(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】バイブロユニット、地盤改良装置及び地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/046 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
E02D3/046
(21)【出願番号】P 2020120082
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2022-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000194756
【氏名又は名称】成和リニューアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 誉
(72)【発明者】
【氏名】廻田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】石田 聖一
(72)【発明者】
【氏名】村田 柳太朗
(72)【発明者】
【氏名】武田 耕造
(72)【発明者】
【氏名】本谷 洋二
(72)【発明者】
【氏名】関 昌則
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】木田 匠紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏広
(72)【発明者】
【氏名】青木 政樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 清隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 禎健
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157382(JP,A)
【文献】特開2019-157385(JP,A)
【文献】特開平9-279565(JP,A)
【文献】特開平5-339933(JP,A)
【文献】特開2001-182047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良杭造成用材料が供給されるサイロチューブと、
前記サイロチューブの一端に取り付けられているバイブロツールと、を有するバイブロユニットであって、
前記バイブロツールは、
水平振動を発生させるバイブロフロットと、該バイブロフロットに併設されて前記サイロチューブに連通するフィーダーとを備え、
前記バイブロツールの地盤貫入方向の先端において、前記フィーダーの先端の中空の断面積よりも大断面の中空を有する先端ガイドチューブが設けられていることを特徴とする、バイブロユニット。
【請求項2】
前記先端ガイドチューブに対して、該先端ガイドチューブの先端から地盤貫入方向に突出する先端フィンが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のバイブロユニット。
【請求項3】
前記サイロチューブの側面に開口と計測用プーリーが設けられ、該計測用プーリーから延びるワイヤが該開口を介して該サイロチューブの内部に延び、該ワイヤの先端に砂面計が取り付けられており、
前記サイロチューブの内部にある前記改良杭造成用材料の天端面に前記砂面計が落下され、その際の前記ワイヤの移動量が前記計測用プーリーにて計測されることにより、前記改良杭造成用材料の地中への供給量が管理されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイブロユニット。
【請求項4】
前記サイロチューブの外周面から、前記バイブロツールの外周面を介して前記先端ガイドチューブの外周面に亘り、ウォータージェット供給管が取り付けられており、
前記ウォータージェット供給管の先端から前記先端ガイドチューブの外周にウォータージェットが供給されるようになっていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバイブロユニット。
【請求項5】
前記サイロチューブの外周面から、前記バイブロツールの外周面を介し、前記先端ガイドチューブの外周面を介して、該先端ガイドチューブの内面に亘り、エアージェット供給管が取り付けられており、
前記エアージェット供給管の先端から前記先端ガイドチューブの内部にエアージェットが供給されるようになっていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバイブロユニット。
【請求項6】
移動式の重機と、
前記重機にてワイヤを介して垂下された請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバイブロユニットと、を有することを特徴とする、地盤改良装置。
【請求項7】
請求項6に記載の地盤改良装置を用いて、水平振動を発生させながら前記バイブロユニットを地盤の所定深度まで貫入させる、貫入工程と、
前記バイブロユニットを所定の引き抜き長さだけ上方に引き抜き、この引き抜きによって生じた空洞に前記先端ガイドチューブを介して前記改良杭造成用材料を充填して充填体を造成する、引き抜き充填工程と、
前記バイブロユニットを前記引き抜き長さよりも短い所定の戻し長さだけ下方に戻し、この戻しによって前記充填体が拡径された拡径体を造成する、戻し工程と、
前記引き抜き充填工程と前記戻し工程を繰り返すことによって所定径の改良杭を造成することを特徴とする、地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイブロユニット、地盤改良装置及び地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良方法の一つであるバイブロフローテーション工法では、投入された改良杭造成用材料を下方へ流下させるサイロチューブと、サイロチューブの下端に取り付けられているバイブロツールと、を有するバイブロユニットを地盤内に貫入させる方法が適用される。より具体的には、バイブロツールは水平振動を発生させるバイブロフロットを備えており、バイブロフロットにて水平振動を発生させながらバイブロユニットを地盤内に貫入させ、バイブロユニットを構成するフィーダーから改良杭造成用材料を地盤内に供給することにより改良杭の造成が行われる。
バイブロフローテーション工法では、地表から改良杭造成用材料を補給する、所謂トップフィード方式が採用されており、そのために、深度ごとの杭径が所定の杭径を充足しているか否か、言い換えると、地盤内に供給された改良杭造成用材料が深度ごとに十分に行き渡っているか否かの特定が困難である。
また、バイブロフローテーション工法においては、バイブロユニットを所定深度まで貫入させた後、バイブロユニットを地上まで引き抜いて空洞を形成し、空洞に改良杭造成用材料を充填する方法も行われる。しかしながら、改良対象地盤が例えば軟弱な砂質地盤等の場合に、バイブロユニットの引き抜きに応じて孔壁の崩落等によって土砂が空洞に落ち込み、バイブロユニット貫入時の造成径を確保できない事態が生じ得る。また、この方法では、各深度における改良杭の造成のたびにバイブロユニットを地上まで引き抜くことから、造成深度ごとにバイブロユニットを地上から再貫入する必要があり、施工効率の面でも課題を有している。施工効率に関する課題は工期の延長と工費の増大に繋がり、杭長の延長と杭本数の増加に応じてこの課題は一層顕著になる。
このように、バイブロフローテーション工法においては、所定径の改良杭の造成精度と施工効率に関する課題を内包している。
【0003】
