IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーイーエフ、メディカル、インコーポレイテッドの特許一覧

特許7221297ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物
<>
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図1
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図2
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図3
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図4
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図5
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図6
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図7
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図8
  • 特許-ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】ヒトの線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/22 20060101AFI20230206BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 31/77 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 45/08 20060101ALI20230206BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20230206BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20230206BHJP
   A61L 27/48 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
A61L27/22
A61K38/36
A61P19/00
A61P43/00 121
A61K38/48 100
A61K31/77
A61K45/08
A61L27/18
A61L27/52
A61L27/48
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020556214
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2018016892
(87)【国際公開番号】W WO2019132604
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2017-0183688
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520236745
【氏名又は名称】ビーイーエフ、メディカル、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BEF MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】アン、スン、ウク
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0166735(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288564(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0134291(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0010114(US,A1)
【文献】国際公開第2007/028258(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/005974(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/027590(WO,A1)
【文献】特開2005-170816(JP,A)
【文献】国際公開第2016/112176(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0046430(KR,A)
【文献】国際公開第2017/168428(WO,A1)
【文献】ASAIO Journal,2010年,Vol.56, No.6,p.563-568
【文献】Acta Biomaterialia,2011年,Vol.7,p.2418-2427
【文献】界面活性剤 製品一覧,株式会社ADEKA,2013年,p.4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)もしくはポロキサマーと、を含むハイドロゲルを含む線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物。
【請求項2】
前記線維軟骨または弾性軟骨は、椎間板軟骨(intervertebral disc)、恥骨結合(symphysis pubis)、半月板(meniscus)、関節内の線維軟骨複合体(fibrocartilage complex)、顎関節軟骨、胸鎖関節(sternoclavicular joint )の関節円板、寛骨臼唇(acetabular fossa)、外耳(external ear)、喉頭蓋(epiglottis)および喉頭軟骨からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物。
【請求項3】
前記ハイドロゲルは、トリプシン分解抵抗性を有することを特徴とする請求項1に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物。
【請求項4】
前記ハイドロゲルは、100radian/secの条件下で15~40kPaのせん断弾性率または10~200kPaの圧縮弾性率を有することを特徴とする請求項1に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物。
【請求項5】
多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項の組成物を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用スキャフォールド。
【請求項7】
フィブリノゲン溶液を含む第1区画と、ならびにトロンビンおよびポリエチレンオキシドもしくはポロキサマーを含む第2区画を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項8】
前記第1区画は、多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項9】
前記フィブリノゲンは、10~1000mg/mlの濃度で含まれることを特徴とする請求項7に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項10】
