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特許7221419検査システム、判定処理装置、及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】検査システム、判定処理装置、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20230206BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20230206BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021563725
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027719
(87)【国際公開番号】W WO2022014019
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2021-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 照晃
(72)【発明者】
【氏名】繁富 公範
(72)【発明者】
【氏名】大槻 繁夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 信貴
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095247(JP,A)
【文献】特開平08-096136(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130477(WO,A1)
【文献】特開2018-179857(JP,A)
【文献】特開平10-148622(JP,A)
【文献】特公平07-119714(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0201347(US,A1)
【文献】特開2020-144688(JP,A)
【文献】特開2019-032605(JP,A)
【文献】特開2009-236593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 21/84-21/958
G01N 27/72-27/9093
G01N 29/00-29/52
G06N 20/00-20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る検査システムであって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記撮像データから得られた前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行う判定処理部と、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて仮判定済み画像データを作成する自動判定部と、を備え、
前記自動判定部は、前記仮判定済み画像データを前記判定処理部に送信することと、
前記判定処理部は、前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行うことと、を特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記撮像データ取得部は、前記検査対象の溶接部を挟んで互いに対向して配置され、当該溶接部へ向けて放射線を照射する放射線照射部と、前記溶接部を透過した放射線を検出する検出器と、を備え、前記検出器にて検出された放射線の透過強度に基づきディジタルデータにて、前記撮像データを取得することを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記撮像データ取得部は、
前記検査対象の溶接部を挟んで前記放射線照射部及び前記検出器を対向させて配置するための治具と、
前記治具により対向して配置された状態を保ちながら、前記放射線照射部及び前記検出部を同期させながら前記溶接部の周方向に移動させることにより、前記放射線を照射する位置を前記周方向に移動させる移動機構と、を備え、
前記溶接部の周方向の異なる複数の位置にて前記撮像データを夫々取得することを特徴とする請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記溶接部の周方向に異なる複数の位置において取得された複数の撮像データを、前記周方向に沿って結合させて、前記画像データを作成する画像処理部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の検査システム。
【請求項5】
前記検査対象の溶接部を含む領域に放射線を照射し、当該溶接部を透過した放射線像をフィルムに感光させて得られたアナログ画像をディジタル画像に変換し、前記ディジタル画像を前記撮像データとすることを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記判定処理部は、前記自動判定部にて前記画像データに対応付けられた前記仮判定データを修正する処理を受け付けることが可能なように構成されたことを特徴とする請求項1記載の検査システム。
【請求項7】
