IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェンチェン ベイク バイオテクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】多官能性タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230206BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230206BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230206BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20230206BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20230206BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230206BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230206BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C07K16/30
C07K14/52
C07K14/715
C07K14/725
C12N15/13
C12N15/19
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
A61K39/395 D
A61K35/76
A61K35/12
A61K36/06
A61P37/02
A61P35/02
A61P35/00
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019556411
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 CN2017118984
(87)【国際公開番号】W WO2018121605
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】201611246592.0
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521157890
【氏名又は名称】シェンチェン ベイク バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲鳳▼禹
(72)【発明者】
【氏名】高斌
(72)【発明者】
【氏名】王▲れい▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲亞▼松
(72)【発明者】
【氏名】魏▲卿▼
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527919(JP,A)
【文献】特表2014-514314(JP,A)
【文献】特表2013-502209(JP,A)
【文献】特表2013-541335(JP,A)
【文献】Clin. Cancer Res., 2016.07.15, Vol.22, No.14, pp.3440-3450
【文献】Hum. Vaccin. Immunother., 2016.06.20, Vol.12, No.11, pp.2790-2796
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ペプチド鎖としてのポリペプチド鎖Xと補助ペプチド鎖Yを含むヘテロダイマーであるタンパク質であって、
前記補助ペプチド鎖Yは、抗原3結合ドメインR4と、主ペプチド鎖X連結ドメインR5とを含むか、または、前記補助ペプチド鎖Yは、主ペプチド鎖連結ドメインR5であり;
前記ポリペプチド鎖Xは、抗原1結合ドメインR1、補助ペプチド連結ドメインR2、および抗原2結合ドメインR3を含み;
前記補助ペプチド連結ドメインR2は、サイトカイン、またはサイトカイン受容体のサイトカイン結合ドメインであり;
前記主ペプチド鎖連結ドメインR5は、前記ペプチド鎖Xの中の補助ペプチド鎖連結ドメインR2と互いに結合し;
前記抗原2結合ドメインR3は、T細胞のCD3を認識する受容体または抗体であるか、または、前記抗原2結合ドメインR3は、NK細胞のCD16を認識する受容体または抗体である、
タンパク質。
【請求項2】
前記抗原1結合ドメインR1の位置および前記抗原2結合ドメインR3の位置が交換可能であり、または、
前記抗原1結合ドメインR1の位置および前記抗原3結合ドメインR4の位置が交換可能であり、または、
前記抗原2結合ドメインR3の位置および前記抗原3結合ドメインR4の位置が交換可能である、
請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記補助ペプチド鎖連結ドメインR2および前記主ペプチド鎖連結ドメインR5が、相互にサイトカインおよびそれらの受容体サブユニットの対である、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記サイトカインがγcファミリーサイトカインであり、前記γcファミリーサイトカインが、IL2、IL4、IL7、IL9、IL15またはIL21である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記サイトカインおよびその受容体サブユニットが、IL15およびIL15RαまたはIL4およびIL4Rαからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記抗原3結合ドメインR4が結合する抗原3は、以下のがん:脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、および子宮がんに関連した抗原のいずれか1つから選択され;
前記抗原1結合ドメインR1が結合する抗原は、以下のがん:脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、および子宮がんに関連した抗原のいずれか1つから選択される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記がんに関連した抗原は、以下の抗原:CD123、CD19、CD20、CD22、CD37、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、BCMA、PSMA、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGEA3、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、hsp70-2、M-CSF、PSA、PAP、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、テロメラーゼ、PCTA-1、MAGE、ELF2M、IGF-I、IGF-II、IGF-I受容体、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、1GH-IGK、MYL-RAR、GP100、Mart1、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、WT1、CD68、FGF-5、G250、EpCAM、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV 18、NB/70K、RCAS1、SDCCAG16、TA-90、TAAL6、TAG72、TLP、p53、Ras、TPS、エプスタインバー疾患抗原EBVA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6、ヒトパピローマウイルス(HPV)E7、Her2PDL1、または上記抗原に由来する短いペプチドとのMHCの複合体のうちの1つである、
請求項6に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記がんに関連した抗原が、以下の抗原:CD19、CD20、CD22、CD123、CD33/IL3Ra、Her2、PDL1、GP100、Mart1、BCMA、WT-1、NY_ESO-1、または上記抗原に由来する短いペプチドとのMHCの複合体のうちのいずれか1つから選択される、請求項7に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記がんに関連した抗原が、以下の抗原:CD19、CD20、CD22、Her2、PDL1、WT-1、GP100、Mart1、BCMA、NY_ESO-1、または上記抗原に由来する短いペプチドとのMHCの複合体のうちのいずれか1つから選択される、請求項8に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記抗原1結合ドメインR1が、抗原結合抗体、抗原結合リガンド、抗原結合受容体または抗原結合機能を有するペプチドであり、
前記抗原結合抗体が、インタクトな免疫グロブリン、抗体Fc、抗体Fab、抗体VHもしくはVHH、抗体VL、またはscFvのうちいずれかの完全長ペプチド鎖もしくは部分的ペプチド鎖であり、
前記抗原結合リガンドまたは前記抗原結合受容体が、受容体またはリガンドのうちいずれかの完全長ペプチド鎖もしくは部分的ペプチドである、請求項1~9のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記ポリペプチド鎖Xの各構成成分または前記タンパク質の主ペプチド鎖の各構成成分または補助ペプチド鎖の各構成成分が、1~20のアミノ酸残基からなるポリペプチドリンカーによって連結されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記ポリペプチドリンカーがグリシンおよび/またはセリンに富む、請求項11に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記抗原1結合ドメインR1が、抗CD19-ScFvもしくは抗MHC/GP100-VHHもしくは抗MHC/Mart1-VHHもしくは抗MHC/WT1、もしくはPD1の細胞外領域、もしくは抗CD22-ScFv、もしくは抗CD3-ScFvもしくは抗CD16-ScFvであり;または、
前記補助ペプチド連結ドメインR2が、IL15RαsushiもしくはIL4Rα-N-FN3もしくはIL15もしくはIL4であり;または、
前記抗原2結合ドメインR3が抗CD3-ScFvもしくは抗CD16-ScFvもしくは抗CD19-ScFvもしくは抗MHC/GP100-VHHもしくは抗MHC/Mart1-VHHもしくは抗WT1もしくはPD1の細胞外領域もしくは抗CD22-ScFvであり;または、
前記抗原3結合ドメインR4が、PD1の細胞外ドメインもしくは抗MHC/GP100-VHHもしくは抗CD22-ScFvもしくは抗CD19-ScFvもしくは抗MHC/Mart1-VHHもしくは抗MHC/WT1もしくは抗CD3-ScFvもしくは抗CD16-ScFvであり;または、
前記主ペプチド鎖連結ドメインR5が、IL15もしくはIL4もしくはIL15RαsushiもしくはIL4Rα-N-FN3であり、
抗CD19-ScFvのアミノ酸配列が配列1であり、前記IL15Rαsushiのアミノ酸配列が配列2であり、前記抗CD3-ScFvのアミノ酸配列が配列3であり、PD1の細胞外領域のアミノ酸配列が配列4であり、IL15のアミノ酸配列が配列5であり、抗MHC/GP100-VHHのアミノ酸配列が配列10であり、抗MHC/Mart1-VHHのアミノ酸配列が配列11であり、抗MHC/WT1-VHのアミノ酸配列が配列12であり、IL4Rα-N-FN3のアミノ酸配列が配列13であり、抗CD16-ScFvのアミノ酸配列が配列14であり、抗CD22-ScFvのアミノ酸配列が配列15であり、IL4のアミノ酸配列が配列16である、
