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特許7221296内視鏡の光学系において光学素子の中心を合せる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】内視鏡の光学系において光学素子の中心を合せる方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20230206BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20230206BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230206BHJP
【FI】
A61B1/00 731
G02B23/24 A
G02B7/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020550708
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019055535
(87)【国際公開番号】W WO2019179767
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】102018106468.3
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591228476
【氏名又は名称】オリンパス ビンテル ウント イーベーエー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ベッケルト エーリック
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0046143(US,A1)
【文献】特開2007-033556(JP,A)
【文献】特開2017-131384(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033775(WO,A1)
【文献】特開2003-117702(JP,A)
【文献】特開2002-103105(JP,A)
【文献】特開平08-011043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の光学系(10)に挿入する光学素子(20、20’)を準備する方法であって、
前記光学素子(20、20’)は光軸(22、22’)と、前記光軸(22、22’)に概ね平行な周面(26、26’)と、を有し、
前記方法は、
スピンドル(31)の搭載台(33)に前記光学素子(20、20’)を配置する工程であって、前記スピンドル(31)は、前記スピンドル(31)の回転軸(32)を中心に前記光学素子(20、20’)を回転させる、配置する工程と、
前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)が前記スピンドル(31)の前記回転軸(32)と一致するように、前記光学素子(20、20’)を前記スピンドル(31)上で位置合わせする工程と、
前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)から前記周面(26、26’)までの間隔が一定になるまで、前記光学素子(20、20’)の外周面領域(27)を除去する工程と、を含み、
前記外周面領域(27)の除去は、レーザー切除によって行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記外周面領域(27)の除去は、超短パルスレーザー(41)によって行うことを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記光学素子(20、20’)は光学的透過材料(28)から製造され、前記光学的透過材料(28)は前記外周面領域(27)の除去中に直接除去されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記スピンドル(31)上での前記光学素子(20、20’)の位置合わせは、少なくとも1つの衝撃装置(36)によって行われ、
前記衝撃装置(36)は、前記搭載台(33)に接続された位置合わせユニット(37)とともに、衝撃を介して前記スピンドル(31)の前記回転軸(32)に対する前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)の位置合わせを変化させることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記スピンドル(31)上での前記光学素子(20、20’)の位置合わせは、信号検出装置(38)の感光性素子(39)上の光信号(40)を検出することにより確認され、
