(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】外科手術用アセンブリおよびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/00 20060101AFI20230206BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
A61B18/00
A61B18/20
(21)【出願番号】P 2019564022
(86)(22)【出願日】2018-05-21
(86)【国際出願番号】 GB2018051372
(87)【国際公開番号】W WO2018211292
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-20
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517048935
【氏名又は名称】アレジ サージカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリュワー ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アモアー フランシス クエク エジン
(72)【発明者】
【氏名】ハーン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ネイバー マット
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウィク ユージーン
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/136962(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0086915(US,A1)
【文献】特表2014-534870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022350(US,A1)
【文献】特表2012-533380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術部位の近くに浮遊する粒子をイオン化
することにより前記粒子を除去するために外科手術部位の近くに電界を生成する際に使用するDC信号と、外科手術中に患者の組織を切断、密封、または焼灼する際に使用する第2の信号とを受信するように配置された切替え装置を備え、さらに、ツールピースを備えた外科手術用ツールと、第1の時間間隔の間の前記ツールピースへの前記DC信号の印加および第2の時間間隔の間の前記ツールピースへの前記第2の信号の印加を制御するためのコントローラとを備え、前記切替え装置は前記ツールピースへの前記DC信号と第2の信号の印加を切り替えるように配置され、前記DC信号および第2の信号は、前記DC信号および第2の信号が前記ツールピースから除去される第3の時間間隔によって分離され、前記コントローラは、前記第1の時間間隔および第2の時間間隔が重複しない間隔であるように、前記第2の時間間隔の後で、前記ツールピースへの前記DC信号の印加をタイミング調整するように配置されるタイミング装置を備え、前記タイミング装置は、前記第2の信号の停止に応じて、前記DC信号の印加をタイミング調整するように配置され、前記先行する第1の時間間隔中に
前記ツールピースに蓄積された任意の残留容量性電荷を、前記第3の時間間隔中に
前記ツールピースから放電または消散することができる、外科手術用アセンブリ。
【請求項2】
前記第2の信号を感知するための感知装置をさらに備え、前記感知装置は、前記感知された第2の信号に応じて感知信号を前記コントローラに出力するように配置される、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項3】
前記DC信号を前記ツールピースに印加するためのオーバーライドアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項4】
前記切替え装置は、前記ツールピースへの前記DC信号および第2の信号の印加を切り替えるための少なくとも1つのリレーを備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項5】
残留電荷の放電または消散を可能にするための少なくとも1つの抵抗器をさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項6】
前記ツールピースと患者組織との間の分離とは無関係に、前記ツールピースの遠位端と前記患者組織との間の電圧差を実質的に一定に維持するための電圧補償回路をさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項7】
前記DC信号はDC発生器によって生成され、前記電圧補償回路は、前記DC発生器の出力部と電気的に結合可能な抵抗装置と、目標電圧および前記抵抗装置を流れる電流を表す信号とを入力として受信するように配置されたプロセッサとを備え、前記プロセッサは、前記信号を処理し、前記抵抗装置の両端間の電圧降下に対応する量だけ前記DC発生器からの電圧出力を増加させるように配置される、請求項6に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項8】
前記DC信号はDC発生器によって生成され、前記外科手術用アセンブリは、前記DC発生器からの電流出力の閉ループ制御のためのアナログ閉ループ回路をさらに備える、請求項1に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項9】
前記アナログ閉ループ回路は、前記DC発生器から流れる電流を最大値100μAに制限するように配置される、請求項8に記載の外科手術用アセンブリ。
【請求項10】