前記トロンビンは、100U/ml~5000U/mlの濃度で含まれることを特徴とする請求項7に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項11】
前記ポリエチレンオキシドが、2~20%(w/v)含まれることを特徴とする請求項7に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項12】
前記ポロキサマーが、2~40%(w/v)含まれることを特徴とする請求項7に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項13】
前記キットは、ダブルシリンジ型であることを特徴とする請求項7~12のうちいずれか一項に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用キット。
【請求項14】
1)フィブリノゲン10~1000mg/mlを、第1溶液として準備する段階と、
2)トロンビンおよび生理活性高分子を混合して第2溶液を準備する段階であって、前記生理活性高分子がポリエチレンオキシド(PEO)またはポロキサマーである段階と、を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項15】
3)前記第1溶液と第2溶液とを混合し、フィブリンと生理活性高分子が相互侵入高分子ネットワーク(IPN)構造を形成する線維軟骨または弾性軟骨再生用ハイドロゲルを製造する段階をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項16】
前記1)段階の第1溶液は、多血小板血漿をさらに含み、フィブリノゲンと多血小板血漿を1:1~1:2の体積比で混合する段階を含むことを特徴とする請求項14に記載の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項17】
フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する、ポリエチレンオキシド(PEO)もしくはポロキサマーを含むハイドロゲルを含む線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項18】
前記線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患は、椎間円板ヘルニア、恥骨間円板損傷、顎関節損傷、胸鎖関節の関節円板損傷、手首関節の三角線維軟骨複合体破裂、尺骨突き上げ症候群、退行性関節炎、半月板損傷、リウマチ関節炎、外耳(external ear)欠損、および喉頭蓋(epiglottis)または喉頭軟骨欠損からなる群から選択された1種以上である請求項17に記載の線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維軟骨または弾性軟骨を再生する、並びに治療するための組成物、キット、及びこれを用いた再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、他の結合組織のように結合組織細胞と細胞外基質からなるが、固有結合組織とは異なり、硬いながらも、ある程度柔軟性のある基質を含有した特殊な結合組織である。軟骨は、軟骨基質を構成する繊維の種類と特性に応じて、硝子軟骨(hyaline cartilage)、弾性軟骨(elastic cartilage)および線維軟骨(fibrous cartilage)に分類される。硝子軟骨は、主にII型コラーゲンを含有しており、最も一般的な種類の軟骨である。II型コラーゲンは、ほとんど微細線維(microfibrils)の形で表れ、無形質の主成分であるプロテオグリカンと屈折率(refractory index)がほぼ同じであるので、繊維成分と無形質は、均一な物質であることが観察される。
【0003】
弾性軟骨は、基質内に弾力線維が豊富であるという点で、硝子軟骨と区別される。線維軟骨は、他の軟骨に比べて無形質が少なく、膠原線維が多く、これらの線維は、ほとんど一定方向に配列している。線維軟骨を構成する膠原線維の膠原質は、I型コラーゲンという相違点がある。硝子軟骨は、骨の関節面(articular surface)、肋軟骨(costal cartilage)、器官(trachea)、気管支(bronchus)喉頭軟骨(laryngeal cartilage)などで観察される。弾性軟骨は、外耳(external ear)と喉頭蓋(epiglottis)および一部喉頭軟骨を構成し、線維軟骨は、推間円板(intervertebral disc)、恥骨結合(symphysis pubis)、関節内の半月板(meniscus)、および関節内の線維軟骨複合体(fibrocartilage complex)などに存在する。
【0004】
線維軟骨に属する半月板(Meniscus)は、大腿骨と脛骨の関節面の間に位置し、膝関節の機能を維持する上で非常に重要な役割をする構造物の一つである。半月板は、膝関節にかかる荷重やストレスを分散させ、衝撃を吸収し、関節軟骨に潤滑作用をし、外部の衝撃を吸収し、関節軟骨を保護する非常に重要な役割をする。このような半月板は、膝関節の中間に位置する三日月状の軟骨で形成され、軟骨板は、関節との間で緩衝作用をするが、立ったり歩いたり走ったりするとき、体重が上から下にかかる際、関節軟骨が損傷しないよう衝撃を吸収する役割をする。
【0005】
さらに詳しくは、半月板は、膝関節の左右に三日月状の2つの軟骨がそれぞれ対をなしており、これをそれぞれ外側半月板、内側半月板と呼ぶ。その間を前方十字靭帯と後十字靭帯が横切って、上の大腿骨と下の脛骨とをつないでいる。
【0006】
半月板損傷は、運動選手に多く見られる。これを「半月板破裂」と呼び、半月板破裂は、一般的に、運動中に発生する場合が多い。しかし、50代後半から60代半ばの中年層では、退行性関節炎がある程度進行している場合には、突然半月板の後方が切れてしまい破裂が好発し、中年女性ではしゃがみこんだり、膝をたくさん曲げ伸ばしする家事を長い間、持続してきたことにより、半月板の部位が破裂する場合もある。このように、半月板が破れたり破損する場合には、薬の服用や手術的治療が行われる 。細胞外基質のコラーゲンの構成要素は、軟骨板の強度を提供するのに役立ち、プロテオグリカンECM構成要素は、衝撃吸収機能に寄与する。また、三日月状の組織は、vascularizedされた外部部分と、内部のavascular地域を含む。組織の損傷部分が血管が分布された外部にある場合には、縫合術を施すことができる場合があるが、そうでない場合もあり、無血管avascular領域にあれば、自然治癒が可能でないので、切除術を施すことになる。現在、手術的治療法としては、軟骨板組織損傷の大きさや部位によって部分切除(partial meniscectomy)、亜全切除、または全切除(subtotal or total meniscectomy)などに分けることができ、切除術による組織の除去は、最終的には退行性関節炎を誘発するので、損傷した軟骨板の再生治療のための根本的な治療法の医療技術が求められている。
【0007】
軟骨板欠損に起因する退行性関節炎の発生を防ぐための治療方法として、現在、「同種半月板移植術」と「合成代替物を用いた半月板再生治療」があり、同種半月板移植術は、軟骨板の大きさと形に合った供与インプラントが必要であり、患者の欠損のない軟骨板部位も全部取り除かなければならない問題、およびインプラントの固定等の問題により、まだ臨床的結果が良くない。
【0008】
