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特許7221217DUB阻害剤としての活性を有するスルホンアミド置換シアノピロリジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】DUB阻害剤としての活性を有するスルホンアミド置換シアノピロリジン
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/12 20060101AFI20230206BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230206BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20230206BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20230206BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20230206BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20230206BHJP
   C07D 498/04 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C07D207/12 CSP
A61K31/40
A61K31/4025
A61K31/4155
A61K31/4439
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/5383
A61P1/16
A61P3/00
A61P3/10
A61P9/10
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P19/02
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P31/06
A61P31/10
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
C07D401/12
C07D401/14
C07D403/12
C07D487/04 137
C07D498/04 111
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019561718
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 GB2018051454
(87)【国際公開番号】W WO2018220355
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】1708652.1
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517299582
【氏名又は名称】ミッション セラピューティクス リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン リー ストックリー
(72)【発明者】
【氏名】マーク イアン ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー マディン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル デイビッド ウッドロー
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/129371(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/129370(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/129365(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/026197(WO,A1)
【文献】ACS Med. Chem. Lett.,2011年,Vol.2,pp.142-147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(Ia)
【化1】
[式中、mは1~4であり;
nは、0又は1であり;
1つのR基及びNRが、隣接する環原子上に位置し、そして前記RがRと一緒に、N、O及びSから独立して選択された1~2個のヘテロ原子(それらの少なくとも1つはNである)を含む5~6員の複素環を形成し;
各Rは、存在する場合、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシ、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから独立して選択され;
は、共有結合及び(C-C)アルキレンから選択され;
は、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH及び及びNHC(O)から選択され;
基「A」は、フェニル環、及びN、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員の複素環から選択され、但し、式(Ia)の化合物に関しては、Lが共有結合である場合、「A」は環C原子を介してスルホンアミドに結合され
基「B」は、フェニル、及びN、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環から選択され;そして
各フェニル及び複素環は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、CF、OCF、及びNHC(O)(C-C)アルキルから独立して選択される1~2個の置換基により任意に置換され得る〕
の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩。
【請求項2】
mが1又は2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びNRが隣接する環原子上に位置する場合、Rは、Rと一緒に、モルホリン、ピペリジン又はピロリジン環を形成し;そして
存在する場合、他の各Rが、フルオロ、シアノ、メチル、メトキシ及びメトキシメチルから独立して選択される;
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、共有結合、メチレン及びエチレンから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
が、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH、及びNHC(O)から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
基「A」が、インダニル、フェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラリニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、及びキノリニルから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
基「B」が、フェニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、1,2-チアゾリジニル、及びチアゾリルから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
各フェニル及び複素環が、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、CF、OCF、及びNHC(O)(C-C)アルキルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
各フェニル及び複素環が、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、イソプロピル、メトキシ、CF、OCF、NHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
mが1であり;
が、共有結合であり;
基「A」がフェニルであり、基「B」がピリジルであり;そして
各フェニル及びピリジル環が、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、イソプロピル、メトキシ、CF、OCF、及びNHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
下記式(Ib)
【化2】
[式中、mは0~4であり;
nは、0又は1であり;
各Rは、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシ、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから独立して選択され;
は、水素、(C-C)アルキル、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから選択され
は、共有結合、(C-C)アルキレン、及び(C-C)アルケニレンから選択され;
は、共有結合、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、及び(C-C)アルキレン-X-(C-C)アルキレンから選択され;
Xは、O、S、SO、SO、NR、NRC(O)、C(O)NR、NRC(O)NR、C(O)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、SONR、NRSO及びNRSONRから選択され;
及びRは、水素、(C-C)アルキル、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルからそれぞれ独立して選択され;
基「A」は、3~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含む3~10員の複素環から選択され;又は
A-L-N-Rは、N、O及びSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子(そのうち少なくとも1つはNである)を含む3~10員の複素環を任意に形成することができ;
基「B」は、3~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含む3~10員の複素環から選択され;そして
各炭素環及び複素環は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシ、NH(C-C)アルキル、N((C-C)アルキル)、C(O)NH(C-C)アルキル、C(O)N((C-C)アルキル)、NHC(O)(C-C)アルキル、N(C-C)アルキル)C(O)(C-C)アルキル)、C(O)(C-C)アルキル、C(O)O(C-C)アルキル、COH、CONH、SONH(C-C)アルキル、及びSON((C-C)アルキル)から独立して選択される1~4個の置換基により任意に置換され得る〕
の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩。
【請求項12】
mが0、1又は2である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
各Rが、フルオロ、シアノ、メチル、メトキシ及びメトキシメチルから独立して選択され;
が、水素及びメチルから選択される、請求項11又は12に記載の化合物。
【請求項14】
が、共有結合、メチレン及びエチレンから選択される、請求項11~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
が、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH、及びNHC(O)から選択される、請求項11~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
基「A」が、インダニル、フェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラリニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、及びキノリニルから選択されるか;又は
A-L-N-Rが、アゼチジニル、イソインドリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、及び4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジニルから選択される環を形成することができる、請求項11~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
基「B」が、フェニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、1,2-チアゾリジニル、及びチアゾリルから選択される、請求項11~16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
各炭素環及び複素環が、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、CF、OCF、及びNHC(O)(C-C)アルキルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る、請求項11~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
各炭素環及び複素環が、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、イソプロピル、メトキシ、CF、OCF、NHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
mが0又は1であり;nが0又は1であり;
各Rが、フルオロ、シアノ、メチル、メトキシ及びメトキシメチルから独立して選択され;
が、水素及びメチルから選択され;
が、共有結合、メチレン及びエチレンから選択され;
が、共有結合、酸素原子及びメチレンから選択され;
基「A」が、インダニル、フェニル、テトラリニル、ベンゾチアゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、及びキノリニルから選択されるか;又は
A-L-N-Rが、アゼチジニル、イソインドリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、および4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5 a]ピラジニルから選択された環を形成することができ;
基「B」が、フェニル及びピリジルから選択され;そして
