(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】反射方向の決定方法、中継局、および基地局
(51)【国際特許分類】
H04B 17/309 20150101AFI20230206BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20230206BHJP
H04B 17/40 20150101ALI20230206BHJP
H04B 7/145 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
H04B17/309
H04W16/26
H04B17/40
H04B7/145
(21)【出願番号】P 2019178475
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175342(JP,A)
【文献】特開2009-278372(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097954(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0067826(US,A1)
【文献】特開2019-009531(JP,A)
【文献】特開2015-053584(JP,A)
【文献】特開2007-143044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/309
H04W 16/26
H04B 17/40
H04B 7/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局が携帯端末と通信するための通信信号を
第1の領域および第2の領域を含む複数の領域に
反射板を介さずに向かう複数の方向
と、前記反射板に向かう方向とに送信するステップと、
前記
反射板に向かう方向に送信された前記通信信号を反射する
前記反射板の反射方向を、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第1の領域へと向かう第1反射方向に設定するステップと、
前記反射板が前記第1反射方向に向いている状態の予め定められた期間において
、前記第1反射方向に位置しており前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた第1累積受信電力を測定するステップと、
前記反射板の反射方向を前記第1反射方向とは異なる方向であって、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第2の領域へと向かう第2反射方向に切り換えるステップと、
前記反射板の反射方向を前記第2反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において、
前記第2反射方向に位置しており前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた第2累積受信電力を測定するステップと、
前記第1累積受信電力と前記第2累積受信電力とを比較
して、累積受信電力が大きい方に前記反射板の反射方向を決定するステップと
を備える、反射方向の決定方法。
【請求項2】
前記反射板の反射方向を前記第1反射方向および前記第2反射方向とは異なる1または複数の方向に切り換え、
前記反射板の反射方向を切り換える毎に、一の反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において、前記携帯端末が前記通信信号を受信した累積受信電力を測定するステップと、
を更に備え、
前記反射板の反射方向を決定するステップは、前記累積受信電力が最大となる反射方向に前記反射板の反射方向を決定する、請求項1に記載の反射方向の決定方法。
【請求項3】
基地局が携帯端末と通信するための通信信号を
第1の領域および第2の領域を含む複数の領域に
反射板を介さずに向かう複数の方向
と、前記反射板に向かう方向とに送信するステップと、
前記
反射板に向かう方向に送信された前記通信信号を反射する反射板の反射方向を、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第1の領域へと向かう第1反射方向に設定するステップと、
前記反射板が前記第1反射方向に向いている状態の予め定められた期間において
、前記第1反射方向に位置しており前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた第1受信情報を取得するステップと、
前記反射板の反射方向を前記第1反射方向とは異なる方向であって、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第2の領域へと向かう第2反射方向に切り換えるステップと、
前記反射板の反射方向を前記第2反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において
、前記第2反射方向に位置しており前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた第2受信情報を取得するステップと、