ここで、特許文献1には、振動部とロッド部とを備える振動締固め装置が開示されている。より具体的には、振動部の先端エアー吹き出し口から掘削用圧縮空気としてのエアージェットを噴出し、このエアージェットによる振動装置の貫入を補助するために、先端エアー吹き出し口の外周面の対向する位置に先端部周域のエアー吹き出し管を設け、拡散用圧縮空気である別途のエアージェットを噴射する装置である。この装置を用いた振動締固め工法では、振動部を振動させるとともに、先端エアー吹き出し口から掘削用のエアージェットを噴出し、先端部周域のエアー吹き出し管及び外周部エアー吹き出し管から、貫入を補助促進するエアージェット及び孔壁保持用のエアージェットをそれぞれ噴出して貫入を行い、次いで、掘削用のエアージェットの噴射量を低減し、振動締固め装置を引き抜きながら空隙に中詰め材を投入することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の振動締固め装置によれば、バイブロフロットの貫入効率を向上できるとしているが、地盤内に噴射される複数種のエアーにて振動装置の貫入や孔壁保持を行うこと、及び、振動装置の引き抜きの際には複数種のエアーの噴射量をそれぞれ低減することから、エアーの噴射制御が困難である。また、エアージェットのみによって孔壁保持を図ることから、孔壁保持には限界があり、所定径の改良杭を精度よく造成できるか否かは定かでない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、所定径の改良杭を精度よく造成することができ、地盤改良の際の施工効率を向上させるのに好適なバイブロユニットと、地盤改良装置及び地盤改良方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるバイブロユニットの一態様は、
改良杭造成用材料が供給されるサイロチューブと、
前記サイロチューブの一端に取り付けられているバイブロツールと、を有するバイブロユニットであって、
前記バイブロツールは、
水平振動を発生させるバイブロフロットと、該バイブロフロットに併設されて前記サイロチューブに連通するフィーダーとを備え、
前記バイブロツールの地盤貫入方向の先端において、前記フィーダーの先端の中空の断面積よりも大断面の中空を有する先端ガイドチューブが設けられていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、相互に併設されたバイブロフロットとフィーダーにより形成されるバイブロツールの地盤貫入方向の先端に、フィーダーの先端の中空の断面積よりも大断面の中空を有する例えば鋼製の先端ガイドチューブが設けられていることにより、先端ガイドチューブの有する中空の断面積の空洞を地盤内に確保して、当該空洞に改良杭造成用材料を充填することが可能になる。すなわち、既述するようにエアーのみにより空洞を保持する構成でなく、所定形状及び寸法を備えた先端ガイドチューブにて孔壁の崩落を防止することによって造成された空洞を確保できるため、所定径の改良杭を造成することが可能になる。また、複数種のエアージェットの噴射制御を要しないことから、効率的な地盤改良を実現することができる。
【0009】
ここで、バイブロツールの先端に設けられる先端ガイドチューブは、バイブロツールの先端の全体を包囲する形態のチューブであってもよいし、例えば、バイブロフロットの一部のみを包囲せず、バイブロツールの他の部分を包囲する形態のチューブであってもよい。また、その形状は、筒状、二つの同径もしくは異径の円弧が連続する八の字状もしくは略八の字状など、様々な形状が適用できる。先端ガイドチューブがバイブロフロットの一部を包囲しない形態では、先端ガイドチューブがバイブロフロットの全体を包囲しないことから、バイブロフロットの振動を地盤に直接伝達しながら、改良杭造成用材料が充填される所定径の空洞を確保することが可能になる。
また、「フィーダーの先端の中空の断面積」とは、フィーダーをその下方(地盤貫入方向)から見た際の中空の断面積」のことであり、本態様では、フィーダーの中空の断面積よりも先端ガイドチューブの中空の断面積が大断面に設定されている。
フィーダーはサイロチューブに連通しており、例えばサイロチューブの頭部に設けられているホッパーから供給された改良杭造成用材料は、サイロチューブを流下し、下方のフィーダーを流下した後、先端ガイドチューブを介して地盤内に供給される。
【0010】
尚、本明細書において改良杭の「所定径」とは、設計にて設定される改良杭の直径もしくは半径を意味しており、所定の改良率を満たすための例えば直径となる。また、以下で説明する本発明の地盤改良方法における「拡径」とは、断面が円形の杭の直径が拡大して面積が大きくなることや、断面が矩形もしくは矩形の角部が湾曲したトラック状の断面の面積が拡大して面積が大きくなること、略八の字状の断面が拡大して面積が大きくなることなど、地盤内に造成された充填体や拡径体の断面積が拡大することの全般を含む意味である。
【0011】
また、本発明によるバイブロユニットの他の態様は、前記先端ガイドチューブに対して、該先端ガイドチューブの先端から地盤貫入方向に突出する先端フィンが設けられていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、先端ガイドチューブの先端から地盤貫入方向に突出する例えば鋼製の先端フィンがさらに設けられていることにより、先端ガイドチューブを設けたことにより懸念されるバイブロユニットの貫入性能の低下を抑制することができる。すなわち、バイブロツールの地盤貫入方向の先端に例えば筒状の先端ガイドチューブを設けたことにより、所望径の改良杭造成用材料の充填空間(空洞)を確保できる一方で、地盤貫入方向の先端には振動するバイブロフロットではなくて先端ガイドチューブが存在することにより、バイブロユニットの貫入性能は低下し得る。そこで、例えば筒状の先端ガイドチューブに対して、当該先端ガイドチューブよりも地盤貫入方向に突出する先端フィンが設けられることにより、当該先端フィンの有する地盤貫入性に基づき、先端ガイドチューブを設けたことによるバイブロユニットの貫入性能の低下を効果的に抑制することができる。
ここで、先端フィンは、鋼板等の一端においてその中央が先鋭となるように二つのテーパー面が設けられている形態や、鋼板が十字状に組付けられ、十字の一端においてその中央が先鋭となるように各端辺に計四つのテーパー面が設けられている形態などがある。そして、先端ガイドチューブに先端フィンの一部が溶接等されることにより、もしくは、先端ガイドチューブの先端に設けられている溝に先端フィンが嵌め込まれた状態で溶接等されることにより、先端ガイドチューブに対して先端フィンが固定される。
【0013】
また、本発明によるバイブロユニットの他の態様は、前記サイロチューブの側面に開口と計測用プーリーが設けられ、該計測用プーリーから延びるワイヤが該開口を介して該サイロチューブの内部に延び、該ワイヤの先端に砂面計が取り付けられており、
前記サイロチューブの内部にある前記改良杭造成用材料の天端面に前記砂面計が落下され、その際の前記ワイヤの移動量が前記計測用プーリーにて計測されることにより、前記改良杭造成用材料の地中への供給量が管理されることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、サイロチューブの側面に計測用プーリーが設けられ、計測用プーリーから延びるワイヤがサイロチューブの側面の開口からサイロチューブの内部に延びてその先端に砂面計が取り付けられていることにより、サイロチューブの内部にある改良杭造成用材料の天端面に砂面計を落下させた際のワイヤの移動量から改良杭造成用材料の天端位置を精度よく計測することができる。そして、この計測結果(改良杭造成用材料の天端の高さ変化量)と、サイロチューブの断面積を乗じることにより、サイロチューブ内における改良杭造成用材料の低下量が割り出され、地中への改良杭造成用材料の供給量を高精度に特定することが可能になる。尚、以下で説明するように、本発明による地盤改良方法は、バイブロユニットを地盤の所定深度まで貫入させた後、バイブロユニットを所定の引き抜き長さだけ上方に引き抜き、この引き抜きによって生じた空洞に改良杭造成用材料を充填し、バイブロユニットを所定の引き抜き長さよりも短い所定の戻し長さだけ下方に戻すことを繰り返して改良杭を造成するものであり、一本の改良杭の造成に際して複数回の改良杭造成用材料の地中への供給が行われる。この施工方法において、繰り返される改良杭造成用材料の充填の都度、本態様による改良杭造成用材料の地中への供給量の管理を実行することにより、当該供給量の高精度な管理を実現することができる。
尚、サイロチューブの頭部にホッパーが設けられ、ホッパーを介して改良杭造成用材料がサイロチューブ内に充填される形態では、サイロチューブの頭部近傍に開口を設けておき、開口近傍にワイヤの移動を案内する単数もしくは複数のプーリーを設けておくことにより、サイロチューブの頭部近傍まで充填される改良杭造成用材料の天端に対して、砂面計を確実に落下させることができる。また、上記供給量の管理においては、計測用プーリーによるワイヤの移動量に関する計測データが、バイブロユニットを吊持する重機の操縦室の制御盤に送信され、制御盤において改良杭造成用材料の低下量(地中への供給量)が割り出されてもよいし、施工ヤード内の管理棟にある管理用コンピュータに計測データが送信され、当該管理用コンピュータにて改良杭造成用材料の低下量が割り出されてもよい。