各炭素環及び複素環が、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ及びメチルから独立して選択された1又は2個の置換基により任意に置換され得る、請求項11に記載の化合物。
【請求項21】
下記:
(3aR、6aR)‐1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボニトリル;
rac-(4aR、7aR)-4-トシルヘキサヒドロピロロ[3,4-b][1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル;
rac-(4aR、7aS)-4-((4-メチルベンジル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b][1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル;
N-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-1-シアノピロリジン-3-スルホンアミド;
3-((4-(4-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
(3-((4-(ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
3-((4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
(S)-3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
(R)-3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
3-((4-ベンジルピペリジン‐1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル;
3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
(S)-3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
(R)-3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;及び
3-((3-フェノキシアゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル;
から選択される、請求項1に規定された式(Ia)の化合物、又は請求項11に規定された式(Ib)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩。
【請求項22】
医薬的に許容できる希釈剤又は担体と共に、請求項1~21のいずれか1項に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を含む医薬組成物。
【請求項23】
医薬としての使用のための、請求項1~21のいずれか1項に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物、又はその互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱ユビキチン化酵素、特にユビキチンC末端ヒドロラーゼL1(UCHL1)及びユビキチンC末端ヒドロラーゼ30又はユビキチン特異的ペプチダーゼ30(USP30)の阻害剤としての活性を有する種類のスルホンアミド置換シアノピロリジン、その使用、その調製方法、及び前記阻害剤を含む組成物に関する。それらの阻害剤は、癌、及びミトコンドリア機能障害を含む状態を含む種類の治療分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
ユビキチンは、タンパク質基質に対して可逆的に結合され得る76個のアミノ酸から成る小タンパク質である。タンパク質ユビキチン化は、細胞周期の進行、アポトーシス、細胞表面受容体の修飾、DNA転写及びDNA修復の調節を含む多くの細胞機能を調節する。従って、ユビキチンプロテアソームシステムは、炎症、ウィルス感染、代謝機能障害、CNS障害及び発癌を含む多くの疾患状態の病因に関係している(Clague et al., Physiol Rev 93:1289-1315, 2013)。
【0003】
ユビキチン及びユビキチン様タンパク質(Ubl)は、脱ユビキチン化酵素(DUB)と呼ばれるイソペプチダーゼによりタンパク質基質から切断される。約100のDUBがヒト細胞に存在し、配列相同性に基いてサブファミリーに分けられる:ユビキチンC末端加水分解酵素(UCH)、ユビキチン特異的プロテアーゼ(USP)、卵巣腫瘍プロテアーゼ(OTU)、マシャドジョセフィンドメインプロテアーゼ(MJD)、JAB1 / MPN / MOV34メタロプロテアーゼ(JAMM)又はセントリン特異的プロテアーゼ(SENP)。UCHL1,UCHL3、UCHL5及びBAP1から成るUCHファミリーは、活性部位チオールを介して作用するシステインプロテアーゼである。UCHは、小タンパク質基質を優先的に切断し、ユビキチンの処理及びリサイクルに関与すると考えられる(Komander et al., Nat Rev Mol Cell Biol 10:550-563, 2009)。
【0004】
UCHL1は、哺乳類の脳、末梢神経系、卵巣及び精巣に発現が通常制限される223のアミノ酸タンパク質である。しかしながら、UCHL1の発現は、癌を含むいくつかの病理学的状態においてアップレギュレートされることが報告されている。UCHL1を過剰発現するトランスジェニックマウスは、悪性腫瘍、主にリンパ腫及び肺腫瘍になりやすく、このことは、UCHL1が癌遺伝子であることを示している(Hussain et al., Leukemia 24:1641-1655, 2010)。UCHL1の発癌機能は、腫瘍(乳房、結腸直腸、骨肉種及び膵臓を含む)でのUCHL1発現が患者の生存と逆相関することを示す臨床研究によってさらに裏付けられている(Hurst-Kennedy et al., Biochem Res Int, 2012, Zheng et al., Cancer Lett 359:36-46)。従って、UCHL1の薬理学的阻害は、そのような癌の新規治療薬として役立つであろう。
【0005】
ユビキチンは、ミトコンドリアダイナミクスの主要な調節因子である。ミトコンドリアは、動的オルガネラであり、その生合成、融合及び分解インベントは、ミトフシンなどの多くの重要な因子のユビキチン化を介して翻訳後調節により調節される。パーキンなどのユビキチンリガーゼは、いくつかのミトコンドリアタンパク質をユビキチン化することが知られているが、最近まで、脱ユビキチン化酵素はとらえどことがないままである。USP30は、ミトコンドリア外膜に見出される517のアミノ酸タンパク質である。それは、ミトコンドリアアドレス信号を担持する唯一の脱ユビキチン化酵素であり、そして多くのミトコンドリアタンパク質を脱ユビキチン化することが、示されている。USP30はパーキンを介したマイトファジーに反対し、そしてUSP30活性の低下がマイトファジーにおいてパーキンを介した欠陥を救済できることが実証されている。
【0006】
ミトコンドリア機能障害は、ミトコンドリア活性の低下及び酸化的リン酸化だけでなく、反応性酵素種(ROS)生成の変調として、低められたミトコンドリア内容(マイトファジー又はミトコンドリア生合成)として定義され得る。従って、非常に多数の老化プロセス、及びそれらだけには阻害されないが以下を含む疾患におけるミトコンドリア機能障害の役割を示す:神経変性疾患(パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症)、癌、糖尿病、代謝障害、心血管疾患、精神疾患(統合失調症)、及び変形性関節症。
【0007】
例えば、パーキンソン病は、世界中で約1,000万人が罹患しており(パーキンソン病財団)、そして黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの損失により特徴づけられる。PDの根底にある正確なメカニズムは不明であるが、しかしながら、ミトコンドリア機能障害が、PDにおけるドーパミン作動性ニューロン感受性の重要な決定因子としてますます高く評価されており、そして家族性疾患及び散発性疾患、並びに毒素誘発性パーキンソニズムの特徴である。パーキンは、早期発症PDに関係しているいくつかのタンパク質の1つである。ほとんどのPD症例は、α-シヌクレインの欠損に関連付けられるが、パーキンソン症例の10%は特定の遺伝子欠損に関連しており、その1つはユビキチンE3リガーゼパーキンにある。パーキン及びプロテインキナーゼPTEN誘発性の推定キナーゼ1(PINK1)は、損傷を受けたミトコンドリアのミトコンドリア膜タンパク質をユビキチン化するために協力し、結果として、マイトファジーをもたらす。マイトファジーの調節不全は高められた酸化ストレスをもたらし、これはPDの特徴として説明されて来た。従って、USP30の阻害は、PDの治療のための潜在的な戦略である可能性がある。例えば、低められた活動につながるパーキン変異を有するPD患者は、USP30の阻害により治療的に補償される可能性がある。
【0008】
USP30の枯渇は、ミトコンドリアのマイトファジークリアランスを高め、そしてパーキン誘発性細胞死を高めることが報告されている。USP30はまた、パーキン過剰発現とは無関係に、BAX/BAK-依存性アポトーシスを調節することも示されている。USP30の枯渇は、パーキンの過剰発現を必要としないで、ABT-737などのBH-3模倣体に癌細胞を感作する。従って、抗アポトーシスの役割はUSP30のためであることが実証されており、そして従って、USP30は、抗癌治療のための潜在的な標的である。
【0009】
ユビキチン-プロテアソームシステムは、多発性骨髄腫の治療のためのプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))の承認に続いて、癌の治療のための標的として関心を集めてきた。ボルテゾミブによる長期治療は、その関連する毒性及び薬剤耐性により制限される。しかしながら、DUBなどのプロテアソームの上流のユビキチン-プロテアソーム経路の特定の側面を標的とする治療戦略は、より耐用性が高いと予測される(Bedford et al., Nature Rev 10:29-46, 2011)。
【0010】
腎、肝及び肺線維症を含む繊維性疾患は、罹患率及び死亡率の主な原因であり、そして全ての組織及び器官系に影響を及ぼすことができる。線維症は、組織又は器官に対する急性又は慢性ストレスの結果であると思われ、細胞外マトリックスの沈着、血管/尿細管/管/気道の開通性の低下、及び最終的には器官不全をもたらす機能障害を特徴とする。多くの線維化状態は、ライフスタイル又は環境要因により促進されるが、しかしながら、一部の線維症は、遺伝的トリガーを介して開始されるか、又は実際、特発性(すなわち、既知の原因がない)と見なされる。特定の線維性疾患、例えば特発性肺線維症(IPF)は、非特異的キナーゼ阻害剤(ニンテダニブ)、又は十分に特徴づけられた作用メカニズムのない薬物(ピルフェニドン)により治療され得る。器官線維症、例えば腎臓又は肝臓線維症についての他の治療法は、器官自体への圧力を軽減する(例えば、肝硬変についてのβ遮断薬、慢性腎臓疾患についてのアンジオテンシン受容体遮断薬)。グルコース及び食事管理などのライフスタイル要因への注意もまた、疾病の経過及び重症度に影響を及ぼすことができる。前臨床モデルは、ヒトの状態と一致する線維症病理学(例えば、コラーゲン沈着)をモデル化する能力を介して、潜在的な新規治療法を研究するために利用できる。前臨床モデルは、毒素媒介型(例えば、肺及び皮膚線維症のためのブレオマイシン)、外科手術(例えば、急性尿細管間質性線維症のための片側尿管閉塞モデル)、及び遺伝子型(例えば、糖尿病性腎症のための糖尿病(db / db)マウス)であり得る。例えば、示されたIPF治療(ニンテダニブ及びピルフェニドン)について以前に与えられた両方の例は、ブレオマイシン肺線維症モデルにおける有効性を示している。
【0011】
ミトコンドリア機能不全は、低められたATP産生と共に、機能不全の下流の酸化ストレスが主要な病原性メディエーターである多くの線維性疾患に関与されている。前臨床モデルにおいては、マイトファジー経路の破壊(パーキン又はPINK1のいずれかの突然変異誘発又はノックアウトによる)は、高められた酸化ストレスの証拠と共に、肺線維症及び腎臓線維症を悪化させる。
【0012】
従って、USP30又はUCHL1の阻害が示される徴候の治療のために、UCHL1及びUSP30などの1つ又は2以上のDUBの阻害剤である化合物についての必要性がある。
【0013】
シアノ置換複素環の一連の誘導体は、PCT出願国際公開第2016/046530号、第2016/156816号、第2017/009650号、第2017/093718号、第2017/103614号、第2017/149313号、第2017/109488号、第2017/141036号、第2017/163078号、第2017/158381号、 第2017/158388号、PCT/GB2017/052971、 PCT/GB2017/052949、PCT/GB2017/052880及びPCT/GB2017/052882において脱ユビキチン化酵素阻害剤として開示されている。Falgueyret et al., J.Med.Chem. 2001, 44, 94-104及びPCT出願国際公開第01/77073号は、カテロンシンK及びLの阻害剤としてシアノピロリジンを言及しており、骨粗鬆症及び他の骨吸収関連状態の治療に潜在的な有用性を有する。PCT出願国際公開第2015/179190号は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療に潜在的な有用性を有するN-アシルエタノールアミン加水分解性酸アミダーゼ阻害剤を言及する。PCT出願国際公開第2013/030218号は、USP7などのユビキチン特異的プロテアーゼの阻害剤としてのキナゾリン-4-オン化合物を言及しており、癌、神経変性疾患、炎症性障害及びウィルス感染の治療において潜在的な有用性を有する。PCT出願国際公開第2015/017502号及び第2016/019237号は、自己免疫疾患、炎症性疾患及び癌などの疾患の治療に潜在的な有用性を有するBrutonチロシンキナーゼの阻害剤を言及する。Laine et al., ACS Med Chem Lett., 2011, 2, 132-147、 及びPCT出願国際公開第2009/026197号、第2009/129365号、第2009/129370号及び第2009/129371号は、COPDの治療に潜在的な有用性を有するカテプシンCの阻害剤としてのシアノピロリジンを言及する。米国特許出願第20008/0300268号は、チロシンキナーゼ受容体PDGFRの阻害剤としての多環芳香族化合物を言及している。Song et al., ACS Med Chem Lett., 2012, 3, 450-453は、カテプシンL阻害剤を言及している。Lonergan D.、PCT出願国際公開第2015/183987号は、癌、線維症、自己免疫疾患又は状態、炎症性疾患又は状態、神経変性疾患又は状態、又は感染症を治療する方法における脱ユビキチン化酵素阻害剤及びヒト血清アルブミンを含む医薬組成物を言及する。Lonerganは、UCHL5/UCH37、USP4、USP9X、USP11及び USP15を含む脱ユビキチン化酵素が、TGF-βシグナル伝達経路の調節に関与していると言われており、その破壊が神経変性及び線維性疾患、自己免疫機能障害及び癌を引起す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の側面によれば、本発明は、下記式(Ia)及び(Ib):
