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特許7221207フジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】フジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/83 20060101AFI20230206BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230206BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
A61K36/83
A23L33/105
A61K31/357
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019547054
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2017012790
(87)【国際公開番号】W WO2018088862
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2016-0150983
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515276624
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンゴン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ベクス
(72)【発明者】
【氏名】ビョン ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】チェ ハヨン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105348095(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0057878(KR,A)
【文献】Phytomedicine,2013年,Vol. 21, No. 1,pp. 82-89
【文献】Helvetica Chimica Acta,2010年,93(6),1172-1179
【文献】Bioorganic & medicinal chemistry,2005年,13(3),645-655
【文献】Journal of natural products,2016年,79(6),1604-1609
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/83
A61P 25/28
A61P 25/00
A61K 31/357
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 21/04
A23L 33/105
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経変性疾患の予防又は治療のための薬剤を生産するための、80%エタノール水溶液によって抽出されたフジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物の使用。
【請求項2】
前記フジモドキの花抽出物は、ゲンクワニンN(Genkwanin N)又はユアンフアシン(Yuanhuacine)を有効成分として含む請求項1に記載のフジモドキの花抽出物又はその分画物の使用。
【請求項3】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ルーゲーリッグ病(筋萎縮性側索硬化症;ALS)、ハンチントン病(HD)、前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)、大脳皮質基底核変性症(Cortico Basal Degeneration)及び進行性核上性麻痺(PSP)からなる群から選ばれるものである請求項1に記載のフジモドキの花抽出物又はその分画物の使用。
【請求項4】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病である請求項3に記載のフジモドキの花抽出物又はその分画物の使用。
【請求項5】
経変性疾患の予防又は改善のための健康機能食品を生産するための、80%エタノール水溶液によって抽出されたフジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物の使用。
【請求項6】
前記フジモドキの花抽出物は、ゲンクワニンN(Genkwanin N)又はユアンフアシン(Yuanhuacine)を有効成分として含む請求項5に記載のフジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物の使用。
【請求項7】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ルーゲーリッグ病(筋萎縮性側索硬化症;ALS)、ハンチントン病(HD)、前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)、大脳皮質基底核変性症(Cortico Basal Degeneration)及び進行性核上性麻痺(PSP)からなる群から選ばれるものである請求項5に記載のフジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物の使用。
【請求項8】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病である請求項7に記載のフジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物を有効成分として含む神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物及び健康機能食品に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患(neurodegenerative diseases)は、神経細胞が退化し、機能を失い、そしてときどき死滅する場合の症状と関連する。神経変性疾患を有する患者は、認知(cognitive)又は運動(motor)能力において深刻な退化を体験することがあり、これらの疾患は、主に進行性であるため、結果的に患者の生活の質及び人生に対する期待が顕著に低下し得る。
