(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】低放射率コーティングを使用する、レーザ溶接用の透明な板ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20230206BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20230206BHJP
E06B 3/663 20060101ALI20230206BHJP
【FI】
C03C27/06 101H
C03C27/06 101A
C03C17/36
E06B3/663 G
E06B3/663 A
(21)【出願番号】P 2021121287
(22)【出願日】2021-07-26
(62)【分割の表示】P 2018527889の分割
【原出願日】2016-11-29
【審査請求日】2021-08-24
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ミハイロヴィッチ ストレリツォフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー トーマス
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514233(JP,A)
【文献】特開2003-321255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0027168(US,A1)
【文献】特開2007-106668(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083770(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/008724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
C03C 15/00-23/00
27/00-29/00
E06B 3/54-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止された物品であって、
(i)第1のガラス材料、第1の外面と反対側の第1の内面、及び第1の外縁を含む、第1の板ガラスと、
(ii)第2のガラス材料、第2の外面と反対側の第2の内面、及び第2の外縁を含む、第2の板ガラスであって、
前記第1の板ガラスから離間され、かつ、前記第1及び第2の内面が互いに向き合うように、前記第1の板ガラスに略平行に配置されている、第2の板ガラスと、
(iii)前記第1及び第2の板ガラスの対向する前記内面の間の低放射率層と、前記低放射率層が約50nm~約500nmの厚さを有し、
前記第1の板ガラス、前記第2の板ガラス、及び前記低放射率層が、420nm~750nmの可視光波長に対して透過性であり、
(iv)前記低放射率層に隣接するレーザ誘起された端部封止であって、溶解した低放射率層を有する前記第1及び第2の板ガラスの間に封止された内部領域を画成するように、前記第1及び第2の表面の少なくとも一部の周りに形成され、かつ、それらを接続する、端部封止と、
を含む、物品。
【請求項2】
前記第1の板ガラス又は前記第2の板ガラスの前記内面上に形成された複数のガラスバンプをさらに含み、前記低放射率層が、前記複数のガラスバンプと前記対向する内面との間にあることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記低放射率層が、前記複数のガラスバンプと前記対向する内面との間の摩擦を低減し、
前記低放射率層と前記複数のガラスバンプのうちの1つとの間の静止摩擦係数が、前記複数のガラスバンプのうちの1つにおける1N~200Nの負荷に対して約0.1~約0.4の範囲であり、前記負荷が前記第1の内面と略直交する
ことを特徴とする、請求
項2に記載の物品。
【請求項4】
請求項
2又は3に記載の封止された物品からなり、
前記第1の板ガラスの前記第1の内面上の前記複数
のガラスバンプが、前記第2の板ガラスの前記第2の内面上の前記低放射率層と接している真空絶縁ガラス(VIG)窓。
【請求項5】
前記低放射率層が、SiO
2、Al
2O
3、ZnO、TiO
2、SnO
2、及びそれらの組合せからなる群より選択される無機層を含み、かつ
前記低放射率層が、金、銀、銅、及びそれらの組合せからなる群より選択される金属層を含むことを特徴とする、請求項4に記載の窓。
【請求項6】
前記低放射率層が、701nm~2,000nmの波長を有する赤外(IR)と近赤外(NIR)からなる太陽光を反射し、
前記第1の板ガラス、前記第2の板ガラス、及び前記低放射率層が、約450nm~約625nmの波長において、最大で70%の組合せ透過を有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の窓。
【請求項7】
前記低放射率層と前記複数のガラスバンプのうちの1つとの間の静止摩擦係数が、前記複数のガラスバンプのうちの1つにおける40N~160Nの負荷に対して0.1~0.4の範囲であり、前記負荷が前記第1の内面と略直交し、
前記複数のガラスバンプが、約80μm~約300μmの高さを有することを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の窓。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2015年11月30日出願の米国仮特許出願第62/260,802号の優先権の利益を主張して2016年11月29日に出願された国際出願の日本国へ国内移行された特願2018-527889を親出願とする分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、低放射率(低-e)コーティングを使用する、真空絶縁ガラス(VIG)窓における、レーザ溶接用の透明な板ガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
