(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】不規則な形状のポリマー繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20230206BHJP
D01D 5/30 20060101ALI20230206BHJP
D04H 3/018 20120101ALI20230206BHJP
【FI】
D01F8/14 B
D01D5/30 A
D04H3/018
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020108885
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2020-10-14
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510057615
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】シー,ウェン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘス,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー,ローリング
(72)【発明者】
【氏名】チーオウ,シェン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィー,レン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ホワン シャン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053385(JP,A)
【文献】特開昭61-266651(JP,A)
【文献】特開2004-218125(JP,A)
【文献】特表2017-523321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133980(US,A1)
【文献】特表2004-518828(JP,A)
【文献】特表2003-534463(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01967631(EP,A1)
【文献】特開2018-048434(JP,A)
【文献】特開2001-181956(JP,A)
【文献】米国特許第6753082(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130160(US,A1)
【文献】特表2005-501978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D01F 1/00 - 9/04
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6~10指状の断面を備えた中実ポリマー繊維であって、
コア材料としてポリエステル、指材料としてコポリエステルを有する多成分フィラメントとして構成され、
下記特性:
- それぞれの前記指は、
非対称に配置され、前記指の各軸は、指の最も近い軸から角度を有して離隔され、各前記指の軸間の角度は、1°~170°のランダム分布である、
- 前記繊維の前記断面は、回転非対称である、
のうちの少なくとも一方を示す、中実ポリマー繊維。
【請求項2】
6指状の断面を備えている、請求項1記載の中実ポリマー繊維。
【請求項3】
少なくとも1本の指が有する、指先から前記繊維の断面に完全に適合する最大円(内円r
i)の中心までの距離が、少なくとも1本の他の指とは異なる、請求項1または2記載の中実ポリマー繊維。
【請求項4】
前記内円r
iの半径が、5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである、請求項1から3までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項5】
前記繊維の前記断面を完全に取り囲む最小円(外円r
o)の半径が、10μm~100μm、好ましくは15μm~50μmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項6】
前記外円r
oの半径:前記内円r
iの半径の比が、3~1.01、好ましくは1.5~1.01、特に1.5~1.25である、請求項1から5までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項7】
前記指先から内円r
iの中心までの距離が、少なくとも5μm~100μm、好ましくは10μm~50μmである、請求項1から6までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項8】
最短の指の前記指先から内円r
iの中心までの距離と、最長の指の前記指先から内円r
iの中心までの距離との比が、25:100~60:100の範囲にある、請求項1から7までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項9】
