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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】遠位に電極を誘導する切除用内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020210581
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2021098017
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】10 2019 135 571.0
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブロックマン
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス・ミーシュ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-211212(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006407(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109965972(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102017115377(DE,A1)
【文献】特開2002-095677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のシャフト(12)と取手(14)とを備えた内視鏡外科手術のための切除用内視鏡(10)であり、前記シャフト(12)が、長手方向に移動可能に配置された電極器具(16)と、その遠位端に電気的に絶縁性の円筒状の絶縁挿入物(18)とを含み、前記電極器具(16)が、1つ又は2つの支持アーム(22)を備えた細長いシャフト部分(20)とその遠位端領域内に高周波電流が供給され得る電極(24)とを有する、切除用内視鏡であって、
前記絶縁挿入物(18)が支持アーム(22)をそれぞれ保持するための1つ又は複数の誘導要素(26)を有し、前記1つ又は複数の誘導要素(26)が前記絶縁挿入物(18)の内壁(28)に配置されており、前記支持アーム(22)が前記誘導要素(26)内で長手方向に移動可能に据え置かれ
前記1つ又は複数の誘導要素(26)は、前記絶縁挿入物(18)の前記内壁(28)から前記絶縁挿入物(18)の内部空間に延在し、
前記1つ又は複数の誘導要素(26)は、前記各々の支持アーム(22)をその周囲の180°以上で包囲する、
ことを特徴とする切除用内視鏡。
【請求項2】
前記電極器具(16)が2つの支持アーム(22)を有することを特徴とする、請求項1に記載の切除用内視鏡(10)。
【請求項3】
前記シャフト(12)の遠位端と前記1つ又は複数の誘導要素(26)との間の間隔が1cm以下になることを特徴とする、請求項1又は2に記載の切除用内視鏡(10)。
【請求項4】
前記1つ又は複数の誘導要素(26)の長手軸(LF)がそれぞれ前記シャフト(12)の長手軸(LS)に対して平行に通っていることを特徴とする、請求項1から3のうちの1項に記載の切除用内視鏡(10)。
【請求項5】
前記1つ又は複数の誘導要素(26)が、前記各々の支持アーム(22)をその周囲の240°以上で、好ましくは360°で包囲することを特徴とする、請求項1からのうちの1項に記載の切除用内視鏡(10)。
【請求項6】
前記電極(24)がループ電極であることを特徴とする、請求項1からのうちの1項に記載の切除用内視鏡(10)。
【請求項7】
内視鏡外科手術のための切除用内視鏡(10)と組み合わせて使用するための電極システム(44)であって、前記電極システムが電極器具(16)と、電気的に絶縁性の円筒状の絶縁挿入物(18)とを含み、
前記電極器具(16)が1つ又は2つの支持アーム(22)を備えた細長いシャフト部分(20)とその遠位端領域内に高周波電流が供給され得る電極(24)とを有し、