【0015】
また、本発明によるバイブロユニットの他の態様は、前記サイロチューブの外周面から、前記バイブロツールの外周面を介して前記先端ガイドチューブの外周面に亘り、ウォータージェット供給管が取り付けられており、
前記ウォータージェット供給管の先端から前記先端ガイドチューブの外周にウォータージェットが供給されるようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、先端ガイドチューブの外周においてウォータージェット供給管からウォータージェットが供給されることにより、例えば、N値20程度かそれ以上の硬質層が改良対象地盤に存在する場合でも、バイブロユニットの自重とウォータージェットによる破砕力の双方により、バイブロユニットを確実に貫入させることができる。
【0016】
また、本発明によるバイブロユニットの他の態様は、前記サイロチューブの外周面から、前記バイブロツールの外周面を介し、前記先端ガイドチューブの外周面を介して、該先端ガイドチューブの内面に亘り、エアージェット供給管が取り付けられており、
前記エアージェット供給管の先端から前記先端ガイドチューブの内部にエアージェットが供給されるようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、先端ガイドチューブの内部にエアージェット供給管からエアージェットが供給されることにより、サイロチューブ内にある改良杭造成用材料の地中への速やかな供給と、先端ガイドチューブの先端からバイブロツールへの土砂の逆流防止の双方を図ることができる。
【0017】
また、本発明による地盤改良装置の一態様は、
移動式の重機と、
前記重機にてワイヤを介して垂下された前記バイブロユニットと、を有することを特徴とする。
本態様によれば、三点式の杭打ちベースマシン等の特殊機械を使用することなく、移動式クレーン等の移動式の重機にてバイブロユニットを垂下した状態で地盤改良を行うことができるため、汎用性のある重機を用いた地盤改良施工を実現でき、工費の節減を図ることができる。また、バイブロフロットによって水平振動を生じさせて改良杭を造成することから、例えばサンドコンパクションパイル工法(SCP工法)等と異なり、騒音レベルと振動レベルの双方を低いレベルに抑えることができ、環境適応性に優れた地盤改良装置となる。
【0018】
また、本発明による地盤改良方法の一態様は、
前記地盤改良装置を用いて、水平振動を発生させながら前記バイブロユニットを地盤の所定深度まで貫入させる、貫入工程と、
前記バイブロユニットを所定の引き抜き長さだけ上方に引き抜き、この引き抜きによって生じた空洞に前記先端ガイドチューブを介して前記改良杭造成用材料を充填して充填体を造成する、引き抜き充填工程と、
前記バイブロユニットを前記引き抜き長さよりも短い所定の戻し長さだけ下方に戻し、この戻しによって前記充填体が拡径された拡径体を造成する、戻し工程と、
前記引き抜き充填工程と前記戻し工程を繰り返すことによって所定径の改良杭を造成することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、地盤の所定深度から上方に向かって、バイブロユニットを引き抜くことにより形成された空洞に改良杭造成用材料(透水性材料等)を充填しながら充填体を造成し、充填体を側方に拡径させながら拡径体を造成し、これを繰り返して拡径体を徐々に拡径させながら改良杭を造成していくことから、改良杭を所望する改良径にて造成することができる。また、所謂ボトムフィード方式の改良方法であることから、改良杭造成用材料の投入量を管理し易く、このことによって精度の高い出来形の改良杭を造成することができる。
また、地盤に水平振動を付与しながら地盤内に改良杭造成用材料を供給し、充填体を横方向に拡径させながら拡径体が造成されることから、振動方向と拡径体の造成方向(拡径方向)が一致していることにより、施工効率の高い改良方法となる。また、三点式の杭打ちベースマシン等の特殊機械を使用することなく、移動式クレーン等でバイブロツールを垂下した状態で地盤改良を行うことができる。また、透水性材料からなる改良杭を水平振動するバイブロツールの自重で締固めながら造成することにより、地盤の密度増大と間隙水圧消散の双方を図ることが可能になる。
尚、引き抜き充填工程では、バイブロユニットの引き抜き速度や、改良杭造成用材料の充填のタイミング(バイブロユニットの引き抜きとの関係における充填のタイミング)を例えば土質条件ごとに調整しながら、先端ガイドチューブにて形成された空洞に対して十分に改良杭造成用材料が充填されるように施工するのがよい。
【0020】
また、戻し工程において、引き抜き充填工程におけるバイブロユニットの引き抜き長さよりも短い戻し長さだけバイブロユニットを下方に戻すことにより、充填体を拡径させて拡径体を造成することができる。そして、充填体の造成(改良杭造成用材料の供給)とこの充填体の拡径と、これに起因する充填体の周囲の拡径体の拡径とを繰り返すことにより、拡径体を徐々に拡径させることができる。
【0021】
この戻し工程では、バイブロユニットの垂下状態を解除することにより、既に造成されている拡径体の内側に充填された充填体にバイブロユニットの自重を付与した際に、充填体が拡径しながら締固められることにより、バイブロユニットが下方に戻される。この戻し工程の際にもバイブロユニット(を構成するバイブロフロット)を水平振動させることにより、所定の戻し長さを確保することができ、所定径の拡径体を造成することができる。すなわち、最終的に造成される所定径の改良杭は、このように造成径が都度管理された拡径体を徐々に拡径させることによって造成される。
【0022】
例えば、最初に造成される充填体の長さが1mに設定され(従って、所定の引き抜き長さを1mに設定)、バイブロユニットを例えば80cm戻すことにより(所定の戻し長さを80cmに設定)、バイブロユニット80cm分の体積が充填体の拡径に寄与して拡径体が造成される。この時の拡径体の径は、計算から正確に求められる。そして、その後も同様にバイブロユニットの例えば1mの引き抜きと、この引き抜きによって形成された空洞への透水性材料の充填、さらにバイブロユニットの例えば80cmの戻しを繰り返すことにより、都度、造成される拡径体の径が計算から正確に求められる。尚、地盤の硬軟の程度や改良杭造成用材料(例えば透水性材料)の材料種により、拡径体の拡径の程度も変化し得る。すなわち、計算によって求められる拡径体の径と実際に造成される拡径体の径に相違が生じ得る。そのため、好ましくは、施工エリアにおいて実施工に使用される改良杭造成用材料を用いた試験施工を実施し、一セットの引き抜き充填工程と戻し工程によって拡径体の拡径がどの程度になるかを確認するのが好ましい。
【0023】
また、本態様の地盤改良方法において、所定の引き抜き長さと所定の戻し長さのいずれか一方もしくは双方を変化させることにより、改良杭の所定径を変化させることもできる。
この施工方法によれば、バイブロユニットの引き抜き長さと戻し長さのいずれか一方もしくは双方を変化させることにより、バイブロユニットの引き抜きと戻しの繰り返しによって都度造成される拡径体の径も、最終的に造成される改良杭の所定径も所望に変化させることができる。
【0024】
また、本態様の地盤改良方法において、引き抜き充填工程と戻し工程を繰り返すことにより、最初に造成された充填体の高さ位置まで徐々に拡径された拡径体を造成していき、当該拡径体の高さ位置にて所定径の改良杭の一部を造成し、以浅の地盤内に連続した当該所定径の改良杭を造成することもできる。
この施工方法によれば、引き抜き長さと戻し長さの差分長さの累計が最初に造成された充填体の高さとなった段階で、所望する所定径の改良杭の下方部分(所定径の改良杭の一部)が造成される。最初に造成された充填体の高さが例えば1mで、引き抜き長さと戻し長さの差分長さが例えば20cmの場合、引き抜き充填工程と戻し工程のセットを5回繰り返すことにより、所望する所定径の拡径体が造成される。
【0025】
また、引き抜き長さと戻し長さの差分長さが例えば25cmの場合は、引き抜き充填工程と戻し工程のセットを4回繰り返すことにより、所望する所定径の拡径体が造成される。そして、所望する所定径の拡径体が造成された以後は、地盤の上方に向かって、同様に引き抜き充填工程と戻し工程のセットを繰り返し行うことにより、所定径の拡径体を例えば地表面まで造成することができる。
【0026】
