(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】針方向変更装置付き安全注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230206BHJP
A61M 5/50 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
A61M5/32 510Z
A61M5/50
(21)【出願番号】P 2019572439
(86)(22)【出願日】2018-06-08
(86)【国際出願番号】 US2018036687
(87)【国際公開番号】W WO2019005454
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-03
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513066638
【氏名又は名称】リトラクタブル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Retractable Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】511 Lobo Lane Little Elm, TX 75068, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】508328486
【氏名又は名称】ショー,トーマス ジェイ.
【氏名又は名称原語表記】SHAW,Thomas J.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショー,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スモール,マーク
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526521(JP,A)
【文献】特開昭56-116470(JP,A)
【文献】米国特許第05084019(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズ端部(30)を有する
円筒状本体(25)を備えるバレル(22)と、
前記バレル(22)の前記ノーズ端部(30)に接続された針(52)であって、針先端を含む前方に延びる端部を有する針(52)と、
前記バレル(22)の内側にスライド可能に配置されたプランジャ(24)であって、前記プランジャ(24)と前記バレルの内壁との間に流体シールを確立するプランジャシール(62)を更に含むプランジャ(24)と、
を備えている安全注射器(20)において、
前記バレル(22)の前記ノーズ端部(30)は、スライド支持構造体(32)
、上側スライド支持レール(34)、下側スライド支持レール(38)、及び針方向変更装置を備えており、
前記針方向変更装置は、前記スライド支持構造体(32)に取り付けられたスライド部材(26)を備えており、
前記スライド部材(26)は、開口(46)
と、前記上側スライド支持レール(34)とスライド可能に係合可能である上側横方向レール(44)及び前記下側スライド支持レール(38)とスライド可能に係合可能である下側横方向レール(48)を有する背面(40)と、横向きの接触パッド(41)とを備えており、
前記針(52)は、前記開口(46)を通って前記バレル(22)の前記ノーズ端部(30)から前方に突出し、
注射と患者からの前記針(52)の取外しとに続いて前記接触パッド(41)に指圧を加えると、前記スライド支持構造体(32)に対して前記スライド部材(26)の横方向のスライド移動が開始し、
前記スライド部材(26)の横方向のスライド移動と前記横向きの接触パッド(41)への指圧の継続的な印加とによって、針先端が前記バレル(22)と同軸状に整列する第1の位置から第2の位置に前記針(52)が曲げられ、前記第2の位置では、前記針先端は、前記バレル(22)に対して実質的に横に配置されて前記スライド部材(26)の後ろの保護位置に配置される、安全注射器。
【請求項2】
前記バレル(22)が約1mL以下の注射剤又は注入剤を投与するように構成されている、請求項1に記載の安全注射器。
【請求項3】
前記針(52)は約4mm乃至約13mmの公称長さを有する、請求項1に記載の安全注射器。
