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特許7221477耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230207BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20230207BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C22C38/00 301F
C22C38/58
C21D8/02 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020535202
(86)(22)【出願日】2018-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2018016562
(87)【国際公開番号】W WO2019132465
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0179340
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ‐ウ
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0076570(KR,A)
【文献】特開平04-329826(JP,A)
【文献】特開2017-048443(JP,A)
【文献】特開平05-287441(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0075925(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.10~0.25%、Si:0.05~0.50%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、Nb:0.001~0.03%、V:0.001~0.03%、Mo:0.01~0.15%、Cu:0.01~0.50%、Ni:0.05~0.50%、Ti:0.001~0.03%、Cr:0.01~0.20%、及びCa:0.0005~0.004%、残部はFe及び不可避不純物からなり、
100~300mmの厚さを有し、内部に形成された空隙の最大サイズは1μm以下であり、
70面積%以上のフェライト組織及び残部パーライト組織を微細組織として含み、
500MPa以上の引張強度を有し、-46℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーが250J以上、水素誘起割れの長さ比が5%以下であることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼材。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼材を製造するための製造方法であって、
重量%で、C:0.10~0.25%、Si:0.05~0.50%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、Nb:0.001~0.03%、V:0.001~0.03%、Mo:0.01~0.15%、Cu:0.01~0.50%、Ni:0.05~0.50%、Ti:0.001~0.03%、Cr:0.01~0.20%、及びCa:0.0005~0.004%、残部はFe及び不可避不純物からなスラブを1次加熱し、
前記1次加熱されたスラブを長さ方向及び幅方向圧下し、
前記長さ方向及び幅方向圧下されたスラブを選択的に2次加熱して厚さ方向圧下し、
前記厚さ方向圧下されたスラブを3次加熱して熱間圧延し、常温まで空冷して鋼材を提供し、
前記鋼材を4次加熱して熱処理し、常温まで空冷し、且つ
前記厚さ方向圧下された前記スラブの内部空隙の最大サイズは1μm以下であることを特徴とする耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項3】
前記1次加熱温度は1150~1250℃であることを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項4】
1100~1200℃の温度範囲において10~20%の圧下量で前記スラブを長さ方向圧下することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項5】
1050~1150℃の温度範囲において10~30%の圧下量で前記スラブを幅方向圧下することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項6】
前記長さ方向及び幅方向圧下されたスラブの温度が950℃以下である場合、前記スラブを1000~1140℃の温度範囲で2次加熱することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項7】
