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特許7221272電動機のトルク脈動(Drehmomentwelligeit)を推定する方法および装置
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  • 特許-電動機のトルク脈動(Drehmomentwelligeit)を推定する方法および装置 図1
  • 特許-電動機のトルク脈動(Drehmomentwelligeit)を推定する方法および装置 図2a
  • 特許-電動機のトルク脈動(Drehmomentwelligeit)を推定する方法および装置 図2b
  • 特許-電動機のトルク脈動(Drehmomentwelligeit)を推定する方法および装置 図2c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】電動機のトルク脈動(Drehmomentwelligeit)を推定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/08 20160101AFI20230206BHJP
【FI】
H02P6/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020503035
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018069703
(87)【国際公開番号】W WO2019016348
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】A50613/2017
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】516303152
【氏名又は名称】アーファオエル リスト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート・コーカル
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ・ジョルダーノ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・プロプスト
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-123984(JP,A)
【文献】特開2005-257432(JP,A)
【文献】特開2011-176953(JP,A)
【文献】特開平7-163011(JP,A)
【文献】特開2017-046430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷(3)と接続された電動機(1)のトルク脈動TTRを推定する方法であって、制御回路(5)の制御部において前記電動機(1)のための調整トルクTset_UUTと、前記負荷(3)で測定された出力トルクTshaftと、前記電動機(1)の質量慣性モーメントJとから前記電動機(1)の理想回転数ωidealが決定され、前記電動機(1)で測定された実回転数ωUUTの理想回転数ωidealが、前記制御器(6)の調整量として現在トルク脈動TTRが生成されるように前記制御回路(5)の前記制御器(6)によって追従制御される、方法。
【請求項2】
前記方法は、永久磁石同期機の前記トルク脈動を推定するために用いられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、試験台で用いられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷(3)は、制御可能な負荷(3)であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記電動機(1)によって駆動される車両の作動中に用いられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記トルク脈動を補償するために用いられることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
負荷(3)と接続された電動機(1)のトルク脈動TTRを推定する装置であって、前記電動機(1)の実回転数ωUUTを測定するためのセンサと、前記負荷(3)の出力トルクTshaftを測定するためのセンサとを備える、装置において、
前記装置が制御回路(5)を備え、前記制御回路(5)は、
a.前記電動機(1)の調整トルクTset_UUTと、出力トルクTshaftと、前記電動機(1)の質量慣性モーメントJとから前記電動機(1)の理想回転数ωidealが決定される制御部を備え、