【請求項4】
前記針(52)は約4mm乃至約8mmの公称長さを有する、請求項3に記載の安全注射器。
【請求項5】
前記針(52)は約28乃至約32の公称ゲージを有する、請求項1に記載の安全注射器。
【請求項6】
前記針(52)はインスリンを投与するのに有用である、請求項1に記載の安全注射器。
【請求項7】
前記針(52)は、前記バレルの前記ノーズ端部(30)の内側に対して固定されて取り付けられている、請求項1に記載の安全注射器。
【請求項8】
前記針(52)は、前記バレル(22)の前記ノーズ端部(30)の内側で針ホルダーに固定されて取り付けられている、請求項1に記載の安全注射器。
【請求項9】
ノーズ端部(30)を有するバレル(22)と、皮下注射の投与に使用するのに適している細いゲージの針(52)とを備える注射器(20)において、
前記バレル(22)の前記ノーズ端部(30)に取り付けられたスライド部材(26)を備える針方向変更装置を備えており、前記針(52)の先端は、注射中に前記バレル(22)と同軸状に整列して前記スライド部材(26)の前方に突出し、
前記ノーズ端部(30)は、前記スライド部材(26)が取り付けられるスライド支持構造体(32)を更に備えており、前記スライド部材(26)と前記スライド支持構造体(32)との間の相対的な横方向のスライド移動が可能にされており、
注射に続いて前記スライド部材(26)の接触パッド(41)に手で圧力を加えると、前記スライド部材(26)が前記針(52)の先端を曲げるように構成されており、それによって、前記スライド部材(26)は、同軸状に整列した前記針(52)と前記バレル(22)の前記ノーズ端部(30)とに対して横方向に動かされて、前記針(52)の先端が
、前記ノーズ端部(30)の前方で曲げられて後ろに配置されて、前記スライド部材によって保護され
、
前記注射器(20)は、選択的に取外し可能な針キャップ(50)を更に備えており、前記針キャップ(50)は、前記スライド支持構造体(32)及び前記スライド部材(26)の少なくとも一方と摩擦係合し、前記スライド部材(26)が前記同軸状に整列した前記針(52)と前記バレル(22)に対して注射前に横方向に動くことを制限する、注射器。
【請求項10】
前記スライド部材(26)が開口(46)を更に備えており、注射中に前記針(52)の先端が前記開口(46)を通って前方に突出する、請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記細いゲージ(52)の針は28乃至32のゲージを有する、請求項9に記載の注射器。
【請求項12】
前記細いゲージ(52)の針は約4乃至約13mmの長さを有する、請求項9に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針方向変更装置を有する再利用不可能な安全注射器に関しており、針方向変更装置は、使用後に針を曲げて、方向変更し、保護するために使用される。本発明の一態様は、比較的短くて直径が小さい針を有する安全注射器に関しており、約1mL以下の少量の注射剤又は注入剤を投与するのに有用であって、例えば、糖尿病又は結核(TB)の治療に使用される薬物の皮下又は皮内注射の投与などの使用に特に適している。
【0002】
本発明の注射器の別の態様は、横方向にスライド可能な針保護部材(以下「スライド部材」と称する)を有する針方向変更装置を含む安全注射器に関しており、スライド部材は、バレルの前端部のスライド支持構造体に取り付けられる。スライド部材は開口を含んでおり、当該開口を通って、使用前及び使用中に針が前方に延びることが望ましい。スライド部材は注射後に、針を通る長手方向軸に対して横向きに移動し、それによって針軸部をバレルの前方に曲げて、針先をスライド部材の後ろの保護収容又は保護隠閉位置に隠すように構成されることが望ましい。一旦針が曲げられると、注射器の再利用は不可能になり、注射器のその後の取り扱い又は廃棄中に誤って針が刺さる可能性が減少する。針キャップが設けられて、使用前に針先を覆うと共に、針キャップを取り外す前においてバレル及び針の長手方向軸に対してスライド部材が横方向にスライドするのを防ぐことが望ましい。
【0003】
