(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】切除縁を術中に評価するための画像化方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
G01N21/64 B
(21)【出願番号】P 2020523716
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 US2018058806
(87)【国際公開番号】W WO2019089998
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-27
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】セント.ジョン,マイエ
(72)【発明者】
【氏名】サディック,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】グランドフェスト,ウォレン
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258746(JP,A)
【文献】特開2015-128427(JP,A)
【文献】特表2015-508905(JP,A)
【文献】特表2005-504561(JP,A)
【文献】特開2010-233843(JP,A)
【文献】米国特許第05467767(US,A)
【文献】TAJUDEEN MD et al.,Dynamic optical contrast imaging as a novel modality for rapidly distinguishing head and neck squamous cell carcinoma from surrounding normal tissue,Cancer,2016年10月20日,Vol.123/Iss.5,PP.879-886
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的標的内部の境界を検出するための装置であって、
(a)プロセッサと、
(b)前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、
(c)前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
(i)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起するステップと、
(ii)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の
視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた較正画像を捕捉するステップであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光値を含むステップと、
(iii)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の
視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた減衰画像を捕捉するステップであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光値を含
み、前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、ステップと、
(iv)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成
し、前記相対寿命マップは、前記相対寿命マップ内部の前記ピクセルアレイにわたる正規化された蛍光寿命強度の擬似カラーマップを含む、ステップと、
(v)前記相対寿命マップの値を用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別するステップと、を含むステップを実行する、装置。
【請求項2】
境界を識別することは、異なる集合体タイプまたは代謝プロファイルの細胞間の遷移を識別することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
境界を識別することは、前癌細胞と良性細胞との間の遷移を識別することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
境界を識別することは、癌性細胞と非癌性細胞との間の遷移を識別することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
前記解剖学的標的の
RGB画像を生成するステップと、
前記
RGB画像を、前記解剖学的標的の相対寿命マップと同時に表示するステップとを含むステップを実行する、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
解剖学的標的内部の境界を検出するための装置であって、
(a)プロセッサと、
(b)前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、
(c)前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
(i)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起するステップと、
(ii)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた較正画像を捕捉するステップであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光値を含むステップと、
(iii)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた減衰画像を捕捉するステップであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光値を含み、前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、ステップと、
(iv)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成するステップと、
(v)前記相対寿命マップの値を用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別するステップと、を含むステップを実行し、
各画像の捕捉を連続する画像捕捉内の赤、青および緑の波長のみに制限して前記解剖学的標的の別個の画像
を捕捉することでRGB画像が生成され、次いで、別個の赤、青および緑の画像捕捉を組み合わせ
ることでRGB画像を形成する
、装置。
【請求項7】
前記相対寿命マップは、前記FOVの蛍光色素減衰時間総計に比例するピクセル値を含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
前記FOVは、前記解剖学的標的の巨視的FOVを含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項9】
前記励起パルスは、約30nsのパルス持続時間を含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項10】
さらに、
(d)撮像レンズと、
(e)前記レンズの前面に配置されるLEDアレイであって、
(f)前記LEDアレイは、解剖学的標的を前記光励起パルスで指定された持続時間にわたって照明するように構成され、前記LEDアレイは、前記解剖学的標的の照明を前記撮像レンズのFOVにわたって集束しかつ増幅させる、LEDアレイと、
(g)前記撮像レンズへ連結される検出器であって、蛍光発光の強度データを捕捉するように構成される検出器とを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記LEDアレイにおける各LEDは、前記光励起パルスを前記FOVにわたって集束させる非球面レンズを備える、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
さらに、
(h)前記LEDアレイへ連結されるダイオードドライバと、
(i)前記ダイオードドライバおよびプロセッサへ連結されるパルス発生器と、を備え、
(j)前記ダイオードドライバ、パルス発生器およびLEDアレイは、前記LEDアレイの各LEDがノンシーケンシャル光線追跡を介して前記FOVを照明するように構成されるべく連結される、請求項
10に記載の装置。
【請求項13】
解剖学的標的内部の境界を検出するためのシステムであって、
(a)撮像レンズと、