前記光信号(40)は、光線が前記スピンドル(31)の前記回転軸(32)に沿って前記感光性素子(39)の方向へ前記光学素子(20、20’)を通過して伝搬することにより生成され、
前記スピンドル(31)を回転させたときに前記感光性素子(39)上の前記光信号(40)の位置が一定のままになるまで前記光学素子(20、20’)の位置合わせを変化させることを特徴とする、方法。
【請求項6】
内視鏡の光学系(10)において光学素子(20、20’)の中心を合せる方法であって、
前記光学系(10)は光軸(12)を有し、前記光学素子(20、20’)は光軸(22、22’)と、前記光軸(22、22’)に概ね平行な周面(26、26’)と、を有し、
前記方法は、
スピンドル(31)の搭載台(33)に前記光学素子(20、20’)を配置する工程であって、前記スピンドル(31)は、前記スピンドル(31)の回転軸(32)を中心に前記光学素子(20、20’)を回転させる、配置する工程と、
前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)が前記スピンドル(31)の前記回転軸(32)と一致するように、前記光学素子(20、20’)を前記スピンドル(31)上で位置合わせする工程と、
前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)から前記周面(26、26’)までの間隔が一定になるまで、前記光学素子の外周面領域(27)を除去する工程と、
前記光学素子(20、20’)を前記光学系(10)に挿入する工程であって、前記光学素子(20、20’)の前記周面(26、26’)は前記光学系(10)の光学フレーム(14)の内部表面(15)に当接し、前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)が前記光学系(10)の前記光軸(12)と一致する、挿入する工程と、を含み、
前記光学素子(20、20’)の前記外周面領域(27)の除去は、レーザー切除によって行うことを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記光学素子(20、20’)の前記外周面領域(27)の除去は、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法によって行うことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法であって、
複数の光学素子(20、20’)が前記光学系(10)に挿入され、
全ての前記光学素子(20、20’)の前記光軸(22、22’)が前記光学系(10)の前記光軸(12)と一致し、
全ての前記光学素子(20、20’)の前記周面(26、26’)が前記光学系(10)の前記光学フレーム(14)の前記内部表面(15)に当接することを特徴とする、方法。
【請求項9】
中心合わせ回転装置(30)であって、
内視鏡の光学素子(20、20’)のための搭載台(33)とともに回転軸(32)を中心に回転可能なスピンドル(31)であって、前記搭載台(33)は、前記回転軸(32)上に配置されている、スピンドルと、
前記搭載台(33)内の光学素子(20、20’)の光軸であって、前記スピンドルの回転軸と一致するように位置合わせされた光軸から前記光学素子の周面(26、26’)までの間隔が一定になるまで、前記光学素子の外周面領域を除去するよう構成された除去要素を有する除去装置(35)と、を備え、
前記除去要素は超短パルスレーザー(41)であることを特徴とする、中心合わせ回転装置。
【請求項10】
請求項9に記載の中心合わせ回転装置(30)であって、
前記搭載台(33)に接続された位置合わせユニット(37)とともに、衝撃を介して前記回転軸(32)に対して前記搭載台(33)の位置合わせを変化させるように構成された、少なくとも1つの衝撃装置(36)が備えられていることを特徴とする、中心合わせ回転装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の中心合わせ回転装置(30)であって、
感光性素子(39)を有する少なくとも1つの信号検出装置(38)が備えられ、