請求項12に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列8であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列9であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列17であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列9であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列17であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列18であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列19であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列9であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列8であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列20であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列21であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列9であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列22であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列9であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列23であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列24であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列25であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列26であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列27であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列28であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列29であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列9であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列30であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列31であり;または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列21であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列5であり、または
前記タンパク質の前記主ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列8であり、前記補助ペプチド鎖のアミノ酸配列が配列5である、請求項13に記載のタンパク質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸分子であって、主ペプチド鎖をコードする核酸分子および補助ペプチド鎖をコードする核酸分子を含む核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含有する組換えベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の核酸分子を含有する発現カセット。
【請求項18】
請求項15に記載の核酸分子を含有する組換え微生物株。
【請求項19】
請求項15に記載の核酸分子を含有する組換えウイルス。
【請求項20】
請求項15に記載の核酸分子を含有する細胞。
【請求項21】
前記細胞が、原核細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞である、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記タンパク質の抗原を発現する標的細胞の、免疫細胞による阻害または死滅を媒介する製品を調製するための、請求項1~14のいずれか一項に記載のタンパク質の使用。
【請求項23】
前記タンパク質の抗原を発現する標的細胞の、免疫細胞による阻害または死滅を媒介する製品を調製するための、請求項15に記載の核酸分子の使用。
【請求項24】
前記タンパク質の抗原を発現する標的細胞の、免疫細胞による阻害または死滅を媒介する製品を調製するための、請求項16に記載の組換えベクターの使用。
【請求項25】
前記タンパク質の抗原を発現する標的細胞の、免疫細胞による阻害または死滅を媒介する製品を調製するための、請求項18に記載の組換え微生物株の使用。
【請求項26】
前記タンパク質の抗原を発現する標的細胞の、免疫細胞による阻害または死滅を媒介する製品を調製するための、請求項19に記載の組換えウイルスの使用。
【請求項27】
前記タンパク質の抗原を発現する標的細胞の、免疫細胞による阻害または死滅を媒介する製品を調製するための、請求項20または21に記載の細胞の使用。
【請求項28】
前記免疫細胞が、T細胞もしくはNK細胞である、請求項22~27のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学の分野、特に多官能性タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
二官能性抗体または二価抗体としても公知の二重特異的抗体は、特異性および二官能性により同時に2つの異なる抗原に特異的に結合することができ、腫瘍免疫療法および自己免疫性疾患等の分野において将来広い適用を有する。
【0003】
二重特異的抗体は天然に見出されず、人工的な方法によってのみ調製することができる。現時点では、二重特異的抗体を調製する方法には、化学的コンジュゲーション、ハイブリドーマ技術および組換えDNA技術等が主に含まれる。
【0004】
Medarexは、30年前という早い時期に二重特異的抗体を開発しており、2001年にフェーズIII臨床治験を実施している。しかし、臨床治験の失敗および製造上の問題のためにこの分野の研究は沈黙している(Garber K、2014年)。2009年に、Trionによって開発された二重特異的抗体カツマキソマブはEpCAM陽性の腫瘍によって引き起こされる悪性腹水の処置のために欧州連合によって承認されたが、その高い免疫原性はその臨床上の適用を大いに制限する(Spasevska I、2014年)。近年、抗体操作技術の急速な進歩は、二重特異的抗体の開発のための新しい機会をもたらしている。
【0005】
1.化学的カップリングによる合成二重特異的抗体
【0006】
Her2陽性の腫瘍細胞を死滅させるためのT細胞を動員するために、Lum Laboratoryにおいて市販のHerceptinのOKT3との化学的カップリングによってHer2/CD3二重特異的抗体が得られた(Msenら、2001年)。臨床的に広く使用されている抗体に基づくこの抗体コンジュゲートは、臨床上の安全性および有効性の非常に優れた記録を示した。臨床治験に参加した転移性乳がんの患者22人のうちの5人は、使用後14.5週まで安定病態状態のままだった(Lumら、2015年)。
【0007】
OKT3抗体は、EGFR陽性腫瘍(Reush Uら、2006年;MADら、2015年)、CD20陽性腫瘍系(Lumら、2013年)、B7-H3陽性腫瘍(MAら、2016年)などを含む、対応する標的を有する腫瘍を死滅させるために他の臨床的に使用される抗体と化学的にコンジュゲートするためにも使用されている。
【0008】
2.ハイブリドーマ技術によって生成される二重特異的抗体
【0009】
異なる重鎖および軽鎖からなる最大11個の抗体を分泌することができるハイブリドーマを得るために、Lindnorerらは、抗CD3抗体を分泌するラットハイブリドーマを、抗EpCAMを分泌するマウスハイブリドーマに融合した(Lindnoerら、1995年)。異種のラットおよびマウスのハイブリドーマから調製された二重特異的抗体は、ヒト抗マウス(HAMA)交差反応性を必然的に生成する。驚くべきことに、この抗薬物応答は抗体への患者の応答の有効性に正比例し(OTT MGら、2012年)、その機構はさらに探究する必要性がある。それは、2009年に臨床使用のために承認されている(Carberk、2014年)。Her/CD3抗体(Kieweら、2006年)は、同じプラットホームで開発された。再発したB細胞リンパ腫の処置のための抗CD20/CD3抗体が臨床試験のために承認されており、優れた安全性記録および有効性を示す(Buhmannら、2009年)。メラノーマの実験的研究では、抗CD2/CD3の二重特異的抗体が使用されている(Rufら、2004年)。
【0010】
3.組換え技術による二重特異的分子の発現
【0011】
Genentechの科学者Shalabyらは、リンカーペプチドを通してヒト化抗CD3抗体UCHT1のFab断片を抗HER2抗体4D5に連結し、E.coli発現系でのその発現に成功した。この二重特異的抗体は、HER2高発現乳がん細胞系SK-BR-3を特異的に認識し、ヒト末梢血T細胞によるこの腫瘍細胞系の死滅を媒介する(Shalabyら、1992年)。合成生体分子およびタンパク質組換え技術の発達により、標的腫瘍にT細胞を動員するために遺伝子操作によって調製されたタンパク質分子が注目され、そのような薬物の主流になっている。
【0012】
BiTE:2014年12月に、FDAは、急性リンパ芽球性白血病の処置のために、CD3を標的にする新しい操作された二重特異的抗体分子BiTE(二重特異的T細胞係合剤)を承認した。この新規の小さいタンパク質分子は、リンカーペプチドを通してOKT3のscFvおよび抗CD19 scFvによって直接的に連結され(Nagorsen Dら、2012年)(特許第201180063222.2号;201580009124.9号)、非ホジキンリンパ腫の増殖を阻害するために非常に低い濃度しか必要としない(Bargou Rら、2008年)。この分子にはT細胞を効率的に動員して標的細胞を死滅させる能力があるので、EpCAM、CEAおよびDSMA等を認識するいくつかのBiTE分子を含む、BiTEプラットホームに基づく異なる腫瘍を標的にするより多くの製品が臨床試験に入っている(Thakur Aら、2016年)。
【0013】
TandAbはリンカーペプチドでBiTE様二重特異的分子の対を接続して、BiTEの分子量の2倍の160kDの分子量を有するTandAbと呼ばれる四量体分子を形成し、それをより高い親和性でCD3およびCD19に結合させる(Reusch Uら、2015年)。同時に、TandAbの薬物動態もBiTEと比較して有意に向上し、血中半減期は約20時間に到達する。それは、非ホジキンリンパ腫および急性リンパ芽球性白血病の死滅を媒介することができる。
【0014】
DARTは、ジスルフィド含有リンカーペプチドを通した抗CD19および抗CD3 scFvの組合せである。それは、腫瘍を死滅させるためにT細胞を動員することができ、安定して容易なスケール調製の利点を有する(Johnson Sら、2010年;kuo SRら、2012年)。
【0015】
FcabFvは、OKT3の抗原認識断片を、変異したFcと融合し(Wozniak Gら、2010年)、それはCH3変異によって生成されるHer2を認識する機能を有し、従来の抗体に非常に類似した新規の二重特異的抗体を発現する。それは、Her2陽性の腫瘍を有効に標的にすることができ、腫瘍増殖をin vivoで抑制することができる(Wang Lら、2013年)。
【0016】
TriKEはCD33抗体のscFvとCD16抗体のscFvとの間にIL-15を挿入し、2つの連結したペプチドによって連結される。それはNK細胞の活性化および生存をin vivoで有効に促進することができ、一方で、腫瘍を効果的に標的にすることができる。骨髄性悪性疾患を処置するか、または固形腫瘍を標的にするために、NK細胞に有益であるIL-15を加えること(Szun Szun Tayら、2016年;Vallera DA.ら、2016年)。
【0017】
現在では、二重特異的抗体は医薬研究の分野において新しいホットポットになっており、少なくとも30種類の二重特異的抗体が臨床開発段階にある(Garber Kら、2014年;Kontermann R Eら、2015年)。
【0018】
T細胞およびNK細胞の両方の培養培地に、特定量のIL-2を加えなければならない(Bodnarら、2008年;Grundら、2005年)。IL-15はIL-2に機能的に類似しており、同じβγ受容体を共有する。研究は、NK細胞およびCD8+T細胞の生存および増殖のために、IL-2またはIL-15が要求されることを示す(Boymanら、2007年)。IL-15およびIL-2は同じβγ受容体を共有するが、それらは特異的α受容体を各々有する。IL-15Rα-sushi(IL-15受容体αのsushiドメイン)がIL-15のスーパーアゴニストであることが判明した。アゴニストは、IL-15の機能を大いに強化することができ(Hanら、2011年;Mortierら、2006年)(特許出願第201280037114.2号、201510358540.1号)、IL-15とIL-15Rα-sushiの複合体は、T/NK細胞においてNK/CD8+T細胞を活性化し、腫瘍に対するそれらの細胞傷害を増加させるIL-2の役割を完全に置き換えることができる(Peter S. Kim1、2016年;Rosarioら、2016年)。米国国立衛生研究所(NIH)米国がん研究所は、IL-15をがん処置のための12種の免疫療法薬の中で第1位の薬剤にランクした。CD8+T細胞の生存度を支持することによって、IL-15はT細胞において長期免疫応答の維持の大きな潜在能力を実証している。IL-2と比較して、IL-15は腫瘍処置におけるより有望でより有効で毒性のより低い製品であり、T細胞およびNK細胞の両方の抗腫瘍活性を刺激することができる。二重特異的分子におけるIL-15およびIL-15Rα-sushi複合体または他の機能的サイトカインおよび受容体複合体の融合は、細胞免疫療法の有効性を向上させる主要な動向である。