(b)前記撮像レンズに、または前記撮像レンズの近くに配置されるLEDアレイと、
(c)前記撮像レンズへ連結される検出器であって、前記解剖学的標的から蛍光発光の強度データを捕捉するように構成される検出器と、
(d)前記検出器へ連結されるプロセッサと、
(e)前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、
(f)前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
(i)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起するように、前記LEDアレイを動作させるステップと、
(ii)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の
視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた較正画像を捕捉するステップであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光値を含むステップと、
(iii)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の
視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた減衰画像を捕捉するステップであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光値を含
み、前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、ステップと、
(iv)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成
し、前記相対寿命マップは、前記相対寿命マップ内部の前記ピクセルアレイにわたる正規化された蛍光寿命強度の擬似カラーマップを含む、ステップと、
(v)前記相対寿命マップの値を用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別するステップと、を含むステップを実行する、システム。
【請求項14】
境界を識別することは、異なる集合体タイプまたは代謝プロファイルの細胞間の遷移を識別することを含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
境界を識別することは、前癌細胞と良性細胞との間の遷移を識別することを含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項16】
境界を識別することは、癌性細胞と非癌性細胞との間の遷移を識別することを含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項17】
前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
前記解剖学的標的の
RGB画像を生成するステップと、
前記
RGB画像を、前記解剖学的標的の相対寿命マップと同時に表示するステップとを含むステップを実行し、
前記
RGB画像および相対寿命マップは、同じ検出器を用いて捕捉される、請求項
13に記載のシステム。
【請求項18】
解剖学的標的内部の境界を検出するためのシステムであって、
(a)撮像レンズと、
(b)前記撮像レンズに、または前記撮像レンズの近くに配置されるLEDアレイと、
(c)前記撮像レンズへ連結される検出器であって、前記解剖学的標的から蛍光発光の強度データを捕捉するように構成される検出器と、
(d)前記検出器へ連結されるプロセッサと、
(e)前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、
(f)前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
(i)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起するように、前記LEDアレイを動作させるステップと、
(ii)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた較正画像を捕捉するステップであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光値を含むステップと、
(iii)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた減衰画像を捕捉するステップであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光値を含み、前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、ステップと、
(iv)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成するステップと、
(v)前記相対寿命マップの値を用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別するステップと、
前記解剖学的標的のRGB画像を生成するステップと、
前記RGB画像を、前記解剖学的標的の相対寿命マップと同時に表示するステップと、を含むステップを実行し、
前記RGB画像および相対寿命マップは、同じ検出器を用いて捕捉され、
前記
RGB画像は、前記検出器上で各画像の捕捉を連続する画像捕捉内の赤、青および緑の波長のみに制限して前記解剖学的標的の別個の画像を捕捉し、次いで、別個の赤、青および緑の画像捕捉を組み合わせ
ることにより生成される
、システム。
【請求項19】
前記相対寿命マップは、前記FOVの蛍光色素減衰時間総計に比例するピクセル値を含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項20】
前記FOVは、前記解剖学的標的の巨視的FOVを含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項21】
前記励起パルスは、約30nsのパルス持続時間を含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項22】
前記LEDアレイは、解剖学的標的を前記光励起パルスで指定された持続時間にわたって照明するように前記撮像レンズを取り囲む周方向アレイを備え、前記LEDアレイは、前記解剖学的標的の照明を前記撮像レンズのFOVにわたって集束しかつ増幅させる、請求項
13に記載のシステム。
【請求項23】
前記LEDアレイにおける各LEDは、前記光励起パルスを前記FOVにわたって集束させる非球面レンズを備える、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
さらに、
(h)前記LEDアレイへ連結されるダイオードドライバと、
(i)前記ダイオードドライバおよびプロセッサへ連結されるパルス発生器と、を備え、
(j)前記ダイオードドライバ、パルス発生器およびLEDアレイは、前記LEDアレイの各LEDがノンシーケンシャル光線追跡を介して前記FOVを照明するように構成されるべく連結される、請求項
22に記載のシステム。
【請求項25】
解剖学的標的内部の境界を検出するための方法であって、
(a)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起することと、
(b)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の
視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた較正画像を捕捉することであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光寿命値を含むことと、
(
c)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の
視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備えた減衰画像を捕捉することであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光寿命値を含
み、前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、ことと、
(
d)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成
し、前記相対寿命マップは、前記相対寿命マップ内部の前記ピクセルアレイにわたる正規化された蛍光寿命強度の擬似カラーマップを含む、ことと、
(