また、本態様の地盤改良方法において、地表から所定深度までの間に硬質層がある場合に、該硬質層をプレボーリングするプレボーリング工程をさらに有し、プレボーリング工程に続いて貫入工程を行うこともできる。
この施工方法によれば、所定深度までの間に硬質層がある場合は、この硬質層までを先行削孔機等で先行削孔し、硬質層以深にバイブロツールを案内することより、バイブロユニットを使用した引き抜き充填工程と戻し工程の繰り返しによる地盤改良方法の実施を担保することができる。
【0027】
ここで、「改良杭造成用材料」としては透水性材料が適用でき、この透水性材料には、フライアッシュ、焼却灰または燃えがらからなる造粒物、砕石、スラグのいずれか一種を適用できる。
改良杭造成用材料として造粒物、砕石(リサイクル材もしくはバージン材)、もしくはスラグからなる透水性材料を使用することにより、材料に応じた固有の効果を期待することができる。まず、造粒物は、その径を所望に調整することが可能である。そして、例えば均一径の造粒物を透水性材料として使用することにより、戻し工程において、水平振動するバイブロツールが空洞に充填されている透水性材料内にスムーズに入り込み易くなる。
また、例えば砕石のリサイクル材を透水性材料に使用する場合は、砕石の再硬化性能を利用することができ、砕石が水分を吸収して再硬化することにより、硬度の高い改良杭を造成することができる。改良地盤に対して、例えば耐液状化性に加えて地耐力が要求される場合に好適な透水性材料である。
また、透水性材料として造粒物と砕石を使用し、改良杭を、中心領域にある砕石からなる耐荷体と、外周領域にある造粒物からなる排水体とを有する複合構造体として造成することもできる。この態様によれば、耐荷重性と排水性の双方に優れた改良杭を造成することができる。改良地盤に対して、例えば耐液状化性に加えて地耐力が要求される場合に、好適な構造の改良杭となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のバイブロユニット、地盤改良装置及び地盤改良方法によれば、所定径の改良杭を精度よく造成することができ、施工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る地盤改良装置の一例を示す装置構成図である。
【
図2】実施形態に係るバイブロユニットの一例を示す側面図である。
【
図3】
図2のIII方向矢視図であって、実施形態に係るバイブロユニットの一例を下方の地盤貫入方向から見た図である。
【
図4】実施形態に係るバイブロユニットの一例を下方斜め方向から見た斜視図である。
【
図5】実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
【
図6】(a)、(b)、(c)ともに、造成される改良杭の実施形態を示す縦断面図である。
【
図7】実施形態に係る地盤改良方法の一例をより詳細に説明する工程図であって、上段は各工程におけるバイブロツールを含むバイブロユニットと造成された改良杭の縦断面図であり、下段は上段における矢視図であって各工程において造成された改良杭の断面積を示す図である。
【
図8】実機のバイブロユニットと実験で適用した模型管の側面図である。
【
図9】
図8における実機のA-A断面図乃至C-C断面図と、模型管のa-a断面図乃至c-c断面図である。
【
図11】先端ガイドチューブの有効性を検証した実験結果を示す図である。
【
図12】先端フィンの有効性を検証した実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態に係るバイブロユニット、地盤改良装置及び地盤改良方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0031】
[実施形態に係る地盤改良装置及びバイブロユニット]
はじめに、
図1乃至
図4を参照して、実施形態に係る地盤改良装置の一例と、この地盤改良装置を形成する実施形態に係るバイブロユニットの一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る地盤改良装置の一例を示す装置構成図である。また、
図2は、実施形態に係るバイブロユニットの一例を示す側面図であり、
図3は、
図2のIII方向矢視図であって、実施形態に係るバイブロユニットの一例を下方の地盤貫入方向から見た図であり、
図4は、実施形態に係るバイブロユニットの一例を下方斜め方向から見た斜視図である。
【0032】
図1に示すように、地盤改良装置100は、バイブロユニット80と、バイブロユニット80とバケット85をワイヤW1にて垂下させたクローラクレーン90(重機の一例)とを有する。バイブロユニット80は、上端にホッパー17を備えたサイロチューブ10と、サイロチューブ10の下端に取り付けられているバイブロツール20とを有する。
図1において、地盤貫入方向をZ0で示している。改良対象の地盤Gが硬質層を有する場合は、プレボーリングするための先行削孔機200を適用する。また、図示を省略するが、その他、土砂や砕石を運搬もしくは搬送するためのホイールローダ等が適用されてもよい。尚、以下で説明する地盤改良方法では、地盤改良深度となる所定深度までの間に硬質層が存在する地盤Gを改良対象としていることから、先行削孔機200を適用するものとして説明するが、このような硬質層が存在しない地盤を改良対象とする場合においては、先行削孔機200は不要となる。
【0033】
図2乃至
図4に示すように、バイブロユニット80は、ケーシングパイプからなるサイロチューブ10と、サイロチューブ10の下端に取り付けられているバイブロツール20とを有し、バイブロツール20は、水平振動を発生させる偏心モータ31を内蔵したバイブロフロット30と、バイブロフロット30に併設されてサイロチューブ10に連通するフィーダー40とを有する。また、バイブロツール20の地盤貫入方向の先端には先端ガイドチューブ50が設けられ、さらに、先端ガイドチューブ50に対して、先端ガイドチューブ50の先端から地盤貫入方向に突出する先端フィン55が設けられている。尚、
図2では、サイロチューブ10の途中を省略して図示しているが、サイロチューブ10を含むバイブロユニット80は、地盤改良深度となる所定深度までの長さを有している。
【0034】
バイブロフロット30にて発生される水平振動は、例えば30乃至100Hz程度の高周波振動であるのが好ましい。このような高周波の水平振動を地盤に付与することにより、一般に振動エネルギーが大きくなり、地盤内に充填された改良杭造成用材料の締固め効率を高めることができる。また、高周波振動ゆえに振動の伝播が抑制でき、周辺環境への影響をより一層低減できる。また、バイブロフロット30内に内蔵されている偏心モータ31の電流値(偏心モータ31に対する負荷の値)が地盤Gの強度に応じて増加することを利用して、施工時における偏心モータ31の電流値を読み取り、地盤性状を電流値で判定してもよい。このような電流値による判定により、改良杭の径を地盤性状に応じて変化させる方法を適用することも可能になる。
【0035】
上記形態において、例えば、バイブロユニット80を地盤Gに貫入させた際に所定の電流値に満たなかった場合は対象地盤を軟弱地盤と判定し、再度同じ箇所にてバイブロユニット80を貫入させることにより、改良杭を当初設定している所定径よりも大きな径に造成することができる。一方、バイブロユニット80を地盤Gに貫入させた際に所定の電流値以上を示す場合は対象地盤を強固な地盤と判定し、その位置で造成を中止することにより、改良杭を当初設定している所定径よりも小さな径に造成することができる。このように、例えば電流値を用いて実際の地盤性状を判定し、地盤性状に応じて改良杭の径を適宜変更することにより、対象地盤に応じた合理的かつ経済的な地盤改良を実現できる。
【0036】
高周波(従って高出力)の偏心モータ31を適用することにより、振動エネルギーを大きくすることができ、高効率にて地盤内に充填される充填材を締固めることができる。また、従来の低周波でかつ鉛直振動を地盤に付与するSCP工法等に比べて、水平方向の高周波振動を地盤に付与しながら地盤改良を行うことから、改良域の周辺環境への影響を可及的に低減することができる。
【0037】
また、地盤改良装置100は、クローラクレーン90にてバイブロユニット80を垂下した構成を有することから、SCP工法等の際に適用される地盤改良装置のように、三点式の杭打ちベースマシン等の特殊機械を構成要素としない。そのため、汎用性のある重機90を用いた地盤改良施工を実現でき、工費の節減を図ることが可能になる。