前記絶縁挿入物(18)が前記電極器具(16)の支持アーム(22)をそれぞれ保持するための1つ又は複数の誘導要素(26)を有し、前記1つ又は複数の誘導要素(26)が前記絶縁挿入物(18)の内壁(28)に配置されており、前記支持アーム(22)が前記誘導要素(26)内に長手方向に移動可能に配置され
前記1つ又は複数の誘導要素(26)は、前記絶縁挿入物(18)の前記内壁(28)から前記絶縁挿入物(18)の内部空間に延在し、
前記1つ又は複数の誘導要素(26)は、前記各々の支持アーム(22)をその周囲の180°以上で包囲する
ことを特徴とする、電極システム(44)。
【請求項8】
前記1つ又は複数の誘導要素(26)が、前記各々の支持アーム(22)をその周囲の240°以上で、好ましくは360°で包囲することを特徴とする、請求項に記載の電極システム(44)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に述べられる様式の内視鏡外科手術用の切除用内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
その類概念による様式の切除用内視鏡は、とりわけ泌尿器科学において膀胱及び尿道内での外科手術の際に使用される。それらの切除用内視鏡は組織、例えば下部尿路内の組織を切除し、蒸発させるために使用される。そのために切除用内視鏡は長手方向に移動可能な電気手術用の電極器具を含み、その電極器具は切除用内視鏡の挿入後に、その遠位作業端が切除用内視鏡のシャフト管の遠位端から押し出され得る。さらに切除用内視鏡は手術箇所を観察し、手術を監視するために一般に光学系を含み、その光学系は遠位端に対物レンズを含み、近位端で直接観察するための接眼レンズ又は電子的監視ユニットと結合されている。最後に切除用内視鏡は手術箇所を照明するために照明要素、大抵は光ファイバ束の形の照明要素を含み、その照明要素は切除用内視鏡のシャフトを貫通し、その近位端で光源と接続されている。
【0003】
切除用内視鏡に通される電極器具はその遠位作業端に、ループ又は蒸発ヘッド(PlasmaButton)の形態の電気外科手術用電極を含み得る。そのような器具は例えば、OES PRO切除用内視鏡(オリンパス社)、独国特許公開公報第102019102841A1号及び米国特許公報第4917082A号に記載される切除用内視鏡である。電極器具は二極性の又は単極性の器具として形成されることができ、その際、二極性の器具は単極性の器具と比べてかなりの安全面の利点を有し得る。
【0004】
電極器具は、遠位の電極を用いて組織を切除することができるように器具シャフト内で長手方向に移動され得る。器具シャフトを通じた電極器具の直線的な誘導を確保するために、電極器具は一般にその細長いシャフト部分に、電極器具を光学系の表面で又は切除用内視鏡シャフトの内壁で支える誘導要素を有する。そのために誘導要素は通常、光学系又は該内壁に対して相補的であるように部分円形状に、例えば部分円形状の誘導板の形に形成されている。
【0005】
通常の電極器具は比較的長い行程、例えば23mmの行程を有するので、誘導要素は一般に、同様に電極器具の遠位端から遠くに隔てられている。このようにして、電極器具が遠位に向けて最大限遠くに移動している場合でも、誘導要素が切除用内視鏡シャフト内に留まっていることが確保される。しかし誘導要素と遠位電極との間のこの広い間隔により結果として、電極器具がこの領域において撓み得ることになり、そのことから電極が切除用内視鏡シャフトに対して移動し得る、又は曲がり得ることにもなる。さらに、遠位で既に曲がった電極器具の位置決めを補正することはできない。
【0006】