b.制御器(6)を備え、前記制御器(6)の調整量として前記トルク脈動TTRが生成されるように、前記制御器(6)は前記実回転数ωUUTの前記理想回転数ωidealを追従制御する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記装置は、電動機(1)のための試験台の一部であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記負荷(3)は、制御可能な負荷(3)であることを特徴とする、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、車両の駆動装置の一部であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記電動機(1)は、永久磁石同期機であることを特徴とする、請求項7~10のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機のトルク脈動を推定する方法および装置に関する。
【0002】
電動機、特に永久磁石同期モータ(PMSM)は自動車分野において広く使用されている。このような電動機は、大抵の場合、トランスミッションおよび駆動輪の駆動軸と組み合わせてドライブトレインとして用いられる。そのようなドライブトレインは、構造固有モードとねじり固有モードとを有する複雑な機械システムである。この固有モードの周波数に近い周波数で周期的な励起が行われることにより、運転者にとって不快な騒音が発生し得る。部品の寿命に影響が及ぼされ、個々のドライブトレイン構成部品が破壊されるという結果になることもある。
【0003】
このような電動機を使用する場合の典型的な副次的効果は、「トルクリップル(Torque Ripple)」または「リップルトルク(Ripple-Moment)」という用語でも知られているトルク脈動の発生である。これは電動機のロータの回転角度にわたる、回転角度にわずかに依存するトルク分散(Momentenverteilung)と解される。原因は、モータ巻線の不均一な配分、永久磁石の不均質性、さらに使用される電子部品の非対称性であり得る。
【0004】
典型的には、こうしたトルク脈動は回転周波数の次数で生じ、次数は、例えば極対とスロット数によって決定される。
【0005】
別の典型的な副次的効果は、そのようなモータにおけるいわゆるコギングトルクの発生である。通電されていない電動機のトルク脈動はコギングトルクと呼ばれる。
【0006】
発生するトルク脈動を正確に測定できるようにするために、電動機の出力軸でトルクを測定することが有益である。しかし通常、電動機トランスミッション複合体において、大抵の場合、トルク測定は提供されていないか、または実現が技術的に難しい。
【0007】
電動機の出力トルクは、例えば測定フランジを介して測定される試験台を使用して、トルク脈動を後処理ステップにおいても算出することができる。しかしこのためには電動機の回転数を測定および微分することが必要である。これは作動中には問題があり、大抵の場合、測定信号のローパスフィルタ処理によってしか可能でないが、これにはコストがかかり、エラーが非常に起きやすい。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、試験台および作動時に電動機のトルク脈動を可能な限り正確に推定できる方法および装置を提供することである。
【0009】
上記および他の目的は、本発明により請求項1に記載の方法によって解決される。本発明による方法は、制御回路が電動機の回転数を追従制御する(Nachfuehrung)ように形成されることにより、制御回路が電動機のための調整トルクTset_UUTと、負荷で測定された出力トルクTshaftと、電動機の既知の質量慣性モーメントJとから、負荷と接続された電動機のトルク脈動TTRを推定する。制御回路の制御部において、電動機の理想回転数ωidealが決定され、電動機で測定された実回転数ωUUTのこの理想回転数ωidealが、制御器の出力における調整量として現在トルク脈動TTRが現れるように制御回路の制御器によって追従制御される。その場合、調整量を外部へ導き、取り出すことができる。
【0010】
制御器は、特にPI制御器として形成されていてもよい。本発明による方法は、永久磁石同期機のトルク脈動を推定するために用いることができる。この方法は、有益にも試験台のみならず、直接車両において用いることができる。負荷は、制御可能な負荷であり得る。方法は、電動機によって駆動される車両の作動中にも用いることができ、その限りで測定量である回転数および軸トルクは既知である。それによってトルク脈動の推定をリアルタイムで行うことができ、複雑な後処理ステップの必要がないのでこれは有益である。さらに、測定されたモータ回転数を微分する必要がない。
【0011】
本発明は、軸を介して負荷と接続された電動機のトルク脈動TTRを推定する装置にも及ぶ。本発明による装置は、電動機の実回転数ωUUTを測定するためのセンサと,負荷の出力トルクTshaftを測定するためのセンサとを備えている。
【0012】
装置は、さらに制御部と制御器とを有する、電動機の回転数を追従制御するための制御回路を備えている。制御部において、電動機の調整トルクTset_UUTと、駆動トルクTshaftと、電動機の質量慣性モーメントJとから電動機の理想回転数ωidealが決定される。制御器は、トルク脈動TTRが制御器の調整量として生成されるように実回転数ωUUTの理想回転数ωidealを追従制御するように形成されている。その場合、この調整量を外部へ導き、取り出すことができる。
