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特許7221383紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、およびそれを含む紫外線硬化型樹脂組成物
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  • 特許-紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、およびそれを含む紫外線硬化型樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、およびそれを含む紫外線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20230206BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20230206BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230206BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230206BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230206BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230206BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230206BHJP
【FI】
C08G18/67 010
C08G18/75
C08G18/32 006
C08G18/28 090
C08F299/06
C09D4/02
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 CEZ
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021522788
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2020020774
(87)【国際公開番号】W WO2020241647
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2019101479
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】流尾 知充
(72)【発明者】
【氏名】中谷 圭佑
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-093317(JP,A)
【文献】特開平11-349646(JP,A)
【文献】特開2013-053249(JP,A)
【文献】特開昭61-036374(JP,A)
【文献】特開2012-159736(JP,A)
【文献】米国特許第04855334(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B32B 1/00 - 43/00
C08F 299/00 - 299/08
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 210/10
C08J 7/04 - 7/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイソシアネート化合物、
(B)ジオール化合物、
(C)ペンタエリスリトールトリアクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物、および
(D)水酸基含有フッ素化合物、
を反応して得られ、(A)成分に対する(C)成分の当量比が0.20~0.50である、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項2】
(A)ポリイソシアネート化合物、
(B)ジオール化合物、
(C)ペンタエリスリトールトリアクリレートを含む(メタ)アクリレート化合物、および
(D)水酸基含有フッ素化合物、
を反応して得られ、(A)、(B)、(C)成分の総量に対する(D)成分の量が0.01~10.0質量%である、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項3】
(A)成分として脂環式ポリイソシアネートを含む、請求項1または2に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項4】
(B)成分として炭素数2~6の鎖状脂肪族ジオールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項5】
(A)成分に対する(B)成分の当量比が0.50~0.80である、請求項1~4のいずれか一項に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含む、紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
塗料として用いられる、請求項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
前記塗料がインモールド成型用加飾フィルムに用いられる、請求項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物から形成される硬化塗膜。
【請求項10】
請求項に記載の硬化塗膜を基材上に備える塗膜付き基材。
【請求項11】
請求項いずれか一項に記載の紫外線硬化型樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて硬化塗膜を形成する硬化工程と、
を有する塗膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂に関する。また、本発明は、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂を含む紫外線硬化型樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、紫外線硬化型樹脂組成物から形成される硬化塗膜、硬化塗膜を備える塗膜付き基材、および塗膜付き基材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装、外装部材、および家電筐体向けなどで用いられているプラスチック加飾の分野では、プラスチック樹脂を型枠(モールド)内で成型する際に、機能性を付与するための加飾フィルムを一緒に貼り合わせるインモールド成型の様な熱成型の手法が広く用いられている。