【化1】
[式中、mは0~4であり;
nは、0又は1であり;
各Rは、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシ、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから独立して選択され;
及びRは、水素、(C-C)アルキル、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから選択されるか;又はR及びNRが隣接する環原子上に位置する場合、Rは、Rと一緒に、N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子(そのうちの少なくとも1つはNである)を含む5~6員の複素環を形成することができ;
は、共有結合、(C-C)アルキレン、及び(C-C)アルケニレンから選択され;
は、共有結合、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、及び(C-C)アルキレン-X-(C-C)アルキレンから選択され;
Xは、O、S、SO、SO、NR、NRC(O)、C(O)NR、NRC(O)NR、C(O)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、SONR、NRSO及びNRSONRから選択され;
及びR、水素、(C-C)アルキル、及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルからそれぞれ独立して選択され;
基「A」は、3~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含む3~10頁の複素環から選択され、但し、式(Ia)の化合物に関しては、Lが共有結合である場合、「A」は環C原子を介してスルホンアミドに結合され;又は
A-L-N-Rは、N、O及びSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子(そのうち少なくとも1つはNである)を含む3~10員の複素環を任意に形成することができ;
基「B」は、3~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択される1~4個のヘテロ原子を含む3~10員の複素環から選択され;そして
各炭素環及び複素環は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシ、NH(C-C)アルキル、N((C-C)アルキル)、C(O)NH(C-C)アルキル、C(O)N((C-C)アルキル)、NHC(O)(C-C)アルキル、N(C-C)アルキル)C(O)(C-C)アルキル)、C(O)(C-C)アルキル、C(O)O(C-C)アルキル、COH、CONH、SONH(C-C)アルキル、及びSON((C-C)アルキル)から独立して選択される1~4個の置換基により任意に置換され得る〕から選択される、哺乳類において有益な効果を生成するために、UCHL1又はUSP30の阻害が、知られているか、又は示され得る障害又は状態の治療への使用のための式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を提供する。
【0015】
特にことわらない限り、その対応するニ価の基を含むアルキル、アルケニル及びアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖であり、そして1~6個の炭素原子及び典型的には、1~4個の炭素原子を含む。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びn-ブトキシを含む。
【0016】
ハロとは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、特にフルオロ又はクロロを意味する。
【0017】
ハロアルキル及びハロアルコキシ基は、1又は2以上のハロ置換基を含むことができる。例としては、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシを含む。
【0018】
炭素環式環は、単環式又はニ環式の飽和、部分的飽和又は芳香族であっても良い。炭素環式基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、及びテトラリニルを含む。
【0019】
複素環は、縮合二環式、飽和、部分的飽和又は芳香族を含む単環式又はニ環式であっても良い。複素環の例としては、以下を含む:アゼチジニル、フリル、チエニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、ジオキソラニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアゾリジニル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリノ、ジチアニル、チオモルホリノ、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、スルホラニル、テトラゾリル、トリアジニル、アゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、ジアゼピニル、チアゾリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾピリジニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾチアジニル、オキサゾロピリジニル、ベンゾフラニル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ジヒドロキナゾリニル、ベンゾチアゾリル、フタルイミド、ベンゾフラニル、ベンゾジアゼピニル、インドリル、イソインドリニル、イソインドリル、テトラヒドロイソキノリニル、及びテトラヒドロピラゾロピラジニル。
【0020】
特にことわらない限り、置換されたという用語は、1又は2以上の定義された基により置換されることを意味する。基が複数の選択肢から選択される場合、選択された基は、同じであっても又は異なっていても良い。この用語は、独立して、複数の置換基が複数の可能な置換基から選択される場合、それらの置換基は同じであってもまたは異なっていても良いことを意味する。
【0021】
本発明への使用のための式(I)の化合物の好ましい実施形態が、以下に定義される。
【0022】
好ましくは、mは0、1、2、3及び4から選択される。より好ましくは、mは0、1又は2である。
【0023】
好ましくは、各Rは独立して、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、及びメトキシエチルから選択される。
【0024】
より好ましくは、Rは独立して、フルオロ、シアノ、メチル及びメトキシから選択される。
【0025】
好ましくは、R及びRは、水素、メチル、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、及びメトキシエチルから選択される。
【0026】
より好ましくは、R及びRは、水素及びメチルから選択される。
【0027】
式(Ia)の化合物において、R基及びNRの1つは、隣接する環原子上に位置することができる。この実施形態によれば、前記Rは、Rと一緒に、N、O及びSから独立して選択された1~2個のヘテロ原子(少なくとも1つはNである)を含む5~6員の複素環を形成できる。
【0028】
好ましくは、Rは、Rと一緒に、N、O及びSから独立して選択された1~2個のヘテロ原子(少なくとも1つはNである)を含む5~6員の複素環を形成できる。より好ましくは、Rは、Rと一緒に、モルホリン、ピペリジン又はピロリジン環を形成する。
【0029】
好ましくは、Lは、共有結合、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、エテニル、及びアリルから選択される。より好ましくは、Lは、共有結合、メチレン及びエチレンから選択される。
【0030】
好ましくは、Lは、共有結合、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、エテニル、アリル、及び(C- C)アルキレン-X-((C- C)アルキレンから選択される。
【0031】
好ましくは、Xは、O、NR、NRC(O)、及びC(O)NRから選択される。
【0032】
好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、及びメトキシエチルから選択される。より好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びメチルから選択される。
【0033】
最も好ましくは、Lは、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH、及びNHC(O)から選択される。
【0034】
1つの好ましい実施形態によれば、基「A」は6~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~10員の複素環から選択された任意に置換された環である。
【0035】
より好ましくは、基「A」は、インダニル、フェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラリニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、及びキノリニルから選択された任意に置換された環である。
【0036】
別の好ましい実施形態によれば、A-L-N-Rは、N、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子(この中の少なくとも1つはNである)を含む任意に置換された4~10員の複素環を形成する。
【0037】
より好ましくは、A-L-N-Rは、アゼチジニル、イソインドリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、及び4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5 a]ピラジニルから選択された任意に置換された環を形成する。
【0038】
好ましくは、基「A」の各炭素環及び複素環、並びにA-L-N-Rから形成される環は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシ、及びNHC(O)(C-C)アルキルから独立して選択された1~4個の置換基により任意に置換され得る。
【0039】
より好ましくは、基「A」の任意の置換基、及びA-L-N-Rから形成される環は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びNHC(O)イソブチルから独立して選択される。
【0040】
最も好ましくは、基「A」及びA-L-N-Rから形成される環は、クロロ、フルオロ、シアノ、メチル、イソプロピル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びNHC(O)イソブチル独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る。
【0041】
好ましくは、基「B」は、6~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子を含む5~10員の複素環から選択された任意に置換された環である。
【0042】
より好ましくは、基「B」は、フェニル、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環から選択された任意に置換された環である。
【0043】
さらにより好ましくは、基「B」は、フェニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、1,2-チアゾリジニル、及びチアゾリルから選択された任意に置換された環である。
【0044】
好ましくは、基「B」の各炭素環及び複素環は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C-C)アルキル、((C-C)アルコキシ、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルキル、ハロ(C-C)アルコキシから独立して選択された1~4個の置換基により任意に置換され得る。
【0045】
より好ましくは、基「B」の任意の置換基は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、エチル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、トリフルオロメチル、及びトリフルオロメトキシから独立して選択される。
【0046】
最も好ましくは、基「B」は、クロロ、フルオロ、オキソ、メチル、メトキシ、及びCFから独立して選択された1~2個の置換基により任意に選択され得る。
【0047】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明への使用のために式(I)の化合物は、下記式(Ia):
【化2】
[式中、
mは、0、1又は2であり;
nは、0又は1であり;
各Rは、フルオロ、シアノ、メチル及びメトキシから独立して選択され;
は、共有結合、メチレン及びエチレンから選択され;
は、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH及びNHC(O)から選択され;
基「A」は、6~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~10員の複素環から選択され、それぞれは、クロロ、フルオロ、シアノ、メチル、イソプロピル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びNHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得;そして
基「B」は、フェニル、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環から選択され、それぞれは、クロロ、フルオロ、オキソ、メチル、メトキシ及びCFから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る]で表される化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬敵に許容される塩である。
【0048】
別の好ましい実施形態によれば、本発明への使用のために式(I)の化合物は、下記式(Ia):
【化3】
[式中、
mは、1又は2であり;
nは、0又は1であり;
基及びNRの1つは、隣接する環原子上に位置し、そして前記Rは、Rと一緒に、N、O及びSから独立して選択された1又は2個のヘテロ原子(それらの少なくとも1つはNである)を含む5~6員の複素環を形成し;
は、共有結合、メチレン及びエチレンから選択され;
は、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH及びNHC(O)から選択され;
基「A」は、6~10員の炭素環、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~10員の複素環から選択され、それぞれは、クロロ、フルオロ、シアノ、メチル、イソプロピル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びNHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得;そして
基「B」は、フェニル、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環から選択され、それぞれは、クロロ、フルオロ、オキソ、メチル、メトキシ及びCFから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る]で表される化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬敵に許容される塩である。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、本発明への使用のための式(I)の化合物は、下記式(Ib);
【化4】
[式中、
mは、0、1又は2であり;
nは、0又は1であり;
各Rは、フルオロ、シアノ、メチル及びメトキシから独立して選択され;
は、共有結合、酸素原子、メチレン、OCH及びNHC(O)から選択され;
A-L-N-Rは、N、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子(それらの少なくとも1つはNである)を含む4~10員の複素環を形成し、それらは、クロロ、フルオロ、シアノ、メチル、イソプロピル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びNHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得:そして
基「B」は、フェニル、及びN、O及びSから独立して選択された1~3個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環から選択され、それぞれは、クロロ、フルオロ、オキソ、メチル、メトキシ及びCFから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る]で表される化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬敵に許容される塩である。
【0050】
本発明への使用のための式(I)の好ましい化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩は、下記から選択される:
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -2-スルホンアミド(実施例1);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例2);
(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例3);
(S)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例4);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例5);
(S)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例6);
(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例7);
(4-(ベンジルオキシ)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例8);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(ピリミジン-5-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例9);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例10);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-5-フェニルピリジン-2-スルホンアミド(実施例11);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例12);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例13);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(ピペリジン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例14);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例15);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-6-フェノキシピリジン-3-スルホンアミド(実施例16);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-5-フルオロ-2-メチルベンゼンスルホンアミド(実施例17);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-イソプロピルベンゼンスルホンアミド(実施例18);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)ベンゼンスルホンアミド(実施例19);
(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例20);
(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボニトリル(実施例21);
rac-(4aR、7aR)-4-トシルヘキサヒドロピロロ[3,4-b] [1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル(実施例22);
rac-(4aR、7aS)-4-((4-メチルベンジル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b] [1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル(実施例23)
N-(5-(N-(1-シアノピロリジン-3-イル)スルファモイル)ピリジン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド(実施例24);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)ベンゼンスルホンアミド(実施例25);
N-([1,1'-ビフェニル] -4-イル)-1-シアノピロリジン-3-スルホンアミド(実施例26);
3-((4-(4-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例27);
(3-((4-(ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例28);
3-((4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例29);
3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例30);
(S)-3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン‐1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例31);
(R)-3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例32);
3-((4-ベンジルピペリジン‐1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例33);
3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル(実施例34);
(S)-3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例35);
(R)-3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例36);及び
3-((3-フェノキシアゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル(実施例37)。
【0051】
第2の側面によれば、本発明は、本発明の第1の側面及びその好ましい実施形態に関して本明細書で定義されるように、下記式(Ia):
【化5】
で表される化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を提供し、上記式(Ia)中、
(i)mは1~4であり;そして
基及びNRの1つは、隣接する環原子上に位置し、そして前記Rは、Rと一緒に、N、O及びSから独立して選択された1~2個のヘテロ原子(その少なくとも1つはNである)を含む~5~6員の複素環を形成し;
(ii)nは0であり;そして
基「A」は、N、O及びSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子を含む3~10員の複素環であり;但し、式(Ia)の化合物に関して、Lが共有結合である場合、「A」は環C原子を介してスルホンアミドに結合され;
但し、(a)mが0である場合、Rは(C-C)アルキル及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから選択され、そして好ましくはメチルであり;
(iii)mは0であり;
nは0であり;
は水素であり;そして
各炭素環及び複素環は、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、CF、OCF、及びNHC(O)イソブチルから独立して選択された少なくとも1~2個の置換基により置換され;
(iv)nは1であり;そして
基「B」は、N、O及びSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子を含む置換された3~10員の複素環であり;
(v)nは0であり;そして
基「A」は、N、O及びSから独立して選択された1~4個のヘテロ原子を含む3~10員の複素環であり;但し、式(Ia)の化合物に関して、Lが共有結合である場合、「A」は環C原子を介してスルホンアミドに結合され;
但し;
(a)mが0である場合、Rは水素であり;そして
(b)mが1~4である場合、Rは(C-C)アルキル及び(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルから選択され、そして好ましくは、メチルである。
【0052】
本発明の第2の側面の好ましい実施形態によれば、式(Ia)[(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)]の化合物に関して、
は、共有結合、メチレン及びエチレンから選択され;そして
は、共有結合である。
【0053】
本発明の第2の側面の好ましい実施形態によれば、式(Ia)[I]の化合物に関して、
mは1であり;
は、共有結合、メチレン及びエチレンから選択され;
は、共有結合であり;
基「A」は、フェニルであり;
基「B」は、ピリジルであり;
各フェニル及びピリジル環は、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、イソプロピル、メトキシ、CF、OCF、NHC(O)イソブチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る。
【0054】
本発明の第2の側面の好ましい実施形態によれば、式(Ia)[iv]の化合物に関して、
基「B」は、クロロ、フルオロ、オキソ、メチル、メトキシ、及びCFから独立して選択された1~2個の置換基により置換される。
【0055】
本発明の第2の側面による式(I)の好ましい化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩は、以下から選択される:
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -2-スルホンアミド(実施例1);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例2);
(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例3);
(S)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル] -4-スルホンアミド(実施例4);
(4-(ベンジルオキシ)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例8);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(ピリミジン-5-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例9);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例10);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-5-フェニルピリジン-2-スルホンアミド(実施例11);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(ピリジン-4-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例13);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(ピペリジン-1-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例14);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例15);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-6-フェノキシピリジン-3-スルホンアミド(実施例16);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-イソプロピルベンゼンスルホンアミド(実施例18);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-4-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)ベンゼンスルホンアミド(実施例19);
(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド(実施例20);
(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボニトリル(実施例21);
rac-(4aR、7aR)-4-トシルヘキサヒドロピロロ[3,4-b] [1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル(実施例22);
rac-(4aR、7aS)-4-((4-メチルベンジル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b] [1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル(実施例23)
N-(5-(N-(1-シアノピロリジン-3-イル)スルファモイル)ピリジン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド(実施例24);
N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)ベンゼンスルホンアミド(実施例25)。
【0056】
第3の側面によれば、本発明は、本発明の第1の側面及びその好ましい実施形態に関して本明細書において定義されたような、下記式(Ib):
【化6】
で表される化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を提供する。
【0057】
本発明の第3の側面の好ましい実施形態によれば、
mは0又は1であり;
nは0又は1であり;
各Rは、フルオロ、シアノ、メチル、メトキシ及びメトキシメチルから独立して選択され;
は、水素及びメチルから選択され;
は、共有結合、メチレン及びエチレンから選択され;
は、共有結合、酵素原子及びメチレンから選択され;
基「A」は、インダニル、フェニル、テトラリニル、ベンゾチアゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、及びキノリニルから選択され;又は
A-L―N―Rは、アゼチジニル、イソインドリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、及び4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5 a]ピラジニルから選択された環を形成でき;
基「B」は、フェニル及び-ピリジルから選択され;そして
各炭素環及び複素環は、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ及びメチルから独立して選択された1~2個の置換基により任意に置換され得る。
【0058】
本発明の第3の側面に従っての式(I)の好ましい化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異体の医薬的に許容される塩は、以下から選択される:
N-([1,1'-ビフェニル] -4-イル)-1-シアノピロリジン-3-スルホンアミド(実施例26);
3-((4-(4-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例27);
(3-((4-(ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例28);
3-((4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例29);
3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例30);
(S)-3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン‐1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例31);
(R)-3-((4-(4-クロロフェニル)ピペリジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例32);
3-((4-ベンジルピペリジン‐1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例33);
3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル(実施例34);
(S)-3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例35);
(R)-3-((3-(4-クロロフェニル)アゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン‐1-カルボニトリル(実施例36);及び
3-((3-フェノキシアゼチジン-1-イル)スルホニル)ピロリジン-1-カルボニトリル(実施例37)。
【0059】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明の第2又は第3の側面のいずれかに従っての式(Ia)又は(Ib)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を、医薬的に許容できる希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0060】
本発明の医薬組成物は、任意の医薬的に許容される担体、アジュバント又はビークルと組合される本発明のいずれかの化合物を含む。医薬的に許容できる担体の例は、当業者に知られており、そして以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:投与様式及び剤形の性質に依存して、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、風味剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、潤滑剤及び分散剤。組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、ロゼンジ、座薬、シロップ、及び懸濁液及び溶液を含む液体製剤の形で存在することができる。本明細書における用語「医薬組成物」とは、活性剤を含み、そしてさらに、1又は2以上の医薬的に許容できる担体を含む組成物を意味する。組成物はさらに、投与様式及び剤型の性質に存在して、例えば希釈剤、アジュバント、賦形剤、ビヒクル、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、風味剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、潤滑剤及び分散剤から選択された成分を含むことができる。
【0061】
式(I)の化合物は、特にUCHL1又はUSP30のいずれか、又は両方を含む脱ユビキチン化酵素の阻害剤である。
【0062】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明の第2又は第3の側面のいずれかに従っての医薬として使用のための式(Ia)又は(Ib)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を提供する。
【0063】
さらなる側面によれば、本発明は、UCHL1又はUSP30が哺乳類において有益な効果を生むことが知られているか、又は示されている障害又は状態の治療方法を提供し、ここで前記方法は、治療的有効量の本発明の第1、第2及び第3の側面のいずれか1つに従って、本明細書に定義されるような式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩を、前記哺乳類に投与することを含む。
【0064】
さらなる側面によれば、本発明は、UCHL1又はUSP30が哺乳類において有益な効果を生むことが知られているか、又は示されている障害又は状態の治療のための薬剤の調製への、本発明の第1、第2及び第3の側面のいずれか1つに従って、本明細書に定義されるような式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容できる塩の使用を提供する。
【0065】
本発明の全ての側面の1つの好ましい実施形態によれば、障害又は状態は、UCHL1の阻害が有益な効果をもたらすことが知られているか、又は示され得るものである。
【0066】
より好ましい実施形態によれば、UCHL1活性の恩恵を受ける障害又は状態は、以下から選択される:癌、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症、MERS 又は SARSを含むウイルス感染、TBを含む細菌感染、代謝障害、及び線維症。好ましい癌は、例えば、以下を含む:乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頸部、膵臓、脳、黒色腫、骨又は組織器官の他の癌及び血液細胞の癌、例えばリンパ腫及び白血病、多発性骨髄腫、結腸直腸癌、及び非小細胞肺癌。
【0067】
線維症とは、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞過形成及び新生物に続いて起こる細胞マトリックス成分の蓄積を意味する。本発明の化合物及び組成物により治療され得る線維性障害は、とりわけ、以下を含む:主要な器官の疾患に関連する線維症/線維性疾患、例えば間質性肺疾患(ILD)、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝線維症)、腎臓病(腎線維症)、心臓又は血管疾患(心臓線維症)及び 目の疾患; 線維増殖性疾患、例えば、全身性および局所性強皮症、ケロイド及び肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、デュピュイトラン拘縮;外傷に伴う瘢痕、例えば外科的合併症、化学療法薬による薬物誘発性線維症(例えば、ブレオマイシン誘発性線維症)、放射線誘発性線維症、偶発的な損傷及び火傷); 後腹膜線維症(オーモンド病);及び通常腎移植後の腹膜透析を受けている患者における腹膜線維症/腹膜瘢痕。例えば、Wynn, Thomas A., “Fibrotic disease and the TH1/TH2 paradigm”, Nat Rev Immunol. 2004 August ; 4(8): 583-594を参照のこと。従って、本発明は、主要器官、肺、肝臓、腎臓、心臓、皮膚、目、胃腸管、腹膜、骨髄、等の及び/又はそれらに関連する線維症/線維性障害、及び本明細書に記載される他の疾患/障害の治療方法、及び前記方法に使用される化合物及び組成物に関する。
【0068】
間質性肺疾患(ILD)は、肺炎症及び線維症が病理の採集的な共通経路である障害、例えばサルコイドーシス、珪肺症、薬物反応、感染症、コラーゲン血管疾患、例えば関節リウマチ及び全身性硬化症(強皮症)を含む。肺の線維性障害は、例えば肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常の間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患、原因不明の線維化肺胞炎(CFA)、閉塞性細気管支炎、及び気管支拡張症を含む。
【0069】
特発性肺線維症(IPF)は、ILDの最も一般的なタイプであり、そして原因は分かっていない。
【0070】
肝硬変はILDと同様の原因があり、そして例えば、ウイルス性肝炎、住血吸虫症及び慢性アルコール中毒に関連した肝硬変を含む。
【0071】
腎臓病は、腎臓を損傷し、そして瘢痕化させ、進行性の機能喪失及びまた高血圧症を引起す糖尿病に関連している可能性がある。腎線維症は、慢性腎疾患(CKD)から末期腎疾患(ESRD)まで、腎疾患のいずれの段階でも発生する可能性がある。腎線維症は、線維性応答を促進する腎機能に対して多大な負担をかける、高血圧又は糖尿病などの心血管疾患の結果として発症する可能性がある。しかしながら、腎線維症はまた、特発性(既知の原因はない)であり、そして特定の遺伝的ミトコンドリア病もまた、腎線維症の症状及び関連する症状を示している。
【0072】
心臓病は、心臓のポンピングする能力を損なう可能性がある瘢痕組織をもたらす。目の疾患は、例えば黄斑変性症、及び視力を損なう可能性ある網膜及び硝子体網膜症を含む。
【0073】
好ましい実施形態によれば、本発明は、特発性肺線維症(IPF)の治療に関する。
【0074】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、腎線維症の治療に関する。
【0075】
本発明の全ての側面の別の好ましい実施形態によれば、障害又は状態は、USP30の阻害が有益な効果をもたらすことが知られているか、又は示され得るものである。
【0076】
より好ましい実施形態によれば、USP30活性から恩恵を受ける障害又は状態は、癌及びミトコンドリア機能障害から選択される。好ましい癌は、例えば以下を含む:乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頸部、膵臓、脳、黒色腫、骨又は組織器官の他の癌、及び血液細胞の癌、例えばリンパ腫及び白血病、多発性骨髄腫、結腸直腸癌、及び非小細胞肺癌。
【0077】
ミトコンドリア機能障害を伴う状態は、マイトファジー欠損を含む状態、ミトコンドリアDNAにおける突然変異を含む状態、ミトコンドリア酸化ストレスを含む状態、ミトコンドリア膜電位の欠陥を含む状態、ミトコンドリア生合成、ミトコンドリア形状又は形態の欠陥を含む状態及びリソソーム蓄積障害を含む状態から選択され得る。
【0078】