【0038】
図2に示すように、サイロチューブ10の上端11にはホッパー17が取り付けられており、ホッパー17を介して供給された改良杭造成用材料は、サイロチューブ10の内部に随時蓄えられる。サイロチューブ10の内部においては、例えばその下方に不図示の開閉蓋が設けられており、開閉蓋が閉じた状態で例えばサイロチューブ10の内部の上端付近まで改良杭造成用材料が貯留される。そして、地盤改良方法においてフィーダー40から改良杭造成用材料を地盤内に供給する際に、上記する開閉蓋が開き、サイロチューブ10に連通するフィーダー40を介して改良杭造成用材料の供給が行われる。
【0039】
バイブロツール20の外周面には、間隔を置いて複数の回転防止翼25が取り付けられており、この回転防止翼25により、バイブロフロット30が水平振動しながらバイブロユニット80が自重にて地中に自沈していく過程において、バイブロユニット80が軸心回りに回転することが防止される。
【0040】
バイブロツール20の地盤貫入方向の先端には、フィーダー40の先端の中空の断面積よりも大断面の中空を有する先端ガイドチューブ50が設けられている。より具体的には、
図3に示すように、相互に併設するフィーダー40とバイブロフロット30の平面視形状(もしくは地盤貫入方向に直行する断面形状)がトラック状であるのに対して、先端ガイドチューブ50は、フィーダー40とバイブロフロット30に対応する二つの円弧領域51,52を有している。一方の円弧領域51は、フィーダー40の中空と同程度の断面積A1を備えており、他方の円弧領域52は、バイブロフロット30の一部の断面積A2を備えており、先端ガイドチューブ50は双方の合計の断面積A3を備えている。
【0041】
断面形状が略八の字形(もしくは略ひょうたん形)で中空を有する鋼製の先端ガイドチューブ50が、バイブロツール20の先端に対して溶接等により固定される。より詳細には、先端ガイドチューブ50は、バイブロフロット30の一部のみを包囲せず、バイブロツール20の他の部分を包囲するようにして取り付けられる。このような取り付け態様により、先端ガイドチューブ50がバイブロフロット30の全体を包囲しないことから、バイブロフロット30の露出流域から水平振動を地盤に直接伝達しながら、改良杭造成用材料が充填される所望径(所望寸法)の空洞を確保することが可能になる。尚、先端ガイドチューブ50がバイブロツールの先端の全体を包囲する態様で取り付けられる形態であってもよい。また、先端ガイドチューブ50の断面形状には、図示例の略八の字形以外にも、トラック状、楕円形、矩形、二つの同径の円弧からなるめがね状など、様々な断面形状が適用できる。
【0042】
バイブロユニット80によれば、相互に併設されたバイブロフロット30とフィーダー40とにより形成されるバイブロツール20の地盤貫入方向の先端に、フィーダー40の先端の中空の断面積A1よりも大断面の中空(断面積A3)を有する先端ガイドチューブ50が設けられていることにより、先端ガイドチューブ50にて孔壁の崩落を防止しながら、先端ガイドチューブ50の有する中空の断面積A3の空洞を地盤内に確保することができる。そして、この空洞に対して改良杭造成用材料を充填することにより、所定径の改良杭を造成することが可能になる。
【0043】
図4に明瞭に示すように、先端ガイドチューブ50の先端における対向する二箇所には溝21が設けられており、鋼製の先端フィン55の一端がこれらの溝21に嵌め込まれ、溶接等によって先端ガイドチューブ50の先端(地盤貫入方向の先端)から先端フィン55が突出する態様で取り付けられている。
【0044】
先端フィン55は、厚みのある鋼板により形成され、その先端側端面において、その中央が先鋭となるように二つのテーパー面56が設けられている。尚、先端フィンは図示例以外にも、例えば二つの鋼板により形成される十字状の形態であってもよく、この形態では、例えば、十字の中央が先鋭となるように四つの端面のそれぞれにテーパー面が設けられているのが好ましい。
【0045】
先端ガイドチューブ50の先端から地盤貫入方向に突出する鋼製の先端フィン55がさらに設けられていることにより、先端ガイドチューブ50を設けたことにより懸念されるバイブロユニット80の貫入性能の低下を抑制することができる。すなわち、バイブロツール20の地盤貫入方向の先端に図示する略筒状の先端ガイドチューブ50を設けたことにより、所望径の改良杭造成用材料の充填空間(空洞)を確保できる一方で、地盤貫入方向の先端には振動するバイブロフロット30ではなくて先端ガイドチューブ50が存在することにより、バイブロユニット80の貫入性能は低下し得る。
【0046】
そこで、略筒状の先端ガイドチューブ50に対して、先端ガイドチューブ50よりも地盤貫入方向に突出する先端フィン55が設けられることにより、先端フィン55の有する地盤貫入性に基づき、先端ガイドチューブ50を設けたことによるバイブロユニットの貫入性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0047】
尚、図示を省略するが、先端ガイドチューブ50の先端に先端フィン55が取り付けられていない形態のバイブロユニットであってもよい。この形態では、先端ガイドチューブ50の地盤貫入方向の先端側の端面をテーパー面に加工し(テーパー面の一端が先鋭となる)、先端ガイドチューブ50の切削性能を高めておくのがよい。
【0048】
また、
図2及び
図4に示すように、バイブロユニット80では、サイロチューブ10の外周面から、バイブロツール20の外周面を介して先端ガイドチューブ50の外周面に亘り、ウォータージェット供給管65が取り付けられている。
図2に示すように、ウォータージェット供給管65の上端65bに対して地上にある不図示のウォータージェット供給機構からウォータージェットがZ2方向に供給され、ウォータージェット供給管65の下端65aを介して、地盤GにウォータージェットがZ3方向に供給される。図示するバイブロユニット80は、その外周面の対向位置において一対(二本)のウォータージェット供給管65を備えている。
【0049】
先端ガイドチューブ50の外周においてウォータージェット供給管65からウォータージェットが供給されることにより、例えば、N値20程度かそれ以上の硬質層が改良対象の地盤Gに存在する場合でも、バイブロユニット80の自重とウォータージェットによる破砕力の双方により、バイブロユニット80を確実に地盤内に貫入(自沈)させることができる。
【0050】
また、
図2及び
図4に示すように、バイブロユニット80では、サイロチューブ10の外周面から、バイブロツール20の外周面を介し、先端ガイドチューブ50の外周面を介して、先端ガイドチューブ50の内面に亘り、エアージェット供給管67が取り付けられている。
図2に示すように、エアージェット供給管67の上端67bに対して地上にある不図示のエアージェット供給機構からエアージェットがZ4方向に供給され、エアージェット供給管67の下端67aを介して、先端ガイドチューブ50の内部先端領域にエアージェットがZ5方向に供給される。図示するバイブロユニット80は、その外周面において一本のエアージェット供給管67を備えている。
【0051】
エアージェット供給管67の下端67aから先端ガイドチューブ50の内部にエアージェットが供給されることにより、サイロチューブ10内にある改良杭造成用材料の地中への速やかな供給と、先端ガイドチューブ50の先端からバイブロツール20への土砂の逆流防止の双方を図ることができる。
【0052】
さらに、
図2に示すように、サイロチューブ10の側面には開口12が設けられ、開口12の近傍には計測用プーリー60が取り付けられている。計測用プーリー60からはワイヤW2が延び、開口12の周囲にある複数のプーリー61を介してサイロチューブ10の内部にさらに延びており、ワイヤW2の先端に砂面計62が取り付けられている。
【0053】
図2において内部を透視して示すように、サイロチューブ10の内部には、その上端近傍まで改良杭造成用材料が随時貯留され、地盤改良方法においてフィーダー40から改良杭造成用材料を地盤内に供給する際に、サイロチューブ10に連通するフィーダー40を介して改良杭造成用材料の供給が実行されると、サイロチューブ10内に貯留されていた改良杭造成用材料(天端面TP)が下方であるZ1方向に降下する。砂面計62は改良杭造成用材料の天端面TPに落下しており、改良杭造成用材料の天端面の降下に応じて砂面計62も降下し、その際のワイヤW2の移動量が計測用プーリー60により計測される。
【0054】