30%以上の圧下量で前記スラブを厚さ方向圧下することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項8】
1000~1140℃の温度範囲で前記スラブを3次加熱して1000~1140℃の温度範囲において30~75%の圧下量で熱間圧延することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項9】
850~950℃の温度範囲で前記鋼材を4次加熱し、15~50分間維持して熱処理することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【請求項10】
前記熱間圧延された鋼材中心部のオーステナイト組織は、平均70μm以下の結晶粒サイズを有し、
前記4次加熱されて熱処理された鋼材中心部のオーステナイト組織は、平均30μm以下の結晶粒サイズを有することを特徴とする請求項2に記載の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法に係り、より詳しくは、硫化水素雰囲気において用いられる圧力容器用鋼材及びその製造方法に関し、詳細には、水素誘起割れ(HIC)抵抗性を効果的に確保した圧力容器用鋼材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学製造設備や貯蔵タンクなどに用いられる圧力容器用鋼材は、使用時間が増大化するにつれて、設備の大型化及び鋼材の厚物化の傾向が続いている。また、大型構造物への適用時には、母材及び溶接部の構造的安定性を確保するために、炭素当量(Ceq)を下げ、不純物を極限に制御する傾向にある。尚、HSが多量に含有された原油の生産が増大していることから、水素誘起割れ(HIC)に対する抵抗特性の基準がさらに厳しくなっているのが実情である。
【0003】
鋼材の水素誘起割れ(HIC)の発生原理を調べると以下のとおりである。原油に含有される湿潤硫化水素に鋼材表面が接触することにより腐食が発生し、鋼材の腐食によって発生した水素原子は、鋼材内部に侵入及び拡散して鋼材内部において原子の状態で存在するようになる。鋼材内部に侵入及び拡散した水素原子は、水素ガスの形で分子化してガス圧力を発生させ、かかる圧力によって鋼材内部の弱い組織(例えば、介在物、偏析帯、内部空隙など)で脆性亀裂が誘発される。使用時間の経過及び継続的な荷重印加などにより、亀裂は徐々に成長し、最終的に鋼材の破壊を誘発するようになる。
【0004】
硫化水素雰囲気下において用いられる鋼材の耐水素誘起割れ性を向上させるために様々な技術が開発されている。代表的な技術としては、1)Cuなどの元素を添加する方法、2)クラックが容易に発生及び伝播する硬化組織(例えば、パーライトなど)を最小限に抑えるか、又はその形状を制御する方法、3)NACT、QT、DQTなどの水処理を介して基地組織を焼戻しマルテンサイトや焼戻しベイナイトなどの硬質組織に制御することにより、亀裂形成に対する抵抗性を増加させる方法、4)亀裂の開始点として作用可能な鋼材内部の介在物などの内部欠陥を制御する方法などが挙げられる。
【0005】
しかし、これらの技術には、厚さが厚い厚物鋼板への適用に限界が存在し、特に、厚さ100~300mm、引張強度500MPa級の鋼材への適用時に十分な耐水素誘起割れ性を確保できないという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-013175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題とするところは、耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の課題は上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全体的な内容から、本発明の追加的な課題を理解するのに何の困難もない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、重量%で、C:0.10~0.25%、Si:0.05~0.50%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、Nb:0.001~0.03%、V:0.001~0.03%、Mo:0.01~0.15%、Cu:0.01~0.50%、Ni:0.05~0.50%、残部Fe及び不可避不純物からなり、100~300mmの厚さを有し、内部に形成された空隙の最大サイズは1μm以下であることを特徴とする。
【0009】
上記鋼材は、70面積%以上のフェライト組織及び残部パーライト組織を微細組織として含むことができる。
上記鋼材は、重量%で、Ti:0.001~0.03%、Cr:0.01~0.20%、及びCa:0.0005~0.004%のうち1種又は2種以上をさらに含むことができる。