前記第1受信情報と前記第2受信情報とを比較
して、チャネル品質が低下している方に前記反射板の反射方向を決定するステップと
を備える、反射方向の決定方法。
【請求項4】
前記第1受信情報および前記第2受信情報は、予め定められた前記期間におけるチャネル品質指標(CQI)であり、
前記反射板の反射方向を決定するステップは、前記CQIの平均値、最低値、および中央値のいずれかを用いて前記反射板の反射方向を決定する、請求項3に記載の反射方向の決定方法。
【請求項5】
前記第2反射方向に切り換えるステップは、複数の反射方向とそれぞれの反射方向に切り換える順番とが予め対応付けられて記憶されているパターンセット情報に基づいて前記第2反射方向を決定して切り換える、請求項1から4のいずれか一項に記載の反射方向の決定方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の反射方向の決定方法を、
予め定められた周期で実行して前記反射板の反射方向を更新する、反射方向の決定方法。
【請求項7】
基地局から携帯端末と通信するための通信信号を中継する中継局であって、
前記通信信号を反射する方向である反射方向を変化させることができる反射板と、
前記反射板の反射方向を切り換える切換部と、
反射方向を固定した状態で予め定められた期間において
、前記反射板の反射方向に位置しており前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた累積受信電力を測定する測定部と、
複数の反射方向毎に測定した前記累積受信電力の測定結果に基づき、前記反射板の反射方向を決定する決定部と
を備え、
前記基地局は、前記通信信号を
第1の領域および第2の領域を含む複数の領域に
前記反射板を介さずに向かう複数の方向
と、前記反射板に向かう方向とに送信し、
前記反射板が変化させることができる前記反射方向は、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第1の領域へと向かう第1反射方向と、前記第1反射方向とは異なる方向であって前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第2の領域へと向かう第2反射方向とを含む、
中継局。
【請求項8】
基地局から携帯端末と通信するための通信信号を中継する中継局であって、
前記通信信号を反射する方向である反射方向を変化させることができる反射板と、
前記反射板の反射方向を切り換える切換部と、
反射方向を固定した状態で予め定められた期間において
、前記反射板の反射方向に位置しており前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた受信情報を取得する取得部と、
複数の反射方向毎に取得した前記受信情報に基づき、前記反射板の反射方向を決定する決定部と
を備え、
前記基地局は、前記通信信号を
第1の領域および第2の領域を含む前記反射板を介さずに複数の領域に向かう複数の方向
と、前記反射板に向かう方向とに送信し、
前記反射板が変化させることができる前記反射方向は、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第1の領域へと向かう第1反射方向と、前記第1反射方向とは異なる方向であって前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第2の領域へと向かう第2反射方向とを含む、
中継局。
【請求項9】
携帯端末と通信するための通信信号を中継する中継局と、
第1の領域および第2の領域を含む複数の領域に
反射板を介さずに向かう複数の方向とに前記通信信号を送信する基地局であって、
前記中継局は、
前記通信信号を反射する方向である反射方向を変化させることができる反射板と、
前記反射板の反射方向を切り換える切換部と
を備え、
前記反射板が変化させることができる反射方向は、前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第1の領域へと向かう第1反射方向と、前記第1反射方向とは異なる方向であって前記基地局が前記通信信号を送信した前記複数の領域のうちの
前記第2の領域へと向かう第2反射方向とを含み、
当該基地局は、
前記反射板の反射方向を前記第1反射方向に固定した状態で予め定められた期間において
、前記第1反射方向に位置しており前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信した
前記携帯端末の数に応じた受信情報を取得する取得部と、
前記第2反射方向を含む複数の反射方向毎に取得した前記受信情報に基づき、前記反射板の反射方向を決定する決定部と
