IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-解体機 図1
  • 特許-解体機 図2
  • 特許-解体機 図3
  • 特許-解体機 図4
  • 特許-解体機 図5
  • 特許-解体機 図6
  • 特許-解体機 図7
  • 特許-解体機 図8
  • 特許-解体機 図9
  • 特許-解体機 図10
  • 特許-解体機 図11
  • 特許-解体機 図12
  • 特許-解体機 図13
  • 特許-解体機 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】解体機
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/16 20060101AFI20230206BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230206BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20230206BHJP
   C21B 7/06 20060101ALI20230206BHJP
   C21C 5/48 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
F27D1/16 T
E04G23/02 Z
E04G23/08 D
C21B7/06 303
C21C5/48 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019187123
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021063602
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】平野 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏孝
(72)【発明者】
【氏名】五木田 修
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233299(JP,A)
【文献】特開2001-193292(JP,A)
【文献】特開平08-049010(JP,A)
【文献】特開2000-180070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/16
F27D 25/00
E04G 23/00-23/08
C21B 7/06
C21C 5/44
C21C 5/48
B28D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に連結された筒形のブームと、
前記ブームに自転可能に支持された筒形のアウタアームと、
前記アウタアームに出入り可能に支持されたインナアームと、
前記インナアームに連結されたアタッチメントと、
前記アタッチメントを駆動する少なくとも1つの油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを駆動する圧油を通す油圧ホースと、
前記油圧ホースを支持するケーブルキャリアとを備えた解体機において、
前記インナアームの外側に位置し前記インナアームに沿って延びるように前記アウタアームに形成されたケーブルキャリアの動作室と、
前記インナアームと対面するように前記動作室に設けた開口を開閉するカバーとを備え、
前記ケーブルキャリアは、折り返し部分をアタッチメント側に向けた姿勢で前記アウタアームと前記インナアームに基端及び先端がそれぞれ脱着可能に取り付けられており、
前記インナアームが前記アウタアームから最大に突き出た状態では、前記インナアームに取り付けられた前記ケーブルキャリアの先端が前記動作室の内部に位置し前記ケーブルキャリアの全体が前記動作室に納まるように構成されていることを特徴とする解体機。
【請求項2】
請求項1に記載の解体機において、前記ケーブルキャリアの前記折り返し部分から前記先端までの先端側帯状体に対し、前記ケーブルキャリアの前記折り返し部分から前記基端までの基端側帯状体が、前記インナアームの径方向外側に対面することを特徴とする解体機。
【請求項3】
請求項1に記載の解体機において、前記動作室の側壁面で前記ケーブルキャリアの幅方向の両側がガイドされていることを特徴とする解体機。
【請求項4】