本発明の更に別の態様は、針方向変更装置を有する使い捨て注射器に関しており、当該針方向変更装置は、例えば、血管内又は筋肉内注射を行う際に使用されるタイプの比較的長い皮下注射針に特に有用である。そのような皮下注射針の長さは、典型的には約0.5インチから約1.5インチの範囲である。本発明のこの実施形態では、針方向変更装置は、望ましくは、注射器バレルに旋回可能に接続された回転アクチュエータを備えており、当該回転アクチュエータは、前方に突出する針を、クレードル内側で後方を向く位置へと約180°の弧を描くように曲げて、患者又はユーザーとの不注意な接触から針先が保持及び保護される。
【背景技術】
【0004】
過去20年の間、個人間及び個人による皮下注射針の再利用及び医療提供者により経験される偶発的な針刺し損傷から生じる血液媒介性病原体の広がりをどのように低減又は防止するかに注目が集まっている。医療製品メーカーは、近年、多くの新しい「単回使用」又は「安全」注射器を開発してきた。それら注射器は、1回の使用で使用不能にされて廃棄されることを意図しており、及び/又は、望ましくは、注射前又は注射後の何れかにおける患者又は臨床医との偶然の若しくは偶発的な接触から針先を保護する。そのような製品の中には、前方に突出する針を使用後に覆うために、可動シールド又はガードを使用するものがある。他の製品では、使用後に作動して、流体流路を破壊することができる、又は、針先が露出配置で前方に突出しないように針を「針格納キャビティ」に収納又は引き込むことができる機構又は装置を利用する。このような「安全注射器」は、製造が困難で高価になり、信頼性の高い使用も困難になり得る。
【0005】
注射の投与を目的とする従来の皮下注射針は、典型的には、最大で約1.5インチの長さに延びる。皮下注射又は皮内注射の投与に使用される皮下注射器には、約12か乃至16mmの範囲の有効長さの針が以前から設けられていたが、近年、次第に短くて細い(小径)針が広く利用可能になり、現在ではインスリンと共に及び結核の治療に一般的に使用されている。このような針は、約28乃至32の範囲のゲージと約4乃至約13mmの公称長さで入手でき、多くの用途では約0.5インチ(約4mmから約8mmの範囲)未満の長さが概ね好ましい。人間の皮膚の厚さは通常約3mm未満であるため、このような針は、針を挿入する前に皮膚を「つまむ」こと、又は比較的低い角度で針を皮膚に挿入することを要せずに、筋肉内組織に薬剤を意図せずに注入して薬が筋肉に浸透して放出されるリスクを防ぐ。短く細い針は通常、注射を受ける患者に不快感を与えないが、偶発的な針刺し損傷及び再使用の可能性を防ぐためにそのような針を安全に廃棄することに関する問題は依然として残っている。
【0006】
多くのタイプの所謂「安全注射器」が開発されてきたが、不注意な針刺しの数を減らすことについて臨床的に効果的であり、信頼できると証明されたものはほんのわずかであり、製造されてそのような注射器の主要市場で販売されたものは更にわずかである。安全注射器市場に対する幾つかの「参入障壁」には、コスト、機能的信頼性、そのような製品の購入者への現実的なアクセスの欠如、確固たるサプライヤーの市場力及びビジネス慣行が歴史的に含まれていた。
【0007】
内部に配置された引き込み可能な針を有する横方向にスライド可能な前方アタッチメントを備える注射器及び他の医療装置は、例えば、米国公開第2014/0012206号、米国公開第2016/0317756号、米国公開第2016/0310705号、米国公開第2016/0310677号、米国公開第2016/0310057号、及び米国特許番号9,138,545号、米国特許番号9,308,353号、米国特許番号9,320,469号、米国特許番号9,381,309号に開示されている。そのような装置では、針全体を含む前方アタッチメントの部分は、針引込みキャビティと整列するように使用後に横方向に動かされ、圧縮ばね等の付勢部材によって、針が後方へと針引込みキャビティに向けて押し進められる。針の引き込み後、針は縦方向に向けられて、針の先端は前方を向いたままである。
【発明の概要】
【0008】
安全で信頼性が高く、低コストの注射器が必要とされているが、しかしながら、それは、使用後に再使用を防止したり、針を「安全」するために、圧縮ばね又は針引込みキャビティを設ける又は使用することを要しない。このような注射器が、本明細書に開示されている。
【0009】