e)前記相対寿命マップを用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別すること、を含み、
(
f)前記方法は、非一時的媒体に記憶される命令を実行するプロセッサによって実行される、方法。
【請求項26】
境界を識別することは、異なる集合体タイプまたは代謝プロファイルの細胞間の遷移を識別することを含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
境界を識別することは、前癌細胞と良性細胞との間の遷移を識別することを含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
境界を識別することは、癌性細胞と非癌性細胞との間の遷移を識別することを含む、請求項
25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年11月1日に提出された米国暫定特許出願第62/580,383号明細書に対する出願の優先権を主張し、かつこれに対する出願の利益を主張するものであり、該出願は、参照によりその全体が開示に含まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず
【0003】
著作権保護の対象となるマテリアルの告知
本特許文書に記載されるマテリアルの一部には、米国および他の国の著作権法に基づく著作権保護の対象となるものがある。著作権所有者は、米国特許商標庁が公開していて一般に入手可能なファイルまたは記録を複製する如何なる者にも異議を唱えるものではないが、これ以外については、如何なるものであっても全ての著作権を留保する。著作権所有者は、本記述により、特許規則1.14に基づくその権利を無制限に含む、この特許文書を秘密に保持する権利を放棄するものではない。
【技術分野】
【0004】
1.技術分野
【0005】
本開示の技術は、概して、外科手術用の画像化に関し、より具体的には、切除縁の術中評価に関する。
【背景技術】
【0006】
2.背景の説明
【0007】
術中に腫瘍境界をリアルタイムでマッピングする方法については、未だ満たされていないニーズが存在する。外科医は、切除過多/不足を最小限に抑えるために、腫瘍境界を術中に正確に決定しなければならない。これに関して、多く生じる結果が以下である:(a)切除不足(断端陽性)、これにより、疾患が再発するリスクが増大する、(b)切除過多(過度の断端陰性)、これにより、患者の生活の質が大幅に低下する可能性がある(たとえば、可動性、発語、他の低下、他)。
【0008】
現時点では、臨床医の指先(すなわち、触診)が術中マージン評価のゴールドスタンダードであるが、これは、個々人の感触による主観的なものである。他の既存方法としては、(a)概して人員チームを要する、時間のかかる凍結切片法、および(b)感度およびコントラストに欠ける、従来の超音波、CTまたはMRI、がある。
【0009】
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の場合、腫瘍の67%しか十分に摘出されず、マージンが陽性の場合、局所再発率は、80%である。この問題は、外科的切除が行われる全ての癌に見られる。
【0010】
他の組織タイプの同定も、問題となる可能性がある。たとえば、副甲状腺は、位置が可変的でありかつ外形が不明瞭であって、特に隣接する脂肪組織またはリンパ組織から区別する場合、その術中での識別を困難にする可能性がある。副甲状腺機能低下および反回神経損傷などの合併症は、概して限定的であるが、再置換術および包括的診査は、術後合併症を増やす可能性がある。術前画像研究は利用可能であるが、副甲状腺組織の位置を生体内で効率的に特定するリアルタイムの画像化方法は、相変わらず理解しにくい。
【発明の概要】
【0011】
本開示の一態様は、異なる生理学的プロセスまたは異なる組織を有する様々な細胞グループ間の切除縁、たとえば、前癌性、前悪性、癌性のいずれか(たとえば、口腔および頭頸部扁平上皮癌(OSCC))と、非癌性または良性(たとえば、炎症性)の組織または細胞グループとの間のマージン、但しこれに限定されない、を術中評価するための画像化システムおよび画像化方法である。本画像化システムおよび方法は、本明細書において時間分解自家蛍光と称する、短い励起パルスで試料をポンピングして、コントラストを生じる蛍光の寿命(明色から暗色へ減衰するまでの発光強度)を測定する技法を用いる。測定された寿命に対応して、擬似カラーマップまたは類似の説明的ツールが生成され得る。組織自家蛍光の場合、自然発生的な蛍光色素を用いてコントラストが生成される(たとえば、ブラックライト・イメージング)。発光波長の情報。
【0012】
本明細書で説明する技術のさらなる態様は、以下の明細書部分において明らかとなるであろう。以下の詳細な説明は、本技術の好ましい実施形態を十分に開示するためのものであって、限定を目的とするものではない。
【0013】
本明細書に記述する技術は、単に例示を目的とする以下の図面を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】正規化された強度の経時的な生の値を示すプロットである。
【
図1D】
図1Cのマップ内の1つのピクセルアレイにわたる正規化された強度を示す。
【
図2】本技術による例示的なDOCIシステムの様々なコンポーネントを示す略ブロック図である。
【
図3】
図2のシステムのカメラ、レンズ、およびLEDアレイを示す斜視図である。
【
図4】本明細書本文によるUVダイオードを示す断面図である。
【
図5】本明細書本文記載のシステムを用いて試料を画像化するためのアルゴリズム的方法を示すフロー図である。
【
図6】LEDアレイおよびノンシーケンシャル光線追跡を介する対応する照明分散の一実施形態を示す。
【
図7】本明細書本文記載のシステムによる、例示的なLEDアレイからの標的照射の例示的なプロットを示す。
【
図8A】照明パルスからのシミュレートされたインパルス応答のプロットである。
【
図8B】シミュレートされた蛍光色素分子発光のプロットである。
【
図8C】ノイズおよびオフセットが導入されている、検出される発光のシミュレーションを示すプロットである。
【
図8D】(暗電流に起因するオフセットΔによって較正された)較正および減衰画像およびその値の比を減衰画像のゲート幅の関数として示すシミュレーションプロットである。
【
図9A】
図9Bの頭皮組織試料画像に対応する例示的な出力蛍光を示す。
【
図11】腫瘍、筋肉、脂肪およびコラーゲンの計算された相対寿命を波長の関数として示すプロットであり、各組織タイプ間の明確な違いを立証している。
【
図12】筋肉、コラーゲンおよび脂肪の様々な波長における統計的有意性を示すプロットである。
【
図14】
図13における領域の一部分を示す体外H&E画像である。
【
図15A】
図13の舌組織の再構成されたRGBクローズアップ画像である。
【
図15B】
図15Aの再構成画像の視野の407nmにおける生体内DOCI画像を示す。
【
図15C】
図15Aの再構成画像の視野の434nmにおける生体内DOCI画像を示す。
【
図15D】
図15Aの再構成画像の視野の465nmにおける生体内DOCI画像を示す。
【
図15E】
図15Aの再構成画像の視野の494nmにおける生体内DOCI画像を示す。
【
図16B】
図16Aの画像と同じ視野を有する、407nmにおける体外画像を示す。
【
図16C】
図16Aの画像と同じ視野を有する、434nmにおける体外画像を示す。
【
図16D】
図16Aの画像と同じ視野を有する、465nmにおける体外画像を示す。
【
図16E】
図16Aの画像と同じ視野を有する、494nmにおける体外画像を示す。
【
図18A】唇に前癌細胞生理を有する被検者の口の画像である。
【
図18B】唇が炎症している第2の被検者の口の画像である(良性の細胞生理)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書本文に記載のシステムおよび方法は、コントラストを生成するために使用される、異なる生理学的プロセスを有する細胞グループ間の蛍光色素寿命の自然発生的差異を実装し、かつ技術的要件を緩和するために一意のアルゴリズムを適用する。組織自家蛍光の場合、自然発生的な蛍光色素を用いてコントラストが生成される(たとえば、ブラックライト・イメージング)。ある実施形態では、標的が短いパルスの光で照明され、明色から暗色への減衰に伴う発光の強度が測定される。あるエリアがどのくらいの時間にわたって「輝く」かは、どのタイプの組織が照明されたかの決定因子である。たとえば、癌組織は、概して速い減衰に関連づけられ、非癌組織は、遅い減衰に関連づけられる。
【0016】
本明細書に開示するシステムおよび方法は、異なる生理学的プロセスまたは異なる組織を有する細胞グループ間のマージン、たとえば、前癌性、前悪性、癌性のいずれか(たとえば、口腔および頭頸部扁平上皮癌(OSCC))と、非癌性または良性(たとえば、炎症性)の組織または細胞グループとの間のマージン、但しこれに限定されない、を検出するように構成される。