請求項1に記載の解体機において、前記動作室には複数の点検窓が設けられていることを特徴とする解体機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉や高炉等の内壁に張り付けられた耐火煉瓦を剥がす作業等に好適な解体機に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉や高炉は内壁が耐火煉瓦で覆われている。耐火煉瓦は炉の使用に伴って次第に劣化するため定期的に交換する必要があり、古い耐火煉瓦を破砕して炉の内壁から剥すために削岩作業等に用いられるブレーカ(破砕機)を備えた解体機が用いられる場合がある。この種の解体機として、車体に連結したブームと、ブームに一部収納されて軸中心線周りに回転するアウタアームと、アウタアームに対して進退可能に収納されたインナアームと、インナアームの先端に装着されたブレーカとを備えたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5286685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インナアームの先端にブレーカが装着されていることから、アウタアームに対してインナアームが進退する構成では、ブレーカを駆動するアクチュエータに接続する油圧ホースの弛みを抑える必要がある。加えて、転炉等の解体作業は高温環境下で行われる場合があるため、油圧ホースが露出した構造は望ましくない。そこでこの種の解体機では、ケーブルキャリアを用いてブレーカ駆動用の油圧ホースの弛みを抑えつつ、ケーブルキャリアごとインナアームの内部に収納して高温から油圧ホースを保護する構成が一般に採用されている。
【0005】
しかし、特許文献1の解体機では、ケーブルキャリアの基端はアウタアームの内壁に固定される一方で、先端はインナアームの内部に挿入されてインナアームの内壁に固定されている。そのため、ブレーカ駆動用の油圧ホースやケーブルキャリアを整備又は交換する場合、アウタアームからインナアームを取り外す必要があり、大掛かりな分解組み立て作業を強いられて多大な工数及び労力を要する。
【0006】
本発明の目的は、インナアームを取り外すことなくアタッチメント駆動用の油圧ホースやこれを支持するケーブルキャリアの整備や交換をすることができる解体機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に連結された筒形のブームと、前記ブームに自転可能に支持された筒形のアウタアームと、前記アウタアームに出入り可能に支持されたインナアームと、前記インナアームに連結されたアタッチメントと、前記アタッチメントを駆動する少なくとも1つの油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを駆動する圧油を通す油圧ホースと、前記油圧ホースを支持するケーブルキャリアとを備えた解体機において、前記インナアームの外側に位置し前記インナアームに沿って延びるように前記アウタアームに形成されたケーブルキャリアの動作室と、前記インナアームと対面するように前記動作室に設けた開口を開閉するカバーとを備え、前記ケーブルキャリアは、折り返し部分をアタッチメント側に向けた姿勢で前記アウタアームと前記インナアームに基端及び先端がそれぞれ脱着可能に取り付けられており、前記インナアームが前記アウタアームから最大に突き出た状態では、前記インナアームに取り付けられた前記ケーブルキャリアの先端が前記動作室の内部に位置し前記ケーブルキャリアの全体が前記動作室に納まるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インナアームを取り外すことなくアタッチメント駆動用の油圧ホースやこれを支持するケーブルキャリアの整備や交換をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る解体機の側面図
図2】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機の斜視図でありアームを最短に縮めた状態を表す図
図3】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機の左側面図でありアームを最短に縮めた状態を表す図
図4】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機の平面図でありアームを最短に縮めた状態を表す図
図5】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機の正面図でありアームを最短に縮めた状態を表す図
図6】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機の左側面図でありアームを最長に伸ばした状態を表す図
図7】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機の正面図でありアタッチメントを90度回転させた状態を表す図
図8図3中のVIII-VIII線による作業機の模式的な矢視断面図
図9図3中のIX-IX線による作業機の模式的な矢視断面図
図10】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機からのケーブルキャリアの取り外し作業の一場面を表す左側面図
図11】本発明の一実施形態に係る解体機に備わった作業機からのケーブルキャリアの取り外し作業の一場面を表す斜視図
図12】比較例に係る解体機に備わった作業機の左側面図