真空によって絶縁されたガラス(VIG)窓は、典型的には、板ガラス間に位置する減圧された空間(すなわち、真空)を有する、2つ以上の板ガラスを含む。全体的な構造は、通常のガラス窓と比較して、改善された熱及びノイズ絶縁特性を提供する。隣接する板ガラス間のたるみ及び接触を防ぐために、離散したスペーサを、隣接する板ガラス間に配置することができる。スペーサは、アルミニウム、プラスチック、セラミック、又はガラスでできていてよく、また、通常、板ガラスとは異なる、すなわち、それらは、板ガラス間に配置かつ固定された、別個の離散した要素である。板ガラス間に減圧された空間を生成するために、2つ以上の板ガラス間には、空間内の真空を保持することができ、かつ、2つ以上の板ガラスの熱膨張によって生じる剪断力に耐えることができる、端部封止が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、VIG窓の減圧された空間の周りの板ガラスの縁部を封止するための代替的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態によれば、封止された物品が開示される。本物品は、第1の板ガラス、第2の板ガラス、低放射率層、及び端部封止を含みうる。実施形態では、第1及び第2の板ガラスは各々、外面と反対側の内面、及び外縁を伴って、ガラス材料から形成される。実施形態では、第1の板ガラスは、第2の板ガラスから離間し、かつ、第1及び第2の内面が互いに向き合うように、第2の板ガラスと略平行に配置される。実施形態では、低放射率層が、第1及び第2の板ガラスの対向する内面間に存在する。実施形態では、端部封止が、低放射率層に隣接し、かつ、第1及び第2の板ガラスの間に封止された内部領域を画成するように、第1及び第2の外縁の少なくとも一部の周囲に形成されて、それら接続する。
【0006】
本開示の別の実施形態によれば、真空絶縁ガラス(VIG)窓が開示される。VIG窓は、第1の板ガラス、第2の板ガラス、低放射率コーティング、複数のガラスバンプ、及びレーザ誘起された端部封止を含みうる。実施形態では、第1及び第2の板ガラスは各々、外面と反対側の内面、及び外縁を伴って、ガラス材料から形成される。実施形態では、第1の板ガラスは、第2の板ガラスから離間し、かつ、第2の板ガラスと略平行に配置される。低放射率コーティングは、第2の板ガラスの内面に位置付けられうる。複数のガラスバンプは、第1の板ガラスの内面に、第1のガラス材料で形成されうる。実施形態では、レーザ誘起された端部封止は、低放射率層に隣接し、かつ、第1及び第2の板ガラスの間に封止された内部領域を画成するように、第1及び第2の外縁の少なくともそれぞれの一部分の周りに形成される。例示的な実施形態では、第1の板ガラスの第1の内面上の複数のレーザで形成されたガラスバンプは、第2の板ガラスの第2の内面上の低放射率コーティングと接触する。
【0007】
本開示のさらに別の実施形態によれば、VIG窓の製造方法が開示される。実施形態では、本方法は、第1の板ガラスにレーザ光を照射して、第1の板ガラスの第1の内面上に複数のガラスバンプを形成する工程を含む。実施形態では、本方法はまた、第1の板ガラスの第1の内面を、第2の板ガラスの第2の内面に隣接し、かつ、第2の板ガラスと略平行に配置する工程も含む。第1及び第2の板ガラスは各々、外面と反対側の内面、及び外縁を伴って、ガラス材料から形成される。第2の板ガラスの内面は、低放射率コーティングを含みうる。実施形態では、本方法は、第1及び第2の板ガラスを結合して、第1及び第2の板ガラス間に封止された内部領域を生成する工程を含む。第1の板ガラス上の複数のガラスバンプは、封止された内部領域内で、第2の板ガラス上の低放射率コーティングと接触しうる。
【0008】
例示的な実施形態を詳細に例証する、以下の詳細な説明及び図面に進む前に、本発明にかかる技術は、詳細な説明に記載された、若しくは図面に示された、詳細又は方法に限定されないことが理解されるべきである。例えば、当業者には理解されるように、図面の1つに示される実施形態に関連する特徴及び属性、若しくは、実施形態の1つに関連する本文に記載される特徴及び属性は、別の図に示されている、若しくは、本文中のどこかに記載されている他の実施形態にも十分に適用可能である。
【0009】
本開示、並びに、上記のもの以外の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明を考慮した場合に、よりよく理解されよう。このような詳細な説明は、以下の図面について言及される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例示的な実施形態に従う、例となる2つの板ガラスVIG窓の正面図
【
図2】方向1-1から見たときの
図1のVIG窓の断面図
【
図4A】
図2と同様の、中間の板ガラスの両表面にガラスバンプスペーサが形成された、中間の板ガラスを有する3重板ガラスVIG窓の例となる実施形態を例証する、断面図
【
図4B】ガラスバンプスペーサの第2のセットが中間の板ガラスではなくバック板ガラスに形成されている以外は、
図4Aと同様の図
【
図4C】ガラスバンプスペーサの第1及び第2のセットが中間の板ガラスではなく、フロント及びバック板ガラスに形成されている以外は、
図4Aと同様の図
【
図5A】例示的な実施形態に従う、低放射率層を使用するレーザ溶接の例示的な手順を示す図
【
図6】例示的な実施形態に従う、それらの間に低放射率コーティングを有するレーザ封止された板ガラスの写真
【
図7】例示的な実施形態に従う、それらの間に低放射率コーティングを有するレーザ封止された板ガラスの写真
【
図8】例示的な実施形態に従う模擬的な物品における、低放射率層を横切って移動するガラスバンプの力曲線のグラフ
【
図28】例示的な実施形態に従う、そこを横切って移動するガラスバンプに由来する、低放射率層の摩耗パターン
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段の定めがない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに似た又はそれと同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験に用いることができるが、例示的な方法及び材料について、以下に記載する。
【0012】
本開示の物品は、有機発光ダイオード(OLED)、半導体パッケージ、VIG窓10、量子ドットチップレット、マイクロ流体デバイス、又は、吸収薄膜を使用して互いに封止された密閉ガラス構造を必要とする他の用途のための封止されたガラスパッケージでありうる。
【0013】