【0017】
A.システムおよび方法
【0018】
図1A~
図1Dは、本技術による、時間分解自家蛍光を実行するための例示的なプロセスを示す。寿命減衰曲線を生成するために、蛍光を時間の関数として測定する。蛍光は、典型的には、励起パルスの後、ピコ秒~ナノ秒の期間にわたって減衰する。画像内の各点における蛍光の減衰速度(すなわち、「寿命」)を、蛍光「寿命」値の分布としてプロットする。蛍光色素の存在下では、有限の励起状態が存在することに起因して、減衰曲線の勾配がさほど急でない。したがって、より寿命の長い蛍光色素は、より大きい勾配によって特徴づけられる。蛍光色素固有の寿命に基づけば、異なる組織(たとえば、正常組織と癌組織)間の蛍光を区別することができる。
図1Aは、見ての通り、最初に入手された生の強度値の例示的なプロットを示す。
図1Bは、寿命測定値の例示的なプロットを示す。よって、
図1Cに示すような寿命マップが生成される。
図1Dは、
図1Cのマップ内の1つのピクセルアレイにわたる正規化された強度を示す。標準的な蛍光に比較すると、寿命蛍光は、クラッタに対するロバスト性の向上、最大のコントラスト生成を有し、よって、生体内画像化に最適である。
【0019】
図2は、本技術による、例示的な動的光学コントラストイメージング(DOCI)システム10の様々なコンポーネントを示す略ブロック図である。ある好ましい実施形態において、DOCIシステム10は、撮像レンズ24と、レンズ24の前へ配置されるUVダイオード(LED)28のアレイ26とを備える。UVダイオード28のアレイ26は、パルス発生器12およびダイオードドライバ14により生成される信号を介して試料30を照明するように構成される。パルス発生器12は、遅延線16を介してゲートカメラ20へも連結される。カメラ20は、好ましくは、冷却iCCD18と、iCCD18とレンズ24との間に配置されるUVレーザ・ライン・フィルタ22とを含む(フィルタ22は、光路内のどこに配置されてもよい)。LEDアレイ26およびカメラ20の出力は、プロセッサ42と、アプリケーションソフトウェア46と、プロセッサ42上で実行するためにアプリケーションソフトウェア46を記憶するメモリ44とを備えるコンピュータ40(または、同様のコンピューティングデバイス)へ連結される。アプリケーションソフトウェア46は、システムのコンポーネント(たとえば、パルス発生器12、LEDアレイ26、ダイオードドライバ14、他)を動作させかつiCCD18から取得されるデータを処理するための命令(たとえば、後に詳述しかつ
図5に示す方法50を実行するための命令)を含む。
【0020】
フィルタ22は、所与の時間に所定の波長または波長レンジのみが撮像されるべく、iCCD18が受け入れる光を制限するように構成されるフィルタホイールを備えてもよい。たとえば、第1の画像は、赤色光のみで得られてもよく、第2および第3の画像は、青色光および緑色光のみに制限される。これらの画像は、異なる表示パネルにおいて同時に表示されても、組み合わされて、たとえば、様々な波長において生成される1つまたは複数のDOCI画像の視覚化(たとえば、並列表示)に関連する基準画像として使用され得るRGB再構成画像が生成されてもよい(
図15A~
図15C参照)。ある実施形態において、フィルタ22は、407nm、434nm、465nm、494nm、520nm、542nm、572nm、605nm、632nmおよび676nmの発光帯域を中心とする光を制限する10個のフィルタを含むフィルタホイールを備える。上述の帯域は、単に例示を目的としたものであって、他の変形例も企図されることは認識される。
【0021】
ある実施形態において、UVダイオードアレイ26は、375nmの波長で照明する(これは、標的組織/デバイス仕様に基づいて変わり得る)。発光ダイオードの照明回路(ダイオードドライバ14)は、中心波長370nm、平均光出力約4.5μWおよびパルス幅30nsで動作する。この低い平均出力および長い波長は、撮像によりタンパク質、DNAおよび他の分子が悪影響を受けないことを保証する。
【0022】
図3は、カメラ20、レンズ24およびLEDアレイ26の分解斜視図を示す。ある好ましい実施形態において、LEDアレイ26は、個々のLED28がレンズ24を中心に周方向へ位置合わせされるように、レンズ24の前部と整合される。フレーム32は、個々のLED28を適正な位置合わせで保持し、かつアレイ26がレンズ24へ連結できるようにする。
【0023】
図4は、本明細書本文によるUVダイオード28を示す断面図である。各UVダイオード28は、UV LED36を収容するように構成されるハウジング30と、透過される光を視野全体またはその大部分にわたって集束的に分散させるべく成形するように構成される球面レンズ38とを備える。
【0024】
図5は、本明細書本文記載のシステム10を用いて試料30を画像化するためのアルゴリズム的方法50を示すフロー図である。方法50は、固有の画像フレーム正規化スキームを適用して、被探査組織の蛍光色素総計に比例するピクセル値を、取得データに複雑な数学的モデルを当てはめる必要なしに生成する。これにより、照明パルスの時間プロファイルの要件が緩和され、かつ(概してFLIMに必要である)ピコ秒パルスのレーザをナノ秒パルスの発光ダイオード(LED)に置換することができるようになる。照明は、UV光源26(たとえば、375nmにおける)を介して、短い(ナノ秒級の)立上りおよび立下り時間の長いパルス持続時間(約30ns)で実行され、減衰速度が異なる蛍光色素間にコントラストが生成される。このスキームにより、比較的短い時間フレーム(発光帯域当たり約10秒)内で、(微視的でなく)巨視的な視野(FOV)にわたる蛍光色素の寿命のスケーラブルなマッピングが可能であり、全てのピクセルが同時に捕捉される。したがって、これらの改善により、術中臨床使用に向けた重要なステップが提供される。
【0025】
図5で分かるように、2つのゲート、すなわち、1つの較正捕捉期間τ
cおよび1つの減衰画像捕捉期間τ
1、が捕捉される。頭頸部イメージングにおける関心対象たる大部分の組織成分の蛍光寿命は、1ns~10nsの範囲内である。したがって、初回照明後10nsを超えて捕捉される発光画像は、定常状態の組織自家蛍光を正確に表すものと見なすことができる。捕捉される蛍光発光を較正するために、較正捕捉期間τ
cにおけるUVパルス持続時間の中間で画像が捕捉され、画像58が生成される。以後、これを「FOV較正画像」と称する。続いて、照明パルス減衰(減衰画像捕捉期間τ
1)の開始時に、第2の画像56が捕捉される。以後、これを「FOV減衰画像」と称する。
【0026】
図5において、破線52は、オン/オフ段階中のLED強度を表し、実線54は、(個々のピクセル毎の)捕捉された蛍光強度を示す。次に、FOV減衰画像56をFOV較正画像58で除算することによってFOV減衰画像56が正規化され(較正画像によりピクセル単位で)、FOV相対寿命マップ60が生成される。ある好ましい実施形態では、画像は、多くの波長で捕捉されてもよい(たとえば、フィルタ22を介して、カメラ20が所定の波長を受信できるように幾つかの異なる波長レンジからの選択を可能にするフィルタホイールまたは類似のデバイスが備えられてもよい)。
【0027】
ある好ましい実施形態において、FOV減衰画像56および結果として得られるピクセル値は、照明される部位の蛍光色素減衰時間総計に比例する。これらのピクセル値は、相対的な組織寿命を表し、DOCIピクセル値と称される。DOCIは、定常状態の蛍光について言えば、寿命が長い蛍光色素の方が寿命の短い蛍光色素より多くの信号を生成するという事実に依存する。また、相対寿命マップ60をさらに処理しかつ生成するために、追加の画像(たとえば、背景画像またはこれに類似するもの)が取得され得ることも認識される。
【0028】
相対寿命マップ60は、擬似カラーマップとして、または線、形状、色による定量的な相対寿命ピクセル値のあらゆる視覚的表現、または手術者に対する聴覚刺激として表示されてもよい。
【0029】
図6は、各LED28からの励起光をFOVにわたって集束しかつ増幅させるための、個々のLED28からの照明ビーム62a~62fを介するノンシーケンシャル光線追跡を例示する、本発明のLEDアレイ26の一実施形態を示す。ある好ましい実施形態では、ノンシーケンシャル光線追跡のパターンが成形され、かつ照度分布および強度の調整が、LED電球36およびレンズ38(
図4)の選択に従って変えられる。
図7は、例示的なLEDアレイ26から結果的に生じる標的照射の例示的なプロット、および結果的な光線追跡照明パターンを示す。
【0030】
B.DOCI:動作原理
【0031】
この分析の目的に沿って、