上記鋼材は、500MPa以上の引張強度を有し、-46℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーが250J以上、水素誘起割れの長さ比が5%以下であることがよい。
【0010】
本発明の耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法は、重量%で、C:0.10~0.25%、Si:0.05~0.50%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、Nb:0.001~0.03%、V:0.001~0.03%、Mo:0.01~0.15%、Cu:0.01~0.50%、Ni:0.05~0.50%、残部Fe及び不可避不純物からなるスラブを1次加熱し、上記1次加熱されたスラブを長さ方向及び幅方向圧下し、上記長さ方向及び幅方向圧下されたスラブを選択的に2次加熱して厚さ方向圧下し、上記厚さ方向圧下されたスラブを3次加熱して熱間圧延し、常温まで空冷して鋼材を提供し、上記鋼材を4次加熱して熱処理し、常温まで空冷して製造され、上記厚さ方向圧下された上記スラブの内部空隙の最大サイズは1μm以下であることを特徴とする。
【0011】
上記鋼材の厚さは100~300mmであることができる。
上記1次加熱温度は1150~1250℃であることが好ましい。
1100~1200℃の温度範囲において10~20%の圧下量で上記スラブを長さ方向圧下することがよい。
【0012】
1050~1150℃の温度範囲において10~30%の圧下量で上記スラブを幅方向圧下することが好ましい。
上記長さ方向及び幅方向圧下されたスラブの温度が950℃以下である場合、上記スラブを1000~1140℃の温度範囲で2次加熱することがよい。
30%以上の圧下量で上記スラブを厚さ方向圧下することができる。
1000~1140℃の温度範囲で上記スラブを3次加熱して1000~1140℃の温度範囲において30~75%の圧下量で熱間圧延することが好ましい。
【0013】
850~950℃の温度範囲で上記鋼材を4次加熱し、15~50分間維持して熱処理することができる。
上記熱間圧延された鋼材中心部のオーステナイト組織は、平均70μm以下の結晶粒サイズを有し、上記4次加熱されて熱処理された鋼材中心部のオーステナイト組織は、平均30μm以下の結晶粒サイズを有することがよい。
上記スラブは、重量%で、Ti:0.001~0.03%、Cr:0.01~0.20%、及びCa:0.0005~0.004%のうち1種又は2種以上をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によると、圧力容器用に特に適した100~300mmの厚さを備えるとともに、耐水素誘起割れ性及び低温靭性を効果的に確保した鋼材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法に関する。以下、本発明の好ましい実施例を説明する。本発明の実施例は様々な形に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明される実施形態に限定されると解釈されるものではない。本実施例は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。
以下、本発明の鋼組成についてより詳細に説明する。以下、特に異ならせて示さない限り、各元素の含有量を示す%は重量基準である。
【0016】
本発明の一側面による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、重量%で、C:0.10~0.25%、Si:0.05~0.50%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.010%以下、S:0.0015%以下、Nb:0.001~0.03%、V:0.001~0.03%、Mo:0.01~0.15%、Cu:0.01~0.50%、Ni:0.05~0.50%、残部Fe及び不可避不純物からなる。
【0017】
C:0.10~0.25%
Cは、基本的な強度を確保するために最も重要な元素であるため、適切な範囲内で鋼中に含有される必要がある。したがって、本発明は、かかる添加効果を得るために、Cの含有量の下限を0.10%に制限することがよい。但し、Cが過多に添加される場合には、中心部偏析度が高くなり、空冷過程においてフェライト、ベイナイトの混合組織及びMA組織などが形成されて、強度や硬度が過度に高くなる虞がある。そのため、本発明は、Cの含有量の上限を0.25%に制限することが好ましい。したがって、本発明のCの含有量は0.10~0.25%であることがよい。好ましいCの含有量は0.10~0.20%であり、より好ましいCの含有量は0.10~0.15%である。
【0018】
Si:0.05~0.50%