【0003】
この熱成型に使用する加飾フィルムには、被着体であるプラスチックの立体形状に追従するための伸張性が必要とされるため、機能性を付与するためにフィルム表面に塗布する樹脂組成物にも伸張性が求められている。伸張性を有する樹脂組成物として熱硬化型樹脂組成物を用いる場合もあるが、生産性やフィルム巻き取り時のブロッキング性などの観点から紫外線硬化型樹脂組成物が好ましく用いられている。例えば、破断伸度が高く、成型性にも優れた紫外線硬化型樹脂組成物としては、多官能アクリレートモノマーと、多価アルコールと、イソシアネートモノマーあるいは有機ポリイソシアネートとを反応させることによって得られるウレタンアクリレートオリゴマーを用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
さらに、加飾フィルムには、耐薬品性や汚れ防止の観点から防汚性(撥水性)等の性能も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-111793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、樹脂成型品に耐薬品性や撥水性(防汚性)を付与するために、加飾フィルムの塗料(樹脂組成物)中にウレタンアクリレート樹脂を添加するだけでなく、フッ素化合物の様な添加剤(防汚剤)を後添加することを試みた。しかしながら、特許文献1に記載のウレタンアクリレートオリゴマーのような樹脂は凝集力が強いため、フッ素化合物の様な添加剤を後添加した場合に、硬化塗膜中に留まり、塗膜表面に配向し難く、撥水性(防汚性)が発現しにくいことを知見した。したがって、樹脂組成物中にフッ素化合物の様な添加剤(防汚剤)を後添加することなく、ウレタンアクリレート樹脂自体で撥水性(防汚性)を発現することが望まれる。また、樹脂成型品に加飾された際には、ウレタンアクリレート樹脂が最表面に位置することから、その下に位置する印刷層や柄層等の意匠を阻害しないように透明性が高いことも望まれる。
【0007】
本発明は上記の背景技術および新たな技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成可能な紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、(A)ポリイソシアネート化合物、(B)ジオール化合物、(C)(メタ)アクリレート化合物、および(D)水酸基含有フッ素化合物を反応させて得られた紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)ポリイソシアネート化合物、
(B)ジオール化合物、
(C)(メタ)アクリレート化合物、および
(D)水酸基含有フッ素化合物、
を反応して得られる、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[2] (A)成分として脂環式ポリイソシアネートを含む、[1]に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[3] (B)成分として炭素数2~6の鎖状脂肪族ジオールを含む、[1]または[2]に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[4] (C)成分としてペンタエリスリトールトリアクリレートを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[5] (A)成分に対する(B)成分の当量比が0.50~0.80である、[1]~[4]のいずれかに記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[6] (A)成分に対する(C)成分の当量比が0.20~0.50である、[1]~[5]のいずれかに記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[7] (A)、(B)、(C)成分の総量に対する(D)成分の量が0.01~10.0質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含む、紫外線硬化型樹脂組成物。
[9] 塗料として用いられる、[8]に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
[10] 前記塗料がインモールド成型用加飾フィルムに用いられる、[9]に記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
[11] [8]~[10]のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物から形成される硬化塗膜。
[12] [11]に記載の硬化塗膜を基材上に備える塗膜付き基材。
[13] [8]~[10]のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、紫外線照射により前記紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させて硬化塗膜を形成する硬化工程と、
を有する塗膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成可能な紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、このような紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む樹脂組成物を提供することもできる。さらに、このような紫外線硬化型樹脂組成物から形成される硬化塗膜、硬化塗膜を備える塗膜付き基材、および塗膜付き基材の製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による塗膜付き基材を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂>
本発明による紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、(A)ポリイソシアネート化合物、(B)ジオール化合物、(C)(メタ)アクリレート化合物、および(D)水酸基含有フッ素化合物を反応して得られるものである。このような紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成することができる。したがって、本発明による紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む紫外線硬化型樹脂組成物は、塗料として、特にインモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に使用できる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
【0013】
本発明による紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~30,000であり、より好ましくは5,000~25,000であり、さらに好ましくは7,000~20,000、特に好ましくは9,000~15,000である。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。重量平均分子量(Mw)が上記数値範囲内であれば、伸張性に優れるため、インモールド用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。
【0014】
本発明による紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の25℃における粘度は、好ましくは100~3,000mPa・sであり、より好ましくは500~2,000mPa・sであり、さらに好ましくは700~1,500mPa・sである。粘度が上記数値範囲内であれば、加工適性に優れる。
【0015】
((A)ポリイソシアネート化合物)
(A)成分のポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基および/またはイソシアネート基を含む置換基を1分子中に合計2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なお、本発明において、イソシアネート基およびイソシアネート基を含む置換基を総称して「イソシアネート基類」と称することがある。また、ポリイソシアネート化合物において、イソシアネート基類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0016】
イソシアネート基を含む置換基としては、例えば1個以上のイソシアネート基を含む、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルケニル基又は炭素数1~5のアルコキシ基が挙げられる。これらの中でも炭素数1~5のアルキル基が好ましく、特に炭素数は1~3のアルキル基が好ましい。
【0017】
ポリイソシアネートとしては、その種類は特に制限されないが、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましい。
【0018】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートは、鎖状脂肪族構造とそれに結合する2個以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。鎖状脂肪族ポリイソシアネートは、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜の伸張性を向上させる観点から好ましい。鎖状脂肪族ポリイソシアネートにおける鎖状脂肪族構造は、特に限定されないが、炭素数1~6の直鎖又は分岐のアルキレン基であることが好ましい。このような鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、および、トリス(イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート等の脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
芳香族ポリイソシアネートは、芳香族構造とそれに結合する2個以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。芳香族ポリイソシアネートにおける芳香族構造は、特に限定されないが、炭素数6~13の芳香族構造であることが好ましい。このような芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
脂環式ポリイソシアネートは、脂環式構造と2個以上のイソシアネート基類とを有する化合物である。(A)成分における脂環式構造は、特に限定されないが、炭素数5~15であることが好ましく、炭素数6以上であることがさらに好ましい。また、炭素数14以下であることがさらに好ましく、炭素数13以下であることが特に好ましい。さらに、脂環式構造としては、シクロアルキレン基であることが好ましい。脂環式構造を有するポリイソシアネートとしては、例えば、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するジイソシアネートおよびトリス(イソシアネートイソホロン)イソシアヌレート等の脂環式構造を有するトリイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成するために、イソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0021】
((B)ジオール化合物)
(B)成分のジオール化合物としては、炭素数2~6の鎖状脂肪族ジオールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1、2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成するために、エチレングリコールを用いることが好ましい。
【0022】
(A)成分に対する(B)成分の当量比は、好ましくは0.50~0.80であり、より好ましくは0.55~0.75であり、さらに好ましくは0.60~0.72である。(A)成分に対する(B)成分の当量比が上記範囲内であれば、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0023】
((C)(メタ)アクリレート化合物))
(C)(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(C)成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのカプロラクトン付加物(株式会社ダイセル製プラクセルFA1,FA2など)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのOH基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、それらのエチレンオキサイド変性物(新中村化学工業株式会社製AM-90G,AM-130G,共栄社化学株式会社製ライトアクリレートEC-A、MTG-A,EHDG-ATなど)、グリセリンモノ(メタ)アクリレート(日油株式会社製ブレンマーGLMなど)、グリセリンジ(メタ)アクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスMT3560など)イソシアヌル酸(EO変性)ジアクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスM-313,315など)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製ビスコート300、東亜合成株式会社製アロニックスM-305,M-306,MT-3548、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPE-3A、新中村化学工業株式会社製NKエステルA-TMM-3Lなど)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(東亜合成製アロニックスM-400,M-402,M-403,MT-3549,共栄社化学株式会社製ライトアクリレートDPE-6A、新中村化学工業株式会社製NKエステルA-DPHなど)等が挙げられる。
【0025】
上記の(メタ)アクリレートの中でも特に、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いることが好ましく、それはペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、およびペンタエリスリトールテトラアクリレートを含んでいても良い。これらの(メタ)アクリレート化合物を用いた紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、透明性、伸張性、撥水性および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0026】
(A)成分に対する(C)成分の当量比は、好ましくは0.20~0.50であり、より好ましくは0.25~0.45であり、さらに好ましくは0.30~0.40である。(A)成分に対する(C)成分の当量比が上記範囲内であれば、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0027】
((D)水酸基含有フッ素化合物)
水酸基含有含フッ素化合物は、少なくとも水酸基およびフッ素(含フッ素基)を有する化合物であり、反応性基をさらに有してもよい。反応性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、およびスチリル基等が挙げられる。
【0028】
水酸基含有含フッ素化合物としては、水酸基含有含フッ素オリゴマーを用いることができる。水酸基含有含フッ素オリゴマーとしては、フルオロオレフィンに由来する単位と、フルオロオレフィンと共重合可能な、水酸基を有するモノマー(以下、「モノマー(m1)」という。)に由来する単位と、必要に応じてフルオロオレフィンおよびモノマー(m1)以外の他のモノマー(以下、「モノマー(m2)」という。)に由来する単位とを有する水酸基含有含フッ素オリゴマーが好ましい。
【0029】
また、水酸基含有含フッ素化合物は、オリゴマーの反応性基変換で水酸基を導入した水酸基含有含フッ素オリゴマーであってもよい。該水酸基含有含フッ素オリゴマーとしては、フルオロオレフィンに由来する単位と、水酸基以外の反応性基を有するモノマーに由来する単位と、必要に応じて前記モノマー(m2)とを有する含フッ素オリゴマーに、前記反応性基と反応する反応性基と水酸基を有する化合物を反応させて得られる含フッ素オリゴマーを用いることができる。
【0030】
モノマー(m1)は、水酸基を有するモノマーであり、水酸基以外の反応性基をさらに有してもよい。水酸基を有するモノマーとしては、たとえば、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシプロピオン酸ビニル等のヒドロキシアルカン酸ビニル、(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。 モノマー(m1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
モノマー(m2)は、水酸基を有さないモノマーであり、反応性基を有してもよい。モノマー(m2)としては、例えば、ビニルエーテル、アリルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、オレフィン等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、例えば、ノニルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテルが挙げられる。また、モノマー(m2)としては、上記反応性基を有するものであってもよい。モノマー(m2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂中の(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の総量に対して、好ましくは0.01~10.0質量%であり、より好ましくは0.5~5.0質量%である。(D)成分の含有量が上記範囲内であれば、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れる硬化塗膜を形成し易くなる。
【0033】
(D)成分として市販されているものとしては、具体的には、フタージェント710FM、フタージェント601ADH2(商品名、以上ネオス社製)、メガファックF-558、メガファックF-561、メガファックF-562、メガファックF-563、メガファックF-569、メガファックF-576(商品名、以上DIC社製)、サーフロンS-647、サーフロンS-651、サーフロンS-656、サーフロンS-693(商品名、以上AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。
【0034】
(反応)