外科手術用システムであって、請求項1に記載の外科手術用アセンブリと、外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、前記外科手術部位の近くに電界を生成する際に使用するDC信号を生成するためのDC発生器と、前記外科手術中に患者の組織を切断または焼灼する際に使用する第2の信号を生成するための第2の発生器とを備える、外科手術用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術用アセンブリおよびシステム、ならびにDC電圧補償回路に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形態の粒子状物質は、一般的に外科手術中に遭遇する。粒子状物質は、例えば、治療薬を供給するために利用されるか、外科手術を行った結果として経験することがあり得る。微粒子ベースの治療薬の例としは、血液の急速な凝固をもたらすための、または癌などの疾患を治療するための薬剤の供給がある。外科手術を行った結果として作り出される粒子状物質の一般的な例としては、「エネルギーベースの」外科手術器具を使用するときに経験するものである。エネルギーベースの外科手術器具には、組織の切断や凝固などの治療効果を実現するために、何らかの方法で電力供給される。無線周波数(RF)、超音波、レーザなどの動作モードがいくつかあるが、これらのエネルギーベースの器具は全て、その動作モードの副産物として粒子状物質を作り出す。
【0003】
エネルギーベースの器具によってエアロゾルの形態で作り出された粒子状物質は、少なくとも2つの理由で問題がある。第1に、それは外科医の視野を急速に遮り、したがって外科手術を遅くし、視界不良により引き起こされる患者への偶発的な危害のリスクを生み出す。第2に、これらの器具によって作り出された粒子状物質への長期間の曝露は、医療従事者にとって危険であるという懸念がある。歴史的に真空ベースのシステムが、手術野からエアロゾル粒子状物質を抽出するために使用されてきた。ただし、これは希釈ベースのプロセスであるため、粒子状物質を迅速に除去し視野の質を改善するには非効率的である。これに加えて、例えば腹腔鏡手術などの手術空間を作り出すためにガス注入を必要とする外科手術の場合、結果として生じるガスの交換により、組織は乾燥し干上がり、これにより患者に有害な影響を及ぼす。この結果と、真空ベースのシステムは音が大きくて扱いにくいという事実の結果として、真空ベースのシステムの採用は乏しくなっている。
【0004】
国際公開第2011/010148号パンフレットは、電気外科手術中に発生するサージカルスモークおよび他のエアロゾル粒子の低減ならびに除去のための装置を介して外科手術で粒子状物質を管理するための代替アプローチを開示している。装置は、腹腔内などの外科手術部位の近くに配置された尖った電極から電子の流れを生成し、電極から放出された電子は近くに浮遊するエアロゾル粒子に付着する。装置はさらに、電極と患者との間に電位差を確立して、イオン化粒子を外科手術部位から引き離し、それにより外科医の部位視界が改善される。
【0005】
しかしながら、例えば腹部内に配置される電極は、腹壁内に追加の切開を必要とし、これは望ましくない。装置の有効性はまた、外科手術部位や他の外科手術器具に対する電極の位置にも依存するため、外科医の経験とスキルにも左右される。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、現在、上記の制限の少なくともいくつかに対処する外科手術用アセンブリおよびシステムを考案した。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために外科手術部位の近くに電界を生成する際に使用する第1の信号と、外科手術中に患者の組織を切断、密封、または焼灼する際に使用する第2の信号とを受信するように配置された切替え装置を備え、さらに、ツールピースを備えた外科手術用ツールと、第1の時間間隔の間のツールピースへの第1の信号の印加および第2の時間間隔の間のツールピースへの第2の信号の印加を制御するためのコントローラとを備え、切替え装置はツールピースへの第1の信号と第2の信号の印加を切り替えるように配置され、コントローラは、第1および第2の間隔が重複しない間隔であるように、第2の間隔の後で、ツールピースへの第1の信号の印加をタイミング調整するように配置されるタイミング装置を備える、外科手術用アセンブリが提供される。
【0008】
一実施形態では、第1および第2の信号は、第1および第2の信号がツールピースから除去される第3の間隔によって分離される。
【0009】
一実施形態では、本アセンブリは、第1の信号を生成するための第1の発生器をさらに備え、ツールピースは、第1の発生器と通信可能に結合可能である。本アセンブリは、コントローラを通過する際に、第2の発生器からの第2の信号を感知するための感知装置をさらに備え、感知装置は、感知された第2の信号に応じて感知信号をコントローラに出力するように配置される。この感知装置は、例えば、第2の信号が超音波信号またはレーザ信号を含む状況に特に有用であると想定される。第1の間隔は、第2の信号が第2の閾値を下回る間隔に対応し、第2の間隔は、第1の信号が第1の閾値を下回る間隔に対応する。第1および第2の閾値は、第1および第2の信号が、それ以下では、微粒子除去、切断、密封、または焼灼の外科的機能を提供できない第1および第2の信号値に、それぞれ対応するのが好ましい。
【0010】
一実施形態では、コントローラは、ツールピースへの第1および第2の信号の印加を制御するように配置された少なくとも1つのアクチュエータを備える。アクチュエータは、外科手術用ツール上に配置されたハンドスイッチを備えてもよい。代替的に、アクチュエータは、足で作動するアクチュエータを備えてもよい。さらなる代替形態では、アクチュエータは、例えばロボット手術などで、外科手術部位から離れて配置されてもよい。
【0011】
一実施形態では、コントローラは、第1の信号を起動するためのオーバーライドアクチュエータを備える。第1の時間間隔の間、または第1の間隔の後、すなわち、第1の信号がツールピースに印加されていない間であるが第2の間隔が始まる前に、すなわち、第2の信号がツールピースに印加される前に、オーバーライドアクチュエータを作動すると、コントローラは、オーバーライドアクチュエータが作動している間、ツールピースに第1の信号をさらに印加するように配置されている。この設備は、サージカルスモークを含む浮遊粒子の大量蓄積を除去したい外科医にとって役立つと予想される。