しかしながら外科手術の際に切除用内視鏡シャフトの遠位端は組織を切り離す縁として使用されることが多いので、電極の位置が遠位の切除用内視鏡シャフト末端の縁に対して正確に誘導され得ることが重要である。そのようにしてのみ良好な切断結果を得ることができる。電極器具の直線性についてのわずかな不正確さだけでも、電極器具の切断特性に対して負の影響を及ぼし得る。ループ電極があまりにも奥深く据えられている場合、電極とシャフト先端との間の直接的な接触により電極が破損することがあり得る。つまりループは、例えば引き出す際にシャフト先端又は絶縁挿入物に引っ掛かったままであることがあり、曲がる又は折れることさえある。さらに、それによりシャフトでの材料破損に至ることが考えられる。ループ電極があまりにも高位に据えられている場合、部分縁としての切除用内視鏡シャフトが無くなることがあり、組織を切り離すことが少なくとも難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許公開公報第102019102841A1号
【文献】米国特許公報第4917082A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の課題は、その電極器具がその遠位端領域内でさらに安定している、切除用内視鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有する切除用内視鏡により及び請求項9の特徴を有する電極システムにより解決される。
【0010】
本発明は特に第1の態様において、管状のシャフトと取手とを備えた内視鏡外科手術のための切除用内視鏡であり、該シャフトが、長手方向に移動可能に配置された電極器具と、その遠位端に電気的に絶縁性の絶縁挿入物とを含み、電極器具が、1つ又は2つの支持アームを備えた細長いシャフト部分とその遠位端領域内に高周波電流が供給され得る電極とを有する、切除用内視鏡であって、絶縁挿入物が支持アームをそれぞれ保持するための1つ又は複数の誘導要素を有し、支持アームが各々の誘導要素内で長手方向に移動され得ることを特徴とする切除用内視鏡に関する。
【0011】
本発明に従って、安定した誘導要素を切除用内視鏡シャフトの遠位端での絶縁挿入物内に配置することにより、電極先端と誘導要素との間の間隔が最小になり、それにより、より確実な電極の位置決めが可能になる。電極器具を長手方向に移動させる際、誘導要素はもはや一緒には動かない。電極システムはそれにより全体的に明らかにより安定的になり、曲げに対して保護される。さらに、切断時に電極は誘導要素を通じてシャフト末端の切断縁に対して正確な位置に誘導されるので、曲がりやすい電極器具を用いたより精密な切断も可能である。従って切断の結果は全体的に明らかに向上する。
【0012】
本発明による切除用内視鏡は通常の構成様式において管状のシャフトを有する。内視鏡シャフトは細長い被覆管を含む。切除用内視鏡はシャフト部と共に、通常2つの把持部から構成される保持及び操作用の取手を有する。
【0013】
切除用内視鏡のシャフトは長手方向に移動可能に配置された電極器具を有する。電極器具はそのような切除用内視鏡内で貫通器具として使用され、単回使用するように形成されることができ、複数回使用するように形成されることもできる。
【0014】
電極器具は細長いシャフト部分(シャフト部)を有し、切除用内視鏡用の貫通器具として、即ち切除用内視鏡のシャフト管を通じて身体開口部に挿入可能な器具として形成されている。電極器具はその遠位端に、高周波電流が供給され得る電極を有する。電極は、切断ループ、蒸発ヘッド(PlasmaButton)又は他の市販の電極であり得る。好ましくは電極は切断ループ電極である。対応する電極及び電極器具は当業者に周知のものである。
【0015】
電極器具は、電極装置の一部としての電極を含む二極性電極器具であることができる。この場合、電極器具は例えば、電極器具の遠位端領域内に、中性電極として形成されている第2の電極を含むことになる。代わりに第2の電極(中性電極)は、切除用内視鏡の遠位端領域の他の要素に配置されることができる。当然、電極器具は単極性器具として形成されることができる。
【0016】