図1は、VIG窓10の例となる実施形態の正面図である。VIG窓10は、2つの板ガラス又は3つの板ガラスを含みうる。一実施形態では、VIG窓10は、第2の板ガラスから離間され、かつ、それと略平行に配置された、第1の板ガラスを含む。第1及び第2の板ガラスは各々、外面と反対側の内面を含む。第1及び第2の板ガラスはまた、各々、少なくとも1つの外縁も含む。第1及び第2の板ガラスは、ガラス材料でできている。他の実施形態では、VIG窓10は、外面と反対側の内面、及び少なくとも1つの外縁を含む、第3の板ガラスを含んでいてもよい。第3の板ガラスもまた、ガラス材料で形成されている。第3の板ガラスは、第1及び第2の板ガラスの間に、かつ、それらと略平行に、あるいは、第1又は第2の板ガラスのいずれかの外面に対向して、位置付けられうる。
【0014】
図2は、方向1-1から見たときの
図1の例となる2重板ガラスVIG窓10の断面図である。デカルト座標が参照のために示されている。VIG窓10は、互いに反対側に、かつ、互いに略平行に配置された、フロント板ガラス20F及びバック板ガラス20Bを含む。実施形態では、フロント板ガラス20Fは、VIG窓10を構造体(例えば、建物)に取り付けるときに、外側の板ガラスになるように構成されうる。フロント板ガラス20Fは、第1のガラス材料でできた本体部分23Fを有し、かつ、外面及び内面22F及び24Fと外縁28Fとを有する。同様に、バック板ガラス20Bは、第2のガラス材料でできた本体部分23Bを有し、かつ、外面及び内面22B及び24Bと外縁28Bとを有する。例となる実施形態では、本体部分23F及び23Bを構成する第1及び第2のガラス材料は同じである。さらなる例となる実施形態では、本体部分23F及び23Bを構成する第1及び第2のガラス材料のいずれか又は両方は、化学強化されたガラス、テンパードガラス、又はイオン交換されたガラスを含みうる。ガラス組成物及び強化技法の例は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第8,679,599号明細書に提供されている。フロント及びバック板ガラス20F及び20Bは、それぞれの内面24F及び24Bから測定して、距離DGだけ分離されている。
【0015】
VIG窓は、フロント板ガラス20F及びバック板ガラス20Bの内面24F及び24Bの間に低放射率層25を含みうる。板ガラス20F及び20B,並びに低放射率層25は合わせて、約450nm~約625nmの波長において、最大で70%、又はさらには最大で80%の組合せ透過を有しうる。低放射率層25は、物理気相堆積、加熱分解、スパッタリング、3-Dプリンティング、又は他の慣習的な方法によって、フロント板ガラス20F又はバック板ガラス20Bの表面に堆積されうる。例示的な実施形態では、
図2のVIG窓10は、表面24F上に低放射率層25を含む(図示せず)。
【0016】
低放射率層25はまた、複数の層で形成されたコーティングであってもよい。例えば、低放射率コーティングは、赤外線反射層及び1つ以上の透明な無機層を含みうる。赤外線反射層及び1つ以上の透明な無機層は、各々の幾つかの代替的な層を含めた、任意の構成で配置されうる。赤外線反射層は、コーティングされた板ガラスを通じた熱の伝達を低減する、銀、金、銅、及びそれらの組合せなどの導電性金属を含みうる。低放射率コーティング内の無機層は、赤外(IR)及び近赤外(NIR)光を反射するために、及び、色及び耐久性などのコーティングの他の特性及び特徴を制御するように、使用されうる。無機材料は、中でもとりわけ、亜鉛、スズ、アルミニウム、インジウム、ビスマス、及びチタンの酸化物を含めた、金属酸化物を含む。低放射率層25の無機層は、SiO2、Al2O3、ZnO、TiO2、SnO2、及びそれらの組合せを含みうる。例示的な実施形態では、低放射率層25の上部は、ケイ素、アルミニウムの酸化物(例えば、SiO2及びAl2O3)、及びそれらの組合せを含めた、耐久性組成物を含みうる。Cardinal IG Company社、Guardian Industries社等から市販される低-eコーティングは、本開示に従うものである。
【0017】
例となる低放射率コーティングは、各々、透明な無機材料の層間に挟まれた、1つ又は2つ、又はさらには3つ~4つの金属層(例えば、銀、金、アルミニウム、銅等)を含む。金属層の数が増えると、全体の赤外反射も増加しうるが、追加の金属層は、窓を通過する可視光透過率も低下しうる、及び/又は、コーティングの色又は耐久性に悪影響を与えうる。本開示の例となる低放射率コーティングは、約1nm~約1マイクロメートル、又は約50nm~約500nmの厚さを有する。低放射率コーティングの個々の層は、数百ナノメートルから数十マイクロメートルの厚さを有しうる。本開示の低放射率層25は、赤外(IR)及び近赤外(NIR)太陽光波長を反射しうる。実施形態では、低放射率コーティングは、低放射率層25と接するNIR及びIR波長の≦20%、又はさらにはNIR及びIR波長の≦5%を透過させうる。すなわち、低放射率コーティングは、NIR及びIR波長の≧1%かつ≦20%を透過させうる。実施形態では、低放射率層25は、約700nm~約2,000nmの太陽光波長を反射しうる。実施形態では、低放射率層25は、約420nm~約750nmの波長に対して透過性である。
【0018】
VIG窓10は、スペーサ50をさらに含む。実施形態では、スペーサ50は、バック板ガラス20Bの内面24Bに一体的に形成された、複数のガラスバンプスペーサ50である。ガラスバンプスペーサ50はまた、板ガラス20Fの内面24Fにも形成されうる。
図3は、例となるガラスバンプスペーサ50の拡大図である。ガラスバンプスペーサ50は、バック板ガラス20Bと一体的に形成され、VIG窓10に対する別個の又は個別の要素として追加されるのではないことに留意されたい。よって、ガラスバンプ50は、バック板ガラス20Bと同じ材料で形成され(したがって、その材料で構成され)、実際、本体部分23Bの延長である。ガラスバンプ50を形成する例となる方法(レーザ誘起された放射線によるものを含む)は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第8,679,599号明細書に論じられている。板ガラス20Bからガラスバンプ50をエッチングする例となる方法は、例えば、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、発明の名称を「真空絶縁ガラスユニット及びその製造方法(VACUUM INSULATED GLASS UNITS AND METHODOLOGY FOR MANUFACTURING THE SAME)」とする米国特許出願第62/248,715号明細書(代理人整理番号SP15-339PZ)に提供されている。ガラスバンプスペーサ50を含むバック板ガラス20Bの表面24Bは、その上に低放射率コーティング50も含みうる。これは、フロント板ガラス20Fの表面24F上の低放射率コーティング50に加えても(又は代替としてでも)よい。スペーサ50はまた、板ガラス20B及び20F間の離散した金属、セラミック、アルミニウム、プラスチック、又はガラスのスペーサであってもよい。