この計測結果(改良杭造成用材料の天端面TPの高さ変化量)と、サイロチューブ10の中空の断面積を乗じることにより、サイロチューブ10内における改良杭造成用材料の低下量が割り出され、地中への改良杭造成用材料の供給量を高精度に割り出すことができる。以下で説明する実施形態に係る地盤改良方法では、バイブロユニット80を地盤Gの所定深度まで貫入させた後、バイブロユニット80を所定の引き抜き長さだけ上方に引き抜き、この引き抜きによって生じた空洞に改良杭造成用材料を充填し、バイブロユニットを所定の引き抜き長さよりも短い所定の戻し長さだけ下方に戻すことを繰り返して改良杭を造成するものであるため、一本の改良杭の造成に際して複数回の改良杭造成用材料の地中への供給が行われる。この施工方法において、繰り返される改良杭造成用材料の充填の都度、計測用プーリー60による改良杭造成用材料の地中への供給量の管理を実行することにより、当該供給量の高精度な管理を実現することができる。
【0055】
図示を省略するが、重機90の操縦席には制御盤が搭載されており、この制御盤にて、バイブロフロット30の駆動制御や、計測用プーリー60から送信される計測データに基づく改良杭造成用材料の供給量の割り出し制御、ウォータージェット機構やエアージェット機構の駆動制御等の各種制御が実行される。制御盤は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、及びNVRAM(Non-Volatile RAM)等を有し、それらがシステムバスによりデータ通信可能に接続されている。ROMには、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAMは、ROMに記憶されているプログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPUは、RAMにロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。例えば、予め試験施工を行うことにより特定されている深度ごとの最適なウォータージェット供給量やエアージェット供給量に基づき、ウォータージェットやエアージェットの供給制御が実行される。また、計測用プーリー60から送信されてきたワイヤW2の移動量に基づいて地中へ供給された改良杭造成用材料の供給量の割り出しが実行され、割り出された供給量は制御盤に随時保存されることにより、改良杭造成用材料の供給量の高精度な管理が保証される。
【0056】
[実施形態に係る地盤改良方法]
次に、
図5及び
図6を参照して、実施形態に係る地盤改良方法の一例について説明する。ここで、
図5は、実施形態に係る地盤改良方法の一例を説明する工程図である。
【0057】
図5は、実施形態に係る地盤改良方法を説明する工程図であり、
図5の左図から右図に向かって一連の工程図となっている。すなわち、同じ地表位置において、その直下の地盤G内に改良杭を造成するまでの工程を、左図(工程(A))から右図(工程(G))にかけて順に示している。尚、
図5における工程(B)乃至工程(G)ではクローラクレーンの図示を省略し、ワイヤW1にてバイブロユニット80が垂下されている状態のみを示している。
【0058】
図5に示す改良対象の地盤Gは、表層から順に、軟弱層G1,硬質層G2,軟弱層G3乃至G5の地盤性状の異なる複数の層の積層構造を有する。そして、表層から軟弱層G5の途中レベルまでを、地盤改良深度となる所定深度h(工程(B)参照)とする。
【0059】
改良対象の地盤Gが表層の軟弱層G1の下方に硬質層G2を有することから、まず、
図5の工程(A)に示すように、先行削孔機200を用いて硬質層G2の下端までX1方向に、オーガーを回転させながらプレボーリングを行う(プレボーリング工程)。
【0060】
プレボーリング工程にて硬質層G2の下端まで先行削孔した後、工程(B)に示すように、先行削孔機200を退避させ、クローラクレーン90(
図1参照)にてワイヤW1を介してバイブロユニット80を垂下し、その先端のバイブロツール20を地盤G内に挿入する。そして、必要に応じてウォータージェット供給管65の先端からウォータージェットを地盤G内に吐出し、エアージェット供給管67からエアージェットを先端ガイドチューブ50内に吐出させながら、バイブロユニット80の自重にて地盤G内にバイブロユニット80をX1方向に自沈させ、バイブロユニット80を所定深度hまで貫入させる(貫入工程)。
【0061】
バイブロユニット80が所定深度まで貫入した後、工程(C)に示すように、バケット85にてホッパー17に対して改良杭造成用材料である透水性材料を投入し、透水性材料をサイロチューブ10の内部に貯留させておく。そして、工程(D)に示すように、バイブロユニット80を所定の引き抜き長さh1だけ上方のX2方向に引き抜き、この引き抜きによってバイブロツール20の下方に生じた空洞に対して、フィーダー40を介し、さらに先端ガイドチューブ50を介して透水性材料を充填する。
【0062】
このバイブロユニット80の引き抜きは、偏心モータ31を駆動させてバイブロツール20を水平方向であるY1方向に高周波振動させながら行う。このバイブロツール20の引き抜きによって形成された空洞に透水性材料が充填されることにより、充填体C1を造成する。造成された充填体C1は、
図3に示す先端ガイドチューブ50の断面積A3と引き抜き長さh1を乗じてなる体積を有する。例えば、所定長さhが5m乃至10m程度の場合に、引き抜き長さh1を1m程度に設定することができる(以上、引き抜き充填工程)。尚、サイロチューブ10内の透水性材料が一定量減少した際に、都度、透水性材料がサイロチューブ10内に補給される。
【0063】
断面積A3と引き抜き長さh1を乗じてなる体積を有する充填体C1が造成された後、工程(E)に示すように、バイブロユニット80を引き抜き長さh1よりも短い所定の戻し長さh2だけ下方のX3方向に戻す。このバイブロユニット80の戻しも、偏心モータ31を駆動させてバイブロツール20を水平方向であるY1方向に高周波振動させながら行う。
【0064】
バイブロユニット80の戻しは、バイブロツール20を水平方向に高周波振動させながら、バイブロユニット80の自沈にて行う。例えば、引き抜き長さh1が1m程度に設定されている場合に、戻し長さh2を50cm乃至85cm程度に設定することができる。
【0065】
バイブロユニット80を引き抜き長さh1よりも短い戻し長さh2だけ下方に戻すことにより、充填体C1がバイブロユニット80の自重にて側方に押されて拡径し、拡径体C2が造成される。例えば、引き抜き長さh1が1mに設定され、戻し長さh2が80cmに設定されている場合、拡径体C2は当初の高さ1mを保持しながら、バイブロツール20が内部に押し込まれた上方80cmの高さ領域においては挿入されたバイブロツール20の体積分だけ側方に拡径し、図示例のように段状の拡径体C2が造成される。
【0066】
このように、拡径体C2は、バイブロユニット80の自重にて充填体C1が上方から押し込まれて側方に拡径しながら造成されるが、この際に、バイブロツール20が水平方向に高周波振動しながら充填体C1を押し込むことから、バイブロツール20の振動方向と拡径体C2の造成方向(拡径方向)が一致していることにより、施工効率の高い改良方法となる(以上、戻し工程)。
【0067】
上記する工程(C)乃至工程(E)、すなわち、透水性材料の充填準備から引き抜き充填工程、及び戻し工程までを1セットとし、このセットを
図5の工程(F)のように所定回数繰り返す。この引き抜き充填工程と戻し工程の繰り返し施工の際には、バイブロツール20の水平方向であるY1方向の高周波振動は絶えず実行され、この高周波振動が地盤に付与されることにより、改良杭の上方への造成が行われる。
【0068】
工程(G)に示すように、所定径φの改良杭C5が例えば地表まで造成されることにより、改良エリアの一箇所における改良杭C5の造成が完了する。
【0069】
施工エリアにおいて、所定の改良率に応じた改良ピッチにて各改良杭C5が造成されることにより、施工エリアにおいて所望する液状化強度や地耐力等を備えた改良地盤を造成することができる。
【0070】