PD-1(プログラム細胞死1)およびその受容体PD-L1、PD-L2は、T細胞活性の重要な調節因子である(OkazakiおよびHonjo、2007年)。他の細胞の表面のPD-L1/2へのT細胞の表面のPD-1の結合はT細胞の阻害を引き起こし、それは、ヒトにおいて自己免疫性疾患を回避し、免疫寛容をもたらす過程で重要な役割を演ずる。対照的に、免疫応答、T細胞の表面でPD1に結合するために腫瘍細胞それ自体において、または腫瘍微小環境においてPD-L1/L2を発現させることによる腫瘍逃避を抑制する目的、負のシグナルを伝達し、T細胞機能の減退およびT細胞の消耗に導く目的を達成するために、腫瘍細胞はPD1/PD-L1チェックポイントの自己調節機構を利用する(Freemanら、2000年;Keirら、2008年;Parryら、2005年)。したがって、研究者らは、それぞれの抗原に結合するためのPD-1またはPD-L1抗体の使用を探求し、腫瘍を標的にする間T細胞のPD1チェックポイント経路を遮断した。結果は、この方法がT細胞活性を有意に増加させ、病原微生物 がんへの体の抵抗性を強化することができることを示した(Topalianら、2012年;Yanan Guoら、2016年)。いくつかの臨床試験が、メラノーマ(Choら、2016年;Hamidら、2013年)、多発性骨髄腫(Badrosら、2015年)、白血病(Porkkaら、2014年)(特許出願第200380109929.8号、201310258289.2号、201180019629.5号)に対するPD-1/PD-L1抗体による優れた治療効果を実証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】中国特許出願公開200380109929号明細書
【文献】中国特許出願公開201310258289号明細書
【文献】中国特許出願公開201180019629号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的の1つは、ポリペプチド鎖Xを提供することである。
【0021】
本発明により提供されるポリペプチド鎖Xは、抗原1結合ドメインR1、補助ペプチド鎖連結ドメインR2および抗原2結合ドメインR3を含む。
【0022】
補助ペプチド連結ドメインR2は、サイトカインまたはサイトカイン受容体中のサイトカイン結合ドメインである。
【0023】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0024】
抗原2結合ドメインR3は、T細胞のCD3を認識する抗体または分子である。
【0025】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0026】
抗原2結合ドメインR3は、NK細胞の上のCD16を認識する受容体または抗体または他の分子である。
【0027】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0028】
抗原1結合ドメインR1が結合する抗原は、以下のがんに関連した抗原のいずれかから選択される:脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫および子宮がん。
【0029】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0030】
がん関連の抗原は、好ましくは以下の抗原のいずれか1つからのものである:CD123、CD19、CD20、CD22、CD37、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、BCMA、PSMA、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGEA3、βヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、hsp70-2、M-CSF、PSA、PAP、LAGE-1a、p53、プロステイン(Prostein)、PSMA、Her2/neu、テロメラーゼ、PCTA-1、MAGE、ELF2M、IGF-I、IGF-II、IGF-I受容体、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、1GH-IGK、MYL-RAR、GP100、Mart1、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、WT1、CD68、FGF-5、G250、EpCAM、MA-50、MG7-Ag、MOV 18、NB/70K、RCAS1、SDCCAG16、TA-90、TAAL6、TAG72、TLP、p53、Ras、TPS、エプスタインバーウイルス抗原EBVA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6、ヒトパピローマ毒性(HPV)E7抗原または上記の抗原のいずれかに由来する短いペプチドとのMHCの複合体。
【0031】
上記のがん関連抗原のいずれか1つのものである短いペプチドとのMHCの複合体中の抗原。
【0032】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0033】
がん関連の抗原は、好ましくは以下の抗原のいずれか1つから選択される:CD19、CD20、CD22、CD123、CD33/IL3Ra、Her2、PDL1、GP100、Mart1、BCMA、WT-1およびNY-ESO-1または上記の抗原のうちの1つの短いペプチドとのMHCの複合体。
【0034】
MHCおよび抗原の短いペプチドの複合体中の抗原は、好ましくはがん関連の抗原から選択される以下の抗原のいずれか1つである。
【0035】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0036】
がん関連の抗原は、好ましくは以下の抗原のいずれか1つから選択される:CD19、CD20、CD22、Her2、PDL1、WT1、GP100、Mart1、BCMAおよびNY-ESO-1または上記の抗原に由来する短いペプチドとのMHCの複合体。
【0037】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0038】
抗原1結合ドメインR1は、抗原結合抗体、抗原結合リガンド、抗原結合受容体または抗原結合機能を有するポリペプチドである。
【0039】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0040】
抗原結合抗体は、インタクトな免疫グロブリン、抗体Fc、抗体Fab、抗体VH、抗体VL、またはscFvの完全長ペプチド鎖もしくは部分的ペプチド鎖である。
【0041】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0042】
抗原結合リガンドまたは抗原結合受容体は、完全長ペプチド鎖または部分的ペプチド鎖である。
【0043】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0044】
抗原1結合ドメインR1は、抗原認識機能を有するTCRである。
【0045】
上記のポリペプチド鎖Xでは、
【0046】
抗原1結合ドメインR1は、抗原認識機能を有するTCR様抗体または他の分子である。
【0047】
本発明の別の目的は、タンパク質を提供することである。
【0048】
本発明によって提供されるタンパク質は、主ペプチド鎖として請求項1のペプチド鎖Xと、補助ペプチド鎖Yとを含むヘテロダイマーである。
【0049】
補助ペプチド鎖Yは、R4を抗原3結合ドメインとして、およびR5を主ペプチド鎖X連結ドメインとして含む。
【0050】
または、補助ペプチド鎖Yは、主ペプチド鎖連結ドメインR5である。
【0051】
主ペプチド鎖連結ドメインR5およびペプチド鎖Xの中の補助ペプチド鎖連結ドメインR2は互いに結合する。
【0052】
上の主ペプチド鎖および補助ペプチド鎖の機能的ドメインは、ポリペプチドリンカーによって連結される。これらのポリペプチドリンカーはグリシンおよび/もしくはセリンに富む配列または複数のコピーのグリシンおよび/もしくはセリンに富む配列であり、ポリペプチドリンカーは1から20のアミノ酸残基を一般的に含む。
【0053】
主ペプチド鎖連結ドメインR5およびサイトカインまたはサイトカイン受容体のサイトカイン結合ドメインR2は、相互結合機能を有するペプチドの対である。
【0054】
上記の補助ペプチド鎖連結ドメイン(R2)および主ペプチド鎖連結ドメイン(R5)は、サイトカインおよび受容体サブユニットであるかまたはその逆である。ヘテロダイマーは、補助ペプチド鎖連結ドメイン(R2)の主ペプチド鎖連結ドメイン(R5)への結合によって、主ペプチド鎖(X)と補助ペプチド鎖(Y)との間で形成される。
【0055】
上記のタンパク質の間で、
【0056】
抗原3結合ドメインR4が結合する抗原3は、以下のがんに関連した抗原のいずれかから選択される:脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫および子宮がん。
【0057】
上記のタンパク質の間で、
【0058】
がん関連の抗原3は、好ましくは以下の抗原のうちの1つである:CD123、CD19、CD20、CD22、CD37、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、BCMA、PSMA、EGFRvIII、GD-2、NY-ESO-1、MAGEA3、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、hsp70-2、M-CSF、PSA、PAP、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、PDL1、テロメラーゼ、PCTA-1、MAGE、ELF2M、IGF-I、IGF-II、IGF-I受容体、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、1GH-IGK、MYL-RAR、GP100、Mart1、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、TAG-72、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、WT1、CD68、FGF-5、G250、EpCAM、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、RCAS1、SDCCAG16、TA-90、TAAL6、TAG72、TLP、p53、Ras、TPS、エプスタインバーウイルス抗原EBVA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6ヒトパピローマウイルス(HPV)E7抗原複合体、または上記の抗原のうちの1つに由来するペプチドに会合したMHCの複合体。
【0059】
MHC複合体中の抗原および由来する短いペプチドは、がん関連抗原3、好ましくは上記抗原のいずれかからのものである。
【0060】
上記のタンパク質の間で、
【0061】
がん関連の抗原は、好ましくは以下の抗原のいずれか1つから選択される:CD19、CD20、CD22、CD123、CD33/IL3Ra、Her2、PDL1、GP100、Mart1、BCMA、WT-1、NY_ESO-1、または上記の抗原に由来する短いペプチドとのMHCの複合体。
【0062】
MHC複合体中の抗原および由来する短いペプチドは、CD19、CD20、CD22、CD123、CD33/IL3Ra、Her2、PDL1、GP100、Mart1、BCMA、WT-1およびNY_ESO-1のいずれか1つである。
【0063】
上記のタンパク質の間で、
【0064】
がん関連の抗原は、好ましくは以下の抗原のいずれか1つから選択される:CD19、CD20、CD22、Her2、PDL1、WT1、GP100、Mart1、BCMA、NY_ESO-1、または上記の抗原に由来する短いペプチドとのMHCの複合体。MHCおよび抗原の短いペプチドの複合体中の抗原は、CD19、CD20、CD22、Her2、PDL1、WT1、GP100、Mart1、BCMA、NY_ESO-1のいずれか1つである。
【0065】
上記において、
【0066】
抗原1結合ドメインR1および抗原2結合ドメインR3の位置は、交換可能である。
【0067】
上記において、
【0068】
抗原1結合ドメインR1および抗原3結合ドメインR4の位置は、交換可能である。