半月板を再生するための医療機器開発の成果は、現在、世界的にも初期段階であり、現状、医療機器として開発されているPolyurethaneを利用した医療機器Actifit(Orteq Ltd.)と、Nusurface(Active Implants LLS)と、Collagenを主成分とする医療機器Menaflex(ReGen Biologics、Inc.)が開発されており、製品はいずれも現在、開発された自国でしか使用許可が下りていない状態であり、他地域では未だ臨床試験およびFDAが進行されていない状態である。臨床に適用してからまだ2年以内であるため、かなり初期段階であり、大きさや形を合わす問題、並びにインプラントを縫合器を介して固定しなければならないという技術的問題が大きな欠点となる。
【0009】
支持体基盤の移植術の場合、適切な形に加工した高分子支持体を部分切除した軟骨板と縫合する方式であり、前記同種半月板移植術を代替する技術として評価されているが、安定性および有効性がまだ検証されていない状態である。また、支持体基盤の移植術は、特定の形態の支持体を、軟骨板のところに挿入する必要があるため、膝関節の切開が必要不可欠という問題点がある。
【0010】
したがって、同種半月板移植術でのように不要に全部の軟骨板を取り除く必要がなく、供与軟骨板を必要とせず、さらに、現在試みられているインプラントを用いた軟骨板再生治療のように欠損部位の大きさや形を合わす必要がなく、縫合器を用いることなく、より優れた再生治療を行うことができる技術が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、膝関節の切開およびインプラントの挿入が必然的に伴う従来技術の問題点を解決し、より簡便な最小侵襲の膝関節半月板再生方法について研究していたところ、フィブリノゲン、トロンビン、および生理活性高分子を用いて製造されたハイドロゲルを用いると、最小侵襲方法でも線維軟骨である半月板が効果的に再生されることを確認し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明の目的は、フィブリノゲン、トロンビン、および生理活性高分子を用いて製造されたハイドロゲルを含む、線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物、キットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルを含む線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記軟骨再生用組成物を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用スキャフォールドを提供する。
【0014】
また、本発明は、フィブリノゲン溶液を含む第1区画と、トロンビンおよび生理活性高分子を含む第2区画と、を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用キットを提供する。
【0015】
また、本発明は、1)フィブリノゲン10~1000mg/mlを第1溶液として準備する段階と、2)トロンビンおよび生理活性高分子を混合して第2溶液として準備する段階と、を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、本発明の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を、治療を必要とするオブジェクトに投与する段階を含む、線維軟骨または弾性軟骨再生方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルを含む線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、本発明の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を、治療を必要とするオブジェクトに投与する段階を含む、線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る軟骨再生用組成物およびキットは、最小侵襲方法で簡便に線維軟骨または弾性軟骨の再生または損傷の回復が必要な部位に注入することが可能で、体内の毒性なしに分解酵素に対する抵抗性を示し、損傷した注入部位に接着あるいは留置されて留まることにより、周囲の細胞の挙動を向上させ、効果的な半月板のような線維軟骨または弾性軟骨欠損組織の再生を誘導することができる。したがって、本発明の組成物は、生体組織欠損部位の再生を助ける媒介体として、バイオ生体材料分野で有用に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物およびキットの模式図およびこれにより製造されたハイドロゲルを示す図である。
図1-A】フィブリノゲンおよびトロンビンとポリエチレンオキシド(PEO)、またはプルロニック(F127)の混合物を含む注射器形態のキットと、フィブリンおよびフィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子を用いて製造された本発明のハイドロゲルを示す図である。
図1-B】フィブリノゲン、多血小板血漿(PRP)およびトロンビンとポリエチレンオキシド(PEO)、またはプルロニック(F127)の混合物を含む注射器形態のキットとフィブリンおよびフィブリンの相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、 IPN)構造を形成する生理活性高分子を用いて製造された本発明のハイドロゲルを示す図である。
図2】トロンビン濃度変化によるハイドロゲルの弾性率を示す図である。
図2-A】せん断弾性率を示す図である。。
図2-B】圧縮弾性率を示す図である(student t-test、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図3】トロンビン濃度1250U/mlの条件下において、ポリエチレンオキシド(PEO)とプルロニック127(F127)の濃度変化によるハイドロゲルの圧縮弾性率およびせん断弾性率の変化を示す図である。
図3-A】トロンビン、PEOを用いて製造されたハイドロゲルPEO濃度による圧縮弾性率の変化を示す図である。
図3-B】トロンビン、F127を用いて製造されたハイドロゲルF127濃度による圧縮弾性率の変化を示す図である。
図3-C】製造されたハイドロゲルのPEO濃度によるせん断弾性率の変化を示す図である(student t-test、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図4】トロンビン濃度1250U/ml、ポリエチレンオキシド(PEO)5.0%、プルロニック127(F127)10.0%の条件下で、PRPの添加によるせん断弾性率の変化を示す図である。
図4-A】フィブリン-PEOハイドロゲル(Fb/PEO)とPRP添加ハイドロゲル(Fb/PEO+PRP)のせん断弾性率を確認した結果を示す図である。
図4-B】フィブリン-F127ハイドロゲル(Fb/F127)とPRP添加ハイドロゲル(Fb/F127+PRP)のせん断弾性率を確認した結果を示す図である。
図4-C】フィブリン、フィブリン-PEO、フィブリン-PEO-PRP、フィブリン-F127、フィブリン-F127-PRPハイドロゲルのせん断弾性率比較グラフを示す図である(グラフ上段にある*、**、***は、フィブリングループとの比較時の統計学的有意性を示す。)
図5】作製されたフィブリン-F127、フィブリン-PEOハイドロゲルおよび対照群フィブリン単独処理群のトリプシン酵素処理時の分解の様相を示す図である。