図13】比較例に係る解体機に備わった作業機の平面図
図14図12中のXIV-XIV線による矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
-解体機-
図1は本発明の一実施形態に係る解体機の側面図である。以降、運転席に座ったオペレータの前方(図1における左側)を旋回体12の前方とする。図示した解体機は油圧ショベルをベースマシンとして構成されており、車体10及び作業機20を含んで構成されている。車体10は走行体11及び旋回体12からなる。
【0012】
走行体11は解体機の基部構造体であり、ホイール式の走行体でも良いが本実施形態では左右の履帯13を備えたクローラ式の走行体が用いてある。左右の履帯13はそれぞれ左右の走行駆動装置14により駆動される。走行駆動装置14は油圧モータと減速機からなる。旋回体12は走行体11上に旋回輪15を介して設けられており、旋回輪15を旋回モータ(不図示)で駆動することによって走行体11に対して鉛直軸周りに旋回する。旋回モータは油圧モータであるが、電動モータも用いられ得るし、油圧モータと電動モータを併用した構成ともなり得る。
【0013】
旋回体12は、旋回フレーム16、運転室17、機械室18、カウンタウェイト19等を含んで構成されている。旋回フレーム16は旋回体12のベースフレームであり、旋回体12に搭載される各機器を支持している。運転室17は旋回フレーム16の前部における左右方向の一方側に位置し、本例では左側に位置しているが右側に配置される場合もある。図示していないが、運転室17内には、オペレータが座る運転席、オペレータが操作する操作装置等が配置されている。カウンタウェイト19は作業機20との重量バランスをとる錘であり、旋回フレーム16の後端に支持されている。
【0014】
機械室18は旋回フレーム16における運転室17の後側(運転室17とカウンタウェイト19の間の位置)に配置されている。機械室18には、原動機1、油圧ポンプ2、コントロール弁(不図示)、熱交換器類等が収納されている。また、図示していないが旋回フレーム16の前部における作業機20を挟んで運転室17と反対側にタンク類(不図示)が配置してある。タンク類には、燃料タンク、作動油タンク等が含まれる。原動機1にはエンジン(内燃機関)が用いられるが、電動モータも用いられ得る。油圧ポンプ2は少なくとも1つ設けられ、原動機1により駆動されて作動油タンクから作動油を吸い込んで圧油として吐出する。コントロール弁は、油圧ポンプ2から吐出された圧油の方向や流量を制御し、対応する油圧アクチュエータに供給する。熱交換器類には、エンジン冷却水を冷却するラジエータや作動油を冷却するオイルクーラ等が含まれる。
【0015】
-作業機-
図2はアームを最短に縮めた作業機の斜視図、図3はその左側面図、図4は平面図、図5は前方から見た正面図である。図6はアームを最長に延ばした作業機の側面図、図7はアタッチメントを90度回転させた作業機の正面図、図8図3中のVIII-VIII線による作業機の模式的な矢視断面図、図9図3中のIX-IX線による作業機の模式的な矢視断面図である。なお、図2及び図3においてアーム22(後述)は最短に縮んだ状態を表しているが、ケーブルキャリア30(後述)についてはアーム22が最長に伸長した際の状態についても合わせて図示してある。
【0016】
図1図9に示したように、作業機20は、ブーム21、アーム22、アタッチメント23、ブームシリンダ24、モータ25、伸縮シリンダ26(図3)、チルトシリンダ27(図3)、及びスイベルジョイント28を含んで構成されている。またアーム22は、アウタアーム22a、及びインナアーム22bを含んで構成されている。
【0017】
ブーム21は作業機20の筒形の基礎構造体であり、軸中心線を前後に延ばした姿勢で左右に延びるフートピン(不図示)を介して旋回フレーム16に上下に回動可能に連結されている。ここで、旋回フレーム16にはバケット等のアタッチメントを装着して掘削作業等に用いる多関節型の標準のフロント作業機を連結するブラケット部(不図示)が備わっている。本実施形態ではこのブラケット部がアダプタ(不図示)の装着により上方に拡張されており、アダプタで拡張された部分に対してブーム21が連結されている。
【0018】
ブームシリンダ24は油圧シリンダであり、旋回フレーム16とブーム21とを連結している。ブームシリンダ24のボトム側の端部は左右に延びるピン(不図示)を介して旋回フレーム16のブラケット部に連結され、ロッド側の端部は左右に延びるピン24b(図1)を介してブーム21の下部前側部分に連結されている。ブームシリンダ24を伸縮させることにより、ブーム21は上記フートピン(不図示)を中心として上下方向に回動(俯仰動)する。
【0019】