前記繊維が、熱可塑性ポリマーから選択され、好ましくはポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ乳酸塩、それらから得られるコポリマーおよびそれらの混合物から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項10】
前記繊維が、5~15dtexの範囲の繊度を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維。
【請求項11】
オリフィスのパターンを含む紡糸口金を通して溶融紡糸または溶液紡糸することにより製造され、1本の単繊維が、ポリマー溶融物を6~10個、好ましくは6個のスロットの配列に通過させることにより形成され、1本の繊維を形成する前記6~10個、好ましくは6個のスロットの各スロットが、楕円形形状を有し、好ましくは前記6~10個、好ましくは6個の楕円形スロットがそれぞれ、幅0.10mm~0.15mmおよび長さ0.40mm~0.60mmを有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維の製造方法。
【請求項12】
オリフィスのパターンを含む紡糸口金を通して溶融紡糸または溶液紡糸することにより製造され、前記紡糸口金を出る繊維が、一工程延伸プロセスに供される、請求項11記載の中実ポリマー繊維の製造方法。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維を含む、不織布。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維を含有するタフト裏地を含む、請求項13記載の不織布。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維を含む、フィルター材料。
【請求項16】
不織布の製造のための、請求項1から10までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維の使用。
【請求項17】
フィルターおよびカーペット、特にカーペットタイル、床一面カーペット、ドアマット、スローインマットまたは自動車用タフトカーペットのための、請求項16記載の使用。
【請求項18】
請求項1から10までのいずれか1項記載の前記中実ポリマー繊維が、カーペット裏地として利用される、請求項16または17記載の使用。
【請求項19】
請求項1から10までのいずれか1項記載の中実ポリマー繊維を提供するように設計された孔配列パターンを形成するキャピラリー紡糸口金オリフィスを含む、紡糸口金。
【請求項20】
6~10個、好ましくは6個のスロットからなるオリフィスを含み、各スロットが、楕円形形状を有する、請求項19記載の紡糸口金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、少なくとも6指状の断面を備えた不規則な形状のポリマー繊維、該ポリマー繊維を含むフィルター、該ポリマー繊維を含む不織布、該ポリマー繊維の使用および該ポリマー繊維を提供するように設計された紡糸口金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
ポリマー繊維は、公知の種々の紡糸プロセスにより得られる。加熱下で流動可能でかつ柔軟になるポリマーから作製される繊維、特に熱可塑性プラスチック製の繊維は、溶融紡糸プロセスにより製造することができる。溶融紡糸は、押出成形の特殊な一形態であり、ポリマー材料を溶融してポリマー溶融物を取得し、次いで該溶融物を紡糸口金、すなわち連続フィラメントの形成に使用されるダイの一種に通す。通常の実施形態では、紡糸口金は、小さな孔の配列(パターン)を有する金属プレートを備えており、これを通じて、ポリマー溶融物を空気または液体に通して凝固および繊維形成を行う。紡糸口金の設計は、多岐にわたる。従来の紡糸口金オリフィスは円形であり、断面が丸い繊維が製造される。キャピラリー紡糸口金オリフィスにより、1デニール以下の小さな直径を有するフィラメントの押出しが可能となる。紡糸口金を出る押出し溶融フィラメントを冷却すると、紡糸口金プレートの出口開口部の形状を有する最終繊維が得られる。異なる形状および種々の特性を示す繊維を得るための形状の孔を有する紡糸口金オリフィスを使用することが公知である。
【0003】
種々の形状の繊維、特に多葉繊維が以前から公知である。この公知の繊維は、三角形の断面、いわゆる三葉繊維であることができる。また、繊維は、正方形の形状である場合も、4本、5本、6本またはそれ以上の指を有する星形の繊維である場合もある。さらに、扁平な楕円形、T字形、M字形、S字形、Y字形またはH字形の断面を示す繊維が公知である。
【0004】
単繊維(フィラメント)を紡糸してヤーンとすることができ、多数のヤーン同士を撚り合わせて糸を製造することができる。
【0005】
特定の一態様は、種々の用途に向けたフィルターの製造のためのポリマー繊維の使用である。今日、フィルターは、各種の目的で大規模に使用されている。このため、自動車分野では、フィルターは、例えば自動車の乗員を花粉、すす、微粉、アレルゲン、ガス等から保護するためのキャビンエアフィルターとして使用される。エンジンの吸気フィルターは、燃焼プロセスおよび自動車のセンサーシステムに悪影響を及ぼし得る汚染物質を除去する。燃料電池自動車では、特殊な吸気フィルターおよび加湿器についての需要がある。種々の産業分野においてフィルターが利用されており、とりわけガスタービンおよびコンプレッサーにおいて、食品および飲料産業において、大気汚染防止、腐食防止、クリーンルームおよび医薬品製造に利用される。フィルターはさらに、病院および医療施設で使用される。日常生活では、フィルターは、例えば掃除機において、バッグレス掃除機用のフィルターとして、臭い除去用に、モーター保護フィルターとして、および排気用に用いられている。フィルターは、多くの異なる形態で利用することができ、例えばポリマー繊維製のサーマルボンド不織布を含むフィルターマットで利用することができる。