【0012】
一実施形態では、タイミング装置は、コントローラからの指示の後、ツールピースへの第1および第2の信号の切替えを遅延させるように配置されており、第1および第2の信号発生器内の残留容量電圧および残留インダクタンス電流が消散するか、それぞれの閾値値を下回ることができる。
【0013】
一実施形態では、第1の発生器は第1の発電機を備え、第1の発生器の第1の電極はツールピースと電気的に結合可能であり、第1の発生器の第2の電極は患者と電気的に結合可能である。第2の電極は、接着パッドおよび導電性ゲルを介して患者と電気的に結合可能であってもよい。第1および第2の発生器は、同じ第2の電極を共有してもよい。
【0014】
一実施形態では、第1の発電機は、直流信号を生成して、ツールピースと患者の生体組織との間に指向性電界を確立するように構成される。本アセンブリは、第2の信号を生成するための第2の発生器をさらに備えてもよい。一実施形態では、第2の発生器は、高周波交流信号を生成するように構成された第2の発電機を備える。
【0015】
一実施形態では、ツールピースは少なくとも1つのイオン生成中心を含む。イオン生成中心は、例えば、ツールピースの尖った遠位端および/またはツールピースの鋸歯状部分を備えてもよい。
【0016】
一実施形態では、ツールピースは、例えば、線形構成、J形状構成、L形状構成を備えるか、またはブレード、もしくは一対の対向する顎を備える鉗子を備えてもよい。
【0017】
一実施形態では、ツールピースは、外科手術用ツールと取り外し可能に結合可能である。ツールピースは、例えば使い捨て1回使用のツールピースを備えてもよい。ツールはまた、例えば、使い捨て1回使用のツールを備えてもよい。
【0018】
一実施形態では、外科手術用ツールは、少なくとも一部がハンドルとして機能するハウジングを備える。好ましくは、コントローラはハウジング内に配置される。
【0019】
一実施形態では、第1および第2の信号は、ケーブルコネクタを介して第1の発生器と電気的に結合するように配置された接続ケーブルを介してツールピースに通信される。
【0020】
一実施形態では、先行する第1または第2の間隔中に蓄積された残留容量性電荷を、第3の間隔中に放電または消散することができる。一実施形態では、本アセンブリは、残留電荷の放電または消散を可能にする少なくとも1つの抵抗器をさらに備える。
【0021】
一実施形態では、本アセンブリは、ツールピースの遠位端の患者組織への近接を感知するための近接センサをさらに備える。
【0022】
一実施形態では、本アセンブリは、ツールピースと患者組織との間の分離とは無関係に、ツールピースの遠位端と患者組織との間の電圧差を実質的に一定に維持するための電圧補償回路をさらに備える。電圧補償回路は、ツールピースと患者の組織との間を通過する電流が0~100μA、好ましくは0~50μA、より好ましくは0~10μAの間で変化するとき、電圧差を実質的に一定に維持するように配置される。
【0023】
一実施形態では、電圧補償回路は、第1の発生器の出力部と電気的に結合可能な抵抗装置と、目標電圧および抵抗器装置を流れる電流を表す信号とを入力として受信するように配置されたプロセッサとを備え、当該プロセッサは、信号を処理し、抵抗器装置の両端の電圧降下に対応する量だけ第1の発生器からの電圧出力を増加させるように配置されている。
【0024】
一実施形態では、本アセンブリは、第1の発生器からの電流出力の閉ループ制御のためのアナログ閉ループ回路をさらに備える。アナログ閉ループ回路は、第1の発生器から流れる電流を最大値100μAに制限するように配置される。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の外科手術用アセンブリと、外科手術の結果生じる外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために、外科手術部位の近くに電界を生成する際に使用する第1の信号を生成するための第1の発生器と、外科手術中に患者の生体組織を切断または焼灼する際に使用する第2の信号を生成するための第2の発生器とを備える外科手術用システムが提供される。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、ツールピースと患者組織との間の分離から生じる電気インピーダンスとは無関係に、ツールピースの遠位端と患者組織との間の電圧差を実質的に一定に維持するために、DC発生器によってツールピースへの電圧出力を変化させるためのDC電圧補償回路が提供され、当該回路は、DC発生器の出力部と電気的に結合可能な抵抗装置と、目標電圧および抵抗装置を流れる電流を表す信号とを入力として受信するように配置されたプロセッサとを備え、当該プロセッサは、信号を処理し、抵抗装置の両端間の電圧降下に対応する量だけ電気外科用発生器からの電圧出力を増加させるように配置される。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、第1の信号および第2の信号をツールピースに印加するプロセスが提供され、第1の信号は、外科手術部位の近くに浮遊する粒子を除去するために外科手術部位の近くに電界を生成する際に使用され、第2の信号は、外科手術中に患者の組織を切断、密封、または焼灼する際に使用され、当該プロセスは、第1の時間間隔の間にツールピースに第1の信号を印加することと、第2の時間間隔の間にツールピースに第2の信号を印加することとを含み、当該処理は、第1および第2の間隔が重複しない間隔であるように、第2の間隔の後で、ツールピースへの第1の信号の印加をタイミング調整することを含む。
【0028】
外科手術用システムまたはDC電圧補償回路もしくはプロセスのさらなる特徴は、上記の外科手術アセンブリの特徴のうちの1つ以上を備えてもよい。
【0029】
本発明を上記で説明してきたが、本発明は、上で述べたまたは以下の説明で述べる特徴の任意の発明の組合せにまで及ぶ。本発明の例示的な実施形態を添付図面を参照して本明細書で詳細に説明するが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されないことを理解すべきである。