図8Aの照明パルスの帯域制限をモデリングするために、照明パルスを単極低域通過フィルタのインパルス応答で畳み込まれた理想的な矩形パルスとしてモデリングする。単一の指数関数的時定数インパルス応答は、式1で記述される。
【数1】
ここで、τ
k=τ
d(照明時定数)、τ
1(蛍光色素1の時定数)、またはτ
2(蛍光色素2の時定数)である。
【0032】
この照明プロファイルは、式2で記述される。
【数2】
ここで、T
0は、パルス幅である。
【0033】
したがって、蛍光色素固有の寿命を式1でモデリングすることができる。UV励起蛍光色素の蛍光発光は、式3に従って、ダイオード照明と蛍光減衰時間との畳み込みとして記述される。
【数3】
【0034】
これらの畳み込み積分のグラフ表示を
図8Bに示す。ここで、個々のトレースは、各々蛍光色素1および2の蛍光発光である。
【0035】
次に、帯域制限された白色ガウス雑音およびオフセット(暗電流に起因する)が導入され、
図8Cは、その出力を示す。追加的な画像交絡因子として、関心対象である蛍光色素を抱くピクセルは、1)照明による影響、および2)検出される蛍光発光において任意に、蛍光色素1では90%降下、蛍光色素2では97.5%降下として選択されるブロッキングオブスキュラント、に曝される。これらの結果を、
図9Cの画像に示される出力に統合する。フルエンス吸収、無相関の白色測定雑音および暗電流のこの組合せは、蛍光色素2の受信強度のピークSNRを6dBまで低減させる。(
図8B~
図8Dの時間軸は、照明/発光減衰がt=0で生じるように定義される)。
【0036】
較正測定値は、照明パルスがゲート幅T
1で減衰し始める直前に捕捉される。
図8Cに示すこのプロセスは、式4で記述される。
【数4】
【0037】
減衰測定は、式5に記述する(
図8Cにも示す)、ゲート幅T
2を用いる類似の捕捉方法を行う。
【数5】
【0038】
結果としてのDOCIピクセル値は、式6:
【数6】
に従って計算されて、(暗電流に起因するオフセットΔにより較正された)較正画像と減衰画像との比となり、かつ減衰画像のゲート幅の関数としてのその値であって
図8Dに示され、ゲート長さが増えるにつれて2つの蛍光色素間の差信号計算値が増大し、双方の信号は、(理想的には)照明時間および蛍光色素減衰時間の和へと収束する。
【0039】
DOCIシステムおよび方法の1つの強みは、定常状態の蛍光に正規化された減衰時間曲線下面積を計算することにより、蛍光色素の寿命をコントラストに変換することにある。定常雑音の限界内で、このプロセスは、オブスキュラントの変動に対しロバストであって、低SNR下で著しいコントラストを生成することができる。
【0040】
このアプローチには、臨床画像化にとってこのアプローチを理想的なものにする多くの重要な利点がある。まず、先に論じたように、計算技法が単純であって、寿命は計算されず、よって、曲線の当てはめが不要である。第2に、緩和された寿命計算は、より長いパルス持続時間間隔および立ち下がり時間(>1ns)を可能にし、よって、高価なレーザの代わりに電子パルス駆動の安価なLEDが使用され得る。第3に、2つの蛍光色素の発光減衰間の信号差は、ゲート時間との間に正の相関性がある。言い替えれば、減衰画像中にゲートが開いている時間が長いほど、差信号は大きくなる。さらに、信号対雑音比(SNR)は、検出器の統合特性から生じる信号の増加および測定雑音の低減に起因して著しく増大する。これは、減衰時間を正確にサンプリングするためにゲートを短くする必要があるFLIMとは著しい対照である。どちらかと言えば、DOCIプロセスの場合、ゲート幅が増大されると、収集される光子の総数が増加し、一方で雑音変動が低減することから、コントラストが強化される。この技法の単純さおよび固有の感受性は、臨床画像化にとって実用的である大きい視野の迅速な画像化を可能にする。
【0041】
C.実験結果
【0042】
先に詳述したDOCIシステムおよび方法の効力を実証するために、新鮮組織による試験(患者は84名を超える)および190枚の明確な画像を介して幾つかの体外試験を実行した。
図9Aは、
図9Bの頭皮組織試料画像に対応する例示的な出力蛍光を示す。破線領域1は、腫瘍組織に対応し、破線領域2は、筋肉組織に対応する。
図10Aは、
図10Bの舌組織試料画像に対応する例示的な出力蛍光を示す。破線領域1は、腫瘍組織に対応し、破線領域2は、筋肉組織に対応する。
【0043】
図11は、腫瘍、筋肉、脂肪およびコラーゲンの計算された相対寿命を波長の関数として示すプロットである。結果は、DOCI寿命マッピングが、大部分の発光波長にわたって、調査対象である4種の組織(腫瘍、脂肪、筋肉およびコラーゲン)間に統計的に有意な差をもたらしたことを実証している。蛍光寿命の低減は、悪性組織において観察され、腫瘍の生化学的マーカに関して報告される短い寿命と整合される。
【0044】
図12は、筋肉、コラーゲンおよび脂肪の様々な波長における統計的有意性を示すプロットである。統計的有意性(P<.05)は、筋肉と腫瘍との間では、10種の発光波長のうちの10種で確立され、コラーゲンと腫瘍との間では、10の発光波長のうちの8種で、かつ脂肪と腫瘍との間では、10の波長のうちの2種で確立された。この研究は、OSCCと周囲の正常組織とを正確に区別するDOCIの実現可能性と、外科的切除の効力を最大化するその可能性とを実証する。
【0045】
OSCCの術中検出におけるDOCIの診断的有用性を評価するために、OSCCの外科的切除を受ける15の連続症例の生体内調査を実行した。生検で立証された扁平上皮細胞癌の新生物を、以下の頭頸部位および亜部位、すなわち、耳介、耳下腺、頭皮、口腔、中咽頭、下咽頭および頸部から得た。全ての標本を、切除前にDOCIシステム10(
図2)で画像化した。腫瘍焼灼に続き、標本を直ちに腫瘍および隣接する疑わしい病変の正常組織を含む複数の新鮮な試料に切片し、組織学的評価へと廻した。次に、DOCI画像の結果を知らされていない病理学者によって新生物部位を確定し、病理学的診断とは無関係に相対寿命値を計算した。
【0046】
図13~
図16Eは、舌OSCCのDOCIおよび可視画像を表示している。本開示のDOCIシステムおよび方法の好ましい一実施形態において、DOCI画像カラーマップは、青を最小相対減衰寿命に変換し、かつ赤を最大相対減衰寿命に変換する。DOCIピクセル値の減少は、蛍光信号の減衰がより速いことを示し、全体として寿命が短くなることを示している。
図15B~
図18Eに可変的に描かれているDOCI画像は、グレースケールで提供されているが、DOCI画像におけるより明るい様相が最小相対減衰寿命(青)に対応し、DOCI画像におけるより暗い様相が最大相対減衰寿命(赤)に対応することは、認識される。
【0047】
図13は、ある患者の口組織の生体内画像であり、
図14は、
図13における領域の一部分の体外H&E画像を示す。
図15Aは、
図13の舌組織の再構成されたRGBクローズアップ画像を示す。
図15B~
図15Eは、
図15Aの再構成画像の視野の、各々、407nm、434nm、465nmおよび494nmにおける生体内DOCI画像を示す。
図16Aは、
図15Aの再構成されたRGB画像のクローズアップ部分を示す。
図16B~
図16Eは、
図16Aの画像と同じ視野を有する、各々、407nm、434nm、465nmおよび494nmにおける
図16Aの舌画像部分の体外DOCI画像を示す。
【0048】
ある好ましい実施形態において、アプリケーションソフトウェア46(
図2)は、再構成されたRGB画像(
図15A)を、1つまたは複数の波長で1つまたは複数のDOCI画像(たとえば、
図15B~
図15E)と同時に(たとえば、隣り合わせで個々の表示用パネルとして)出力するように構成されてもよい。再構成RGB画像を取得するために、最初の(非DOCI)画像は、(たとえば、フィルタホイール22(
図2)上の適切なフィルタの選択を介して)赤色光のみで取得され、第2および第3の画像は、青色光および緑色光に限定されてもよい(iCCD18は、概して、(マルチビンRGB検出器とは対照的に)データ収集用に1つのビンを備える)。これらの画像は、同じ検出器18を介して取得される様々な波長における1つまたは複数のDOCI生成画像(
図15A~
図15C参照)の視覚化(たとえば、並列表示)に関連するリアルタイムの基準画像として使用され得る再構成されたRGB画像(
図15B)を生成するために、組み合わされても、融合されてもよい。
【0049】
図15B~
図15Eが示すように、生体内DOCI画像は、OSCC組織と周囲の正常組織との間の著しい対照を示した。OSCC部位は、周囲の正常組織の寿命と比較して相対的に寿命が短いことを特徴とする。
【0050】
励起された組織の切除後の体外画像においては、類似の相対寿命測定値が観察された(
図16Bおよび