【0019】
例となる実施形態では、スペーサ50は、互いに規則的離間されている。ガラスバンプスペーサ50は、本体部分23Bと一体的に形成されうることから、それらは、VIG窓10を通常の(すなわち、略垂直に入射する)視野角で見た場合に、実質的に不可視である。その結果、ガラスバンプ50は、
図1には仮想線(phantom)(点線)で示されている。ガラスバンプ50は、
図3に示されるように、「先端」又は「上部」51を有する。後述するように、上部51は、
図3に示されるように丸みを帯びている必要はない。例えば、上部51は、大きい曲率半径を有していてもよく、又はさらには平坦な上部を有していてもよい。本開示に従うガラスバンプの幾何学形状は、それらの内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、発明の名称を「ガラス物品上のガラスバンプ及びレーザ誘起した成長方法(GLASS BUMPS ON GLASS ARTICLES AND METHODS OF LASER-INDUCED GROWTH)」とする、米国特許出願第14/808,790号明細書(代理人整理番号SP15-169PZ)、及び、発明の名称を「ガラス物品上の窪んだガラスバンプ、及びその形成方法(DIMPLED GLASS BUMPS ON GLASS ARTICLES AND METHODS OF FORMING THE SAME)」とする、米国特許出願第62/410,466号明細書(代理人整理番号SP16-301PZ)に提示されている。スペーサ50は、フロント板ガラスの内面24Fと接触し、フロント及びバック板ガラス20F及び20B間の離間距離DGを維持する役割を果たしうる。
【0020】
例示的な実施形態では、スペーサ50は、板ガラスの内面24F上の低放射率層25と接触する。組み立ての間、VIG窓10は、封止された内部領域から無機物を除去するため、又は端部封止30として作用するガラスフリットを硬化させるため、又はその両方のために、約350℃~約450℃に加熱されうる。したがって、低放射率層25は、スペーサ50(とりわけ、ガラスバンプスペーサ)が,この処理中に、板ガラスの内面24Fに接着するのを防ぐことができる。
【0021】
組み立て後、フロント板ガラス20F及びバック板ガラス20Bは、VIG窓10の周りに、封止された縁部28によって互いに対して適所に実質的に係止されうる。対向する板ガラスの熱膨張によって、ガラスバンプスペーサ50が板ガラスの内面24Fに接触し、内面24Fを横切って移動及びドラッグしうる。約40N~約160Nの力、又は200Nの大きさの力で、ガラスバンプスペーサ50と対向する板ガラス表面の間を、板ガラス表面に沿ってガラスバンプ50が横移動することにより、ガラスバンプ又はガラス表面に損傷を与え、最終的には、VIG窓10の不具合を引き起こしうる。通常のVIG窓における熱膨張の間に、約40N~約160Nの負荷(板ガラス表面に略直交する負荷)に対するガラスバンプ50の上部51と板ガラスの表面との間の静止摩擦係数(CoF)は、約0.8~1.0、又はさらにはそれより高くなりうる。低放射率層25は、VIG窓10の対向する板ガラスの熱膨張の間に、ガラスバンプスペーサ50が板ガラスの内面24Fに損傷を与えるか又はその逆を防ぐように、低摩擦コーティングとして作用しうる。すなわち、低放射率層25は、複数のガラスバンプ50と、対向する接触した板ガラスとの間の摩擦を約50%~約80%低減しうる。低放射率層25によって分離される約40N~約160Nの負荷(板ガラス表面に略直交する負荷)に対するガラスバンプ50の上部51とガラスの表面との間の静的CoFは、約0.1~約0.4、又はさらには約0.2~約0.35でありうる。
【0022】
例となる実施形態では、板ガラス20F及び20Bは、ソーダ石灰ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、Gorilla(登録商標)ガラスから形成され、これらは、さらなる例となる実施形態では、0.5mm~5mm(例えば、0.5、0.7、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5mm)のそれぞれの厚さTGを有する。ソーダ石灰ガラスが最も一般的な窓ガラスであるが、本明細書に開示されるVIG窓10は、いかなるタイプのガラスにも適用することができ、ここで、一体的なガラスバンプスペーサ50は、以下に詳細に説明される方法を使用して形成することができる。例えば、本明細書に開示されるVIG窓は、低鉄(「ウルトラクリア」又は「ウルトラホワイト」)窓ガラス、並びに、以下に取り込まれ、論じられる他のガラスに適用される。実施形態では、板ガラス20F及び20Bは、420nm~750nmにおいて透過性である。例となる実施形態では、ガラスバンプスペーサ50は、50μm~300μm、又は75μm~150μm、及び/又はさらには100μm~120μmの範囲の高さ(「バンプ高さ」)Hを有する。例となる実施形態では、板ガラス20F及び20Bは、実質的に同じ厚さTGを有する(
図6参照)。
【0023】
端部封止30は、それぞれの外縁28F及び28Bにおいて、各外縁の少なくとも一部の間に設けられて、密閉封止を提供する。フロント及びバック板ガラスの内面24F及び24B間の端部封止30は、封止された内部領域40を画成する。実施形態では、端部封止30は、フロント及びバック板ガラス20F及び20B間に封止された内部領域40を画成するように、低放射率層25に隣接して形成され、かつ、外縁28F及び28Bの少なくとも一部の周りに形成される。実施形態では、端部封止30は、少なくとも部分的にレーザ誘起される。例示的な実施形態では、VIG窓10は、表面24F上に低放射率層25を含む。端部封止30は、ガラスフリットによる封止、板ガラス20B及び20F間の直接的な封止、又はそれらの間のシム又はガラスセグメントによる板ガラス20B及び20F間の封止でありうる。
【0024】
端部封止30を形成するために、