【0006】
もう1つの特定の態様は、カーペット製造のためのポリマー繊維の使用である。タフトカーペットは、多層パイル織物である。それらは、パイルヤーンを結合させるが針により基層と括ることはしない特殊な機械で製造される。今日のカーペットの場合には、基層は、ほとんど合成繊維のみからなる。パイルヤーンの固定は、基層の裏面を天然もしくは合成ゴムまたはポリ塩化ビニル(PVC)でその後に被覆することにより達成される。さらに、ゴム被覆をいわゆる二次裏地に結合させる。この裏地は、一般的にはエラストマー発泡体または織布もしくは不織布材料からなる。
【0007】
タフト製品には、例えばカーペット、ランナー、織物タイル、ベッドスプレッド、バスマット等といった多くの用途がある。それらの製造において、基層は特に非常に重要である。基層の役割は、パイルヤーンの確実な固定である。
【0008】
「タフティング」という用語は、三次元織物シートを製造するための技術を指す。これは、カーペットを製造するために世界中で最も頻繁に利用されている方法である。タフティングは、ミシンの原理で機能する。針は、いわゆるパイルヤーンを、基材(織布または不織布)、いわゆる一次裏地または支持体に挿入する。針は、基材を通して縫い付け、針が再び戻る前に、挿入されたパイル糸は、ルーパーにより保持される。これにより、タフティング布地の上面にループ(パイルノット)が形成される。このようにして、いわゆるループパイルカーペットが得られる。ループがナイフで切断されると、ベロアカーペット(カットパイルカーペット)が形成される。多くの場合、パイルの保持および切断が1回の操作で行われるように、ナイフは、ルーパーに予め取り付けられている。縫い合わされたパイルヤーンをしっかりと保持するために、二次裏地またはラテックス層を施与する必要がある。このプロセスは、積層または一体化と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第1619283号明細書
【文献】米国特許第3351205号明細書
【文献】米国特許第5069970号明細書
【文献】米国特許第6787227号明細書
【文献】国際公開第2017/006234号
【文献】欧州特許第3069625号明細書
【文献】欧州特許第1966416号明細書
【文献】国際公開第2006/133036号
【文献】米国特許出願公開第2017/0226673号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0133980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
欧州特許第1619283号明細書には、円形の繊維断面から分岐した繊維をタフト裏地に使用する、タフト不織布を製造するための方法が記載されている。
【0011】
米国特許第3351205号明細書には、不織布繊維用の撚り糸が記載されている。この文献には、6指のフィラメント(対向配置された6つの葉を有する半径方向断面の星形構成)が撚り糸に有用であることが開示されている(
図32参照)。6指のフィラメントは規則的であり、全ての指は、同じ幅および中心から同じ距離を有する。
【0012】
米国特許第5069970号明細書には、ポリオレフィンを含むポリエステル系繊維が記載されている。この繊維は、異なる形状、例えば星形を有し、6本の指を有する(
図3)。しかしながら、これらの繊維の形状も規則的である。
【0013】
米国特許第6787227号明細書には、少なくとも5つの頂点を有するフィラメントが記載されている。フィラメントの断面は、好ましくは星形である。しかしながら、これらのフィラメントも規則的な形状を有する。
【0014】
国際公開第2017/006234号には、規則的であると考えられる歯車形状の断面を有するポリエステル繊維が開示されている。
【0015】
欧州特許第3069625号明細書は、人工毛髪用のフィラメントに関する。この繊維は、3つ以上の葉間ギャップ領域を有する多葉形状を有する。不規則な6指形状のフィラメントは記載されていない。
【0016】
欧州特許第1966416号明細書には、3つの主葉および3つの副葉を有する6指フィラメントが記載されている。しかしながら、主葉は、同じ幅および長さを有し、副葉も同じ幅および長さを有する。すなわち、それらは規則的である。
【0017】
国際公開第2006/133036号には、不透明度、バリア特性および機械的特性の制御可能な改善を提供するための種々の形状の繊維の混合物が記載されている。各種の断面は、中実円形繊維、中空円形繊維、多葉中実繊維、中空多葉繊維、三日月形繊維、正方形繊維およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
米国特許出願公開第2017/0226673号明細書には、修正された断面の中空繊維が記載されている。ここでこの繊維は、中空部分と、形状維持部と、体積制御部とを含む。中空部の中空率は、繊維断面の15~30%である。さらにこの繊維は、モノフィラメント/モノ繊維紡糸プロセスで製造される。