本発明による紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、上記の(A)~(D)成分が反応して得られるものであり、温度や時間等の反応条件は適宜設定することができる。例えば、まず、反応器にBHT等の重合禁止剤、ジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ触媒および(A)成分と(B)成分を添加して、60~70℃、1~2時間の条件で反応させた後、(D)成分を添加して、60~70℃、1~2時間の条件で反応させる。その後、(C)成分を添加して、80~90℃、2~4時間の条件で反応させ、本発明による紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得ることができる。(D)成分と(C)成分は同時に添加してもよいが、(C)成分の反応性が高い場合には、(C)成分よりも先に(D)成分を添加する方が、未反応の(D)成分が残留し難いため好ましい。なお、反応の終点は、赤外吸収分析により、イソシアネート基に由来したピークの消失により確認することができる。
【0035】
(紫外線硬化型樹脂組成物)
本発明による紫外線硬化型樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)は、少なくとも、上記の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含むものである。本発明による樹脂組成物は、硬化して形成された塗膜が透明性、伸張性、撥水性、および耐薬品性に優れるものである。このような樹脂組成物は、塗料として、特にインモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。
【0036】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、特に限定されず、従来公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系重合開始剤、フォスフィンオキサイド系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0037】
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、および2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。
フォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4′-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロ-ブタノン-1および2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0038】
光重合開始剤の含有量は、硬化性および透明性の観点から、樹脂組成物の不揮発成分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上15.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上12.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0039】
(その他の成分)
本発明による樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂以外の紫外線硬化型樹脂、(メタ)アクリレートモノマー、熱可塑性樹脂を含んでもよく、光重合開始剤以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0040】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明による樹脂組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、たとえば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0041】
樹脂組成物(樹脂溶液)の25℃における粘度は、好ましくは100~3,000mPa・sであり、より好ましくは500~2,000mPa・sであり、さらに好ましくは700~1,500mPa・sである。粘度の測定はB型粘度計を用いることができる。粘度が上記数値範囲内であれば、加工適性に優れる。
【0042】
本発明においては、樹脂組成物を塗布に適した粘度に調整する等、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステル又はエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-又はi-プロパノール、n-、i-、sec-又はt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、水およびこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0043】
(硬化塗膜)
本発明による樹脂組成物から形成された硬化塗膜は、厚さ3μmの場合、JIS K 7136に準拠して測定したヘイズが、1%未満であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。また、厚さ3μmの硬化塗膜は、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が、90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましい。ヘイズおよび全光線透過率が上記範囲内であれば、透明性に優れる。
【0044】
本発明による樹脂組成物から形成された硬化塗膜は、厚さ3μmの場合、室温の条件で測定した伸張性が100%以上であることが好ましく、115%以上であることがより好ましく、130%以上であることがさらに好ましく、140%以上であることがさらにより好ましい。伸張性の数値が上記範囲内であれば、伸張性に優れ、インモールド成型用加飾フィルムの塗料として好適に用いることができる。伸張性の詳細な測定方法については後述する。
【0045】
本発明による樹脂組成物から形成された硬化塗膜は、水接触角が90°以上であることが好ましく、95°以上であることがより好ましく、100°以上であることがさらに好ましい。水接触角の数値が上記範囲内であれば、撥水性に優れ、防汚性を向上させることができる。
【0046】
本発明による樹脂組成物から形成された硬化塗膜は、温度85℃、湿度85%RH、500時間の耐湿熱性試験前後の水接触角差が10°未満であることが好ましく、7°未満であることがより好ましく、5°未満であることがさらに好ましく、3°未満であることがさらにより好ましい。耐湿熱性試験前後の水接触角差の数値が上記範囲内であれば、耐湿熱性に優れ、防汚性を長期間にわたって維持することができる。
【0047】
<塗膜付き基材>
本発明による塗膜付き基材は、上記の硬化塗膜を基材上に備えるものである。図1には、本発明による塗膜付き基材の概略断面図を示す。図1に示す塗膜付き基材10は、基材11の一方の面上に硬化塗膜12を備えるものである。