前記感光性素子(39)は、前記スピンドル(31)の前記回転軸(32)に沿って伝搬した光線の光信号(40)を前記信号検出装置(38)により検出できるように、配置されていることを特徴とする、中心合わせ回転装置。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の中心合わせ回転装置(30)であって、前記スピンドル(31)が静圧受軸(34)を有することを特徴とする、中心合わせ回転装置。
【請求項13】
内視鏡の光学系(10)に挿入する光学素子(20、20’)を有する内視鏡であって、
前記光学素子(20、20’)は光軸(22、22’)と、前記光軸(22、22’)に概ね平行な周面(26、26’)と、を有し、
前記光学素子(20、20’)は請求項1~5のいずれか1項に記載の方法で準備される、内視鏡。
【請求項14】
内視鏡の光学系(10)に挿入する光学素子(20、20’)を有する内視鏡であって、
前記光学素子(20、20’)は光軸(22、22’)と、前記光軸(22、22’)に概ね平行な周面(26、26’)と、を有し、
前記光学素子(20、20’)は請求項6~8のいずれか1項に記載の方法で中心が合わせられる、内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、内視鏡の光学系に挿入する光学素子を準備する方法、内視鏡の光学系において光学素子の中心を合せる方法に関する。本発明はまた、中心合わせ回転装置にも関する。
【0002】
内視鏡を使う際、例えば医師が良好な術野の手術を実行できるようにするためには、良い画質が必要である。ビデオ内視鏡においては、より解像度の高い画像センサを使う必要がある。このように、より高い解像度を用いるためには、レンズ等の光学素子だけでなく、内視鏡における光学素子相互の位置合わせも厳しい要件を満たす必要がある。すなわち、内視鏡の光学系の全ての光学素子の光軸が、光学系の光軸と可能な限り正確に合致することが必要である。光学素子の光軸が光学系の光軸から大幅にずれている場合は、内視鏡の画質が低下する。光学素子の光軸を光学系の光軸と一致させるために、光学素子は通常、研削法により処理される。この方法により直径公差約20μmの光学素子を提供することができる。同様に精密に製造された光学系の光学フレームにこれらの光学素子を挿入することにより、光学素子は共通の光軸に沿って整列する。
【0003】
しかしこのような研削法では、高解像度の画像センサを使う場合に必要とされる公差を達成できない。その代わり、これまでは、この場合には、光学素子をブラススリーブに入れ、特殊な中心合わせ回転旋盤で回転させる。このようにすると、直径公差をさらに小さくすることができる。
【0004】
光学素子をブラススリーブに入れることにより、光学素子の直径は約200μmから300μm増加する。これは、設計において、内視鏡の直径を大きくすることを必要とするだろう、あるいは、光学素子の直径を小さくすることを必要とするだろう。さらに、この工程により、スリーブの回転表面において、例えば欠け等の破損を招き得る。最後に、中心合わせ回転工程は時間のかかる作業であり、光学素子をブラススリーブに入れることにより追加費用が発生してしまう。
【0005】
本発明の目的は、内視鏡の光学系に挿入する光学素子を準備する改善された方法と、内視鏡の光学系において、光学素子の中心を合せる改善された方法と、改善された中心合わせ回転装置と、改善された内視鏡と、を提供することである。
【0006】
本目的は、内視鏡の光学系に挿入する光学素子であって、光軸と、光軸に概ね平行な周面と、を有する光学素子を準備する方法により達成される。本方法は、スピンドルの搭載台に光学素子を配置する工程であって、スピンドルは、スピンドルの回転軸を中心に光学素子を回転させる、配置する工程と、光学素子の光軸がスピンドルの回転軸と一致するように、光学素子をスピンドル上で位置合わせする工程と、光学素子の光軸から周面までの間隔が一定になるまで、光学素子の外周面領域を除去する工程と、を含み、本方法の改良点において、外周面領域の除去はレーザー切除、具体的には超短パルスレーザーによって行う。
【0007】
先行技術に係る中心合わせ回転方法に対して、通常用いられる旋削用工具が超短パルスレーザーに置き換えられている。この超短パルスレーザーは、有利にフェムト秒範囲のパルス継続時間を有する。このようなレーザーを用いることで、旋削用工具を用いた場合よりも除去される材料がより正確に除去される。旋削工程での欠けも回避される。切除工程が原子レベルで起こるため、凹凸がほとんどない表面が生じ得る。面取りも非常に正確で再現性があり、欠けを生じないで行われる。
【0008】