電極器具は切除用内視鏡のシャフト内で長手方向に移動され得る、即ち軸方向で遠位及び近位に向けて移動する。切除用内視鏡に接続するために、電極器具は細長いシャフトを有し、そのシャフトは連動結合を作り出すためにその近位端で、切除用内視鏡により包含される滑動部に固定され得る。滑動部は通常、管の上を滑り、ばねユニットを介してばね加圧で静止位置に保持される。つまり電極を遠位端で、切断されるべき組織に向かって又はその組織から離れるように移動させることができ、切除用内視鏡全体を移動させる必要はない。さらに電極器具を長手方向に移動させることができることにより、電極と絶縁挿入物との間に組織を挟み込み、手術箇所から取り除くことができる。切除用内視鏡シャフト又は絶縁挿入物の遠位端、及び電極は従って、電極器具の長手方向の移動により互いに対して近づくように及び互いに対して遠のくように移動する。
【0017】
電極器具は、電極器具のシャフト部分を成す1つ又は2つの細長い支持アームを有する。本発明によれば2つの支持アームを備えた電極器具が好ましい。電極器具が1つの支持アームのみを有する場合、電極はその支持アームの遠位端に配置されている。電極器具が2つの支持アームを有する場合、これらの支持アームはそれらの遠位端で結合要素により互いに対して結合されている。例えば結合要素が電極を形成することができ、電極が結合要素上に配置されていることもできる。言い換えれば、支持アームは電極を支えている、又は電極を支える結合要素を支えている。1つ又は複数の支持アームは好ましくは細長いものである。電極器具が2つの支持アームを有する場合、これらの支持アームは互いに対してほぼ平行に通っている。その際、2つの支持アームは例えば切除用内視鏡の内部管又は被覆管の内壁に沿って通り、この内壁の内周に沿って互いに対して約120°~200°にわたり、好ましくは約180°にわたり隔てられていることができる。従って2つの支持アームがほぼ向き合っていて、切除用内視鏡シャフトの長手軸が2つの支持アーム間の中心点であることが好ましい。
【0018】
切除用内視鏡のシャフトは電極器具と併せて、その遠位端に絶縁挿入物を有する。絶縁挿入物は非導電性に、即ち電気的に絶縁性に形成されている。このようにして導通性の切除用内視鏡に対する能動電極の絶縁が確保される。この目的のために、絶縁挿入物は好ましくは完全に、少なくともその挿入物の絶縁性を保証する程度に非導電性の、即ち電気的に絶縁性の材料から形成されている。そのような材料は当業者に周知のものであり、例えばセラミックと合成樹脂とを含む。本発明によれば合成樹脂製の絶縁挿入物が、比較的少ない製造費及び良好な絶縁性のために特に好ましい。絶縁挿入物は使用時、電極を用いた電気外科手術の間、発生するプラズマと接触することになり得るので、熱安定性の合成樹脂が特に好ましい。熱安定性の合成樹脂は、遠位の切除用内視鏡の領域において発生する高い温度に無破損で耐える能力がある。適切な熱安定性の合成樹脂は例えば、フルオロポリマー類及びシクロオレフィンコポリマー類から成る群から選択されることができる。合成樹脂から作製される絶縁挿入物は、射出成型法を用いて製造されることができる。
【0019】
絶縁挿入物は、切除用内視鏡シャフトの遠位端領域と取り外し可能に結合するのに適している。これは、絶縁挿入物と該末端領域とが形状及び寸法に関して少なくとも部分的に相補的であることを意味する。それにより絶縁挿入物は該末端領域と結合され得る。その結合はいずれの場合も、外科手術中の絶縁挿入物の剥離が防止されているような強固なものである、又はそのように確保されている。つまり円筒部分を有する絶縁挿入物は、例えば内部管又は被覆管上に載せられることができ、内部管内に押し込まれることもでき、内部管と被覆管との間に押し込まれることもできる。
【0020】
絶縁挿入物は、貫通器具を通すための細長い中空空間を備えた中空部分を有する。この部分は絶縁挿入物の近位端領域内に配置されている。その部分は、切除用内視鏡シャフトにより誘導される貫通器具を絶縁挿入物の経路形状の内部に通すことができることを保証する。絶縁挿入物はほぼ円筒状の形を有し得る、又は少なくともほぼ円筒状の近位部分を有し得る。相応して中空空間は中空部分の内部において、中空円筒形を有し得る。
【0021】
本発明による絶縁挿入物は、支持アームを保持するための1つ又は複数の誘導要素、即ち1つ、2つ又はそれ以上の誘導要素を有する。本発明によれば、2つの誘導要素を有する絶縁挿入物が好ましい。言い換えれば、各々の誘導要素は支持アームを保持するように形成されている。電極器具が2つの支持アームを有する場合、絶縁挿入物は対応する2つの誘導要素を含むことになる。電極器具がそれとは異なり1つの支持アームのみを有する場合、絶縁挿入物は対応する1つの誘導要素のみを含む。