【0019】
米国特許出願公開第2013/0133980号明細書には、複数(16~32個)の葉に囲まれたコアを含む翼付き繊維が記載されている。この繊維は、最終繊維が完全に形成された後に洗い流される別のポリマーの内側に所望の繊維材料を共押出することにより製造される。ただし、この繊維自体は、モノフィラメント/モノ繊維紡糸プロセスで製造される。
【0020】
特性プロファイルを個々に適合させることができる繊維が必要とされている。例えば、多目的ろ過基材として使用できる不織布の製造に適した繊維に対する特別な需要が存在する。このため、繊維および得られる不織布は、例えば高処理量、低圧力損失用途に適した通気性フィルターの製造に適していることが望ましい。現在、より軽量な繊維および/または低圧力損失用途向けのより大きな繊維直径を有する繊維に対する需要が認められる。いずれにしても、優れたろ過性能の維持が望まれる。したがって、課題の1つとして、要求された低圧力損失要求を満たすと同時に粒子捕獲性能を向上させるための、繊維直径が大きく、かつより大きな表面積を有する繊維の開発が挙げられる。繊維製造のためのもう1つの要求は、1つの紡糸口金で異なる繊維の所望の設計を形成し、かつ一工程で異なる層で布地を形成するために、少なくとも2つの異なるポリマーの紡糸を可能にするオリフィスを有する紡糸口金である。繊維の目標形状を一工程の紡糸プロセスで形成し、ウェブを直接サーマルボンディングすることが可能であることが望ましい。
【0021】
したがって本発明の目的は、特にフィルター用途に良好な適用特性を示す不織布の製造を可能にする、新規な繊維または新規な繊維組成物を提供することである。特に本発明の目的は、高いろ過性能に向けた繊維を提供するために、より大きな表面積と大きな繊維直径との双方を有する最適化された繊維を提供することである。さらに本発明の目的は、1つの紡糸口金で繊維の所望の設計を形成し、一工程で異なる層を有する布地を形成するために、少なくとも2つの異なるポリマーの紡糸を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の根底にある課題は、本発明に係る少なくとも6指状の断面を備えたポリマー繊維により解決される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るポリマー繊維は、下記利点のうちの少なくとも1つを有する:
- 表面がより大きいため、該繊維をベースとするフィルターの粒子保持能力が向上する。
- 繊維直径がより大きいため、該繊維をベースとするフィルターの圧力損失が低下する。
- 該繊維の表面積が大きいため、該繊維をベースとするフィルターおよび拭き取りモップの汚れ保持能力が高くなる。
- 剛性が高いため、耐久性が向上する。
- 該繊維をベースとするフィルターでは、高い透過性および深層ろ過が可能であり、その結果、フィルターを通過する空気の効率的な持続的清浄化が、低圧力損失で得られる。
- ポリマー材料が異なる繊維を1つの紡糸口金で紡糸し、一工程で多密度層を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1に、本発明に係る6指状のポリマー繊維を示す。
【
図2】
図2に、本発明に係るポリマー繊維を形成する紡糸口金の6個のスロットの詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の概要
本発明は、少なくとも6指状の断面を備えた中実ポリマー繊維であって、下記特性:
- 該指は、それぞれの中心軸に対して非対称に配置されている、
- 該繊維の断面は、回転軸を有しない、
のうちの少なくとも一方を示す、中実ポリマー繊維に関する。
【0026】
特に本発明は、6~10指状の断面を備えた中実ポリマー繊維であって、下記特性:
- 該指は、それぞれの中心軸に対して非対称に配置されている、
- 該繊維の断面は、回転軸を有しない、
のうちの少なくとも一方を示す、中実ポリマー繊維に関する。
【0027】
また本発明は、上記および以下で定義されたポリマー繊維を含む、不織布に関する。
【0028】
また本発明は、上記および以下で定義されたポリマー繊維を含む、フィルター材料に関する。
【0029】
また本発明は、不織布の製造のための、上記および以下で定義されたポリマー繊維の使用に関する。
【0030】
また本発明は、上記および以下で定義されたポリマー繊維を提供するように設計された孔配列パターンを含むキャピラリー紡糸口金オリフィスを含む、紡糸口金に関する。
【0031】
詳細な説明
本発明の意味において、「内円ri」という用語は、繊維の断面に完全に適合する最大円である。
【0032】
本発明の意味において、「外円ro」という用語は、繊維の断面を完全に取り囲む最小円である。
【0033】
各指の「長さ」という用語は、指先から内円riの中心までの距離である。
【0034】
「繊維」という用語は、長さ寸法が幅および厚みの横断寸法より大きい細長い本体を指す。このため、「繊維」という用語は、フィラメントについて同義的に使用される。
【0035】
「中実繊維」という用語は、繊維の断面に中空部分を何ら含まない繊維を指す。
【0036】
(繊維)