【0069】
上記において、
【0070】
抗原2結合ドメインR3および抗原3結合ドメインR4の位置は、交換可能である。
【0071】
上記において、
【0072】
補助ペプチド鎖連結ドメインR2および主ペプチド鎖連結ドメインR5は、相互に結合する機能を有するペプチドの対である。好ましくは、γcサイトカインおよびそれらの受容体サブユニットの対は、互いに結合することができる。最適な選択は、IL15とIL15Rα、およびIL4とIL4Rαである。IL15は、T細胞、NK細胞およびNKT細胞のホメオスタシスおよび増殖の維持において不可欠な役割をし、その一方で、B細胞、樹状細胞(DC)、マクロファージおよび肥満細胞にさらなる生理学的機能を提供する。IL-15は、IL-2より有望的におよびより有効にCD8+T細胞の生存を支持することができる。それは腫瘍処置においてより低毒性であり、T細胞およびNK細胞の抗腫瘍活性を刺激することができる。
【0073】
上記において、
【0074】
補助ペプチド鎖連結ドメインR2および主ペプチド鎖連結ドメインR5は、サイトカインおよび受容体サブユニットの対であり、相互に結合する。
【0075】
上記において、
【0076】
言及されたサイトカインは、γcファミリーサイトカインである。
【0077】
γcファミリーサイトカインは、IL2、IL4、IL7、IL9、IL15またはIL21である。
【0078】
上記において、
【0079】
サイトカインおよび受容体サブユニットは、最適には、IL15およびIL15Rαからなる群、ならびにIL4およびIL4Rαの群から選択される。
【0080】
上記において、
【0081】
ポリペプチドもしくはタンパク質の主ペプチド鎖の各構成成分または補助ペプチド鎖の構成成分は、1~20のアミノ酸残基からなるポリペプチドリンカーによって連結される。
【0082】
上記において、
【0083】
ポリペプチドリンカーは、グリシンおよび/またはセリンに富む。
【0084】
上記において、
【0085】
抗原1結合ドメインR1は、抗CD19-ScFvまたは抗MHC/GP100-VHHまたは抗MHC/Mart1-VHHまたは抗MHC/WT1であるか、またはPD1の細胞外領域、または抗CD22-ScFv、または抗CD3-ScFvまたは抗CD16-ScFvである。
【0086】
または、補助ペプチド連結ドメインR2は、IL15RαsushiもしくはIL4Rα-N-FN3もしくはIL15もしくはIL4である。
【0087】
または、抗原2結合ドメインR3は、抗CD3-ScFvもしくは抗CD16-ScFvもしくは抗CD19-ScFv、もしくは抗MHC/GP100-VHHもしくは抗MHC/Mart1-VHHもしくは抗WT1であるか、もしくはPD1の細胞外領域もしくは抗CD22-ScFvである。
【0088】
または、抗原3結合ドメインR4は、PD1の細胞外ドメインもしくは抗MHC/GP100-VHHもしくは抗CD22-ScFvもしくは抗CD19-ScFv;もしくは抗MHC/Mart1-VHHもしくは抗MHC/WT1もしくは抗CD3-ScFvもしくは抗CD16-ScFvである。
【0089】
あるいは、主ペプチド鎖連結ドメインR5は、IL15またはIL4またはIL15RαsushiまたはIL4Rα-N-FN3である。
【0090】
上記において、
【0091】
抗CD19-ScFvのアミノ酸配列は、配列1である。
【0092】
IL15Rαsushiのアミノ酸配列は、配列2である。
【0093】
抗CD3-ScFvのアミノ酸配列は、配列3である。
【0094】
PD1の細胞外領域のアミノ酸配列は、配列4である。
【0095】
IL15のアミノ酸配列は、配列5である。
【0096】
抗MHC/GP100-VHHのアミノ酸配列は、配列10である。
【0097】
抗MHC/Mart1-VHHのアミノ酸配列は、配列11である。
【0098】
抗MHC/WT1-VHのアミノ酸配列は、配列12である。
【0099】
IL4Rαのアミノ酸配列は、配列13である。
【0100】
抗CD16-ScFvのアミノ酸配列は、配列14である。
【0101】
抗CD22-ScFvのアミノ酸配列は、配列15である。
【0102】
IL4のアミノ酸配列は、配列16である。
【0103】
上記において、
【0104】
ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列8である。
【0105】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列17である。
【0106】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列19である。
【0107】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列21である。
【0108】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列22である。
【0109】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列23である。
【0110】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列27である。
【0111】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列29である。
【0112】
または、ポリペプチド鎖Xのアミノ酸配列は、配列30である。
【0113】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列8であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列9である。
【0114】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列17であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列9である。
【0115】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列17であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列18である。
【0116】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列19であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列9である。
【0117】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列8であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列20である。
【0118】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列21であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列9である。
【0119】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列22であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列9である。
【0120】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列23であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列24である。
【0121】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列25であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列26である。
【0122】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列27であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列28である。
【0123】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列29であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列9である。
【0124】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列30であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列31である。
【0125】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列21であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列5である。
【0126】
または、タンパク質の主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列8であり、補助ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列5である。
【0127】
本発明の第3の目的は、上記のポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子を提供することである。
【0128】
本発明は、主ペプチド鎖をコードする核酸分子または主ペプチド鎖をコードする核酸分子および補助ペプチド鎖をコードする核酸分子を含む、上記のポリペプチドまたはタンパク質のコード核酸分子を提供する。
【0129】
所望の分子をコードする核酸配列は、当技術分野で公知の組換え方法を使用して、例えば、遺伝子を発現する細胞に由来するライブラリーをスクリーニングすることによって、遺伝子を含むことが公知のベクターから遺伝子を得ることによって、もしくは遺伝子を含有する細胞および組織から遺伝子を直接的に単離することによって、または標準の方法による人工合成によってポリヌクレオチドを合成することによって得ることができる。
【0130】
上記の核酸分子を含有する組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、組換えウイルスまたは細胞も、本発明の範囲内にある。
【0131】
上記の組換えベクターでは、組換えベクターは、上記の核酸分子中の、主ペプチド鎖をコードする核酸分子、または主ペプチド鎖をコードする核酸分子および補助ペプチド鎖をコードする核酸分子を発現ベクターに挿入することによって得られ、上記のタンパク質を発現するベクターが得られる。
【0132】
上記の組換えベクターは、上記のポリヌクレオチド配列または組合せを含む。一実施形態では、主ペプチド鎖(X)または補助ペプチド鎖(Y)をコードする核酸はプロモーターにライゲーションすることができ、構築物は主ペプチド鎖(X)または補助ペプチド鎖(Y)の発現を達成するために発現ベクターに組み込まれる。一般的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現をモジュレートするために使用することができる、転写および翻訳ターミネーター、開始配列およびプロモーターを含む。例えば、レンチウイルスベクターは、それらが娘細胞における遺伝子の長期の安定した組込みおよび増殖を可能にするので、遺伝子の長期の安定した遺伝を達成するのに適するツールである。レンチウイルスベクターは、それらが肝細胞などの非分裂細胞に形質導入することができるので、マウスの白血病ウイルスなどの腫瘍形成レトロウイルスに由来するベクターに勝る追加の利点を有する。それらは、低い免疫原性のさらなる利点も有する。本発明により提供される多官能性タンパク質は、主ペプチド鎖(X)および補助ペプチド鎖(Y)をそれぞれコードする2つの遺伝子の共トランスフェクションを限定することなく含む、公知の技術によって同じ細胞において共発現させることができる2つのペプチド鎖を含む。発現ベクター、または主ペプチド鎖(X)および補助ペプチド鎖(Y)をコードする核酸配列、または主ペプチド鎖(X)および補助ペプチド鎖(Y)をコードするための2セットの発現フレームワークを含有する発現ベクターは、発現フレームの中にタンデムでライゲーションされ、主ペプチド鎖(X)および補助ペプチド鎖(Y)の核酸配列の間にリボソーム結合部位を挿入することによって共発現される。または、2つのポリペプチドの共発現のために2Aペプチドが使用される。
【0133】
上記の細胞では、目的の細胞は、原核細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞であり、ここで、哺乳動物細胞は好ましくはヒト細胞である。
【0134】
本発明は、上記のポリペプチド鎖Xまたは上記のタンパク質、上記の核酸分子、または上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、組換えウイルスもしくは細胞を含むキットも提供する。