図16C)。発光波長の全範囲にわたる体外OSCCと生体内OSCCとの間の強い正の相関関係は、DOCIおよびその関連の画像分析方法が、体内での臨床使用へと即変換できることを示唆している。DOCI画像は、生体内で上皮表面から捕捉されることから、同じ撮像面に沿って捕捉される体外標本のDOCI画像は、臨床的に関連する、肉眼的検査でははっきりしない組織構造/タイプの詳細を明らかにする。体外組織および対応する組織学を、画像化された平面および上皮表面に平行に切開し、癌性間質および隣接する間質の両方を捕捉した。DOCIで評価された腫瘍、脂肪、筋肉およびコラーゲンの部位間の相対寿命の差が報告された。
【0051】
DOCIシステムおよび方法を、副甲状腺局在のためのリアルタイムの生体内使用に関しても調査した。副甲状腺組織の体外DOCIデータは、この技術を、副甲状腺の位置に対応する術中カラーアトラスを描く、組織の「相対減衰マップ」を生成するための信頼できる生体内技術にする可能性を実証するものである。原発性副甲状腺機能亢進症を患う予測症例(n=81)について調べた。副甲状腺病変および周辺組織を採取し、DOCIを介して蛍光減衰画像を捕捉し、かつ個々の体外標本(n=127試料)を組織学的評価のために処理した。関心領域(ROI)を、病理組織学的分析により手書きで線引きして決定し、対応する高精細度可視画像に重ね合わせた。次に、可視画像を手で侵食し、コンパニオンDOCI画像に登録した。最後に、ROIを、脂肪(n=43)、副甲状腺(n=85)、胸腺(n=30)および甲状腺組織(n=45)から平均した。
【0052】
図17A~
図17Cは、体外試験からサンプリングされた副甲状腺組織の一例を示し、FOV全体にわたるDOCIコントラストを実証している。画像で観察されるように、副甲状腺組織は、使用した全てのフィルタで脂肪よりも低減された相対寿命を表示した。組織タイプと異なる生理学的プロセスを有する細胞グループ(たとえば、副甲状腺と甲状腺細胞グループ)とのコントラストは、全ての発光波長で明らかであった。DOCI副甲状腺画像における組織コントラストの根拠は、高密度の副甲状腺主細胞内部のホルモン特異的タンパク質、アミノ酸および細胞外カルシウム感受性受容体の存在にあるものと思われる。この体外DOCIデータは、副甲状腺の位置に対応する術中カラーアトラスを描く、副甲状腺組織の「相対減衰マップ」を生成するために、本明細書本文に記載する技術を高信頼の生体内技術に適用する効力を実証するものである。
【0053】
図18A~
図18Dを参照して、口腔癌の画像化による前癌または前悪性組織または細胞グループの生体内検出も調査した。DOCシステムおよび方法は、ある患者における光線口唇炎/紅板症(前癌病変)と、別の患者における唇の炎症(たとえば、日焼けまたは同様の良性状態によるもの)との区別化を提供することができた。唇上の前癌病変のDOCI(
図18C)を重ねた可視画像(
図18A)を表す画像を取得し、唇の炎症のDOCI(
図18D)を重ねた可視画像(
図18B)と比較した。
【0054】
本技術の実施形態は、本技術の実施形態による方法およびシステムのフローチャート図、および/またはコンピュータプログラム製品としても実施することができる手順、アルゴリズム、ステップ、演算、式、または他の計算記述を参照して本明細書で説明することができる。これに関して、ハードウェア、ファームウェア、および/またはコンピュータ可読プログラムコードで具現化された1つまたは複数のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段によって、フローチャートの各ブロックまたはステップ、およびフローチャート内のブロック(および/またはステップ)の組み合わせ、ならびに任意の手順、アルゴリズム、ステップ、演算、式、または計算記述を実施することができる。理解されるように、任意のそのようなコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータまたは特殊用途コンピュータ、あるいは機械を製造するための他のプログラム可能な処理装置を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実行することができ、そのようにして、コンピュータプロセッサまたは他のプログラム可能な処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令は、指定された機能を実施するための手段を作成する。
【0055】
したがって、フローチャートのブロック、ならびに本明細書に記載の手順、アルゴリズム、ステップ、演算、式、または計算記述は、指定された機能を実行するための手段の組み合わせ、指定された機能を実行するためのステップの組み合わせ、および指定された機能を実行するための、コンピュータ可読プログラムコード論理手段において具現化されるものなどのコンピュータプログラム命令をサポートする。また、フローチャートの各ブロック、ならびに本明細書に記載されている任意の手順、アルゴリズム、ステップ、演算、式、または計算記述、ならびにそれらの組み合わせは、特定の機能またはステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、または専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードの組み合わせによって実現することができることも理解されよう。
【0056】
さらに、コンピュータ可読プログラムコードで実施されるような、これらのコンピュータプログラム命令は、特定の方法で機能するようにコンピュータプロセッサまたは他のプログラム可能な処理装置に指示することができる1つまたは複数のコンピュータ可読メモリもしくはメモリデバイスに格納することもでき、そのようにして、コンピュータ可読メモリまたはメモリデバイスに格納された命令は、フローチャートのブロックに指定された機能を実装する命令手段を含む製品を製造する。コンピュータプログラム命令は、コンピュータプロセッサまたは他のプログラム可能処理装置によって実行されて、コンピュータプロセッサまたは他のプログラム可能処理装置上で一連の動作ステップを実行させて、コンピュータ実施プロセスを生成させることもでき、コンピュータプロセッサまたは他のプログラム可能な処理装置上で実行される命令がフローチャートのブロック、手順、アルゴリズム、ステップ、演算、式、または計算記述で指定された機能を実施するためのステップを提供する。
【0057】
本明細書で使用される「プログラミング」または「プログラム実行可能」という用語は、本明細書で説明されるような1つまたは複数の機能を実行するために1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実行できる1つまたは複数の命令を指すことがさらに理解されよう。命令は、ソフトウェアで、ファームウェアで、またはソフトウェアとファームウェアの組み合わせで具現化することができる。命令は、非一時的媒体内のデバイスに対してローカルに格納することができ、あるいはサーバ上などリモートに格納することができ、あるいは命令の全部または一部をローカルおよびリモートに格納することができる。リモートに保存された命令は、ユーザーの開始によって、あるいは1つまたは複数の要因に基づいて自動的にデバイスにダウンロード(プッシュ)される。
【0058】
本明細書で用いられるように、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)、およびコンピュータという用語は、命令を実行し、入出力インターフェースおよび/または周辺デバイスと通信することができるデバイスを意味するために同義語として使用され、そして、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、CPU、およびコンピュータという用語は、単一または複数のデバイス、単一のコアおよびマルチコアデバイス、ならびにそれらの変形を包含することを意図していることがさらに理解されよう。
【0059】
本明細書の説明から、本開示は以下を含むがこれに限定されない複数の実施形態を含むことが理解されよう。
【0060】
1.解剖学的標的内部の境界を検出するための装置であって、
(a)プロセッサと、
(b)前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、
(c)前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
(i)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起するステップと、
(ii)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の較正画像を捕捉するステップであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光値を含むステップと、