本発明に係るポリマー繊維は、総じて不規則な形状の断面を有する。総じて、繊維の断面は、回転軸を有しない。繊維の断面は、外側に伸び、凸状先端、いわゆる指で終端されているほぼ真っ直ぐな側部を有する。総じて、指は、それぞれの中心軸に対して非対称に配置される。指は、内向きに、幅広ないし幅狭に、中心軸から凸状先端の方向に遠ざかるように先細状であってもよいし、外向きに、幅狭ないし幅広に、中心軸から凸状先端の方向に遠ざかるように先細状であってもよい。
【0037】
本発明に係るポリマー繊維は、少なくとも6指状の断面、好ましくは6~10指状の断面、より好ましくは6指状の断面を備えている。
【0038】
好ましい実施形態では、ポリマー繊維の少なくとも6指状の断面、好ましくは6~10指状の断面は、少なくとも1本の他の指とは異なる、指先から繊維の断面に完全に適合する最大円(内円ri)の中心までの距離を有する、少なくとも1本の指を含む。
【0039】
好ましくは少なくとも6指状の断面、好ましくは6~10指状の断面は、5μm~50μm、より好ましくは10μm~30μmの範囲にある内円riを含む。
【0040】
好ましくは少なくとも6指状の断面、好ましくは6~10指状の断面は、10μm~100μm、より好ましくは15μm~50μmの範囲にある外円ro(繊維の断面を完全に取り囲む最小円)を含む。
【0041】
好ましい実施形態では、ro:riの比は、3~1.01、好ましくは1.5~1.01、特に1.5~1.25である。
【0042】
指先から内円riの中心までの距離を意味する指の長さは、好ましくは少なくとも5μm~100μm、より好ましくは10μm~50μmである。
【0043】
指の最も広い点における指の幅は、好ましくは少なくとも5μm~100μm、より好ましくは10μm~50μmである。
【0044】
指の各軸は、指の最も近い軸から角度を有して離間され、各指の軸間の角度は、1°~170°のランダムな分布である。
【0045】
繊維の指の特定の特徴は、最短指と最長指との比である。したがって、最短指の指先から内円riの中心までの距離と、最長指の指先から内円riの中心までの距離との比が25:100~60:100の範囲にある本発明に係るポリマー繊維が好ましい。
【0046】
繊維の繊度は、重量線密度、すなわち所与の長さの繊維の重量に関して測定することができる。本発明に係るポリマー繊維は、5~14dtex(SI単位:1dtex=1g/10000m)の範囲の繊度を有するのが好ましい。
【0047】
一般的に、紡糸口金とは、主に繊維製造に使用されるダイの一種である。紡糸口金とは、通常、溶融物が引っ張られかつ/または押し込まれる多数の小さな孔を有する金属プレートである。こうした多数の小さな孔によって、1デニール以下のフィラメントの押出しが可能となる。従来の紡糸口金オリフィスは円形であり、断面が丸い繊維が製造される。これらのオリフィスは、非常に多くの小さな孔を含むことができ、例えば約50~110個の非常に小さな孔を含むことができる。それらの設計の特別な特徴は、比較的小さな面積の排出セクションにおける溶融物が、紡糸口金の大きな円へと分配されることにある。分配部の入口領域の距離が比較的短いためデッドスペースが回避され、出口オリフィス間の距離が比較的長いことにより、スレッディングが容易になる。
【0048】
本発明に係るポリマー繊維は、紡糸口金オリフィスを通じた溶融紡糸または溶液紡糸により製造される。溶融紡糸のために、溶融状態にあるポリマーを、例えば押出機により紡糸口金プレートに供給することができる。好ましくは1本の単繊維が、紡糸口金の6~10個のスロット、特に6個のスロットにより形成される。この場合、各スロットは接続されていない。このため、1本の単繊維が、6~10個、特に6個のスロットを出る、組み合わされた可塑化ポリマー溶融物により形成される。すなわち、繊維の形状は、オリフィスが楕円形状を有する6~10個、特に6個のスロット片により形成される。ポリマー溶融物を6~10本、特に6本の部分撚り糸に分割することにより、本発明に係る繊維を達成することができる。好ましくは、繊維形状を形成する各側面の3~10個、特に3個、4個、5個または6個のギャップから気流が注入される。特に、1本の繊維を形成する6~10個の各スロット、特に6個の各スロットは、楕円形に似た形状を有する。好ましくは各スロットの楕円形の長さは、0.40mm~0.60mmの範囲にある。好ましくは各楕円形の幅は、0.10mm~0.15mmの範囲にある。6~10個、特に6個の楕円形スロットは、仮想中心の周りに不規則に配置される。仮想中心からのスロットの距離は、0.2mm~0.4mmである。
【0049】
好ましくは本発明の方法において、紡糸口金を出る繊維を、一工程延伸プロセスに供する。延伸プロセスのために、例えば紡糸口金のオリフィスを出る新たに形成された繊維を、最初に加熱ゾーンを通過させる。加熱ゾーンの温度は、繊維の塑性変形をもたらし得るように設定される。加熱ゾーンに続いて、冷却ゾーンが存在する場合がある。このゾーンでは、繊維の温度をガラス転移点Tg未満に下げる。冷却を、当業者に公知の種々の方法で行うことができる。繊維束が冷却ゾーンを離れる際に、繊維または束が永続的に変形することなく回転または静止ガイド要素を通過するかまたはそれに沿って進むことができるように、この束の温度を十分低くすべきである。延伸のために、紡糸口金オリフィス、ならびに存在する場合には加熱ゾーンおよび冷却ゾーンを出る繊維の速度(紡糸速度)を固定する。この速度は、例えば繊維束を1つ以上のゴデットに数回通すことにより、ある値に設定することができる。ゴデットは、必要に応じて加熱することができる。
【0050】