【0048】
本発明による塗膜付き基材における基材は、特に限定されるものではなく、従来公知の基材を用いることができる。例えば、塗膜付き基材がインモールド成型用加飾フィルムである場合には、基材として、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメタクリル酸メチルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。
【0049】
本発明による塗膜付き基材における硬化塗膜は、多層に塗布する必要のある用途においては最表面の保護層に適している。
【0050】
本発明による塗膜付き基材は、多層に塗布する必要のある用途においては他の層をさらに備えてもよい。例えば、本発明による塗膜付き基材は、基材と硬化塗膜の間に他の層を備えていてもよい。本発明による塗膜付き基材における他の層としては、例えば、中塗り層、プライマー層等が挙げられる。これらの他の層は、1層のみで構成されていてもよく、多層で構成されていてもよい。
【0051】
<塗膜付き基材の製造方法>
本発明による塗膜付き基材は、上記の樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後、紫外線照射により上記の脂組成物を硬化させて硬化塗膜を形成する硬化工程と、
を含むものである。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0052】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の片面に、従来公知の方法により、上記の樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からグラビアコーターを用いた塗布方法が好ましい。
【0053】
塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5~50μmであることが好ましい。乾燥性、硬化性の観点から更に好ましい上限は30μmであり、撥水性や耐薬品性の観点から更に好ましい下限は1μmである。
【0054】
樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0055】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に紫外線を照射して、塗布された樹脂組成物を硬化させて、硬化塗膜を形成する工程である。紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cmであり、より好ましくは200~1,000mJ/cmである。
【実施例
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の合成>
まず、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の合成のために、以下の原材料を準備した。
・(A)成分:イソホロンジイソシアネート
・(B)成分:エチレングリコール
・(C)成分:ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価280)
・(D1)成分:水酸基および含フッ素基含有反応性オリゴマー(ネオス社製、商品名:フタージェント710FM、不揮発成分:50質量%)
・(D2)成分:水酸基、含フッ素基、および紫外線反応性基含有反応性オリゴマー(ネオス社製、商品名:フタージェント601ADH2、不揮発成分:25質量%)
・(D3)成分:水酸基、含フッ素基、および親油性基含有オリゴマー(DIC社製、商品名:メガファックF-576、不揮発成分:100質量%)
・(D4)成分:水酸基、含フッ素基、および親油性基含有オリゴマー(DIC社製、商品名:メガファックF-561、不揮発成分:100質量%)
・他の成分:水酸基含有ポリジメチルシロキサン(TEGO社製、商品名:PROTECT 5000N、不揮発成分:100質量%)
【0058】
攪拌器、還流冷却器、温度計を取り付けた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを111g、エチレングリコール21.7g、メチルエチルケトン98.4g、ジラウリン酸ジブチルスズ0.389gを入れ、オイルバスにて70℃まで加温しながら1時間反応させた。その後、水酸基および含フッ素基含有反応性オリゴマー(フタージェント710FM)を5.9g加えて、1時間反応させた。その後、(メタ)アクリレート化合物の混合物を64g、4-メトキシフェノール0.02g、ジブチルヒドロキシトルエン0.06g加えて、オイルバスにて80℃まで昇温し、4時間反応させた。なお、反応の終点は赤外吸収分析でイソシアネート基に由来したピークの消失により確認した。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル98.4gを加え、フッ素含有ウレタンアクリレート樹脂(2)を含む樹脂溶液を得た。
【0059】
また、表1に記載の配合に従って各成分を反応させた以外は実施例1と同様にして、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)、(3)~(9)を含む樹脂溶液を得た。
【0060】
<紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の評価>
(重量平均分子量)
上記で合成した紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)~(9)について、下記の測定条件でゲル浸透クロマトグラフィーにより測定し、その測定結果を表1に示した。
[測定条件]
・装置:「HLC-8220」(東ソー(株)製)
・カラム:「TSKgel Super H4000」1本と「TSKgel Super H2000」2本を連結(いずれも東ソー(株)製、内径6mm×長さ15cm)
・溶離液:テトラヒドロフラン99%(Stabilized with BHT)
・流速:0.5mL/min
・検出器:HLC-8220装置に組込まれた示差屈折率計(RI)
・カラム恒温槽温度:40℃
・標準物質:標準ポリスチレン
・サンプル調製法:各樹脂(1)~(9)を含む樹脂溶液をサンプル管に量
り取り、テトラヒドロフランを加えて約100倍に希釈
【0061】
(粘度)
上記で合成した紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)~(9)を含む樹脂溶液について、下記の測定条件で粘度を測定した。測定結果を表1に示した。
[測定条件]
・装置:TV-22形粘度計(東機産業製)
・使用ローター:1°34′×R24
・ローター回転数:20rpm
・測定温度:25℃
【0062】
(不揮発成分)
上記で合成した紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)~(9)を含む樹脂溶液について、(いすず製作所製、型番:VTFP-64-1S)を用いて、160℃、1時間の条件で静置し、試験前後の質量差から不揮発成分量(%)を測定した。測定結果を表1に示した。
【0063】
<紫外線硬化型樹脂組成物の調製>
[実施例1~7]
メチルエチルケトン32.0質量部に、表2に記載の紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(2)~(8)のいずれかを65.0質量部と、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名:Omnirad 184)を3.0質量部とを添加し、溶解させて、紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0064】
[比較例1]
メチルエチルケトン32.0質量部に、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)を65.0質量部と、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名:Omnirad 184)を3.0質量部とを添加し、溶解させて、紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0065】
[比較例2~5]
表2に記載の量のメチルエチルケトンに、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)を65.0質量部と、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名:Omnirad 184)を3.0質量部と、表2に記載の量のフッ素系添加剤(水酸基および含フッ素基含有反応性オリゴマー、ネオス社製、商品名:フタージェント710FM)とを添加し、溶解させて、紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0066】
[比較例6]
メチルエチルケトン32.0質量部に、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(9)を65.0質量部と、光重合開始剤(IGM Resins社製、商品名:Omnirad 184)を3.0質量部とを添加し、溶解させて、紫外線硬化型樹脂組成物を得た。
【0067】
<塗膜付き基材の製造>
[実施例1~7、比較例1~6]
PETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:コスモシャインA4300)に、上記の実施例1~7および比較例1~6で調製した各紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を乾燥膜厚が約3μmとなるように1回塗布した。続いて、高圧水銀ランプにて紫外線を照射することで(照射量:300mJ/cm)、塗膜を硬化させ、硬化塗膜を形成し、塗膜付き基材を得た。
【0068】
<性能評価>
(塗膜外観)
上記で製造した塗膜付き基材の塗膜の状態を目視にて確認した。確認した結果を下記の基準にて塗膜外観を判定した。判定結果を表3に示した。
[判定基準]
〇:良好であった。
×:レベリング不良であった。
【0069】
(光学特性)
上記で製造した塗膜付き基材について、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、型番:NDH4000)を用いて、JIS K 7136に準拠してヘイズ(HZ)を測定し、JIS K 7361-1に準拠して全光線透過率(TT)を測定した。測定結果を表3に示した。また、下記の基準にて光学特性を判定した。
[HZ判定基準]
〇:1%未満であった。
×:1%以上であった。
[TT判定基準]
〇:90%以上であった。
×:90%未満であった。
【0070】
(伸張性)
上記で製造した塗膜付き基材について、15mm×150mmの短冊状の試験片を作成した。続いて、室温にて、試験片を引張試験機(株式会社島津製作所製、型番:EZ-L)で(チャック間距離:100mm、引張速度:10mm/分)の条件で引張り、目視で塗膜にクラックが入るまでの伸張率を測定した。測定結果を表3に示した。また、下記の基準にて伸張性を判定した。
[判定基準]
◎:130%以上であった。
〇:100%以上130%未満であった。
×:100%未満であった。
【0071】
(撥水性)
上記で製造した塗膜付き基材について、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番:DropMaster DM500)を用いて、水接触角を測定した。測定は純水1μLを滴下し10秒後の値を確認した。測定結果を表3に示した。また、下記の基準にて撥水性を判定した。
[判定基準]
◎:100°以上であった。
〇:90°以上100°未満であった。
×:90°未満であった。
【0072】
(耐湿熱性試験後の撥水性)
上記で製造した塗膜付き基材を、温度85℃、湿度85%RHに設定した低温恒温恒湿器(楠本化成株式会社製、HIFLEX NEO FX420N)の中に500時間静置後に試験片を取り出した。取り出した試験片について、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番:DropMaster DM500)を用いて、水接触角を測定した。測定は純水1μLを滴下し10秒後の値を確認した。測定結果および耐湿熱性試験前後の水接触角差を表3に示した。また、下記の基準にて耐湿熱性試験後の撥水性を判定した。
[判定基準]
〇:耐湿熱性試験前後の水接触角差が5°未満であった。
△:耐湿熱性試験前後の水接触角差が5°以上10°未満であった。
×:耐湿熱性試験前後の水接触角差が10°以上であった。
【0073】
(耐薬品性)
上記で製造した塗膜付き基材にニュートロジーナ製日焼け止めクリーム(SPF45)を5cm×5cmの面積に0.5g塗布した。続いて、80℃×4時間静置後に洗浄し、塗膜の状態を目視にて確認した。確認した結果を下記の基準にて判定した。判定結果を表3に示した。
[判定基準]
〇:異常がなかった。
×:白化またはフクレが発生した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【符号の説明】
【0077】
11 塗膜付き基材
12 基材
13 硬化塗膜
図1