図6】作製されたハイドロゲルと混合された細胞の24時間後の細胞生存率を示す図である。
図6-A】蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。
図6-B】細胞の生存度を示すグラフである。
図7】ウサギの半月板損傷部位が再生される結果を示す図である。
図7-A】半月板損傷後1週間、フィブリン、フィブリン-PEO、フィブリン-F127ハイドロゲルを注入し、4週、8週、12週に観察された半月板が再生された様子を示す肉眼的結果である。
図7-B】再生された半月板の面積を測定した結果を示すグラフである。
図8】ウサギの半月板損傷部位が再生された結果を示す図である。
図8-A】図8のAは、半月板損傷後1週間、フィブリン-PEO、フィブリン-F127ハイドロゲルを注入し、4週、8週、12週に観察された半月板が再生される様子を示すHematoxylin & Eosin(H&E)、Safranin O染色およびType I collagenに対する免疫染色の結果(x40)を示す図である。
図8-B】Histological tissue quality scoreを示す図である(A.半月板切除術(Meniscectomy)、B.半月板切除術+フィブリン単独処理群、C.半月板切除術+フィブリン+PEO、D.半月板切除術+フィブリン+F127)。
図9】ウサギの半月板損傷部位が再生された半月板の強度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明は、フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルを含む線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を提供する。
【0023】
本発明に係るハイドロゲルは、フィブリノゲンとトロンビンの作用で形成されるフィブリン高分子網に生理活性高分子の高分子鎖がランダムに浸透して、相互侵入高分子ネットワークを形成していることを特徴とすることができる。このように、相互侵入高分子ネットワーク構造が形成されたハイドロゲルは、細胞毒性を示さないので、生体適合性に優れているだけでなく、最小侵襲方法でも、線維軟骨または弾性軟骨の再生が必要な部位に注入することが可能である。また、注入部位に長時間分解されず、損傷した部位に接着あるいは留置されて留まることができ、周囲の細胞の挙動を向上させ、線維軟骨または弾性軟骨の再生を効果的に誘導することができるので、線維軟骨および弾性軟骨の再生、さらに好ましくは半月板の再生に効果的である。
【0024】
本発明において、生理活性高分子は、フィブリン高分子網にランダムに浸透して、相互侵入高分子ネットワークハイドロゲルを形成することができる高分子を制限なく含むことができ、例えば、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、PLA-PGA、PLA-PEG、デキストラン、デキストラン-PEG、でん粉、コラーゲン基盤ゲル、アガロース、プルロン酸、ヘパラン硫酸、グリコサミノグリカン、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体(P(EO-co-PO))およびプルロニック/ポロキサマーからなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることができ、好ましくは、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、以下、PEO)またはプルロニック127(pluronic F127、以下、F127)からなる群から選択された1種以上であることができる。
【0025】
本発明において、再生の対象となる軟骨は、硝子軟骨(hyaline cartilage)、線維軟骨(fibrocartilage)または弾性軟骨(elastic cartilage)の中、線維軟骨または弾性軟骨であってもよい。線維軟骨は、白い線維性組織と軟骨性組織があらゆる割合で絡まっている軟骨であって、圧迫には強いが、破れ易く緻密状態に配列されている。線維軟骨は、硝子軟骨または結合組織と連結して存在し、ねじれや圧迫が起こる部位で緩衝作用をし、制限のある動きを可能にし、弾力を維持することを特徴とする。硝子軟骨は、主にII型コラーゲンからなり、線維成分と無形質が均一に観察されるが、弾性軟骨は、基質内に弾力線維が豊富であるという点で硝子軟骨と相違し、線維軟骨は、硝子軟骨および弾性軟骨と比較して無形質が少なく、膠原線維が多く、一定した配列でつながっているという点で明確な違いを持つ。特に線維軟骨を構成する膠原線維のコラーゲンは、I型コラーゲンと相違しており、線維軟骨は、弾性軟骨、硝子軟骨とは異なり、明確に軟骨膜といえるものがない。線維軟骨にて層板をなすI型コラーゲン線維束は、隣接する層板と直角に配列されていることが知られており、他の軟骨とは異なり、線維軟骨の前記のような特徴的な配列によって椎間円板などにおいて、特別な弾性を有し、体重負荷などによって生成される圧力によく耐えられるようにする。
【0026】
本発明において、好ましい再生、損傷回復の対象となる線維軟骨または弾性軟骨は、椎間円板、関節唇、または関節半月部位に存在するさまざまな線維軟骨、並びに外耳(external ear)、喉頭蓋(epiglottis)および一部喉頭軟骨部位に存在するさまざまな弾性軟骨を全部含むことができ、好ましくは、椎間板(intervertebral disc)、恥骨結合(symphysis pubis)、半月板(meniscus)、関節内の線維軟骨複合体(fibrocartilage complex)、顎関節軟骨、胸鎖関節(sternoclavicular joint)の関節円板、寛骨臼窩(acetabular fossa)、外耳(external ear)、喉頭蓋(epiglottis)および喉頭軟骨からなる群から選択された1種以上であることができる。
【0027】
本発明において、半月板とは、大腿骨と脛骨の関節面の間に位置し、膝関節の機能を維持する上で非常に重要な役割をする構造物の一つであり、膝関節にかかる荷重とストレスを分散させ、衝撃を吸収し、関節軟骨に潤滑作用をし、外部の衝撃を吸収し、関節軟骨を保護する非常に重要な役割を果たす。このような半月板は、膝関節の中間に位置する三日月状の軟骨で形成され、軟骨板は、関節の間で緩衝作用をするが、立ったり歩いたり走ったりするとき、体重が上から下にかかる際、関節軟骨が損傷しないように衝撃を吸収する役割をする。したがって、軟骨板は、退行性関節炎の予防において非常に重要であることが知られている。
【0028】
本発明のフィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルは、生体のトリプシンに分解抵抗性を示し、同一条件でフィブリンの分解時間と比較したとき、60~84時間以上、さらに分解抵抗性を有し、長時間ゲルの形態を維持することができるので、体内で目的部位に長く残留して線維軟骨の再生をより効果的に誘導することができる。
【0029】
本発明のハイドロゲルは、100radian/secの振動数条件下で15~40kPaのせん断弾性率を示すことができ、10~200kPaの圧縮弾性率を示すことができる。本発明のハイドロゲルは、前記のような弾性率を示すことによって、線維軟骨再生時、硬くなく、柔軟性と弾力性を維持することができ、これにより、線維軟骨欠損部位の大きさと形に関係なく、容易に投与が可能であり、投与されたハイドロゲル内に周囲の細胞が流入され、組織の再生を起こす利点がある。
【0030】