本発明に係る一工程延伸プロセスでは、紡糸速度を固定した直後に、繊維(すなわち、紡糸されたままの生成物)を延伸する。
【0051】
繊維を一工程で延伸すると、改良された設計および改良された適用特性を示す本発明に係る中実ポリマー繊維が得られることが判明した。
【0052】
(繊維材料)
原則として、本発明に係るポリマー繊維は、任意の繊維形成ポリマー、すなわち、紡糸性の条件を満たす溶融物または溶液に変換することができるポリマーから形成することができる。
【0053】
本発明では、熱可塑性ポリマー材料を使用することができる。本発明の趣意において、熱可塑性ポリマーとは、ある温度以上で可逆的に変形させることができるポリマーであり、それにより、このプロセスを、所望の頻度で繰り返すことができる。この特定の温度未満では、これらは非変形性物質である。熱可塑性ポリマー材料は、溶融紡糸に適したレオロジー特性を示さなければならない。ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするのに十分でありかつ溶融紡糸可能であるのに十分に低いものでなければならない。溶融紡糸のために、熱可塑性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満、好ましくは約5,000g/mol~約750,000g/mol、より好ましくは約10,000g/mol~約500,000g/mol、さらにより好ましくは約50,000g/mol~約400,000g/molの分子量を有する。熱可塑性ポリマー材料は、好ましくは伸長流下で比較的急速に固化可能であり、かつステープル繊維のスピンドロープロセスやスパンボンド連続繊維プロセスなどの既知のプロセスで通常生じるように熱的に安定な繊維構造を形成できることが必要である。好ましいポリマー材料には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ乳酸塩、ハロゲン含有ポリマー、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリオキシメチレン、それらから得られるポリイミドコポリマーおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
適切なポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリイソブチレン、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(4-メチルペント-1-エン)、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびポリオレフィン含有ブレンドから選択される。適切なポリエチレンは、HDPE、LDPE、LLDPE、VLDPE;ULDPEおよびUHMW-PEから選択される。適切なポリオレフィンブレンドは、少なくとも1種のポリオレフィン、特にポリエチレン、ポリプロピレンまたはエチレン-プロピレンコポリマーおよび少なくとも1種の異なるポリマーを含む。異なるポリマーは、例えばポリオレフィンとα,β-不飽和カルボン酸またはカルボン酸無水物から形成されるグラフトもしくはコポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリアミドまたは言及された異なるポリマーの2つ以上の混合物から選択される。
【0055】
適切なハロゲン含有繊維形成ポリマーは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0056】
また、本発明に係るポリマー繊維は、少なくとも1つの非熱可塑性ポリマー材料を含み得るか、またはそれからなり得る。適切な非熱可塑性ポリマー材料は、再生セルロース(特にビスコースレーヨン、リヨセル)、木綿、木質パルプ等およびそれらの混合物である。非熱可塑性ポリマー材料製のポリマー繊維は、例えば溶液紡糸または溶媒紡糸により製造することができる。再生セルロースは、キャピラリーを通して酸凝固浴中に押し出すことにより製造することができる。
【0057】
特に本発明に係るポリマー繊維は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドならびにそれらのコポリマーおよび混合物から選択されるポリマーを含む。
【0058】
本発明に係るポリマー繊維は、単成分または多成分フィラメントとして構成することができる。適切な実施形態は、コア材料としてポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートと、指材料としてコポリエステルとを有する多成分フィラメントである。
【0059】
本発明に係るポリマー繊維は、フィルターとして有利に使用することができる布地、例えば不織布の形成に適している。フィルター基材は、単一型のフィラメントまたは異なる型のフィラメントの組み合わせからなることができる。
【0060】
本発明に係るポリマー繊維は、カーペットタイルとして有利に使用することができる布地、例えば不織布の形成に適している。カーペットタイル基材は、単一型のフィラメントまたは異なる型のフィラメントの組み合わせからなることができる。
【0061】