アウタアーム22aは、前後方向に延びる筒形の部材であり、基端側の部分(図1中の右側部分)がブーム21に挿入されている。アウタアーム22aの先端側の部分(図1中の左側部分)はブーム21から前方に突出している。ブーム21の基端部には中心軸を前後に向けた複数の支持ローラ21xが円環状に並べて配置してあり、アウタアーム22aの基端の外周面がこれら支持ローラ21xに外接して支持されている。またブーム21の先端部には旋回輪(ベアリング)21yが設けてあり、アウタアーム22aの長手方向中間部の外周面が旋回輪21yで支持されている。これによりアウタアーム22aがブーム21に支持されて自転可能(長手方向に延びる軸中心線周りに回転可能)な構成となっている。旋回輪21yにはモータ25が連結されており、モータ25を作動させるとブーム21に対してアーム22(アウタアーム22a及びインナアーム22b)と共にアタッチメント23が一体に360°回転(全旋回)する(図5図7)。モータ25は油圧モータである。
【0020】
インナアーム22bは、アウタアーム22aに挿し込まれ、アウタアーム22aに出入り可能に支持された筒形の部材である。アウタアーム22aの先端には、中心軸をインナアーム22bの周方向に向けた複数のガイドローラ22xが環状に並べて配置してある。これらガイドローラ22xによりインナアーム22bの外周面が周方向の複数個所で支持されている。また、インナアーム22bの基端の外周面には中心軸を周方向に向けた複数のガイドローラ22y(図3)が周方向に複数個所(本例では図8に示したように4カ所)設けてあり、これらガイドローラ22yがアウタアーム22aの内周面に接している。このようにインナアーム22bはガイドローラ22x,22yによりアウタアーム22aに支持されている。インナアーム22bがガイドローラ22xにガイドされつつ、ガイドローラ22yでアウタアーム22aの内周面を走行し、インナアーム22bがアタッチメント23と共に長手方向に移動する構成である(図3図6)。そして、伸縮シリンダ26(油圧シリンダ)の伸縮に伴ってアウタアーム22aに対してインナアーム22bが長手方向に進退(アウタアーム22aに出入り)し、アーム22が伸縮する。伸縮シリンダ26はインナアーム22bの内部を通り、伸縮シリンダ26のボトム側の端部はインナアーム22bの長手方向の中間部の内周面に連結され、ロッド側の端部はアウタアーム22aの基端部に連結されている。
【0021】
アタッチメント23は本実施形態ではブレーカ(破砕機)であり、インナアーム22bの先端に連結されている。ブレーカは油圧モータ(不図示)を搭載しており、この油圧モータが油圧ポンプ2(図1)から供給される圧油により駆動されてチゼル23aを軸方向に高速で往復運動させ、例えば転炉(不図示)の内壁に設けられた耐火煉瓦をチゼル23aで破砕する。但し、ブレーカのチゼルの往復運動は空圧による場合もある。また、アタッチメント23はリンク27a(図3)及びチルトシリンダ27(図3)を介してインナアーム22bに連結されており、チルトシリンダ27の伸縮に伴って図1中の矢印方向に回動しチゼル23aの向きを変える。チルトシリンダ27や上記の油圧モータはアタッチメント23を駆動する油圧アクチュエータであり、チルトシリンダ27はインナアーム22bの内部に配置され、油圧モータはアタッチメント23に搭載されている。アタッチメント23は、例えばグラップルや小割機等、作業に応じて他のアタッチメントにも交換可能である。
【0022】
-ケーブルキャリア動作室-
本実施形態におけるアウタアーム22aには、ケーブルキャリア30(後述)の動作室22Rが設けられている。この動作室22Rは、インナアーム22bの外側(図3の状態では上側)に位置し、ブーム21の先端との対向端部からアウタアーム22aの先端までインナアーム22bに沿って延びている。動作室22Rの内部はインナアーム22bに沿って延びる直方体状の空間であり、アーム22の伸縮に伴ってケーブルキャリア30の折り返し部分30c(後述)がこの空間内を往復移動する。
【0023】
また、動作室22Rの底面(アウタアーム22aの径方向を向いた動作室22Rの2面のうちインナアーム22bに近い方の面)は全面的に開口しており、インナアーム22bを収容した空間と繋がっている。動作室22Rの天井面(アウタアーム22aの径方向を向いた動作室22Rの2面のうちインナアーム22bから遠い方の面)も全面的に開口している。この動作室22Rの天井面の開口22Raはカバー22Rcで開閉される。このカバー22Rcは、動作室22Rの両側の側壁面22Rs(インナアーム22bの径方向に延びる面)に対して例えばボルトで脱着可能に取り付けられており、動作室22Rの内部空間を挟んでインナアーム22bに対面している。
【0024】
互いに対向する側壁面22Rsはケーブルキャリア30の側面に対向し、ケーブルキャリア30の幅方向両側をガイドする役割を果たす。図9に示した通り、動作室22Rの2枚の側壁面22Rsとこれらの間に介在するケーブルキャリア30との間に構造物は存在せず、側壁面22Rsは構造物を介することなくケーブルキャリア30に接近して対向している。
【0025】
また動作室22Rの側壁面22Rsにはインナアーム22bの長手方向に並ぶ複数の点検窓(不図示)及びこれを開閉する点検窓カバー22Rxが設けられている。点検窓カバー22Rxを外して点検窓を開けることで、動作室22Rの中の様子(ケーブルキャリア30や油圧ホース27bの様子)が確認できる。