【0022】
誘導要素の内には、誘導要素に対応する支持アームが長手方向に移動可能に据え置かれている、即ち、支持アーム及びそれと共に電極器具も切除用内視鏡シャフトの長手方向に移動可能であるように保持されている。同時に誘導要素は、支持アームが他の方向に、即ち切除用内視鏡シャフトの長手方向から逸れる方向に、例えば長手方向に対して横手方向に(半径方向に)移動するのを防止する。
【0023】
電極器具を安定させるために、1つ又は複数の誘導要素は、遠位のシャフト端又は絶縁挿入物の末端に可能な限り近接して配置されている。シャフトの遠位端と1つ又は複数の誘導要素との間の間隔は例えば1.5cm以下、1cm以下、0.5cm以下、0.25cm以下になり得る。好ましくはその間隔は0.5cm以下になる。
【0024】
1つ又は複数の誘導要素は、絶縁挿入物の内壁に配置されている。その際、誘導要素は光学系の視軸を妨げないように又は少ししか妨げないように配置され、形成されている。誘導要素は一般に、切除用内視鏡シャフトの長手軸(LS)に対してほぼ平行に形成されている。即ち1つ又は複数の誘導要素の長手軸(LF)はそれぞれシャフトの長手軸(LS)に対してほぼ平行である。同時に誘導要素は絶縁挿入物の内壁から絶縁挿入物の内部空間へ、絶縁挿入物の内壁に対して好ましくは140°~40°の角度で、好ましくは110°~70°の角度で、さらに好ましくは約90°の角度で延びている。その際、誘導要素は好ましくは、光学系から遠位方向にある又は支持アームのうちの1つの遠位端から遠位方向にある内部空間の領域には延びていない。
【0025】
誘導要素は、絶縁挿入物と同じ絶縁性材料から、即ち例えばセラミックから製造されることができる。しかし代わりに、上述の熱安定性樹脂から成る誘導要素も考えられる。誘導要素が絶縁挿入物の残りと一体的に形成されていることが好ましい。
【0026】
1つ又は複数の誘導要素はその際、本明細書の別の箇所で既に説明されたように、支持アームの長手方向の移動を確保して、同時に支持アームの他の方向への、例えば切除用内視鏡シャフトの長手方向に対して横手方向への移動を妨げるように各々の支持アームを包囲している。これは、誘導要素が各々の支持アームをその周囲の90°以上で、好ましくは180°以上で、例えば240°以上で包囲することにより達成され得る。しかしながら、強固に設置された絶縁挿入物を有するシャフト内に電極を容易に組み付けるために、包囲の程度が小さく保たれることが有利であり得る。各々の支持アームを同様に隣接して包囲する絶縁挿入物の内壁の一部は、誘導要素の一部とみなされる。従って絶縁挿入物の内壁が支持アームの外周に20°で隣接し、その内壁から突き出た突出部が支持アームの別の120°に隣接している場合、内壁及び突出部の一部から形成される誘導要素は支持アームを140°で包囲している。
【0027】
一実施形態では、誘導要素がそれに対応する支持アームを完全には包囲しないことを検討している。このようにして支持アームを必要に応じて誘導要素から横側に引き出すことができ、組み付けのために誘導要素に再び横側で挿入することができる。そのために誘導要素は、その要素を軽く曲げることにより支持アームをその要素から引き出すのに十分な柔軟性を有し得る。この実施形態において誘導要素は、支持アームをその周囲の90°~240°で、好ましくは180°~240°で包囲している。この実施形態は、切除用内視鏡シャフトと強固に結合された絶縁挿入物を有する切除用内視鏡内に電極器具を組み付けるのに特に適している。電極器具は単回使用するように形成されることができ、切除用内視鏡の残りの部分は絶縁挿入物を含めて、複数回使用し、浄化(洗浄)するように形成されることができる。
【0028】
代わりの実施形態において誘導要素は、誘導要素を破損させることなく支持アームを誘導要素から取り除くことができるように、支持アームにより包囲されている。これは、例えば絶縁挿入物が単回使用のために形成された電極システムの一部になっている場合に有意である。この実施形態において絶縁挿入物は、相応して同様に単回使用のために形成されている。この実施形態及び他の実施形態において誘導要素は、各々の支持アームをその周囲の180°以上で、好ましくは240°以上で、例えば360°で、即ち完全に包囲している。