好ましくは、光学素子は光学的透過材料から製造され、光学的透過材料は外周面領域の除去中に直接除去される。旋削用工具を用いた中心合わせ及び回転工程は、欠けを発生させたり、場所を取るスリーブの使用を必要としたりするのに対して、レーザー切除を用いればその必要はない。
【0009】
好ましくは、光学素子はその全体を光学的透過材料、例えば光学ガラスで製造され、スリーブを省ける。これにより従来よりも大きい直径の光学素子を製造することができ、それにより、より多くの光が取り込まれ、この光学素子を用いた内視鏡の画質が向上する。また、光学素子をスリーブに嵌めることにより生じるコストを発生させない。それどころか、ブラススリーブに必要だったスペースが不要となるため、光量を同じにしたまま、光学ユニットの全体的な直径を減少させることができる。
【0010】
好適な実施形態において、スピンドル上での光学素子の位置合わせは、少なくとも1つの衝撃装置によって行う。衝撃装置は、搭載台に接続された位置合わせユニットとともに、衝撃を介してスピンドルの回転軸に対する光学素子の光軸の位置合わせを変化させる。
【0011】
位置合わせユニットはスピンドルの一部である。位置合わせユニットの第1部分は、スピンドルの回転軸に対して位置合わせが固定されるよう配置される。位置合わせユニットの第2部分は、位置合わせユニットの第1部分に取り付けられ、搭載台に直接接続されている。位置合わせユニットの第2部分の位置合わせは、搭載台に位置する1つの光学素子の光軸の位置合わせが、衝撃装置の衝撃により、位置合わせユニットの第2部分とともにスピンドルの回転軸に対し変化するように、スピンドルの回転軸に対して変化可能である。このように、光学素子の光軸は、スピンドルの回転軸に対して極めて正確に設定することができる。
【0012】
さらに好ましくは、スピンドル上での前記光学素子の位置合わせは、信号検出装置の感光性素子上の光信号を検出することにより確認される。光信号は、光線がスピンドルの回転軸に沿って感光性素子の方向へ伝搬することにより生成される。スピンドルを回転させたときに感光性素子上の光信号の位置が一定のままになるまで、光学素子の配置を変化させる。
【0013】
光学素子の光軸がスピンドルの回転軸から逸脱していると、スピンドルの回転軸に沿って伝搬した光線が、感光性素子上で回転運動を描く。この場合、検出された光信号の円運動が信号検出装置に記録される。しかしながら、光学素子の光軸がスピンドルの回転軸上に正確に位置していると、感光性素子上の光線の位置は一定のままとなる。このようにして、光学素子の光軸がスピンドルの回転軸と一致しているかを極めて精密に確認することができる。
【0014】
さらに、本目的は、内視鏡の光学系において光学素子の中心を合せる方法であって、光学系は、光軸と、光軸を有する光学素子と、光軸に概ね平行な周面と、を有する、方法によって達成される。本方法は、光学素子の光軸から周面までの間隔が一定になるまで、光学素子の外周面領域を除去する工程と、光学素子を光学系に挿入する工程であって、光学素子の周面は光学系の光学フレームの内部表面に当接し、光学素子の光軸が光学系の光軸と一致する、挿入する工程と、を含む。本方法は、光学素子の外周面領域の除去が、レーザー切除によって、具体的には上記に記載の内視鏡の光学系に挿入する光学素子を準備する方法によって行われる点で改良されている。
【0015】
内視鏡の光学系において光学素子の中心を合せる本方法によれば、光学素子をスリーブに嵌めることを必要とすることなく、光学素子を光学系の光学フレームへ挿入できる。光学フレームの内部表面は、概ね光学素子の直径に相当する直径を有する。外周面領域の除去後、光学素子の光軸から光学素子の周面までの間隔が一定になるため、光学素子を光学系の光学フレームへ挿入すると、光学素子の光軸が光学系の光軸と一致するように光学素子の中心が合わせられる。
【0016】
好ましくは、複数の光学素子が光学系に挿入され、全ての光学素子の光軸が光学系の光軸と一致するようにされ、全ての光学素子の周面が光学系の光学フレームの内部表面に当接する。
【0017】
複数の光学素子、好ましくは光軸を有する光学系の全ての光学素子が上記の通り処理されて、光学系へ挿入されることにより、光学素子の光軸の極めて精密な位置合わせ、及び、内視鏡の高画質が達成される。
【0018】
光学素子を内視鏡の光学系において中心合わせする方法もまた、内視鏡の光学系に挿入する光学素子を準備する上記の方法と同じ利点、特徴、特性を具体化する。
【0019】
最後に、本発明の目的は、中心合わせ回転装置であって、内視鏡の光学素子のための搭載台とともに回転軸を中心に回転可能なスピンドルと、搭載台内の光学素子の周面を除去するよう構成された除去要素を有する除去装置と、を備え、除去要素が超短パルスレーザーである点で改良されている、中心合わせ回転装置により達成される。