図5に示されるように、板ガラス20Bの表面24Bを、表面24F上の低放射率層25と接触させてもよい。レーザ500に由来する集束したレーザビーム501を使用して、板ガラス20B及び20Fに隣接した低放射率層25を局所的に加熱及び溶融させて、封止された界面を形成することができる。1つの手法では、レーザを、板ガラス20B又は20Fを通して導いて、次に、封止する表面にわたって平行移動(走査)させて、低放射率層25を局所的に加熱することができる。実施形態では、低放射率層25は、予め決められた波長を有するレーザビーム102に由来するレーザ光の約10%~約100%を吸収する。実施形態では、低放射率層25による、予め決められた波長を有するレーザビーム102に由来するレーザ光の少なくとも30%の吸収によって、端部封止30が形成される。
【0025】
レーザ100は、低放射率層25の界面における封止に影響するような適切な出力(例えば、レーザビーム102)を有しうる。例示的な実施形態では、レーザ100は、低放射率層25が出力波長の少なくとも30%を吸収するように、低放射率層25の組成物によって予め決められた波長を有する、レーザビーム102の出力を有する。例示的なレーザ100は、限定はしないが、一般的なディスプレイガラスの透明性の範囲にある、355nmのレーザなどのUVレーザでありうる。他の実施形態では、レーザ100は、約100nm~約400nmの所定の出力のレーザ光を有しうる。適切なレーザ出力は、約1W~約10Wの範囲でありうる。レーザスボットサイズに比例しうる封止された領域の幅WBは、例えば、0.06、0.1、0.2、0.5、1、1.5又は2mmなど、約10μm~約2mm、又は約10μm~約0.1mm(1,00μm)でありうる。レーザの平行移動速度(すなわち、封止速度)は、1、2、5、10、20、30、50、60、100、200、又は400mm/秒、600mm/秒、800mm/秒、1m/秒など、約1mm/秒~400mm/秒、又はさらには、1m/秒又はそれ以上の範囲でありうる。レーザスボットサイズ(直径)は約0.001~2mmでありうる。
【0026】
板ガラス表面24B及び24F及び低放射率層25が、レーザ誘起された端部封止30を形成するために互いに十分に近接(例えば、≦1μmの離間)できない実施形態では、端部封止30を形成する代替的な実施形態は、本開示の実施形態に従う。例えば、ガラスバンプスペーサ50は、縁部28Fの≦1μm以内になるには縁部28Bが大きすぎる、高さHを有しうる。したがって、ガラスシム(glass shim)又はガラスセグメント(例えば、ガラスガスケット)は、板ガラス20B及び20F間のギャップ28(
図5に示される)を満たすために、表面24F及び24B間に配置されうる。ギャップ28は、例えば、約2μm~約2mmの高さを有しうる。この実施形態では、ガラスバンプスペーサ50は、シム又はガラスセグメントがギャップ28を満たす場合に、低放射率層25と接触する。ガラスシム又はガラスセグメントはまた、表面24Fに面する主面、又は、表面24B上の低放射率層25と接する表面とは反対側の主面の一方にも、低放射率層25を有する。すなわち、ガラスシム又はガラスセグメントは、それ自体と板ガラス20B又は20F一方又は両方との間に封止を達成するように、低放射率層25を有しうる。対向する板ガラス間のガラスシム又はガラスセグメントの例となる構成、及び封止方法(レーザ誘起吸収によるものを含む)は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、発明の名称を「封止デバイスのためのインターロック式レーザ封止ガスケット(INTERLOCKED LASER SEALED GASKET FOR SEALED DEVICE)」とする同時係属中の米国特許出願第62/245,020号明細書(代理人整理番号SP15-338PZ)、及び発明の名称を「低溶融無機材料でコーティングした封止用ガスケットを有する封止デバイス(SEALED DEVICE WITH SEALING GASKET COATED WITH LOW MELTING INORGANIC MATERIAL)」とする米国特許出願第62/260,754号明細書(代理人整理番号SP15-363PZ)に提供されている。ガラスシム若しくはガラスセグメントは、
図2及び4A~Cの対向する板ガラス間に示されている。例示的な実施形態では、端部封止30は、板ガラス20B及び20F並びにガラスシム又はガラスガスケットを通るレーザビーム102の放射の単回の平行移動において、板ガラス20B及び20Fと、それらの間のガラスシム又はガラスセグメントの間に生成される。すなわち、レーザビーム102は、低放射率コーティングの幾つかの層を局所的に加熱及び溶融して、単回の平行移動で板ガラスの縁部28の幾つかの層を融着することができる。
【0027】
別の実施形態では、ガラスバンプスペーサ50及び縁部28Bは、例えば、板ガラス20Bから化学的にエッチングされてもよい。この実施形態では、ガラスバンプスペーサ50の高さHは、板ガラス20Bの表面24Bからの縁部28Bと同じ高さを有するであろう。したがって、ガラスバンプスペーサ50の上部51及び縁部28Bは、板ガラス20Fの表面24F上の低放射率層25と接触させることができよう。板ガラスに上述のエッチングされた構造を形成する例となる方法は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、発明の名称を「真空絶縁ガラスユニット及びその製造方法(VACUUM INSULATED GLASS UNITS AND METHODOLOGY FOR MANUFACTURING THE SAME)」とする米国特許出願第62/248,715号明細書(代理人整理番号SP15-339PZ)に提供されている。
【0028】
封止された内部領域40は、望ましい断熱及び遮音特性を有するVIG窓10をもたらす1気圧未満の真空圧力(例えば、10-6torr(およそ10-4Pa)程度)を有するように、少なくとも部分的に減圧されることが好ましい。実施形態では、フロント及びバック板ガラス20F及び20Bのそれぞれの外縁28F及び28Bの周りの端部封止30は、フロント及びバック板ガラス20F及び20Bの表面24F、24B間に密閉封止された内部領域40を生成する。
【0029】