【0003】
これらの疾患は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ルーゲーリッグ病(筋萎縮性側索硬化症;ALS)、ハンチントン病(HD)、前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)、大脳皮質基底核変性症(Cortico Basal Degeneration)、進行性核上性麻痺(PSP)などの疾患を含む。
【0004】
一方、相当数の神経変性疾患には、Nurr1(nuclear receptor related 1)タンパク質が関連することが知られている。前記Nurr1は、NR4A2(nuclear receptor subfamily 4, group A、member 2)とも知られている核受容体関連1タンパク質を意味し、これはヒトのNR4A2遺伝子によって暗号化されることが知られている。前記Nurr1プロテインは、オーファン核受容体(orphan nuclear receptor)であり、前記Nurr1タンパク質に対するリガンドは依然として究明されていないが、脳でドーパミンシステム(dopaminergic system)を維持する核心的な役割を果たすことが究明されている。前記Nurr1又はNR4A2遺伝子に異常が発生すれば、ドーパミンシステムの機能が損傷し、パーキンソン病を誘発させるだけでなく、リウマチ関節炎、統合失調症、躁鬱症などの広範な炎症性及び神経性疾患の原因になることが知られている。前記Nurr1の機能障害によって誘発される代表的な神経変性疾患は、パーキンソン病である。
【0005】
パーキンソン病は、震え、硬直、運動緩慢及び歩行異常などを主な症状とする現代高齢化社会における重大な疾患の一つであり、脳の黒質(substantia nigra)と線条体(corpus striatum)部位においてドーパミン(dopamin)という神経伝達物質が不足することにより、発生する慢性疾患である。
【0006】
このようなパーキンソン病の治療のための薬物としては、L-ドーパ(L-dopa)製剤、ドーパミン受容体アゴニスト、抗コリン薬剤、エルデプリル(Eldepryl)等が知られているが、これらの薬物のほとんどは、根本的な治療でなく、症状を調節する役割を果たしていることから、持続的な薬物の服用が必要とされてきた。今までに、パーキンソン病治療剤として多くの薬が開発・商用化されてきたが、パーキンソン病を完全に治療するための本質的な治療剤は、まだ開発されていないのが実状である。
【0007】
最近、ドーパミン性神経細胞の分化、成長及び維持に重要な役割を果たすNurr1タンパク質の機能を活性化させる化合物が、パーキンソン病に良い薬効を示し、パーキンソン病治療剤の疾患ターゲットとして応用できることが報告されている。
【0008】
本出願人が先に出願した特許文献1では、フジモドキの幹及び/又は根抽出物がNurr1タンパク質の活性化に関与し、パーキンソン病動物モデルに投与した結果、パーキンソン病の症状が緩和されることが確認された。
【0009】
しかし、本出願人の特許文献1のフジモドキの幹及び/又は根抽出物は、天然物新薬への開発のための非臨床安定性試験中に、復帰突然変異試験及び染色体異常試験で遺伝毒性があることが確認された。
【0010】
このような問題点を改善するために、本発明者らは、漢方分野で薬剤として使用されているフジモドキの花が、遺伝毒性がなく、神経変性疾患の予防又は治療により一層効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国 登録特許第10-1631589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、フジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供することである。
【0013】
また、本発明の別の目的は、フジモドキの花抽出物又はその分画物を含む神経変性疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、フジモドキの花(Daphne genkwa flower)抽出物又はその分画物を有効成分として含む神経変性疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明で使用される用語「フジモドキ(Daphne genkwa)」は、双子葉植物、フトモモ目、ジンチョウゲ科の落葉低木を意味し、チョウジザクラ又はサツマフジとも呼ばれている。フジモドキは、主に海辺の近くで成長し、漢方医学では利尿、水腫、腎臓炎などの症状を治療するのに使用される。フジモドキの干したツボミは、芫花又は莞花といい、薬剤として用いられており、若干の毒性があることが知られている。フジモドキの花抽出物は、ゲンクワニン(genkwanin)、ヒドロキシゲンクワニン(hydroxygenkwanin)、アピゲニン(apigenin)及びシトステロール(sitosterol)等を含んでおり、その他にも安息香酸(benzoic acid)と刺激性の精油物質を含有していることは、公知である。
【0016】
本発明で使用される用語「フジモドキの花抽出物」は、フジモドキの花又はツボミから得た抽出物を意味し、好ましくは、フジモドキの花又はツボミを水又は有機溶媒で抽出して得た抽出物を意味し、具体的には、フジモドキの花又はツボミを水、C1~C4の低級アルキルアルコール又はこれらの混合溶媒で抽出して得た抽出物を意味する。
【0017】
本発明の一実施例によるフジモドキの花抽出物は、好ましくは、80%エタノールで抽出した抽出物である。
【0018】
本発明の一実施例によれば、フジモドキの花及び/又はツボミを水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのC1~C4低級アルキルアルコールなどの有機溶媒、又はC1~C4低級アルキルアルコール水溶液を用いてフジモドキの花抽出物を得た。前記フジモドキの花抽出物は、ゲンクワニンN(Genkwanin N)又はユアンフアシン(Yuanhuacine)を含む。