【0026】
-ケーブルキャリア-
作業機20のアーム22には、油圧ホース27b(後述)を支持するケーブルキャリア30が備わっている。ケーブルキャリア30は途中で一度折り返しており、本願明細書では、折り返し部分30cから基端30aまでの部分を基端側帯状体30A(図3にのみ符号表記)、折り返し部分30cから先端30bまでの部分を先端側帯状体30B(同)と呼ぶ。このケーブルキャリア30は折り返し部分30cをアタッチメント23側に向けた姿勢でアーム22に収納されており、アウタアーム22aとインナアーム22bに基端30a及び先端30bがボルト等で脱着可能に取り付けられている。本実施形態では、動作室22Rのブーム側部分の内壁にケーブルキャリア30の基端30aが連結されており、インナアーム22bの基端側部分の外周面にケーブルキャリア30の先端30bが連結されている。
【0027】
先端側帯状体30Bはインナアーム22bの外周面に対面し、基端側帯状体30Aは先端側帯状体30Bに対してインナアーム22bの径方向外側に対面する。つまり、基端側帯状体30A及び先端側帯状体30Bは断面をアウタアーム22aの周方向に延ばした(アーム22の径方向に断面が薄い)姿勢でアーム22に収納されている。
【0028】
アウタアーム22aに対するインナアーム22bの進退に伴って折り返し部分30cが動作室22Rの内部で往復移動し、基端側帯状体30Aと先端側帯状体30Bの長さが変化する。この間、ケーブルキャリア30の折り返し部分30cと基端側帯状体30Aについては、折り返し部分30cの位置つまり基端側帯状体30Aの長さに関わらず常に動作室22Rに納まっている。
【0029】
それに対し、アーム22を縮めるとケーブルキャリア30の先端30bは動作室22Rを出てブーム側に移動し、先端側帯状体30Bの一部と共にアウタアーム22aとインナアーム22bの間(アウタアーム22aの内側でインナアーム22bの外側)に進入する。反対にアーム22を伸ばすと、ケーブルキャリア30の先端30bはアタッチメント側に移動する。少なくともインナアーム22bがアウタアーム22aから最大に突き出した状態では、ケーブルキャリア30の先端30bは動作室22Rの内部に位置しケーブルキャリア30の全体が動作室22Rに納まるように構成されている。
【0030】
-油圧ホース-
チルトシリンダ27やアタッチメント23の油圧モータは複数の油圧ホース27b(図8及び図9に2本のみ図示)を経由して油圧ポンプ2(図1)及び作動油タンク(不図示)に接続しており、油圧ホース27bを通過した油圧ポンプ2からの圧油で駆動される。複数の油圧ホース27bはいずれもケーブルキャリア30に通され、ケーブルキャリア30により支持されており、また案内及び保護される。油圧ホース27bの一端はケーブルキャリア30の基端30aに対応する位置にあり、他端はケーブルキャリア30の先端30bに対応する位置にある。油圧ホース27bの一端は、旋回体12に搭載された油圧回路とスイベルジョイント28(図3)を介して接続された油圧配管(不図示)に接続されている。このスイベルジョイント28から延びる油圧配管は、アウタアーム22aとインナアーム22bの間(アウタアーム22aの内側でインナアーム22bの外側)を通り、インナアーム22bに干渉しないように例えばアウタアーム22aの内周面に固定されている。油圧ホース27bの他端は、チルトシリンダ27又はアタッチメント23の油圧モータに接続された油圧配管(不図示)に接続されている。これらアクチュエータに接続された油圧配管はインナアーム22bの内側を通り、例えばインナアーム22bの内周面に固定されている。
【0031】
-ケーブルキャリアの脱着作業-
図10は作業機からのケーブルキャリアの取り外し作業の一場面を表す左側面図、図11はその斜視図である。作業機20からケーブルキャリア30を取り外す場合、まずブームシリンダ24を駆動して図1のように作業機20を水平にし、モータ25を駆動して動作室22Rの開口22Raが上を向くようにアーム22を回転させる。そして図6のように伸縮シリンダ26を伸ばして例えば最長の状態までアーム22を伸長させ、原動機1(図1)を停止させる。これらブームシリンダ24、モータ25、伸縮シリンダ26の操作は順不同で行うことができる。アーム22を伸ばすことによりケーブルキャリア30の先端30bが動作室22Rの内部に進入し、特に最長の状態までアーム22を伸ばすことでケーブルキャリア30の先端30bは折り返し部分30cに接近する(図6)。この状態でカバー22Rcを取り外して動作室22Rの開口22Raを開放し、ケーブルキャリア30の全体を動作室22Rの開口22Raに露出させる。
【0032】
