抵抗13は、帰還巻線4の他端4bから第1検出抵抗13を含む電圧変換部6aまでの線路(区別のため、以下では第1線路ともいう)の終端抵抗として機能し、また第2検出抵抗23は、帰還巻線4の他端4bから第2検出抵抗23を含む電圧変換部6bまでの線路(区別のため、以下では第2線路ともいう)の終端抵抗として機能することから、インピーダンス整合のため、第1線路および第2線路の各特性インピーダンス(50Ω)と同等となるように規定したものである。
【0094】
この場合、図1,2に示す電流センサ1Aでは、第1線路とは、帰還巻線4の他端4bから、切替スイッチ7a(電流センサ1Aがセンサユニット51と終端ユニット52とに2分割されて、相互間が接続ケーブルCBで接続されているときには、接続ケーブルCBおよび切替スイッチ7a)を経由して電圧変換部6aの入力部11に至る(実質的に電圧変換部6aの第1検出抵抗13に至る)までの線路である。また、第2線路とは、帰還巻線4の他端4bから、切替スイッチ7a(または、接続ケーブルCBおよび切替スイッチ7a)を経由して電圧変換部6bの入力部21に至る(実質的に電圧変換部6bの第2検出抵抗23に至る)までの線路である。
【0095】
また、図3に示す電流センサ1Bおよび図5に示す電流センサ1Dでは、第1線路とは、帰還巻線4の他端4bから、第1接続ケーブルCB1、伝送路TL1、第2接続ケーブルCB2、および切替スイッチ7aを経由して電圧変換部6aの入力部11に至るまでの線路である。また、第2線路とは、帰還巻線4の他端4bから、第1接続ケーブルCB1、伝送路TL1、第2接続ケーブルCB2、および切替スイッチ7aを経由して電圧変換部6bの入力部21に至るまでの線路である。
【0096】
また、図4に示す電流センサ1Cでは、第1線路とは、帰還巻線4の他端4bから、第1接続ケーブルCB1、切替スイッチ7a、伝送路TL1、切替スイッチ7b、および第2接続ケーブルCB2を経由して電圧変換部6aの入力部11に至るまでの線路である。また、第2線路とは、帰還巻線4の他端4bから、第1接続ケーブルCB1および切替スイッチ7aを経由して電圧変換部6bの入力部21に至るまでの線路である。
【0097】
また、図6に示す電流センサ1Eおよび図7に示す電流センサ1Fでは、第1線路とは、帰還巻線4の他端4bから、第1接続ケーブルCB1、切替スイッチ7a、伝送路TL1、切替スイッチ7b、第2接続ケーブルCB2、および切替スイッチ8aを経由して電圧変換部6aの入力部11に至るまでの線路である。また、第2線路とは、帰還巻線4の他端4bから、第1接続ケーブルCB1および切替スイッチ7aを経由して電圧変換部6bの入力部21に至るまでの線路である。
【0098】
この構成により、上記した各電流センサ1A,1B,1C,1D,1E,1Fによれば、負帰還電流I2を第1検出電圧Vd1に変換する第1検出抵抗13の抵抗値R1が、この第1検出抵抗13に負帰還電流I2を供給する第1線路の特性インピーダンス(50Ω)に規定されているため、第1検出電圧Vd1についての波形歪みを低く抑えることができる。また、検出電流I1が交流信号のときの負帰還電流I2は、検出電流I1と同じ周波数の交流信号となり、第1線路とグランドGとの間に浮遊容量が存在する場合には、第1検出抵抗13およびこの浮遊容量の並列回路の合成インピーダンスで、第1検出電圧Vd1に変換される。この場合、この並列回路での第1検出電圧Vd1への変換は、浮遊容量の容量値Cと第1検出抵抗13の抵抗値R1との乗算値(C・R1)で表されるパラメータの影響を受けて、負帰還電流I2の周波数が高くなる程、第1検出電圧Vd1の電圧値が低下する(つまり、負帰還電流I2の検出帯域が制限される)。しかしながら、上記の各電流センサ1A,1B,1C,1D,1E,1Fによれば、並列回路を構成する第1検出抵抗13の抵抗値R1が50Ωと低い値であることから、乗算値(C・R1)による検出帯域の制限の影響を低くすることができ、負帰還電流I2の検出帯域をより高い周波数まで広げることができる。
【0099】
また、この各電流センサ1A,1B,1C,1D,1E,1Fによれば、負帰還電流I2を第2検出電圧Vd2に変換する電圧変換部6bに含まれる第2検出抵抗23(第2線路の終端抵抗)の抵抗値R2が、この第2検出抵抗23に負帰還電流I2を供給する第2線路の特性インピーダンス(50Ω)に規定されているため、第2検出抵抗23の両端間電圧、ひいては電圧変換部6bから出力される第2検出電圧Vd2についての波形歪みを低く抑えることができる。
【0100】
また、各電流センサ1A,1B,1C,1D,1E,1Fでは、第1検出レートのときには、第1検出電圧Vd1がそのまま出力電圧Voとして出力端子9から外部に出力される構成のため、第1検出レートのときの出力電圧Voについての波形歪みを低く抑えることができる。また、各電流センサ1A,1B,1Dでは、第2検出レートのときには、第2検出電圧Vd2がそのまま出力電圧Voとして出力端子9から外部に出力される構成のため、第2検出レートのときの出力電圧Voについての波形歪みを低く抑えることができる。
【0101】
また、各電流センサ1C,1E,1Fでは、第2検出レートのときには、第2検出電圧Vd2は他の抵抗としての第1検出抵抗13で終端された線路を介して出力端子9から出力電圧Voとして外部に出力される構成であるが、この線路(電流センサ1Cでは図4に示すように、電圧変換部6bの出力部22から、切替スイッチ7bおよび第2接続ケーブルCB2を経由して第1検出抵抗13に至る線路であり、電流センサ1E,1Fでは図6,7に示すように、電圧変換部6bの出力部22から、切替スイッチ7b、第2接続ケーブルCB2および切替スイッチ8aを経由して第1検出抵抗13に至る線路である。以下、負帰還電流I2を伝送する第1線路および第2線路と区別するため、電圧伝送線路ともいう)は、図4,6,7に示すように、上記した第1線路の一部とほぼ重複する。このため、この電圧伝送線路は、その特性インピーダンスが第1線路の特性インピーダンスと同等に規定されている。したがって、電圧変換部6bからこの線路に出力された第2検出電圧Vd2は、波形歪みが低く抑えられた状態で第1検出抵抗13まで伝送されて、出力電圧Voとして出力される。したがって、各電流センサ1C,1E,1Fにおいても、第2検出レートのときの出力電圧Voについての波形歪みを低く抑えることができる。
【0102】
また、各電流センサ1C,1E,1Fでは、電圧変換部6bの出力抵抗25の抵抗値Roを、上記の電圧伝送線路の特性インピーダンスと同等(本例では50Ω)に規定したときには、電圧変換部6bの出力インピーダンスが電圧伝送線路の特性インピーダンスと整合する状態となる。このため、この構成の各電流センサ1C,1E,1Fによれば、第2検出レート(R2/n×k×R1/(R1+Ro))のときに、電圧変換部6bから出力された第2検出電圧Vd2を、電圧伝送線路を介して第1検出抵抗13まで波形歪みを一層低く抑えた状態で伝送することができる。
【0103】
なお、上記の電圧伝送線路については、第1線路の一部と重複しない部位(電圧変換部6bの出力部22から切替スイッチ7bまでの部位)での特性インピーダンスを、第1線路の特性インピーダンスと同等にできない構成を採用せざるを得ないときであっても、主たる部位(第2接続ケーブルCB2)が共通のため、出力電圧Voについての波形歪みを低く抑えることが可能となっている。
【0104】
また、本例の電流センサ1D,1E,1Fでは、上記したように、第3検出レートのときに負帰還電流I2が伝送される線路(帰還巻線4の他端4bから第3検出抵抗33を含む電圧変換部6cまでの線路。区別のため、以下では第3線路ともいう)は、第1検出レートのときに負帰還電流I2が伝送される第1線路全体とほぼ全体に亘って重複することから、その特性インピーダンスは第1線路の特性インピーダンス(50Ω)と同等に構成されている。一方、この第3線路の終端抵抗として機能する第3検出抵抗33の抵抗値R3は本例では5Ωである。このため、第3検出レートのときには、第3検出抵抗33の抵抗値R3は、第3線路の特性インピーダンスと整合が取れていない状態となっている。
【0105】
しかしながら、第1検出レートや第2検出レートのときの出力電圧Voについての波形歪みの低減よりも、第3検出レートのときの出力電圧Voについての波形歪みの低減を重視するときには、第3検出抵抗33の抵抗値R3を第3線路の特性インピーダンス(50Ω)に規定する構成を採用してもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 電流センサ
2 磁気コア
3 磁電変換部
4 帰還巻線
5 電圧電流変換回路
6a,6b 電圧変換部
7 第1切替部
8 第2切替部
9 出力端子
13 第1検出抵抗
23 第2検出抵抗
33 第3検出抵抗
61 検出導体
I1 検出電流
I2 負帰還電流
Vd1 第1検出電圧
Vd2 第2検出電圧
Vd3 第3検出電圧
Vo 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7