【0019】
前記ゲンクワニンNは、下記式(1)で示されるテルペノイド、具体的には、ジテルペンエステル化合物であり、当業者に公知の方法により製造することができ、好ましくは、フジモドキの花又はツボミから抽出、分離することができる。
【0020】
【化1】
【0021】
前記ユアンフアシン(Yuanhuacine)は、下記式(2)で示されるテルペノイド、具体的には、ジテルペンエステル化合物であり、当業者に公知の方法により製造することができ、好ましくは、フジモドキの花又はツボミから抽出、分離することができる。
【0022】
【化2】
【0023】
本発明で使用される用語「分画物」は、特定溶媒を用いて前記フジモドキの花抽出物から本発明で目的とする活性を有する物質を分画して得た活性分画物(fraction)を意味する。
【0024】
本発明の別の実施例によれば、前記得られたフジモドキの花抽出物をヘキサン、酢酸エチル、ブタノール、又は蒸溜水などの有機溶媒の混合溶媒を用いて、各溶媒の分画層を分離して得て、クロマトグラフィーなどの当業界で公知の分離方法を利用して有効成分を高純度に分離精製して、分画物を製造することができる。多様な精製方法によって得られた分画物も本発明の分画物に含まれる。前記フジモドキの花抽出物の分画物は、ゲンクワニンN(Genkwanin N)又はユアンフアシン(Yuanhuacine)を含む。
【0025】
本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物は、前述した抽出溶媒による抽出物だけでなく、通常の精製過程を経た抽出物も制限なく含まれていてもよい。本発明者らは、本出願人の特許文献1に記載のフジモドキの幹及び根抽出物が天然物新薬への開発のための非臨床安定性試験中、復帰突然変異試験及び染色体異常試験で遺伝毒性があることを確認した(図1(A))。一方、フジモドキの花抽出物の遺伝毒性をテストした結果、復帰突然変異試験及び染色体異常試験でいずれも遺伝毒性がないとことが確認された(図1(B))。
【0026】
本発明者らは、また、フジモドキの花抽出物とフジモドキの幹及び根抽出物の有効成分を比較分析した結果、フジモドキの花抽出物と、フジモドキの幹及び根抽出物のいずれからも有効成分としてゲンクワニンN及びユアヌアシンが検出されており、各有効成分を定量した結果、フジモドキの花抽出物におけるゲンクワニンN及びユアンフアシン(Yuanhuacine)量がフジモドキの幹及び根抽出物に比べて、それぞれ約7.32倍及び1.23倍多いことが確認された(図2)。
【0027】
また、フジモドキの花抽出物とフジモドキの幹及び根抽出物のNurr1タンパク質の活性度を比較実験した結果、本発明のフジモドキの花抽出物が、フジモドキの幹及び根抽出物よりさらに高い活性を示していることが確認された(図4)。
【0028】
さらに、本発明者らは、6-OHDA誘導性パーキンソン動物モデルに、フジモドキの花抽出物を配合した飼料を給餌した後、アポモルヒネ誘発回転テスト(apomorphine-induced rotation test)を行った結果、一般飼料を給餌した対照群に比べて、回転数が確実に低下していることを確認することができた(図5)。
【0029】
このように、本発明者は、フジモドキの花抽出物がNurr1タンパク質の活性度を増加させることによって、Nurr1タンパク質の活性が直接影響を与えるドーパミン性神経細胞の損傷によって誘発される多様な疾患、例えば、パーキンソン病及びパーキンソン病以外のNurr1の機能障害によって誘発される多様な神経変性疾患の予防又は治療に効果を示すことを確認した。
【0030】
従って、本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む医薬組成物は、Nurr1タンパク質の活性化に効果を示すので、Nurr1タンパク質の活性が直接影響を与えるドーパミン性神経細胞の損傷によって誘発される多様な疾患、例えば、パーキンソン病及びパーキンソン病以外のNurr1の機能障害によって誘発される多様な神経変性疾患の予防又は治療に効果を示すことが分かる。
【0031】
本発明で使用される用語「神経変性疾患」は、神経細胞が退化し、機能を失い、そして死滅する場合に現れる症状と関連する疾患を意味し、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ルーゲーリッグ病(筋萎縮性側索硬化症;ALS)、ハンチントン病(HD)、前頭側頭型認知症(Frontotemporal Dementia)、大脳皮質基底核変性症(Cortico Basal Degeneration)、進行性核上性麻痺(PSP)を含む。好ましくは、本発明による神経変性疾患は、パーキンソン病である。
【0032】
本発明の医薬組成物は、前記記載した有効成分又はその分画物以外に薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤を含んでもよい。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルション、シロップ、エアゾールなどの経口製剤、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液の形態に製剤化して使用することができる。製剤化する場合、通常、用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製することができる。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含むが、これに限定されない。このような固形製剤は、少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調製することができる。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤なども用いることができる。経口投与のための液状物、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを添加して調製することができる。非経口投与のための製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤を含む。非水性溶剤及び懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが挙げられる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが挙げられる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、目的とする方法により経口投与するか、又は非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所に適用)することができる。