本発明は、針方向変更装置を備える安全注射器であって、当該針方向変更装置は、注射後にバレルの前方で針軸部を曲げるように構成されているのが望ましく、それにより、使用前に注射器バレルと同軸状に整列した第1の位置から針先端がもはや前方を向いていない第2の位置へと針先端の向きが変更される。このような針方向変更により、注射器が使用不能となり、再使用が防止されると同時に、偶然の又は偶発的な接触とそれらの関連する針刺しとから針先端が保護される。
【0010】
本発明の一実施形態では、針方向変更装置は、針先端が注射器バレルに対して実質的に横にされて、注射後に使用者、患者又は臨床医が誤って刺さらないように針先端が覆われる位置まで、針軸部の前方に突出する部分と針先端とを曲げる。この実施形態では、曲げ力は、側方に移動可能なスライド部材を通して針軸部に手動で加えられる。選択的に着脱可能な保護針キャップが設けられることが望ましく、保護針キャップは、前方に延びる針を覆って、使用前にスライド部材又は針ホルダーの前方に延びる部分の何れかと摩擦係合する。本発明の別の好ましい実施形態では、保護針キャップはまた対象の安全注射器の使用前に、スライド部材が注射器バレルのノーズ部に対して移動することを防ぐことが望ましい。
【0011】
本発明の別の実施形態では、針方向変更装置は、注射器バレルの前側に配置されたスライド部材を備えている。スライド部材は、開口を備えており、使用前に針がその開口を通ってバレルから前方に突出することが望ましい。スライド部材は、バレルのノーズ部から横方向外側に向いた接触面に手動で圧力を加えることにより、バレル及び針を通る長手方向軸に対して横方向に移動することができる。開口は、針軸部の外径よりも十分に大きい内径を有しており、手動で圧力が加えられる側の開口の側壁が接触すると、針軸部の前方に突出する部分が横方向に曲げられる。
圧力の印加が続くと、スライド部材がバレルの長手方向軸に対して横方向に移動することで、スライド部材は針軸部の曲がった部分に載るか、又は当該部分を横切って横方向に移動する。この動きは、針先端が開口に落ちて、開口を通って、針先端が医療従事者又は患者との偶然の接触からスライド部材によって保護される位置に至るまで続く。スライド部材及び針は、スライド部材の停止面がバレルの外壁と係合することによってスライドの横方向の動きが停止する前に、針の先端が開口を通ってスライド部材の後ろに落ちるように、サイズが決められて協働するように構成されることが望ましい。
【0012】
本発明の別の実施形態では、再使用不可能であって、比較的短くて小径の針を有しており、例えば、液体キャリアに溶解又は懸濁した薬物の皮下又は皮内注射を投与するような使用に特に適した小容量(定格使用容量は約1mL以下が好ましい)安全注射器が開示されている。約13mm~約4mmm、より好ましくは約0.5インチ未満(約8mm~4mm)の範囲の長さと、約28~約32の範囲のゲージとを有する針を備えた装置の使用が好ましい。対象の注射器は、バレルの前部と係合しており、且つ開口を含むスライド部材を備えており、使用前及び使用中に針がその開口を通って前方に延びることが望ましい。スライド部材は注射後に、針を通る長手方向軸に対して横方向に移動し、それにより針を曲げて、スライド部材の後ろで、針先端を保護された非露出位置に隠すように構成されることが望ましい。針が曲がると、再利用ができなくなり、注射器のその後の取扱い又は廃棄中に誤って針が刺さる可能性が減少する。針キャップも設けられて、使用前に針先を覆って、針キャップを取り外す前にバレル及び針の長手方向軸に対してスライド部材が横方向にスライドするのを防ぐことが望ましい。
【0013】
本発明の別の実施形態では、スライド支持構造体を含むノーズ端部を有するバレルと、バレルのノーズ端部に接続されて前方に突出する針と、バレル内にスライド可能に配置されたプランジャと、プランジャとバレルの内壁との間に流体シールを確立するプランジャシールと、スライド支持構造体に取り付けられたスライド部材と、を含む安全注射器が開示される。スライド部材は、針が通ってバレルから前方に突出する開口と、患者に対する針の注入及び除去の後にバレルのスライド支持構造体に対するスライド部材の移動を開始するために使用される横向きの接触面とを備えているのが望ましい。針がスライド支持構造体を越えて前方に突出する距離は、注射中に真皮を貫通するのに十分であることが望ましい。スライド部材が通る開口の内径は、スライド部材がバレルの前端に対して横方向に移動するときに針が開口を通ってスライドできるように針の外径よりも大きいことが望ましい。