実施形態に係る地盤改良方法において、バイブロユニット80の引き抜き長さと戻し長さのいずれか一方もしくは双方を変化させることにより、バイブロユニット80の引き抜きと戻しの繰り返しによって都度造成される拡径体の径も、最終的に造成される改良杭の所定径も所望に変化させることができる。例えば、所定の引き抜き長さを1mに設定したとしても、所定の戻し長さを80cmに設定する施工と85cmに設定する施工では造成される拡径体の径が相違する。また、所定の戻し長さを80cmに設定したとしても、所定の引き抜き長さを1mに設定する施工と1.5mに設定する施工では造成される拡径体の径が相違する。従って、地盤の硬軟の程度等に応じて、最適な締固め管理が実行できるように、バイブロツール20の引き抜き長さと戻し長さを設定して所定径の改良杭を造成するのが好ましい。
【0071】
図示する地盤改良方法によれば、例えば直径800mm乃至1000mm程度の大径の改良杭を造成することが可能になる。従って、直径の上限が700mm程度の改良杭を造成するSCP工法と同程度の改良率にて改良杭を造成する場合であっても、図示する地盤改良方法では改良杭のピッチを大きくすることができ、このことによって工期短縮と工費削減を図ることが可能になる。例えば一例として、SCP工法と実施形態に係る地盤改良方法にて同程度の改良率の改良杭を造成する場合、SCP工法では1.9mピッチで改良杭を造成する必要があるのに対して、実施形態に係る地盤改良方法では2.8mピッチで改良杭を造成することができ、施工延長を約20%低減することが可能になる。
【0072】
また、バイブロユニット80の引き抜き長さと戻し長さを例えばそれぞれ1m、80cm等に設定することにより、これらの工程にて造成される拡径体の径は計算から正確に求められる。そして、その後も同様にバイブロユニット80の1mの引き抜きと、この引き抜きによって形成された空洞への透水性材料の充填、さらにバイブロユニット80の80cmの戻しを繰り返すことにより、都度、造成される拡径体の径が計算から正確に求められる。尤も、既述するように、図示する地盤改良方法で適用される地盤改良装置100では、バイブロユニット80に設けられている計測用プーリー60によりサイロチューブ10内の透水性材料の変動高さが精度よく計測され、この計測データに基づいて地中への透水性材料の供給量が精度よく割り出され、管理される。
【0073】
尚、地盤Gの硬軟の程度により、拡径体の拡径の程度も変化し得る。すなわち、計算によって求められる拡径体の径と実際に造成される拡径体の径に相違が生じ得る。そのため、好ましくは、施工エリアにおいて試験施工を実施し、一セットの引き抜き充填工程と戻し工程によって拡径体の拡径がどの程度になるかを確認するのが好ましい。すなわち、施工エリアにおいて所定の透水性材料を使用して試験施工を実施し、造成される拡径体の径の実測値と設計値との比率から補正係数を求めておくのがよい。
【0074】
この補正係数は、施工エリアの地盤の性状(地盤の締まり易さ、硬軟の程度等)と使用される透水性材料とによって決定され得る。また、図示例のように、施工エリアにおいて、地表から改良深度hの範囲に複数種の地層(G1乃至G5)が積層している場合は、地層G1乃至G5ごとに補正係数を求めておくのがより好ましい。実施工の際には、地層G1乃至G5ごとに改良杭の所定径(設計値)に対して地層固有の補正係数を乗じて算定された施工管理径の改良杭を造成することにより、所定深度に亘って、より一層高い精度の出来形の改良杭を造成することができる。
【0075】
図示例の地盤改良方法は、設計長さh3に亘って同一の所定径φの改良杭C5を造成するものであるが、各地層G1乃至G5ごとに、所定径φが異なる改良杭を造成してもよい。この場合、試験施工にて予め地層ごとに設定されている補正係数を用いて、実施工の際の各地層における施工管理径を設定し、各地層に固有の施工管理径の改良杭が積層された改良杭を造成することができる。
【0076】
このように、図示する地盤改良方法によれば、クローラクレーン90にてバイブロユニット80を引き抜くことにより形成された空洞に透水性材料を充填して充填体C1を造成し、バイブロツール20を水平方向に高周波振動させながらバイブロユニット80の自沈にて充填体C1を側方に拡径させて拡径体C2を造成し、これを繰り返して拡径体C1を徐々に拡径させることにより、改良杭C4を造成する。そのため、特殊機械を使用することなく、地盤の密度増大と間隙水圧消散の双方を図ることのできる改良杭C4を造成することができる。
【0077】
次に、
図6を参照して、使用する透水性材料に応じた改良杭について説明する。ここで、
図6(a)、(b)、(c)はともに、造成される改良杭の実施形態を示す縦断面図である。
【0078】
図6(a)は、透水性材料として、フライアッシュ、焼却灰または燃えがらからなる造粒物Zを使用した場合の改良杭を示す図である。透水性材料として造粒物Zを使用する場合は、透水性材料の径を所望に調整することが可能になる。そして、例えば均一径の造粒物Zを透水性材料として使用することにより、戻し工程において、水平振動するバイブロツール20が空洞に充填されている透水性材料内にスムーズに入り込み易くなる。
【0079】
また、造粒物ゆえにその強度を所望の強度に調整することが可能になる。また、SCP工法のように上下方向の締固めと異なり、バイブロツール20を水平方向に振動させて拡径することから、透水性材料の粒子破砕を防止することができ、良好な透水性を確保することができる。
【0080】
フライアッシュからなる造粒物Zでは、例えば10N/mm2程度の強度を期待することができる。また、10mm乃至40mm程度の粒径の造粒物Zを製造することができる。
【0081】
さらに、石炭火力発電所から大量に発生するフライアッシュ(焼却灰、燃えがら等)を造粒して地盤改良材として使用する場合、発生するフライアッシュを有効に使用することが可能になる。例えば、本態様の地盤改良方法を石炭火力発電所の敷地内における地盤改良に適用することにより、敷地内で発生する大量のフライアッシュを当該敷地内における地盤改良材として使用することができる。
【0082】
一方、
図6(b)は、透水性材料として砕石Sを使用した場合の改良杭を示す図である。砕石Sは、リサイクル材であってもバージン材であってもよい。透水性材料として例えばリサイクル材である砕石Sを使用する場合は、砕石Sが水分を吸収して再硬化することにより、SCP工法のように改良材料を地盤内に圧入することなく、高強度の改良杭C5を造成することができる。従って、改良された地盤に耐液状化性に加えて地耐力が要求される場合などにおいては、砕石Sを透水性材料に使用して本態様の地盤改良方法を行うのがよい。
【0083】
一方、
図6(c)は、透水性材料として造粒物Zと砕石Sの双方を使用した場合の改良杭を示す図である。造成される改良杭C5は、中心領域にある砕石Sからなる耐荷体と、外周領域にある造粒物Zからなる排水体とを有する複合構造体である。図示する改良杭C5によれば、耐荷性と排水性(耐液状化性)の双方に優れた改良杭が提供できる。例えば、液状化地盤上に高層ビル等を造成する場合等において、好適な改良杭となる。尚、図示例の他にも、透水性材料としてスラグ等を適用してもよい。
【0084】
<地盤改良方法の実施例>
次に、
図7を参照して、地盤改良方法の実施例について説明する。ここで、
図7は、実施形態に係る地盤改良方法の一例をより詳細に説明する工程図であって、上段は各工程におけるバイブロツールを含むバイブロユニットと造成された改良杭の縦断面図であり、下段は上段における矢視図であって各工程において造成された改良杭の断面積を示す図である。尚、図中の数値はmm単位である。
【0085】
本実施例では、引き抜き充填工程におけるバイブロユニット80(もしくはバイブロツール20)の引き抜き長さを1m(図中の1000が相当)とし、従って、造成される充填体の高さは1mであり、断面積はバイブロツール20の先端の先端ガイドチューブ50の断面積であるA3である。また、引き抜き充填工程におけるバイブロツール20の戻し長さを80cm(図中の800が相当)とし、引き抜き長さとの差分値は20cmとする(図中の200が相当)。
【0086】
図7の工程(A)は貫入工程であり、表層から所定深度hまでバイブロツール20を貫入させる。次いで、工程(B)において、バイブロツール20を1m引き抜くことによって高さ1mの空洞を形成させ、バイブロツール20のフィーダー40から先端ガイドチューブ50を介して透水性材料をこの空洞に充填することにより、断面積A3で高さ1mの充填体P1が造成される。
【0087】
次に、工程(C)において、バイブロツール20を水平方向に高周波振動させながら80cm下方に戻すことにより、バイブロツール20の水平振動とバイブロユニット80の自重にて高さ80cm分の体積を充填体P1内に埋設する。この施工により、当初の充填体P1の高さ1mを維持しながら、バイブロツール20の80cm高さ相当の体積分だけ充填体P1が側方に拡径し、断面積A4の拡径体P1'が造成される。