【0135】
免疫療法における上記のポリペプチドまたはタンパク質、上記の核酸分子または上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスまたはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0136】
または、免疫療法製品の調製のための上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の範囲内にある。
【0137】
免疫細胞培養および/または免疫細胞拡大増殖の促進および/またはイムノアッセイにおける、上記のポリペプチドまたはタンパク質、上記の核酸分子または上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスまたはキットの使用。本発明の保護の範囲。
【0138】
または、免疫細胞培養の調製および/または免疫細胞拡大増殖の促進および/または免疫検出製品における、上記のポリペプチドまたはタンパク質、上記の核酸分子または上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスまたはキットの使用も、本発明の範囲内にある。
【0139】
または、TまたはNK細胞増殖の刺激のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0140】
または、TもしくはNK細胞増殖を刺激するための製品の調製のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0141】
または、免疫細胞の阻害を媒介するためのもしくはタンパク質において抗原を発現する標的細胞を死滅させるための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0142】
または、免疫細胞の阻害もしくはタンパク質を発現する抗原の死滅を媒介する標的細胞製品を調製するための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の範囲内にある。
【0143】
または、腫瘍細胞の阻害もしくは死滅のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の範囲内にある。
【0144】
または、腫瘍細胞の阻害もしくは死滅のための製品の調製のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0145】
または、腫瘍の処置もしくは検出のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0146】
または、治療的もしくは腫瘍検出製品の調製のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明の保護の範囲内にある。
【0147】
または、言及されたタンパク質に由来する抗原を発現する標的細胞の阻害もしくは死滅のための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明による保護の範囲内にある。
【0148】
または、言及されたタンパク質に由来する抗原を発現する標的細胞の阻害もしくは死滅のための標的細胞製品を調製するための、上記のポリペプチドもしくはタンパク質、上記の核酸分子もしくは上記の組換えベクター、発現カセット、組換え微生物株、細胞もしくは組換えウイルスもしくはキットの使用も、本発明による保護の範囲内にある。
【0149】
上において、免疫療法は、免疫細胞によって腫瘍細胞を阻害するかまたは死滅させることである。
【0150】
または、免疫細胞は、T細胞もしくはNK細胞などである。
【0151】
または、抗原は、がん関連抗原である。
【0152】
または、抗原は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がん等に関連した抗原もしくはその任意の組合せである。
【0153】
あるいは、腫瘍は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫である。卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がんのいずれか1つもしくは任意の組合せ、またはその任意の組合せ。
【0154】
または、標的細胞は、原核細胞、酵母細胞もしくは哺乳動物細胞である。
【0155】
または、哺乳動物細胞は、具体的にはヒト細胞である。
【0156】
または、ヒト細胞は、具体的には免疫細胞である。
【0157】
あるいは、免疫細胞は、具体的にはT細胞またはNK細胞である。
【0158】
上記のポリペプチドまたはタンパク質では、主ペプチド鎖の抗原結合ドメイン(R1/R3)および補助ペプチド鎖抗原結合ドメイン(R4)は、抗原に結合する能力を有する。その抗原結合ドメインのうちの1つは、ヒトT細胞のCD3もしくは受容体を認識する抗体または分子であるか、あるいはNK細胞CD16を認識する抗体または他の分子であり、他の2つは、以下の抗原からなる群より選択される腫瘍関連抗原を認識する抗体または分子である。抗原結合ドメインが結合する腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞媒介免疫応答を導き出す腫瘍細胞によって生成されるタンパク質である。本発明の抗原結合ドメインの選択は、処置される特定のタイプのがんに依存することになる。腫瘍抗原は、当技術分野で周知である。
【0159】
一実施形態では、本発明で言及する腫瘍関連抗原は、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝がん、腎臓がんおよびリンパ腫、白血病、肺がん、メラノーマ、転移性メラノーマ、中皮腫、神経芽細胞腫、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、腎臓がん、皮膚がん、胸腺腫、肉腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮がんおよびその任意の組合せからなる群より選択される腫瘍関連抗原であってもよい。
【0160】
特に:
【0161】
一実施形態では、本発明で言及する腫瘍抗原には、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α-フェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸管カルボキシエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、前立腺酵素、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺がん腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体およびメソテリンが含まれる。
【0162】
一実施形態では、腫瘍抗原は、悪性疾患に関連した1つまたは複数の抗原性がんエピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃のための標的抗原として使用することができる多くのタンパク質を発現する。これらの分子には、限定されないが、組織特異的抗原、例えばメラノーマにおけるMART-1、チロシナーゼおよびGP100、ならびに前立腺がんにおける前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異抗原(PSA)が含まれる。他の標的分子は、オンコジーンHER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の群に属する。標的抗原の他の群は、癌胎児性抗原(CEA)などの胎児がん抗原である。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的な個々の遺伝子型免疫グロブリンが、個体の腫瘍に固有である真の腫瘍特異的免疫グロブリン抗原のみを構成する。CD19、CD20およびCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原のための他の候補である。これらの抗原(CEA、HER-2、CD19、CD20、個々の遺伝子型)のいくつかは、モノクローナル抗体を使用した受動免疫療法の標的として使用され、限定的な成功が得られている。
【0163】
一実施形態では、本発明で言及する腫瘍抗原は、腫瘍特異抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)であってもよい。TSAは腫瘍細胞に固有であり、体の他の細胞には存在しない。TAA関連抗原は腫瘍細胞に固有でなく、反対に、それは、抗原への免疫寛容状態を誘導することができない条件下の正常な細胞でも発現される。腫瘍の上での抗原発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件の下で起こることができる。免疫系が未熟で応答不能であるとき、TAAは胚発生の間に正常細胞の上で発現される抗原であってよく、または、それらは、通常は正常な細胞の上に非常に低いレベルで存在するが、腫瘍細胞の上でより高いレベルで発現される抗原であってもよい。
【0164】
それらに限定されないが、TSAまたはTAA抗原の例には、以下のものが含まれる:MART-1/MelanA(MART-1)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2などの分化抗原;およびMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15などの腫瘍特異性系統抗原;CEAなどの過剰発現された胚性抗原;過剰発現されたオンコジーンおよび変異した腫瘍阻害性遺伝子(p53、Ras、HER-2/neuなど);BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、1GH-IGK、MYL-RARなどの染色体転座によって生成される固有の腫瘍抗原;ならびに、エプスタインバーウイルス抗原EBVAおよびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7などのウイルス抗原。タンパク質ベースの抗原の他の大きな群には、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、β-HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3/CA27.29/BCAA、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68/P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733/EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90/Mac-2結合タンパク質/サイクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLPおよびTPSが含まれる。
【0165】
一実施形態では、本発明で言及する腫瘍抗原は、MHCと上記の抗原性ペプチドとの複合体であってよい。これらには、限定されないが、HLA-GP100複合体、HLA-Mart1複合体、HLA-WT1複合体が含まれる。
【0166】
一実施形態では、主ペプチド鎖の抗原結合ドメイン(R1、R3)または補助ペプチド鎖の抗原結合ドメイン(R4)は、抗体、リガンド、受容体、および抗原に結合することができるポリペプチドまたはその任意の組合せである。
【0167】
抗体は、Ig、Fab、scFvもしくはその任意の組合せのインタクトなペプチド鎖または部分的ペプチドであってもよい。リガンドまたは受容体は、そのペプチド鎖全体、部分的なペプチドセグメントまたはその任意の組合せであってもよい。
【0168】
ここで、補助ペプチド鎖連結ドメイン(R2)および主ペプチド鎖連結ドメイン(R5)は、相互結合機能を有するポリペプチドの対である。
【0169】
相互結合機能を有するポリペプチドは、互いに結合することができる受容体およびリガンドの対、または互いに結合することができる抗体および抗原の対であってもよい。好ましくは、γcサイトカインおよびそれらの受容体サブユニットの対は互いに結合することができ、IL15とIL15Rα、IL4とIL4Rが好ましくは選択される。
【0170】