【0029】
相応して本発明は関連する一態様において、内視鏡外科手術のための切除用内視鏡に使用するための、本明細書に記載される絶縁挿入物と本明細書に記載される電極器具とを含む、好ましくは単回使用のために形成された電極システムにも関する。具体的にこの態様は、電極システムが電極器具と、電気的に絶縁性の絶縁挿入物とを含み、電極器具が1つ又は2つの支持アームを備えた細長いシャフト部分とその遠位端に高周波電流が供給され得る電極とを有し、絶縁挿入物が電極器具の支持アームをそれぞれ保持するための1つ又は複数の誘導要素を有し、各々の支持アームが誘導要素内に長手方向に移動可能に配置されていることを特徴とする、電極システムに関する。
【0030】
電極システムは本発明による切除用内視鏡内で使用され得るが、切除用内視鏡とは別個に販売されることがある。電極システムはそのことから、例えば単回使用のために形成されることができる。
【0031】
電極システムの1つ又は複数の誘導要素は各々の支持アームをその周囲の180°以上で、好ましくは240°以上で、最も好ましくは360°で包囲している。
【0032】
図面では本発明の実施例が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】電極器具に取り付けられている誘導要素を備えた電極器具を含む、従来技術の切除用内視鏡の横概略断面図である。
図2】電極器具の支持アーム用の誘導要素を備えた絶縁挿入物を有する、本発明による切除用内視鏡の横概略断面図である。
図3】電極器具に取り付けられてシステムの光学系に支えられている誘導要素を備えた電極器具を含む、従来技術の切除用内視鏡の遠位端領域の横概略断面図である。
図4】電極器具の支持アーム用の誘導要素(破線で図示)を備えた絶縁挿入物を有する、本発明による切除用内視鏡の遠位端領域の横概略断面図である。
図5】電極器具の支持アーム用の誘導要素を備えた絶縁挿入物を有する、本発明による切除用内視鏡のシャフトの概略前面図である。
図6】電極器具の支持アーム用の誘導要素を備えた絶縁挿入物を有し、支持アームが内部管と被覆管との間に通っていて、誘導要素が支持アームを完全には包囲していない、本発明による代わりの切除用内視鏡のシャフトの概略前面図である。
図7】電極器具の支持アーム用の誘導要素を備えた絶縁挿入物を有し、支持アームが内部管と被覆管との間に通っていて、誘導要素が支持アームを完全には包囲していない、本発明による代わりの切除用内視鏡のシャフトの概略前面図である。
図8】電極器具の支持アーム用の誘導要素(破線で図示)を備えた絶縁挿入物と、対応する電極器具とを含む、本発明による電極システムの遠位端領域の横概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の他の利点、特性及び特徴は、添付された図面に基づいて実施例を以下に詳しく記載する際に明らかになる。但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
図1は、その内部において絶縁挿入物18が内部管40に配置されると共に、内部管40の内部の図示されていない光学系に支えられている誘導要素26が電極器具16に配置されている、従来技術の切除用内視鏡10の概略横断面図を示す。図3は、従来技術の同じ切除用内視鏡10の遠位端領域の概略横断面図を示す。
【0036】
切除用内視鏡10は、破線で示される被覆管38(外部管)を含むシャフト12を有する。被覆管38内には内部管40が通り、内部管40内には電極器具16と、図3に示される光学系42と、図示されていない照明手段、例えば光ファイバ束の形態の照明手段とが通っている。さらに切除用内視鏡内には、例えば別個の洗浄管等のようなここには図示されていない他の要素が通っていることがある。被覆管38はその遠位端領域に、ここには図示されていないが開口を含み、汚染された洗浄液がその開口を通じて被覆管38と内部管40との間の中間空間に流入し、切除用内視鏡シャフト12を通じて流出し得る。