【0020】
先行技術の中心合わせ回転装置では、通常、除去要素として旋削用工具が用いられるが、これが有利に超短パルスレーザーに置き換えられている。
【0021】
好適な実施形態において、搭載台に接続された位置合わせユニットとともに、衝撃を介して、回転軸に対して搭載台の位置合わせを変化させるように構成された衝撃装置が備えられる。
【0022】
さらに好ましくは、感光性素子を有する少なくとも1つの信号検出装置であって、感光性素子が、スピンドルの回転軸に沿って伝搬した光線の光信号を信号検出装置により検出できるように配置されている、少なくとも1つの信号検出装置が備えられる。
【0023】
また好適には、スピンドルは静圧受軸を有する。静圧受軸を用いたことにより、効果的にスピンドルの回転が極めて精密に行われ、回転中の回転軸の偏心が防止される。
【0024】
中心合わせ回転装置もまた、上記方法と同じ利点、特徴、特性を具体化する。
【0025】
本目的はさらに、内視鏡の光学系に挿入する光学素子を有する内視鏡であって、光学素子は、光軸と、光軸に概ね平行な周面と、を有し、上記に記載の1つ以上の実施形態に係る光学素子を準備する方法により、光学素子が準備される内視鏡により達成される。
【0026】
本目的はさらに、内視鏡の光学系に挿入する光学素子を有する内視鏡であって、光学素子は、光軸と、光軸に概ね平行な周面と、を有し、上記に記載の1つ以上の実施形態に係る光学素子の中心を合せる方法で光学素子の中心が合わせられる、内視鏡により達成される。
【0027】
本発明の更なる特徴は、請求項、及び添付の図面とともに、本発明に係る実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。本発明に係る実施形態は、個々の特徴又は複数の特徴の組み合わせを実現させることができる。
【0028】
図面を参照した例示的な実施形態により本発明の概念を制限することなく、本発明は以下に説明される。本文により詳細に説明されていない本発明に係る詳細の全てに関して図面を明確に参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】先行技術に係る光学系における光学素子の概略図を示す。
図2】本発明に係る方法を実行する前における光学素子の概略断面図を示す。
図3】中心合わせ回転装置の概略図を示す。
図4a】スピンドルの搭載台上の光学素子の概略図を示す。
図4b】光信号を伴った感光性素子の概略図を示す。
図5a】光学素子の光軸とスピンドルの回転軸とが一致した状態にある図4aの搭載台上の光学素子の概略図を示す。
図5b】光信号を伴った感光性素子の概略図を示す。
図6】レーザー切除中における図5aに係る搭載台上の光学素子の概略図を示す。
図7】光学系の光学フレームへ挿入された2つの光学素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面において、同一又は類似の素子及び/又は部品には、いずれの場合も同じ参照符号を付し、再度説明されない。
【0031】
図1は、先行技術に係る内視鏡の光学系10の概略断面を示す。光学素子20は、光学系10の光学フレーム14に挿入されている。光学素子20は、例えばブラススリーブ等のスリーブ16に嵌め込まれている。ブラススリーブ16の機械軸と光学素子20の光軸22とが一致していないため、光学系10の光軸12と光学素子20の光軸22も一致していない。この問題を解決するため、先行技術では、光軸12と光軸22とが一致するように、中心合わせ回転によりブラススリーブ16が処理される。しかしながら、この中心合わせ回転方法は極めて集中的な作業であるとともに、光学素子20の最大直径を制限するスリーブ16を用いる必要がある。
【0032】
図2は、光学素子20の概略断面図を示す。光学素子20は光学的透過材料28、例えば光学ガラスで製造されている。光学素子20の形状は、円21の形状から外れている。図2の円21は、光軸22を中心とし、光学素子20の内側に描かれる最大の円である。
【0033】
本発明に係る内視鏡の光学系に挿入する光学素子を準備する方法によれば、光学素子の周面26が円21に追随するよう周面26が取り除かれる。
【0034】
図3は本方法が実施され得る中心合わせ回転装置30の概略を示す。中心合わせ回転装置30は、回転軸32を中心に回転可能なスピンドル31を備える。この状態を回転軸32の周りに配置された矢印で示す。可能な限り均一に回転を行うことを確実にするために、スピンドル31は静圧受軸34を備えるが、図3においては詳細を図示しない。加えて、スピンドル31は、処理される光学素子20を保持する搭載台33を備える。