バレル及び針の長手方向軸に対して実質的に横方向へのスライド支持構造体に対するスライド部材のスライド移動は、針の先端をスライド部材が移動する向きに曲げることを引き起こし、それにより針の再利用が防止される。針の元の長手方向軸に対するスライド部材の開口の側方への移動範囲は、ユーザーが接触面に加えた指圧の結果としてのスライド部材の横方向に進む動きに応じて針軸部の前側部分が曲がるときに、針先端が開口を通って下に滑るように十分であることが望ましい。スライド部材及び針先がこの位置にあると、針先端は、ユーザー、患者又は他の医療従事者又は見物人を突き刺すリスクをもはやもたらさない程度に保護、収容及び/又は隠されることが望ましい。スライド部材は停止面を備えることが望ましく、当該停止面は、バレルの前部と接触して、針先端がスライドの後方に配置された後にスライド部材がスライド支持構造体から外れるのに十分に移動するのを防ぐ。
【0014】
本発明の別の実施形態では、針方向変更装置は、注射器バレルに旋回可能に接続されたアクチュエータを含むことが望ましい。アクチュエータがプランジャから離れ、前方に突き出た針に向かって回転すると、針方向変更装置は、前方に突出している針に接触し、約180°の弧を描いて、注射器バレルとほぼ平行に配置されたクレードル内の針が置かれる後方に向いた位置まで針を曲げる。針引込み装置が完全に回転した位置にある場合、アクチュエータのベアリング面は、アクチュエータの反対側に配置された正方形の肩がクレードルの前方に延びる端に対向配置された2つのフック面と係合するまで、曲がった針との接触を維持し、保持力を及ぼす。これにより、針先端はクレードル内に保持され、患者又はユーザーとの不注意な接触から保護される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のシステム及び方法は、以下の図面の図に関連して更に記述及び説明される。
【
図1】
図1は、本発明の安全注射器の1つの十分な実施形態の正面斜視図であって、所定の位置に針キャップがある。
【
図3】
図3は、
図1の安全注射器の正面図であって、針キャップが取り外されており、針がバレルから前方に突き出ている。
【
図4】
図4は、注入前の
図1の安全注射器の断面平面図であって、
図9の4-4線に沿って破断されて、90°回転している。
【
図5】
図5は、
図10の5-5線に沿って破断されて90°回転している、注射後における
図1の安全注射器の断面図であって、プランジャはバレル内で取り得る最も前方の位置に移動しており、針保護部材の横向きの接触パッドに手動で圧力が加えられると、横方向にスライド可能な針保護部材が針に対して横方向に動かされることで、針が曲がり始める。
【
図7】
図7は、
図11における7-7線に沿って破断されて90°回転している、
図6の安全注射器の断面図であって、 横方向にスライド可能な針保護部材が、バレルのノーズ端部に接触するまで横方向に移動すると、針が十分に曲がって、針の先端は開口の内側に押し込まれて、もはや露出しない。
【
図12】
図12は、本発明の安全注射器のプランジャ及びバレル部分(プランジャシールを除く)の別の実施形態の背面斜視図であって、プランジャがバレルに部分的に挿入されている。
【
図13】
図13は、
図12の実施形態の平面図であって、一部が断面であり、部分的に剥離されている。
【
図14】
図14は、
図13の実施形態の断面平面図であって、プランジャがプランジャ内で完全に押し下げられている。
【
図16】
図16は、本発明の安全注射器(プランジャを除く)の別の実施形態の上面正面斜視図であって、針方向変更装置のアクチュエータ部分は注射器バレルの下に横たわっており、前方に延びる針の後方でバレルの前部に旋回可能に接続されており、注射時と同様に針のバベルが上向きになっている。
【
図17】
図17は、
図16の安全注射器の正面図であって、安全注射器は、その長手方向軸の周りに180°回転しており、針方向変更装置のアクチュエータ部分が上向きであり、針のバベルが下向きになっている。
【
図18】
図18は、
図17と同様な正面図であるが、アクチュエータは、注射器バレルから持ち上げられて、中間位置まで横軸回りに回転した直後に針に接触しており、針は、注射後のようにバレルから前方に突き出たままである。
【
図19】