配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る判定処理を行う判定処理システムであって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行う判定処理部と、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて仮判定済み画像データを作成する自動判定部と、を備え、
前記自動判定部は、前記仮判定済み画像データを前記判定処理部に送信することと、
前記判定処理部は、前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行うことと、を特徴とする判定処理システム。
【請求項8】
配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る判定処理を行う判定処理装置であって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行うように構成され、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて作成された仮判定済み画像データを取得することと、
前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行うことと、を特徴とする判定処理装置。
【請求項9】
前記画像データに対応付けられた前記仮判定データを修正する処理を受け付けることが可能なように構成されたことを特徴とする請求項8記載の判定処理装置。
【請求項10】
配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る検査方法であって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行う工程と、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて作成された仮判定済み画像データを取得する工程と、
前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行う工程と、を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項11】
前記画像データに判定データを対応付ける処理を行う工程は、前記画像データに対応付けられた前記仮判定データを修正する処理を受け付けることを特徴とする請求項10記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の溶接部の非破壊検査を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の処理を行うプラントには、天然ガスの液化や天然ガス液の分離、回収などを行う天然ガスプラント、原油や各種中間製品の蒸留や脱硫などを行う石油精製プラント、石油化学製品や中間化学品、ポリマーなどの生産を行う化学プラントなどがある。
これらのプラントは、例えば塔槽や熱交換器などの静機器、ポンプなどの動機器などの多数の機器群を配置した構造となっている。そしてこれら機器群を構成する機器同士の間には、流体の授受を行う配管が接続されている。
【0003】
このようなプラントの建設にあたって、前記配管同士の接続や、配管とフランジ、エルボなどの配管部材との接続に、溶接が用いられる場合がある。溶接が行われた溶接部に許容される程度を超えるサイズや形状のきず(以下、許容される程度を超え、不合格と判定される有害なきずを「欠陥」という)が含まれていると、プラントを稼働させた後、流体の漏洩や溶接部の破断などのトラブルを引き起こす要因となる。そこで、配管または配管部材の溶接が行われた後は、配管溶接部に欠陥が含まれているか否かを判定するために、配管や配管部材が晒される流体、圧力など複数の要素を加味して設定された抜取り頻度に従い放射線透過試験が行われる。
【0004】
従来、溶接部の放射線透過試験を行う場合には、γ線やX線などの放射線を溶接部に照射し、溶接部の背後に配置した工業用フィルムを、溶接部を透過した放射線によって感光させることにより、溶接部に含まれるきず・欠陥の有無を調べていた。きずの有無や欠陥判定は、暗室内で有資格者が、撮影されたフィルムを目視して行う作業である。
【0005】
ここで放射線を用いた溶接部の撮影は、安全距離を確保する必要がある作業であるため、限られた建設エリア内にて、同時に実施することが可能な撮影作業の数が限られる。また撮影現場毎の段取りに時間が掛かることなどから、プラントの建設スケジュール全体に及ぼす影響も考慮しなければならない。また、プラントを建設する際に溶接が行われる溶接部の数は膨大であるため、溶接部の数に応じた大量のフィルムを取り扱う労力も必要となる。さらにはフィルムを現像する現像液の管理、廃棄処理が必要となるため、環境への配慮も必要となる。
このような種々の課題を解決するため、作業能率向上および作業者の負担をより軽減することが可能な溶接部の検査技術の確立が求められている。
【0006】
特許文献1には、プラントの配管において、放射線源から被検体の配管に照射し、透過した放射線を検出器にて検出して、被検体の配管の肉厚を検査する放射線検査装置が記載されている。さらに配管に対する放射線源と、検出器と、の角度を回転させて、異なる回転角度において透過像を取得する構成が記載されている。また特許文献2にはプラントの構造物の減肉深さを測定して、測定値より基準化定数取得し、基準化定数に基づいて、所定の使用期間及び板厚の組み合わせそれぞれに対し、構造物が使用不能状態となる確率を算出する保全支援装置が記載されている。