主ペプチド鎖および補助ペプチド鎖の個々の機能的ドメインは、グリシンおよび/もしくはセリンに富む配列または複数のコピーのグリシンおよび/もしくはセリンに富む配列であるポリペプチドリンカーによって連結され、ポリペプチドリンカーは、5~20のアミノ酸残基を一般的に含む。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1図1は、多官能性タンパク質の分子構造を示す模式図である。A:多官能性タンパク質分子は主ペプチド鎖Xおよび補助ペプチド鎖Yで構成され、ここで、主ペプチド鎖Xは抗原結合ドメインR1、補助ペプチド鎖連結ドメインR2、抗原結合ドメインR3を含み、補助ペプチド鎖Yは抗原結合ドメインR4、主ペプチド鎖連結ドメインR5を含む;B:多官能性タンパク質分子は主ペプチド鎖Xおよび補助ペプチド鎖Yで構成され、ここで、主ペプチド鎖Xは抗原結合ドメインR1、補助ペプチド鎖連結ドメインR2および抗原結合ドメインR3を含む。ペプチド鎖Yは、主ペプチド鎖連結ドメインR5を含む。C:多官能性タンパク質分子は主ペプチド鎖Xだけからなり、ここで、主ペプチド鎖Xは抗原結合ドメインR1、補助ペプチド鎖連結ドメインR2および抗原結合ドメインR3を含む。
【0172】
図2-1】図2は、多官能性タンパク質分子の遺伝子発現フレームワークを示す。
図2-2】同上
図2-3】同上
【0173】
図3図3は、SDS-PAGEの上の、発現され、精製された多官能性タンパク質分子を示す。レーン1:TiTE-1、主ペプチド鎖約65KD、補助ペプチド鎖約30KD;レーン2:TiTE-6、主ペプチド鎖約65KD、補助ペプチド鎖約30KD;レーン3:タンパク質マーカー、上から下にかけて分子量はそれぞれ160KD、120KD、100KD、70KD、50KD、40KD、30KD、25KD。
【0174】
図4-1】図4は、多官能性タンパク質分子TiTE-1、15、16および5の死滅結果を示す:A、malme-3M-CD19-lucの死滅に関するTiTE-6タンパク質の陰性対照;B、malme-3M-CD19-lucの死滅に関するTiTE-1タンパク質;C、malme-3M-CD19-lucの死滅に関するTiTE-15タンパク質;D、malme-3M-CD19-lucの死滅に関するTiTE-16タンパク質;E、malme-3M-CD19-lucの死滅に関するTiTE-5タンパク質;F、malme-3M-CD22-lucの死滅に関するTiTE-5タンパク質。本発明により提供される多官能性タンパク質TiTE-1、15、16および5は、非常に低い濃度でin vitroにおいて腫瘍細胞を死滅させることができることが実証され、濃度が0.5~5ng/10E細胞で使用されるときに最良の結果を示す。
図4-2】同上
【0175】
図5-1】図5は、多官能性タンパク質分子TiTE-6、8、9、10、11、12、13および14の死滅結果をそれぞれ示す:A、BV173-lucの死滅に関するTiTE-2タンパク質の陰性対照;B、BV173-lucの死滅に関するTiTE-6タンパク質、C、BV173-lucの死滅に関するTiTE-8、9、10、11、12、13、14タンパク質。本発明により提供される多官能性タンパク質TiTE-6、8、9、10、11、12、13および14は、WT1陽性の腫瘍細胞の死滅能力を示すことが実証された。
図5-2】同上
【0176】
図6図6は、多官能性タンパク質分子TiTE-2、3、4の死滅結果を示す:A、malme-3M-lucの死滅に関する陰性対照TiTE-6タンパク質;B、malme-3M-lucの死滅に関するTiTE-2タンパク質;C、malme-3M-lucの死滅に関するTiTE-3タンパク質;D、malme-3M-lucの死滅に関するTiTE-4タンパク質。本発明により提供される多官能性タンパク質TiTE-2、3および4は、細胞内抗原を発現する腫瘍細胞をin vitroにおいて死滅させることができることが実証される。
【0177】
図7図7は、多官能性タンパク質分子によるNK細胞の刺激の結果を示す。NK細胞の拡大増殖がインターロイキンなしで刺激されたとき、ほとんど全ての細胞は5日後に死滅した。本発明によって提供される多官能性タンパク質の刺激によってNK細胞の拡大増殖が得られ、NK細胞は18日で約140倍に増幅した。
【0178】
図8図8は、多官能性タンパク質分子TiTE-1、6、8、9、10、11、12によるFACS分析を示す:A、T細胞だけによる陰性対照;B、TiTE-1によるT細胞の実験群;C、BV173だけによる陰性対照;D、BV173に関するTiTE-1の実験群;E、BV173による陰性対照;F、BV173に関するTiTE-6の実験群;G、BV173に関するTiTE-8の実験群;H、BV173に関するTiTE-9の実験群;I、BV173に関するTiTE-10の実験群;J、BV173に関するTiTE-11の実験群;K、BV173に関するTiTE-12の実験群;L、T細胞陰性対照;M、T細胞に関するTiTE-6の実験群;N、T細胞に関するTiTE-8の実験群;O、T細胞に関するTiTE-9の実験群;P、T細胞に関するTiTE-10の実験群;Q、T細胞に関するTiTE-11の実験群;R、T細胞に関するTiTE-12の実験群。多官能性タンパク質分子TiTE-1はCD3抗原およびCD19抗原にそれぞれよく結合することを実験は実証した。TiTE-6、8、9、10、11、12の抗MHC/WT1および抗CD3は、細胞内抗原WT1およびCD3抗原の両方にそれぞれ結合する能力を有する。
【0179】
図9-1】図9は、多官能性タンパク質分子TiTE-2、3および4のFACS結果を示す:A、malme-3M陰性対照;B、malme-3Mに関するTiTE-2の実験群;C、malme-3Mに関するTiTE-3の実験群;D、malme-3Mに関するTiTE-4の実験群;E、T細胞陰性対照;F、T細胞に関するTiTE-2の実験群;G、T細胞に関するTiTE-3の実験群;H、T細胞に関するTiTE-4の実験群。図から、多官能性タンパク質分子TiTE-2、3がMHC/GP100抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合すること、ならびにTiTE-4がMHC/Mart1抗原およびCD3抗原によく結合することがわかる。
図9-2】同上
【0180】
図10図10は、多官能性タンパク質分子TiTE-15、16のFACS結果を示す:A、BV173陰性対照;B、BV173に関するTiTE-15の実験群;C、BV173に関するTiTE-16の実験群;D、T細胞陰性対照;E、T細胞に関するTiTE-15の実験群;F、T細胞に関するTiTE-16の実験群。図から、多官能性タンパク質分子TiTE-15、16がCD19抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合することがわかる。
【0181】
図11図11は、多官能性タンパク質分子TiTE-5のFACS結果を示す:A;malme-3M-CD19-luc陰性対照;B、malme-3M-CD19-Lucに関するTiTE-5の実験群;C、malme-3M-CD22-Lucによる陰性対照;D、malme-3M-CD22-Lucに関するTiTE-5の実験群;E、T細胞陰性対照;F、T細胞に関するTiTE-5の実験群。図から、多官能性タンパク質分子TiTE-5がCD19抗原、CD20抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合することがわかる。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0182】
以下の実施例で使用する実験方法は、特に明記しない限り従来の方法である。
【0183】
以下の実施例で使用する材料、試薬などは、特に明記しない限り市販されている。
【0184】
(実施例1 多官能性タンパク質分子を発現するベクターの構築)
【0185】
1.CD19陽性腫瘍細胞を標的にする新規多官能性タンパク質TiTE-1の構築
【0186】
タンパク質を得るために主ペプチド鎖X1によって補助ペプチド鎖Y1に融合させた、CD19陽性腫瘍細胞を標的にする新規多官能性タンパク質TiTE-1(図1);
【0187】
主ペプチド鎖X1は、抗原1結合ドメインR1、サイトカインまたはサイトカイン受容体R2のサイトカイン結合ドメインおよび抗原2結合ドメインR3を含んでいた。
【0188】
補助ペプチド鎖Y1は、抗原3結合ドメインR4および主ペプチド鎖X連結ドメインR5を含んでいた。
【0189】
主ペプチド鎖(X1)の抗原結合ドメイン(R1)は、抗CD19-ScFv(配列1)から選択され、補助ペプチド鎖連結ドメイン(R2)はIL15Rαsushi(配列2)から選択され、抗原結合ドメイン(R3)は抗CD3-ScFv(配列3)から選択される。
【0190】
補助ペプチド鎖(Y1)の抗原結合ドメイン(R4)としてPDL1およびPDL2の受容体PD1の細胞外ドメイン(配列4)を選択し、主ペプチド鎖ドメイン(R5)としてIL15(配列5)を選択した。
【0191】
2.シグナルペプチド(アミノ酸配列:MALPVTALLLPLALLLHAARP)、HindIII制限部位を主ペプチド鎖の5’末端に加え、主ペプチド鎖の補助ペプチド鎖ドメイン(R2:L15Rαsushi)と抗原結合ドメイン(R3:抗CD3-ScFv)との間のリンカーペプチドはBamHI制限部位を含有した;P2Aペプチドを主ペプチド鎖の3’末端と補助ペプチド鎖の5’末端との間に加えた(アミノ酸配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP);制限部位のXbaIを、補助ペプチド鎖の3’末端に加えた。
【0192】
3、抗CD19-IL15Rαsushi断片、抗CD3断片およびP2A-PD1-IL15断片をPCR増幅し、核酸ゲル電気泳動に流した;重複PCRは、核酸ゲル電気泳動で抗CD3-P2A-PD1-IL15断片を増幅した。HindIIIおよびBamHIを使用して、抗CD19-IL15Rαsushi断片を切断した。抗CD3-P2A-PD1-IL15は、BamHIおよびXbaIを使用して切断した;ベクターPCDNA3.1(Invitrogen)は、HindIIIおよびXbaIを使用して切断した。
【0193】
4.標的断片をゲル電気泳動によって回収し、回収された3つの断片をライゲーションし、形質転換させ、クローンを選択して配列決定し、最後に、標的プラスミドPCDNA3.1-TiTE-1が得られた。
【0194】
組換えベクターPCDNA3.1-TiTE-1は、CD19陽性腫瘍細胞を標的にする多官能性タンパク質TiTE-1の発現のための発現カセットであり(発現カセットのヌクレオチド配列は、主ペプチド鎖X1をコードするヌクレオチド配列(配列6)および補助ペプチド鎖Y1をコードするヌクレオチド配列(配列7)で構成され、配列6の最後のヌクレオチドは配列7の最初のヌクレオチドに直接隣接する)、PCDNA3.1ベクター(Invitrogen、USA)のHindIIIとXbaIとの間の断片を置き換え、主ペプチド鎖X1(配列8)および補助ペプチド鎖Y1(配列9)からなる機能的多官能性タンパク質TiTE-1を発現させるために、生じた組換えベクターを得た。
【0195】
5.上記のステップにより、多官能性タンパク質TiTE-2、TiTE-3、TiTE-4、TiTE-5、TiTE-6、TiTE-7、TiTE-8、TiTE-9、TiTE-10、TiTE-11、TiTE-12のために発現ベクターを構築した。TiTE-13、TiTE-14、TiTE-15およびTiTE-16の発現ベクターを同様の方式で構築し、その構造を下の表1に示し、発現フレームワークを図2に示す。
【0196】
【表1】
【0197】
ここで、抗MHC/GP100-VHHのアミノ酸配列は、配列10である。
【0198】
抗MHC/Mart1-VHHのアミノ酸配列は、配列11である。
【0199】
抗MHC/WT1-VHのアミノ酸配列は、配列12である。
【0200】
IL4Rα-N-FN3のアミノ酸配列は、配列13である。
【0201】
抗CD16-ScFvのアミノ酸配列は、配列14である。
【0202】
抗CD22-ScFvのアミノ酸配列は、配列15である。
【0203】
IL4のアミノ酸配列は、配列16である。
【0204】
TiTE-2の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列17であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列9である。
【0205】
TiTE-3の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列17であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列18である。
【0206】
TiTE-4の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列19であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列9である。
【0207】
TiTE-5の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列8であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列20である。
【0208】
TiTE-6の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列21であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列9である。