【0013】
本発明によれば、装置は電動機用の試験台の一部であってもよい。本発明によれば、電動機は、永久磁石同期機、非同期機、またはリラクタンスモータであってもよい。負荷は、制御可能な負荷であり得る。装置は車両の駆動装置の一部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明による他の特徴は、特許請求の範囲、実施例の説明、および図面から明らかになる。
以下、本発明を例示的実施例を用いて詳しく説明する。
図1図1は、電動機用の試験台の従来の構造の図である。
図2a図2aは、本発明の一実施形態によるシステムおよび方法の詳細図である。
図2b図2bは、本発明の一実施形態によるシステムおよび方法の詳細図である。
図2c図2cは、本発明の一実施形態によるシステムおよび方法の詳細図である。
【0015】
図1は、電動機用の試験台の従来の構造を示す。試験される電動機1(被試験物もしくはユニット・アンダー・テストUUT)は、軸2を介して制御可能な負荷3と接続されている。試験される電動機1に対して、例えば達成されるべき回転数または達成されるべきトルクの設定などの異なる負荷をかけた状態が負荷3の(この図に図示されない)制御ユニット4により予め設定される。このような試験台は、通常、トランスミッション、ドライブトレイン、および他の駆動コンポーネントなしで使用される。
【0016】
この図において、Tset_UUTは試験される電動機1の調整トルクを示し、nUUTは測定された回転数を示す。符号Tshaftは、軸2で測定された出力トルクを示す。負荷3に予め設定されたトルクは符号Tset_Dynoで示され、負荷3で測定された回転数は符号nDynoで示されている。
【0017】
被試験物で測定された回転数から、後処理ステップにおいてトルク脈動(リップルトルク)の算出を行うことができ、そのために、電動機1の前もって決定された質量慣性モーメントJUUTが考慮に入れられる:
【0018】
しかし作動進行中に測定される回転数nUUTの微分には問題があり、大抵の場合、信号のローパスフィルタ処理をする場合にのみ有意義に可能となる。
【0019】
図2aは、本発明による方法の一部として用いることができる理想トルク発生器4を示す。この理想トルク発生器4において、Tsetは調整トルク、Tshaftは測定された出力トルク、およびωidealは理想電動機の回転数である。符号Jで電動機の質量慣性モーメントが示される。数学的関係は以下の通りである:
【0020】
実回転数ωrealを算出するために、調整トルクおよび出力トルクに未知のトルク脈動(リップルトルク)TTRが加算される:
【0021】
したがって、理想回転数ωidealは、理想電動機の入力で調整トルクおよび出力トルクに加えてリップルトルクTTRが考慮される場合に実回転数ωrealと等しくなる。
【0022】
図2bは、それに対応して形成された制御回路5を示し、制御回路5において基準量としての実測回転数ωrealの制御量としての理想回転数ωidealが追従制御される。この目的で、この実施例ではPI制御器として形成されている制御器6が設けられている。制御器6には、理想回転数ωidealと実回転数ωrealとの差が制御偏差として供給される。
【0023】
制御器6は、トルク偏差を調整量として提供する。制御部において、調整量から現在調整トルクTsetおよび測定された出力トルクTshaftが減算され、その結果が質量慣性モーメントJで除算され、かつ時間導関数が求められ、それにより現在回転数が制御量として求められる。
【0024】
したがって、制御器6のアウトプット量は、現在トルク脈動、すなわちリップルトルクTTRに相当する。したがってこの制御回路5において、行われた回転数制御の副産物としてその都度最新のトルク脈動が自動的に求められる。
【0025】
図2cは、本発明の一実施形態を具体的な試験台を例にとって示す。この場合もまた、試験される電動機1は、軸2を介して制御可能な負荷3と接続されている。この図において、Tset_UUTは再び、試験される電動機1の調整トルクを示し、ωUUTは試験される電動機1の測定された回転数を示す。
【0026】
制御器6は、負荷3の回転数と予め設定された回転数ωdem_Loadとの差から負荷3の目標トルクTset_Loadを算出する。
【0027】
負荷3と試験される電動機1とは、所望のトルクTset_LoadとTset_UUTとを負荷3もしくは電動機1のための相応の制御信号に変換するドライバユニット7を介して制御される。符号Tshaftは再び、軸2で測定された出力トルクを示す。
【0028】
図2bとの関連で説明したように、Tset_UUT、Tshaftおよび測定された回転数ωUUTから、電動機の現在回転数の微分を必要とすることなしに、制御回路5において現在リップルトルクTTRが決定される。
【0029】
本発明は、電動機、負荷、または制御回路の具体的実施形態に限定されず、後続の特許請求の範囲の範囲内の方法および装置の全部を含む。
図1
図2a
図2b
図2c