本発明の組成物は、多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)をさらに含むことができる。多血小板血漿は、ハイドロゲルの準備物質であるフィブリノゲンと混合した形で提供されることができ、多血小板血漿をさらに含む場合、100radian/secの振動数条件下で、より優れたせん断弾性率を示すことができる。
【0031】
本発明の組成物は、線維軟骨再生のためのハイドロゲル組成物の形態であり、注射器などを用いて、最小侵襲的に線維軟骨または弾性軟骨の再生が必要な部位に効果的に投与することができる。本発明の組成物は、好ましくは、線維軟骨または弾性軟骨再生用であってもよく、線維軟骨または弾性軟骨再生用支持体として使用することができる。
【0032】
したがって、本発明は、本発明の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用スキャフォールドを提供する。
【0033】
また、本発明は、フィブリノゲン溶液を含む第1区画と、トロンビンおよび生理活性高分子を含む第2区画を含む線維軟骨または弾性軟骨再生用キットを提供する。
【0034】
本発明のキットは、2個以上の区画からなり、フィブリノゲン溶液と、トロンビンおよび生理活性高分子をそれぞれ分けて含むことを目的とする。例えば、好ましくは、フィブリン-PEOまたはフィブリン-F217ハイドロゲルの製造物質をそれぞれ分けて含むことを目的とする。第1区画の第1溶液と第2区画の第2溶液は、ダブルシリンジ(二重注射器)のシリンジ内で混合され得、即時フィブリンの形成および相互侵入高分子ネットワーク構造の形成を通じて3次元的構造のハイドロゲルが形成されうる。
【0035】
第1区画には、フィブリノゲンの他に多血小板血漿をさらに含むことができる。多血小板血漿をさらに含んでハイドロゲルを製造する場合、より優れたせん断弾性率が表れることができ、フィブリノゲンと多血小板血漿は、1:0.1~1:1の体積比、好ましくは1:0.1~1:0.8の体積比で混合して第1区画に含まれることができる。
【0036】
本発明のキットは、フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルを製造するための製造物質である第1溶液と第2溶液をそれぞれの区画に含むことを目的とし、第1区画は、第1溶液としてフィブリノゲンを10~1000mg/mlの濃度、好ましくは10~500mg/mlの濃度、より好ましくは50~200mg/mlの濃度で含むことができる。第1区画には、抗線維素溶解剤が、第1溶液に追加で含むことができ、例えば、アプロチニンが好ましくは、0.5mg/ml(3~8TIU/mg)になるようにさらに含まれることができ、KTU単位に換算時、100~5500KIU/ml、好ましくは1950~5200KIU/mlの濃度で含まれることができる。第2区画には、第2溶液が含まれることができ、第2溶液には、トロンビンおよび生理活性高分子が含まれることができる。前記トロンビンは、第2溶液内100~5000Unit(U)/ml含まれ得、好ましくは、250U/ml~3000U/ml濃度、より好ましくは250~2800U/mlの濃度で含まれることができる。トロンビンは、最終混合組成物内で最終濃度が250U/ml~1250U/mlであることができ、塩化カルシウム(CaCl2)が5~50mg/ml含まれることができ、好ましくは、5(w/v)%になるようにさらに含まれることができる。前記生理活性高分子は、フィブリン高分子網にランダムに浸透し、相互侵入高分子ネットワークハイドロゲルを形成することができる高分子を制限なく含むことができ、例えば、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、PLA-PGA、PLA-PEG、デキストラン、デキストラン-PEG、でん粉、コラーゲン基底ゲル、アガロース、プルロン酸、ヘパラン硫酸、グリコサミノグリカン、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体(P(EO-co-PO))およびプルロニック/ポロキサマーからなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることができ、好ましくは、PEOまたはF127
からなる群から選択された1種以上であることができる。前記生理活性高分子がPEOである場合、これは最終混合組成物内でPEO濃度が1~10%(w/v)、好ましくは1~5%(w/v)となるように、第2溶液内に2~20%(w/v)含まれることができ、好ましくは2~10(w/v)%含まれることができる。また、前記生理活性高分子がF127である場合、これは最終混合組成物内でF127濃度が1~20(w/v)%、好ましくは3~10(w/v)%になるように、第2溶液内に2~40(w/v)%、好ましくは6~20(w/v)%含まれることができる。
【0037】
本発明において、キットは、医療的な目的で用いられる医療機器と相互交換的に用いることができ、好ましい形態は、ダブルシリンジの形態であることができる。
【0038】
また、本発明は、1)フィブリノゲン10~1000mg/mlを、第1溶液として準備する段階と、2)トロンビンおよび生理活性高分子を混合して第2溶液として準備する段階とを含む、線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物の製造方法を提供する。
【0039】
本発明の製造方法によると、線維軟骨または弾性軟骨再生用ハイドロゲルの準備物質の製造段階を含み、線維軟骨または弾性軟骨再生が必要なオブジェクトに治療/施術が必要な場合、速やかにハイドロゲルを製造し、最小侵襲方法により関節腔内にハイドロゲルを注入することができる。すなわち、本発明の製造方法は、フィブリノゲンを主成分とする第1溶液の準備過程およびトロンビンと生理活性高分子、好ましくはPEOまたはF127の混合物を主成分とする第2溶液の準備過程、そして第1溶液と第2溶液がダブルシリンジ内で混合されて固形化され、体内に注入される過程を含むことができる。
【0040】
したがって、本発明は、3)前記第1溶液と第2溶液とを混合してフィブリンと生理活性高分子が相互侵入高分子ネットワーク(IPN)構造を形成する線維軟骨または弾性軟骨再生用ハイドロゲルを製造する段階と、をさらに含むことができる。
【0041】
また、本発明の製造方法において、第1溶液には多血小板血漿をさらに含むことができ、フィブリノゲンと多血小板血漿を1:1~1:2の体積比で、さらに混合する段階を含むことができる。
【0042】
本発明の第1溶液または第2溶液には、線維軟骨または弾性軟骨再生に必要な生理活性物質がさらに含まれることができ、この生理活性物質は、細胞培養培地または成長因子であることができる。
【0043】
また、本発明は、本発明の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を、治療を必要とするオブジェクトに投与する段階を含む線維軟骨または弾性軟骨を再生する方法を提供する。
【0044】
また、本発明は、フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルを含む線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0045】
また、本発明は、本発明の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を、治療を必要とするオブジェクトに投与する段階を含む線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の治療方法を提供する。