本開示のVIG窓10の製造方法は、板ガラス20Bにレーザ光を照射して、表面24B上に複数のガラスバンプスペーサ50を形成する工程を含む。方法はまた、表面24Bを、板ガラス20Bに隣接して、かつ、板ガラス20Fの表面24Fに略平行に配置する工程も含む。例示的な実施形態では、板ガラス20Fの表面24Fは、低放射率層25を含む。他の実施形態では、表面24B上のガラスバンプスペーサ50は、板ガラス20F及び20Bが本方法に従って配置される場合に、表面24F上の低放射率層25と接触する。VIG窓10の製造方法はまた、板ガラス20F及び20Bを結合して、低放射率層25を予め決められた波長を有するレーザ光と接触させることによって、板ガラス20F及び20B間に封止された内部領域40を生成する工程も含む。低放射率コーティング25をレーザ光と接触させる工程は、板ガラス20B又は20Fの一方を横切ってレーザビーム102を平行移動(すなわち、移動)させて、低放射率層25を加熱する工程も含みうる。例示的な実施形態では、表面24B上のガラスバンプスペーサ50は、封止された内部領域40内で表面24F上の低放射率層25と接触する。VIG窓10の形成方法は、封止された内部領域40内に大気圧未満の真空圧力(例えば、10-4torr(およそ10-4Pa))を形成する工程をさらに含む。方法は、ギャップ28に沿って、又は板ガラス20F又は20Bの一方を通じて、圧送チューブを介して、封止された内部領域40からガスを圧送する工程を含む。二重及び三重板ガラスのVIG窓10を形成する代替的な方法及追加の工程は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第8,679,599号明細書に提供されている。
【0030】
図4Aは、
図2と同様の断面図であり、フロント板ガラス20Fとバック板ガラス20Bとの間に挟まれた中間の板ガラス20Mを含む、3重板ガラスのVIG窓10の例となる実施形態を示している。中間の板ガラス20Mは、第3のガラス材料の本体部分23Mを有し、かつ、フロント側22M、バック側24M及び縁部28Mを有している。中間の板ガラス20Mは、板ガラス20F又は20B、又はその両方と同じ又は異なる厚さ又は材料の構成を有しうる。中間の板ガラス20Mは、板ガラス20F及び20B、又はその両方と同じ又は異なる強化操作を被りうる。
【0031】
ガラスバンプスペーサ50の第1及び第2のセットは、中間の板ガラス20Mのフロント側及びバック側22M及び24Mの両方にそれぞれ形成され、中間の板ガラス20Mとフロント板ガラス20Fとの間の距離DGA、及び中間の板ガラスとバック板ガラス20Bとの間の距離DGBを維持する役割をそれぞれ果たす。この実施形態では、表面24F及び24Bは、端部封止30を達成するため、又はガラスバンプスペーサ50の接触位置における低摩擦コーティングとして作用するため、若しくはその両方のために、低放射率層25を含みうる。
図4Aに示される例となる実施形態では、複数の端部封止30が用いられており、ここで、一方の端部封止は、縁部28F及び28Mの少なくともそれぞれの一部分を封止する役割を果たし、他方の端部封止は、縁部28M及び28Bの少なくともそれぞれの一部分を封止する役割を果たす(
図4B参照)。別の例となる実施形態では、単一の端部封止30が、縁部28F、28M及び28Bを封止する役割を果たす。
【0032】
図4Bは、
図4Aと同様であり、方向1-1から見たときの
図1における三重板ガラスのVIG窓10の代替的な例となる実施形態を示している。この実施形態では、ガラスバンプスペーサ50の第2のセットは、中間の板ガラス20Mではなく、バック板ガラス20Bの内面24Bに形成される。この実施形態では、表面24F及び24Mは、端部封止30を達成するため、又はガラスバンプスペーサ50の接触位置における低摩擦コーティングとして作用するため、若しくはその両方のために、低放射率層25を含みうる。
図4Bはまた、上述のように複数の端部封止30が用いられる、例となる実施形態も示している。
【0033】
図4Cは、
図4Bと同様であり、ガラスバンプスペーサ50の第1のセットが、中間の板ガラス20Mではなく、フロント板ガラス20Fの内面24Fに形成される、3重の板ガラスVIG窓10のさらに別の代替的な例となる実施形態を示している。この実施形態では、板ガラス20Mの一方又は両方の表面(表面22M及び24M)は、端部封止30を達成するため、又はガラスバンプスペーサ50の接触位置における低摩擦コーティングとして作用するため、又はその両方のために、低放射率層25を含みうる。よって、
図4Cに示される実施形態では、ガラスバンプスペーサは、内側及び外側の板ガラスに形成されているが、
図4Aに示される実施形態では、ガラスバンプスペーサは、中間の板ガラスに形成される。
【0034】
上に詳細に開示したように、1つ以上の低放射率層25は、ガラスバンプスペーサ50が接触する板ガラス20F、20M、及び20Bの1つ以上の表面上に形成されうる。明確にするために、低放射率層25は、
図1、2及び4A~Cに示される例示的な実施形態から省かれている。
図4A~Cに提供される三重の板ガラスVIG窓10の実施形態は、上述の2重の板ガラスVIG窓10に関して記載された方法と同様に、該方法に従って組み立てられうる。
【実施例】
【0035】
本開示は、以下の実施例を参照することによって、さらに明確になるであろう。以下の実施例は、例示的なものであり、限定と解釈されるべきではない。
【0036】
Pella(登録商標)による2つのソーダ石灰ガラス(SLG)板ガラス(61cm長×61cm幅×2.1mm厚)をLowe’s社から購入した。板ガラスの一方は、その表面の一方に建築用途で使用されるPellaの高度低放射率(低-e)コーティングを含んでいた。他方の板ガラスは、いずれのコーティングも有しない、単なるSLGであった。2つのPella(登録商標)板ガラスを、次の実施例で使用するために、約10枚の5cm×5cmの小片へと切断した。
【0037】
実施例1:低放射率コーティングを使用するレーザ溶接
2つの板ガラスの各々の1つの試料を、板ガラス間の界面に、板ガラスと接触している低放射率コーティングとともに配置した。355nmの波長を有するUVレーザからのレーザビームを、2つの板ガラス間の界面に略直交して提供した。3ワットのレーザビームを、界面におけるビームスポット径が約100μmになるように、板ガラス間の界面を横切って導いた。レーザビームを、30mm/秒で板ガラスの界面を横切って平行移動させた。レーザエネルギーを吸収することによって、低放射率コーティングを加熱し、2つのソーダ石灰板ガラスをともに結合させて、端部封止30を生成した。2つの板ガラス間の結合の写真が
図6に提示されている。
図6における結合の幅W
Bは、約130μmである。
【0038】