【0209】
TiTE-7の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列22であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列9である。
【0210】
TiTE-8の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列23であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列24である。
【0211】
TiTE-9の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列25であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列26である。
【0212】
TiTE-10の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列27であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列28である。
【0213】
TiTE-11の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列29であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列9である。
【0214】
TiTE-12の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列30であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列31である。
【0215】
TiTE-13は主ペプチド鎖であり、主ペプチド鎖のアミノ酸配列は配列21である。
【0216】
TiTE-14の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列21であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列5である。
【0217】
TiTE-15は主ペプチド鎖であり、そのアミノ酸配列は配列8である。
【0218】
TiTE-16の主ペプチド鎖アミノ酸配列は配列8であり、補助ペプチド鎖アミノ酸配列は配列5である。
【0219】
TiTE-2を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列35であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列7である。
【0220】
TiTE-3を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列35であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列36である。
【0221】
TiTE-4を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列37であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列7である。
【0222】
TiTE-5を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列6であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列38である。
【0223】
TiTE-6を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列39であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列7である。
【0224】
TiTE-7を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列40であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列7である。
【0225】
TiTE-8を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列41であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列42である。
【0226】
TiTE-9を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列43であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列44である。
【0227】
TiTE-10を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列45であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列46である。
【0228】
TiTE-11を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列47であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列7である。
【0229】
TiTE-12を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列48であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列49である。
【0230】
TiTE-13を発現するコード核酸配列は、配列39である。
【0231】
TiTE-14を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列39であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列50である。
【0232】
TiTE-15をコードする核酸配列は、配列6である。
【0233】
TiTE-16を発現するコード核酸配列は、主ペプチド鎖コード核酸配列および補助ペプチド鎖コード核酸配列で構成され、主ペプチド鎖コード核酸配列の3’末端の最後の塩基は、補助ペプチド鎖コード核酸配列の5’末端の最初の塩基の隣にあり;ここで、主ペプチド鎖コード核酸配列は配列6であり、補助ペプチド鎖コード核酸配列は配列50である。
【0234】
PCDNA3.1-TiTE-2からPCDNA3.1-TiTE-16までの組換えベクターを作製するために、PCDNA3.1ベクターをHindIIIおよびXbaIで切断し、TiTE-2からTiTE-16までを発現する核酸配列からの対応する核酸配列をそれぞれPCDNA3.1に挿入する。
【0235】
(実施例2 多標的官能性タンパク質の発現および精製)
【0236】
1.細胞密度が1×10E細胞/mlに到達するまで、293F(invitrogen)を、37℃、8%CO、120rpmで培養した。
【0237】
2.実施例1で構築されたベクターPCDNA3.1-TiTE-1を、PEIを使用して上記1の細胞にトランスフェクトし、使用したプラスミドの濃度は1mg/Lであって、PEI濃度は3mg/Lであった。細胞を、37℃、8%CO2、120rpmで5~6日間、インキュベートした。
【0238】
3.上記2の培養培地を4000rpmで遠心分離し、上清を採集し、タンパク質をProtein/capto Lビーズに結合させ、500μLの0.1M Gly-HCl、pH2.6~3.0で溶出し、最後に溶出液を採集した。
【0239】
4.タンパク質は、SDS-PAGEで検出した(図3)。多官能性タンパク質分子TiTE-1の主ペプチド鎖Xおよび補助ペプチド鎖Yを表す、約65KDおよび30KDの標的タンパク質が得られたことがわかる。
【0240】
5.TiTE-2、TiTE-3、TiTE-4、TiTE-5、TiTE-7、TiTE-8、TiTE-9、TiTE-10、TiTE-11、TiTE-12等の多官能性タンパク質を発現させ、精製するために、同じ方法を使用した。
【0241】
(実施例3 in vitroでCD19+標的細胞の、多官能性タンパク質TiTE-1、15、16により媒介されるT細胞による死滅)
【0242】
1.50μL中の1×10E個の標的細胞、CD19抗原およびLucタンパク質を発現させるためにCD19抗原遺伝子(核酸配列は配列32である)およびLuc遺伝子(核酸配列は配列33である)をATCCから購入したMalme-3Mにトランスフェクトすることによって得られたmalme-3M-CD19-lucを、96ウェルプレートに播き、37℃、5%COで18~20時間培養した。
【0243】
2.細胞が壁に付着した後、培地を吸引して廃棄し、新鮮な培地50μLを加え、細胞を37℃、5%CO2で1~3時間培養した。
【0244】
3、実施例2で得られた標的タンパク質TiTE-1を、それぞれ50、5、0.5、0.05、0.005ng/μLの異なる濃度に段階希釈した。
【0245】
実験群で:密度勾配遠心法によって正常なヒト末梢血の単核細胞に富む白色膜層から得られ、OKT3(50ng/mL)およびIL2(300IU/mL)によって14日間刺激した1×10E個のT細胞50μLを、50、5、0.5、0.05および0.005ngの、実施例2で得られた標的タンパク質であるTiTe-1に加え、37℃で1~2時間さらにインキュベートして、抗体とインキュベートしたT細胞を得た。
【0246】
陰性対照群で:標的細胞に対する死滅作用のない50、5、0.5、0.05、0.005ngの二重特異的対照抗体(TiTE-6)を、1×10E個のT細胞50μLにそれぞれ加え、37℃で1~2時間インキュベートした。
【0247】
4.抗体とインキュベートしたT細胞50μLを、標的細胞を含む96ウェルプレートに加え、37℃、5%COで22~24時間インキュベートした。
【0248】
5、1%Triton溶解物100μLを各ウェルに加え、細胞を繰り返しブローし、3~5分間静置させ、細胞を完全に溶解した。溶解物50μLを黒色の96ウェルプレートに加え、50μLの基質(300μg/mL Lucおよび2mg/mL ATPを3:1の容量比で混合した)を加え、各ウェルでの蛍光値を速やかに測定した。
【0249】
6.死滅効率は以下の通りに計算した:死滅効率={(陰性対照蛍光値-実験群蛍光値)/陰性対照蛍光値}×100%。
【0250】
結果を、図4Bに示す。本発明による多官能性タンパク質TiTE-1は、図4Aの対照群と比較して非常に低い濃度でin vitroにおいてCD19陽性腫瘍細胞を死滅させることができることがわかる。in vitroでの最適な死滅作用は、0.5~5ng/10E個の細胞の濃度で得ることができる。
【0251】
7.同様に、非常に低い濃度の多官能性タンパク質を使用して腫瘍細胞が死滅したことを検証するために、TiTE-15およびTiTE-16死滅実験を実行した。
【0252】
結果を、図4Cおよび4Dに示す。本発明による多官能性タンパク質TiTE-15および16は、非常に低い濃度でin vitroにおいて腫瘍細胞を死滅させることができることがわかり、最適濃度は0.5~5ng/10E個の細胞であった。
【0253】
8.同じ方式で、TiTE-5死滅実験を実行した。ATCCから購入したMalme-3MのゲノムへのCD22抗原遺伝子(配列34)およびLuc遺伝子(配列33)のトランスフェクションによるmalme-3M-CD19-lucおよびmalme-3M-CD22-lucを、標的細胞として使用した。結果を、図4Eおよび4Fに示す。本発明により提供される多官能性タンパク質TiTE-5は、CD19およびCD22陽性細胞に対する死滅能力を有することがわかる。非常に低い濃度で腫瘍細胞をin vitroで死滅させることができ、濃度が0.5~5ng/10E個の細胞であるときに最適な死滅作用が得られた。
【0254】
(実施例4 多官能性タンパク質分子TiTE-6、8、9、10、11、12、13、14はin vitroでWT1陽性標的細胞のT細胞による死滅を媒介する)
【0255】
1.50μL中の1×10E個の標的細胞BV173(Luc遺伝子(配列33)によってトランスフェクトしたATCC購入BV173)を96ウェルプレートに播き、37℃、5%COで1~2時間培養した。
【0256】
2、実施例2で得られた標的タンパク質TiTE-6を、50、5、0.5、0.05ng/μLの異なる濃度に段階希釈した。
【0257】
実験群で:密度勾配遠心法によって正常なヒト末梢血の単核細胞に富む白色膜層から得られ、OKT3(50ng/mL)およびIL2(300IU/mL)によって14日間刺激した1×10E個のT細胞50μLを、50、5、0.5、0.05および0.005ngの、実施例2で得られた標的タンパク質であるTiTe-6に加え、37℃で1~2時間さらにインキュベートして、抗体とインキュベートしたT細胞を得た。
【0258】