このように、従来、フィルムを用いずに放射線の透過量を検出する手法は、稼働しているプラントの配管の減肉管理に用いられているに過ぎなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-47424号公報
【文献】特開2018-25497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査において、作業者の負担を軽減することで放射線透過試験の作業能率を向上するとともに、検査精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の検査システムは、配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る検査システムであって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記撮像データから得られた前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行う判定処理部と、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて仮判定済み画像データを作成する自動判定部と、を備え、
前記自動判定部は、前記仮判定済み画像データを前記判定処理部に送信することと、
前記判定処理部は、前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行うことと、を特徴とする。
【0010】
また検査システムは、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記撮像データ取得部は、前記検査対象の溶接部を挟んで互いに対向して配置され、当該溶接部へ向けて放射線を照射する放射線照射部と、前記溶接部を透過した放射線を検出する検出器と、を備え、前記検出器にて検出された放射線の透過強度に基づきディジタルデータにて、前記撮像データを取得すること。
(b)前記撮像データ取得部は、
前記検査対象の溶接部を挟んで前記放射線照射部及び前記検出器を対向させて配置するための治具と、
前記治具により対向して配置された状態を保ちながら、前記放射線照射部及び前記検出部を同期させながら前記溶接部の周方向に移動させることにより、前記放射線を照射する位置を前記周方向に移動させる移動機構と、を備え、
前記溶接部の周方向の異なる複数の位置にて前記撮像データを夫々取得すること。
(c)前記溶接部の周方向に異なる複数の位置において取得された複数の撮像データを、前記周方向に沿って結合させて、前記画像データを作成する画像処理部を備えたこと。
(d)前記検査対象の溶接部を含む領域に放射線を照射し、当該溶接部を透過した放射線像をフィルムに感光させて得られたアナログ画像をディジタル画像に変換し、前記ディジタル画像を前記撮像データとすること。
(e)前記判定処理部は、前記自動判定部にて前記画像データに対応付けられた仮判定データを修正する処理を受け付けることが可能なように構成されたこと。
【0011】
また、本発明の判定処理システムは、配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る判定処理を行う判定処理システムであって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行う判定処理部と、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて仮判定済み画像データを作成する自動判定部と、を備え、
前記自動判定部は、前記仮判定済み画像データを前記判定処理部に送信することと、
前記判定処理部は、前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行うことと、を特徴とする。
さらに、本発明の判定処理装置は、配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る判定処理を行う判定処理装置であって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行うように構成され、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて作成された仮判定済み画像データを取得することと、
前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行うことと、を特徴とする。
前記判定処理装置は、前記画像データに対応付けられた前記仮判定データを修正する処理を受け付けることが可能なように構成されていてもよい。
【0012】
本発明の検査方法は、配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査に係る検査方法であって、