【0088】
すなわち、本実施例では、バイブロツール20を充填体P1内に所定の戻し長さだけ戻した際に、このバイブロツール20が充填体P1内に埋め込まれた分の体積が、充填体P1を側方に拡径させる体積増分に充てられるものとして拡径体P1'の断面積を算定するものである。尚、実際には、充填体P1の高さ(図示例では1m)に対して、拡径体P1'の高さが1m以上になる(すなわち、高さ方向にも拡大する)ことも想定されるが、縦横二方向に拡大するとした場合は計算が煩雑になることから、本実施例では横方向の拡径にのみバイブロツール20の戻し分の体積が寄与するものとする。
【0089】
工程(C)において、拡径体P1'の断面積(図中のドーナツ状の部分の断面積)は、地盤性状と透水性材料による補正係数を加味して設定されるのがよい。この補正係数は、施工エリアにおいて、実施工にて使用される透水性材料を用いた試験施工を行うことにより、実際の拡径体の断面積を計測し、設計値と実測値の比率を求めること等により設定される。この補正係数は、地盤性状によっても使用する透水性材料によっても変化し得ることから、施工エリアの地盤と使用する透水性材料の組み合わせによって一義的に設定される。そして、より詳細には、
図5に示すように複数の地層が積層している地盤の場合には、試験施工にて地層ごとに拡径体の断面積を計測し、地層ごとの補正係数を特定しておくのが好ましい。地層ごとに、固有の補正係数に応じた施工管理径を算定しておき、この施工管理径に基づいて改良杭を造成することにより、地盤性状の異なる多層地盤においても所望径の改良杭を高い出来形の下で造成することができる。尚、試験施工を実施せず、従って補正係数を使用せずに拡径体の断面積を算定してもよい。
【0090】
次に、工程(D)において、バイブロツール20を1m引き抜くことによって高さ1mの空洞を形成させ、バイブロツール20のフィーダー40を介し、先端ガイドチューブ50を介して透水性材料をこの空洞に充填することにより、拡径体P1'のドーナツ状部分の内側において、断面積A3で高さ1mの充填体P2が造成される。ここで、所定深度hから充填体P2の上端までの高さは1.2mとなる。
【0091】
次に、工程(E)において、バイブロツール20を水平方向に高周波振動させながら80cm下方に戻すことにより、バイブロツール20の水平振動とバイブロユニット80の自重にて高さ80cm分の体積を充填体P2内に埋設する。この施工により、当初の充填体P2の高さ1.2mを維持しながら、バイブロツール20の80cm高さ相当の体積分だけ充填体P2が側方に拡径して拡径体P2'が造成されることにより、その外側の拡径体P1'が外側に押し出される。そして、工程(F)にて空洞に断面積A3で高さ1mの充填体P3が造成されることにより、断面積A5の拡径体P1'と拡径体P2'と充填体P3のユニット体が造成される。以後、これらの工程を繰り返して、バイブロツール20の1mの引き抜きと、空洞への充填体の造成、及びバイブロツール20の80cmの戻しによる拡径体の造成を繰り返すことにより、所望径でかつ所望長さの改良杭が造成される。
【0092】
[先端ガイドチューブの有効性検証実験]
本発明者等は、先端ガイドチューブの有効性を検証するための土槽締固め実験を行った。
図8には、実機のバイブロユニットと、実験で適用した模型管の側面図を示しており、
図9には、
図8における実機のA-A断面図乃至C-C断面図と、模型管のa-a断面図乃至c-c断面図を示している。さらに、
図10には、実験設備を写真図として示している。
【0093】
本実験では、
図8の左図に示す実機を模擬するべく、
図8の右図に示す模型管を作成した。模型管の形状は、中詰材落下の様子を観察するために半割り状の断面形状としている。また、実機は、中央にあるモータの上部において内部構造が変化していることから、模型管も実機の構造を可能な限り再現した。模型管の全長は実験棟の天井高や作業性を考慮し4mを上限とした。また、調達可能な中詰材の粒径も鑑み、模型管の縮尺は1/2スケールとした。模型管においては、先端ガイドチューブを備えているものを実施例とし、先端ガイドチューブを備えていないものを比較例としている。
【0094】
図10に示す実験設備を作成し、本実験では、土槽ピット内に木製の土槽を設置し、実施例及び比較例の各模型管を据え付けた状態で水を張り、山砂を静かに投入して飽和地盤を製作した。土槽前面はアクリル製とし、地盤の様子と半割り模型管の内部が観察できる機構にした。本実験において、模型管の上下動はボーリングマシンを使用することにより行った。実験結果を
図11に示す。
【0095】
図11において、各数値の単位はcmである。
図11のXZ平面の広がりを示す左図においては、先端ガイドチューブを模擬する実施例の下端のVP200管を示しており、この幅15.8cmをグラフ上に示している。
【0096】
実験の都合上、実施例と比較例において、
図11の右図で示す模型管の引き抜き長さと戻し長さは相違しており、
図11の左図及び中央図の実験結果における造成深度も相違しているが、実施例と比較例の引き抜き長さの目標値はいずれも、初期段階で50cm、その後は20cmとしている。
【0097】
本実験結果における実施例と比較例の比較においては、例えば、左図の比較例と実施例の双方の深度方向における出来形の幅を比較することにより、双方の相違が理解し易い。すなわち、
図11の左図において、比較例の出来形では、下方の幅が上方に比べて狭くなっており、下方において十分な径の造成杭が造成できていないことが分かる。例えば、最下端の深度-120cmにおける比較例の幅は10cm程度であるのに対して、最上端の深度-14cm程度における比較例の幅は35cm程度となっており、出来形の幅に分布がある。
【0098】
これに対して、実施例の出来形は、下端(深度-160cm程度)から上端(深度-40cm程度)に亘り、20cm程度のほぼ均一な幅の出来形となっており、下方においても十分な径の造成杭が造成できていることが実証されている。
【0099】
本実験より、バイブロツールの先端に対して、フィーダーの中空よりも大断面の中空を備える先端ガイドチューブを取り付けることにより、先端ガイドチューブの有する中空の断面積の空洞を地盤内に確保することができ、確保された空洞に改良杭造成用材料を充填することにより、所望径の造成杭を造成できることが実証されている。
【0100】
[先端フィンの有効性検証実験]
次に、本発明者等は、先端フィンの有効性を検証するための締固め実験を行った。本実験では、原地盤に対して、
図1に示す地盤改良装置(先端ガイドチューブ50の先端に先端フィン55が取り付けられている装置で、以下、実施例とする)と、
図1に示す地盤改良装置から先端フィンを取り除いた装置(参考例)とを用いて、それぞれ造成杭を造成し、深度方向に1m分の造成を行うまでの時間を測定し、比較したものである。
【0101】
本実験では、改良体の造成に当たり、1m引き上げ、0.75m戻すことにより、0.25mの造成を行うことを1ステップとし、これを複数ステップ行っている。実験結果を
図12に示す。
【0102】
図12では、GL-14m乃至GL-13mの1m区間を抽出して、実施例と参考例の深度方向に1m分の造成を行うまでの時間を測定している。
図12より、参考例の所要時間が1分21秒であったのに対して、実施例の所要時間が1分10秒であり、先端ガイドチューブの先端に先端フィンを設けることにより、15%程度の施工時間短縮が図れることが実証されている。従って、バイブロツール20の先端に先端ガイドチューブ50を取り付けるとともに、先端ガイドチューブ50の先端に先端フィン55を取り付けることにより、所望径の改良杭を効率的に造成できることが分かる。
【0103】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0104】
10:サイロチューブ
11:上端
12:開口
17:ホッパー
20:バイブロツール
21:溝
25:回転防止翼
30:バイブロフロット
31:偏心モータ
40:フィーダー
41:充填口
50:先端ガイドチューブ
55:先端フィン
56:テーパー面
60:計測用プーリー
61:プーリー
62:砂面計
65:ウォータージェット供給管
67:エアージェット供給管
80:バイブロユニット
85:バケット
90:クローラクレーン(重機)
100:地盤改良装置
200:先行削孔機
G:地盤
C1:充填体
C2、C4:拡径体
C5:改良杭
Z:造粒物
S:砕石
W1,W2:ワイヤ