【0035】
本発明による医薬組成物は、薬学的に有効な量、即ち、医学的予防又は治療に適用可能な合理的であるベネフィット/リスク比で疾患を予防又は治療するのに十分な量で投与することができる。有効用量水準は、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、使用される本発明の組成物の投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、使用される本発明の組成物と配合又は一緒に使用される薬物を含む因子及びその他の医学分野で広く知られた因子によって異なるが、当業者によって適宜選択することができる。
【0036】
本発明によるフジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む医薬組成物の投与量又は服用量は、患者の年齢、身体的条件、体重などによって多様化され得るが、一般に、0.01~1,000mg/kg(体重)/1日範囲内で投与することが好ましい。そして、1日有効投与量範囲内で、一日に一回又は一日数回にわけて投与することができる。
【0037】
前記目的を達成するための更に別の様態として、本発明は、フジモドキの花抽出物又はその分画物を含む神経変性疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0038】
本発明で使用される用語「健康機能食品」は、健康機能食品に関する法律第6727号による人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して、製造及び加工した食品を意味する。ここで、‘機能性’とは、人体の構造及び機能に対し栄養素を調節するか、生理学的作用などの保健用途に有用な効果が得られる目的で摂取することを意味する。
【0039】
本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物を食添加物として使用する場合、食品又は飲料に前記抽出物又はその分画物をそのまま添加するか、又は他の食添加物と共に組み合わせて使用することができる。本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物を食品又は飲料の製造時に添加する場合、その添加量は、特に制限されず、最終的な食品の重量に対して、1~5重量%、好ましくは、1~3重量%の添加量で添加することができる。しかし、健康及び衛生を目的とするか、又は健康調整を目的とする長期間摂取の場合の添加量は、前記範囲以下でであってもよいが、安全性の面から問題がない場合、前記範囲以上の量を使用してもよい。
【0040】
また、前記食品又は飲料の種類は、特に制限されず、通常の意味での食品又は飲料を含む。好ましくは、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などを含む。
【0041】
本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物を食品に添加する場合には、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールなどの補助成分と共に添加することができる。
【0042】
本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物を飲料に添加する場合には、通常の飲料と共に様々な甘味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。このとき、前記甘味剤は、特に制限されず、タウマリン、ステビア抽出物などの天然甘味剤、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを使用でき、前記天然炭水化物は、特に制限されず、単糖類(例えば、ブドウ糖、フルクトースなど)、二糖類(例えば、マルトース、スクロースなど)、多糖類(例えば、デキストリン、シクロデキストリンなど)又は糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、エリスリートールなど)等を使用することができる。
【0043】
本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物は、安全性が確認されており、これを含む健康機能食品は、神経変性疾患の症状を予防又は改善させる効果を示す。
【0044】
前記目的を達成するためのさらに別の一様態として、本発明は、フジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む医薬組成物を、これを必要とする対象体に投与する工程を含む神経変性疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0045】
本発明で使用される用語「フジモドキ(Daphne genkwa)」、「フジモドキの花抽出物」、「分画物」、「神経変性疾患」及び「投与」等の用語は、前記説明と同義である。
【0046】
本発明において、前記対象体は動物を意味し、典型的には、本発明の抽出物を利用した治療で有益な効果を示し得る哺乳動物である。このような対象体の好ましい例には、ヒトなどの霊長類が含まれる。また、このような対象体には、神経変性疾患症状を有しているか、このような症状を有する危険のある対象体が含まれる。
前記目的を達成するためのさらに別の一様態として、本発明は、神経変性疾患の予防又は治療のためのフジモドキの花抽出物又はその分画物の使用を提供する。
【0047】
前記目的を達成するためのさらに別の一様態として、本発明は、神経変性疾患の予防又は治療効果を有する薬剤を生産するためのフジモドキの花抽出物又はその分画物の使用を提供する。