検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た前記放射線の透過強度の分布を示す画像データに対して付され、当該放射線の透過強度の分布に基づいて前記検査対象の溶接部のきずが、当該きずの判定を行う資格を有する有資格者によって不合格と判定される有害なきずである欠陥に相当すると判定した結果を示し、前記画像データに含まれる溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を識別可能な情報と対応付けられ、前記欠陥の種類を示す情報を含む判定データについて、前記有資格者による欠陥の判定を受け付けた場合に、前記仮判定データを正式な判定データとして前記画像データに対応付ける処理を行う工程と、
前記判定データが対応付けられた過去の画像データに含まれるきずの機械学習を実施した結果に基づいて、放射線の透過強度の分布を示す新たな画像データについて、溶接線におけるきずの位置およびきずのサイズ、きずの形状的特徴を特定して想定される欠陥の種類を自動判定し、前記仮判定データとして、欠陥に相当すると判定されたきずに対し、当該きずに対応する箇所に、前記欠陥の種類に応じて互いに相違して設定され、目視による識別を可能とするマークが付されたマーク画像を対応付けて作成された仮判定済み画像データを取得する工程と、
前記仮判定済み画像データに対応付けられた前記仮判定データに対して前記有資格者による欠陥の判定を受け付けて正式な前記判定データとして前記新たな画像データに対応付ける処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、配管または配管部材の溶接部の欠陥の非破壊検査において、検査対象の配管または配管部材の溶接部に放射線を透過させて得た撮像データを取得している。また前記撮像データを利用して前記検査対象の溶接部の欠陥を判定し、その判定結果を示す判定データを、当該放射線の透過強度の分布を示す画像データに対応付ける処理を行っている。従ってフィルムを用いずに溶接部の判定結果を得ることができ、作業者の負担を軽減することで放射線透過試験の作業能率を向上することができる。また、画像データを用いることでフィルムを用いた目視の判定と比べて検査精度、検査効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】配管の溶接部を非破壊で検査する検査システムの構成図である。
図2】撮像データ取得部の側面図である。
図3】検査システムにおける配管溶接部の検査の例を示す工程図である。
図4】撮像データの取得及び画像データの作成手法を示す説明図である。
図5】画像データと判定データとの対応付けに係る説明図である。
図6】画像データに含まれる欠陥の例を示す説明図である。
図7】自動判定部における自動判定処理の例を示す工程図である。
図8】自動判定部による仮判定データの構成例を示す説明図である。
図9】自動判定処理を含む配管の溶接部の検査の例を示す工程図である。
図10】検査システムの他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、配管または配管部材の溶接部の欠陥の放射線透過試験に係る検査システムの全体構成を示している。本実施の形態に係る放射線透過試験においては、放射線を用いて撮影した結果に基づき配管または配管部材の溶接部の放射線透過試験を行う。そして、撮影により得られた放射線の透過強度の分布を示す画像データに基づき、溶接部におけるきずの有無を確認すると共に、きずがある場合には、溶接の結果が不合格と判断される有害なきずである「欠陥」に相当するか否かの判定を行う。
【0016】
例えば本技術は、配管を介して流体の輸送を行う配管が設けられたプラントの建設、保全における溶接部の非破壊検査に適用される。本技術が適用されるプラントの種類に特段の限定はなく、天然ガスの液化や天然ガス液の分離、回収などを行う天然ガスプラント、原油や各種中間製品の蒸留や脱硫などを行う石油精製プラント、石油化学製品や中間化学品、ポリマーなどの生産を行う化学プラント、薬剤やその中間製品の生産を行う製薬プラント、低レベル放射性廃棄物の廃棄物処理プラントなどにおける溶接部の非破壊検査に適用することができる。
【0017】
本技術の適用対象となる配管は、溶接による接続が行われ、且つ、放射線透過試験を実施可能なものであればよく、その材料、配管径、肉厚やライニングの有無などに特段の限定はない。また、配管内を流れることとなる流体についても、気体、液体の他、流動性を有する粉粒体(粉体、粒体やペレットなど)であってもよい。
【0018】
また本技術の適用対象となる配管部材は、プラントに設けられる機器間を配管で接続する際に利用される配管以外の部品である。配管部材としては、フランジやエルボ、ティー継手、異外径配管継手などを例示することができる。配管部材についても、溶接による接続が行われ、且つ、放射線透過試験を実施することが可能であれば、その材料やサイズ、肉厚やライニングの有無などに特段の限定はない。
放射線透過試験の対象となる溶接部は、配管と配管との溶接部、配管と配管部材との溶接部、配管部材と配管部材との溶接部のいずれであってもよい。
【0019】
次に、本例の検査システムの構成例について説明する。検査システムは、検査対象の配管または配管部材の溶接部にγ線あるいはX線などの放射線を透過させてディジタルデータにて撮像データを取得する撮像データ取得部1(1A~1C)を備えている。またこの撮像データから得られた放射線の透過強度の分布を示す画像データに基づいて、検査対象の配管または配管部材の溶接部の欠陥を判定した結果を示す判定データを作成し、判定データを、画像データに対応付ける処理を行う判定処理部3を備えている。例えば判定処理部3は、コンピュータにより構成される。
【0020】
ここで溶接部81に含まれるきずが欠陥に相当し、溶接結果が不合格となるか否かの判定は、公共機関や民間機関などが認証する有資格者によって実施される。
この点につき、本例の検査システムは、有資格者が判定を行うにあたって、判定をサポートする仮判定データを提供する自動判定部5を備えている。自動判定部5は、画像データ及び判定データを記憶する記憶部51と、きずに係る画像情報についての機械学習を行うと共に、機械学習の結果に基づいて画像データに含まれる欠陥の種類の自動判定を行う演算部52とを備えている。例えば図1に示すように、自動判定部5は、クラウドコンピューティング機能として提供することが可能であり、判定処理部3からインターネットなどを介してアクセスできるように構成されている。
【0021】
図2は、撮像データ取得部1の構成例を示している。図2には、2つの配管100の端部同士が溶接部81を介して接続されている部位についての撮像データを取得する例を示してある。撮像データ取得部1は、配管100の溶接部81へ向けて放射線を照射する放射線照射部11と、溶接部81を透過した放射線を検出する検出器12と、を備えている。図2中の符号13は、放射線照射部11から放射線を照射するための装置もしくは電源である。本例の撮像データ取得部1において、検出器12には、フィルムを用いずにパネル形状のディテクタにて放射線を検出し、ディテクタの検出面内に設定された座標に対応させて、放射線の検出量を示すディジタルデータを撮像データとして出力することが可能なフラットパネルディテクタ(FPD)を用いることができる。
【0022】
既述のように、検査対象の2本の配管100は、一方側の配管100の端部と他方側の配管100の端部と突合され、溶接部81を介して接続されている。この溶接部81は、配管100の全周に亘って、溶接されている。なお図2には、2本の配管100同士を接続する溶接部81にて説明しているが、本例の撮像データ取得部1は、配管100とフランジや、配管100とエルボ、フランジとエルボのなどの溶接部81の検査にも用いることができる。
【0023】
図2に示すように放射線照射部11と、検出器12と、は、治具16により検査対象の溶接部81を挟んで互いに対向して配置されている。この配置状態にて放射線照射部11から放射線を照射すると、溶接部81を透過した放射線が検出器12にて検出され、検出器12にて検出された放射線の透過強度に基づいてディジタルデータである既述の撮像データが取得される。
【0024】
また撮像データ取得部1は、配管100の周方向に沿って外付けされた移動軌道であるガイド15に沿って、放射線照射部11、検出器12及び治具16を移動させる移動体14を備える。治具16により対向して配置された状態を保ちながら移動させることにより、放射線照射部11及び検出器12を同期させながら溶接部81の周方向に移動させることができる。移動体14とガイド15は、本例の移動機構に相当する。
【0025】
本例の治具16は、配管100の外径に合わせて放射線照射部11と、検出器12と、の間の離間距離を自在に調節することができる。またガイド15によって形成される移動軌道の長さも、配管100の周長に合わせて調節自在に構成されている。
また撮像データ取得部1は、撮像データの取得を制御すると共に、後述する撮像データの結合を実施して画像データを作成する画像処理部である制御部2や、撮像データ取得部1を操作するための操作端を成し例えばタブレットPCなどにより構成される操作部17を備えている。
【0026】
続いて、上述の構成を備える検査システムを用い、溶接部81の放射線透過試験を実施する検査工程の一例について、図3に示す工程図、及び図4を参照しながら説明する。まず撮像データ取得部1により検査対象の溶接部81の周方向に沿った複数の位置の撮像データ90を取得する(処理P11)。なお以下撮像データ90を区別して示す場合には、追加の識別符号A、Bを付し区別している。
【0027】
図4(a-1)に示すように、例えば放射線透過試験の作業者により、治具16を介して放射線照射部11と、検出器12とが、検査対象の配管100の溶接部81を挟んで互いに対向するように設置される。そして放射線照射部11から溶接部81放射線を照射して、検出器12で検出し、溶接部81を透過した放射線の透過強度に基づき撮像データ90Aを取得する。
【0028】
図4(b-1)に示すように、撮像データ90Aは、溶接部81の形成方向に沿った画像に対応する未加工のデータ(RAWデータ)である。撮像データ90Aは、図4(a-1)に示す位置に放射線照射部11、検出器12が配置されている状態における1回の撮影にて撮影された視野範囲内における放射線の透過強度の分布を示している。図4(b-1)に示す撮像データ90Aには、溶接部81を示す溶接線810と、きずを示すきず画像8とが含まれている。
なお説明の便宜上、以下に説明する図4図6図8では、画像データ9や後述の判定済み画像データ91、仮判定済み画像データ92に基づいて表示される画像に対して、これらのデータ9、91、92を示す符号を付してある。
【0029】
図4(a-1)に示す位置にて撮像データを取得した後、撮像データ取得部1は、移動機構により放射線照射部11及び検出器12を配管100の周方向に沿って、同じ方向に同期して移動させる。次いで、図4(a-2)に示す、配管100の周方向の異なる位置にて撮像データ90Bを取得する。図4(b-2)に示す撮像データ90Bは、図4(a-2)に示す位置にて撮影にて撮影された視野範囲内における放射線の透過強度の分布を示している。
このとき図4(b-2)に示す配置位置は、図4(a-1)に示す位置にて取得された撮像データ90Aと、図4(a-2)に示す位置にて取得された撮像データ90Bとの間で、撮像された視野範囲の一部が重複する重複領域Dが形成されるように設定されている。
【0030】
このように、本例の撮像データ取得部1は、配管100の周方向の異なる複数の位置にて撮像データ90を順次、取得する。図4では、2か所の撮影を説明しているが、放射線照射部11及び検出器12をさらに移動させながら、配管100の溶接部81の全周に亘って複数の撮像データ90が取得される。
【0031】
このように配管100の周方向に異なる複数の位置にて撮像データ90を取得したら、制御部2は、これらの複数の撮像データ90を結合させ、図4(c)に示す画像データ9を作成する(処理P12)。このとき、例えば各撮像データ90の画像判定を行い、画像が一致する部分が重なり合うように撮像データ90の結合を行えば、既述の重複領域Dが自動的に重ね合わされ、配管100の周方向に沿って結合された画像データ9を得ることができる。
以上に説明した複数の撮像データ90の結合を行う観点において、撮像データ取得部1に設けられている制御部2は、本例の検査システムの画像処理部を構成している。なお、複数の撮像データ90から画像データ9を得る処理に伴って、適宜、重なっている部分を削除する処理を行ってもよい。
【0032】
以上に説明した処理により、図2中に破線で囲んだ領域における配管100溶接部81の周方向の放射線の透過強度の分布を示す画像データ9が得られる。また制御部2は、画像データ9に溶接を行った溶接士の情報、溶接を実施した場所、撮影日時などの情報などの画像データ9の識別情報を付加してもよい。
【0033】
作成された画像データ9は、例えばUSB、SDカードなどの搬送可能な記憶媒体を介して、またはデータ通信路を介して判定処理部3にて送られる。例えば判定処理部3は、取得した画像データ9に基づく画像をモニターに表示すると共に、当該画像データ9に対して判定結果に係る情報の入力を受け付ける操作表示部31を備えている。そして溶接結果の合否判定を行う有資格者200は、当該判定処理部3の操作表示部31を介して、放射線透過試験の対象となっている配管100の溶接部81における欠陥の有無を判定する。判定処理部3は、当該判定の結果を示す判定データを、画像データ9中に対応付けて保存する。
【0034】
図5(a)、(b)は、画像データ9に判定データを対応付ける処理の一例を示している。図5(a)は、画像処理部2にて結合された直後の画像データ9を示している。
撮像データ取得部1を用いて撮像を行った溶接部81にきずが含まれている場合には、画像データ9には、溶接部81を示す溶接線810内に、きず画像8が現れる。例えばきず画像8は、溶接部81を透過した放射線の透過強度が異なる部位(画像のコントラストが異なる部位)として確認できる。
【0035】
有資格者200は、表示された画像を目視しながら、操作表示部31を操作して、図5(b)に示すようにきず画像8の内、欠陥と判定されるものを囲むようにマーク80を付ける処理(マークアップ)を行う。このようにして有資格者200は、画像データ9に対して、欠陥に相当するきず画像8の位置、きず画像8のサイズを示すマーク80を書き込む。上述の例の場合、マークアップが行われたきずは、すべて「欠陥」と判定されたことになる。
また、画像から判別可能なすべてのきず(きず画像8)をマークアップし、そのうち欠陥と判定されるものに識別情報をさらに付加する構成としてもよい。このとき、欠陥であることを示す識別情報が付加されたきず画像8は、欠陥ではない他のきずとは異なる色やハッチングを付した画像として表示してもよい。
【0036】
上述の各例において、欠陥と判定されたきず画像8をマークアップすることによって特定されるきず画像8の位置、きず画像8のサイズを示す情報は、欠陥を判定した結果を示す判定データに相当する。
【0037】
この画像データ9と欠陥の判定データとは、互いに対応付けられて、判定処理部3の不図示の記憶部に保存される(処理P13)。以下、判定データが対応付けられた画像データ9を判定済み画像データ91とも呼ぶ。
判定処理部3は、プラントの建設責任者などのユーザーから、判定結果を確認したい溶接部81の判定結果の表示要求を受け付けると、不図示の記憶部より、判定済み画像データ91を呼び出して画像として出力する(処理P14)。各溶接部81の各溶接線810の位置情報は、判定済み画像データ91に付加されている配管100や配管部材のアイテム番号や溶接部の場所、撮影日時、放射線透過試験開始点からの距離(通常、開始点を0とし、10mm刻みに1,2,3と位置情報を識別)などの識別情報に基づいて識別することができる。なお、ユーザーが判定結果を出力する出力部は、判定処理部3とは異なる場所に設け、クラウドなどを介して判定済み画像データ91を取得する構成としてもよい。
【0038】
本実施の形態に係る検査システムによれば以下の効果がある。配管100または配管部材の溶接部81の放射線透過試験において、検査対象の配管100または配管部材の溶接部81に放射線を透過させ、溶接部81の撮像データ90を取得している。従来は撮影毎にフィルムを配管上に置く作業や放射線管理区域からの入退場をするなどの放射線透過試験の準備時間が掛かっていたが、本システムにより飛躍的に作業能率を向上することができる。また、前記撮像データ90を利用して前記検査対象の溶接部81の欠陥を判定し、その判定結果を示す判定データを、当該放射線の透過強度の分布を示す画像データ9に対応付ける処理を行っている。従ってフィルムを用いずに判定結果を得ることができ、作業者の負担を軽減することで放射線透過試験の作業能率を向上することができる。また、画像データを用いることで、画像の拡大、コントラスト調整、ネガポジ反転などができるため、フィルムを用いた目視の判定と比べて検査精度、検査効率を向上させることができる。
【0039】
既述のように従来は、プラントの建設現場にて検査対象の溶接部81の放射線透過写真を配管100の周方向に沿って何枚も撮影した後、有資格者200が、現像された多数のフィルムをもとに溶接部81の欠陥の有無を判断していた。そのため放射線透過試験においては、多数のフィルムを保管する保管庫が必要となるばかりでなく、フィルムの現像やこれに使用する薬品の取り扱いなどの多くの手間かかっていた。
この点、ディジタルデータである撮像データ90A、90Bを取得することで、フィルムを保管する倉庫の確保や、フィルムの現像に要する薬品の取り扱いの必要が必要なくなる。
【0040】
また放射線照射部と、フィルムを保持したホルダーとを手作業にて移動させ、配管100の全周に亘って溶接部81の撮影を行う場合には、安全距離の確保の観点から、限られた建設エリア内で、多くの撮影装置を設けることが難しい問題もあった。
この点、図2を用いて説明したように、放射線照射部11及び検出器12を移動させること可能な構成の撮像データ取得部1を用いれば、安全距離を確保したうえで制御部2により遠隔操作を実施することが可能となり、フィルムよりも高感度の高い検出器を用いることで、より小さい線源を用いても作業能率を損なうことなく、より多くの放射線透過試験を並行して実施することもできる。また溶接部81へのフィルムの設置, 都度、放射線エリアからの作業者の入退場を行うことなく、放射線照射部11及び検出器12を移動させて、撮像データ90を溶接部81の全周に亘って連続的に撮影することができる。さらに撮影を実施する作業者の技能によらず、撮像精度のばらつきの少ない撮像データ90を取得して、検査精度を向上させることができる。またディジタルデータである撮像データ90を直接、取得するため、現場での画像の確認が容易であり、撮影を失敗した場合の再撮影のリスクを減らすことができる。
【0041】
さらに、現像したフィルムを目視して欠陥の判定を行う従来の手法では、欠陥の判定を行う有資格者200を現地に派遣して行う必要があり、遠隔地などにおいては、即時の派遣が困難な場合もあった。
この点、ディジタルデータである画像データ9は遠隔地にも送信することが可能であり、有資格者200の派遣に係る制約を大幅に低減することができる。この観点で、図1に示す判定処理部3を、クラウドを介して画像データ9や判定済み画像データの送受信を行う独立した判定処理装置として構成し、画像データ9に判定データを付加するサービスのみを提供してもよい。
【0042】
ここで既述の配管100の溶接部81の欠陥の判定するための基準の一例としてASME(American Society of Mechanical Engineers)規格 B31.3が知られている。表1は、ASME B31.3に基づく溶接部81の欠陥の種類を示している。
[表1]
【0043】
表1に示す「割れ(Crack)」は溶接部81に亀裂が生じている欠陥、「融合不良(Lack of Fusion)」は、溶接材料が溶け切らずに溶接部81の内部に空隙が生じる欠陥である。また、「溶け込み不良(Incomplete Penetration)」は、溶接材料が配管100と配管100との間を埋め切れず、配管100の内面側の溶接部81に窪みが形成されている欠陥である。また溶接部81表面に残るきずは、「丸形形状(Rounded Indication)」、「線形形状(Elongated Indication)」に分けられる。この他の欠陥としては、表面側にて溶接材料と、配管100との間に隙間が生じる「アンダーカット(Undercutting)」、溶接部81の表面が窪んでしまう「窪み(Concave Surface)」がある。
【0044】
図6(a)~(c)は、これらの欠陥を含む溶接部81に係る画像データ9の例である。図6(a)中の溶接線810に含まれるきず画像8Aは、欠陥「割れ」に相当するきずを示し、図6(b)中のきず画像8Bは、「融合不良」のきずを示している。また図6(c)中のきず画像8Cは、「溶け込み不良」のきずを示している。有資格者200は、このように画像中のきず画像8の位置、きず画像8のサイズ、きず画像8の形状的特徴に基づき、溶接部81に形成されているきずの位置や大きさを判別し、きずが欠陥に相当する場合には、その旨を示す判定データを付加する。この判定データには、欠陥の種別を識別する識別情報を付加してもよい。
【0045】
これらの欠陥の種別を判別するにあたっては、画像データ9に含まれているきず画像8A~8Cを一見しただけでは、いずれの種類の欠陥に該当するのか識別が困難の場合があり、有資格者200に大きな負担がかかることもある。
そこで本発明の実施の形態に係る検査システムは、図1に示すように、画像データ9中に含まれるきず画像8の位置、きず画像8のサイズ、きず画像8の形状的特徴が、表1に示したいずれの種類の欠陥に相当するかを判別し、欠陥の種類を識別する情報を付加してマークアップを実施する自動判定部5を備えていてもよい。
【0046】
自動判定部5を用いた自動判定処理の一例を図7の工程図に示す。自動判定部5は、判定処理部3より判定データが対応付けられた画像データ9である判定済み画像データ91を取得し、その記憶部51に大量に蓄積している。
そして自動判定部5は、記憶部51に蓄積されている判定済み画像データ91を読み出し、欠陥と判断されたきず画像8の位置、サイズ及び形状的特徴についての機械学習を実施する(処理P21)。また、このとき、欠陥と判断されるには至らなかったきず画像8の位置、サイズ及び形状的特徴についての機械学習も行ってよい。
【0047】
さらに自動判定部5は、きずの機械学習を行った結果に基づき、新たな画像データ9に含まれるきずが欠陥に相当するか否かを判定し、欠陥の種類を判別する計算手続きであるAI(Artificial Intelligent)判定アルゴリズムを構築する。AI判定アルゴリズムによれば、例えば画像データ9に含まれ、周囲の溶接線810とはコントラストの異なる部位の面積や、形状、形成方向、あるいは、コントラストの階調変化の傾向などに基づき溶接部81に含まれるきずを認識すると共に、当該きずが欠陥に相当するか否かの判定、欠陥の種類の判別を実行することができる。
【0048】
AIアルゴリズムが構築された後、撮像データ取得部1から新たな画像データ9が取得されると、例えば放射線透過試験の作業者や有資格者200は、自動判定部5に対して画像データ9の自動判定を要求する。この要求を受けると、自動判定部5は、判定処理部3から判定処理前の画像データ9を受信し、AI判定アルゴリズムに基づいて、取得した画像データ9の自動判定を行う。
【0049】
この自動判定によって、きず画像8の位置、きず画像8のサイズ、きず画像8の形状的特徴を抽出し、当該きず画像8に対応するきずが欠陥に相当するか否かを判定する。当該きずが欠陥に相当すると判断される場合には、さらに欠陥の種類の判別が行われる。
【0050】
そして欠陥を含むと判定された画像データ9に対しては、きず画像8の位置、きず画像8のサイズ、きず画像8の形状的特徴を識別可能な情報である仮判定データとして、欠陥の種類を示す情報を含むマーク80を対応付けるマークアップを行う(処理P22)。以下、仮判定データが対応付けられた画像データ9を仮判定済み画像データ92とも呼ぶ。
【0051】
図8に示す例では「割れ」と判定された欠陥に対応する箇所には、マーク80Aが付され、「融合不良」と判定された欠陥に対応する箇所には、マーク80Bが付されている。これらのマーク80A、80Bは、表1に例示した各種の欠陥に予め対応付けられ、目視にて互いに識別可能なように、色彩またはハッチの種類が相違するものが設定されている。
【0052】
欠陥の種類を示す情報を含む仮判定データが付加された画像データ9(仮判定済み画像データ92)は、判定処理部3に送信され、記憶部31に記憶される。
【0053】
このような自動判定部5によって自動判定が行われた仮判定済み画像データ92を用いる場合には、判定処理部3は、図9の処理P13’に示すように、当該仮判定済み画像データ92の画像を表示し、有資格者200による欠陥の判定を受け付ける。この結果、有資格者200の判定により、仮判定データがそのまま採用され、または仮判定データの修正が行われ、正式な判定データとして画像データ9に対応付けて保存されることになる。
また演算部52が判定処理部3に設けられていてもよい。つまり、AI判定アルゴリズムが判定処理部3に設けられていてもよい。それにより画像データ9の送受信の時間を削減することができる。また、インターネットが利用できない場所でもAI判定アルゴリズムを利用することができる。
【0054】
以上の図1を用いてまた検査システムが備える撮像データ取得部1は、撮像したアナログ画像をスキャニングして撮像データ90を取得する画像読取装置によって構成してもよい。例えば図10に示す検査システムの例では、検査対象の溶接部81を含む領域に放射線を照射し、当該溶接部81を透過した放射線像をフィルムに感光させて得られたアナログ画像93を得ている。アナログ画像93は、画像読取装置19を介して読み取ることにより、ディジタルデータに変換された撮像データ90を取得することができる。なお図10には、1台の画像読取装置19を用いて、複数個所で撮影したアナログ画像93から撮像データ90を取得する例を記載している。また、図示の例に限定されず、これらのアナログ画像93を各々、異なる複数台の画像読取装置19にて読み取り、撮像データ90を取得してもよい。
【0055】
当該検査システムにおいても、画像読取装置19を介して読み取った撮像データ90の画像処理を行い、得られた画像データ9について、判定処理部3にて判定データの対応付けを行うことができる。これによりユーザーは、判定データが対応づけられた判定済み画像データ91を簡単に取得することができる点は、図1を用いて説明した第1の実施の形態に係る検査システムと同様である。
【符号の説明】
【0056】
1 撮像データ取得部
3 判定処理部
9 画像データ
90 撮像データ
81 溶接部
91 判定済み画像データ
100 配管

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10