Siは、置換型元素として固溶強化を介して鋼材の強度を向上させ、且つ強力な脱酸効果を有するため、清浄鋼の製造に欠かせない元素である。したがって、本発明は、かかる効果を得るために、Siの含有量の下限を0.05%に制限することがよい。但し、Siの添加量が過多な場合には、MA組織を生成させ、フェライトの基地強度を過度に増大させるため、耐水素誘起割れ性及び衝撃靭性などの劣化をもたらす虞があることから、本発明は、Siの含有量の上限を0.50%に制限する。したがって、本発明のSiの含有量は0.05~0.50%であることがよい。好ましいSiの含有量は0.05~0.40%であり、より好ましいSiの含有量は0.20~0.35%である。
【0019】
Mn:1.0~2.0%
Mnは、固溶強化を介して強度を向上させ、低温変態相が生成されるように硬化能を向上させる有用な元素である。また、Mnは、硬化能の向上により、遅い冷却速度でも低温変態相を生成させることができるため、最終熱処理後の空冷時にベイナイトの低温相を確保するための重要な元素である。したがって、本発明は、かかる効果を得るために、Mnの含有量の下限を1.0%に制限することがよい。但し、Mnの含有量が過多に添加される場合には、中心偏析が増大され、Sと結合して形成されたMnS介在物の分率が増大されて、耐水素誘起割れ性が低下する虞があることから、本発明は、Mnの含有量の上限を2.0%に制限する。したがって、本発明のMnの含有量は1.0~2.0%であることがよい。好ましいMnの含有量は1.0~1.7%であり、より好ましいMnの含有量は1.0~1.5%である。
【0020】
Al:0.005~0.1%
Alは、上記Siとともに製鋼工程において強力な脱酸剤として作用する元素である。本発明は、かかる効果を得るために、Alの含有量の下限を0.005%に制限することがよい。但し、Alの含有量が過多に添加される場合には、脱酸の結果物として生成される粗大な酸化性介在物(Al)が多量に形成される。かかる酸化性介在物は、精錬工程によっても完全に除去されず、最終製品に残存して耐水素誘起割れ性を低下させる虞がある。そのため、本発明は、Alの含有量の上限を0.1%に制限することが好ましい。したがって、本発明のAlの含有量は0.005~0.1%であることがよい。好ましいAlの含有量は0.005~0.05%であり、より好ましいAlの含有量は0.035~0.05%である。
【0021】
P:0.010%以下
Pは、製鋼工程において不可避に含有される元素であって、結晶粒界に脆性を誘発する元素である。したがって、本発明は、脆性亀裂伝播抵抗性を向上させるために、Pの含有量を0.010%以下に制限することが好ましい。
【0022】
S:0.0015%以下
Sも、製鋼工程において不可避に含有される元素であって、粗大な介在物を形成させて脆性を誘発する元素である。したがって、本発明は、脆性亀裂伝播抵抗性を向上させるために、Sの含有量を0.0015%以下に制限することが好ましい。
【0023】
Nb:0.001~0.03%
Nbは、NbC又はNbCNの形で析出し、母材の強度を向上させる元素である。また、高温で再加熱時に固溶されたNbは、圧延時にNbCの形で非常に微細に析出し、微細に析出したNbCはオーステナイトの再結晶を抑制して組織を微細化させることができる。したがって、本発明は、かかる効果を達成するために、Nbの含有量の下限を0.001%に制限することがよい。但し、Nbの含有量が過多に添加される場合には、溶解されなかったNbがTiNb(C、N)の形で生成され、衝撃靭性及び耐水素誘起割れ性が低下する虞があることから、本発明は、Nbの含有量の上限を0.03%に制限することがよい。したがって、本発明のNbの含有量は0.001~0.03%であることがよい。好ましいNbの含有量は0.005~0.02%であり、より好ましいNbの含有量は0.007~0.015%である。
【0024】
V:0.001~0.03%
Vは、再加熱時に大部分が再固溶される元素であり、後続する圧延工程などにおいて析出や固溶による強度強化の効果は不十分である元素であるが、後続する熱処理過程において非常に微細な炭窒化物として析出して強度を向上させることができる元素である。また、Vは、最終熱処理後のオーステナイトの焼入性を増大させ、空冷ベイナイトの分率を増大させることができる。したがって、本発明は、かかる効果を得るために、Vの含有量の下限を0.001%に制限することが好ましい。但し、Vの含有量が過多に添加される場合には、経済的に好ましくないだけでなく、溶接部の強度及び硬度を過度に増大させることで、表面クラックなどの要因として作用する虞があることから、本発明のVの含有量の上限は0.03%に制限することがよい。したがって、本発明のVの含有量は0.001~0.03%であることがよい。好ましいVの含有量は0.005~0.02%であり、より好ましいVの含有量は0.007~0.015%である。
【0025】
Mo:0.01~0.15%