【0030】
さらに、個別にまたは実施形態の一部として説明される特定の特徴は、他の特徴および実施形態が特定の特徴について言及していない場合でも、他の個別に説明される特徴または他の実施形態の一部と組み合わせることができると考えられる。したがって、本発明は、まだ説明されていないそのような特定の組合せにまで及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、様々な方法で実施することができ、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながら、その実施形態を以下に説明する。
【
図1a】本発明の一実施形態による外科手術用アセンブリの概略図である。
【
図1b】
図1aのアセンブリのツールで使用するための代替ツールピースの概略図である。
【
図1c】
図1aのアセンブリのツールで使用するための代替ツールピースの概略図である。
【
図1d】
図1aのアセンブリのツールで使用するための代替ツールピースの概略図である。
【
図1e】
図1aのアセンブリのツールで使用するための代替ツールピースの概略図である。
【
図1f】
図1aのアセンブリのツールで使用するための代替ツールピースの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による外科手術用システムの概略図である。
【
図3】ツールピースへの第1および第2の信号のタイミングシーケンスのグラフ表示である。
【
図4】
図2に示された外科手術用システムの回路図の概略図である。
【
図5】閉ループ電流制御回路を示す回路図の概略図である。
【
図6b】電流の関数としてのツールピースの遠位端での出力電圧のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面の
図1aを参照すると、電気外科、超音波またはレーザベースの外科手術など、外科手術で使用するための本発明の一実施形態による外科手術用アセンブリ100が示されている。アセンブリ100は、1.5~20kV、好ましくは3~10kVを生成することができる高電圧発電機などの第1の発生器110を備える。第1の発生器110は、好ましくは外科手術部位の近くに電界を生成するために使用される直流(DC)電圧波形である第1の信号を生成するように配置される。一実施形態では、アセンブリ100は、コネクタ112を介して、第2の発生器120から出力される第2の信号を受信するように配置される。コネクタ112は、第1の発生器110のハウジング111に配置されてもよく、第2の信号は、ハウジング111内で受信されてもよい。第2の発生器120は、レーザ源(図示せず)を備えてもよく、この場合、第2の信号は、レーザ放射を備えてもよい。代替的に、第2の発生器120は超音波発生器を備えてもよく、その場合、第2の信号は超音波信号を備えてもよい。さらなる代替では、第2の発生器120は、無線周波数(RF)交流(AC)電圧波形を生成するための発電機を備えてもよい。上記の実施形態のいずれにおいても、第2の信号は、外科手術中に患者の生体組織を切断、密封および/または焼灼するように配置される。
【0033】
アセンブリ100は、ケーブル140を介して、第1の発生器110および第2の発生器120と電気的に結合可能な外科手術用ツール130をさらに備える。ケーブル140は、第1および第2の発生器110、120との接続を形成するためにその遠位端に配置されたコネクタ141を備え、したがって電気コネクタ、または例えばそれぞれの発生器への電気的および光学的接続を形成するために組合せコネクタを備えてもよい。ケーブル140は、好ましくは、少なくとも3mの長さを備え、それにより、第1および第2の発生器110、120を、手術環境の無菌環境から隔離された状態に維持することができる。一実施形態では、コネクタ141およびケーブル140は、外科手術を実施する際に使用するために、第1の信号および第2の信号をツール130に伝達するように配置される。しかし、代替の実施形態では、第1および第2の信号を、別個のケーブルおよびコネクタ(図示せず)を介してツール130に伝達することができることを理解すべきである。本発明をさらに説明する目的のために、第2の発生器120がRF発生器を備える実施形態のみを説明する。
【0034】
使用中、ツール130は、手術を実行するために外科医(図示せず)によって保持され、ハウジング131を備え、その少なくとも一部は外科医のためのツールハンドルを形成する。ツール130は、クランプまたはチャック構成(図示せず)を介してハウジング131と着脱可能に結合可能なツールピース132をさらに備える。ツールピース132は、第1および第2の信号を受信するように配置され、電気絶縁シース133を通って延びる金属などの導電性材料で形成される一方、外科医によって保持されるハウジング131は、誘電体などの電気絶縁材料で形成される。
【0035】
第1の信号は第1の回路経路に沿って通過するように配置され、第2の信号は第2の回路経路に沿って通過するように配置され、第1および第2の経路はツール130を操作する電気外科モードに依存する。
【0036】
例えば、モノポーラ操作モードでは、図面の
図1aおよび
図2に示すように、第1の信号は、第1の発生器110の第1の電極(図示せず)から患者を通って第1の発生器の第2の電極まで通過するように配置される。第2の電極は、
図1aに示される配置において、その近位端で第2の発生器120の第2の電極(図示せず)に結合され、その遠位端で接着パッド142に結合されて、患者への物理的および電気的接続を形成する別個のケーブル140’を介して患者(図示せず)に電気的に結合される。第1の発生器110の第2の電極は、第2の発生器120の第2の電極に(ケーブル208’およびコネクタ209を介して-