次に、開口22Raからアクセスし、油圧ホース27bの両端を油圧配管(不図示)から取り外し、またケーブルキャリア30の基端30a及び先端30bをアウタアーム22a及びインナアーム22bから取り外す。そして、図10及び図11のように玉掛け作業をして(ケーブルキャリア30にワイヤWを掛けて)クレーンで吊り上げると、ケーブルキャリア30と油圧ホース27bが作業機20から取り出される。油圧ホース27bの取り外し、ケーブルキャリア30の取り外し、玉掛けの各作業は順不同で行うことができる。
【0033】
ケーブルキャリア30を組み付ける作業は以上と逆の手順で行うことができる。
【0034】
-比較例-
図12は比較例に係る解体機に備わった作業機の左側面図、図13はその平面図、図14図12中のXIV-XIV線による矢視断面図である。これらの図に示した比較例では、アウタアームAoに本実施形態の動作室22Rに相当する要素はなく、図14に示したようにインナアームAiの内部にケーブルキャリアCbが収納されている。ケーブルキャリアCbは折り返し部分をブームBmの基部側(図13中の右側)に向けた姿勢で、例えばアウタアームAoの内壁に基端を、例えばインナアームAiの内壁に先端を取り付けてある。
【0035】
比較例の場合、ケーブルキャリアCbがインナアームAiの内部に入り込んでいるため、ケーブルキャリアCbを脱着するためにはアウタアームAoからインナアームAiを取り外す必要がある。そのため、インナアームAiの脱着に使用する設備が別途必要になり作業量も多大である。また、インナアームAiの内部においてケーブルキャリアCbの幅方向の片側にしか壁面が沿っていないため、図14のような姿勢でケーブルキャリアCbの幅方向に重力が作用するとケーブルキャリアCbに働く捻じれモーメント(図14中の矢印参照)が大きくなる。
【0036】
-効果-
(1)本実施形態によれば、インナアーム22bの外側に位置する動作室22Rをアウタアーム22aに設け、アーム22を伸ばすとケーブルキャリア30の全体が動作室22Rに納まる。これにより、インナアーム22bやアウタアーム22aを取り外すまでもなく、カバー22Rcを開けて開放した動作室22Rの開口22Raからケーブルキャリア30を取り出し、ケーブルキャリア30や油圧ホース27bの整備や交換をすることができる。ケーブルキャリア30の整備等のためにインナアーム22bの脱着作業をする必要がないので、作業工数を大幅に低減でき、解体機の稼働効率の向上にも貢献し得る。
【0037】
また、動作室22Rのカバー22Rcを取り外すことで開口22Raを広く開放できるので、開口22Raから作業機20の内部が点検し易い。また従来通り油圧ホース27bがアーム22の内部に収納されているので、アーム22の外郭で障害物や熱から油圧ホース27bを効果的に保護できる。
【0038】
(2)仮に先端側帯状体30Bと基端側帯状体30Aがインナアーム22bの周方向に対面する姿勢でケーブルキャリア30をアーム22に収納する構成とすると、先端側帯状体30Bは断面をアウタアーム22aの径方向に延ばした姿勢となる。この場合、アーム22を伸縮させるためには、アウタアーム22aとインナアーム22bの間の隙間を先端側帯状体30Bの幅(断面の長手方向寸法)より大きくするか、先端側帯状体30Bが出入りする戸袋のような空間をアウタアーム22aに設ける必要がある。これらの場合、いずれにしてもアウタアーム22aの旋回半径が拡大するため、ブーム21の内径を広げなければならない。
【0039】
それに対し、本実施形態では先端側帯状体30Bと基端側帯状体30Aがインナアーム22bの径方向外側に対面する姿勢でケーブルキャリア30をアーム22に収納したため、先端側帯状体30Bは断面をアウタアーム22aの周方向に延ばした姿勢となる。これにより、アウタアーム22aの内径を広げたりアウタアーム22aに戸袋を設けたりしなくても、先端側帯状体30Bをアウタアーム22aとインナアーム22bの間の狭い隙間に出入りさせることができる。よって、上記効果(1)を確保しつつ、作業機20のサイズアップを抑制することができる。
【0040】
(3)また、動作室22Rの側壁面22Rsがケーブルキャリア30の幅方向の両側に沿っている。そのため、例えば図7のようにアーム22が90度回転してケーブルキャリア30の幅方向に重力が作用しても、側壁面22Rsにガードされてケーブルキャリア30が過度に撓んだり捻じれたりすることがない。図7とは反対側に90度アーム22が回転した場合も同様である。
【0041】
(4)動作室22Rに複数の点検窓を設けたので、点検窓カバー22Rxを取り外してアウタアーム22a内部の部品を点検することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…車体、21…ブーム、22a…アウタアーム、22b…インナアーム、22R…動作室、22Ra…開口、22Rc…カバー、22Rs…側壁面、22Rx…点検窓カバー、23…アタッチメント、27…チルトシリンダ(油圧アクチュエータ)、27b…油圧ホース、30…ケーブルキャリア、30a…基端、30b…先端、30c…折り返し部分、30A…基端側帯状体、30B…先端側帯状体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14