【0046】
本発明の線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物を投与する段階は、本発明のキットに含まれた第1溶液と第2溶液とが混合され、即形成される、フィブリンと、フィブリンと相互侵入高分子ネットワーク(interpenetrating polymer network、IPN)構造を形成する生理活性高分子と、を含むハイドロゲルを投与することを特徴とし、前記製造されたハイドロゲルは、最小侵襲方法で関節腔に注入され、長い時間注入部位に分解酵素抵抗性を示し、損傷した部位に接着あるいは留置して留まりながら、周囲の細胞の挙動を向上させ、線維軟骨または弾性軟骨、好ましくは、損傷した膝関節半月板を効果的に再生させることができる。再生された半月板は、せん断および圧縮弾性力に非常に優れており、正常な軟骨板の50~80%の強度を維持することができ、商用化されたフィブリン単独ハイドロゲルに比べて強度に優れ、線維軟骨または弾性軟骨再生および線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患の治療に非常に効果的である。
【0047】
前記線維軟骨または弾性軟骨欠損とは、線維軟骨、線維軟骨組織および/または関節組織(滑膜、関節包、軟骨下骨など)が機械的刺激や炎症反応によって傷害を受けた線維軟骨の損傷、または他の先天的若しくは後天的な要因による弾性軟骨損傷または欠損をいう。このような線維軟骨または弾性軟骨欠損による疾患は、好ましくは、線維軟骨または弾性軟骨の損傷または欠損により発生する疾患であることができ、より好ましくは、椎間円板ヘルニア、恥骨間円板損傷、顎関節損傷、胸鎖関節の関節円板損傷、手首関節の三角線維軟骨複合体破裂、尺骨突き上げ症候群、退行性関節炎、半月板損傷、リウマチ関節炎、外耳(external ear)欠損、および喉頭蓋(epiglottis)または喉頭軟骨欠損からなる群から選択された1種以上であることができる。前記椎間円板ヘルニアは、ディスクとも呼ばれ、脊椎体間、あるいは恥骨間でも発生し得る。前記退行性関節炎およびリウマチ関節炎は、線維軟骨または弾性軟骨の損傷により発生あるいは悪化し得る疾患であって、線維軟骨または弾性軟骨の損傷回復および再生を通じて治療もしくは好転することができる。これに関連し、当分野では、初期の変形性膝関節症の治療のために軟骨板切除の際、最小限に切除をしたり、軟骨板欠損が深刻な場合に軟骨板移植術のような手術的方法を行ったりして、線維軟骨または弾性軟骨の消失を最小限に抑える、または代替する方法を通じて退行性骨関節症の発生を減らし得ることが知られている。
【0048】
治療方法としては、組成物を標的部位、例えば、関節に直接注射または移植することが含まれる。組成物の投与は、しばしば、日、週、週当たり数回、隔月、月当たり数回、月単位の頻度で、または症状の軽減を提供するために必要なだけの頻度で行うことができる。関節内での使用の場合、関節の大きさおよび状態の重症度に応じて投与する組成物の量を調節することができる。ただし、関節への後続投与の頻度は、前記関節における症状の再発時間に応じて間隔を置く。
【0049】
任意の特定患者に対する特定の投与量水準は、採用された特定化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食餌、投与時間、投与経路、排泄率、薬物の組み合わせ、および治療中の特定疾患の重症度を含む様々な因子に応じて適切に調節することができる。薬学組成物は、投与量単位で製造され投与されうる。しかし、特殊な状況によっては、容量の単位をより多くしたり、より少なくしたりするのが適切な場合もある。前記投与量単位の投与は、前記組成物の一回投与および特定の間隔で分割された容量の複数投与の両方により行うことができる、または、投与は数個のさらに小さい容量の単位で実行するができる。
【0050】
一具体例において、線維軟骨または弾性軟骨欠損疾患は、半月板損傷であり、前記組成物は、例えば、膝のような、関節空間に投与される。
【0051】
例えば、膝半月板損傷を持つオブジェクトは、膝当たり約2、3、4、5、6、7、8、9、10ml以上の注射を1、2、または3回打つことができる。他の関節の場合には、投与される体積は、その関節の大きさに基づいて調整することができる。
【0052】
しかし、任意の特定患者に対する特定投与量水準は、採用された特定化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食餌、投与時間、投与経路、排泄率、薬物の組み合わせ、および治療中の特定疾患の重症度を含む様々な因子に依存的に変更されることができる。
【0053】
本発明の組成物は、有効成分として含まれる前記線維軟骨または弾性軟骨再生用組成物に加えて、薬剤学的に許容される担体をさらに含むことができる。
【0054】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常に用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の組成物は、前記成分の外に潤滑剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0055】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法に基づいて、薬剤学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量形態で製造する、または多容量容器内に内入させて製造することができる。この時、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であったり、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であったりすることもでき、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0056】
[発明を実施するための形態]
実施例1.ハイドロゲル製造用第1溶液及び第2溶液の製造
欠損したヒト組織再生を最小侵襲方法だけで達成するために、ハイドロゲル製造物質である第1溶液および第2溶液を製造した。
【0057】
1.1.フィブリンとポリエチレンオキシド(PEO)を用いたハイドロゲル製造物質の製造
フィブリンとPEOを用いたハイドロゲルの製造物質である第1溶液および第2溶液を製造した。第1溶液は、フィブリノゲン(Sigma-Aldrich)10~1000mg/ml及びアプロチニン(Sigma-Aldrich)100~5500KIU/mlを混合して製造した。第2溶液は、トロンビン(REYON製薬)粉末が100~2500Unit(U)/mlの濃度で溶解された溶剤にPEOと塩化カルシウムを37 ℃で溶解させて製造しており、PEOの濃度は、1~100mg/ml、そして塩化カルシウムの濃度は、5~50mg/mlにして製造した。このように製造された第1溶液と第2溶液とを混合して製造される相互侵入高分子ネットワーク構造を形成するハイドロゲルを「フィブリン-PEO」と命名した。
【0058】
1.2.フィブリンとプルロニック127(F127)を用いたハイドロゲル製造物質の製造
フィブリンとF127を用いたハイドロゲルの製造物質である第1溶液および第2溶液を製造した。第1溶液は、前記実施例1.1にて明示された構成と同様に製造し、第2溶液の準備過程において、F127(Sigma Aldrich、P2443)は、2~200mg/mlの濃度で用いて、0~4℃のice bathでトロンビン溶液に溶解させて製造した。このように製造された第1溶液と第2溶液とを混合して製造される相互侵入高分子ネットワーク構造を形成するハイドロゲルを「フィブリン-F127」と命名した。