【0035】
スピンドル31はさらに、位置合わせユニット37を備える。位置合わせユニット37は、第1部分37aと第2部分37bとを備え、第1部分37aと第2部分37bとは、図3において水平な点線で分離されている。第1部分37aは、回転軸32に対する位置合わせが一定に保たれるよう配置されている。第2部分37bは、第2部分37bが回転軸32に対して傾斜できるように、搭載台33に接続されて第1部分37aの上に搭載されている。衝撃装置36により、位置合わせユニット37の第2部分37bに対して衝撃処理又は衝撃が加えられ、回転軸32に対する第2部分37bの位置合わせ、すなわち光学素子20の位置合わせを変化させることができる。
【0036】
光学素子20の上部には、感光性素子39を有する信号検出装置38が設けられている。光線が、回転軸32に沿って光学素子20を通過して感光性素子39の方向へ伝搬するため、信号検出装置38により、回転軸32に対する光学素子20の光軸22の位置合わせが確認され得る。
【0037】
最後に、中心合わせ回転装置30は除去装置35を備える。本実施形態において除去要素として示されるように、除去装置35は、波長がフェムト秒範囲の超短パルスレーザーを用いる。
【0038】
図4aから図6は、本発明に係る内視鏡の光学系10に挿入する光学素子20を準備する方法を例示的に説明している。
【0039】
図4aは搭載台33により保持された光学素子20を概略的に示す。ここで、光学素子20の光軸22はスピンドル31の回転軸32と一致していない。このため、スピンドル31が回転すると、光軸22は回転軸32を中心に回転運動を描く。
【0040】
図4aにおいて下方から回転軸32に沿って光学素子20を通過して伝搬した光線は、図4bに示す通り、光学素子20の上部に配置された感光性素子40上で回転運動を描く。
【0041】
図5aに示すように、衝撃装置36及び位置合わせユニット37により、スピンドル31上での光学素子20の光軸22の位置合わせは、光学素子20の光軸22がスピンドル31の回転軸32と一致するように、周面26の除去前に変更される。この場合、光信号40は、感光性素子39上で旋回をもはや描かないため、図5bは、回転軸32に沿った光軸22の位置合わせを、どのように信号検出装置38により確認し得るのかを示している。
【0042】
図6は、後続の除去工程を概略的に示す。このため、超短パルスレーザー41により光学素子20の外周面領域27が除去されるように、除去装置35が配置される。
【0043】
超短パルスレーザー41を用いると、光学素子20の光学的透過材料28を直接除去することができ、ブラススリーブに光学素子20を嵌め込むことを省くことができる。
【0044】
図2及び図4a~図6に示された光学素子20の形状及び光学素子20の光軸22の位置合わせの逸脱は、より良い説明のため極めて強調して示されている。
【0045】
図7は、2つの光学素子20、20’を光学系10の光学フレーム14にどのように挿入するのかを概略的に示す。この目的のため、光学系10の光学フレーム14は極めて精密に製造された内部表面15を有しており、内部表面15の直径は光学素子20、20’の直径に概ね相当している。光学素子20、20’は、光学素子20、20’の周面26、26’が内部表面15に当接するように光学フレーム14内へ配置される。このように、光学素子20、20’の光軸22、22’が光学系10の光軸12と正確に一致するよう、光学素子20、20’が光学系10内に位置合わせされる。
【0046】
図面のみから推測できる特徴や、他の特徴と組み合わせて開示された個々の特徴を含む、全ての示された特徴は、単独と、組み合わせの両方が本発明の要点であるとみなされる。本発明に係る実施形態は個々の特徴又は複数の特徴の組み合わせにより実施され得る。本発明の範囲において「具体的に」又は「好ましくは」と記された特徴は、選択的な特徴として理解されたい。
【符号の説明】
【0047】
10 光学系
12 光軸
14 光学フレーム
15 内部表面
16 スリーブ
20、20’ 光学素子
21 円
22、22’ 光軸
26、26’ 周面
27 外周面領域
28 材料
30 中心合わせ回転装置
31 スピンドル
32 回転軸
33 搭載台
34 静圧受軸
35 除去装置
36 衝撃装置
37 位置合わせユニット
37a 第1部分
37b 第2部分
38 信号検出装置
39 感光性素子
40 光信号
41 超短パルスレーザー
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7