を備える、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射方向の決定方法、中継局、および基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、基地局と移動局との間に電波の見通し伝播の障害となる障害物が存在すると、カバレッジホールと呼ばれる電波の弱電界エリアが発生する。従来、このようなカバレッジホールの領域の形状に対応させた反射面を有し、領域全体に電波を反射させる反射部材を用いることにより、適切な無線通信を提供する無給電中継装置が知られていた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような中継装置を実現させるには、カバレッジホールの領域を予め決定することが前提となる。しかしながら、車両等の移動、建築物等の建設、破壊等により、障害物が時間的に変化してしまうと、カバレッジホールも時間的に変動してしまうので、予めカバレッジホールの領域の形状を決定することができなくなってしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、基地局および移動局の間に存在するカバレッジホールが時間的に変化しても、適切な無線通信を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、基地局から携帯端末と通信するための通信信号を反射する反射板の反射方向を第1反射方向に設定するステップと、前記反射板が前記第1反射方向に向いている状態の予め定められた期間において前記携帯端末が前記通信信号を受信した第1累積受信電力を測定するステップと、前記反射板の反射方向を前記第1反射方向と異なる第2反射方向に切り換えるステップと、前記反射板の反射方向を前記第2反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において、前記携帯端末が前記通信信号を受信した第2累積受信電力を測定するステップと、前記第1累積受信電力と前記第2累積受信電力とを比較することにより、前記反射板の反射方向を決定するステップとを備える、反射方向の決定方法を提供する。
【0007】
前記反射板の反射方向を前記第1反射方向および前記第2反射方向と異なる1または複数の方向に切り換え、前記反射板の反射方向を切り換える毎に、一の反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において、前記携帯端末が前記通信信号を受信した累積受信電力を測定するステップと、を更に備え、前記反射方向を決定するステップは、前記累積受信電力が最大となる反射方向に前記反射板の反射方向を決定してもよい。
【0008】
本発明の第2の態様においては、基地局から携帯端末と通信するための通信信号を反射する反射板の反射方向を第1反射方向に設定するステップと、前記反射板が前記第1反射方向に向いている状態の予め定められた期間において前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信したことに基づく第1受信情報を取得するステップと、前記反射板の反射方向を前記第1反射方向と異なる第2反射方向に切り換えるステップと、前記反射板の反射方向を前記第2反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信したことに基づく第2受信情報を取得するステップと、前記第1受信情報と前記第2受信情報とを比較することにより、前記反射板の反射方向を決定するステップとを備える、反射方向の決定方法を提供する。
【0009】
前記第1受信情報および前記第2受信情報は、予め定められた前記期間におけるチャネル品質指標(CQI)であり、前記反射方向を決定するステップは、前記CQIの平均値、最低値、および中央値のいずれかを用いて前記反射板の反射方向を決定してもよい。
【0010】
前記第2反射方向に切り換えるステップは、複数の反射方向とそれぞれの反射方向に切り換える順番とが予め対応付けられて記憶されているパターンセット情報に基づいて前記第2反射方向を決定して切り換えてもよい。
【0011】
第1の態様または第2の態様の反射方向の決定方法を、予め定められた周期で実行して前記反射板の反射方向を更新してもよい。
【0012】
本発明の第3の態様においては、基地局から携帯端末と通信するための通信信号を中継する中継局であって、前記通信信号を反射する方向である反射方向を変化させることができる反射板と、前記反射板の反射方向を切り換える切換部と、反射方向を固定した状態で予め定められた期間において前記携帯端末が前記通信信号を受信した累積受信電力を測定する測定部と、複数の反射方向毎に測定した前記累積受信電力の測定結果に基づき、前記反射板の反射方向を決定する決定部とを備える、中継局を提供する。
【0013】
本発明の第4の態様においては、基地局から携帯端末と通信するための通信信号を中継する中継局であって、前記通信信号を反射する方向である反射方向を変化させることができる反射板と、前記反射板の反射方向を切り換える切換部と、反射方向を固定した状態で予め定められた期間において前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信したことに基づく受信情報を取得する取得部と、複数の反射方向毎に取得した前記受信情報に基づき、前記反射板の反射方向を決定する決定部とを備える、中継局を提供する。
【0014】