【0059】
1.3.PRPが含有されたフィブリンとPEOを用いたハイドロゲル製造物質の製造
第1溶液としてフィブリンとウサギの血液から分離して得られた多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma、PRP )を含み、第2溶液としてPEOおよびトロンビンを含むPRPが含有されたフィブリン-PEOハイドロゲル製造物質を製造した。フィブリノゲン溶液と多血小板血漿を1.0:0.1~1.0:0.7の体積比で混合して、第1溶液を製造し、第2溶液は、実施例1.1と同様に製造した。このように製造された第1溶液と第2溶液とを混合して製造される相互侵入高分子ネットワーク構造を形成するハイドロゲルを「フィブリン-PEO-PRP」と命名した。
【0060】
1.4.PRPが含有されたフィブリンとF127を用いたハイドロゲル製造物質の製造
第1溶液としてフィブリンとウサギの血液から分離して得られた多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma、PRP)を含み、第2溶液としてプルロニック127およびトロンビンを含む相互浸透高分子網を製造した。フィブリノゲン溶液と多血小板血漿を1.0:0.1~1.0:0.7の体積比で混合して、第1溶液を製造し、第2溶液は、実施例1.2と同様に製造した。このように製造された第1溶液と第2溶液とを混合して製造される相互侵入高分子ネットワーク構造を形成するハイドロゲルを「フィブリン-F127-PRP」と命名した。
【0061】
1.5.即座にゲル化の確認
前記製造された実施例1.1~1.4において、第1溶液と第2溶液をそれぞれダブルシリンジの1区画および2区画に含ませ、施術時、それぞれの溶液が、個々の区画から流れ出て合わさりながら、即座にゲル化され、3次元構造体を形成することができるように製造した。これの模式図および凝固化したハイドロゲルを図1に示した。
【0062】
図1に示すように、本発明において、実施例1.1~1.4におけるハイドロゲル製造物質が、すべて即座にゲル化されることにより3次元構造体ハイドロゲルを形成したことを確認した。このように製造されたハイドロゲルは、フィブリンの間々にPEOまたはF127が部分浸透し、IPN(interpenetrating polymer network )を形成して製造されることを特徴とする。
【0063】
実施例2.トロンビン濃度によるハイドロゲルの圧縮およびせん断弾性率の確認
フィブリノゲンとトロンビン濃度の組み合わせにより生成されたハイドロゲルの弾性率の変化を確認するために、ハイドロゲルを直径8.0mmの枠に作製してせん断弾性率と圧縮弾性率を測定した。せん断弾性率は、rheometer(ARES-LS、TA Instruments)を用いて測定し、plate間隔は、900μmに設定し、振動数条件は、0.1~100Hzに調節した。圧縮弾性率は、万能試験機(Instron 5966、Instron Corporation)を利用して測定した。応力-変形率グラフで弾性区間を有する区間の傾きを利用して圧縮弾性率(E)の値を見出した。フィブリノゲンの濃度は、一定の濃度である100mg/mlに固定し、トロンビンの最終濃度が250U/ml、500U/ml及び1250U/mlになるように混合される前に、第2溶液のトロンビンの濃度を500、1000、2500U/mlに調節し、ハイドロゲルを製造し、製造後、せん断弾性率と圧縮弾性率を測定し、その結果を図2に示した。
【0064】
図2に示すように、フィブリノゲンおよびトロンビンで製造されたハイドロゲルにおいて、トロンビン濃度変化に伴う構成された単純高分子網ハイドロゲルのせん断弾性率変化グラフ(A)、圧縮弾性率変化グラフ(B)を確認した結果、トロンビン濃度を250、500、1250U/mlの順に増加させたとき、フィブリンハイドロゲルのせん断弾性率は、100rad/sで、それぞれ14.1±1.0、14.7±0.7、15.4±0.6kPaの順に増加したことを確認した。また、圧縮弾性率もまたトロンビンの濃度が増加するほど増加し、トロンビン濃度を250、500、1250U/mlの順に増加させたとき、フィブリンハイドロゲルの圧縮弾性率は、それぞれ29.9±3.1、43.1±5.2、93.6±9.0kPaの順に増加したことを確認した。
【0065】
実施例3.PEOおよびF127の追加による圧縮弾性率の確認
第2溶液としてPEOまたはF127を追加したときのハイドロゲルの圧縮弾性率を測定した。第1溶液のフィブリノゲン濃度は、一定濃度である100mg/mlに固定した。最終混合組成物内のトロビン濃度が1250U/mlになるように第2溶液中、トロンビン濃度を2500U/mlに固定し、最終混合組成物内のPEO濃度が1.0、3.0、5.0%(w/v)になるように第2溶液中、PEO濃度を2.0、6.0、10.0%(w/v)に変化させ、最終混合組成物内のF127濃度が3.0、7.0、10.0%(w/v)になるように6.0、14.0、20.0%(w/v)に変化させ、第2溶液を製造した。各製造例による圧縮弾性率変化を確認し、その結果を図3に示した。
【0066】
図3に示すように、PEO濃度を1.0、3.0、5.0%(w/v)で混合し、ハイドロゲルを作製したとき、それぞれ103.3 ± 4.9kPa、108.4±4.8kPa、120.1±3.3 kPaの圧縮弾性率(A)を示し、F127の濃度を3.0、7.0、10.0%(w/v)で混合し、ハイドロゲルを作製したとき、それぞれ72.0±4.3kPa、122.0±9.6kPa、156.0±9.8kPaの圧縮弾性率(B)を示した。
【0067】
また、トロンビン濃度1250U/mlの条件下で、PEO濃度変化により形成されたフィブリン-PEO ハイドロゲルのせん断弾性率変化を確認した結果、PEO濃度を1.0、3.0、5.0%の順に増加したとき、製造されたフィブリン-PEOハイドロゲルのせん断弾性率は、100rad/sの条件で、それぞれ15.4±1.3、18.5±1.2、21.5±1.5kPaの順に増加したことを確認した。
【0068】
実施例4.PEOおよびF127にPRPの追加による圧縮弾性率の確認
トロンビン2500U/ml、PEO 10.0%またはF127 20.0%を混合して第2溶液を製造した。第1溶液は、フィブリノゲンを200mg/mlとし、多血小板血漿(PRP)を、第1溶液と1:1の体積比で混合し、製造し、最終フィブリノゲン濃度が100mg/mlになるようにし、第1溶液と第2溶液とを混合して即座に固化させることによりハイドロゲルを作製した。作製されたハイドロゲルは、フィブリン-PEO-PRPまたはフィブリン-F127-RPRと命名した。多血小板血漿がハイドロゲルの物性に及ぼす影響を確認するために、多血小板血漿を含まない実験群(フィブリン-PEO、フィブリン-F127)、フィブリン単独を含む実験群によりせん断弾性率の変化を通じて確認をし、その結果を図4および表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
図4及び表1に示すように、せん断弾性率を測定した結果、フィブリンにPEO、F127が混在されたグループ全部、同一条件で多血小板血漿が添加されたとき、より高いせん断弾性率を示した。
【0071】
実施例5.体内持続効果を確認するための酵素分解様相の比較