図19は、
図18と同様な正面図であるが、アクチュエータは、中間位置まで更に回転されており、中間位置では、アクチュエータのベアリング面が針に接触し、針をもはや前方に向かない中間位置に曲げている。
【
図20】
図20は、
図19と同様な正面図であるが、アクチュエータは、アクチュエータが前方を向く位置まで180度完全に回転し、針は、約180度の弧を描いて後方を向く位置まで曲げられて、注射器バレルとほぼ平行に配置されたクレードル内に静止する。 針引き込み装置が
図20に示すように完全に回転した位置にある場合、アクチュエータのベアリング面は、アクチュエータの反対側に配置された矩形の肩部がクレードルの前方に延びる端にて対向配置された2つのフック面に係合するまで、曲がった針との接触を維持し、押さえ力を及ぼす。これにより、針先はクレードル内に保持され、患者又はユーザーとの不注意な接触から保護される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面の
図1を参照すると、注射器20は、バレル22と、プランジャ24と、スライド部材26と、選択的に着脱可能な針キャップ50とを含む。より具体的には
図2乃至
図11を参照すると、バレル22は、円筒状本体25と、横方向に延びるフランジ部材28と、ノーズ端部30と、バレル22のテーパー部分68に取り付けられたスライド支持構造体32と、本体25の内部と連通する開口36と、上側スライド支持レール34及び下側スライド支持レール38とを更に含む。プランジャ24は、円弧方向に離間しており、縦方向に延びる複数のガイドリブ56を有するプランジャハンドル54と、エンドキャップ58と、弾性プランジャシール60とを更に含んでおり、弾性プランジャシール60は、フランジ部材28に囲まれた後側開口を通ってバレル22の円筒状本体25に挿入されるとバレルの内壁と流体シールを提供する。スライド部材26は、背面40と、横向きの接触パッド41と、開口46を有する前面42と、背面40にある上側横方向レール44及び下側横方向レール48を更に含んでおり、上側横方向レール44及び下側横方向レール48は、スライド支持構造体32のノーズ端部30の上側スライド支持レール34及び下側スライド支持レール38とスライド可能に係合可能である。針52は基端部を有しており、当該基端部は、開口36を通して挿入され、バレル22のスライド支持構造体32の内側に固定して取り付けられることが望ましい。注射器20が完全に組み立てられている場合、針52の先端もスライド部材26の開口46に挿入され、スライド部材26の前方に突出する。選択的に着脱可能なエンドキャップ50は、使用前に針52の前端が鈍くなったり、さもなければ損傷したりするのを防ぐために設けられることが望ましい。
【0017】
エンドキャップ50は、スライド部材26の開口46を通して挿入可能であり、バレル22の開口36と摩擦係合するように構成されることが望ましく、その結果、注射器20の使用前に、スライド部材26がスライド支持構造体32のノーズ端部30に対してスライドすることが防止される。プランジャハンドル54にノッチ62が任意選択的に設けられて、ノッチ62がバレル28の後方開口(
図2に示す実施形態ではフランジ部材28の内側)と同一面内に整列する位置まで引き込んだ後、プランジャハンドルの破壊を容易にする。これは、スライド支持構造体32に対してスライド部材26を再配置することにより針52を曲げた後において、注射器20を再使用できないという保証を更に提供する。
【0018】
図3、
図4及び
図9を参照すると、本発明の注射器20は、エンドキャップ50(
図1)が取り外された状態で示されている。
図4に見られるように、針52は、バレル22のスライド支持構造体32のノーズ端部30の内部に設けられた環状空間に入れた接着剤を使用してバレル22に固定して配置され、プランジャシール60と針52との間に配置される可変容積チャンバ70と針52の前端との間に流体連通をもたらす。
【0019】
図5、
図6及び
図10を参照すると、プランジャ24のエンドキャップ58に加えられる親指の圧力によってプランジャ24がバレル25内で完全に押し下げられて、プランジャシール60がバレル22の協働するテーパー部分68の内壁に接触すると、バレル22の可変容積チャンバ70(