本発明の第5の態様においては、携帯端末と通信するための通信信号を中継する中継局に前記通信信号を送信する基地局であって、前記中継局は、前記通信信号を反射する方向である反射方向を変化させることができる反射板と、前記反射板の反射方向を切り換える切換部とを備え、当該基地局は、反射方向を固定した状態で予め定められた期間において前記通信信号を受信した前記携帯端末から、前記通信信号を受信したことに基づく受信情報を取得する取得部と、複数の反射方向毎に取得した前記受信情報に基づき、前記反射板の反射方向を決定する決定部とを備える、基地局を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基地局および移動局の間に存在するカバレッジホールの形状が変化しても、適切な無線通信を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る、通信システム10の第1構成例を示す。
【
図2】本実施形態に係る通信システム10の動作フローの第1例を示す。
【
図3】本実施形態に係る、通信システム10の第2構成例を示す。
【
図4】本実施形態に係る通信システム10の動作フローの第2例を示す。
【
図5】本実施形態に係る、通信システム10の第3構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<通信システム10の第1構成例>
図1は、本実施形態に係る、通信システム10の第1構成例を示す。通信システム10は、携帯端末200に送信する電波の方向を適切に変更する中継局300を備えることにより、カバレッジホールが変動しても適切な通信を提供する。通信システム10は、基地局100と、携帯端末200と、中継局300とを備える。
【0018】
基地局100は、携帯端末200と通信するための通信信号を携帯端末200および中継局300に送信する。基地局100は、例えば、電気通信事業者の移動体通信、公共の業務無線等の親局として設置されている。基地局100は、例えば、アンテナを有し、予め定められた複数の方向に通信信号を送信する。基地局100は、周波数分割多重通信、時分割多重通信等の通信方式を用いて、複数の携帯端末200と通信してもよい。
図1は、基地局100が建物の屋上に設けられており、第1方向から第5方向へと通信信号を送信する例を示す。なお、
図1において、第1方向から第5方向の例を「1」から「5」の数字で示している。
【0019】
携帯端末200は、移動局であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、小型PC等である。携帯端末200と基地局100との間には、電波を遮る障害物等が位置することがある。このような障害物により、携帯端末200と基地局100との間の通信が不安定となるカバレッジホールが形成される。
図1は、基地局100と基地局100の第2方向に位置する携帯端末200Aとの間に、障害物となる車両が駐車している例を示す。
【0020】
このように、障害物が車両、建設中または破壊中の建築物、植物等の場合、カバレッジホールは、時間的に変動および発生することがある。
図1の例の場合、車両が移動することにより、カバレッジホールは移動または消滅する。また、新たな車両が移動してくることにより、新たなカバレッジホールが発生することもある。本実施形態に係る通信システム10には、このようなカバレッジホールが発生および変動しても携帯端末200と基地局100との間の通信を安定化させるべく、電波の反射方向を変更可能な中継局300が設けられている。
【0021】
中継局300は、基地局100から携帯端末200と通信するための通信信号を中継する。中継局300は、通信信号を反射する反射板を用い、通信品質が低下している携帯端末200の方向に通信信号を反射させて送信する。
図1は、基地局100が通信信号を送信する第5方向において、基地局100が設けられている建物とは異なる建物に中継局300が設けられている例を示す。この場合、中継局300は、第5方向とは異なる複数の方向に通信信号を反射する。中継局300は、反射板310と、切換部320と、測定部330と、決定部340と、制御部350と、記憶部360とを備える。
【0022】
反射板310は、通信信号を反射する。反射板310は、通信信号を反射する方向である反射方向を変化できる。反射板310は、例えば、特定の構造を有する導体パタ一ンを周期的に配置することによって、電磁波の伝播特性を制御するメタマテリアル(Metamaterial)技術によって形成されたデバイスである。この場合、反射板310は、入射する電磁波の波長よりも小さいサイズの導体パタ一ンを2次元状に周期的に配列されて形成されている。
【0023】
反射板310には、導体パターンが複数層形成されていてもよく、また、導体パターン層の間には誘電体層、液晶等が挟まれて形成されていてもよい。反射板310は、外部からの駆動信号に応じて、入射する電波の反射方向を異なる方向に変更可能に構成されている。このような反射方向を動的に制御可能な反射板310は、メタマテリアル技術として既知であるので、ここでは説明を省略する。
【0024】
反射板310の反射方向は、例えば、基地局100が通信信号を送信する領域と重複する領域に向かう方向を含む。また、反射板310の反射方向は、予めカバレッジホールと判明している領域に向く方向を含んでもよい。
図1は、反射板310が、入射する電波を予め定められた第1反射方向および第2反射方向の2つの方向に切り換えて反射できる例を示す。ここで、第1反射方向に反射した通信信号が到達する領域は、基地局100が通信信号を第4方向に送信する領域を含む。また、第2反射方向に反射した通信信号が到達する領域は、基地局100が通信信号を第1から第3方向に送信する領域を含む。
【0025】
切換部320は、外部から供給される制御信号に応じて、反射板の反射方向を切り換える。切換部320は、例えば、制御信号に対応する駆動信号を反射板310に供給する。これにより、反射板310の反射方向は、制御信号に応じた反射方向に設定される。切換部320は、反射板310反射方向に対応する電流または電圧を供給する。
【0026】
測定部330は、反射板310の反射方向を固定した状態で予め定められた期間において携帯端末200が通信信号を受信した累積受信電力を測定する。測定部330は、例えば、基地局100から携帯端末200へと中継する通信信号の累積受信電力を測定可能に設けられている。この場合、測定部330は、アンテナ等を有し、基地局100と通信可能に構成されている。また、携帯端末200が通信信号の累積受信電力を測定可能に設けられている場合、測定部330は、携帯端末200から累積受信電力の測定結果を受け取ってもよい。
【0027】
決定部340は、複数の反射方向毎に測定した累積受信電力の測定結果に基づき、反射板の反射方向を決定する。決定部340は、例えば、累積受信電力が最大となる反射方向を反射板310の反射方向に決定する。決定部340は、決定した反射方向を制御部350に供給する。
【0028】
制御部350は、中継局300内の各部の動作を制御する。制御部350は、例えば、切換部320による反射板310の反射方向の切り換えタイミング、測定部330による累積受信電力の測定タイミング等を制御する。
【0029】
記憶部360は、中継局300が動作の過程で生成する(または利用する)中間データ、算出結果、閾値、およびパラメータ等を記憶する。記憶部360は、例えば、測定部330が測定した累積受信電力の値を反射方向に対応付けて記憶する。また、記憶部360は、反射板310の複数の反射方向とそれぞれの反射方向に切り換える順番とが予め対応付けられているパターンセット情報を記憶してもよい。記憶部360は、通信システム10内の各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してもよい。
【0030】
記憶部360は、サーバ等が決定部340および制御部350として動作する場合、決定部340および制御部350として機能するOS(Operating System)、およびプログラムの情報を格納してもよい。また、記憶部360は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、サーバ等のコンピュータは、記憶部360に記憶されたプログラムを実行することによって、決定部340および制御部350として機能する。
【0031】
記憶部360は、例えば、コンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、および作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部360は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでもよい。また、コンピュータは、GPU(Graphics Processing Unit)等を更に備えてもよい。
【0032】
以上の本実施形態に係る通信システム10は、反射板310の複数の反射方向のうち、反射方向毎に測定した携帯端末200の通信信号の累積受信電力に基づき、反射板310の反射方向を決定する。これにより、通信システム10は、カバレッジホールに存在する通信品質が低下した携帯端末200の方向へと通信信号を反射させて、安定に無線通信できる領域を拡大できる。また、通信システム10は、このような中継局300の反射方向の決定動作を繰り返すことで、時間的に変化するカバレッジホールが発生しても、安定した無線通信を継続して提供することができる。このような通信システム10の動作について、次に説明する。
【0033】
<通信システム10の動作フローの第1例>
図2は、本実施形態に係る通信システム10の動作フローの第1例を示す。中継局300は、S410からS480のフローを実行することにより、反射板310の反射方向を決定する。
【0034】
まず、中継局300のパラメータを設定する(S410)。パラメータは、例えば、測定部330による累積受信電力の測定期間と、決定した反射板310の反射方向の更新周期とを含む。更新周期は、略一定の周期でよい。一例として、測定期間は10秒、更新周期は6時間である。これに代えて、不等間隔の更新周期が設定されてもよく、例えば、日中の更新周期を夜間の更新周期よりも短くする。
【0035】
制御部350は、このようなパラメータを記憶部360に記憶する。制御部350は、例えば、基地局100から送信されたパラメータを測定部330を介して受け取る。また、制御部350は、ユーザ等から指定されたパラメータを記憶部360に記憶してもよい。この場合、基地局100または中継局300は、ユーザからの入力を受け付ける入力部を更に有する。
【0036】
次に、基地局100から携帯端末200と通信するための通信信号を反射する反射板310の反射方向を第1反射方向に設定する(S420)。制御部350は、切換部320に制御信号を送信して、反射板310の反射方向を第1反射方向にする。例えば、第1反射方向は、反射方向を切り換える順番において最初の順番に設定されている反射方向である。この場合、制御部350は、複数の反射方向とそれぞれの反射方向に切り換える順番とが予め対応付けられて記憶部360に記憶されているパターンセット情報を読み出して、反射板310の反射方向を第1反射方向に設定する。
【0037】
次に、反射板310が第1反射方向に向いている状態の予め定められた期間において携帯端末200が通信信号を受信した第1累積受信電力を測定する(S430)。測定部330は、設定した測定期間において携帯端末200が通信信号を受信した第1累積受信電力を測定する。第1累積受信電力は、測定期間において第1反射方向に位置しており、通信信号を受信した携帯端末200の数に応じた値となる。本実施形態においては、
図1の例に示すように、第1反射方向に位置する携帯端末200の数を0とする。この場合、第1累積受信電力は、0となる。
【0038】
次に、反射板310の複数の反射方向のうち、累積受信電力を測定していない反射方向がある場合(S440:Yes)、反射板310の反射方向を次の反射方向に切り換える(S450)。制御部350は、例えば、パターンセット情報に基づいて累積受信電力を測定していない次の反射方向である第2反射方向を決定する。そして、制御部350は、対応する制御信号を切換部320に送信して、反射板310の反射方向を第1反射方向と異なる第2反射方向に切り換える。
【0039】
次に、S430に戻り、反射板310の反射方向を第2反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において、携帯端末200が通信信号を受信した第2累積受信電力を測定する。第2累積受信電力は、測定期間において第2反射方向に位置しており、通信信号を受信した携帯端末200の数に応じた値となる。本実施形態においては、
図1の例に示すように、第2反射方向に位置する携帯端末200の数を1つとする。この場合、第2累積受信電力は、携帯端末200Aが受信した通信信号の累積受信電力となる。
【0040】
次に、反射板310の複数の反射方向のうち、累積受信電力を測定していない反射方向がない場合(S440:No)、反射方向毎に測定した累積受信電力に基づき、反射板310の反射方向を決定する(S460)。
図1の例の場合、決定部340は、第1累積受信電力と第2累積受信電力とを比較することにより、反射板310の反射方向を決定する。決定部340は、例えば、累積受信電力が最大となる第2反射方向に反射板310の反射方向を決定する。制御部350は、決定した第2反射方向に対応する制御信号を切換部320に送信する。なお、制御部350は、ここで動作を終了する場合(S470:Yes)、反射板310の反射方向を固定させて処理を終了させてよい。
【0041】
以上のように、中継局300は、実際に携帯端末200が通信した実績に基づいて反射板310の反射方向を決定するので、通信状況に対応させて適切な無線通信を提供することができる。例えば、
図1において、基地局100が第2方向に送信した通信信号を携帯端末200Aが受信しているとする。そして、携帯端末200Aを保持しているユーザが、通信の障害物となる駐車車両の位置まで移動して、通信品質が低下してしまった状態を考える。
【0042】
この場合、中継局300は、上述のS410からS460までのフローを実行して、基地局100が第5方向に送信した通信信号を累積受信電力のより大きい第2反射方向へと反射して携帯端末200Aへと送信する。これにより、駐車車両によるカバレッジホールへとユーザが移動しても、中継局300からの通信信号を受信できるので、携帯端末200Aの通信品質を低下させずに適切な通信を継続できる。
【0043】
なお、すでに説明したように、このようなカバレッジホールが移動、消滅することがある。また、新たなカバレッジホールが発生することもある。したがって、一旦、上述のS410からS460までのフローを実行して反射方向を決定しても、基地局100および携帯端末200は、適切な通信を継続できなくなってしまうことがある。そこで、本実施形態に係る通信システム10は、更に、予め定められた周期で、S410からS460までのフローを実行して、反射板310の反射方向を更新する。
【0044】
この場合(S470:No)、制御部350は、反射板310の反射方向の更新周期が経過するまで(S480:No)S470に戻って待機する。制御部350は、反射板310の反射方向の更新周期が経過すると(S480:Yes)、S420に戻り、反射板310の反射方向の決定動作を繰り返す。
【0045】
これにより、中継局300は、時間の経過に伴ってカバレッジホールが移動、発生、および消滅しても、反射板310の反射方向を更新することで、通信品質を改善した適切な無線通信を提供することができる。以上の中継局300の動作において、反射板310の反射方向が第1反射方向と第2反射方向の2つの方向を有する例を説明したが、これに限定されることはない。反射板310は、3以上の複数の反射方向を有してもよい。