異なる形状を有するオリフィスの組み合わせを有する紡糸口金を使用することによるいわゆる多形状紡糸により、異なる型のフィラメントを一工程で製造することができる。これにより、多層布地を一工程で製造することができる。このため、例えば異なる通気性を有する異なる層を有するフィルターを製造することができる。例えば得られるフィルターは、気流の方向がより高い通気性からより低い通気性への勾配を有する層からなることができる。本発明によって、浮遊粒子の除去に有効であり、圧力損失の低さが長期の適用にわたって保持されることを特徴とするフィルターの製造が可能となる。
【0062】
フィラメントおよび得られるフィルターの設計は、要求される気流/空気透過性に応じて最適化することができる。
【0063】
異なる形状および/または異なるサイズおよび/または異なる材料の繊維を組み合わせることが可能である。例えば
a) 同じ形状を有するが、異なるデニール値(例えば12および6デニール)を有するフィラメントの組み合わせ、例えばトップダウン配列にある本発明に係る6指のフィラメント。
b) 異なる形状を有するフィラメントの組み合わせ、例えばトップダウン配列にある、円形の繊維と、本発明に係る6指の繊維との組み合わせ(2層布地)。
c) 異なる形状を有するフィラメントの組み合わせ、例えばトップダウン配列にある、円形の繊維と、本発明に係る6指の繊維と、円形の繊維との組み合わせ(3層布地)。
d) 異なる形状を有するフィラメントの組み合わせ、例えば本発明に係る6指の繊維と、円形の繊維と、本発明に係る6指の繊維との組み合わせ(3層布地)。
e) 異なる形状を有するフィラメントの組み合わせ、例えばトップダウン配列にある、本発明に係る6指の繊維と、三角形、4つ、5つ、6つ、7つ、8つの角を有する星形、楕円形、H字形、二重H字形およびそれらの組み合わせから選択される形状との組み合わせ(2層および多層布地)。
f) 異なる材料を有するフィラメントの組み合わせ、例えばPETと、少なくとも1つの異なるポリマーとを含む組み合わせ、特にPET/PPまたはPET/PBT。
【0064】
(方法)
一実施形態では、本発明に係るポリマー繊維は、紡糸溶融繊維である。本発明の意味において、溶融紡糸は、熱可塑性押出成形の一種である。溶融紡糸は、スパンレイド法、メルトブロー法およびスパンボンド法を含む。これらの方法は、当業者に公知である。
【0065】
繊維を製造する第1の工程は、通常、配合または混合工程である。配合工程において、原料を、典型的には剪断下で加熱する。熱の存在下での剪断により、熱可塑性材料および任意の非熱可塑性材料の均質な溶融がもたらされる。次いで、得られた溶融物を押出機に入れ、そこでこの材料を混合し、キャピラリーを通して搬送して、繊維を形成する。次いで、この繊維を細くして集める。この繊維は、好ましくはほぼ連続的であり(すなわち、長さ対直径の比が、約2500:1より大きく)、スパンレイド繊維と呼ばれる。
【0066】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、上記定義されたポリマー繊維を提供するように設計された孔配列パターンを形成するキャピラリー紡糸口金オリフィスを含む紡糸口金が使用される。
【0067】
また、上記定義されたようなポリマー繊維を提供するように設計された孔配列パターンを含む紡糸口金も、本発明の一態様である。
【0068】
好ましい実施形態では、紡糸口金は、6~10個、好ましくは6個のスロットからなるオリフィスを含み、各スロットは、楕円形に似た形状を有し、好ましくは各楕円形は、幅0.10mm~0.15mmおよび長さ0.40mm~0.60mmを有する。
【0069】
繊維は、異なるボンディング法により布地に変換することができる。スパンボンドまたはメルトブローン法では、繊維は、公知の工業標準技術を用いて固化される。典型的なボンディング法には、カレンダー加工(圧力および熱)、通気熱、機械的交絡、水流交絡、ニードルパンチングならびにケミカルボンディングおよび/またはレジンボンディングが含まれるが、これらに限定されない。加圧加熱および通気熱加熱ボンディング法には、サーマルボンド可能な繊維が必要である。また、繊維同士を織って布地のシートを形成することができる。この結合技術は、機械的インターロック法である。次いで、繊維布地を物品に組み込むことができる。
【0070】
本発明の別の態様は、本発明に係るポリマー繊維を含む、例えば織布、編布、レイドスクリムまたは不織布の形態にある織物構造体である。本発明の趣意において、織物構造体とは、繊維または繊維束の組み合わせである。織物構造体は、単層であっても多層であってもよい。本発明の文脈において、織物構造体は、少なくとも1つの層、好ましくは2つ以上の層からなる織布、単層もしくは多層織布、単層もしくは多層不織布、単層もしくは多層編布、単層もしくは多層レイドスクリム布地、好ましくは平行繊維、繊維束、ヤーン、撚り糸またはロープからなる幾つかの層として定義される。それにより、平行繊維またはヤーン、撚り糸もしくはロープの繊維束の個々の層を、互いに対してまたは不織布に対して撚ることができる。
【0071】
本発明の特定の態様は、本発明に係るポリマー繊維を含む不織布である。したがって本発明のさらなる態様は、不織布の製造のための、上記定義されたポリマー繊維の使用である。
【0072】
好ましくは本発明の不織布は、本発明に係るポリマー繊維を含有するタフト裏地を含む。
【0073】
本発明のポリマー繊維を含むかまたはそれからなる製品は、好ましくはフィルター、特に空気、油および水のためのフィルター;掃除機フィルター;炉フィルター;顔マスク;コーヒーフィルター等に使用される。
【0074】
