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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】新規組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20230206BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230206BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/46
A61K8/42
A61Q11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020516589
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018075443
(87)【国際公開番号】W WO2019057809
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】1715400.6
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒッパルゴアンカー,カンチャン
(72)【発明者】
【氏名】プライム,コンスタンス アン マリー
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514992(JP,A)
【文献】特開平11-049654(JP,A)
【文献】Freshmint Flavoured Whitening Fluoride Toothpaste,ID 4519423,Mintel GNPD[online],2017年1月,[検索日2022.07.22],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】Whitening Bicarbonate Toothpaste,ID 3083513,Mintel GNPD[online],2015年4月,[検索日2022.07.22],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】Freshmint Fluoride Toothpaste,ID 2569447,Mintel GNPD[online],2014年7月,[検索日2022.07.22],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50%w/wの重炭酸ナトリウム、及び少なくとも0.5%w/wのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と組み合わせた少なくとも0.3%w/wのベタインからなる2%~4%w/wの界面活性剤系を含む歯磨剤組成物。
【請求項2】
ベタインがココアミドプロピルベタインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ベタインが0.3~2.0%w/wの量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
SLSが0.5~3.5%w/wの量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
重炭酸ナトリウムが組成物の55~90重量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ステビア甘味料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ステビアが0.025~0.4%w/wの量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
フッ化物源、減感剤、抗歯垢形成剤、抗歯石形成剤、白色剤、口臭剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗真菌剤、創傷治癒剤又はこれらの少なくとも2つの混合物をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な界面活性剤系を含む水性重炭酸ナトリウム歯磨剤組成物に関する。詳細には、本発明は、ベタイン及びラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤を含む界面活性剤の組み合わせとともに重炭酸ナトリウムを含む歯磨剤組成物に関する。このような歯磨剤組成物は、安定性、良好な泡量及び好ましい官能特性を示す。
【背景技術】
【0002】
歯磨製品における重炭酸ナトリウムの使用は、よく知られている。一例として、67%(w/w)の重炭酸ナトリウムを含有する市販の製品parodontaxが挙げられる。いかなる歯磨剤も、とりわけ重炭酸ナトリウム歯磨剤は、消費者の立場から受け入れられなければならず、例えば、歯をブラッシングするときの好ましい味、粘度及び十分な泡立ちを示さなければならない。いかなるこのような組成物もまた、安定でなければならず、液体からの分離を伴うゲルの収縮であるシネレシスが生じてはいけない。
【0003】
これらの官能特性は、例えば、少なくとも20wt%のアルカリ金属重炭酸塩、及び調査されている他の界面活性剤系と比較して有利な特性をもたらすと述べられたデシル硫酸ナトリウムを含む界面活性剤を含有する水性洗浄組成物を開示する特許文献1(Church & Dwight Co., Inc.)に記載のように、得ることが困難である可能性がある。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)は、重炭酸塩含有歯磨剤に配合された場合、不溶化され、ごく少量の泡しかもたらさないため、デシル硫酸ナトリウムが、最適な界面活性剤とされている。加えて、ラウリルサルコシン酸ナトリウム(SLOS)は多くの泡を生成するが、室温であっても、重炭酸塩含有歯磨剤に相分離を起こさせる。さらに、SLS及びSLOSの組み合わせは、多くの泡を生成し、かつ室温で安定な相を保つ歯磨剤組成物を生成することができなかった。商業的使用に認可された別の界面活性剤であるコカミドプロピルベタイン(CBT)は、重炭酸塩の存在下で多くの泡を生成すると述べられるが、重炭酸塩含有歯磨剤に相分離を起こさせ、SLS及びCBTの組み合わせは、多くの泡を生成し、かつ安定を保つ歯磨剤組成物を生成することができないことが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2006/052743号
【発明の概要】
【0005】
現在、少なくとも50%w/wの重炭酸ナトリウムを含む歯磨剤中のSLS及びベタインの界面活性剤の組み合わせは、良好な起泡性をもたらし、かつシネレシスを全く示さずに安定した相を保つことが見出された。このことは、SLS及びCBT(コカミドプロピルベタイン)の組み合わせが、安定な相であり、かつ多くの量の泡を生成する重炭酸塩歯磨剤をもたらさないという特許文献1中の教示からみて、驚くべきことである。
【0006】
本発明は、少なくとも50%w/wの重炭酸ナトリウム、及び少なくとも0.5%w/wのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と組み合わせた少なくとも0.3%w/wのベタインからなる2%~4%w/wの界面活性剤系を含む歯磨剤組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】練り歯磨きのプロトタイプ及び対照の泡試験プロファイルの図である。
図2】社内官能試験-練り歯磨きのプロトタイプ及び対照の泡レベル及び泡の粘度の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好適には、重炭酸ナトリウムは55%~90%w/w、好ましくは60%~80%w/w、より好ましくは65%~70%w/w、例えば66%~68%w/wの量で存在する。
【0009】
本発明による組成物は、界面活性剤系を含む。界面活性剤系は、2%~4%w/wの総量で、好ましくは2%~3%w/wの総量で存在する、ベタイン界面活性剤及びラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤からなる。
【0010】
構造的に、ベタイン化合物は、アニオン性官能基、例えばカルボン酸官能基、及びカチオン性官能基、例えばメチレン部分によって分離された第四級窒素官能基を含有する。それらには、n-アルキルベタイン、例えばセチルベタイン及びベヘニルベタイン、並びにn-アルキルアミド(n-alkylamido)ベタイン、例えばココアミドプロピルベタインが含まれる。一実施形態では、ベタインはココアミドプロピルベタインであり、Evonik Industries AGからTEGO Betain C60の商品名で市販されている。
【0011】
好適には、ベタインは、0.3%~2%w/w、例えば、0.4%~1.5%w/w、好ましくは0.5%~0.7%w/wの範囲の量で存在する。好適なベタインは、購入され47%の水溶液として処方され得るTEGO Betain C60であり、実施例中の括弧内に引用される数字は、47%溶液中のココアミドプロピルベタインの活性物質レベルである。
【0012】
好適には、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)界面活性剤は、0.5~3.5%w/wの量、好ましくは1.0%~3.0%w/wの量、より好ましくは1.5~2.5%w/wの量、最も好ましくは1.75%~2.25%w/wの量で存在する。
【0013】
上記の成分に加えて、本発明の組成物は、フッ化物源、減感剤、抗歯垢形成剤、抗歯石形成剤、白色剤、口臭剤、抗炎症剤、例えばグリチルリチン酸モノアンモニウム(MAG)、抗菌剤、例えばイソプロピルメチルフェノール(IPMP)、抗酸化剤、抗真菌剤、創傷治癒剤、例えばヒアルロン酸、又はこれらの少なくとも2つの混合物を含み得る。このような薬剤は、所望の治療効果をもたらすレベルで含まれ得る。
【0014】
本発明の組成物に使用する好適なフッ化物イオン源には、25~3500ppmのフッ化物イオン、好ましくは100~1500ppmを提供する量の、アルカリ金属フッ化物、例えばフッ化ナトリウム、アルカリ金属モノフルオロリン酸塩、例えばモノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、又はアミンフッ化物が含まれる。典型的なフッ化物源はフッ化ナトリウムであり、例えば組成物は、0.1~0.5重量%のフッ化ナトリウム、例えば、0.204重量%(927ppmのフッ化物イオンに相当)、0.2542重量%(1150ppmのフッ化物イオンに相当)又は0.315重量%(1426ppmのフッ化物イオンに相当)を含有し得る。
【0015】
このようなフッ化物イオンは、歯の再石灰化の促進を助け、う蝕、歯牙酸蝕症(すなわち酸摩耗)及び/又は歯牙摩耗と闘うために歯の硬組織の酸耐性を高めることができる。
【0016】
重炭酸ナトリウムは、組成物に研磨特性をもたらすが、さらなる研磨剤、例えば高い洗浄特性を有するシリカもまた存在し得る。高洗浄シリカ研磨剤の例には、Zeodent 124、Tixosil 63、Sorbosil AC39、Sorbosil AC43及びSorbosil AC35として市販されているものが挙げられ、組成物全体の例えば最大で20重量%までの適切な量、例えば5~10重量%、好ましくは1.5~7重量%、例えば2重量%で存在してよい。
【0017】
本発明の組成物に使用する好適な保湿剤には、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール、又はこれらの少なくとも2つの混合物が含まれ、保湿剤は、組成物全体の1.0重量%~20重量%の範囲、例えば5重量%~15重量%又は7重量%~10重量%で存在してよい。
【0018】
本発明の組成物は、さらなる配合剤、例えばこのような目的のための口腔衛生組成物分野において従来使用されるものから選択される、香味剤、甘味剤、乳白剤、又は着色剤及び防腐剤を含有する。
【0019】
好適な甘味剤には、サッカリンナトリウム及び/又は天然物、例えばステビア植物からの抽出物であり、Tate & Lyle(TASTEVA Stevia sweetenerとして知られる)若しくはCargill(TRUVIA stevia leaf extract RA80として知られる)から入手することが可能であるステビオール配糖体甘味料であるステビアが含まれる。
【0020】
好適には、本発明の組成物には、ステビオール配糖体甘味料が0.025~0.4%w/wの間、好ましくは0.05~0.2%w/wの間、より好ましくは0.075~0.125%w/wのレベルで含まれる。
【0021】
本発明の組成物は、成分を、歯磨製品を調製するのに好都合で適切な任意の順番で、適切な相対量で混合することによって調製され得る。
【実施例
【0022】
[実施例1]-安定性試験
本試験の目的は、SLS及びTego Betainの組み合わせ又はAdinol及びTego Betainの組み合わせを含む製剤の間の製剤安定性プロファイルを特定することであった。
【0023】
調査する試料を2ヶ月間40℃/75RHの加速安定性条件に置き、製品の物理的安定性を調査するために物理的外観を観察した。練り歯磨きの組成物は以下の通りであった。
【0024】
【表1】
【0025】
プロトタイプ1及び3は本発明の組成物であり、プロトタイプ2及び4は比較例である。
【0026】
結果:
【0027】
【表2】
【0028】
結論:
総界面活性剤レベルが2.4及び2.53%w/wのSLS/Tego製剤は2ヶ月間安定であったが、対応するAD/Tego製剤は安定ではなく、シネレシスを示した。
【0029】
[実験例2]-泡試験
SLSを単独で含む製剤(プロトタイプ5)、Tego Betainを単独で含む製剤(プロトタイプ7)及びTego BetainとともにSLSを含む製剤(プロトタイプ6及び8)の泡量を調査した。すべてのプロトタイプがステビアを含有していた。対照製剤は2.553%のTego Betain (1.2%の活性物質)を含む市販品のparodontax Ultra Cleanであり、ステビアを含有しない。
【0030】
試験
泡特性をSITA Foam Testing R2000を用いて評価した。試料を、ペーストと水との比1:9で調製した。すなわち100mgの試料ペーストを900mlの水に懸濁してスラリー試料を形成し、これを90分間(750rpm)撹拌した。試料を三重に分析し、60分間の間に31回の測定を行った。
【0031】
下記の量のSLS、Tego Betain及びTASTEVA Stevia sweetenerを調査した。結果を以下の図1のようにグラフ表示で示す。
【0032】
【表3】
【0033】
結果
以下の図1におけるインビトロの結果から、プロトタイプ6(本発明のSLS/Tego Betain製剤)は、プロトタイプ5(SLS単独)に似た泡レベルを有していることがわかる。
【0034】
結論
プロトタイプ7(Tego Betainのみの製剤)の起泡性は、ステビアなしのTego Betain対照と比較した場合、ステビア甘味料の添加によってわずかに増強した。プロトタイプ6及び8(本発明のSLS/Tego Betain製剤)もまたステビアを含み、良好な起泡レベルを示し、特にTego Betain界面活性剤とともに2.0%w/wのレベルで存在するSLSを有するプロトタイプ6が、良好な起泡レベルを示した。
【0035】
[実施例3]-さらなる泡試験
プロトタイプ5、プロトタイプ6及びプロトタイプ7のさらなる泡レベル及び泡の粘度の試験を、対照製剤(上記の)とともに調査した。
【0036】
試験
パネリストは、ブラシの上に出された約1.5gの練り歯磨きを受け取り、次いで歯ブラシを水に浸した。彼らは、飲み込むことなく測定された1分間歯を磨き、残留物を吐き出した。
【0037】
パネリストは、吐き出した直後に規定の官能特性を評価し、次いで一回30mlの水を転がしてすすぎ、再度吐き出した。泡レベル及び泡の粘度を評価し、それぞれ三重に行った。
【0038】
結果
インビボの結果から、プロトタイプ6(SLS/Tego Betaineの組み合わせ)は、プロトタイプ5(SLS単独)及びプロトタイプ7(Tego Betaine単独)及び対照のいずれよりも良好な泡の粘度を示したが、泡レベルに関しては対照と同等であることがわかる。対照は、プロトタイプ7製剤よりも極めて良好な泡レベル及び泡の粘度を示した。
【0039】
結果はまた以下の図2のようにグラフ表示でも示す。泡レベルは各試料の第1の列に示し、泡の粘度は第2の列に示す。
【0040】
結論
練り歯磨き製剤中の洗浄剤系として、プロトタイプ6(SLS/Tego Betaineの組み合わせ)の選択には、プロトタイプ7製剤(Tego Betaine単独)、プロトタイプ5製剤(SLS単独)又は対照製剤と対比して、官能性の利点がある。消費者は、ブラッシングの間に、より多くの泡及びより粘度がある質感に気付くであろう。
【0041】
[実施例4]-本発明のさらなる製剤
【0042】
【表4】
図1
図2