【0048】
本発明で使用される用語「フジモドキ(Daphne genkwa)」、「フジモドキの花抽出物」、「分画物」及び「神経変性疾患」等の用語は前記説明と同義である。
【発明の効果】
【0049】
本発明のフジモドキの花抽出物又はその分画物を有効成分として含む医薬組成物は、特別な副作用を示さず、神経損傷によるNurr1タンパク質の活性抑制を回復させるのに優れた効果を示すので、Nurr1タンパク質の活性抑制によって誘発される神経変性疾患の予防又は治療に優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】(A)はフジモドキの幹及び/又は根抽出物の復帰突然変異誘発を示し、(B)はフジモドキの花抽出物が、復帰突然変異誘発性がないことを示す図であり、TA98はサルモネラ・ティフィムリウム(salmonella typhimurium)TA98菌株、TA1535はティフィムリウム(salmonella typhimurium)TA1535菌株、TA1537はティフィムリウム(salmonella typhimurium)TA1537菌株を意味する。
図2】LC-MS/MS方法でフジモドキの花抽出物の有効成分を分析した結果を示す図であり、(A)は標準試料DGH-1(m/z 105.2>591.2)及びDGH-2(m/z 105.1>639.2)であり、(B)において、DGF-EXはフジモドキの花抽出物、DG-EXはフジモドキの幹及び/又は根抽出物を意味する。
図3】フジモドキの花抽出物の濃度によるNurr1タンパク質活性度の変化をルシフェラーゼ分析で示したグラフである。Con-3ulは、対照群(1%DMSO)を意味する(**:p<0.01)。
図4】フジモドキの幹及び/又は根抽出物とフジモドキの花抽出物の各濃度によるNurr1タンパク質活性度の変化をルシフェラーゼ分析で示した比較実験の結果を示したグラフである。DG-EXはフジモドキの幹及び/又は根抽出物、DGF-EXはフジモドキの花抽出物を意味する。
図5】6-OHDA(6-hydroxydopamine)誘導性パーキンソン病動物モデルにおいて、フジモドキの花抽出物の給餌2週後又は4週後の回転テスト(rotation test)結果を示したグラフである。
図6】6-OHDA誘導性パーキンソン病動物モデルにおいて、フジモドキの花抽出物の給餌4週後、中脳黒質部でのドーパミン性神経細胞の変化を免疫組織化学分析で観察した図である。
図7】6-OHDA誘導性パーキンソン病動物モデルにおいて、フジモドキの花抽出物の給餌4週後、中脳黒質部でのドーパミン性神経細胞の数の変化を比較したグラフである。PBSは6-OHDAを注入しなかった群、6OHDAは6-OHDA注入群、6OD+10は6-OHDA注入後10mg/kgフジモドキの花抽出物を給餌した群、6OD+50は6-OHDA注入後50mg/kgフジモドキの花抽出物を給餌した群を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
比較例1:フジモドキの幹及び/又は根抽出物の遺伝毒性試験
本出願人の特許文献1によるフジモドキの幹及び/又は根抽出物のインビトロ(in vitro)遺伝毒性を確認するために、下記のように復帰突然変異実験及び染色体異常実験を行った。
【0053】
1-1.フジモドキの幹及び根抽出物の製造
フジモドキの幹14kgと根6kgをスライスした後、120Lの80%エタノールに48時間浸漬し、ろ過して、固形分と1次液状成分を分離した。前記分離された固形分を再び120Lの80%エタノールに24時間浸漬し、ろ過して2次液状成分を得た。前記得られた1次液状成分と2次液状成分を混合し、前記混合物を減圧下に濃縮した後、残渣を凍結乾燥し、1140.9gのフジモドキの幹及び根抽出物(以下、「DG-EX」という)を製造した。
【0054】
1-2.復帰突然変異実験
フジモドキの幹及び根抽出物の遺伝毒性を確認するために、GLP(Good Laboratory Practice)機関であるバイオトクステック社において食品医薬安全庁のガイドラインに準じて復帰突然変異試験を行った。
【0055】
試験物質である前記1-1で得られたDG-EXの遺伝子の突然変異誘発性を確認するために、ヒスチジン要求性の菌株であるサルモネラ・ティフィムリウムTA98、TA100、TA1535、TA1537とトリプトファン要求性菌株である大腸菌(Escherichia coli)WP2uvrA(pKM101)を用いて、代謝活性化系の存在(S9+)下及び非存在(S9-)下の場合に対して、復帰突然変異試験を行った。
【0056】
(1)用量設定試験
本試験の復帰突然変異試験の最高用量を設定するために、ガイドラインで推薦する5,000μg/プレートを最高用量とし、以下、共沸4で1,250、313、78.1及び19.5μg/プレートで用量設定試験を行った。
【0057】
その結果、DG-EXによる生育阻害が、代謝活性化系非存在下のTA98菌株の5,000μg/プレート、TA100、TA1535及びTA1537菌株の313μg/プレート以上、代謝活性化系の存在下のTA100、TA1535及びTA1537菌株の5,000μg/プレートで観察された。代謝活性化系非存在下のWP2uvrA(pKM101)菌株、存在下のTA98及びWP2uvrA(pKM101)菌株では生育阻害が観察されなかった。
【0058】
従って、本試験の復帰突然変異試験の用量は、下記表1のように設定した。また、陰性対照群及び陽性対照群を設定した。
【0059】
【表1】
試験物質であるDG-EXの沈殿は、代謝活性化系非存在下及び存在下の全ての用量で観察されなかった。
【0060】
(2)復帰突然変異試験
各菌株に試験物質DG-EXを前記濃度で処理し、培養した後、復帰変異コロニー数を目視で計数した。その結果を下記表2に示した。
【0061】
【表2】
S.D:標準偏差
*:成長抑制を示す
【0062】
その結果、代謝活性化系の存在下のTA1537菌株の1,250μg/プレートでは、復帰変異コロニー数が陰性対照群と比較して2倍以上再現性あるように増加しており、2,500μg/プレート以上ではDG-EXによる生育阻害が観察され、復帰変異コロニー数が減少する傾向が観察された。
【0063】