特に、ミトコンドリア機能不全を含む状態は、以下から選択され得る:多発性硬化症(MS)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、乳酸アシドーシス、及び脳卒中様エピソード(MELAS)症候群; レーバーの遺伝性視神経障害(LHON);癌、 神経障害、運動失調、網膜色素変性症-母性遺伝リー症候群(NARP-MILS); ダノン病; 糖尿病; 糖尿病性腎症; 代謝障害; 心不全; 心筋梗塞につながる虚血性心疾患; 精神疾患、統合失調症、例えば精神疾患; 多重スルファターゼ欠損症(MSD); ムコリピドーシスII(ML II); ムコリピドーシスIII(ML III); ムコリピドーシスIV(ML IV); GM1-ガングリオシドーシス(GM1); 神経セロイドリポフスチン症(NCL1); アルパース病; バース症候群; ベータ酸化欠陥; カルニチン-アシル-カルニチン欠乏症;カルニチン欠乏症; クレアチン欠乏症候群; 補酵素Q10欠乏症;複合体I欠乏; 複合体IIの欠乏; 複合体III欠乏; 複合体IV欠乏; 複合体V欠乏; COX欠乏; 慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO); CPT I欠乏; CPT II欠乏; グルタル酸尿症II型; カーンズ・セイヤー症候群; 乳酸アシドーシス; 長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(LCHAD); リー病又は症候群; 致死性乳児心筋症(LIC); かさ病; グルタル酸尿症II型; 中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MCAD); ミオクローヌス癲癇及びラグレッドファイバー(MERRF)症候群; ミトコンドリア細胞変性; ミトコンドリア劣性運動失調症候群; ミトコンドリアDNA枯渇症候群; 筋尿腸疾患及び脳症; ピアソン症候群; ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠乏; ピルビン酸カルボキシラーゼ欠乏; POLG突然変異; 中/短鎖3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ(M / SCHAD)欠損; 及び、非常に長鎖のアシルCoAデヒドロゲナーゼ(VLCAD)欠乏。
【0079】
ミトコンドリア機能障害を含む状態は、CNS障害、CNS障害、例えば神経変性疾患であり得る。
【0080】
神経変性疾患は、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、虚血、脳卒中、レビー小体型認知症、及び前頭側頭型認知症を含むが、但し、それらだけに限定されない。本発明の化合物は、α-シヌクレイン、パーキン及びPINK1の変異に関連するPD、パーキンが変異している常染色体劣性若年性パーキンソン病(AR-JP)を含む(但しそれらだけには限定されない)パーキンソン病の治療において有用である。
【0081】
本明細書に記載されるような本発明の化合物又はその医薬組成物は、1又は2以上の追加の剤を含むことができる。化合物は、追加の抗腫瘍剤、例えば化学療法薬物又は他の調節タンパク質の阻害剤と組合され得る。1つの実施形態によれば、追加の抗腫瘍治療剤は、PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)阻害剤、BRCA2阻害剤及びATM阻害剤から選択される。別の実施形態によれば、PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)阻害剤は、阻害性RNA(RNAi)分子(PARPi)である。さらなる実施形態によれば、PARP阻害剤は、ニパリブ(BSI 201)、オラパリブ(AZD-2281)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)及びベリパリブ(ABT-888)、MK-4827、CEP-9722、E7016(GPI-21016)、LT-673、MP- 124、NMS-P118の1つ又は複数から選択され得る。さらなる実施形態によれば、追加の抗腫瘍剤は、化学療法剤である。化学療法剤は、オラパリブ、マイトマイシンC、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、電離放射線(IR)、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、テモゾロミド、タキサン、5-フルオロピリミジン、ゲムシタビン、およびドキソルビシンから選択され得る。
【0082】
式(I)(式中、nは0であり、そして「A」はハロにより任意に置換された炭素環であり;又はnは0であり、Lは結合であり、そして基「A」は非置換の飽和複素環である)で表される化合物;又は他方では、式(Ia)以外の式(I)((i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v))で表される化合物に関しては、以下から選択された癌に使用される:乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頸部、膵臓、脳、黒色腫、骨又は組織器官の他の癌及び血液細胞の癌、例えばリンパ腫及び白血病、多発性骨髄腫、結腸直腸癌、および非小細胞肺癌。
【0083】
さらに、又は他方では、式(Ia)以外の式(I)((i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v))で表される化合物に関しては、障害又は状態は、神経変性障害、ウィルス又は細菌感染、及び代謝障害から選択され得、そして代謝障害は好ましくは、神経変性障害である。
【0084】
本発明の医薬組成物は、任意の適切に効果的な方法で、例えば錠剤、糖衣錠、粉末、エリキシル剤、シロップ、懸濁液、スプレー、吸入剤、錠剤、ロゼンジ、エマルジョン、溶液、カシェ剤、顆粒およびカプセルを含む液体製剤を含む(但しそれらだけには限定されない)任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。そのような剤形は、医薬製剤の分野において公知の技法に従って調製される。スプレー又は吸入剤の形である場合、医薬組成物は、経鼻投与される。この目的のための適切な製剤は、当業者に知られている。
【0085】
本発明の医薬組成物は、注射により投与されても良く、そしてリポソーム製剤を含む注射用無菌液体製剤の形であっても良い。本発明の医薬組成物はまた、直腸投与用の座薬の形であっても良い。それらは、医薬組成物が室温で固体であり、そして活性化合物の放出を可能にするために室温で液体であるよう処方される。
【0086】
化合物の有効用量の大きさは、もちろん、治療されるべき状態の重症度の性質及び投与経路により変化するであろう。適切な投与量の選択は、医師の権限の範囲内である。毎日の用量範囲は、ヒト及び非ヒト動物の体重1kg当たり約10μg~約100mgであり、そして一般的には、1用量当たり体重1kg当たり約10μg~30mgであり得る。上記用量は、1日当たり1~3回投与され得る。
【0087】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明の第2の側面に従っての式(Ia)((i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v))の化合物の調製方法を提供し、前記方法は、式(IIIa)のスルホンアミドを得るために、式(V)(式中、PGは保護基、例えばBOC又はCBZでアル)のアミンと、式(IV)の化合物とを反応させることを含む。さらに、式(IIIa)の1つの化合物は、ブロモ-アリール又はブロモ-ヘテロアリール基のSuzukiカップを介して、式(IIIa)の別の化合物に転換され得る。スルホンアミド(IIIa)は、標準方法を用いて保護解除され、アミン(IIa)が得られ、これは次に、臭化シアンと反応せしめられ、式(Ia)の化合物が得られる。
【化7】
【0088】
さらなる側面によれば、本発明は、式(IIa)又は(IIIa)の中間体を提供し、前記式中、PGは保護基、好ましくはBOC又はCBZであり、そしてm、n、R、R、L、L及び基「A」及び基「B」は、式(Ia)((i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v))の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体について本明細書において定義去る通りである。
【0089】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明の第3の側面に従っての式(Ib)の化合物の調製方法を提供し、前記方法は、式(IIIb)のスルホンアミドを得るために、式(VI)のアミンと、式(VII)(式中、PGは保護基、例えばBOC又はCBZである)の化合物とを反応させることを含む。さらに、式(IIIb)の1つの化合物は、ブロモ-アリール又はブロモ-ヘテロアリール基のSuzukiカップリングを介して、式(IIIb)の別の化合物に転換され得る。スルホンアミド(IIIb)は、標準方法を用いて保護解除され、アミン(IIb)が得られ、次にこれは、臭化シアンと反応せしめられ、式(Ib)の化合物が得られる。
【化8】
【0090】
さらなる側面によれば、本発明は、式(IIb)又は(IIIb)の中間体を提供し、前記式中、PGは保護基、好ましくはBOC又はCBZであり、そしてm、n、R、R、L、L及び基「A」及び基「B」は、式(Ib)((i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v))の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体について本明細書において定義去る通りである。
【0091】
式(I)の化合物の医薬的に許容できる塩は、その酸付加塩及び塩基付加塩(二塩を含む)を含む。
【0092】
適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。
【0093】
例としては、以下を含む:酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸、ヒベン酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、リン酸水素塩、D 及びL-乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、2-ナプチル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、D-及びL-酒石酸塩、及びトシレート塩。
【0094】
適切な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、以下を含む:アルミニウム、アンモニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛塩。
【0095】
適切な塩についての再考については、Stahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH, Weinheim, Germany (2002)を参照のこと。
【0096】
式(I)の化合物の医薬的に許容できる塩は、式(I)の化合物の溶液と、必要に応じて所望の酸又は塩基を一緒に混合することにより、容易に調製され得る。塩は溶液から沈殿し、そして濾過により集められるか、又は溶媒の蒸発により回収され得る。
【0097】
本発明による医薬的に許容できる溶媒和物は、結晶化の溶媒が同位体置換され得る水和物及び溶媒和物、例えばDO、アセトン-d、DMSO-dを含む。
【0098】
また、本発明の範囲内には、前述の溶媒和物とは対照的に、薬物及び宿主が非化学量論量で存在する、クラストレート、すなわち薬物-宿主包接複合体がある。そのような複合体の再考については、J.Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288 by Haleblian (August 1975)を参照のこと。
【0099】
以下、式(I)の化合物への全ての言及は、その塩、及び式(I)の化合物及びその塩の溶媒和物及び包接化合物を言及する。
【0100】
本発明は、上記で定義されたような式(I)の化合物の全ての多形体を含む。
【0101】
また、式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」も本発明の範囲内にある。従って、それ自体ほとんどか又は全く薬理学的活性を有さない式(I)の化合物の特定の誘導体は、体内又は体上への投与に基いて代謝される場合、所望の活性を有する式(I)の化合物を生じさせる。そのような誘導体は、「プロドラッグ」と呼ばれる。
【0102】
本発明のプロドラッグは、例えば式(I)の化合物に存在する適切な官能基を、例えば"Design of Prodrugs" by H Bundgaard (Elsevier, 1985)に記載されるような「プロ成分」として当業者に知られている特定成分により置換することにより生成され得る。
【0103】
最終的に、式(I)の特定の化合物は、それ自体、式(I)の他の化合物として作用することができる。
【0104】
窒素原子を含む式(I)の化合物の特定の誘導体は、その対応するN-オキシドを形成することができ、そしてそのような化合物もまた、本発明の範囲内である。
【0105】
1又は2以上の不斉炭素原子を含む式(I)の化合物は、複数の光学異性体として存在し得る。式(I)の化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含む場合、幾何学的シス/トランス(又はZ/E)異性体が可能であり、そして化合物が例えばケト又はオキシム基を含む場合、互変異性異性(互変異性)が発生する可能性がある。単一の化合物が、複数のタイプの異性を示す場合がある。
【0106】
複数タイプの異性を示す化合物、及びその1又は2以上の混合物を含む、式(I)の化合物の全ての光学異性体、幾何学的異性体及び互変異性形は、本発明の範囲内に含まれる。
【0107】
シス/トランス異性体は、当業者に周知の従来の技法、例えば分別結晶化及びクロマトグラフィーにより分離され得る。
【0108】
個々の立体異性体の調製/単離のための従来の技法は、適切な光学的に純粋な前駆体の変換、例えばキラルHPLCを用いてのラセミ体(又は塩又は誘導体のラセミ体)の分割、又はラセミ体と適切な光学的活性酸又は塩基、例えば酒石酸との反応により形成されるジアステレオマー塩の分別結晶化を含む。
【0109】
本発明はまた、式(I)の化合物の医薬的に許容できる全ての同位体変形を含む。同位体変形とは、少なくとも1つの原子が同じ原子番号を有するが、しかし自然界で通常見出される原子質量とは異なる原子質量を有する原子により置換されているものとして定義される。
【0110】
本発明の化合物に含めるのに適切な同位体の例は、水素の同位体、例えばH及びH、炭素の同位体、例えば13C及び14C、窒素の同位体、例えば15N、酸素の同位体、例えば17O及び18O、リンの同位体、例えば32P、硫黄の同位体、例えば35S、弗素の同位体、例えば18F及び塩素の同位体、例えば36Clを含む。
【0111】
本発明の化合物の同位体、例えば重水素による置換は、高い代謝安定性、例えば高められたインビボ半減期、又は低められた用量必要条件に起因する特定の治療上の利点を付与し、そして従って、いくつかの状況下では好ましい。
【0112】
式(I)の化合物の特定の同位体変形、例えば放射性同位体を組込むそれらの変形は、薬物及び/又は基質組織分布研究において有用である。放射性同位体トリチウム及び14Cは、それらの組込みの容易性及び検出の容易な手段の観点からこの目的のために特に有用である。
【0113】
式(I)の化合物の同位体変形は一般的に、当業者に知られている従来の技法により、又は適切な試薬の適切な同位体変形を用いる付随する実施例及び調製に記載される方法に類似する方法により調製され得る。
【発明を実施するための形態】
【0114】
合成方法論
式(I)の化合物は、国際公開第01/77073号、第2009/026197号、第2009/129365号、第2009/129370号及び 第2009/129371号に記載される一般的な知識及び手順を用いて当業者により調製され得る。
【0115】
式(I)の化合物はまた、下記のようにして調製され得る。必要に応じて、スキーム内の個々の変換は異なる順序で完結され得る。以下のスキームは、一般的な合成方法を記載し、それにより、本発明の中間体及び標的化合物が調製され得る。追加の代表的化合物及びその立体異性体、ラセミ混合物、ジアステレオマー及び鏡像異性体は、一般的なスキームに従って調製された中間体及び当業者に知られている試薬を用いて合成され得る。鏡像異性体は、標準技法、例えばキラルHPLCを用いて、例えばカラムCHIRALART SA 250x4.6mm 5 μmを用いて分離され得る。
【0116】
全ての化合物は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)又はH NMR、又は両方により特徴付けられた。
【0117】
略語:
BOC tert-ブチルオキシカルボニル
CAS Chemical Abstractsサービス
d ダブレット(NMRシグナル)
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMA ジメチルアセトアミド
DMF N、N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
dppf 1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ES エレクトロスプレー
EtOAc 酢酸エチル
Fmoc フルオレニルメチルオキシカルボニル
Fmoc-OSu 9-フルオレニルメチルN-スクシンイミジルカーボネート
h 時間
HATU 1- [ビス(ジメチルアミノ)メチレン] -1H-1,2,3-トリア
ゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA イソプロピルアルコール
LCMS 液体クロマトグラフィー質量スペクトル
m マルチプレット(NMRシグナル)
MeCN アセトニトリル
MS マススペクトル
min 分
rt 室温
RT 保持時間
s シングレット(NMRシグナル)
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
T3P 2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホ
スホリナン-2,4,6-三酸化物
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
w/v 体積当たりの重量
【0118】
分析方法LCMS
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
一般方法A
【化9】
a.トリエチルアミン、DCM、0℃ -rt、48h; b. TFA、DCM又は 6N HCl、MeOH、100℃、16h; c. CNBr、NaHCO、DMF、0℃-rt、2h。
【0125】
一般方法B
【化10】
a.TFAオリエチルアミン、DCM、rt、30 分; b. RB(OH)、PdCl(PPh、NaCO、DMF、100℃、3h 又は R (アミン)、NaOtBu、Pddba、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ) ビフェニル、トルエン、80℃、2h; c.TFA、DCM、rt、2h; d. CNBr、KCO、THF、rt、1 h。
【0126】
一般方法C
【化11】
a.Fmoc-OSu; b. HCl、ジオキサン; c. CNBr、NaHCO; d. ピペリジン; e. RSOCl、ジエチルアミン、DCM。
【0127】
一般方法D
【化12】
a.R’R”NH、トリエチルアミン、DCM; b. TFA, DCM; c. CNBr、NaHCO
【実施例
【0128】
表1における化合物を、一般方法Aに従って合成した。
【化13】
【0129】
【表7-1】
【表7-2】
【0130】
表2における化合物を、一般方法Bに従って合成した。
【化14】
【0131】
【表8-1】
【表8-2】
【0132】
表3における化合物を、一般方法Cに従って合成した。
【化15】
【0133】
【表9】
【0134】
実施例20:(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミド
【化16】
【0135】
工程1:tert-ブチル(R)-3-((4-ブロモ-N-メチルフェニル)スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレート
【化17】
【0136】
THF中、tert-ブチル(R)-3-(メチルアミオ)ピロリジン-1-カルボキシレート(CAS番号199336-83-9、Cambi Blockから入手できる)(0.500g、2.50mモル)の攪拌溶液に、窒素下で0℃でTEA(0.756g、7.49mモル)を添加し、そして同じ温度で10分間、攪拌した。THF(1ml)中、4-ブロモベンゼンスルホニルクロリド(CAS 番号 98-58-8、Combi-blocksから入手できる)(0.636 g、2.50 mモル)の溶液、0℃で反応混合物にゆっくり添加した。反応混合物を、室温で1時間、攪拌した。得られる反応混合物を、水(30ml)により希釈し、そしてEtOAc(3×20ml)により抽出した。組合わされた有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮し、tert-ブチル(R)-3-((4-ブロモ-N-メチルフェニル)スルホンアミド)-ピロリジン-1-カルボキシレート[1.00g、95.5%(粗)]。LCMS: 方法 C、2.427 分、MS: ES+363.1、365.1 (M-56)。
【0137】
工程2:tert-ブチル(R)-3-((N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレート
【化18】
【0138】
DMF-水(3:2;5ml)中、tert-ブチル(R)-3-((4-ブロモ-N-メチルフェニル)スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレート(1.0g、2.39mモル)及びピリジン-3-ボロン酸(CAS番号1692-25-7、combi-Blocksから入手できる)の混合物に、NCO(0.505g、4.77mモル)を添加した。得られる混合物を15~20分間、脱気した(反応溶液に窒素をパージすることにより)。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)(0.275g、0.24mモル)を、反応溶液中に添加し、そして得られる混合物を110℃で16時間、攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、そして水(110ml)により希釈し、そしてEtOAc(3×50ml)により抽出した。組合わされた有機抽出物を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮し、tert-ブチル(R)-3-((N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレート(0.5g、1.199mモル)を、粗塊状物として得た。LCMS: 方法 C、2.035 分、MS: ES+ 418.3。
【0139】
工程3:(R)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)-N-(ピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミドTFA塩
【化19】
【0140】
DCM(5ml)中、(R)-3-((N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホンアミド)ピロリジン-1-化ルボキシレート(0.4g、0.96モル)の溶液に、0℃でTFA(1ml)を添加し、そして得られる溶液を室温で4時間、攪拌した。反応混合物を、減圧下で濃縮した。粗物をジエチルエーテル(2×10ml)で共沸蒸留し、そして減圧下で乾燥し、(R)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)-N-(ピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミドTFA塩(0.4g、定量的)を得た。LCMS: 方法 C、1.377 分、MS: ES+ 318.3。
【0141】
工程4:(R)-N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)-ベンゼンスルホンアミド
THF(5ml)中、(R)-N-メチル-4-(ピリジン-3-イル)-N-(ピロリジン-3-イル)ベンゼンスルホンアミドTFA塩(0.400g、0.93mモル)の攪拌溶液に、KCO(0.384g、2.78mモル)を0℃で添加した。CNBr(0.118g、1.11mモル)を、0℃で反応混合物中に添加した。反応混合物を、室温で1時間、攪拌した。得られる反応混合物を、水(50ml)中に注ぎ、そしてEtOAc(3×50ml)により抽出した。組合わされた有機抽出物を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。得られる残渣を、Combi-フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ;DCM中、2.5%メタノールにより溶離された)により精製し、標記化合物(0.080g、0.23mモル)を得た。LCMS: 方法 B、3.096 分、MS: ES+ 343.1 [M+1]; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm: 9.00 (d, J=2 Hz, 1H), 8.66 (dd, J=4.8, 1.2 Hz, 1H), 8.19 (dt, J=8.0, 1.6 Hz, 1H), 8.01 (d, J=8.8 Hz, 2H), 7.93 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.57 - 7.54 (m, 1H), 4.64-4.60 (m, 1H), 3.45 - 3.40 (m, 2H), 3.33 - 3.29 (m, 1H), 3.20 -3.15 (m, 1H), 2.72 (s, 3H), 1.88 - 1.83 (m, 1H), 1.79 - 1.73 (m, 1H)。
【0142】
実施例21:(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボニトリル
【化20】
【0143】
工程1:tert-ブチルrac-(3aR、6aR)-1-((4-ブロモフェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート
【化21】
【0144】
THF(10ml)中、4-ブロモベンゼンスルホニルクロリド(CAS番号98-58-8、Alfa Aesarから入手できる)(0.2g、0.78mモル)及びtert-ブチルrac-(3aS、6aS)-ヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート(CAS番号180975-51-3、Enamineから入手できる)(0.166g、0.78mモル)の攪拌溶液に周囲温度でKCO(0.324g、2.35mモル)を添加した。反応混合物を、室温で8時間、攪拌した。得られる反応混合物を、水(200ml)により希釈し、そしてジエチルエーテル(3×100ml)により抽出した。組合わされた有機抽出物を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮し、tert-ブチルrac-(3aR、6aR)-1-((4-ブロモフェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート(0.350g、定量的)を粗塊状物として得た。LCMS: 方法 C、2.667 分、MS: ES+ 448.3 [M+1]。
【0145】
工程2:tert-ブチル(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ-[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート
【化22】
【0146】
DMF-水(4:1;17.5ml)中、tert-ブチルrac-(3aR、6aR)-1-((4-ブロモフェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート(0.350g、0.81mモル)、ピリジン-3-ボロン酸(CAS番号1692-25-1、Combiblocksから入手できる)(0.120gm、0.98mモル)の混合物に、KCO(0.224g、1.62mモル)を添加した。反応混合物を、30分間、脱気した(溶液を通して窒素をパージすることにより)。PdCl(dppf)(0.060g、0.08mモル)を、反応混合物中に添加し、そして得られる混合物を80℃で2時間、攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、飽和水性NaHCO(350ml)により希釈し、そしてEtOAc(3×200ml)により抽出した。組合わされた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。得られる残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中、3%メタノールにより溶離する)により精製し、tert-ブチル(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ-[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート(0.350g、0.82mモル)を得た。LCMS: 方法C、2.160 分、MS: ES+430.5。
【0147】
工程3:rac-(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)オクタヒドロピロロ[3,4-b]ピロールTFA塩
【化23】
【0148】