【0037】
図1で、より詳しくは図3でわかるように、電極器具16はこの通常の器具において、部分円形状の断面を有する誘導要素26を用いて、シャフト12の長手方向から逸れた移動、例えば長手方向に対して横手方向の移動に対して保護されていることになっている。電極器具16は内部管40内で長手方向に移動可能に据え置かれている。誘導要素26は、光学系42の外壁に対して形状に関して相補的に形成され、部分的に円筒状の形を有している。誘導要素26は電極器具16のシャフト部分20において、2つの支持アーム(分岐管)22(図5)に固定されている。支持アーム22は、切除用内視鏡シャフト12内では接して横に並ぶように通っていて、切除用内視鏡シャフト12の遠位端領域で初めて互いから離れるように延びて、それらの末端の間にループ電極の形の電極24を収容し、支えている。電極要素16の誘導要素26は、誘導要素26から遠位にある領域内の電極器具16の曲がりに対して有効ではない。
【0038】
電極器具16は、取手14を操作することにより強制誘導で軸方向に遠位及び近位方向に移動され得る。その際、その電極器具は内部管40及び被覆管38の遠位端を越えて押し出され得る。つまりその電極器具により操作者は、切除用内視鏡先端からさらに離れた組織を操作することもできる。この目的のためにさらに、内部管40及び/又は電極器具16はそれらの長手軸を中心に回転可能に据え置かれている。電極器具16はその遠位端に電極24を有し、その電極は切断ループとして形成されていて、その電極を用いて電気外科的な切除により組織を取り除くことができる。その際、組織を切り取るために電極24に高周波電圧が印加される。
【0039】
図示される切除用内視鏡10は受動的な搬送体を有し、その搬送体では、切除用内視鏡シャフト12の近位に配置された把持部30及び32をばねブリッジ34により加えられるばね力に逆らって互いに対して相対移動させることにより、滑動部36を遠位の第1の把持部32とは反対の遠位方向へ移動させる。滑動体36を把持部32とは反対の遠位方向へ移動させる際に、図示されていないが、電極器具16を強制誘導で遠位に向けて移動させる。把持部30、32をラッチ解除する際に、ばねブリッジ34により生成されたばね力が滑動部36を強制的にその静止位置に戻し、その際、電極器具16が近位方向に引かれる。滑動部36を元の位置に戻すように移動させる際に、電極器具16を用いた電気外科的な措置を、操作者の手の力を用いずに、つまり受動的に行うことができる。
【0040】
切除用内視鏡10の絶縁挿入物18は切除用内視鏡の遠位端で、貼り合わせによりこれと取り外し不能に結合されている。絶縁挿入物18は誘導要素を含んでいない。絶縁挿入物は電気的に絶縁性のセラミックから形成されている。
【0041】
図2及び図4は、本発明による切除用内視鏡10の概略横断面図を示す。本発明による切除用内視鏡10は、図1及び図3に示されるものと、電極器具16の長手方向の移動を安定させるための誘導要素26が電極器具16のシャフト部分20ではなく、絶縁挿入物18の内壁28に配置されている点で異なる。誘導要素26を絶縁挿入物18の内部に配置することにより、誘導要素26と電極24との間の最大間隔を最小に削減している。それにより、電極器具16が遠位方向に最大限移動している場合でも、電極器具16の遠位端領域が曲がるおそれが明らかに低減している。誘導要素26は、絶縁挿入物18の遠位端から約0.5cm隔てられている。その際、誘導要素の長手軸(LF)はシャフト部の長手軸(LS)に対してほぼ平行である。図4では、誘導要素26がシャフト12の長手方向に細長く形成されていることがわかる。
【0042】
図2及び図4と同一の切除用内視鏡10の一部、つまりシャフト12の概略前面図を示す図5では、電極器具16が2つの支持アーム22を有し、それらの遠位端の間に、ループ電極の形を有する電極24が保持されることがわかる。支持アーム22はその内部に導通配線が通っていて、さらにその配線を覆い、支持アーム22を外部から電気的に絶縁する絶縁層を含んでいる。内部管40はさらに、支持アーム22の間に通っている光学系42を有する。