図5)に以前に含まれていた全ての薬液が針52を通して投与される。注射をして患者又は注入部位からの針52を引き抜いた後、注射器20の安全面は、手動圧力(好ましくは指圧)を加えることにより作動し、前面42、背面40及び開口46を含むスライド部材26(
図2)の移動をバレル22に対して横方向に開始する。それが接触すると針52が曲がり、その曲げ抵抗は、
図6に示すように、開口46の後追い側の壁によって重圧を受ける。
【0020】
図7、
図8、及び
図11を参照すると、接触面41に継続的に圧力が加えられると、針52が肘53にて側方に曲げられて、針先端が注射器バレル22を通る長手方向軸に対して横に位置に配置されるまで針先端は最終的に開口46を通って後退し、スライド部材の前面42の後ろにいるユーザー、患者又は見物人との偶発的な接触から保護されて、偶発的な針刺しを防ぐのを助ける。スライド部材、開口46の直径、及び針52の長さは全て協調的に構成されて、接触面41の背面がノーズ端部30又はスライド支持構造体32に接触する前に、針52の鋭い先端が完全に開口46の後ろにあることを保証する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、
図12~
図15に示されるように、注射器本体とプランジャのみ合せ80に関して開示される。本発明のこの実施形態は、例示の目的で提示されており、完全に組み立てられて機能する注射器を表すことを意図しておらず、プランジャハンドル94の前端に取り付けられたプランジャシールは描かれていない。
図12~
図15を参照すると、プランジャハンドル94は、バレル82のカラー95及びフランジ部材90に挿入されて示されており、バレル82は、円筒状側壁84の前方に延びる部分に形成されたスライド支持構造体88を更に備えている。プランジャシールが存在しないことから、プランジャシール支持部材97が見える。プランジャハンドル92のエンドキャップ92は、好ましくは、外径を有する円筒形プラグ96を更に備えており、円筒形プラグ96は、プランジャハンドル94がバレル82の内側に押し下げられて、プラグ96の前向きの肩部がバレル82における内向きに傾いた肩部100に当接すると、カラー95の内壁に摩擦係合するような大きさにされる。
【0022】
本発明の別の実施形態は、
図16~
図20に関連して開示される。これらの図では、プランジャは示されていない。しかし、
図1~
図5及び
図7の実施形態に関して上述したプランジャ24やその他の同様に効果的なプランジャなどのプランジャは、
図16~
図20に示す注射器バレルアセンブリ200と組み合わせて使用するのに十分であることは読者に理解されるはずである。
図16を参照すると、注射器バレルアセンブリ200は、フィンガーフランジ204によって囲まれている開いた後端を有する実質的に円筒形のバレル202を含む。針210は、針ホルダー211によって支持され、針ホルダー211から前方に突出しており、針ホルダー211は、注射器バレル202の前にてノーズブロック220に隣接して配置される。
図16に示されるように、針210の先端のバベルは、注射後であるように上向きになっている。本発明のこの実施形態は、長さが最大約1.5インチまで又はそれを超える長い針での使用に好ましい。
【0023】
針方向変更装置209は、アクチュエータ206及び旋回可能な取付けブラケット207を申し分なく備える。両側に配置された円筒状ボス208は、旋回可能な取付けブラケット207における2つの離間したローブ(lobe)の各々において、協働するように構成された開口を通って側方に突出し、針ホルダー211に対して旋回可能に針方向変更装置209を支持する。針ホルダー211は、
図19に関連して以下で更に説明されるように、針210の前方に突出する針軸部に接触するベアリング面212を更に備える。クレードル214は、針210を通る長手方向軸に平行にバレル202の外壁に取り付けられることが望ましい。クレードル214は、長手方向に延びるスロットを画定する側壁及び端壁を申し分なく備えており、当該スロットは、針210を受け入れるために前端で開いている。両側に配置された複数のフック部材216は、以下の
図18~