【0046】
この場合、制御部350は、全ての反射方向に対して累積受信電力を測定するように、S430からS450の動作を繰り返す。例えば、制御部350は、S450において、反射板310の反射方向を第1反射方向および第2反射方向と異なる1または複数の方向に切り換える。また、制御部350は、S430において、反射板310の反射方向を切り換える毎に、一の反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において、携帯端末200が通信信号を受信した累積受信電力を測定する。そして、決定部340は、累積受信電力が最大となる反射方向に反射板310の反射方向を決定する。
【0047】
これにより、3以上の複数の反射方向を反射板310が有する場合であっても、実際の通信実績に適した反射方向を選択して決定することができる。なお、以上の中継局300の動作において、パターンセット情報に基づいて、制御部350が反射板310の全ての反射方向を順次切り換える例を説明したが、これに限定されることはない。制御部350は、予め定められたアルゴリズムを用いて、反射板310の反射方向を順次切り換えてもよい。
【0048】
例えば、制御部350は、反射板310の反射方向を反射角度が大きいまたは小さい順番で並べ、反射角度を二分探索するように反射方向を順次切り換えてもよい。これにより、中継局300は、より効率的に反射板310の反射方向を決定することができる。なお、中継局300による反射板310の反射方向の決定動作は、基地局100から通信信号が送信されていれば実行することができるので、基地局100が実行する通信信号の送信アルゴリズム等からは独立した動作でよい。
【0049】
例えば、基地局100は、携帯端末200に対してCSI(Channel State Information)参照信号を送信する。携帯端末200は、受信したCSI参照信号を用いてチャネル品質を測定し、測定結果のCQIを含むCSIレポートを基地局100に送信する。この場合、基地局100は、第1方向から第5方向までの送信方向を1つずつ切り換えてアナログビームのパイロット信号を送信し、携帯端末200からのCQIを受け取って、CQIに応じて通信信号の送信方向の使用頻度を調整するアルゴリズムを実行することがある。
【0050】
例えば、携帯端末200Aを保持しているユーザが、通信の障害物となる位置に移動して通信品質が低下すると、基地局100から携帯端末200Aへ送信する頻度が低減する。また、基地局100が、第5方向に通信信号を送信し、中継局300が第1反射方向に通信信号を反射すると、第1反射方向には携帯端末200が存在しないので、第5方向に通信信号を送信する頻度がより低減する。
【0051】
そして、中継局300が第2反射方向に切り換えて通信信号を反射すると、携帯端末200Aと良好な通信が確立するので、第5方向に通信信号を送信する頻度が向上し、累積受信電力もより大きくなる。このように、通信システム10は、基地局100がエリア品質向上のための動作を実行していても、基地局100の動作に適応して反射板310の反射方向を決定することができる。
【0052】
また、中継局300による反射板310の反射方向の決定動作は、基地局100が実行する通信信号の送信アルゴリズム等と同期した動作でもよい。例えば、中継局300は、携帯端末200が基地局100へと送信するCQIを利用してもよい。基地局100に同期してCQIを利用する中継局300について、次に説明する。
【0053】
<通信システム10の第2構成例>
図3は、本実施形態に係る、通信システム10の第2構成例を示す。第2構成例の通信システム10において、
図1に示された第1構成例の通信システム10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の通信システム10は、取得部370を更に備える。
【0054】
取得部370は、アンテナ等を有し、携帯端末200と通信可能に構成されている。また、取得部370は、基地局100と通信可能でもよい。取得部370は、反射板310の反射方向を固定した状態で予め定められた期間において通信信号を受信した携帯端末200から、通信信号を受信したことに基づく受信情報を取得する。取得部370は、例えば、取得した情報等を、記憶部360に記憶する。このような第2構成例の通信システム10の動作について次に説明する。
【0055】
<通信システム10の動作フローの第2例>
図4は、本実施形態に係る通信システム10の動作フローの第2例を示す。まず、中継局300のパラメータを設定する(S510)。次に、基地局100から携帯端末200と通信するための通信信号を反射する反射板310の反射方向を第1反射方向に設定する(S520)。S510およびS520の動作については、
図2におけるS410およびS420の動作と略同一なので、ここでは説明を省略する。
【0056】
次に、取得部は、反射板310が第1反射方向に向いている状態の予め定められた期間において通信信号を受信した携帯端末200から、通信信号を受信したことに基づく受信情報を取得する(S530)。受信情報は、一例として、予め定められた期間におけるCQIである。なお、反射板310の反射方向を第1反射方向にした場合に取得した受信情報を第1受信情報とする。