(iii)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の減衰画像を捕捉するステップであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光値を含むステップと、
(iv)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成するステップと、
(v)前記相対寿命マップの値を用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別するステップと、を含むステップを実行する、装置。
【0061】
2.境界を識別することは、異なる集合体タイプまたは代謝プロファイルの細胞間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0062】
3.境界を識別することは、前癌細胞と良性細胞との間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0063】
4.境界を識別することは、癌性細胞と非癌性細胞との間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0064】
5.前記較正画像および減衰画像は、前記解剖学的標的の視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備え、かつ、
前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0065】
6.前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
前記解剖学的標的の再構成されたRGB画像を生成するステップと、
前記再構成された画像を、前記解剖学的標的の相対寿命マップと同時に表示するステップとを含むステップを実行する、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0066】
7.前記再構成されたRGB画像は、各画像の捕捉を連続する画像捕捉内の赤、青および緑の波長のみに制限して前記解剖学的標的の別個の画像を捕捉し、次いで、別個の赤、青および緑の画像捕捉を組み合わせて前記再構成されたRGB画像を形成することにより生成される、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0067】
8.前記相対寿命マップは、前記相対寿命マップ内部の前記ピクセルアレイにわたる正規化された蛍光寿命強度の擬似カラーマップを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0068】
9.前記相対寿命マップは、前記FOVの蛍光色素減衰時間総計に比例するピクセル値を含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0069】
10.前記FOVは、前記解剖学的標的の巨視的FOVを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0070】
11.前記励起パルスは、約30nsのパルス持続時間を含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0071】
12.さらに、
(d)撮像レンズと、
(e)前記レンズの前面に配置されるLEDアレイであって、
(f)前記LEDアレイは、解剖学的標的を前記光励起パルスで指定された持続時間にわたって照明するように構成され、前記LEDアレイは、前記解剖学的標的の照明を前記撮像レンズのFOVにわたって集束しかつ増幅させる、LEDアレイと、
(g)前記撮像レンズへ連結される検出器であって、蛍光発光の強度データを捕捉するように構成される検出器とを備える、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0072】
13.前記LEDアレイにおける各LEDは、前記光励起パルスを前記FOVにわたって集束させる非球面レンズを備える、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0073】
14.さらに、
(h)前記LEDアレイへ連結されるダイオードドライバと、
(i)前記ダイオードドライバおよびプロセッサへ連結されるパルス発生器と、を備え、
(j)前記ダイオードドライバ、パルス発生器およびLEDアレイは、前記LEDアレイの各LEDがノンシーケンシャル光線追跡を介して前記FOVを照明するように構成されるべく連結される、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0074】
15.解剖学的標的内部の境界を検出するためのシステムであって、
(a)撮像レンズと、
(b)前記撮像レンズに、または前記撮像レンズの近くに配置されるLEDアレイと、
(c)前記撮像レンズへ連結される検出器であって、前記解剖学的標的から蛍光発光の強度データを捕捉するように構成される検出器と、
(d)前記検出器へ連結されるプロセッサと、
(e)前記プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリと、を備え、
(f)前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
(i)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起するように、前記LEDアレイを動作させるステップと、
(ii)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の較正画像を捕捉するステップであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光値を含むステップと、
(iii)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の減衰画像を捕捉するステップであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光値を含むステップと、
(iv)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成するステップと、
(v)前記相対寿命マップの値を用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別するステップと、を含むステップを実行する、システム。
【0075】
16.境界を識別することは、異なる集合体タイプまたは代謝プロファイルの細胞間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0076】
17.境界を識別することは、前癌細胞と良性細胞との間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0077】
18.境界を識別することは、癌性細胞と非癌性細胞との間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0078】
19.前記較正画像および減衰画像は、前記解剖学的標的の視野(FOV)にわたるピクセルアレイを備え、かつ、
前記ピクセルアレイ内のピクセルは、前記較正画像および前記減衰画像の両方について、前記FOVにわたり同時に捕捉される蛍光寿命値を含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0079】
20.前記命令は、前記プロセッサにより実行されると、
前記解剖学的標的の再構成されたRGB画像を生成するステップと、
前記再構成された画像を、前記解剖学的標的の相対寿命マップと同時に表示するステップとを含むステップを実行し、
前記再構成されたRGB画像および相対寿命マップは、同じ検出器を用いて捕捉される、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0080】
21.前記再構成されたRGB画像は、前記検出器上で各画像の捕捉を連続する画像捕捉内の赤、青および緑の波長のみに制限して前記解剖学的標的の別個の画像を捕捉し、次いで、別個の赤、青および緑の画像捕捉を組み合わせて前記再構成されたRGB画像を形成することにより生成される、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0081】
22.前記相対寿命マップは、前記相対寿命マップ内部の前記ピクセルアレイにわたる正規化された蛍光寿命強度の擬似カラーマップを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0082】