代謝活性化系非存在下のTA98、TA100、TA1535、TA1537及びWP2uvrA(pKM101)菌株と代謝活性化系の存在下のTA98、TA100、TA1535及びWP2uvrA(pKM101)菌株では、試験物質群で代謝活性化系の有無に関係なく、各菌株の全ての用量に対して、復帰変異コロニー数は陰性対照群の2倍を超えることなく、用量依存的である増加も観察されなかった。
【0064】
各菌株に対する陽性対照群の復帰変異コロニー数は、陰性対照群と比較して2倍以上明らかに増加した。その結果を図1に示した。
【0065】
図1(A)に示すように、本試験条件下で試験物質DG-EXは、代謝活性化系の存在下のTA1537菌株で復帰突然変異コロニー数が陰性対照群の2倍以上増加し、遺伝子の突然変異誘発性があると判定された。
【0066】
1-3.染色体異常実験
フジモドキの幹及び根抽出物の遺伝毒性を確認するために、GLP(Good Laboratory Practice.)機関であるバイオトクステック社で、食品医薬安全庁のガイドラインに準じて染色体異常試験を行った。
【0067】
試験物質である前記1-1で得られたDG-EXの染色体の構造的異常誘発性を確認するために、哺乳類の培養細胞株であるCHL(Chinese Hamster Lung)/IU細胞を用いて、染色体の構造的異常誘発性を評価した。
【0068】
(1)細胞増殖抑制試験
本試験の染色体異常試験の最高用量設定のために、DG-EX5,000μg/mLを最高用量とし、以下2,500、1,250、625、313、156、78.1、39.1及び19.5μg/mLで細胞増殖抑制試験を行った。細胞増殖抑制、は、DG-EX処理後、相手細胞増加数(RPD)(relative population doubling)を求め、細胞増殖抑制の指標とした。
【0069】
その結果、代謝活性化系非存在下及び存在下、連続処理法の代謝活性化系非存在下で細胞毒性が観察された。細胞増殖を明確に50%以上抑制する用量は、短時間処理法の代謝活性化系非存在下及び存在下の1,250μg/mL以上、連続処理法の代謝活性化系非存在下の625μg/mL以上であった。
【0070】
従って、本試験の用量は、下記表3のように設定した。また、陰性対照群及び陽性対照群を設定した。
【0071】
【表3】
試験物質の沈殿は、短時間処理法の代謝活性化系非存在下及び存在下、連続処理法の代謝活性化系非存在下の2,500μg/mL以上で観察された。
【0072】
(2)染色体異常試験
染色体異常試験の結果、短時間処理法の代謝活性化系の存在下の450及び900μg/mLで数的異常を有する細胞の出現頻度が12.5及び13.0%と、陰性対照群(0%)と比較して統計学的に有意に増加した。構造異常を有する細胞の出現頻度は、6.0及び8.0%と、陰性対照群(0%)と比較して統計学的に有意に増加した(データ未図示)。
【0073】
短時間処理法の代謝活性化系非存在下及び連続処理法の代謝活性化系非存在下では、染色体異常を有する細胞の出現頻度は5%未満であり、染色体異常誘発作用は確認されず、陰性対照群と比較時統計的な有意性も観察されなかった。
【0074】
各処理系列に対する陽性対照群では、構造異常を有する細胞の出現頻度は、10%以上と、陰性対照群と比較時統計学的に有意に増加した。
【0075】
これにより、短時間処理法の代謝活性化系の存在下の構造異常に対する擬陽性結果を明確にするために、下記表4の用量で本試験と同じ方法で確認試験を行った。
【0076】
【表4】
【0077】
確認試験の結果、短時間処理法の代謝活性化系の存在下の900、1,000、1,100及び1,200μg/mLで数的異常を有する細胞の出現頻度は、12.5、11.5、10.0及び8.5%と確認されており、陰性対照群と比較して統計学的に有意に増加した。構造異常を有する細胞の出現頻度は、7.5、7.0、8.5及び4.5%と確認されており、陰性対照群と比較して統計学的に有意に増加した。その結果を下記表5に示した。
【0078】
【表5】
略語:
ctg:染色分体型ギャップ
csg:染色体ギャップ
ctb:染色分体切断
cte:染色分体交換
csb:染色体切断
cse:染色体交換
frg:フラグメンテーション
end:核内倍加
pol:倍数性
B[a]P:ベンゾ[a]ピレン
RPD:相対的細胞集団倍加
Trt-Rec time:治療リカバリ時間
gap-:gapを除いた構造異常を有する細胞の合計数
gap+:gapを含む構造異常を持つ細胞の合計数
a):染色体異常を有する細胞数から除外されたもの
*:p<0.01、#:p<0.05、♯♯:p<0.01
【0079】
以上の結果から、本試験条件下で試験物質DG-EXは、短時間処理法の代謝活性化系の存在下で数的異常を有する細胞の出現頻度が10%以上、構造異常を有する細胞の出現頻度が5%以上10%未満と確認され、染色体異常誘発性があると判定された。
【0080】
実施例1:フジモドキの花抽出物の製造
フジモドキの花の部位3.5kgを70Lの80%エタノールに48時間浸漬し、ろ過して、固形分と1次液状成分を分離した。前記分離された固形分を再び70Lの80%エタノールに24時間浸漬し、ろ過して、2次液状成分を得た。前記得られた1次液状成分と2次液状成分を混合し、前記混合物を減圧下に濃縮した後、残渣を凍結乾燥して、859gのフジモドキの花抽出物(以下、‘DGF-EX’という)を製造した。
【0081】
実施例2:フジモドキの花抽出物の有効成分の分析
前記実施例1で得られたフジモドキの花抽出物であるDGF-EXの有効成分を分析した。比較のために、前記比較例1-1で得られたフジモドキの幹及び根抽出物であるDG-EXの有効成分も、一緒に分析した。
【0082】
フジモドキの幹及び根抽出物には、DGH-1とDGH-2の二つの有効成分があるが、このうちのDGH-1は、UV吸光係数が非常に低く、HPLC UV方法で抽出物にあるDGH-1を分析するのは非常に難しい。従って、抽出物で有効物質DGH-1とDGH-2の両方を効果的に分析するために、LC-MS/MSのMRM(multiple reaction monitoring)方法で分析した。MRM方法は、特定のプロダクトイオンを有する親イオンを検出する方法であり、複雑な試料から特定物質を分析する方法である。
【0083】
その結果、標準試料DGH-1とDGH-2化合物は、それぞれ3.81分、6.99分に検出され、0.1μg注入時、それぞれ1.05×10、1.8×10の強度(intensity)を示し、同様の感度でMRM方法により検出された(図2(A))。
【0084】
また、各抽出物を10μg/mL濃度でMeOHに溶解した後、10μLをHPLCした後、MRM方式のLC-MS/MSを利用して分析した。フジモドキの花抽出物(DGF-EX)と、フジモドキの幹及び根抽出物(DG-EX)の両方で有効成分DGH-1とDGH-2が検出された(図2(B))。
【0085】
実施例3:フジモドキの花抽出物の遺伝毒性試験
前記実施例1で得られたフジモドキの花抽出物のインビトロ遺伝毒性を確認するために、下記のように復帰突然変異実験及び染色体異常実験を行った。
【0086】
3-1.復帰突然変異実験
フジモドキの花抽出物の遺伝毒性を確認するために、GLP(Good Laboratory Practice.)機関であるバイオトクステック社で、食品医薬安全庁のガイドラインに準じて復帰突然変異試験を行った。
【0087】
試験物質である前記実施例1で得られたDGF-EXの遺伝子の突然変異誘発性を確認するために、ヒスチジン要求性菌株であるサルモネラ・ティフィムリウムTA98、TA100、TA1535、TA1537とトリプトファン要求性菌株である大腸菌WP2uvrA(pKM101)菌株を利用して代謝活性化系の存在(S9+)下及び非存在(S9-)下の場合に対して、復帰突然変異試験を行った。
【0088】
(1)用量設定試験
本試験の最高用量を設定するために、ガイドラインで推薦する5,000μg/プレートを最高用量とし、以下共沸4で1,250、313、78.1及び19.5μg/プレートで用量設定試験を行った。
【0089】
その結果、試験物質DGF-EXによる生育阻害が、代謝活性化系非存在下のTA98及びTA1535菌株の1,250μg/プレート以上、TA100菌株の313μg/プレート以上、TA1537菌株の78.1μg/プレート以上、存在下のTA98及びTA1535菌株の5,000μg/プレート,TA100及びTA1537菌株の1,250μg/プレート以上で観察された。代謝活性化系非存在下及び存在下のWP2uvrA(pKM101)菌株では生育阻害が観察されなかった。
【0090】
従って、本試験である復帰突然変異試験の用量は、下記表6のように設定した。また、陰性対照群及び陽性対照群を設定した。
【0091】
【表6】
【0092】
(2)復帰突然変異試験
各菌株に試験物質DGF-EXを前記濃度で処理し、培養した後、復帰変異コロニー数を目視で計数した。その結果を下記表7に示した。
【0093】
【表7】
S.D:標準偏差
*:成長抑制を示す
【0094】
その結果、試験物質群で代謝活性化系の有無に関係なく、各菌株の全ての用量に対して、復帰変異コロニー数は、陰性対照群の2倍を超えることなく、用量依存的である増加も観察されなかった。陽性対照群では、各菌株の復帰変異コロニー数が陰性対照群と比較して2倍以上と明らかに増加した。これを図1に示した。
【0095】
図1(B)に示すように、試験物質DGF-EXは、代謝活性化系の存在下のTA98、TA1535、TA1537菌株で全ての用量に対して、復帰変異コロニー数は陰性対照群の2倍を超えることなく、突然変異誘発性がなかったことが確認された。
【0096】
試験物質による生育阻害が代謝活性化系非存在下のTA98及びTA1535菌株の625μg/プレート以上、TA100菌株の156μg/プレート以上、TA1537菌株の87.1μg/プレート、存在下のTA98及びTA1535菌株の2,500μg/プレート以上、TA100菌株の1,250μg/プレート、TA1537菌株の625μg/プレート以上で観察された。代謝活性化系非存在下及び存在下のWP2uvrA(pKM101)菌株では生育阻害が観察されなかった。
【0097】
以上の結果から、本試験条件下において、試験物質DGF-EXは、遺伝子突然変異誘発性がないことが判定された。
【0098】
3-2.染色体異常実験
フジモドキの花抽出物の遺伝毒性を確認するために、GLP(Good Laboratory Practice.)機関であるバイオトクステック社で、食品医薬安全庁のガイドラインに準じて染色体異常試験を行った。
【0099】
試験物質である前記実施例1で得られたDG-EXの染色体の構造的異常誘発性を確認するために、哺乳類の培養細胞株であるCHL(Chinese Hamster Lung)/IU細胞を用いて、染色体の構造的異常誘発性を評価した。
【0100】
(1)細胞増殖抑制試験
本試験である染色体異常試験の最高用量設定のために、DGF-EX5,000μg/mLを最高用量とし、以下2,500,1,250,625,313,156,78.1,39.1及び19.5μg/mLで細胞増殖抑制試験を行った。
【0101】
その結果、代謝活性化系非存在下及び存在下、連続処理法の代謝活性化系非存在下で細胞毒性が観察された。細胞増殖を明確に50%以上抑制する用量は、短時間処理法の代謝活性化系非存在下及び存在下の625μg/mL以上、連続処理法の代謝活性化系非存在下の156μg/mL以上であった。約55%細胞増殖を抑制する用量を求めた結果、短時間処理法の代謝活性化系非存在下は、428.3μg/mL及び存在下は、725μg/mL、連続処理法の代謝活性化系非存在下は133.1μg/mLであった。
【0102】
従って、本試験の用量は下記の表8ように設定した。また、陰性対照群及び陽性対照群を設定した。
【0103】
【表8】
(2)染色体異常試験
【0104】
染色体異常試験結果、短時間処理法の代謝活性化系非存在下及び存在下、連続処理法の代謝活性化系非存在下の染色体異常を有する細胞の出現頻度は5%未満であり、染色体異常誘発作用は確認されなかった。陰性対照群と比較して、統計学的に有意な差も観察されなかった。各処理群に対する陽性対照群では、構造異常を有する細胞の出現頻度は10%以上であり、陰性対照群と比較時統計的に有意に増加した。その結果を下記の表9に示した。
【0105】
【表9】
略語:
ctg:染色分体型ギャップ
csg:染色体ギャップ
ctb:染色分体切断
cte:染色分体交換
csb:染色体切断
cse:染色体交換
frg:フラグメンテーション
end:核内倍加
pol:倍数性
MMC:マイトマイシンC
B[a]P:ベンゾ[a]ピレン
RPD:相対的細胞集団倍加
Trt-Rec time:治療リカバリ時間
gap-:gapを除いた構造異常を有する細胞の合計数
gap+:gapを含む構造異常を持つ細胞の合計数