【0057】
次に、反射板310の複数の反射方向のうち、受信情報の取得を試みていない反射方向がある場合(S540:Yes)、反射板310の反射方向を次の反射方向に切り換える(S550)。制御部350は、例えば、パターンセット情報に基づいて受信情報を取得していない次の反射方向である第2反射方向を決定する。そして、制御部350は、切換部320に対応する制御信号を送信して、反射板310の反射方向を第1反射方向と異なる第2反射方向に切り換える。
【0058】
次に、S530に戻り、反射板310の反射方向を第2反射方向に切り換えた後の予め定められた期間において通信信号を受信した携帯端末200から、通信信号を受信したことに基づく受信情報を取得する。受信情報は、一例として、予め定められた期間におけるCQIであり、反射板310の反射方向を第2反射方向にした場合に取得した受信情報を第2受信情報とする。
【0059】
次に、反射板310の複数の反射方向のうち、受信情報の取得を試みていない反射方向がない場合(S540:No)、反射方向毎に測定した受信情報に基づき、反射板310の反射方向を決定する(S560)。決定部340は、第1受信情報と第2受信情報とを比較することにより、反射板310の反射方向を決定する。決定部340は、例えば、CQIの平均値、最低値、および中央値のいずれかを用いて、反射板310の反射方向を決定する。制御部350は、決定した反射方向に対応する制御信号を切換部320に送信する。なお、制御部350は、ここで動作を終了する場合(S570:Yes)、反射板310の反射方向を固定させて処理を終了させてよい。
【0060】
反射板310の反射方向を決定する動作を継続させる場合(S570:No)、制御部350は、反射板310の反射方向の更新周期が経過するまで(S580:No)、S570に戻って待機する。制御部350は、反射板310の反射方向の更新周期が経過すると(S580:Yes)、S520に戻り、反射板310の反射方向の決定動作を繰り返す。
【0061】
以上のように、第2構成例の通信システム10においても、中継局300は、時間の経過に伴ってカバレッジホールが移動、発生、および消滅しても、反射板310を適切な反射方向に変更して、無線通信の通信品質を向上できる。なお、第2構成例の通信システム10において、取得部370が受信情報として携帯端末200からCQIを取得する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、携帯端末200が累積受信電力を測定する機能を有する場合、取得部370は、携帯端末200から累積受信電力を取得してもよい。なお、この場合、中継局300は、基地局100の送信アルゴリズム等と同期していなくてもよい。
【0062】
以上の本実施形態に係る通信システム10において、中継局300が反射板310の反射方向を決定する例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、基地局100は、携帯端末200からCQIを含むCSIレポートを受信するので、基地局100がCQIに基づいて反射板310の反射方向を決定してもよい。このような通信システム10を次に説明する。
【0063】
<通信システム10の第3構成例>
図5は、本実施形態に係る、通信システム10の第3構成例を示す。第3構成例の通信システム10において、
図1および
図3に示された第1構成例および第2構成例の通信システム10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
【0064】
第3構成例の基地局100は、指示送信部110と、決定部340と、制御部350と、記憶部360と、取得部370を備える。決定部340、制御部350、記憶部360、および取得部370は、上述した動作と同様に動作するので、ここでは説明を省略する。指示送信部110は、決定部340が決定した反射方向に対応する制御信号を中継局300に送信する。
【0065】
第3構成例の中継局300は、反射板310と、切換部320と、指示受信部380とを備える。指示受信部380は、指示送信部110から送信された反射方向の指示である制御信号を受け取る。切換部320は、制御信号に基づき、反射板310の反射方向を切り換える。
【0066】
以上の第3構成例の通信システム10は、第2構成例の通信システム10と同様に、携帯端末200から取得したCQIに基づいて、反射板310の反射方向を決定できる。したがって、第3構成例の通信システム10は、時間の経過に伴ってカバレッジホールが移動、発生、および消滅しても、反射板310を適切な反射方向に変更して、無線通信の通信品質を向上できる。また、第3構成例の通信システム10は、反射板310の反射方向を基地局100側が決定するので、中継局300の構成を簡便にすることができる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0068】
10 通信システム
100 基地局
110 指示送信部
200 携帯端末
300 中継局
310 反射板
320 切換部
330 測定部
340 決定部
350 制御部
360 記憶部
370 取得部
380 指示受信部