図4に関する後述の説明を参照)電気的に結合され、したがって、第1および第2の経路が共通ケーブル140’および接着パッド142を共有することは明らかである。したがって、第1の信号は、ケーブル140に沿って第1の発電機110の第1の電極からツールピース132まで通過するように配置され、ケーブル140’を介して患者を第1の発生器110の第2の(すなわち、反対側の)電極に電気的に結合しているため、電子はツールピース132から患者の組織、例えば患者の腹壁に向かって伝播する。電子およびしたがって第1の信号は、続いて、接着パッド142およびさらなるケーブル140’を介して第1の発生器110の第2の電極に戻る。しかしながら、図示されていないモノポーラ操作モードの変形形態では、代わりにケーブル140’の近位端は、第1の発生器110の第2の電極に直接結合されてもよい。この場合、第1の回路経路および第2の回路経路は、それぞれの回路内で、患者との電気接触を形成するための専用戻りケーブル140’および専用接着パッド142を備えてもよい。
【0037】
第2の信号は、ツール130を操作する特定の電気外科モードにやはり依存する第2の回路経路に沿って通過するように配置される。例えば、モノポーラ構成では、
図1aおよび
図2に示すように、第2の信号は、ケーブル140、ツールピース132、および接着パッド142を介して患者に電気的に結合されたケーブル140’を備える経路に沿って、第2の発生器120の第1および第2の電極(図示せず)の間を通過する。
【0038】
しかしながら、バイポーラ構成(図示せず)では、第2の発生器120の対向する電極は、ツールピース132の電気的に絶縁された部分に電気的に結合される。例えば、ツールピース132が、
図1fに示すように、対向する顎部分を有する把持または鉗子134を備える状況では、第2の発生器120の電極は、各顎と別々に電気的に結合されてもよく、したがって、患者に配置されたパッド142を介した電気的な戻りは必要ない。第2の信号は、第2の発生器120の第1の電極から鉗子134の顎135aの1つに伝わり、その後、鉗子134の対向する顎135bを介して第2の発生器120の第2の電極に戻るように配置される。したがって、第2の発生器120によって生成されるRF電界は、組織の必要な切断、密封、または焼灼を実行するために、顎135a、135bの間に保持される組織内に向けられるようになる。このバイポーラ構成では、ケーブル140’は、第1の発生器110の第2の電極と直接電気的に結合することができ、したがって、第1の回路経路のみの一部を形成することができる。この場合、第1の信号は、第1の発生器110の第1の電極から鉗子134の顎135a、135bの一方へ伝わり、ケーブル140’およびパッド142を介して第1の発生器110の第2の電極に戻るように配置される。ただし、第2の信号が両方の顎135a、135bから除去され、第2の発生器から切断されると、第1の信号は、顎135a、135bの1つにのみ伝わることができ、そうでなければ第1の信号の顎間での放電を防止する。同様に、バイポーラ構成の拡張として、マルチポール構成においては、第1の信号を電極の一方に印加する前に、各電極から第2の信号を除去し、各電極から第2の発生器120を切断する必要があることになる。
【0039】
アセンブリ100は、ツールピース132への第1および第2の電気信号の印加を制御するためのコントローラ150をさらに備える。コントローラ150は、例えば、ツールハウジング131内に、または代替的に第1の発生器110のハウジング111内に配置されてもよい。コントローラ150は、切替え装置160と通信可能に結合され、ツールピース132への第1および第2の電気信号の印加を切り替えるために装置160の切替え状態を制御するように配置される。切替え装置160は、コントローラ150からの制御信号に応答してリレードライバ(図示せず)によって開閉される複数のリレー(R1~R6-図面の
図4を参照)を備え、第1および第2の信号と制御信号との間の干渉を回避するために、それらの間に効果的な電気シールドが配置される。
【0040】
第2の信号が超音波または光放射信号を含む状況に特に適した実施形態では、コントローラは、第2の信号を感知するための感知装置170を備える。このような感知装置は、第2の信号の存在、第2の信号のわずかなサンプルと結合する変圧器もしくは変流器の組合せ、または、第2の信号が感知装置170に伝達される振幅閾値より上または下であることを示す第2の発生器120のコントローラ(図示せず)からの状態入力によって引き起こされるピーク電磁場擾乱の包絡線を感知するためのダイオード検出器に結合された中波アンテナを含むが、これに限定されない複数の形態で達成されてもよい。感知装置170は、感知された第2の信号に応じて感知信号をコントローラ150に出力し、コントローラ150が切替え装置160を介してツールピース132への第1の電気信号の印加を制御できるように配置される。コントローラ150は、第1の時間間隔の間にツールピース132に第1の電気信号を印加し、第1の時間間隔と重複せず独立している第2の時間間隔の間にツールピースに第2の電気信号を印加するように配置される。この点で、感知装置170は、第1および第2の信号の同時印加を防止する安全機能として機能する。第1の間隔は、第2の信号が第2の閾値を下回る間隔に対応し、第2の間隔は、第1の信号が第1の閾値を下回る間隔に対応する。第1および第2の閾値は、それ以下では第1および第2の信号が微粒子除去、および切断、密封または焼灼の外科的機能を提供できない信号値に対応する。しかしながら、第2の信号にレーザ放射または超音波信号が含まれる実施形態では、第1および第2の信号がツールピースに同時に印加される場合もあることが予想される。
【0041】
一実施形態では、アセンブリ100は、少なくとも1つのユーザ制御アクチュエータ180をさらに備える。コントローラ150は、アクチュエータ180の動作状態に応じて、第1および第2の信号のツールピースへの印加を制御するように配置されているため、アクチュエータ180の動作状態は、コントローラ150がリレードライバに出力する制御信号を部分的に決定する。
【0042】