Moは、焼戻し又は溶接後熱処理間の強度低下を防止する有効な元素であり、Pなどの不純物が粒界に偏析して誘発される靭性の低下を効果的に防止する元素である。また、Moは、フェライト内の固溶強化元素であって、基地相の強度を増大させる元素でもある。したがって、本発明は、かかる効果を得るために、Moの含有量の下限を0.01%に制限することが好ましい。但し、Moは、高価な元素であり、過多に添加される場合には経済性の面から好ましくないことから、本発明は、Moの含有量の上限を0.15%に制限することがよい。したがって、本発明のMoの含有量は0.01~0.15%であることが好ましい。
【0026】
Cu:0.01~0.50%
Cuは、フェライト内における固溶強化により基地相の強度を大幅に向上させることができる元素であり、湿潤硫化水素雰囲気において母材の腐食を効果的に抑制する元素である。したがって、本発明は、かかる効果を達成するために、Cuの含有量の下限を0.01%に制限することがよい。但し、Cuの含有量が過多に添加される場合には、経済的に好ましくないだけでなく、鋼板の表面にスタークラックを誘発する虞が高くなるため、本発明は、Cuの含有量の上限を0.50%に制限することがよい。したがって、本発明のCuの含有量は0.01~0.50%であることが好ましい。
【0027】
Ni:0.05~0.50%
Niは、低温で積層欠陥を増大させて転位の交差スリップ(Cross slip)が容易に発生するようにし、それに応じて、衝撃靭性及び硬化能を向上させて強度を向上させる重要な元素である。したがって、本発明は、かかる効果を得るために、Niの含有量の下限を0.05%に制限する。但し、Niの含有量が過多に添加される場合には、経済的な面から好ましくないだけでなく、硬化能が過度に上昇する虞があることから、本発明は、Niの含有量の上限を0.50%に制限することが好ましい。したがって、本発明のNiの含有量は0.05~0.50%であることがよい。好ましいNiの含有量は0.10~0.40%であり、より好ましいNiの含有量は0.10~0.30%である。
【0028】
また、本発明の一側面による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、重量%で、Ti:0.001~0.03%、Cr:0.01~0.20%、及びCa:0.0005~0.004%のうち1種又は2種以上をさらに含むことができる。
【0029】
Ti:0.001~0.03%
Tiは、再加熱時にTiNとして析出して母材及び溶接熱影響部の結晶粒成長を抑制し、それに応じて、低温靭性を大幅に向上させる元素である。したがって、本発明は、かかる効果を得るために、Tiの含有量の下限を0.001%に制限する。但し、Tiの含有量が過多に添加される場合には、連続鋳造ノズルの詰まりや中心部晶出によって低温靭性が低下する虞があり、Nと結合して中心部に粗大なTiN析出物を形成して、水素誘起割れの開始点として作用する虞があることから、本発明は、Tiの含有量の上限を0.03%に制限する。したがって、本発明のTiの含有量は0.001~0.03%であることがよい。好ましいTiの含有量は0.011~0.025%であり、より好ましいTiの含有量は0.013~0.018%である。
【0030】
Cr:0.01~0.20%
Crは、固溶によって降伏強度及び引張強度を増大させる効果は不十分であるが、後続する焼戻しや溶接後熱処理間にセメンタイトの分解速度を遅らせることで、強度の低下を効果的に防止する元素である。したがって、本発明は、かかる効果を達成するために、Crの含有量の下限を0.01%に制限することがよい。但し、Crの含有量が過多に添加される場合には、経済性の面から好ましくないだけでなく、M23などのようなCr-Rich炭化物の大きさ及び分率が増大して衝撃靭性を大きく低下させる可能性があることから、本発明は、Crの含有量の上限を0.20%に制限することがよい。したがって、本発明のCrの含有量は0.01~0.20%であることが好ましい。
【0031】
Ca:0.0005~0.004%
Alによる脱酸後にCaを添加すると、MnS介在物を形成するSと結合してMnSの生成を抑制するとともに、球状のCaSを形成して水素誘起割れによるクラックの発生を抑制することができる。したがって、本発明は、十分なCaSを形成するために、Caの含有量の下限を0.0005%に制限することが好ましい。但し、Caの含有量が過多に添加される場合には、CaSを形成して残存するCaがOと結合して粗大な酸化介在物を形成し、かかる粗大な 酸化介在物は、圧延時に延伸及び破壊されて水素誘起割れを助長することから、本発明は、Caの含有量の上限を0.004%に制限する。したがって、本発明のCaの含有量は0.0005~0.004%であることが好ましい。
【0032】
本発明は、上述した鋼組成の他に、残部Fe及び不可避不純物を含むことができる。不可避不純物は、通常の鉄鋼製造工程において意図せずに混入される可能性があるものであって、これを全面的に排除することはできない。通常の鉄鋼製造分野における技術者であれば、その意味を容易に理解することができる。また、本発明は、上述した鋼組成に加えて、他の組成の添加を全面的に排除するものではない。