23.前記相対寿命マップは、前記FOVの蛍光色素減衰時間総計に比例するピクセル値を含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0083】
24.前記FOVは、前記解剖学的標的の巨視的FOVを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0084】
25.前記励起パルスは、約30nsのパルス持続時間を含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0085】
26.前記LEDアレイは、解剖学的標的を前記光励起パルスで指定された持続時間にわたって照明するように前記撮像レンズを取り囲む周方向アレイを備え、前記LEDアレイは、前記解剖学的標的の照明を前記撮像レンズのFOVにわたって集束しかつ増幅させる、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0086】
27.前記LEDアレイにおける各LEDは、前記光励起パルスを前記FOVにわたって集束させる非球面レンズを備える、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0087】
28.さらに、
(h)前記LEDアレイへ連結されるダイオードドライバと、
(i)前記ダイオードドライバおよびプロセッサへ連結されるパルス発生器と、を備え、
(j)前記ダイオードドライバ、パルス発生器およびLEDアレイは、前記LEDアレイの各LEDがノンシーケンシャル光線追跡を介して前記FOVを照明するように構成されるべく連結される、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0088】
29.解剖学的標的内部の境界を検出するための方法であって、
(a)前記解剖学的標的を光励起パルスで照明して、第1の組織および第2の組織に対応する蛍光色素を励起することと、
(b)前記励起パルスの間に前記解剖学的標的の較正画像を捕捉することであって、前記較正画像は、前記励起された蛍光色素の発光からの蛍光寿命値を含むことと、
(d)前記励起パルスに続く前記解剖学的標的の減衰画像を捕捉することであって、前記減衰画像は、前記発光の明色から暗色への減衰に伴う減衰蛍光寿命値を含むことと、
(e)前記減衰画像を前記較正画像で除算し、前記解剖学的標的の相対寿命マップを生成することと、
(f)前記相対寿命マップを用いて、第1の生理学的プロセスを有する第1の細胞グループと、第2の生理学的プロセスを有する第2の細胞グループとの境界を識別すること、を含み、
(g)前記方法は、非一時的媒体に記憶される命令を実行するプロセッサによって実行される、方法。
【0089】
30.境界を識別することは、異なる集合体タイプまたは代謝プロファイルの細胞間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0090】
31.境界を識別することは、前癌細胞と良性細胞との間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0091】
32.境界を識別することは、癌性細胞と非癌性細胞との間の遷移を識別することを含む、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0092】
33.解剖学的標的内の癌性細胞を検出するための装置であって、(a)プロセッサと、(b)プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的メモリとを備え、(c)前記命令は、プロセッサにより実行されると、(i)解剖学的標的を短パルス光で照明するステップと、(ii)発光の明色から暗色への減衰に伴う、解剖学的標的からの蛍光発光の強度を測定するステップと、(iii)解剖学的標的内部の一領域が癌性であるか非癌性であるかを、発光の蛍光減衰寿命の関数として決定するステップと、を含むステップを実行する、装置。
【0093】
34.前記命令は、プロセッサにより実行されると、発光の測定された減衰寿命に対応する擬似カラーマップを生成するステップを含むステップを実行する、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載のシステム、装置又は方法。
【0094】
35.プロセッサにより実行可能な命令を記憶する非一時的媒体であって、前記命令は、プロセッサにより実行されると、解剖学的標的を短パルス光で照明するステップと、発光の明色から暗色への減衰に伴う、解剖学的標的からの蛍光発光の強度を測定するステップと、解剖学的標的内部の一領域が癌性であるか非癌性であるかを、発光の蛍光減衰寿命の関数として決定するステップとを含むステップを実行する、非一時的媒体。
【0095】
36.解剖学的標的内の癌性細胞を検出するための方法であって、(a)解剖学的標的を短パルス光で照明することと、(b)発光の明色から暗色への減衰に伴う、解剖学的標的からの蛍光発光の強度を測定することと、(c)解剖学的標的内部の一領域が癌性であるか非癌性であるかを、発光の蛍光減衰寿命の関数として決定すること、を含み、(d)前記方法は、非一時的媒体に記憶される命令を実行するプロセッサにより実行される、方法。
【0096】
37.前記命令は、プロセッサにより実行されると、発光の測定された減衰寿命に対応する擬似カラーマップを生成するステップを含むステップを実行する、あらゆる前述した又は以降の実施の形態に記載の方法。
【0097】
本明細書で使用されるとき、単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことができる。単数形の対象物への言及は、明示的に述べられていない限り、「1つだけ」を意味することを意図しておらず、むしろ「1つまたは複数」を意味する。
【0098】
本明細書で使用されているように、「セット」という用語は、1つまたは複数の対象物の集合を指す。したがって、例えば、対象物のセットは単一の対象物または複数の対象物を含むことができる。
【0099】
本明細書で使用されているように、「実質的に」および「約」という用語は、小さな変動を記述し、説明するために使用されている。事象または状況と併せて使用される場合、その用語は、その事象または状況が厳密に発生する場合だけでなく、その事象または状況が緊密な近似で発生する場合も指すことができる。数値と共に使用される場合、その用語は、その数値の±10%以下、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下などの変動の範囲を指すことができる。例えば、「実質的に」整列されたとは、±10°以下、例えば±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、または±0.05°以下などの範囲の角度変動を指すことができる。
【0100】
さらに、量、比率、および他の数値は、本明細書では時には範囲の形式で提示することができる。そのような範囲の形式は便宜上および簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に特定された数値を含むように柔軟に理解されるべきであるが、しかし、あたかも各数値および部分範囲が明示的に特定されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も含む。例えば、約1から約200の範囲の比は、明示的に列挙された約1から約200の範囲を含むが、約2、約3、および約4などの個々の比、ならびに約10から約50、約20から約100などの部分範囲も含むと理解すべきである。
【0101】
本明細書の記載には多くの詳細が含まれるが、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではなく、現時点で好ましい実施形態のいくつかの例を提供したものにすぎない。したがって、本開示の範囲は、当業者に明らかになりうる他の実施形態をすべて包含することを認識されたい。
【0102】
当業者に知られている開示された実施形態の要素と構造的および機能的に等価のものはすべて、本明細書に参照により明確に援用されたものとされ、本特許請求の範囲に包含されるものとする。さらに、本開示にない要素、構成部品または方法ステップは、その要素、構成部品または方法ステップが特許請求の範囲に明確に記載されているか否かにかかわらず、公にされるためのものであることが意図される。本願の請求項の要素は、「~するための手段」という表現を用いて明確に要素を記載していない限り、「ミーンズ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきではない。本願の請求項の要素は、「~するためのステップ」という表現を用いて明確に要素を記載していない限り、「ステップ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきではない。