(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】大気中のエネルギーを変換するためのデバイス及び該デバイスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021543555
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2018077023
(87)【国際公開番号】W WO2020069746
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】521140722
【氏名又は名称】イオン-エネルギー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ION-ENERGY B.V.
【住所又は居所原語表記】Industrieweg 30,6163 AH Geleen The Netherlands.
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】コバックス サンドール
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060887(JP,A)
【文献】特開平11-297578(JP,A)
【文献】特表2009-528014(JP,A)
【文献】特開2007-018760(JP,A)
【文献】特開2014-112534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の電極(102)であって、前記正の電極(102)は、プレート形状に配置された組成物を含み、前記組成物は、結合剤及び充填剤を含み、前記充填剤は前記結合剤を通じて分散され、前記充填剤は、少なくとも二酸化チタン粒子及び活性炭粒子を含んでおり、前記正の電極(102)は、該正の電極(102)によってその後捕捉され得る正の荷電粒子を地表の大気(401)から引き付けるために前記地表の大気(401)に面するように配置される、前記正の電極(102)と、
プレート形状に配置された負の電極(101)であって、前記負の電極(101)は金属合金を含み、前記金属合金はアルミニウム及びマグネシウムを含む、前記負の電極(101)と、
ガス透過性絶縁体(103)と
を含み、
前記正の電極(102)、前記ガス透過性絶縁体(103)、及び前記負の電極(101)は積層構造に積み重ねられ、前記ガス透過性絶縁体(103)は、前記正の電極(102)と前記負の電極(101)との間の中間層として配置さ
れ、
プレート形状の前記正の電極(102)は、分極方向(D2)に横方向に静電分極され、
前記負の電極(101)の前記金属合金は圧延方向(D1)に圧延され、
前記正の電極(102)は、前記負の電極(101)の前記圧延方向(D1)を横切る前記正の電極(102)の前記分極方向(D2)を有して、前記負の電極(101)に対して配置される、
前記地表の大気(401)中の電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイス(100)。
【請求項2】
前記結合剤は、熱硬化性樹脂、好ましくはエポキシを含み、前記樹脂は、関連する触媒を使用して固められている、請求項
1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記充填剤の粒子は、500nm未満の粒子サイズを有する、請求項1
または請求項2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記ガス透過性絶縁体(103)は、合成材料の不織布の層を含む、請求項1~
3の何れか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
前記金属合金は、マンガン、銅、亜鉛、及びシリコンの内の少なくとも1つを更に含む、請求項1~
4の何れか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのシステム(400)であって、請求項1~
5の何れか一項に従った、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイス(100)を含み、前記正の電極(102)は、前記ガス透過性絶縁体(103)の反対側の表面を用いて、前記地表の大気(401)に向けられ、前記負の電極(101)は、グランド(405)に接続される、システム(400)。
【請求項7】
結合剤及び充填剤を組成物に混合することであって、前記充填剤は、前記結合剤を通じて分散され、前記結合剤は樹脂を含み、前記充填剤は、少なくとも二酸化チタン及び活性炭の粒子を含むことと、
正の電極(102)を形成するためにモールドに前記組成物を鋳造することであって、前記モールドは、前記組成物を含むプレート形状に前記正の電極(102)を形成するために配置されることと、
前記組成物を固めることと
を含み、前記正の電極(102)によってその後捕捉され得る正の荷電粒子を地表の大気(401)から引き付けるために前記地表の大気(401)に面するように配置される前記正の電極(102)を製造すること(301)と、
金属合金がアルミニウム及びマグネシウムを含む金属合金棒を調製することを含む、負の電極(102)を製造すること(302)と、
ガス透過性絶縁体(103)を提供すること(303)と、
前記正の電極(102)、前記ガス透過性絶縁体(103)、及び前記負の電極(101)を積層構造に積み重ねること(304)であって、前記積み重ねること(304)は、前記正の電極(102)と前記負の電極(101)との間の中間層として前記ガス透過性絶縁体(103)を配置することを含
み、
正の電極(102)を前記製造すること(301)は、前記組成物を含む前記プレートを分極方向に静電分極することであって、前記分極方向は前記プレートの横方向にあることを更に含み、
負の電極(102)を前記製造すること(302)は、前記負の電極を得るために、単一の圧延方向に前記金属合金棒を金属合金プレートに圧延することを更に含み、
前記正の電極(102)、前記ガス透過性絶縁体(103)、及び前記負の電極(101)を積層構造に前記積み重ねること(304)は、前記負の電極(101)の前記圧延方向(D1)を横切る前記正の電極(102)の前記分極方向(D2)を有するように、前記正の電極(102)及び前記負の電極(101)を相互に対して配置することを更に含む、前記地表の大気(401)からの電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイス(100)を製造する方法(300)。
【請求項8】
前記結合剤は熱硬化性樹脂を含み、前記正の電極(102)を前記固めることは、関連する触媒を使用して前記熱硬化性樹脂を硬化することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂はエポキシを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記充填剤は、500nm未満の粒径に粉砕される、請求項
7~
9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス透過性絶縁体(103)は、合成材料の不織布の層を含む、請求項
7~
10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物を前記固めることの後に前記正の電極(102)の前記組成物を冷却し、前記組成物の前記冷却の間に、前記正の電極(102)の前記静電分極を実施すること
を更に含む、請求項
7~
11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属合金は、マンガン、銅、亜鉛、及びシリコンの内の少なくとも1つを更に含む、請求項
7~
12の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを生成するためのデバイス及び該デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス等の化石エネルギー源が急速に枯渇し、再生可能なクリーンエネルギーに対する需要が世界中で高まっている一方で、エネルギーを生成するための新たな技術が登場している。例示的なそうした技術は、太陽エネルギーの電気への変換であり、太陽放射は、光起電変換を使用して電気エネルギーに変換される。
【0003】
再生可能なエネルギー源は太陽放射エネルギーだけではない。無制限なエネルギー源を提供する地表(earth)の大気中には電気的な荷電粒子が豊富に存在する。そうしたエネルギーは、大気中に浮遊し得、及び電気的な荷電粒子を捕捉する銅線を使用して収集され得ることが知られている。吊るされた銅線は電荷の蓄積を示し、それは、例えば、電圧計を使用して電気的に測定され得る。しかしながら、電気器具に電力供給するための電荷の利用等、この電荷の有用な用途は記録されていない。
【0004】
太陽放射及び/又は放射能によって生成される正の荷電粒子の形式で正の電荷が地表の大気中に浮遊し得ることは、Chalmers,J.Alan、Atmospheric Electricity、Pergamon Press、London(1957)から知られている。正の荷電粒子を生成するこのプロセスから生じる自由電子は、例えば、雷雨によって地表へ方向転換される。地表は、地表の大気に対して負にその後帯電される。正の荷電粒子は、例えば、グランドの上方に吊るされた導電性ワイヤを使用して収集され得る。こうした導電性ワイヤは銅から作られ得る。
【0005】
既知の銅線を使用して電気的な荷電粒子を変換することに関連する問題は、銅導体の表面の感受性である。未処理の表面を有する通常の銅線は、粒子が効率的に捕捉可能ではなく、それ故、ゆっくりと帯電される。捕捉された粒子は、それらのエネルギーを電荷に変換するが、これらの粒子のゆっくりとした非効率的な捕捉のために、こうして収集された電気エネルギーは効率的に利用され得ない。例えば、米国公開特許出願番号2014210308に示されるように、グラファイト等の活性炭粒子を含むワイヤ等の、吊るされた導体に対する代替的な材料が利用され得る。
カナダ特許登録第2678756(CA2678756 A1)には、空気及びグランドからの電気エネルギーを蓄積するキャパシタが更に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エネルギー変換のためのデバイスを製造するための方法、及び電気的な荷電粒子の改善された感受性と、改善されたエネルギー変換率とを有する該デバイスを提供することが発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
該目的は、請求項1に従った、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイスにおいて達成される。
【0008】
電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイスは正の電極を含み、正の電極は、プレート形状で配置された組成物を含み、組成物は結合剤及び充填剤を含み、充填剤は結合剤を通じて分散され、充填剤は、少なくとも二酸化チタン及び活性炭の粒子を含む。
【0009】
デバイスは、プレート形状で配置された負の電極を更に含み、負の電極は金属合金を含み、金属合金はアルミニウム及びマグネシウムを含む。
【0010】
正の電極及び負の電極は、プレート形状である。正及び負の電極は、相互に対応する構造を有する。正及び負の電極は平坦であり得る。他の例では、正及び負の電極は、波形構造、円筒形、又は折り畳み構造等を有し得る。
【0011】
デバイスは、ガス透過性絶縁体を更に含む。
【0012】
正の電極、ガス透過性絶縁体、及び負の電極は積層構造に積み重ねられる。ガス透過性絶縁体は、正の電極と負の電極との間の中間層として配置される。
【0013】
絶縁された正の電極は、地表の大気から正の荷電粒子を捕捉可能である。捕捉される場合、該粒子は、正の電極からの電子と再結合される。正の電極は、これによって、正に帯電される。負荷に接続された場合、電気エネルギーは、負の電極及び正の電極から排出され得る電圧及び電流として利用可能である。こうして収集された電気エネルギーは、抵抗性負荷等の電気負荷の内の少なくとも1つにおいて使用され得、又は充電式バッテリ等の貯蔵庫に任意に貯蔵され得、電気器具においてその後使用され得る。
【0014】
一実施形態では、プレート形状の正の電極は、分極方向に横方向に静電分極され、金属合金は圧延方向に圧延され、正の電極は、負の電極の圧延方向を横切る正の分極方向を有して、負の電極に対して配置される。
【0015】
このことは、正の電極による荷電粒子を捕捉する効率を著しく増加させ、出力電圧の増加をもたらす。
【0016】
一実施形態では、結合剤は、熱硬化性樹脂を含み、該樹脂は、関連する触媒を使用して樹脂を硬化させることによって固められる。
【0017】
一実施形態では、熱硬化性樹脂はエポキシを含む。
【0018】
一実施形態では、充填剤は、500nm未満の粒子サイズを有する。
【0019】
一実施形態では、ガス透過性絶縁体は、合成材料の不織布の層を含む。
【0020】
このことは、ガス透過性絶縁体を介した地表の大気との正及び負の電極の接触を可能にする。
【0021】
一実施形態では、金属合金は、マンガン、銅、亜鉛、及びシリコンの内の少なくとも1つを更に含む。
【0022】
このことは、より高い電圧が達成されることを可能にする。
【0023】
目的は、請求項7に従った、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのシステムにおいて更に達成される。該システムは、上で説明したような、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイスを含み、正の電極は、ガス透過性絶縁体の反対側の表面を用いて地表の大気に向けられ、負の電極は、グランドに接続される。
【0024】
グランドに接続することによって、負の電極は、地表の大気に対して負である地電位とみなす。この方法で、大気からの正の荷電粒子は、負の電極に引き付けられる。続いて、正の荷電粒子は、地表の大気に面する表面を有する正の電極によって捕捉され、その表面は、ガス透過性絶縁体に面する表面の反対側にある。
【0025】
正の電極及び負の電極を抵抗器等の電気負荷に接続することによって、負荷に電流が流れことをもたらすであろうし、負の電極からの電子は、正の電極における捕捉された正の荷電粒子を中和するであろう。
【0026】
目的は、請求項8に従った、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイスを製造する方法において更に達成される。
【0027】
該方法は、正の電極を製造することを含む。正の電極を製造することは、結合剤及び充填剤を組成物中に混合することを含み、充填剤は結合剤を通じて分散される。結合剤は樹脂を含み、充填剤は、少なくとも二酸化チタン及び活性炭の粒子を含む。
【0028】
組成物は、正の電極を形成するためにモールドに鋳造される。該モールドは、組成物を含むプレート形状に正の電極を形成するために配置される。組成物は、触媒を用いて硬化することによって固められる。組成物は、その後冷却され得る。
【0029】
方法は、負の電極を製造することを更に含み、金属合金がアルミニウム及びマグネシウムを含む金属合金棒を調製することを含む。
【0030】
方法は、ガス透過性絶縁体を提供することを更に含む。
【0031】
方法は、正の電極、ガス透過性絶縁体、及び負の電極を積層構造に積み重ねることを更に含み、該積み重ねることは、正の電極と負の電極との間の中間層としてガス透過性絶縁体を配置することを含む。
【0032】
一実施形態では、正の電極を製造することは、組成物を含むプレートを分極方向に静電分極することを更に含み、分極方向は、プレートの横方向にあり、負の電極を製造することは、負の電極を得るために単一の圧延方向に金属合金棒を金属合金プレートに圧延することを更に含み、正の電極、ガス透過性絶縁体、及び負の電極を積層構造に積み重ねることは、負の電極の圧延方向を横切る正の電極の分極方向を有するように、正の電極及び負の電極を相互に対して配置することを更に含む。
【0033】
このことは、正の荷電粒子を捕捉することを改善し、それによって、デバイスの出力電圧を増加させる。
【0034】
一実施形態では、樹脂は、熱硬化性樹脂及び関連する触媒を含み、正の電極を固めることは、触媒を使用して樹脂を硬化させることを含む。
【0035】
一実施形態では、樹脂はエポキシを含む。
【0036】
一実施形態では、充填剤は、500nm未満の粒子サイズに粉砕される。
【0037】
一実施形態では、ガス透過性絶縁体は、合成材料の不織布の層を含む。
【0038】
不織布は、正の電極と負の電極の間で地表の大気からの空気へのアクセスを可能にする。
【0039】
一実施形態では、合成材料はポリエステルを含む。
【0040】
一実施形態では、方法は、組成物を固めた後に組成物を冷却することを更に含み、静電分極することは、組成物の冷却の間に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】発明の一実施形態に従った、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイスを示す。
【
図2】発明の一実施形態に従った、発明の実施形態に従った電気エネルギーを変換するためのデバイスを製造する方法のブロック図を示す。
【
図3】発明の一実施形態に従った、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1には、電気エネルギーを変換するためのデバイス100の例が示されている。デバイス100は、正の電極102、ガス透過性絶縁体103、及び負の電極101のスタックを含む。
【0043】
正の電極102は、結合剤としての熱硬化性樹脂と充填剤とから製造される。熱硬化性樹脂はエポキシであり得、それは、当業者に知られるであろうような適切な硬化剤によって硬化可能である。充填剤は二酸化チタンを含む。充填剤は、活性炭粒子を更に含む。充填剤は、500マイクロメートル未満の粒子サイズを有する二酸化チタン粒子及び活性炭粒子に粉砕される。活性炭粒子は、600~900℃の温度範囲での熱分解を受ける炭素粒子から製造される。粉砕された活性炭粒子は、熱分解の間にフラクタル類似の形状を得る。このことは、地表の大気からの荷電粒子の捕捉の改善を可能にする。例えば、米国公開特許出願番号2014210308に例として示されるように、該炭素粒子は、先のとがった導電性表面を提供し、それによって電気エネルギーの捕捉を改善する。活性炭のフラクタル構造は、この効果を更に改善する。
【0044】
粉砕後、充填剤は、エポキシ樹脂を通じて混合物に分散される。この混合物に硬化剤が追加される。充填剤及び硬化剤を有するエポキシは、モールドに流し込み、そこで硬化される。硬化は、少なくとも150℃の温度で行われる。
【0045】
モールドは、プレート形状の正の電極102の生産を可能にするように形作られる。硬化後、正の電極102は、二酸化チタン粒子がエポキシ樹脂内の分極位置に定着することを可能にするために、硬化後に正の電極を冷却しながら、分極方向D2と更に言及される横方向に少なくとも200kV/mの電界を受け得る。粉砕された活性炭粒子はまた、正の電極102に導電性を提供する。
【0046】
分極された正の電極102は、冷却後にモールドから除去される。モールドからの正の電極102の除去を容易にするために、ワックス剤がモールド内に塗付され得る。或いは、硬化する前に、ワックス剤が樹脂と混合され得る。
【0047】
厚さが3mmの正の電極の例では、0.3マイクロメートルの粒径を有する二酸化チタンの含有量は、100~200gr/dm2の範囲にあり得る。
【0048】
更に、同じ例では、活性炭の含有量は100~200mg/dm2の範囲にあり得る。
【0049】
負の電極101は、アルミニウム及びマグネシウムを含む金属合金から製造される。アルミニウム及びマグネシウムに加えて、亜鉛、マンガン、銅が追加され得る。金属合金は、シリコンを更に含み得る。
【0050】
全ての成分を有する金属合金の例示的な組成は、以下の表1に示され、元素毎に、その相対的含有量の範囲は、重量パーセント(WT%)である。
【0051】
当業者は、更なる成分又は元素が金属合金に追加され得ることを認識するであろう。
【表1】
【0052】
金属合金のシートを得るために、金属合金の棒は単一の方向D1に圧延され得る。負の電極101は、金属合金のシートから切断され得る。
【0053】
ガス透過性絶縁体103は、合成材料のガス透過性シートによって形成され得る。合成材料のシートはガスを透過可能である。ガスは空気であり得る。シート合成材料は、好ましくは、ポリエステル等の合成繊維の不織布シートから製造される。
【0054】
デバイス100を形成するために、負の電極101、正の電極102、及びガス透過性絶縁体103が積み重ねられ、その後圧縮される。分極方向D2及び圧延方向D1は、
図1に示すように相互に横断して選択され得る。
【0055】
例示的な実施形態では、正の電極102、負の電極101、及びガス透過性絶縁体103は、10cm×10cmのサイズを有するが、他のサイズが考えられ得る。サイズが大きい程、デバイスの電流容量は高くなり、すなわち、デバイス100からより多くの電流が引き出され得る。
【0056】
複数のデバイス100が直列に接続され得、第1のデバイスの負の電極101は、第2のデバイスの正の電極102に接続され、その出力電圧を増加させるために、出力電圧は、第1のデバイス100の正の電極102と第2のデバイス100の負の電極101との間で測定される総電圧によって判定される。
【0057】
電気エネルギーを変換するための複数のデバイス100はまた、積み重ね方向に積み重ねられ得、複数のデバイス100の各々は、積み重ね方向に直列に接続される。積み重ねられたデバイスは、各個別のデバイスの電圧が合計され得るデバイスの直列接続を形成するので、このことは、より高い電圧が達成されることを可能にする。
【0058】
更に、複数のデバイス100は、並列に接続され得、複数のデバイス100の各々の負の電極101は相互接続され、複数のデバイス100の各々の正の電極102は相互接続される。このことは、相互接続されたデバイス100の数に比例して、並列に接続されたデバイス100の電流容量を増加させるであろう。
【0059】
当業者は、並列及び直列接続されたデバイス100の構成が考えられ得ることを認識するであろう。
【0060】
図2には、電気エネルギーを変換するためのデバイス100を製造するための方法300のブロック図が示されている。
【0061】
ステップ301において正の電極102が製造され、ステップ302において負の電極101が製造される。
【0062】
正の電極102は、ステップ301において、結合剤としての樹脂と、充填剤としての二酸化チタン及び活性炭の粒子とを組成物に混合することによって製造される。樹脂は、好ましくは熱硬化性樹脂である。より好ましくは、樹脂はエポキシである。
【0063】
二酸化チタン及び活性炭の粒子は、500nm未満の粒子サイズに粉砕される。混合の間、充填剤は樹脂全体に分散される。もたらされた組成物は、硬化剤とその後混合される。エポキシに対しては、硬化剤は、第一級アミン、環状無水物、ポリフェノール、及びチオールを含む非決定的なリストの内の1つであり得る。好ましくは、硬化剤は環状化学構造を含む。
【0064】
組成物は、正の電極102を形成するためにモールドにその後鋳造され、該モールドは、組成物を含むプレート中に正の電極102を形成するために配置される。組成物は、プレートを形成するために、モールド内で熱硬化される。硬化する間、正の電極102は、説明されたように電界を印加することによって静電分極される。
【0065】
負の電極101は、ステップ302において、上で説明したように金属及びシリコンを有する金属合金を調製することによって調製される。金属及びシリコンは、一緒に溶かされ、棒を形成するためにモールドに鋳造される。モールド内の金属は、その後冷却される。金属合金棒は、単一の圧延方向に金属合金プレートに圧延される。金属合金プレートから負の電極102を得るために、圧延された金属合金プレートは、その後切断される。
【0066】
正の電極102、ガス透過性絶縁体103、及び負の電極101は積み重ねられる。積み重ねられる場合、正の電極102及び負の電極101は、負の電極101の圧延方向D1を横切る方向に正の電極の分極方向D2を有して、相互に対して位置付けられ得る。
【0067】
図1に示されるようなデバイス100は、平坦な形状の積み重ねられた正の電極102、負の電極101、及びガス透過性絶縁体103から作られることが示されている。デバイス100は、代替的に、湾曲した形状の積層方式で製造され得、正の電極、負の電極、及びガス透過性絶縁体は、これらの部品が積み重ねられて圧縮されることを可能にする、対応する曲率又は湾曲したプレート形状を有する。
【0068】
ステップ303において、不織布合成材料のシートを含むガス透過性絶縁体103が提供される。
【0069】
ステップ301~303は、ランダムな順序で実施され得る。
【0070】
ステップ304において、正の電極102、ガス透過性絶縁体103、及び負の電極101は積み重ねられる。
【0071】
図3には、上で説明したようなデバイス100を有する、電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのシステム400が概略的に示されている。負の電極101は、グランド405に接続される。このことは、例として、グランド電極402を使用することによって実施され得る。負の電極101は、地表の大気401に対して負に帯電されるであろう。
【0072】
地表の大気401に面する正の電極102は、正の電極102によってその後捕捉され得る正の荷電粒子406を地表の大気401から引き付けるであろう。正の荷電粒子406は、それによって正に帯電されるようになる正の電極102内の電子によって中和される。負に帯電した負の電極101と正に帯電した正の電極102との間の電荷の差は、導電性リード403を使用して電気負荷404に伝達され得る。電気負荷404は、例えば、抵抗性負荷、電力変換器、及び充電式バッテリ等の電気貯蔵庫の内の少なくとも1つであり得る。電力変換器を使用することによって、捕捉された電気エネルギーは、正の電極102と負の電極101との間の蓄積された電圧差とは異なる電圧で、電気機器又は電気器具に電力供給するために利用され得る。
【0073】
本発明の範囲は先に論じた例に限定されないが、添付の請求項によって画定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、幾つかの補正及び修正が可能であることは当業者には明らかであろう。特に、発明の様々な態様の具体的な機構の組み合わせがなされ得る。発明の一態様は、発明の別の態様に関連して説明された機構を追加することによって更に有利に強化され得る。本発明は、図及び説明において詳細に図示及び説明されているが、こうした図示及び説明は、単に説明的又は例示的なものにすぎず、限定的ではないとみなされるべきである。
【0074】
本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の変形は、図、説明、及び添付の請求項の考察から、請求する発明を実施する当業者により理解及び実施され得る。請求項において、用語“含む(comprising)”は、他のステップ又は要素を除外せず、不定冠詞“a”又は“an”は、複数を除外しない。相互に異なる従属請求項中に幾つかの測定値が記載されている単なる事実は、これらの測定値の組み合わせが有利に使用できないことを指し示さない。請求項中の何れの参照番号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0075】
100 電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのデバイス
101 負の電極
102 正の電極
103 ガス透過性絶縁体
D1 負の電極の圧延方向
D2 正の電極の分極方向
300 電気エネルギーを変換するためのデバイスを製造する方法
301 正の電極を製造すること
302 負の電極を製造すること
303 絶縁材料のシートを提供すること
304 正の電極、ガス透過性絶縁体、及び負の電極を積層構造に積み重ねること
400 電気的な荷電粒子から電気エネルギーを変換するためのシステム
401 地表の大気
402 グランド電極
403 導電性リード
404 電気負荷
405 グランド
406 正の荷電粒子