【0033】
以下、本発明の空隙についてより詳細に説明する。
本発明の一実施例による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材内部に形成された空隙の最大サイズは1μm以下である。
【0034】
鋼材内部に形成された空隙は亀裂の開始点として作用する虞があることから、耐水素誘起割れ性を確保するためには、空隙のサイズ及び割合を適正レベルに管理する必要がある。特に、本発明の鋼材のように厚さが厚い厚物材の場合には、鋼材内部の空隙の分率よりは、個々の空隙のうち粗大な空隙が存在するか否かが水素誘起割れの発生に大きな影響を及ぼすことから、本発明は、鋼材内部に形成される空隙のサイズを一定レベル以下に制限して、耐水素誘起割れ性を確保しようとするものである。したがって、本発明の鋼材内部に形成された空隙の最大サイズは1μm以下であることが好ましい。
さらに、本発明の一実施例による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、100~300mmレベルの厚さを有する極厚物熱延鋼板であることから、熱間圧延が最終鋼材内部に形成された空隙のサイズに与える影響はわずかなレベルである。すなわち、最終鋼材内部に形成された空隙のサイズは、熱間圧延に提供されるスラブに形成された空隙のサイズに従属する要素であるため、本発明は、鍛造加工によってスラブに形成された空隙を最小限に抑え、それによって、最終鋼材内部の空隙のサイズを最小限に抑えるものである。
【0035】
以下、本発明の微細組織についてより詳細に説明する。
本発明の一実施例による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、70面積%以上のフェライト組織及び残部パーライト組織を含むことができる。
【0036】
焼きならし熱処理を介して提供される鋼材は、フェライト組織及びパーライト組織の混合組織を有することができ、これらの組織を有する鋼材はパーライト組織の分率によって強度が決定される。パーライト組織が30面積%を超えると、鋼材の強度は増加するのに対し、衝撃靭性が低下することから、本発明は、引張強度500MPa以上、-46℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー250Jを確保するために、フェライト組織の面積分率を70%以上に制限することがよい。
これにより、本発明の一実施例による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、100~300mmの厚さを有する厚物材であって、引張強度500MPa以上、-46℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー250J以上、水素誘起割れの長さ比5%以下を満たすことができる。したがって、本発明の実施例による 耐水素誘起割れ性に優れた鋼材は、圧力容器用に適した厚さ及び物性を確保することができる。
【0037】
以下、本発明の製造工程についてより詳細に説明する。
本発明の一実施例による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材の製造方法は、上述した組成で備えられるスラブを1次加熱し、上記1次加熱されたスラブを長さ方向及び幅方向圧下し、上記長さ方向及び幅方向圧下されたスラブを選択的に2次加熱して厚さ方向圧下し、上記厚さ方向圧下されたスラブを3次加熱して熱間圧延し、常温まで空冷して鋼材を提供し、上記鋼材を4次加熱して熱処理し、常温まで空冷する。
本発明のスラブの組成及びその含有量は、上述した鋼材の組成及びその含有量に対応することから、本発明のスラブの組成及びその含有量についての説明は、上述した鋼材の組成及びその含有量についての説明で代替する。
【0038】
スラブの1次加熱
上述した組成で備えられるスラブを1150~1250℃の温度範囲で1次加熱することができる。スラブの幅方向圧下時にスラブ内部の空隙を効果的に圧着するために、本発明の1次加熱温度は1150℃以上であることが好ましい。但し、1次加熱温度が過度に高い場合には、スラブの表面に過度な酸化スケールが発生し、炉の運営におけるコスト競争力が低下するため、本発明のスラブ1次加熱温度は1250℃に制限することがよい。
スラブの1次加熱後に、スラブの長さ方向、幅方向及び厚さ方向に対してそれぞれ圧下する鍛造工程が行われる。以下、それぞれの長さ方向圧下、幅方向圧下、及び厚さ方向圧下についてより詳細に説明する。
【0039】
長さ方向圧下及び幅方向圧下
1次加熱されたスラブに対して長さ方向圧下(up-setting)及び幅方向圧下(cogging)を順に行うことができる。長さ方向圧下及び幅方向圧下の実施順序は、特に限定されるものではないが、長さ方向圧下を行ってから幅方向圧下を行うことがスラブの空隙率減少の面からより好ましい。