第2の結合を、上述と同様の操作で、上述の2つのソーダ石灰板ガラス間に生成した。しかしながら、レーザ出力は、60mm/秒の界面を横切る移動速度で、4ワットであった。この異なる出力及び平行移動における2つの板ガラス間の結合の写真が
図7に提示されている。
図7における結合の幅W
Bは約130μmである。
【0039】
実施例2:低摩擦コーティングとしての低放射率コーティング
次の8つの試験については、上述の2つの板ガラス(1つのSLG板ガラスと、一方の表面に低-eコーティングを有する1つのSLG板ガラス)の各々の一方を使用した。すなわち、8対の板ガラス(各対の一方は低-eコーティングを有する)を次のように調製した。ガラスバンプスペーサを、8つのSLG板ガラス(すなわち、低-eコーティングを有しない板ガラス)の各々にレーザ誘起することによって形成した。具体的には、15ワットでの355nm波長のレーザビームを、板ガラスの各々に通し、その後ろに収束させて、150μmの高さ及び600μmの直径を有する、ガラスバンプスペーサを生成した。各ガラスバンプを、380℃で約3時間、プラズマ洗浄して(すなわち、イオン化ガス照射による)、ガラスバンプ表面から汚染物質(例えば、微粒子)を除去した。低-eコーティングを有する8つのSLG板ガラスの半分を、最初に380℃で約3時間、加熱処理して、有機物除去の間のVIG窓の加熱をシミュレートし、次に、410℃で約30分間、加熱処理して、VIG窓のフリット端部封止をシミュレートした。低-eコーティングを有する他の4つのSLG板ガラスは、試験前に加熱処理されなかった。
【0040】
次に、ガラスバンプを有する8つのSLG板ガラスを、低-eコーティングを有する他の8つのSLGと対にし、ガラスバンプを低-eコーティング表面に接触させた。板ガラスの各対を、Nanovea M1メカニカルテスター(「テスター」)内に置き、低-eコーティングと接触するVIG窓のガラスバンプにおける40N及び160Nの負荷(すなわち、法線力)をシミュレートした。8つの試験のそれぞれについて同じ負荷を保って、各ガラスバンプを、0.5mmの低-eコーティングを横切って1.0mm/分で移動させると同時に、テスターで、ニュートン(N)での法線力の負荷(FN)及びニュートン(N)での摩擦力(FF)を測定し、摩擦係数(CoF)を計算した。次に、バンプを元の位置へと0.5mm戻し、1回目の通過と同じ領域にわたって試験をさらに2回繰り返し、VIG窓における線熱膨張及び収縮をシミュレートした。
【0041】
下記表1は、各試験から得られた平均(Ave.)F
N負荷及び3回の通過の各々についての結果的に得られたガラスバンプと低-eコーティングとの間のCoFを提示している。3つのガラスバンプの通過の各々の力曲線(3回の通過はすべて、同じ前向きの方向で測定した)が、
図8~27に提供されている。ガラスバンプの元の位置へと戻る動きは測定しなかった。通過に基づく各試験についての適用可能な図面が、下記表1に示されている。
図8~27の各々において、F
N負荷線及び適用可能なy軸の測定値(N)は、200と記されており(太字、実線)、F
F負荷線及び適用可能なy軸の測定値(N)は、202と記されており(破線)、CoF線及び適用可能なy軸の測定値(単位なし)は、204と記されている(実線)。
図8~27の多くの場所において、破線202及び実線204が重なり合っている。
図8~27のx軸は、スクラッチ長(mm)である。不確定(indet.)でない場合、
図8~27の各々に、静的CoF点が206と記されている。
図28は、F
N=40Nでガラスバンプスペーサがその上を3回通過した後の試験1の低-eコーティングの摩耗パターンの写真である。
図29は、F
N=160Nでガラスバンプスペーサがその上を3回通過した後の試験4の低-eコーティングの中程度の摩耗パターンの写真である。
【0042】
【0043】
上記表1における各試験のCoFは、低-eコーティングが、ガラスバンプと対向する板ガラスとの間の横移動に起因して、CoFを約0.8~1から約0.2~0.4へと低下させることを示している。
【0044】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は、「約」別の特定の値までとして表されうる。このような範囲が表される場合、例は、その1つの特定の値から、及び/又は、他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」を用いることにより、その特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点は、他方の端点と関連して、及び他方の端点とは独立しての両方で重要であることがさらに理解されよう。
【0045】
本明細書中の記載は、特定の方法で機能するように「構成」されているか、又は「適合」されいる、本開示の構成要素を指すことにも留意されたい。この点において、このような構成要素は、そのような記載が、意図された用途の記載とは対照的に構造的記載である場合には、特定の特性を具現化する、又は特定の方法で機能するように「構成」又は「適合」されいる。より詳細には、構成要素が「構成」又は「適合」されている態様についての本明細書での言及は、該構成要素の既存の物理的な状態を意味し、そのようなものとして、該構成要素の構造的特徴の明確な記載として解釈されるべきである。
【0046】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0047】
実施形態1
封止された物品であって、
第1のガラス材料、第1の外面と反対側の第1の内面、及び第1の外縁を含む、第1の板ガラスと、
第2のガラス材料、第2の外面と反対側の第2の内面、及び第2の外縁を含む、第2の板ガラスであって、
前記第1の板ガラスから離間され、かつ、前記第1及び第2の内面が互いに向き合うように、前記第1の板ガラスに略平行に配置されている、第2板ガラスと、
前記第1及び第2の板ガラスの対向する前記内面の間の低放射率層と
前記低放射率層に隣接する端部封止であって、前記第1及び第2の板ガラスの間に封止された内部領域を画成するように、前記第1及び第2の外縁の少なくとも一部の周りに形成され、かつ、それらを接続する、端部封止
を含む、封止された物品。
【0048】
実施形態2
前記結合が、前記低放射率層によって予め決められた波長を有するレーザ光を少なくとも30%吸収することによって形成される、レーザ誘起された結合であることを特徴とする、実施形態1に記載の物品。
【0049】
実施形態3
前記レーザ光の前記予め決められた波長が、100nm~400nmであることを特徴とする、実施形態2に記載の物品。