【0043】
さらに、切除用内視鏡シャフト12の遠位端領域に配置されている絶縁挿入物18が、2つの誘導要素26を有することがわかる。誘導要素26は、絶縁挿入物18の矢状面から見て互いに対して向き合っている。電極器具16の2つの支持アーム22の各々は、絶縁挿入物18の誘導要素26を通っている。誘導要素26は場所節減の理由から、形状に関して支持アーム22に対して少なくとも部分的に相補的である。誘導要素26はそれぞれ、その末端が絶縁挿入物18の内壁28と結合されている、部分円形を有する。図示された実施形態では、誘導要素26は絶縁挿入物18と一体的に、電気的に絶縁性のセラミックから形成されている。誘導要素26は、各々の支持アーム22を完全に、即ちその周囲の360°で包囲している。
【0044】
図6は、電極器具16の支持アーム22用の誘導要素26を備えた絶縁挿入物18を有する、本発明による代わりの切除用内視鏡10のシャフト12の概略前面図を示す。切除用内視鏡10は図5に示されるものとは、電極器具16の支持アーム22が内部管40内ではなく、内部管40と被覆管38との間に配置されているという点で異なる。さらに誘導要素26は図5に示されるものとは異なり、支持アーム22を完全には包囲していない。誘導要素26はそれぞれ切れ目を有し、その切れ目は横側で支持アーム22を挿入するために用いられ得る。そのために誘導要素26は、組み付け又は取り外しの間に曲がったり折れたりすることなく、切れ目を大きくし得るのに十分に柔軟である。図示された実施形態において誘導要素26内の切れ目は、光学系の方向に又は第2の支持アーム22の方向に形成されている。従って2つの誘導要素26の切れ目は互いに向き合っている。ここには示されていないが、切れ目は器具の長手方向に誘導要素26の全長にわたり延びている。
【0045】
図7は、誘導要素26を完全に包囲するようには形成されていない、図6の代わりの支持アーム22の構成様式である。誘導要素26はここでもそれぞれ切れ目を有する。その切れ目は切除用内視鏡シャフト12の横断面の方向に形成されている。ここには示されていないが、切れ目は器具の長手方向に誘導要素26の全長にわたり延びている。
【0046】
図8は本発明による電極システム44の遠位端領域の横概略断面図であり、その電極システムは、電極器具16の支持アーム22用の誘導要素26(破線で図示)を備えた絶縁挿入物18と、対応する電極器具16とを含む。電極システム44は単回使用のために設計されていて、使用後、医療的な措置の間に破棄され得る。代わりに複数回使用するように設計された電極システム44も考えられ得る。電極システム44内の絶縁挿入物18は、切除用内視鏡シャフト12への電極システムの組み付けを容易にする。なぜなら損傷しやすい電極器具16とは異なり、組み付け中に曲がることをおそれずに絶縁挿入物18を取り扱うことができるからである。絶縁挿入物18は固定のために、ここには図示されていないラッチ機構、又は例えば独国特許出願第102019102841.8号に記載の固定手段のような別の固定手段を含み得る。誘導要素26はこの場合、それぞれの支持アーム22を完全に包囲するように設計されている。
【0047】
本発明は実施例に基づいて詳しく記載されたが、本発明がこれらの実施例に限定されるのではなく、むしろ、添付された請求項の保護範囲を逸脱しない限り、個別の特徴が省略され得る又は説明された個別の特徴の異なった組み合わせが実現され得るように、変更が可能であることは当業者にとって自明のことである。本開示は、説明された個別の特徴の全ての組み合わせを含む。
【符号の説明】
【0048】
10 切除用内視鏡
12 シャフト
14 取手
16 電極器具
18 絶縁挿入物
20 シャフト部分
22 支持アーム
24 電極
26 誘導要素
28 内壁
30 把持部
32 把持部
34 ばねブリッジ
36 滑動部
38 被覆管
40 内部管
42 光学系
44 電極システム
LS シャフトの長手軸
LF 誘導要素の長手軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8