長さ方向圧下は1100~1200℃の温度範囲において10~20%の圧下量で行われることがよい。幅方向圧下による空隙率の減少効果を確保するための長さ方向圧下量は10%以上であることが好ましい。但し、幅方向圧下量が過多な場合、スラブの座屈(buckling)を誘発する虞があることから、本発明の長さ方向圧下量は20%以下であることが好ましい。長さ方向圧下温度は、幅方向圧下温度を考慮した温度範囲であり、幅方向圧下時に十分な圧下量を確保するための長さ方向圧下温度は1100℃以上であることがよい。本発明では、長さ方向圧下温度の上限は、特に限定しないが、1次加熱温度を考慮した長さ方向圧下温度の上限は1200℃である。
【0040】
幅方向圧下によってスラブ内部の空隙のサイズが減少し、それに応じて、スラブの空隙率が減少する。したがって、かかる効果を達成するための幅方向圧下量は10%以上であることが好ましい。但し、幅方向圧下量が過多な場合には、スラブの鍛造クラックが発生する虞があることから、本発明の幅方向圧下量の上限は30%に制限することが好ましい。また、スラブの変形抵抗による圧下力の低下を防止するために、幅方向圧下は1050℃以上の温度で行われることがよい。本発明では、幅方向圧下温度の上限を特に限定しないが、1次加熱温度及び長さ方向圧下温度を考慮した幅方向圧下温度の上限は1150℃であることが好ましい。
【0041】
スラブの選択的2次加熱及び厚さ方向圧下
長さ方向圧下及び幅方向圧下が完了したスラブは厚さ方向に圧下される。このとき、厚さ方向圧下に提供されるスラブの温度が一定レベル以下の場合に限って、スラブの2次加熱が行われることがよい。すなわち、2次加熱は、選択的に行われることができ、2次加熱を行うか否かの基準となるスラブの温度は950℃である。これは、厚さ方向圧下に提供されるスラブの温度が950℃以下の場合には、スラブの変形抵抗の増大が原因となって適切な圧下量を確保することができず、鍛造クラックが発生する虞が高いためである。したがって、厚さ方向圧下に提供されるスラブの温度が950℃以下の場合には、スラブを1000~1140℃の温度範囲で2次加熱することがよく、厚さ方向圧下に提供されるスラブの温度が950℃を超えると、2次加熱を省略し、厚さ方向圧下を行うことができる。
【0042】
スラブ内部の空隙のサイズは、厚さ方向圧下量によって最終的に決定されることから、空隙のサイズを効果的に微細化するための厚さ方向圧下量は30%以上であることが好ましい。厚さ方向圧下が完了したスラブの内部空隙の最大サイズは1μm以下であることがよく、厚さ方向圧下が完了したスラブの断面を基準に空隙が占める分率は3面積%以下であることが好ましい。
【0043】
スラブの3次加熱及び熱間圧延
軸方向、幅方向及び厚さ方向に圧下が完了したスラブを1000~1140℃の温度範囲で3次加熱した後、1000~1140℃の温度範囲で熱間圧延を行うことで熱延鋼板を提供することができる。NbCによる析出強化及びNbの固溶強化による結晶粒微細化効果のために、熱間圧延は1000℃以上で行うことがよい。これは、熱間圧延温度が1000℃未満の場合には、Nbの固溶量が70%以下のレベルに低下し、NbCによる析出強化及びNbの固溶強化効果を十分に発揮することができないためである。但し、熱間圧延温度が過度に高い場合には、過度な酸化スケールが形成され、高温脆性欠陥が発生する虞が高くなることから、本発明は、熱間圧延温度の上限を1140℃に制限することがよい。熱延鋼板の仕上げ圧延終了温度はAr+20℃以上であることがよく、熱間圧延終了後の熱延鋼板は空冷によって常温まで冷却されることが好ましい。
【0044】
熱間圧延の圧下量は最終鋼材の厚さによって決定される。好ましい熱間圧延圧下量は30~75%である。また、熱間圧延終了直後の鋼材中心部のオーステナイト組織の平均結晶粒サイズが過度に粗大な場合には、焼きならし熱処理後にも一定レベル以下のオーステナイトの結晶粒度の確保が不可能であり、それに応じて、最終鋼材の低温衝撃靭性が低下する虞がある。したがって、本発明は、熱間圧延終了直後の鋼材中心部のオーステナイト組織の平均結晶粒サイズを70μm以下に制限することがよい。
また、本発明の鋼材は、厚さ100~300mmの厚物材であるため、熱間圧延によっても、空隙のサイズは大きな影響を受けない。したがって、熱間圧延終了後の鋼材内部の空隙の最大サイズも1μm以下であることができる。
【0045】
鋼材の4次加熱及び空冷
常温まで冷却された熱延鋼板を再び850~950℃の温度範囲で4次加熱し、15~50分間維持することにより、焼きならし(normalizing)熱処理することができる。組織の十分なオーステナイト組織の均質化のために、4次加熱温度の下限を850℃に制限することが好ましい。また、NbC及びVC析出物の粗大化を防止するために、4次加熱温度の上限を950℃に制限することがよい。オーステナイト組織の均質化のために、4次加熱の維持時間を15分以上に制限することがよく、析出物粗大化及び結晶粒粗大化を防止するために、4次加熱の維持時間の上限を50分に制限することが好ましい。