図20に関連して議論されるように、針210の曲げに続いてクレードル214内の保護位置に針210を保持するために、旋回可能な取付けブラケット207及びアクチュエータ206を、前方に向いた位置で固定する際に使用するために設けられる。アクチュエータ206及び旋回可能な取付けブラケット207は、望ましくはポリマー樹脂から一体成形されるが、他の同様の効果的な構造及び装置も、アクチュエータ206を旋回可能な取付けブラケット207に取り付けるために、又はアクチュエータ206を注射器バレルアセンブリ200に旋回可能に接続するために同様に使用されてよい。
【0024】
図17を参照すると、注射器バレルアセンブリ200のバレル202は、
図16に示された位置から反転されており、クレードル214と針210の先端のベベルとが下向きになり、アクチュエータ206が注射器バレル202の上側に、注射器バレル202と平行に配置されている。次に
図18を参照すると、アクチュエータ206は上向きに押されて摩擦留め218から離れて、両側に配置されたボス208(
図18ではそのうちの1つのみが見える)まわりに、矢印222で示される円弧で旋回している。
図18では、アクチュエータ206は中間位置にあり、バレル202に対して前方に突出した位置に留まっている針210の軸部とまだ接触していない。
【0025】
次に
図19を参照すると、アクチュエータ206はボス208のまわりで更に旋回し、矢印222で示される弧の長さは
図18に示される弧に対して長くなっており、ベアリング面212が針210の軸部に接触して、針210の軸部をその第1の位置に対して下向きに曲げる。次に
図20を参照すると、アクチュエータ206は、ボス208のまわりで第1の位置から完全に180°回転している最終の第2の位置まで旋回し、第2の位置では、後向きの位置まで針210は曲げられて、針先がクレードル214内に配置される。
図20に示される位置では、ベアリング面212の後追い側の矩形肩部は、クレードル214の両側にある複数のフック216(
図19でより良く見える)と完全に係合し、拘束される。
【0026】
図20に示す位置において針方向変更装置209(
図16)のアクチュエータ206が拘束されると、針210の軸部は注射器バレル202とほぼ平行な位置に曲げられており、そこでは、針先は後を向いており、クレードル214の両側壁と端壁の間で形成されたスロット内に保持される。これにより、患者、ユーザー、見物人、又は注射器バレルアセンブリ200をその後に取り扱う者は、偶発的な針刺し損傷とその結果として生じる感染リスクから保護される。アクチュエータ206と旋回可能な取付けブラケット207の間にリビングヒンジ225を設けて、針210の先端がクレードル214の内側に配置された後、ユーザーが誤って旋回可能な取付けブラケット207及び曲がった針210をクレードル214から外さないようにすることが望ましい。
【0027】
針方向変更部材の構成、移動経路、及び移動範囲に応じて、対象の安全注射器の針の先端は、前方に向いた第1の位置から約80度乃至約185度の範囲の弧を描き、第2の位置に方向を変えてよく、第2の位置では、一般的に好ましい第1の位置に対して実質的に横であるか、又は、好ましくは反対の方向を向いている。
【0028】
この開示を読むと当業者には理解されるように、開示された安全注射器は、注射後の患者からの感染性血液媒介性病原体による汚染の可能性による偶発的な針刺し損傷及び合併症の可能性及び治療の必要性から、ユーザー、患者及び見物人を保護する効果的な手段を提供する。弾性プランジャシールと針を除く装置の全ての部品は、他の注射器の構成で要求される厳密な製造公差を必要とせずに成形プラスチックで作製でき、装置は簡単に組み立てできる。本明細書に開示されるスライド部材又はアクチュエータなどの針方向変更装置を注射後に作動させると、注射器は将来の使用に対して無効になり、針キャップを再取り付けする必要なく安全に処分できる。必要に応じて、注射が完了し針が曲がった後のスライド部材又はアクチュエータの位置を維持するために、1又は複数の協調的に構成された突起及び戻り止め又は他の同様に有用な要素又は機構が、スライド部材及びスライド支持構造体、又は注射器バレル及びアクチュエータに設けられてもよい。
【0029】
本発明の他の変更及び変形は、添付の図面を考慮して本明細書を読むことにより、当業者には同様に明らかになるであろう、そして、本明細書に開示される本発明の範囲は発明者及び/又は出願人が法的に権利を与えられる添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ制限されることが意図されている。