本発明の第1溶液及び第2溶液の混合により、製造されるハイドロゲルの酵素処理下で分解様相をin vitroで確認すべく、トリプシン0.00125%溶液にハイドロゲルを浸させた後、時間別にその重量を測定し、最初の重量と比較して分解速度を測定した。具体的にはフィブリン基盤ハイドロゲルの体内注入時、フィブリン分解様相を予想するために、代表的なフィブリンタンパク質分解酵素であるトリプシンを用いて、体外で分解様相を確認し、0.00125%トリプシン/EDTA条件下で、対照群フィブリンハイドロゲルと実施例4で製造したフィブリン+PEO、フィブリン+PEO+PRP、フィブリン+F127、フィブリン+F127+PRPにより製造されたハイドロゲルの分解様相を確認した結果を図5に示した。
【0072】
図5に示すように、対照群であるフィブリンハイドロゲルは、トリプシン処理120時間経過以前に完全に分解されたが、本発明で作製したハイドロゲル中、フィブリン+PEO群は192時間、フィブリン+F127は264時間に達して初めて分解されることを確認した。すなわち、本発明で作製したハイドロゲルは、PEOまたはF127の部分相互浸透効果により、対照群フィブリンハイドロゲルに比べて平均72時間分解を遅らせることができることを確認した。したがって、本発明のハイドロゲルを用いれば、より長い時間体内に留まって、目的とする効果を達成することができることを確認した。
【0073】
実施例6.生体適合性の確認
実施例4にて製造したフィブリン-PEOまたはフィブリン-F127ハイドロゲルが治療剤として用いられることへの適否について確認するために、生体適合性を確認する実験を行った。ウサギ軟骨から得られた線維性軟骨細胞(fibrochondrocyte)をフィブリノゲンを含む第1溶液に1x10cell/mLの濃度で混合した後、これをPEOまたはF127を含む第2溶液と混合してハイドロゲルを作製し、ハイドロゲル内部に細胞をカプセル化した。以後、ハイドロゲルを24時間の間、F-12培地で培養し、Live/Dead assay kit(Invitrogen)を使用して、生細胞と死細胞をそれぞれ染め分けし、蛍光顕微鏡(AMF4300、EVOS、Life Technology)を用いて観察した。10倍率の画像を4個撮影し、以下の式を用いて、細胞生存率を計算し、比較し、その結果を図6に示した。
細胞生存率=生細胞数/全細胞数 × 100
【0074】
図6に示すように、対照群フィブリンハイドロゲルと比較した結果、PEOまたはF127を含んで製造されたハイドロゲルも同様に赤色で染色された死細胞がほとんど観察されず、時間別、ハイドロゲル細胞の生/死の蛍光画像を確認した結果、本発明にて製造したフィブリン-PEOおよびフィブリン-F127ハイドロゲルの両方で対照群フィブリンハイドロゲルと比較した時、細胞の生存に差異がないことを確認した。したがって、本発明にて製造されたハイドロゲルは、すべての生体内投与時、生体に長く残存するにも拘わらず、生体適合性に優れていることを確認した。
【0075】
実施例7.半月板損傷の動物モデルで半月板再生効果の検証
前記実施例4にて製造されたフィブリンとPEOまたはフィブリンとF127を用いて製造されたハイドロゲルが半月板損傷の動物モデルにおいて、半月板再生の効果を示すか否かを検証するために、以下のような実験を行った。
【0076】
さらに具体的には、ウサギ(rabbit)関節軟骨損傷の動物モデルを作製するために、健康的なウサギを選び、体重に応じた適切な量のケタミンとロムプンで注射麻酔した後、ウサギが十分に全身麻酔されたことを確認し、両下肢膝関節部位の剃毛を行った後、姿勢を維持させながら絆創膏で固定した。両側膝部位をポビドンで消毒し、膝蓋骨を触知して位置を確認した後、膝関節の上、下、膝蓋骨の内側を通る切開線に沿って傍正中アプローチ(paramedian approach)で、膝関節内に到達し、膝蓋骨を外側へ捲って膝関節を屈曲させ、関節内部を観察した。特異な病的所見がないことを確認した後、半月板を3分の2以上切除(meniscectomy)した。前記のように半月板損傷を誘発してから、膝蓋骨を元の位置に戻した後、膝蓋骨周囲の軟部組織を吸収性糸で縫合し、皮膚を非吸収性糸で縫合した。ウサギが麻酔から覚めるのを確認した後、自在に動けるよう許容し、術後5日間、感染を防ぐために鎮痛剤と抗生物質を投与した。一週間後、準備したダブルシリンジ(double syringe)注射器1区画には、フィブリノゲン100mg/mL、アプロチニン0.5mg/mLを、注射器2区画には、トロンビン2500U/ml、塩化カルシウム5(w/v)%、またはトロンビン2500U/ml、塩化カルシウム5(w/v)%とPEO10.0%、またはトロンビン2500U/ml、塩化カルシウム5(w/v)%とF127 20.0%を入れた後、前記動物モデルの左側に皮膚を切開せずに、半月板損傷部位に注入した。反対側肢には何ら処理をしなかった。4週間、8週間および16週間経過した後、各ウサギから損傷および治療を施した半月板を取り除いて肉眼的評価を実施し、これを再生された半月板の面積をimage Jプログラムを使って測定し評価した。また、組織を固定した後、H&E、Safranin O染色およびType I collagenに対する免疫染色を行い、Histological tissue quality scoreを利用した定量化を通じて再生された半月板を分析した。その結果を図7及び図8に示した。
【0077】
図7及び図8に示すように、フィブリンのみ単独で含んで製造された対照群のハイドロゲルに比べてフィブリン-PEOおよびフィブリン-F127ハイドロゲルを注入した群から、4週から線維組織が生成され始めて12週には半月板組織と類似した組織が生成されることを確認した。これらの結果は、ウサギの半月板損傷後1週間、フィブリン-PEOおよびフィブリン-F127ハイドロゲルを、皮膚を切開せずに注入しても、4週、8週、12週には半月板が再生されることを示す結果である。したがって、フィブリン-PEOおよびフィブリン-F127ハイドロゲルを用いれば、損傷した膝関節半月板部位において、周囲細胞の挙動により軟骨板の細胞を、優れた効率で生成することができ、効果的に半月板損傷を治療することを確認した。
【0078】
実施例8.再生された半月板の圧縮強度試験
半月板支持体の重要な物性は、外部から加えられる力に耐えられる圧縮強度である。したがって、前記実施例7において12週目に再生された半月板を4mmパンチを使って2カ所にサンプルを切り取った後、引張力測定器で圧縮強度を測定し、本発明のフィブリン-PEOおよびフィブリン-F127ハイドロゲルを注入して再生された半月板の強度を確認し、その結果を図9に示した。
【0079】
図9に示すように、何も処理していない(meniscectomy only)群とフィブリンを単独処理した群に比べてフィブリン-PEO、フィブリン-F127ハイドロゲルの注入を通じて再生された組織の圧縮強度が著しく増加したことを確認した。具体的には何も処理していないMeniscectomy onlyにおいて、Mpa値は、203.3±43.2、フィブリンを単独注入した群では、844.9±32.6の圧縮強度を確認し、フィブリン+PEOハイドロゲルを注入した群からは4086.7±542.1、フィブリン+F127ハイドロゲルを注入した群からは3406.8±312.1、そしてNormal meniscusの場合には、6688.6±1012.5値を確認した。したがって、本発明のフィブリン+PEOハイドロゲルおよびフィブリン+F127ハイドロゲルを注入して、再生された半月板の強度が正常な軟骨板の60%以上となることを確認し、軟骨板再生に有効に用いることができることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9