【0050】
実施形態4
前記レーザ誘起された結合が、約10μm~約1,000μmの幅を有することを特徴とする、実施形態2に記載の物品。
【0051】
実施形態5
前記第1の板ガラス、前記第2の板ガラス、及び前記低放射率層が、420nm~750nmにおいて透過性であることを特徴とする、実施形態1~4のいずれかに記載の物品。
【0052】
実施形態6
前記低放射率コーティングが、約50nm~約500nmの厚さを有することを特徴とする、実施形態1~5のいずれかに記載の物品。
【0053】
実施形態7
前記第1の板ガラス又は前記第2の板ガラスの前記内面上に形成された複数のガラスバンプをさらに含み、前記低放射率層が前記複数のガラスバンプと前記対向する内面との間にあることを特徴とする、実施形態1~6のいずれかに記載の物品。
【0054】
実施形態8
前記低放射率層が、前記複数のガラスバンプと前記対向する内面との間の摩擦を低減することを特徴とする、実施形態1~7のいずれかに記載の物品。
【0055】
実施形態9
前記低放射率層と前記複数のガラスバンプのうちの1つとの間の静止摩擦係数が、前記複数のガラスバンプのうちの1つにおける1N~200Nの負荷に対して約0.1~約0.4の範囲であり、前記負荷が前記第1の内面と略直交することを特徴とする、実施形態1~8のいずれかに記載の物品。
【0056】
実施形態10
前記結合が、前記第1及び第2の板ガラスの前記内面間に、封止された内部領域を生成することを特徴とする、実施形態1~9のいずれかに記載の物品。
【0057】
実施形態11
真空絶縁ガラス(VIG)窓であって、
第1のガラス材料、第1の外面と反対側の第1の内面、及び第1の外縁を含む、第1の板ガラスと、
第2のガラス材料、第2の外面と反対側の第2の内面、及び第2の外縁を含む、第2の板ガラスであって、
前記第1の板ガラスから離間され、かつ、前記第1の板ガラスに略平行に配置されている、第2の板ガラスと、
前記第2の板ガラスの前記第2の内面上の低放射率コーティングと、
前記第1の板ガラスの前記第1の内面上に前記第1のガラス材料で形成された、複数のガラスバンプと、
前記第1及び第2の板ガラスの間に封止された内部領域を画成するように、前記第1及び第2の外縁の少なくともそれぞれの一部分の周りに形成された、前記低放射率層に隣接した、レーザ誘起された端部封止と
を含み、
前記第1の板ガラスの前記第1の内面上の前記複数のレーザで形成されたガラスバンプが、前記第2の板ガラスの前記第2の内面上の前記低放射率コーティングと接している、
真空絶縁ガラス(VIG)窓。
【0058】
実施形態12
前記低放射率コーティングが、SiO2、Al2O3、ZnO、TiO2、SnO2、及びそれらの組合せからなる群より選択される無機層を含むことを特徴とする、実施形態11に記載の窓。
【0059】
実施形態13
前記低放射率コーティングが、金、銀、銅、及びそれらの組合せからなる群より選択される金属層を含むことを特徴とする、実施形態11又は12に記載の窓。
【0060】
実施形態14
前記第1の板ガラスの前記第1の内面と対向する前記低放射率コーティングの上層が、SiO2、Al2O3、又はそれらの組合せを含むことを特徴とする、実施形態11~13のいずれかに記載の窓。
【0061】
実施形態15
前記低放射率コーティングが、701nm~2,000nmの波長を有する太陽光を反射することを特徴とする、実施形態11~14のいずれかに記載の窓。
【0062】
実施形態16
前記低放射率コーティングと前記複数のガラスバンプのうちの1つとの間の静止摩擦係数が、前記複数のガラスバンプのうちの1つにおける40N~160Nの負荷に対して0.1~0.4の範囲であり、前記負荷が前記第1の内面と略直交することを特徴とする、実施形態11~15のいずれかに記載の窓。
【0063】
実施形態17
前記第1の板ガラス、前記第2の板ガラス、及び前記低放射率コーティングが、約450nm~約625nmの波長において、最大で70%の組合せ透過を有することを特徴とする、実施形態11~16のいずれかに記載の窓。
【0064】
実施形態18
前記複数のガラスバンプが、約80μm~約300μmの高さを有することを特徴とする、実施形態11~17のいずれかに記載の窓。
【0065】
実施形態19
前記第2の板ガラスが、構造体における外側の板ガラスであることを特徴とする、実施形態11~18のいずれかに記載の窓。
【0066】
実施形態20
真空絶縁ガラス(VIG)窓の製造方法において、
第1の板ガラスにレーザ光を照射して、前記第1の板ガラスの第1の内面上に複数のガラスバンプを形成する工程であって、
前記第1の板ガラスが、第1のガラス材料、第1の外面と反対側の前記第1の内面、及び第1の外縁を含む、工程、
前記第1の板ガラスの前記第1の内面を、第2の板ガラスの第2の内面に隣接し、かつ、該第2の板ガラスと略平行に配置する工程であって、
前記第2の板ガラスが、第2のガラス材料、第2の外面と反対側の前記第2の内面、及び第2の外縁を含み、かつ
前記第2の内面が低放射率コーティングを含む、工程、及び
前記低放射率コーティングを、予め決められた波長を有するレーザ光と接触させることによって、前記第1及び第2の板ガラスを結合して、前記第1及び第2の板ガラスの前記第1及び第2の内面間に封止された内部領域を生成する工程であって、
前記第1の内面上の前記複数のガラスバンプが、前記封止された内部領域内の前記第2の板ガラスの前記第2の内面上の前記低放射率コーティングに接している、工程
を含む、方法。
【0067】
実施形態21
前記封止された内部領域の内側に大気圧より低い圧力を生成する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態20に記載の方法。
【0068】
実施形態22
前記低放射率コーティングを、予め決められた波長を有するレーザ光と接触させる工程が、約1mm/秒~約1000mm/秒の速度で前記レーザ光によって形成されるレーザスポットを移動させて、前記低放射率コーティングを加熱する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態20に記載の方法。
【符号の説明】
【0069】
10 VIG窓
20 板ガラス
22 表面
23B本体部分
24 表面
25 低放射率層
28 ギャップ/封止された縁部
30 端部封止
40 封止された内部領域
50 ガラスバンプスペーサ
51 ガラスバンプの上部
100 レーザ
102 レーザビーム