4次加熱による熱処理終了直後の熱延鋼板中心部のオーステナイト組織の平均結晶粒サイズは30μmレベルに微細化されるため、最終鋼材の強度及び低温靭性を効果的に確保することができる。但し、特に4次加熱による熱処理直後の結晶粒サイズが30μmを超えると、最終製品に要求されるDBTTの増大によって-46℃におけるシャルピー衝撃エネルギー250Jを満たすことができないため、4次加熱による熱処理直後のオーステナイト組織の平均結晶粒サイズを30μm以下のレベルに確保する必要がある。
【実施例
【0046】
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明する。
(実施例)
下記表1の組成で備えられるスラブに対して、下記表2の条件で熱延鋼板を製造した。1200℃でスラブを加熱し、長さ方向圧下の圧下量は15%と同一とした。また、条件J及びMは、スラブの温度が厚さ方向圧下温度に達しておらず、2次加熱を行わずに厚さ方向圧下を行った。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
上記表1及び表2によって製造された鋼材の平均空隙サイズ、オーステナイト結晶粒サイズ、水素誘起割れの長さ比(HIC Crack Length Ratio)、-46℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー、及び引張強度を測定した。その結果は下記表3のとおりである。
【0050】
【表3】
【0051】
発明例1~5は、本発明の組成含有量及び製造条件をすべて満たすことから、厚さ方向圧下後の最大空隙のサイズが1μm以下、500MPa以上の引張強度、250J以上の-46℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギー、5%以上の水素誘起割れの長さ比をすべて満たすことが確認できる。
これに対し、比較例1は、Cの含有量の範囲が本発明の範囲を超えることから、パーライト分率が過多となり、焼きならし後の引張強度が642MPaと非常に高いレベルであり、より高い炭素含有量により中心偏析度が増大して、結果的に、水素誘起割れ性及び低温衝撃靭性値がやや劣化したことが確認できる。
【0052】
比較例2及び3はそれぞれ、Mn及びSの含有量範囲が本発明の範囲を超えることから、鍛造加工後の空隙率は本発明の範囲を満たすものの、鋼板中心部にMnS介在物が生成され、水素誘起割れの長さ比(CLR)がそれぞれ22%及び39%のレベルと水素誘起割れ性が非常に劣化したことが確認できる。
比較例4は、Nb及びVの含有量範囲が本発明の範囲に達しないことから、鍛造加工後の空隙率が低いレベルであるにもかかわらず、4次熱処理過程においてNbCやVCのような超微細析出物が生成されないため、引張強度が431MPaレベルと非常に劣化したことが確認できる。
【0053】
比較例5は、鍛造加工時における長さ方向圧下温度及び幅方向圧下温度が本発明の範囲に達しないため、厚さ方向圧下量が十分に確保されない場合であって、幅方向圧下後及び厚さ方向圧下後の平均空隙サイズが30μm以上のレベルであり、水素誘起割れの長さ比(CLR)が33%のレベルと水素誘起割れ性も劣化したことが確認できる。
比較例6は、鍛造加工時における幅方向圧下量が本発明の範囲に達しないことから、厚さ方向圧下のためのスラブの幅が確保されず、スラブ内の粗大空隙が圧着されないことが確認できる。比較例6も、水素誘起割れの長さ比(CLR)が44%のレベルと水素誘起割れ性が非常に劣化したことが確認できる。
【0054】
比較例7は、厚さ方向圧下量が本発明の範囲に達しないことから、スラブ内の粗大空隙が圧着されないことが確認できる。したがって、比較例7も、水素誘起割れの長さ比(CLR)が39%のレベルと水素誘起割れ性が非常に劣化したことが確認できる。
比較例8は、厚さ方向圧下量及び厚さ方向圧下温度が本発明の範囲に達しないことから、スラブ内の粗大空隙が圧着されないことが確認できる。したがって、比較例8も、水素誘起割れの長さ比(CLR)が34%のレベルと水素誘起割れ性が非常に劣化したことが確認できる。
【0055】
比較例9は、熱間圧延温度が本発明の範囲に達しないことから、Nb固溶度が低下し、衝撃靭性及び引張強度を十分に確保できなかったことが確認できる。
比較例10は、4次加熱による熱処理温度が本発明の範囲に達しないことから、衝撃靭性が劣化したことが確認できる。
したがって、本発明の一実施例による耐水素誘起割れ性に優れた鋼材及びその製造方法は、圧力容器用に適した厚さを有しながらも、耐水素誘起割れ性を効果的に確保した鋼材及びその製造方法を提供することができる。
【0056】
以上、実施例を介して本発明を詳細に説明したが、これと異なる形の実施例も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲に記載の技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。