陰性対照群で:標的細胞に対して死滅作用のない、50、5、0.5、0.05、0.005ngの二重特異的対照抗体(TiTE-2)を、1×10E個のT細胞50μLにそれぞれ加え、37℃で1~2時間インキュベートした。
【0259】
3.抗体とインキュベートしたT細胞50μLを、標的細胞を含む96ウェルプレートに加え、37℃、5%COで22~24時間インキュベートした。
【0260】
4.1%Triton溶解物100μLを各ウェルに加え、細胞を繰り返しブローし、3~5分間静置させ、細胞を完全に溶解した。溶解物50μLを黒色の96ウェルプレートに加え、50μLの基質(300μg/mL Lucおよび2mg/mL ATPを3:1の容量比で混合した)を加え、各ウェルでの蛍光値を速やかに測定した。
【0261】
5.死滅効率を以下の通りに計算した:死滅効率={(陰性対照蛍光値-実験群蛍光値)/陰性対照蛍光値}×100%。
【0262】
結果を、図5Bに示す。本発明により提供される多官能性タンパク質TiTE-6が、腫瘍細胞を非常に低い濃度で死滅させることができることがわかる。
【0263】
6.TiTE-8、9、10、11、12、13および14の死滅実験を同じ方式で実行し、有効な標的比は10:1であって、抗体濃度は各場合において対応する抗体の5ngであった。実験結果を、図5Cに示す。本発明によって提供される多官能性タンパク質によってWT1陽性の腫瘍細胞を死滅させることができることがわかる。
【0264】
(実施例5 in vitroにおいて多官能性タンパク質TiTE-2、3、4は標的細胞のT細胞による死滅を媒介する)
【0265】
1.1×10E個の標的細胞malme-3M-luc(ATCCによって購入したmalme-3MへのLuc遺伝子のトランスフェクションによって得た)50μLを96ウェルプレートに播き、37℃、5%COで18~20時間培養した。
【0266】
2.細胞が壁に付着した後、培地を吸引して廃棄し、新鮮な培地50μLを加え、37℃、5%COで1~3時間インキュベートした。
【0267】
3、実施例2で得られたTiTE-2、3、4を、50、5、0.5、0.05、0.005ng/μLの異なる濃度に段階希釈した。
【0268】
実験群で:密度勾配遠心法によって正常なヒト末梢血の単核細胞に富む白色膜層から得られ、OKT3(50ng/mL)およびIL2(300IU/mL)によって14日間刺激した1×10E個のT細胞50μLを、50、5、0.5、0.05および0.005ngの、実施例2で得られた標的タンパク質であるTiTe-2、3、4に加えた。細胞とタンパク質を37℃で1~2時間さらにインキュベートして、抗体とインキュベートしたT細胞を得た。
【0269】
陰性対照群で:標的細胞に対する死滅作用のない50、5、0.5、0.05、0.005ngの二重特異的対照抗体(TiTE-6)を、1×10E個のT細胞50μLにそれぞれ加え、37℃で1~2時間インキュベートした。
【0270】
4.抗体とインキュベートしたT細胞50μLを、標的細胞を平板培養した96ウェルプレートに加え、37℃、5%COで22~24時間インキュベートした。
【0271】
5、1%Triton溶解物100μLを各ウェルに加え、細胞を繰り返しブローし、3~5分間静置させ、細胞を完全に溶解した。溶解物50μLを黒色の96ウェルプレートに加え、50μLの基質(300μg/mL Lucおよび2mg/mL ATPを3:1の容量比で混合した)を加え、各ウェルでの蛍光値を速やかに測定した。
【0272】
6.死滅効率を以下の通りに計算した:死滅効率={(陰性対照蛍光値-実験群蛍光値)/陰性対照蛍光値}×100%。
【0273】
結果を、図6に示す。本発明によって提供される多官能性タンパク質TiTE-2、3および4は、非常に低い濃度でin vitroにおいて腫瘍細胞を死滅させることができることがわかり、最良の死滅作用のための最適濃度は0.5~5ng/10E個の細胞である。
【0274】
(実施例6 多官能性タンパク質TiTE-1は、NK細胞の拡大増殖を刺激する)
【0275】
1.6×10E5個のNK92細胞(中国典型培養物保蔵中心)を、2mL培地(Alpha基礎培地、12.5%ウマ血清、12.5%FBS、0.2mMイノシトール、0.1mMメルカプトエタノール、0.02mM葉酸)において、40ng/mLの実施例2で得られた多官能性タンパク質TiTE-1と一緒に37℃、5%COで培養した。
【0276】
2.2~3日の培養後、細胞の総数を数え、18日間連続培養し、細胞密度を各継代について3×10E5個の細胞/mLに調整し、40ng/mLの多官能性タンパク質TiTE-1を維持した。
【0277】
細胞増殖曲線を、図7に示す。本発明により提供される多官能性タンパク質TiTE-1が、NK細胞の拡大増殖を刺激することができ、IL15/IL15Rαsushiの機能を有することがわかる。
【0278】
TiTE2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13および15のIL15/IL15RαsushiドメインはTiTE-1と同一であり、それらの機能は有意に異ならない。
【0279】
(実施例7 多官能性タンパク質TiTE-1および抗MHC/WT1のCD19およびCD3抗原結合、ならびに細胞内抗原WT1およびCD3への結合についてのTiTE-6、8、9、10、11、12の抗CD3のそれぞれのFACS検証。)
【0280】
1.T細胞実験群およびBV173実験群:多官能性タンパク質TiTE-1、6、8、9、10、11、12のそれぞれ5μgを、BV173細胞と、密度勾配遠心法によって正常なヒト末梢血の単核細胞に富む白色膜層から得られ、OKT3(50ng/mL)およびIL2(300IU/mL)によって14日間刺激した3×10E5個のT細胞との混合物に加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。2μLのAPCで標識したマウス抗ヒトCD279(BD、カタログNo.558694)を加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。
【0281】
T細胞陰性対照群およびBV173細胞陰性対照群:BV173細胞(ATCC)を、密度勾配遠心法によって正常なヒト末梢血の単核細胞に富む白色膜層から得られ、OKT3(50ng/mL)およびIL2(300IU/mL)によって14日間刺激した3×10E5個のT細胞と混合し、2μLのAPCで標識したマウス抗ヒトCD279(BD、カタログNo.558694)を加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させ、陰性対照とした。
【0282】
2.フローサイトメトリーの結果を、図8に示す。図から、多官能性タンパク質TiTE-1がCD19抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合したこと;TiTE-6、8、9、10、11および12の抗MHC/WT1および抗CD3が、細胞内抗原WT1およびCD3抗原にそれぞれよく結合したことがわかる。
【0283】
(実施例8 MHC/GP100およびCD3抗原についてのTiTE-2、3の結合機能ならびにMHC/Mart1およびCD3抗原についてのTiTE-4の結合機能それぞれのFACS検証。)
【0284】
1.T細胞およびmalme-3M-Luc(ATCCによって購入したMalme-3Mへのluc遺伝子のトランスフェクションによる)の実験群:多官能性タンパク質TiTE-2、3、4のそれぞれ5μgを3×10E5個のT細胞およびmalme-3M-Luc細胞にそれぞれ加え、細胞を氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。PEコンジュゲート抗hIL-15(R&D、IC2471P)2μLを加え、氷上で30分間保持した。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。
【0285】
T細胞群およびmalme-3M-Luc細胞陰性対照群:2μLのAPCマウス抗ヒトCD279(BD、No.558694)を3×10E5個のT細胞およびmalme-3M-Lucにそれぞれ加え、細胞と抗体を氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させ、陰性対照とした。
【0286】
2.フローサイトメトリー分析の結果を、図9に示す。図から、多官能性タンパク質TiTE-2および3がMHC/GP100抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合すること、TiTE-4がMHC/Mart1抗原およびCD3抗原によく結合することがわかる。
【0287】
(実施例9 CD19抗原およびCD3抗原への多官能性タンパク質TiTE-15、16の抗CD19および抗CD3の結合機能それぞれのFACS検証)
【0288】
1.T細胞およびBV173細胞実験群:5μgの多官能性タンパク質TiTE-15、16を、BV173細胞と、密度勾配遠心法によって正常なヒト末梢血の単核細胞に富む白色膜層から得られ、OKT3(50ng/mL)およびIL2(300IU/mL)によって14日間刺激した3×10E5個のT細胞に加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。FITC標識組換えタンパク質L(ACRO Biosystem、RPL-PF141)2μLを加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、500μLのPBSで2回洗浄し、200μLのPBSに再懸濁させた。
【0289】
T細胞およびBV173細胞陰性対照群:3×10E5 T細胞(50ng/mLのOKT3、300IU/mLのIL2で刺激したPBMC)を先ずBV173細胞(ATCC)とそれぞれ混合し、2μLのAPCマウス抗ヒトCD279(BD、カタログNo.558694)を細胞に加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させ、陰性対照とした。
【0290】
2.フローサイトメトリー分析の結果を、図10に示す。図から、多官能性タンパク質TiTE-15および16がCD19抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合することがわかる。
【0291】
(実施例10 それぞれの抗原への多官能性タンパク質TiTE-5の抗CD19、抗CD20および抗CD3の結合機能のFACS検証)
【0292】
1.T細胞およびmalme-3M-CD19-Luc/malme-3M-CD22-Luc実験群。細胞実験群:5μgの多官能タンパク質TiTE-5を、3×10E5個のT細胞およびmalme-3M-CD19-Luc細胞(ATCCにより購入したMalme-3MへのCD19抗原遺伝子およびLuc遺伝子のトランスフェクションによる)およびmalme-3M-CD22-Luc(ATCCにより購入したMalme-3MへのCD22抗原遺伝子およびLuc遺伝子のトランスフェクションによる)に加え、氷上で30分間インキュベートした。上清を200μLのPBSに再懸濁させた。2μLのPEコンジュゲート抗hIL-15(R&D、IC2471P)を加え、氷上で30分間インキュベートした。上清を遠心分離し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。
【0293】
T細胞およびmalme-3M-CD19-Luc、malme-3M-CD22-Luc細胞陰性対照群。3×10E5個のT細胞を、malme-3M-CD19-Luc、malme-3M-CD22-Lucとそれぞれ混合した。2μLのPEコンジュゲート抗hIL-15(R&D、品番IC2471P)を各群に加え、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させ、陰性対照とした。
【0294】
2.フローサイトメトリー分析の結果を、図11に示す。図から、多官能性タンパク質TiTE-5がCD19抗原、CD20抗原およびCD3抗原にそれぞれよく結合することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0295】
本発明の実験は、本発明の多官能性タンパク質が、腫瘍関連抗原に結合すること、特異的細胞死滅を媒介すること、および標的化の精度を向上させることができる2つの抗原結合ドメインを通して、異なる腫瘍抗原に結合することができることを実証する。抗原結合ドメインのうちの1つが免疫チェックポイント関連の抗原である場合、それは免疫抑制シグナルを遮断することおよび腫瘍を死滅させる能力を向上させることができる。本発明の多官能性タンパク質は、それがサイトカインおよびサイトカイン受容体複合体を含有するので、サイトカインの役割を演ずることができる。
図1A
図1B
図1C
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11-1】
図11-2】
【配列表】
0007221213000001.app