アクチュエータ180は、外科医がツールピース132への第1および第2の信号の印加の自動切替えを開始できるようにするためのボタン181を備えてもよい。ボタン181は、ツールハウジングに取り付けられてもよく、足で作動するボタンを備えてもよく、ロボット手術の場合、外科手術部位から離れて配置してもよい。ボタン181を押すと、外科手術を行うために第2の信号がツールピース132に送られ、ボタン181を放すと、第2の信号がツールピース132から除去されることが想定される。続いて、ボタン181を放すと、第1の信号がツールピースに印加されて、スモークが除去される。
【0043】
さらなる実施形態において、アセンブリ100は、第2の信号がツールピースから除去された後、外科医が所望の期間、第1の信号を作動することを可能にするために、ツールピース132のハウジング上のボタンなどオーバーライドアクチュエータ182を備えるかことができるか、さらに備える。例えば、ボタン181を放すと、第2の信号がツールピースから除去され、その後、第1の信号が所定の時間印加されることになる。しかしながら、オーバーライドアクチュエータ182は、外科医がツールピース132に第1の信号を印加し続けることを可能にするように配置される。オーバーライドアクチュエータ182によるツールピース132への第1の信号の印加は、ボタン182が押されている間、および/またはアクチュエータ182の解除の後、所定の時間の間、継続するように設計されてもよい。この設備は、除去プロセス全体にわたってアクチュエータ182の動作を必ずしも維持する必要なく、例えば、サージカルスモークを含む浮遊粒子の大量の蓄積を除去したい外科医にとって有用であると想定される。そのような時間間隔は、アクチュエータ182のその後の動作によって必要に応じて外科医によって繰り返されてもよい。
【0044】
しかしながら、アセンブリ100の安全な動作、すなわち、第1および第2の信号の安全な印加を確保するために、コントローラ150は、ボタン181の解除の後にツールピース132への第1の信号の印加をタイミング調整するタイミング装置190をさらに備える。タイミング装置190は、ツールピースからの第2の信号の除去の通知を受信するように配置され、ツールピース132からの第2の信号の除去に続く所定の遅延の後、5秒などの第1の時間間隔で第1の信号の印加をタイミング調整するように構成される。
【0045】
さらなる実施形態において、アセンブリ100は、外科手術に伴う微粒子の存在を感知するために、コントローラ150と通信可能に結合された少なくとも1つのセンサ(図示せず)をさらに備え、少なくとも1つのセンサは、コントローラ150に外科手術部位を取り巻く微粒子の量を表示する信号を出力するように配置される。この実施形態では、コントローラ150は、一時停止するように、そして必要に応じて、ツールピース132への第2の信号の印加に対する要求を無効にするように、したがって、外科手術に伴う微粒子の量が所定の閾値に減少するまで、滞留期間/間隔の間、ツールピース132への第1の信号の印加を維持/開始するように配置される。
【0046】
したがって、タイミング装置190およびコントローラ150は、切替え装置160を制御して、第2の信号の印加の後、第1の信号のツールピース132への印加を10ms~100ms遅延させるように配置される。例えば、図面の
図3を参照すると、第1の信号の印加の自動切替えのタイミングシーケンスが示されている。例えば、組織切断手術中に外科医によって決定される第2の時間間隔の間、第2の信号の印加の後、第2の発生器120を備える回路は、微粒子を除去するために、約3秒の第1の時間間隔の間、第1の信号が印加される前に、約10ms~100msの第3の時間間隔の間に放電できる。同様に、さらなる遅延、すなわち10ms~100msのさらなる第3の間隔を使用して、第1の発生器110を備える回路が、やはり第2の信号の次の印加の前に放電できるようにする。第1および第2の間隔の開始におけるこのような遅延は、第2の信号と第1の信号との間のツールピース132の早すぎる転流を回避することができ、第2の信号の包絡線は、残留する第1または第2の信号電荷の放電/消散を可能にすることにより、必然的に特に断続的な性質である(
図4に関連する後述の説明を参照)。例えば、組織の切断、密封、または焼灼を目的としたレーザ治療は、大幅な待ち時間間隔を備えて適用される場合があることが知られており、ここで、第2の信号は、第2の信号が振幅閾値を超える間隔で区切られた振幅閾値を下回る。このような方法はまた、電気外科用発生器にも見られ、一般に、外科手術部位の組織を介した熱拡散による副次的損傷を減らすために採用されている。
【0047】
さらなる実施形態では、コントローラ150は、患者組織などの導電性経路からのツールピース132の遠位端の分離を感知するための近接センサ195をさらに備える。近接センサは、ツールピース132の遠位端の電圧を監視するための電圧監視装置(図示せず)を備える。ツールピース132の遠位端が、例えば、患者の腹腔内の腹壁(図示せず)に接近しすぎて配置された場合、ツールピース132と患者の組織との間のインピーダンスが減少するため、電圧は閾値値を下回る。この低下した電圧は、外科手術に伴う粒子とスモークをイオン化するための適切な電位差をその間に作り出すには低すぎることになる。さらに、ツールピース132の遠位端が患者の組織に接近しすぎる場合、これは、第1の信号の印加時に患者を通る直接的な電気的短絡をもたらす可能性がある。したがって、近接センサ195は、ツールピース132の遠位端が患者の組織に接近しすぎて配置されるか、または配置されるようになる場合に、第1の信号の印加を防止/終了するように構成される。
【0048】
ツールピース132は、尖った遠位端131を有する(図面の
図1aに示されるような)線状の槍のような形状を備えてもよい。尖った端部はイオン生成中心として機能し、第2の信号をサポートするときにそこからの電子の放出を促進し、したがって外科手術部位の局所大気中に浮遊する粒子のイオン化を促進する。しかしながら、代替の実施形態では、図面の
図1b、
図1c、
図1dに示すように、ツールピースは、ブレード構成、LまたはJ形状を備え、同様に尖った遠位端を備えてもよい。図面の
図1eに示すさらなる実施形態では、ツールピースは、例えばツールピースの長さの一部に沿って延びる複数の尖った鋸歯を備えることができるか、さらに備えてもよい。さらなる実施形態では、図面の
図1fに示されるように、ツールピースは、鉗子134の対向する顎135a、135bを備えてもよく、顎135a、135bの一方または両方は、イオン生成中心として作用する鋭い縁または鋸歯136を備えており、したがって同様に近くに浮遊する粒子のイオン化を促進する。
【0049】
使用中、外科手術用アセンブリ100は、第1の発電機110上のソケット112を介して第2の発電機120と電気的に結合され、外科手術用システム200を形成し、その実施形態を図面の
図2に示す。続いて、患者の脚(図示せず)の上など、患者に接着パッド142が固定され、モノポーラ操作のために、パッド142はケーブル140’を介して第2の発生器120の第2の電極に電気的に結合される。しかしながら、上記のように、この構成では、第1および第2の発生器の第2の電極は戻りケーブル140’を共有することができ、したがって、第1の発生器110の第2の電極もパッド142に電気的に結合される。患者への電気的結合を強化するために、導電性ゲル(図示せず)をパッド142と患者の脚(図示せず)との間に塗布してもよい。
【0050】
次いで、外科手術用ツール130は、ケーブル140および関連するコネクタ141を介して第1の発生器110と電気的に結合され、ツールピース132は、例えば、チャック装置(図示せず)を介してツール130内に固定される。ツールピース132は、ケーブル140との電気的結合を形成し、ツールピース132の遠位端は、電気外科手術を実行するために、電気的に露出される、すなわちシース133から外に延びる。ツールピース132が所定の位置に固定されると、第1および第2の発生器110、120は、それぞれの電源スイッチ(図示せず)を介して作動される。
【0051】
図面の
図4を参照すると、モノポーラ外科手術用に構成された外科手術用システム200の回路図の概略図が示されている。本システムは、入力端子202を介して交流主電源を受電するように配置されており、この交流主電源は、第1の発生器110に関連する整流回路(図示せず)を使用して直流に変換される。第1の発生器110からの高電圧出力は、ケーブル140内のライン140aを介してハンドピース130に供給される。ライン140aは、切替え装置160の一部を形成するリレーR1を備え、第1の信号のツールピース132への印加は、このリレーR1の切替え状態に依存する。
【0052】
図面の
図5を参照すると、第1の発生器110は、出力電流の閉ループ制御のためのアナログ閉ループ300を備える。動作電流は、患者の組織からツールピース132の遠位端を分離することによって影響を受ける。ツールピース132が患者の組織に近づくと、インピーダンスが低下する。これにより、電流が増加し、出力電圧が低下する。しかしながら、第1の発生器110は、ツールピース132と患者の組織との間を流れる電流を監視し、電流が、通常、患者に安全に印加できる最大DC電流である10μAなどの上限電流に近づくと、電流を終了させる。
【0053】
制御ループ300は、主に第1の発生器110の出力電流を制御する。第1の発生器110は、その出力部に200MΩの直列抵抗114を備え、単一の短絡故障条件下で、すなわち、電流制限が機能しなくなり、第1の発生器110が最大10kVを出力する場合、最大電流50μAを確保する。抵抗は、それぞれが第1の発生器110の高電圧および低電圧出力端子と直列に別個に接続された2つの別個の100MΩ抵抗器114a、114bとして具体化される。電流は、抵抗器114bを介して第1の発生器110に戻され、それにより、プロセス値として保護され使用される電圧を発生させる。この値は、コンパレータ302を使用して電流設定値と比較され、結果の誤差は積分器304を介して積分され、第1の発生器110に制御信号を提供する。プロセス値が電流設定点を上回る/下回る場合、第1の発生器110への制御信号は減少/増加する。これにより、高電圧出力が減少/増加し、測定電流が目標設定値に向かって増加/減少する。
【0054】
第1の発生器出力が約10kVで飽和すると、エラー信号が飽和する可能性があり、それによって利用可能な電流が制限される。閉ループ回路300は、可変レベルで飽和するように設計されており、プロセス値電流が設定点を下回るたびに、出力飽和電圧を10kV未満に調整することができる。
【0055】
第1の発生器110のこの出力抵抗114は、通常の動作条件下で出力部に望ましくない電圧降下を起こさせ、出力部で利用可能な電圧と引き出される電流との間に依存性を生じさせる。実際には、コロナ電流が通常10μAの電流制限に近い場合に問題が発生する。直列抵抗114の両端での電圧降下により、出力電圧は、効率的なコロナ、つまりスモーク微粒子のイオン化に必要な電圧を下回る。スモーク除去性能は、強制的な電流制限により悪化するが、これは使用可能な電流が不十分なためではなく、電圧が不十分なためである。
【0056】
しかしながら、
図6aに示すように、第1の発生器110からの電圧出力の対応する増加を設計するように構成された電圧補償回路400を使用して、電圧降下を補償することができる。これは、直列抵抗114bでの電圧降下によって電圧設定点を増加させることにより達成される。回路400は、所望電圧もしくは目標電圧と、抵抗器114bを流れる電流を表す信号とを入力として受信するように配置されたプロセッサまたは加算装置402を備える。この電流は、閉ループ制御回路300によって既に知られており、制御回路300のプロセス値は、直列抵抗114を流れる電流を表す。したがって、電流信号の一部を設定点に追加することにより、所望の電圧補償を実現する。この回路400でシステム200を動作させると、電流制限まで、電圧が(図面の
図6bに示すように)所望電圧10kVの5%以内に留まるほぼ平坦な負荷曲線が得られる。これにより、第1の発生器110が電圧飽和点に達していない限り、電流の増加に伴ってイオン化効率が低下しないことが保証される。
【0057】
図面の
図4を再度参照すると、第2の発生器120は、同様に、入力端子204を介して交流主電力を受電し、インタフェース206を介して出力される第2の信号を生成するように配置されている。第2の信号は、ケーブル208およびコネクタ112を介して、ハンドピース130、したがってツールピース132に伝達される。ケーブル208は、リレーR2が配置されたライン208aと、リレーR3が配置されたケーブル208bとを備える。ケーブル208では、患者回路と環境との間の静電容量を低減し、また第2の発生器出力部の電極間の静電容量を低減するために、長さが最小化されている。これにより、RF漏れ電流が減少し(したがって、オペレータまたは患者の火傷のリスクが低下し)、患者への感電の危険性である低周波(配電線)漏れ電流のリスクが減少する傾向がある。一部のシステムでは、治療ケーブルを長くすることで増加するRF変位電流/容量電流は、手術効果電流と比較して有意であり(外科用プラズマは多くの場合、高インピーダンスである)、この結果、意図した治療波形は減衰する。
【0058】
システム回路は、リレーR2の両側に結合され、帰路または接地経路214まで延びる第1および第2の電気経路210、212をさらに備える。経路214は、ハウジング111上の端子211まで延びている。第2の発生器120の第2の極または戻りは、ケーブル208’を介してこの経路214に電気的に結合される。ケーブル208’は、端子211と電気的に結合するために、その遠位端に配置されたコネクタ209を備える。第1の経路210は、リレーR2の高電圧側で電気的に結合され、そこに配置された直列接続されたブリード抵抗器216(1MΩ~300MΩ、好ましくは50MΩ~200MΩの範囲の抵抗値を有する)を備える。ブリード抵抗器は、第1の信号の印加から生じる残留電荷の消散または放電を促進するように機能する。ブリード抵抗器216の抵抗は、第1の信号が好ましくは10μAに制限されるので、第2の発生器120の出力部に現れる第1の信号の残留部分を適切に減衰するように選択される。ブリード抵抗器216は、第2の信号に与えられる負荷に対して些細な追加であり、したがって、第2の信号に実質的に影響を与えない。第2の経路212は、リレーR2の低電圧側で電気的に結合され、直列接続されたリレーR6と放電抵抗器218を備える。
【0059】
回路は、ボタン181などを介して外科医によって手動で作動されるツール130内に配置されたリレーR5(これは、ツール130内にあるが、切替え装置160の一部をも形成する)をさらに備える。リレーR5は、外科医の要求を伝えるためにケーブル140内でコントローラ150まで延びる電気経路140bに配置されている。経路140bは、DC電流がコントローラ150に流れるのを防止するためのコンデンサ220などの電気絶縁要素をさらに備える。
【0060】
図4を参照すると、回路は、ライン140aに電気的に結合され、ハウジング111に配置されたポート224まで延びる別個の電気経路222をさらに備える。経路222は、スモークの除去のために、さらなる電極(図示せず)を第1の発生器110に電気的に結合する必要がある場合、ポート224に第1の信号を通信するためにコントローラ150によって操作可能な直列接続されたリレーR4をさらに備える。
【0061】
初期化プロセス中、切替え装置160のリレーR1およびR6は閉じられ、切替え装置160の他の全てのリレー(R2~R5)は開いているため、第1の発生器110の出力部における残留電荷は、10ms~100msの間、放電抵抗器218を介して急速に放電または消散することができる。この初期化の後、リレーR1およびR6が開かれ、リレーR2が閉じられて、第2の発生器120を外科手術実施のために待機状態に置く。この待機期間中、ブリード抵抗器216に電流漏れが選択的に発生するため、他のリレーR1、R3~R6の電流漏れが最小限に抑えられる。
【0062】
外科医がボタン181を作動させてツールピース132への第2の信号の印加を要求すると、リレーR5が閉じられ、これによりコントローラ150に対してリレーR3を(外科医がボタン181を押す時間の長さによって決定される第2の時間間隔の間)閉じるように命令する。この第2の時間間隔中に、外科医はツール130を操作して外科手術を実行することができる。ボタン181を解除すると、リレーR5が開き、その結果、リレーR3が開いて、第2の信号がツールピース132に伝わるのが停止される。続いて、リレーR2が開かれ、第2の発生器120がツール130から切り離される。第3の時間間隔の後、コントローラ150によりリレーR1が閉じられて、(第1の時間間隔の間)スモークを除去するためにツールピースに第1の信号が印加される。ツールピース132への第1の信号の印加により、ツールピース132の遠位端および他の任意のイオン生成中心から電子が発生し、電子は懸濁粒子に付着し、それにより粒子をイオン化する。DC信号によってツールピース132と患者との間に生成された電界は、続いてイオン化粒子を患者に引き付け、したがって外科手術部位から離して、外科医の視界が改善される。
【0063】
第1の時間間隔の後、本システムは再初期化するように構成される。このプロセス中、リレーR6はリレーR1とともに閉じられ、他の全てのリレーは開いているため、第1の発生器110の出力部における残留電荷は、10ms~100msの期間、放電抵抗器218で急速に放電または消散することができる。
【0064】
バイポーラ外科手術の場合、または第2の信号が超音波信号を含む状況では、ブリード抵抗器216が第2の発生器120の出力部の電極間に配置されており、さらなる代替実施形態では、このような抵抗器は第2の発生器出力部の各電極と患者帰還パッド142または保護接地電位との間に配置されることになる。このさらなる実施形態では、保護接地に接続されたさらなる抵抗器は、患者に結合された電気部品を備えた患者回路の浮動状態を損なわないように、少なくとも50MΩの値を有するであろう。
【0065】
第1の信号の印加による残留電荷が除去されると、続いてリレーR1とR6が開かれ、リレーR2が閉じられて第2の発生器120が再び待機状態になり、外科医からの第2の信号をさらに要求できるようになる。
【0066】
上記から、本アセンブリ100および本システム200は、外科医がツールピース132で患者の組織を切断し、同じツールピース132で切断手術から生成された粒子を除去することも可能にすることは明らかである。したがって、本アセンブリ100および本システム200は、外科手術による外傷を低減し、使いやすさを改善する、よりコンパクトで機能的な外科手術用ツールを提供する。