本発明のポリマー繊維を含むかまたはそれからなる製品は、断熱材料および遮音材料にさらに使用することができる。それらは、使い捨て衛生製品、例えばおむつ、女性用パッドおよび失禁用物品のための不織布;衣類の改善された吸湿性および柔らかさのための生分解性織物、例えば微細繊維または通気性布地;ほこりを収集し、除去するための構造化ウェブ;硬質グレードの紙、例えば包装紙、筆記用紙、新聞用紙、段ボール紙のための補強およびウェブならびにティッシュグレードの紙、例えばトイレットペーパー、ペーパータオル、ナプキンおよびフェイシャルティッシュのためのウェブに利用することができる。本発明のポリマー繊維を含むかまたはそれからなる製品は、医療用途、例えば外科用ドレープ、創傷包帯、包帯、皮膚パッチおよび自己溶解性縫合糸ならびに歯科用途、例えばデンタルフロスおよび歯ブラシの毛にさらに利用することができる。本発明のポリマー繊維を含むかまたはそれからなる製品は、水および油を吸収する製品にさらに使用することができ、油もしくは水の流出浄化または農業もしくは園芸用途に向けた制御された保水および放出に使用を見出すことができる。得られた繊維または繊維ウェブは、コンクリート、プラスチック、木質パルプ等の他の材料に組み込んで、建築材料、例えば壁、支持梁、プレス板、乾燥壁および裏地ならびに天井タイルとして使用することができる複合材料を形成することもできる。
【0075】
本発明のさらなる態様は、不織布の製造のための、上記定義されたポリマー繊維の使用である。
【0076】
好ましい一実施形態では、上記定義されたポリマー繊維は、フィルターおよびカーペット、特にカーペットタイル、床一面カーペット、ドアマット、スローインマット、シューカーペット等に使用することができる。自動車用タフトカーペットが好ましい。
【0077】
本発明に係る繊維のタフト裏地層は、パイルヤーンと接触し、それらを基材に固定する(タフト裏地)。本発明の利点は、繊維とパイルヤーンとの間の接触面積が、従来技術から公知の一般的な円形の繊維より顕著に大きいことである。
【0078】
繊維とヤーンループ(パイルヤーン)との接触角が、好ましくは20~90°、特に40~90°、特に60~90°であるように、本発明に係る繊維をタフト裏地中に配置することが可能である。
【0079】
本発明の特定の実施形態は、カーペット裏地およびフィルターとしての本発明に係るポリマー繊維の使用である。
【0080】
本発明のさらなる特定の実施形態は、少なくとも2つの異なるポリマー繊維を含むポリマー繊維組成物であり、繊維の少なくとも1つは、少なくとも6指状の断面、好ましくは6~10指状の断面を備えた、上記定義されたポリマー繊維である。少なくとも6指状の断面を備えた適切かつ好ましい繊維の上記言及された定義は、本明細書において十分に言及される。
【0081】
少なくとも2つの異なるポリマー繊維は、下記特性:
- 断面の形状、
- 繊維の繊度、
- 繊維の化学組成
のうちの少なくとも1つが異なる。
【0082】
マルチタイター、単一形状フィラメントまたはマルチ形状フィラメントが好ましい。
【0083】
好ましい実施形態では、少なくとも2つの異なるポリマー繊維が、一段階プロセス、特に1つの単一紡糸口金を使用して製造される。
【0084】
本発明のさらなる実施形態は、本発明に係り、上記定義されたポリマー繊維の少なくとも1つと、以下から選択される繊維の少なくとも1つとを含む、繊維組成物である。
- 本発明に係り、トップダウン配列で上記定義されたポリマー繊維と比較して異なるデニール値を有する繊維、
- 本発明に係り、トップダウン配列で上記定義されたポリマー繊維と比較して異なる形状を有する繊維。
【実施例】
【0085】
本発明は、下記実施例においてより詳細に記載される。
【0086】
(実施例)
[実施例1]
2つの層を有するポリエステルスパンボンド布地を製造する。ここで、どちらの層も本発明に係る6指状のポリマー繊維を含む。繊維形状の組み合わせと、各オリフィスにポリマーを供給するための計量プレートとを含む特定の紡糸口金を使用する。一方の層は、ポリエチレンテレフタレートコア材料とコポリエステル材料の指とを含む多成分フィラメントを含む。他方の層は、コポリエステル材料を含む。これらの繊維同士を、熱および圧力を用いて熱により結合させる。
【0087】
得られた布地は2つの層からなり、一方は高い通気性を示し、他方は低い通気性を示す。この布地を含むエアフィルターは、浮遊粒子の除去に有効であり、圧力損失の低さが長期の適用にわたって保持されることが特徴的である。
【0088】
[実施例2]
3つの層を有するポリエステルスパンボンド布地を製造する。ここで、中間の層は、本発明に係る6指状のポリマー繊維を含む。上層は、中実で円形の繊維から形成される。下層は、二重H字形繊維から形成される。中間の層は、本発明に係る6指状のポリマー繊維から形成される。繊維形状の組み合わせと、各オリフィスにポリマーを供給するための計量プレートとを含む特定の紡糸口金を使用する。中間の層は、ポリエチレンテレフタレートコア材料とコポリエステル材料の指とを含む多成分フィラメントを含む。他の層は、コポリエステル材料を含む。これらの繊維同士を、熱および圧力を用いて熱により結合させる。
【0089】
得られた布地は、それぞれ高い通気性、低い通気性および極めて低い通気性を示す3つの層からなる。この布地を含むエアフィルターは、浮遊粒子の除去に有効であり、圧力損失の低さが長期の適用にわたって保持されることが特徴的である。