DCM(20ml)中、tert-ブチル(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ-[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボキシレート(0.350g、0.82mモル)の攪拌溶液に、0℃でTFA(2ml)を添加した。反応混合物を、室温で2時間、攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。粗残渣をジエチルエーテル(3×10ml)により、さらに共沸蒸留し、そして減圧下で乾燥し、rac-(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)オクタヒドロピロロ[3,4-b]ピロールTFA塩(0.210g、定量的)を、粗塊状物として得た。LCMS: 方法C、1.472 分、MS: ES+330.29。
【0149】
工程4:(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b]ピロール-5(1H)-カルボニトリル
【化24】
【0150】
THF(20ml)中、rac-(3aR、6aR)-1-((4-(ピリジン-3-イル)フェニル)スルホニル)オクタヒドロピロロ[3,4-b]ピロールTFA塩(0.200g、0.45モル)の攪拌溶液に、KCO(0.333g、2.41mモル)を0℃、続いてCNBr(0.051g、0.48mモル)を同じ温度で添加した。反応混合物を室温で1時間、攪拌した。得られる反応混合物を減圧下で濃縮し、そして得られる残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM中、3.0%メタノールにより溶離する)により精製し、標記化合物(0.150g、0.423mモル)を得た。LCMS: 方法A、3.698 分、MS: ES+354.9 [M+1];1H NMR (400 MHz, DMSO-D6): 8.96 (d, J = 2Hz, 1 H), 8.65 - 8.64 (m, 1 H), 8.19 - 8.17 (m, 1 H), 8.02 (d, J, 8.4 Hz, 2 H), 7.95 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.54 - 7.57 (m, 1 H), 4.05 - 4.01 (m, 1 H), 3.58 (d, J=7.2Hz, 2 H), 3.56 - 3.48 (m, 1 H), 3.41 - 3.28 (m, 1 H), 3.35 (dd, J = 10.0 & 6.0 Hz, 1 H), 3.18 - 3.14 (m, 1 H), 1.74 - 1.62 (m, 1 H), 1.65 - 1.71 (m, 2 H)。
【0151】
実施例22:rac-(4aR、7aR)-4-トシルヘキサヒドロピロロ[3,4-b] [1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル
【化25】
【0152】
標記化合物を、工程aにおけるピロロ[3,4-b]-1,4-オキサジン-6(2H)-カルボン酸、ヘキサヒドロ-1,1-ジメチルエチルエステル、(4aR、7aS)を用いて、一般方法Aにより合成した。LCMS: 方法D、2.591 分、MS: ES+345.1 [M+1]。
【0153】
実施例23:rac-(4aR、7aS)-4-((4-メチルベンジル)スルホニル)ヘキサヒドロピロロ[3,4-b] [1,4]オキサジン-6(2H)-カルボニトリル
【化26】
【0154】
標記化合物を、工程aにおけるピロロ[3,4-b]-1,4-オキサジン-6(2H)-カルボン酸、ヘキサヒドロ-1,1-ジメチルエチルエステル、(4aR、7aS)を用いて、一般方法Aにより合成した。LCMS: 方法D、2.591 分、MS: ES+322.4 [M+1]。
【0155】
実施例24:N-(5-(N-(1-シアノピロリジン-3-イル)スルファモイル)ピリジン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド
【化27】
【0156】
工程1:ピリジン-2-アミンを、クロロスルホン酸において150℃に加熱し、6-アミノピリジン-3-スルホニルクロリドを得、この祖生成物を次の反応に使用した。
【0157】
工程2:6-アミノピリジン-3-スルホニルクロリドを、一般方法A、工程aを用いて、tert-ブチル-3-アミノピロリジン-1-カルボキシレートに添加し、t-ブチル3-((6-アミノピリジン)-3-スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレートを得た。
【0158】
工程3:t-ブチル3-((6-アミノピリジン)-3-スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレート及び1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボン酸を、酢酸エチル、トリエチルアミン及びTHF中、50%T3Pと共に30時間、70℃に加熱し、tert-ブチル3-((6-(1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド)ピリジン)-3-スルホンアミド)ピロリジン-1-カルボキシレートを得た。
【0159】
工程4:標記化合物を、一般方法A、工程b-cの手順に従って合成した。LCMS: 方法B、2.998 分、MS: ES+376.13 [M+1];1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.32 (s, 1 H), 8.77 (d, J = 2.4Hz, 1 H), 8.37 (d, J = 8.4Hz, 1 H), 8.24 - 8.26 (m, 2 H), 7.55 (d, J = 2 Hz, 1 H), 7.34 (d, J = 2 Hz, 1 H), 4.1 (s, 3 H), 3.78 - 3.82 (m, 1 H), 3.31 - 3.46 (m, 3 H), 3.09 - 3.12 (m,1 H), 1.88 -1.99 (m, 1 H),1.66 - 1.74 (m,1 H)。
【0160】
実施例25:N-(1-シアノピロリジン-3-イル)-N-メチル-4-((5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)ベンゼンスルホンアミド
【化28】
【0161】
標記化合物を、工程aにおけるtert-ブチル3-(メチルアミノ)ピロリジン-1-カルボキシレートを用いて、一般方法Cにより合成した。LCMS: 方法D、3.046 分、MS: ES+427.2 [M+1]。
【0162】
表4における化合物を、一般方法Dに従って合成した。
【化29】
【0163】
【表10】
【0164】
本発明の化合物生物学的活性
略語:
TAMRA カルボキシテトラメチルローダミン
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PBS リン酸緩衝生理食塩水
EDTA エチレンジアミン四酢酸
Tris 2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール
NP-40 Nonidet P-40、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール
BSA ウシ血清アルブミン
PNS 末梢神経系
BH3 Bcl-2相同性ドメイン3
PTEN ホスファターゼとテンシンホモログ
【0165】
インビトロUCHL1阻害アッセイ
UCHL1の発現及び精製
UCL1コンストラクトを、PCR増幅し、そしてN末端FLAG標識を有するpFLAG-CMV-6aベクター(Sigma-Aldrich)にクローニングした。HEK293T細胞を、TransIT-LT1トランスフェクション試薬(Mirus)を用いて、その製造業者の説明書に従って、FLAG-UCHL1によりトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションの40時間後、収穫した。細胞をPBSにより1度、洗浄し、そして溶解緩衝液(50mMの Tris、pH 7.5、150mM のNaCl、3mMの EDTA、0.5%NP40、10%グリセロール、5mMのベータメルカプトエタノール、プロテアーゼ阻害剤(complete mini, Roche)及びホスファターゼ阻害剤(PhosSTOP mini、Roche))中に掻き取った。溶解物を氷上で30分間インキュベートし、そして4℃で10分間、1200rpmで遠心分離した。可溶性上清液を、低塩緩衝液(20mMの Tris、pH 7.5、150mM のNaCl、0.5mM のEDTA、5mMのベータメルカプトエタノール)において平衡化されたFLAG親和性樹脂(EZview Rad ANTI-FLAG M2 親和性ゲル、 Sigma-Aldrich)に添加し、そして4℃で時間、回転下でインキュベートした。樹脂を2000rpmで2時間、回転し、そして上清液を除いた。樹脂を、低塩緩衝液により2度、及び高塩緩衝液(20mMの Tris、pH 7.5、500mM のNaCl、0.5mM のEDTA、5mMのベータメルカプトエタノール、プロテアーゼ阻害剤(complete mini, Roche)及びホスファターゼ阻害剤(PhosSTOP mini、Roche))により1度、洗浄した。結合されたUCHL1を溶出するために、溶出緩衝液(10mMの Tris、pH 7.5、150mM のNaCl、0.5mM のEDTA、10%グリセロール、0.5%NP40、5mMのベータメルカプトエタノール、0.15mg/mlの 3x FLAGペプチド(Sigma-Aldrich))を、樹脂に添加し、そして4℃で2.5時間、回転しながらインキュベートした。樹脂を4000rpmで30秒間、遠心分離し、そして精製されたFLAG-UCHL1を含む上清液を除き、そして-80℃で貯蔵した。
【0166】
UCHL1生化学的動態アッセイ
反応を、21μlの最終反応量で、黒い384ウェルプレート(小容量、Greiner 784076)において二度反復して実施した。UCHL1を反応緩衝液(20mM のTris、pH 7.5、100mMの NaCl、0.05%Tween 20、0.5mg / ml のBSA、5mMのベータメルカプトエタノール)により0、0.01、0.05、0.1、0.5及び1μl/ウェルに希釈した。緩衝液を、最適温度、pH、還元剤、塩、インキュベーション時間及び洗剤のために最適化した。反応を、蛍光偏光基質としてイソペプチド結合を介してユビキチンに結合される50nMのTAMRA標識ペプチドの添加により開始した。反応物を室温でインキュベートし、そして2分ごとに120分間、読み取った。読み取りを、Pherastar Plus (BMG Labtech)上で行った。λ励起540nm;λ放射590nm。
【0167】
UCHL1生化学IC50アッセイ
希釈プレートを、96ウェルポリプロピレンV底プレート(Greiner番号651201)において50%DMSOで、最終濃度の21倍(最終濃度100μMで2100μM)に調製した。典型的な8点希釈シリーズは、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01μM最終である。反応を、21μlの最終反応量で、黒い384ウェルプレート(小容量、Greiner 784076)において二度反復して実施した。1μlの50%DMSO又は希釈された化合物のいずれかをプレートに添加した。UCHL1を反応緩衝液(20mM のTris、pH 7.5、100mMの NaCl、0.05%Tween 20、0.5mg / ml のBSA、5mMのベータメルカプトエタノール)により0.05μl/ウェルに希釈し、そして10μlの希釈されたUCHL1を化合物に添加した。酵素及び化合物を、室温で30分間インキュベートした。反応を、蛍光偏光基質としてイソペプチド結合を介してユビキチンに結合される50nMのTAMRA標識ペプチドの添加により開始した。反応物を、基質の添加の後、及び室温での2時間のインキュベーションの直後、読み取った。読み取りを、Pherastar Plus (BMG Labtech)上で行った。λ励起540nm;λ放射590nm。
【0168】
UCHL1生化学IC50アッセイにおける典型的な化合物の活性
範囲:
A<0.1μM;
0.1<B<1μM;
1<C<10μM;
10μM<D<100μM
【0169】
【表11】
【0170】
インビトロUSP30阻害アッセイ
USP30生化学動態アッセイ。反応を、21μlの最終反応量で、黒い384ウェルプレート(小容量、Greiner 784076)において二度反復して実施した。USP30 CD (57-517、 シャープ 64-0057-050 Ubiquigent)を、反応緩衝液(40mM のTris、pH 7.5、0.005%Tween 20、0.5mg / ml のBSA、5mMのベータメルカプトエタノール)により0、0.005、0.01、0.05、0.1、及び0.5μl/ウェルに希釈した。緩衝液を、最適温度、pH、還元剤、塩、インキュベーション時間及び洗剤のために最適化した。反応を、蛍光偏光基質としてイソペプチド結合を介してユビキチンに結合される50nMのTAMRA標識ペプチドの添加により開始した。反応物を室温でインキュベートし、そして2分ごとに120分間、読み取った。読み取りを、Pherastar Plus (BMG Labtech)上で行った。λ励起540nm;λ放射590nm。
【0171】
USP30生化学IC50アッセイ
希釈プレートを、96ウェルポリプロピレンV底プレート(Greiner番号651201)において50%DMSOで、最終濃度の21倍(最終濃度100μMで2100μM)に調製した。典型的な8点希釈シリーズは、100、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03μM最終である。反応を、21μlの最終反応量で、黒い384ウェルプレート(小容量、Greiner 784076)において二度反復して実施した。1μlの50%DMSO又は希釈された化合物のいずれかをプレートに添加した。USP30を反応緩衝液(40mM のTris、pH 7.5、0.005%Tween 20、0.5mg / ml のBSA、5mMのベータメルカプトエタノール)により0.05μl/ウェルに希釈し、そして10μlの希釈されたUSP30を化合物に添加した。酵素及び化合物を、室温で30分間インキュベートした。反応を、蛍光偏光基質としてイソペプチド結合を介してユビキチンに結合される50nMのTAMRA標識ペプチドの添加により開始した。反応物を、基質の添加の後、及び室温での2時間のインキュベーションの直後、読み取った。読み取りを、Pherastar Plus (BMG Labtech)上で行った。λ励起540nm;λ放射590nm。
【0172】
USP30生化学IC50アッセイにおける典型的な化合物の活性
範囲:
A<0.1μM;
0.1<B<1μM;
1<C<10μM;
10μM<D<100μM
【0173】
【表12】