a):染色体異常を有する細胞数から除外されたもの
*:p<0.01
【0106】
以上の結果から、本試験条件下で試験物質DGF-EXの染色体異常誘発性は陰性と判定された。
【0107】
実施例4:Nurr1タンパク質活性に対するフジモドキの花抽出物の効果確認
前記実施例1で得られたDGF-EXのNurr1タンパク質活性化効果を確認するために、GAL4検定システムを利用してNurr1タンパク質活性実験を行った。
【0108】
GAL4-LBDプラスミド、GAL4が結合できるルシフェラーゼプラスミド及びβ-ガラクトシダーゼをヒト由来神経芽細胞(neuroblast)のBE(2)C細胞に形質注入した後、DGF-EXを1、25及び40ppmの濃度で16時間処理した。このように処理した細胞を20時間37℃、5%二酸化炭素培養器で培養した後、抽出物はDMSOに溶解して処理し、対照群には1%DMSOを処理した後、ルシフェラーゼ蛍光分析を行った。その結果を図3に示した。
【0109】
図3に示すように、BE(2)C細胞でDGF-EXによりNurr1タンパク質の活性が増加することを確認した。DGF-EXは1ppm及び25ppmの濃度でNurr1タンパク質を有意に活性化させた。特に、DGF-EXは25ppmの濃度で処理したとき、最大活性を示しており、対照群と比較して約2倍以上のNurr1タンパク質活性化活性を示した。
【0110】
また、DGF-EXと前記比較例1で得られたDG-EXのNurr1タンパク質活性を前記のような方法で比較し、その結果を図4に示した。
【0111】
図4に示すように、DGF-EXはDG-EXよりも1、10及び50ppmでそれぞれ21、23、120%高い活性を示した。
【0112】
実施例5:パーキンソン病動物モデルにおけるフジモドキの花抽出物の効果確認
【0113】
フジモドキの花抽出物がパーキンソン病動物モデルに及ぼす影響を確認するために本試験を行った。
【0114】
中脳の黒質部位に存在するドーパミン性神経細胞を特異的に死滅させるために、実験群で18匹のSDラット(6週齢、コアテク社製)に定位固定性道具(stereotaxic tool)を利用して脳のAP(-4.3)、ML(-1.8)、DV(-8.2)部位とAP(-5.0)、ML(-1.8)、DV(-8.2)部位に、6-OHDA(0.2μg/μl、最終反応液量5μl)を直接注入して、パーキンソン病動物モデルを製作した。前記6-OHDA投与30分前に、デシプラミン(desipramine)を25mg/kgの用量で投与することによって、ドーパミン性神経細胞以外の細胞死を抑制させた。また、対照群で6匹のSDラット(6週齢、コアテク社製)に6-OHDAの代わりにPBSを注入した。
【0115】
6-OHDAを注入した18匹のうちの6匹には一般飼料を与え(対照群)、6匹にはフジモドキの花抽出物の1日投与量が50mg/kgになるように配合された飼料、残りの6匹にはフジモドキの花抽出物の1日投与量が100mg/kgになるように配合された飼料を給餌させた。
【0116】
術後、2週及び4週目に回転テストを行った。ドーパミン受容体作用物質であるアポモルヒネ(apomorphine)をパーキンソン病動物モデルに注射することにより、ドーパミンの除神経性過敏(denervation supersensitivity)によって病変反対側への回転が誘発された。これは回転運動測定器(rotometer)を利用して定量的に測定が可能である。その結果を図5に示した。
【0117】
図5に示すように、フジモドキの花抽出物は、公知のフジモドキ根抽出物の一般的投与濃度と比較して、低濃度で投与しても2週後及び4週後のアポモルヒネによる回転数が含まれた飼料を与えたラットで明確に減少することを確認した。
【0118】
実施例6:パーキンソン病動物モデルにおけるフジモドキの花抽出物の効果の免疫組織化学分析
前記実施例5において、フジモドキの花抽出物のパーキンソン動物モデルに対する治療効果の確認に続いて、実際に中脳の黒質部位でドーパミン性神経細胞の死滅がフジモドキの花抽出物投与で抑制されたか否かを追加的に調査した。
【0119】
前記実施例5と同様に、パーキンソン病動物モデルを製造した後、術後4週目にラットを殺した後、4%パラホルムアルデヒドで潅流(perfusion)した後、脳を摘出した。ビブラトーム(vibratome)で前記脳を厚さ40μm薄片(section)にした後、チロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase)抗原で免疫染色を行った。前記薄片を3%過酸化水素額で処理し、PBSで3回洗浄した後、5%ウマ血清で1時間、室温でブロッキングした後、チロシン水酸化酵素抗原を4℃で一晩処理した。前記薄片をPBSで洗浄後、2次抗ウサギIgGを処理した後、アビジン・ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体(avidin-biotinylated peroxidase complex)と3,3’-ジアミノベンジジンを処理した。発色して染色されたドーパミン性神経細胞を顕微鏡下で観察し、その結果を図6に示した。神経細胞数をカウントし、その結果を図7に示した。
【0120】
図6に示すように、6-OHDAを注入した左側黒質(6-OHDA)と注入しなかった右側黒質部位(unlesioned)を比較すると、一般飼料(vehicle)を投与したラットの場合、6-OHDAを注入した黒質部位におけるドーパミン性神経細胞が正常黒質と比較して、顕著に減少していることが確認された。しかし、フジモドキの花抽出物(DGF)を10mg/kgと50mg/kgで投与した場合、6-OHDAを注入した黒質でも正常黒質部位と同等水準の神経細胞が維持されることが確認された。
【0121】
また、図7に示すように、6-OHDAを注入した結果、97.5%のドーパミン性神経細胞が死滅したが、フジモドキの花抽出物(DGF)を10mg/kg及び50mg/kg投与したとき、ドーパミン性神経細胞の死滅が顕著に抑制(それぞれ、39.6%及び70.1%死滅)されることが確認された。
【0122】
これにより、フジモドキの花抽出物(DGF)が6-OHDAによるドーパミン性神経細胞死滅を強力に抑制していることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7